「まだ?………この世界、変われる?」
確かに、そう聴こえた。
確かに、そう語りかけた。
メンバーがステージを去る間もなくかかるダブルアンコール。一切演奏予定がされていなかった「「切断」」がラストナンバーとして炸裂する直前の出来事である。
何かがおかしい、何かが起きる、開演前から奇妙な違和感がつき纏ったこの日。確かに変われる“何か”が起こった。そんなDEZERT水戸公演の様子をお届けする。
びじゅなび密着取材企画~DEZERT編~
3月11日(土)新横浜NEW SIDE BEACH!!から開催されている<DEZERT LIVE TOUR 2023 / 天使の前頭葉–零–>。
びじゅなびではここまで2公演目となったさいたま新都心公演を除く全ての公演に密着帯同しているが、3公演目の金沢、4公演目の柏の間に何かきっかけが生じたのか、4th ALBUM『black hole』を主軸としたライヴにおいてポジティブさが際立つような変化を感じていた。
言わずと知れた水戸ライトハウス。
実は水戸駅から徒歩で20分という立地。この日はあいにくの天気ながら早くから物販購入やグッズの御朱印帳を押しに多くのファンが集まった。
完売御礼につきこの日もライトハウスの2階スペースを解放することになった。
前日に公演を行っていたのはなんと2マンライヴも決定しているアリス九號.。
メンバー・スタッフ陣から翌日公演のDEZERTに向けて楽屋冷蔵庫には差し入れがギッシリと入っていた。先輩後輩といえど同じジャンル。エールの籠った心意気に打たれる。
そしてこの水戸ライトハウスといえば同じ事務所の直系の先輩であるMUCCのホームグラウンドのひとつ。2017年の大晦日にはそんな敬愛する先輩バンドの呼びかけで「MUCC THE END OF 20TH COUNT DOWN FAMILY PARTY –逝く年 狂年 Lightの宴–」にてDEZERTもこの地でカウントダウン年越しを経験したことがある。その時のエピソードもライヴ中のMCでふんだんに語られオーディエンスに大ウケ。
15時過ぎになると千秋を含めたフルメンバーでのリハーサルを開始。
この時点でこの日はここまでのツアーから大きな変化を遂げることを察知する。
このツアーが終わった後のことまで考え、メンバーの中で試しておきたいシチュエーションや楽曲のアイデアがかなり出ているようだ。実際、千秋とSORAもお互いのこだわりや狙いを言葉で確認しながらも議論は終始前向きだった。
照明スタッフは開場の直前まで卓に打ち込み、念入りに明かりを確認していた。
フロアサイドからの見え方はもちろん、メンバーから見える視界が明るくなり過ぎないようにとの気遣いもあるようだ。
会場によって楽屋の形態もサイズも異なるが、水戸ライトハウスの場合は全セクションが1か所に待機することになる。大きな楽屋にスタッフ全員が集まるということで親戚の集まりのような妙に温かい空気感と一体感が生まれる。集中しづらくないか気になるも、メンバーは慣れたもので思い思いの時間を過ごし本番まで待機。
この日の千秋はいつも以上に口数が多く、「事件を起こしたい」、「刺激がほしい」、「Sacchanがバラードでダイヴする絵が見える」などと物騒な発言でソワソワしつつも上機嫌な様子。メンバー・スタッフともしばしば会話をし、何かを模索しているようでもあった。
ライヴは世界観を充満させ、緊張と緩和を巧みに使い分けながら転がりだす。
先日の柏公演あたりから一層ブラッシュアップされてきたメニューにより、一曲一曲の輪郭がより浮き上がっているようだ。この日はMCを少なく進行。
曲の導入にもなるべきMCをカットできるだけの余韻と、重なり合う音の説得力が明らかに増している。
開演前の千秋の発言を体現するような選曲も見られ、ここまでのツアーと体感の違いが良い方向に作用しているのが印象的ななか、「ラプソディ・イン・マイ・ヘッド」や「白痴」など『black hole』での新機軸は自由度を増し、Sacchanのベースに満員のフロアが身体を揺らして応える場面もあった。激しい曲が多いバンドのレパートリーにおいては異質だった楽曲もまたDEZERTの音楽を象徴するものになっている。
「盛り上がろうぜ!」
らしくないぐらいに真っすぐな千秋の声からなだれ込んだ「御法度」。ここから本編ラストで堂々たる存在感を発揮するニューウェポン「半透明を食べる。」までオーディエンスの熱狂とバンドの爆発的な相乗効果は圧巻だった。
“木を見て森を見ず”という比喩があるが、『black hole』という作品の全体像を掴むために必要だったのは“森を見ずして木を見る”ということなのかも知れない。幅広く散らばった魅力の楽曲を束ねるのではなく、ひとつひとつ再分解することによって輪郭が明らかになる構造が顕著だったのはアルバムのラストを飾る「I’m sorry」だ。
パンデミック以前、ライヴでオーディエンスに向かって“この記憶をあげるから”と叫び歌い、“記憶”という言葉に重きを置いていたはず千秋がこの曲の結びでは“虚しさも消えて記憶すら消えていく”と退廃的に歌う。
真意は千秋のみぞ知るところだが、アコースティックギター2本編成の美しく優しいメロディのこの曲を全身を使って絶唱する姿からは、失いそうな記憶を手放さんとする強靭な意志を感じずにはいられない。2019年のリリース当初では手放しそうだった“記憶”を今なら掴める、そう聴こえたのは筆者だけではないのではないか。もともと名曲の呼び声が高かった「I’m sorry」がクロージングソングとしての役割を全うした時に見える『black hole』の景色はこれまでに見たことないものだった。思えばこのアルバムは楽曲の振り幅とセンスに隠れているが、実際は“生”と“死”を歌い続けている。“生と死”には肉体的・物質的なものだけでなく精神的なものも含まれる。“生”だけでもなければ“死”だけでもない。不安定な日常に苛まれ、飲み込まれてしまいそうだったはずの「I’m sorry」は“過去に向けた鎮魂歌になったように思う。
ノスタルジックを切り裂くような歴戦のナンバー達があの頃の“記憶”を呼び起こすように破壊的に叩きつけられた。
冒頭のシーンに戻る。
「まだ変えれる?………この世界、変われる?」
この千秋の問いかけに応えたオーディエンスの力も相まった完全燃焼のアンコール。
変わることを体現した彼らなりのリ・アンサー。
精魂尽き果てながらも体力を振り絞った4人のメンバーの充実の表情がすべてを物語っていた。
そしてライヴが終わった時、終演予定時刻を「「「大幅」」」に過ぎていたことは言うまでもない。
<びじゅなび密着企画~DEZERT編~>
密着企画という初の試みを快諾してくれたDEZERTメンバー、スタッフに深く感謝をしたい。
…が、ツアーはあと1本残っている。というわけで毎公演変化を見せながら自由度も増しているこのツアーの結末までびじゅなびではお届けしたい。
次回密着最終回、京都編お楽しみに!!!!!
取材・文:山内秀一
★<Vol.1:2023年3月11日(土)新横浜NEW SIDE BEACH!!>はこちらから★
★<Vol.2:2023年3月18日(土)金沢AZ>はこちらから★
★<Vol.3:2023年3月21日(火・祝)柏PALOOZA>はこちらから★
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<LIVE>
■DEZERT LIVE TOUR 2023 / 天使の前頭葉–零–
3月11日(土) 新横浜NEW SIDE BEACH!! OPEN 17:30 / START 18:00
3月12日(日) HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3 OPEN 17:15 / START 18:00
3月18日(土) 金沢AZ OPEN 17:30 / START 18:00
3月21日(火・祝) 柏PALOOZA OPEN 17:15 / START 18:00
3月25日(土) 水戸ライトハウス OPEN 17:15 / START 18:00
4月1日(土) 京都MOJO OPEN 17:30 / START 18:00
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※全公演チケットSOLD OUT!
公式リセールについて https://www.dezert.jp/news/detail/9477
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■DEZERT LIVE 2023 / 天使の前頭葉–結ふ–
4月24日(月) SHIBUYA CLUB QUATTRO OPEN 18:15 / START 19:00
【チケット料金】前売5,500円(税込・ドリンク代別) オールスタンディング
※THANK YOU SOLD OUT!※
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■DEZERT LIVE TOUR 2023 “きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”
6月17日(土)CLUB CITTA’ OPEN 17:00 / START 18:00
7月1日(土)新潟NEXS OPEN 17:30 / START 18:00
7月9日(日)仙台Rensa OPEN 17:30 / START 18:00
7月15日(土)福岡DRUM Be-1 OPEN 17:30 / START 18:00
7月16日(日)福岡DRUM Be-1 OPEN 17:30 / START 18:00
7月22日(土)岡山CRAZYMAMA KINGDOM OPEN 17:30 / START 18:00
7月23日(日)高松MONSTER OPEN 17:30 / START 18:00
7月29日(土)札幌ペニーレーン24 OPEN 17:30 / START 18:00
8月26日(土)名古屋DIAMOND HALL OPEN 17:15 / START 18:00
8月27日(日)なんばHatch OPEN 17:15 / START 18:00
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【チケット料金】6,000円(税込・ドリンク代別)
スタンディング(大阪公演以外の9公演)
全自由/座席有り(8月27日大阪公演のみ)
※入場整理番号付き
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【オフィシャルHP先行受付(抽選)】 受付期間:3月25日(土)12:00~4月3日(月)21:00
受付ページ https://eplus.jp/dezert230608-official/
※イープラス抽選受付、各公演1人2枚、スマチケのみ、同行者登録有り
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【チケット一般発売】4月29日(土・祝)
◎公式リセール実施予定
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■LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT-
9月23日 (土) LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
詳細は後日発表。
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<リリース情報>
★Blu-ray / DVD 「DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”」発売中
【通常盤】(Blu-ray) DCXL-7 / 7,700円(税込)
【通常盤】(DVD) DCBL-21 / 6,600円(税込)
収録曲・特典等の詳細はこちらhttps://www.dezert.jp/discography/detail/1197/
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