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2024年01月27日 (土)

【ライヴレポート】<HOLLOWGRAM 10th Anniversary「AURORA」>2024年1月19日(金)渋谷REX◆「僕らの作る音楽がみんなの光と潤いになればよいかと思ってます。暖かい光と潤いがあればまた美しい花が咲くと思う」── ryo(Vo)

REPORT - 12:00:19

 HOLLOWGRAM1月19日(に渋谷ReXにて結成10周年を記念したアニバーサリーワンマンHOLLOWGRAM 10th Anniversary live “AURORA ”>を行なった。

 

 2024年1月に結成10周年を迎えたHOLLOWGRAM。ここまでの道程は決して平坦ではなく、Vo ryoの交通事故、バンド創設メンバーの脱退から現メンバーでのパートチェンジ、そして初の全国ワンマンツアー中に未曽有のパンデミックに見舞われるなど、それなりに波乱万丈な10年を過ごしてきたバンドである。ライブ空間を支配するかのようなVo ryoの表現力、ソリッドで独創的な夢時のギター、ベースからギター、バイオリンなどをこなす多彩さとクオリティの高いソングライティング能力を持つ一也、バンドの土台をきっちり固めるタイトなドラマーのリーダーshinyaの4人から織りなす音像は、「V系バンド」という認識で収めるにはあまりにも世界が小さい。いや、「何にも似せない。他とは違う」という本来あるべきV系バンドの音像なのかもしれない。そんな彼らのマイルストーンとなった10周年記念ライブも一筋縄ではいかないライブとなった。

 

 

 

 

 

 

 厳かなピアノの音色でこの日のために作られたSEが流れる中ステージに姿を現した4人は10周年だからといったような気負いも全く見せず「more than just love」から静かにライブの幕を開けた。序盤は「ideologue」「adolescent」などHOLLOWGRAMの真骨頂ともいえる聴かせる曲達が演奏され、オーディエンスは息をするのも憚れるかの如く瞬時に彼らの世界観に引き込まれていく。そしてライブも中盤に差し掛かると軽いジャムセッションが始まり、ここでこの日のゲストプレイヤーである攸紀が呼び込まれる。攸紀は前述したHOLLOWGRAMの創設メンバーであり2017年4月に脱退しているが、彼の登場にひと際大きい歓声があがると一也はベースからギターに楽器を持ち替え、攸紀が一也のベースを受け取ると5人での久しぶりの演奏が始まる。「Albus」「Butterfly in her dreams」の2曲をプレイしステージを後にする攸紀に惜しみない拍手と歓声が上がる。「虹のないところに虹を掛けて渡っていこうと決めて最初に作った曲です」ryoがこう告げて始まったのが「Don’t cry for the knell」そして壮大な「History」へと繋げる。

 

 

 

 

 

 続くブロックでは楽器のチューニングの都合で滅多にプレイされることがない「Paint in water color」「Peach moon」といったアコースティックテイストが盛り込まれた楽曲が披露される。こういった楽曲の間口の広さと表現力が彼等の強みであり唯一無二の存在たる所以ではないだろうか。そしてライブがいよいよ後半に突入すると「Blind Watchmaker」「Stand the devil’s like」「Sentimental issues 」といったアッパーな曲が披露されフロアはこの時を待っていたかのように熱量が一気にヒートアップ。ダンサンブルなシティポップ風な曲調の「Flood of love」、切れの良いギターカッティングと跳ねたビートの「DID」、そしてHOLLOWGRAMライブでは定番となった最終曲「With you」で本編が終了となった。

 

 

 

 

 鳴りやまないアンコールに応え再びステージに現れた4人は改めてここまでの10年を振り返るトークを始める。

 

「いろいろあったなぁー 僕ら仲が良いわけはなく、こうみえて皆大人なので互いを尊重する術を知ってる。今後も無理せず長く続けていく」(Shinya)

 

 

 

「普通に継続するってすごく大変な事なんだよね。我々を形容するのも難しいんだけど、エンターテイメントはさておき音楽だけで10年続けるの。だから皆に感謝します」(夢時)

 

 

 

「いやいやー我々なんてものがバンドを続けさせてて貰って本当にありがたいです」(一也)

 

 

 

そしてバンドの10周年を記念してファンが差し入れしてくれたCDジャケットを模したケーキを手に再び攸紀が登場すると、「あえて僕等と言わせてもらいますがHOLLOWGRAMはものすごくクオリティの高い後世に残る曲を生み出してます。そんなHOLLOWGRAMのファンの皆さんはセンスがいいと思う」と創設メンバーとしてコメント。この10年を追い続けていたファンも感涙したのではないだろうか。そして初期曲である「ラブレターレイン」「Pleasance Liddell」を改めて5人で披露となった。攸紀を送り出した後にryoが「僕らの作る音楽がみんなの光と潤いになればよいかと思ってます。暖かい光と潤いがあればまた美しい花が咲くと思う」と語りいよいよファイナル「mistletoe」へと導く。曲中を四季に模し様々な情景を浮かび上がらせる希望の歌で締めくくられた。

 

 2023年の夏から行っていたDecade企画の前哨戦AURUMを経て、黄金、輝き、始まりのAURUMの道程の先に実際に目の前に現れたAURORA。文字通りHOLLOWGRAM 10th Anniversary live「AURORA」は、この先の彼等の行き先を明示するライブとなった事は間違いないだろう。歩みが早い昨今において、HOLLOWGRAMならではの歩幅で

進む道に「AURORA」が見えた。

 

 

 

 

 

TEXT:Alan smith

PIX:マツモトユウ

 

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<HOLLOWGRAM 10th Anniversary live “AURORA ”@渋谷ReXセットリスト>

 

SE

01.more than just love

02.ideologue

03.Rufus

SMC

04.adolescent

05.Colors of human mind

06.Albus

07.Butterfly in her dreams

08.Don’t cry for the knell

09.History

SE

10.Paint in water color

SE

11.Peach moon

SMC

12.Blind Watchmaker

13.パラドクス

14.Stand the devil’s like

15.Sentimental issues

MC

16.Flood of love

17.DID

18.With you

 

【ENCORE】

En-01.ラブレターレイン

En-02.Pleasance Liddell

MC

En-03.mistletoe

 

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【HOLLOWGRAM 夢時Birthday LIVE “devil’s mellow hand 3rd”】

 

■2/4(日)東京/LIVE labo YOYOGI

Open 16:30 / Start 17:00

出演:HOLLOWGRAM / 夢時

Ticket 前売り¥5,000 (drink別)

イープラス https://eplus.jp/sf/detail/4028190001-P0030001

問)LIVE labo YOYOGI https://yoyogi-labo.com/

 

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2024年01月26日 (金)

【ライヴレポート】<Eins:Vier PRESENTS KATHARSIS 2023>2023年12月22日(金)、23日(土)赤羽ReNY alpha◆

REPORT - 12:00:58

 志を貫徹することによって、やっと心願が成就したということになろうか。本来であれば2020年に開催されるはずだったEins:Vier主宰のイベントが、ここに来てようやく実現したことをまずはここにご報告したい。[Eins:Vier PRESENTS KATHARSIS 2023]と題され、昨年12月22(金)と23(土)に赤羽ReNY alphaにて行われたこの場では、Eins:Vierを含む計5バンドがそれぞれのアーティストらしい聴かせ方と見せ方をもって、さまざまなタイプのカタルシスを生み出していくことになったのだった。(注:カタルシス=演劇・文学・音楽などの鑑賞により、受け手側の心中に鬱積している情緒が解放されたり、浄化されることを指す言葉。アリストテレスが『詩学』で解いた)

 

 かくして、第1夜の幕開けを飾ったのは2023年6月に1stアルバム『HELIOS』を発表し、その存在を広く知らしめることになったH.U.G。

 

 

 

 コンポーザーとしても優れた才を持つギタリスト・Karyu(ex.D’ESPAIRSRAY~Angelo)が、多彩な表現力を持つヴォーカリスト・ryo (ex. GULLET~ex.9GOATS BLACK OUT~HOLLOWGRAM)と、BUCK-TICKなども手掛ける敏腕マニピュレーター・横山和俊(YokodieS)のふたりを迎えて起ち上げたこのバンドは、昨年アルバムを出した後に初の全国ツアーも経験しており、言わば今がちょうどライヴバンドとして伸び盛りな時期に突入しているところでもある。

 

 

 

 

 

 

 アルバムの表題曲「HELIOS」からスタートした今宵のステージでは、Karyuとは別バンドでも一緒に活動してきたドラマー・TAKEO(PIERROT/Angelo)と、昨今さまざまな現場でも活躍する百戦錬磨のベーシスト・NAOKI(FANTASISTA/ex.Kagrra,)が脇を固める中、途中にはメンバー紹介などもまじえながら、初見のオーディエンスに対してもわかりやすいパフォーマンスを展開してくれていた印象が強い。

 

 

 

「実は、Eins:Vierが2018年に復活されて以降のアルバムや作品のデザインを、全部ではないですけど僕がさせてもらってます。2020年の時は違うバンドでこのイベントに参加を予定していて、今回はH.U.Gでの参加になりましたが、この場に一緒に出ることが出来てとっても嬉しいです!Eins:Vierさん、ありがとうございます!!」(ryo)

 

 リリース前の新曲にして既に完成度の高い洗練された雰囲気を放っていた「ロゼ」や、キャッチーなサビが映えた「HEART」、スケール感を漂わせた「SEEDS」と、限られた中でもやりきったライヴを提示してくれたH.U.Gは、今春に3月30日(土) の赤羽ReNY alpha公演まで続く[H.U.G TOUR 2024 -VERSE-]を控えているとのこと。スタートダッシュのフェーズを経て、さらに進み行くH.U.Gの今後にご注目あれ。

 

 

 習字、復活。いきなり何の話?と思われる方もいるであろうが、この日の2番手として登場したのはメリーで、メリーのライヴといえばヴォーカリスト・ガラがお立ち台がわりの学習机を使いながら、MCの代わりに即興習字のかたちで観衆に意思伝達する、というスタイルがかつてはひとつの定番だったのである。

 

 

 メリーは良い意味でアングラ志向、アマノジャク性質が強いバンドで、たとえば最新シングル『ユーモア』については90年代に一世を風靡した短冊型紙パッケージ8cmCD形態で敢えてのリリースをした、と音楽メディアなどで話題になったことが記憶に新しい。また、昨秋から始まって2月10日まで続く予定の[メリー 2023-2024 CONCEPT TOUR 「10」]に関しては、全国10ヵ所で毎公演ごとに異なるコンセプトのライヴを展開しているとのことで、ある意味この夜のステージでも彼らはコンセプチュアルに懐古的アプローチをみせてくれた、ということになるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

「たいだんで しゅうじみたい いわれたから」「アインスは ぜったいなので」「すみはいたら よしつぐさんに しばかれる」

 

 ちなみに、この“たいだん”とは今回のイベントに向けて企画された、各バンドのフロントマンを集めた対談のことを指す。そして、Yoshitsuguにシバかれると書きながらもガラは「不均衡キネマ」の前に今し方まで使っていた墨汁を一気飲みし、それを思い切りダラーッと吐いてみせることに。その瞬間、客席フロアからは「ホントに吐いちゃった!!」という驚きの色を含んだ歓声と悲鳴が湧きあがったが、そんなことはおかまいなしでガラが歌い出し、楽器隊は楽器隊で通常運行のまま演奏をしてみせる、というその姿はやはり相変わらず最高にクールでいてホットだなと感じた次第である。

 

 なお、ツアーファイナルとなる2月10日(土)の大阪club vijon公演は“メガネ限定GIG”というコンセプトになるそうなので、みなさまぜひともご準備のほどを。

 

 

 そして、こうした記念すべき[Eins:Vier PRESENTS KATHARSIS 2023]のDAY 1を、主宰者およびH.U.Gやメリーの先輩格として締めくくってくれたのは、もちろんEins:Vierの面々にほかならない。

 

 時を経てもまるで色あせることのない名曲「Dear Song」から始まり、そこはかとない高揚感の漂う曲調にあわせて観客たちがサビで手を挙げた「Not saved yet」と続いて、まずはHirofumiが以下のように挨拶の言葉を述べてみせる。

 

 

「ようこそ、[Eins:Vier PRESENTS KATHARSIS 2023]へ!来てくれて本当にどうもありがとう。いやー、H.U.Gもメリーもめっちゃノリノリで激しかったし、ほんまにえぇ感じやったね。そして、彼らのライヴを観てて思い出したわ。KATHARSISって、随分前に俺らが地元の大阪で主宰してやってたイベントなんですけれども、当時は5バンドくらい出てたんかな。時代的にも今以上に黒塗りの人たちがいっぱい出てて、みんなとても激しくて、凄いノリノリな中で最後に俺らがスーンと出て行って(笑)、遅いテンポの曲をなんとか踏ん張ってやってた、という感じでした。今日もなんとか踏ん張って最後までやるんで(笑)、楽しんでいってください。全力でいきますんで!!」(Hirofumi)

 

 

 

 

 確かに、Eins:Vierには爆速チューンのようなものは昔も今もない。デスボイスが入る系統の曲なども、さすがに彼らがやるのは想像しがたいところがある。だがしかし、Eins:VierにはEins:Vierにしか生み出せない世界が当然あり、その中にはEins:Vierならではの熱さを持った曲もあるのだ。そのひとつが、このMCの次に演奏されたアッパーチューン「Notice」。Yoshitsuguの紡ぎ出すエフェクティヴなギターフレーズに、Lunaの躍動するベースフレーズがからみ、サポートドラマー・岡本唯史の叩き出す律動を土台にして、Hirofumiがありったけの気持ちを込めて歌いあげていくさまは実にエモい。

 

 

 

 

 聴衆がリズムとシンクロしながらジャンプした「Both we and audience」から、濃密でカオスな空気が漂った「L.E.S.S.O.N」、そこから一転しての爽快感さえ感じる「AFTER」への流れも心地よいギャップがあり、結局どのようなタイプの楽曲であっても説得力を持たせながら聴かせることが出来るEins:Vierは、つくづく唯一無二の個性を持ったバンドだ、とこのライヴを通して我々は再確認することになった。その事実を後輩バンドたちにこの場で示せたのもまた、意義深いことだったに違いない。

 

 

「因縁の[Eins:Vier PRESENTS KATHARSIS 2023]というか、2020年の時は結局コロナで出来んかったからね。でも、遂にこうして実現しました。今日はH.U.Gさん、メリーさんに快く出演してただき、ありがとうございます」(Luna)

 

「最後に、今日出てくれたヴォーカリストふたりが僕たちの曲をセッションしてくれるということで、H.U.Gのryoとメリーのガラを呼びたいと思います」(Hirofumi)

 

「そして、もうひとり。今回のイベントに向けたインタビューで、ライターの人から「メリーにはめちゃめちゃEins:Vierのことが好きなメンバーがいるから、くれぐれも優しくしてあげてくださいね」って言われてんけど、俺いつでもむちゃくちゃ優しいっちゅうねん(笑)。では、その子も呼びましょう。メリー・テツ!」(Luna)

 

 

 

 

 

 

 

 この世代を超えてのアンコールセッションでは、Eins:Vierのライヴでもアンコールで演奏されることが多い「In your dream」を、レアなトリプルヴォーカルとメリー・テツのベース、というまたとない組み合わせで聴くことが出来た。そこにはリスペクトする側とされる側という立場の差をも超えた、深い音楽への愛がふんだんに織り込まれていたと確信する。ワンマンライヴとは一味違う、イベントならではの妙味がそこにはあった。

 

 

            ◇            ◇

 

 

 明けての第2夜。タイトル自体は前夜と同じ[Eins:Vier PRESENTS KATHARSIS 2023]であったものの、共演バンドがValentine D.C.とGargoyleの並びであったことを思うと、この日は実質“After ZERO祭り”だったと言えるのではなかろうか。

 

 

 念のために少し解説しておくと、After ZEROとは1989年に設立されたインディーズレーベル。その母体は今はなき大阪のライヴハウス・BAHAMAであり、Gargoyleが第1弾アーティストとしてアナログシングル『蠢[Ugomeki]』をリリースして以降、1990年にはEins:VierがサブレーベルのNeuroticから『Chaos Mode』を発表したり、1994年にはValentine D.Cも8cmCD『Deluxe Chocolate』を出したりもしていた。

 

 また、1991年に発売されたコンピレーションアルバム『Zeroism ・西方見聞録』には3バンドが揃い踏みすることにもなり、彼らは東京のシーンとは一線を画す関西のハイエナジーなムーヴメントを象徴するバンドたちとして、異彩を放っていたと言える。

 

 あれから30年以上の月日が経った今、もはやAfter ZEROもレーベルとしては現存していないものの、それでもここに3バンドが勢ぞろいしたことの意味は大きい。

 

 そんなAfter ZEROレーベルの中で言えば三男的なValentine D.Cは、そのポジションもあってか今夜のトッパーとして登壇。曲や詞に対してのノスタルジーは感じるとしても、あくまで聴こえてくるのは今まさに眼の前で演奏している彼らの放つ音であって、彼らは確かにバンドとしての力強い息吹をこのステージ上から場内へと届けてくれていた。

 

 

 

 彼らは1989年に始動し、その後インディーズシーンからメジャーへとフィールドを移すも、1999年に一度は解散。幾度かの限定復活を経つつ、2007年にはヴォーカリスト・Ken-ichiとベーシスト・JunのふたりでValentine D.Cとしての活動を再開したという経緯があるが、なんと今回のライヴについては実質的な“After ZERO祭り”であったことと、2024年に35周年を控えていることもあって、オリジナルメンバーとなるギタリスト・Naoyaとドラマー・Takeshiも参戦していたところが特筆すべき点だった。

 

 

 

 

「最初はこのイベント、2020年4月の予定だったんですよ。そこから3年が経っちゃっけど、でも良かった。Eins:Vierが「もういいや」となってたら、実現出来てなかったと思うんで。意地でもやるっていう姿勢で呼んでくれたんで、ほんとにありがたいなと思ってます。そして、こんな機会ってあんまりないからさ。Gargoyleも凄いし、Eins:Vierはもちろん素晴らしいし、Valentine D.Cだって凄いじゃないですか(笑)。君たちはこの素晴らしい日の目撃者になっているわけなので、楽しんで帰ってよ!」(Ken-ichi)

 

 

 

 聴きながらつい感極まってしまいそうになった名曲「カーテンコール」をはじめとして、Valentine D.Cの楽曲はどれも人肌な温度感を持ったものばかり。打ち込みなどを使うことなく、ひたすらに実直に誠実に聴かせて惹きつけるそのカッコ良さは現代にあってこそ光るものでもある。2月10日(土)には 高田馬場CLUB PHASEにて今回と同体制で[the 35th VDC -Show must GO ON] が開催されるとのことなので、往時の魅力に貫録といぶし銀の魅力までプラスされた今のValentine D.Cを、ぜひとも再び目撃されたし。

 

 

 

 凄絶なる怪演、ここに極まれり。このたび2日間にわたって盛大に繰り広げられた[Eins:Vier PRESENTS KATHARSIS 2023]にあって、最も人並み外れた立ち居振る舞いを舞台上にて見せつけたのは、誰がなんと言おうともGargoyleだと断言したい。

 

 1987年に始動して以来、映画『魔界転生』の世界を地で行くような“人ならざるもの”に限りなく近い存在感を持つKIBAがフロントに立ち、ドラマティックでいて実は生々しさも持った歌詞と、まがまがしいほどのヘヴィなメタル系音像を呈してきたGargoyleは、日本の音楽シーンの中のどこにも属さない、良い意味で奇っ怪なアーティストとしてそろそろ40年近く走り続けてきたことになるかと思われる。

 

 

 

 ただし、近年はKIBAがひとりでGargoyleの看板を掲げているとのことで、普段はサポートメンバーを従えてのライヴ活動をしているそうだが、今回の実質的な“After ZERO祭り”はやはり特別だった。この場にはオリジナルメンバーでありKIBAにとっての盟友でもあるベーシスト・TOSHIがゲストとして登場し、アグレッシヴチューン「完全な毒を要求する」ではコール的マイクパフォーマンスにまでこぞって加勢してくれたのだ。

 

 

 

 

「今日はEins:VierとValentine D.Cに挟まれて、やって来ましたよ。どうもGargoyleです、よろしくお願いします!僕さっき楽屋で話してて「TOSHIくん、来年還暦なんやろ?」って言うたら「違う、再来年や!」と言ってたんですが(笑)、まぁ我々そのくらいのお歳ではありますよ?でも、元気いっぱいやらしてもらってまーす!」(KIBA)

 

 

 

 その言葉どおり、Gargoyleは曲調こそ多少の硬軟あれども、ラストの「DESTORY」まで一貫して熾烈で激烈なステージアクトを完遂。来る2月24日には1996年に初開催された伝説的メタルイベントの現代版[LIGHTNING&THUNDER 2024]が柏パルーザにて開催され、そこではPhantom Excaliver、SEX MACHINEGUNS、TOKYO YANKEESと共にGargoyleも名を連ねるそうだ。荒ぶる猛者どもは柏へいざ!

 

 

 

 

 さて。激辛カレーのあとに飲むラッシーのごとく、Gargoyleのあとに観るEins:Vierから、この夜いつもより癒やしの波動を多く感じたのは何も筆者だけではあるまい。それはどちらが良いとか好きとかの話はなく、激辛カレーは激辛カレーでヤミツキになるし、ラッシーはラッシーで何時飲んでも安心出来る味だよね、というような話に近いのかも。

 

 

 

 やわらかい気配をたたえたミッドチューン「Words for Mary」、ちょうどクリスマスを直前に控えていたタイミングにとても似合っていた冬の歌「街の灯」。この2曲を歌えたところではさまれたのは、Hirofumiのこの言葉。

 

 

「昨日は俺たちが直接知らない、俺たちより世代としては下の若いバンドたちと楽しい時間を過ごしました。今日は“仲間”と一緒にやりたいなと思って、みんなを呼んで集めたら“Zeroism(After ZEROレーベルのイベント”になっちゃいました(笑)。何十年経っても関係性が崩れない、この人たちしかいないっていう感覚でつながれているみんなも含めた仲間たちと、この時間を過ごせているのって最高やなと思います。今日もハッピーで良い時間を過ごしていきましょう」(Hirofumi) 

 

 

 

 エッジーなYoshitsuguのギターワークと、Lunaの歌うようなベースラインが響きあう中で、Hirofumiによるストーリーテラー的なヴォーカリゼイションが映えた「Not saved yet」などを歌ったあとに、さらにMCでHirofumiが続けた言葉。これも、今回のライヴにおいては我々にとって相当に“沁みる”ものとなった気がする。

 

 

 

 

「みんなが元気で音楽を続けているからこそ、こういうイベントが出来るんやんなっていうことをあらためて感じてます。やっぱり、俺たちもそれなりに歳なんでね。でも、これは来てくれたみんなにも言えることやで。元気で俺たちに会いに来てくれて、ほんまにありがとうございます」(Hirofumi)

 

 

 

 ここでは具体名こそ出なかったものの、思えば昨年この世を去ったX JAPANのHEATHも、元来は関西のシーンで彼らと同時代に活動していた御仁。Hirofumiのみならず、この日に出演していた全メンバーとも、物思うところは多々あったことだろう。誰もどうしようも出来ないことであり、抗いようのないことだけに、彼らの心中は察するにあまりある。だからというのもあるのだろうか。本編最後に聴けた「In your dream」には、ただならぬ輝きと願いがこもっていたように感じた次第だ。

 

 

 

「絆を感じる盛り上がりですね。凄く“仲間”を感じます。Valentine D.Cさん、Gargoyleさん、ありがとうございました。今日は楽屋裏でも、みんなとめっちゃ盛り上がってるからね(笑)。楽しい1日でした。遠くない未来なのか、遠い未来なのかもしれんけど、またみんなと集まって、素敵なライヴが出来たら良いなと思ってます。ほんまにいつも支えてくれてありがとう。感謝してます!!」(Luna)

 

 

 

 DAY2のアンコールで、こう発言したのはLunaだが。KIBA、Ken-ichiが参加してHirofumiと共に「L.E.S.S.O.N」を歌った“Zeroismセッション”は場内を巻き込みながらのハイボルテージなテンションをマークし、結果的にダブルアンコールにまで発展。

 

「今日は仲間たちとの楽しい集いということで、最後は今回やってなかったこの曲をやろうと思います」(Hirofumi)

 

 

 

 

 

 [Eins:Vier PRESENTS KATHARSIS 2023]の主宰者として、彼らが単独で奏でだしたのは1990年にAfter ZEROのサブレーベル・Neuroticからリリースされた1stミニアルバム『Chaos Mode』の最後を飾っていた「I feel that she will come」。詞の中には〈いつ会えるとも知れぬあなたを待ち続ける〉という1節があり、それは解釈の仕方によっては未来を希求するものとして聴くことが出来たはず。

 

 志を貫徹しながら、やっと叶えた願いの次は何を夢見ようか。まずは何時の日かやってくるであろう、あらたなカタルシスの訪れを少し気長に待ち続けることとしよう。

 

 

 

TEXT:Yuki Sugie

PIX:Reiko Arakawa (zoisite)

 

 

 

Eins:Vier Official HP(https://eins-vier.wixsite.com/eins-vier)

Gargoyle Official HP(https://firstcell.net/gargoyle/)

Valentine D.C. Official HP(http://www.valentine-dc.net)

メリー Official HP(http://merryweb.jp)

H.U.G Official HP(https://hug.bitfan.id)


2024年01月24日 (水)

【ライヴレポート】<マガツノート 解放区 冬の陣>2023年12月17日(日)大阪COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール◆

REPORT - 12:00:13

<マガツノート 解放区 冬の陣>が20231217()に大阪COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで開催された。

 

「マガツノート」は20223月より始動しているプロジェクトで、ボイスドラマや出演声優によるオリジナル楽曲、ヴィジュアル系ロックバンドをはじめとするアーティストとコラボレーションしたライヴイベントなど独自の活動でその影響力を強めている。20223月に東京Zepp Diver Cityでイベントを始動以降、各地で定期継続開催。出演する豪華声優陣とアーティストが楽曲でコラボしていくという画期的な試みが声優ファン、アーティストファンの双方から支持を得ている。<有害人類>と呼ばれるファンは多岐に渡るルーツからこのマガツノートの世界に足を踏み入れている。

 

この日も同様で声優陣からは峯田大夢、小笠原仁、馬場惇平、美藤大樹、岡本和浩、神尾晋一郎の6名が、アーティストサイドからはRAZORBabyKingdomluzAshmaze.MAMA.(O.A)という5アーティストが出演。また政宗役の峯田大夢がヴォーカルを務め、 HIROTO(アリス九號./Gt)、明希(シド/Ba)、影丸(-真天地開闢集団ジグザグ/Dr)が脇を固める解放区SP SESSION BANDもアナウンスされていて謎と期待が高まるイベントとなっていた。

 

本レポートでは豪華ラインナップによる異彩を放った夜の模様をお届けする。

 

 

 

MAMA.

 

 

オープニングアクトとして登場したのはMAMA.だ。

本来この日は大阪を拠点にするnuriéが登場することが公表されていたが、公演直前でメンバーの体調不良により出演キャンセル。nuriéのギタリスト兼コンポーザーでもある廣瀬彩人はマガツノートの楽曲制作にも関わっており実に無念の欠場となった。そんな事態を受け急遽マガツノートOFFICIAL Xで公募されたピンチヒッターにいくつかの勇敢なバンドが名乗りを挙げたが、結果としてnuriéの盟友でもあるMAMA.が急遽東京から参戦した。

 

 

 

 

 

 

 

 

代名詞的なダークミドル「BLACK DOG.」、疾走感溢れる「アシッド・ルーム」と畳みかけ、最後は絶望の淵を彷徨う「業」と限られた時間であったがMAMA.の無二の世界観を凝縮するステージを展開した。ダークネスを全面に押し出したメニューだったが、盟友の無念を晴らす気概に賛同するかの如く、早くから会場に詰め掛けた<有害人類>は総立ちに近い状態となった。オープニングアクトとは思えない精度の高いパフォーマンスで支配した最後、ヴォーカル命依の“210日に恵比寿リキッドルームでワンマンやるんで来て下さい!にも拍手喝采で、ネクストブレイカー候補筆頭らしくMAMA.は役割を全うし嵐のようにステージを去った。

 

 

 

<BabyKingdom>

 

 

 

オープニングは政宗役の峯田大夢、秀吉役の小笠原仁、官兵衛役の馬場惇平による朗読からスタート。

マガツノートのボイスドラマ「戦シーズン 壱st Battle」内で奪い損ねた季節を問わず咲き続ける桜=万年桜を再び奪いに行くという秀吉の意志を象徴するように小笠原が「咲かねぇなら、咲かせるんだよ。あの万年桜をな!」と吠えると先ほどまで桔梗色だったステージ背景の桜が黄金色に変わる。

峯田、小笠原、馬場の声優陣を交えた爽快感溢れる<秀吉・政宗連合軍>のテーマソング「GOLD」からコラボレーションステージを展開したのはBabyKingdom

声優陣とバンドのコラボレーションで会場が一つになるのはこのイベント独自の色だ。

持ち味である楽しくエンタメ性溢れるパフォーマンスで空気を一転、ポップに染め上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘドバン出来る人は頭振って!出来ない人はヘドバンしてる人を見て笑って下さい!様々な層の観客が集まるこのイベントを能動的に謳歌するバンドの前のめりな姿勢は会場中にポジティヴに蔓延し、事実ヴォーカルの咲吾を中心にこの環境が楽しくて仕方ないことが表情からも伝わってくる。

初見キラーのBabyKingdomは巧みな煽りとキャッチ―な楽曲で会場全体を巻き込んだ。

エキゾチックなギターフレーズが印象的な「アンクドファラオ」、たこ焼きを模した振付がキュートな「大阪ちんぷんかんぷんROCK」と底抜けの明るさと魅力あるメロディで客席を味方につけた。

MCでは再び僕らマガツノートの世界観に合ってるダークなバンドですか?大丈夫ですか?()”と自虐を見せるも、咲吾の親しみやすいキャラクターに観客は大きな拍手で応えた。ジャンプと手拍子を巻き起こした最新シングル「PENGUIN DIVE」まで実力者らしくあっという間に駆け抜けてみせた。

 

 

 

<luz>

 

 

 

再び舞台に闇を呼び戻したのはluz

暗がりから差し込むレーザーの中、ヘヴィな音像と美しい旋律の双璧が耳を掴む「FANATIC」で手始めに客席を揺らすと、続く「幽世」では性急感を助長するビートとゴシックなムードで浮世離れした世界観を紡いでいく。とにかくメロディが抜群で五感を刺激するアクトで会場を引っ張るluzだがマガツノートのイベントには初参加となる。コラボアーティストとして作品に楽曲提供して以来、イベント出演が切望されていたが、この日はそんな期待感に応えるように妖艶な空気で染め上げた。

 

 

 

元気~?大阪やろ!?もっと声出せや!とヴァンパイアのような麗しいヴィジュアルからはかなりギャップのある、人間らしさ溢れるMCは好印象で、普段は歌い手ですが、ヴィジュアル系声優交流が出来ることを嬉しく思います。と謙虚にこのイベントへの想いを述べた。

マガツノートのために書き下した曲ですと前置きされて披露されたのは<悪魔斡旋会社DD>のイメージソングである荘厳な「Doll in Doom」、畳みかけるように続いた「クイーンオブハート」では心地よいシャッフルビートと艶めかしい腰使いでも観客の視線を欲しいままにした。エロティックでもあり悲哀と情熱を帯びた歌唱と緩急をつけた表現は最後までブレることなく、最新アルバム『AMULET』のオープニングナンバーでもある「MONSTER’S CRY」に応える有害人類のヘドバンの風速を上げて華麗にステージを去った。

 

 

<バラエティコーナー>

 

中盤に差し掛かり行われたのはこのイベントならではのバラエティブロック。

まず最初に司会を務めたのは官兵衛役の馬場惇平とRAZORのギタリスト衍龍という意外な組み合わせ。

衍龍のおいでおいで~の呼び込みで登場したのは8人の出演者。神尾晋一郎と猟牙(RAZOR)、岡本和浩と諒(Ashmaze.)、美藤大樹と詩結(Ashmaze.)、そして峯田大夢とステージを終えたばかりのluzという組み合わせだ。

 

 

 

4チームに分かれた出演者は高級焼肉食事券を賭けてイントロドンクイズに挑戦。このクイズ、マガツノートの楽曲をイントロ早押しで当てるだけでなく、ステージ中央に置かれたスタンドマイクで見事歌い切ればボーナスポイントがもらえる仕組み。

賞品を賭けて盛り上がる演者と歌声を堪能したい有害人類で会場は大盛り上がり。全6問の最後、峯田大夢がNIGHTMAREの「ジャイアニズム天」を柩のコーラス部分まで再現する貴重なシーンも。結果、同点になった2チームの詩結とluzによるじゃんけん対決を家康らしい策略を以って詩結が制しチーム家康が優勝!宣言したものと違う手を出すなど日頃クールな詩結のお茶目な一面や最後はじゃんけんかい!など演者からのツッコミも相まって和気あいあいとした時間となった。

 

バラエティブロックの後半は秀吉役の小笠原仁とマガツノートでは個人的に秀吉推しと語る咲吾(BabyKingdom)が司会を執った。

後半は、会場参加型のその名も<有害人類大玉転がし>を開催。紅組ことプリティチームは織田信長役の神尾晋一郎、RAZORの猟牙と衍龍。対する白組こと厄介チームは政宗役の峯田大夢、官兵衛役の馬場惇平、もにょ(BabyKingdom)luz4人。

 

 

自チームの大玉を全てステージ上に早く揃えたチームが勝ちだが、思いがけぬ展開に。

勝利したチームには景品が贈られたが前半の高級焼肉食事券との落差に笑いが起こった。

声優陣とバンドマンの素の部分が垣間見えるどころではない充実のひと時はこのイベントでしか目撃できない光景だ。

 

 

Ashmaze.

 

 

 

再びマガツノートの世界へ誘ったのは家康役の美藤大樹、忠勝役の岡本和浩による朗読。

ARKを半ば追われる形で飛び出し<解放区>に移った<ホリーホック>は理不尽だらけの世界のなかで絆を深め、家康への忠誠を語る忠勝。忠勝の想いを受けて決意を強めた家康。

登場するなり一花咲かせようぜ大阪!!”と双真(Vo)の咆哮と共になだれ込んだのはそんな世界観を象徴する「カザハナ」。

各パートの手数の多さ、主張の強さとドラマティックな展開はまさにAshmaze.のソレであるが、抜群の個性をもつ双真のドライに絡みつく声質もバンドの象徴だ。

 

 

 

 

そこに中性的な美藤、太く逞しい岡本の歌唱が加わることで楽曲の表情が立体的に増幅していく様は日頃Ashmaze.を愛聴しているリスナーにとっても新鮮だったのではないか。

彼らの楽曲の秘めたる可能性を感じずにはいられないシーンだった。また、卓越した演奏力を武器とするバンドだが、一聴するとか細さを感じさせるにも関わらず、安定してタフな歌唱を繰り広げるヴォーカリスト双真の存在感も実に際立っていた。

 

美藤と岡本がステージを後にすると全4曲を披露したAshmaze.

 

 

 

 

 

 

 

全国ツアーの合間ということも影響してか、クールなイメージに反してアグレッシヴネスに傾倒したアクトを振りまいた。攻撃的レパートリーの中から新旧を織り交ぜ、「拝啓、嫌いなお前へ」、「INNOCENCE」と必殺曲の応酬で会場をあっという間に混沌の渦に巻き込んだAshmaze.。テクニックに強いアイデンティティも持つバンドがダイナミズムにシフトした時の威力は相当なもの。ホールでのライヴ経験が決して多いとは言えないが、そのスキルや経験値、シーンにおける立ち位置はすでにホールクラスであることを存分に証明し、僅か4曲とは思えない濃度でステージを下りた。

 

 

<解放区SP SESSION BAND

 

政宗役の峯田大夢をヴォーカルに据え、ギターにHIROTO(アリス九號.)、ベースは明希(シド)、ドラムを影丸(-真天地開闢集団ジグザグ)が務めるというまさしく夢のSESSION BAND。配信では放送されない会場限定のスペシャルなステージに登場に会場はひと際大きく沸き上がった。

 

 

 

 

1曲目は事前アナウンス通り、初期LUNA SEAの名曲「JESUS」カヴァー。

峯田の囁く“Jesus,don’t you love me?”が冴えわたり、本家リスペクトを存分に感じさせつつも、ビブラートとウィスパーの巧みな使い分けでこのバンドなりのテイストに昇華していく。演奏陣もLUNA SEAの熱心なフォロワーであることは周知だが、エモーショナルなプレイと抜群のスキルを誇りながらスティック捌きでも魅せる影丸、大きなアクションで観客と対峙する明希、衛星のようにステージを駆け巡る運動量がお馴染みのHIROTOとまさにどこを見ればいいのかわからないを体現。

 

 

 

 

続いたnuriéのギタリスト廣瀬彩人作曲の「破壊天秤」で峯田は悪魔的なグロウルを響かせたかと思えば、艶めかしい歌唱でこの豪華演奏陣を牽引し、バンドマン顔負けのステージングで魅了する。

有害人類!わかってるよな?お前らの首、ここで終わらせろ!の叫びに観客はヘドバン、拳、ペンライトと形にはまることなく自由に応える。ラストは政宗が所属する<ARK監査局>の陣営イメージソング「リブラ」をこの4ver.で披露。アルルカン暁(Vo)が作詞、奈緒(Gt)が作曲のメロディアスなこの曲、そりゃそうだろではあるのだが、とにかく演奏力が並外れている。

 

僅か3曲のためのSESSION BANDとは微塵も感じさせない高い熱量のプレイはそれぞれの所属バンドのエッセンスを帯びた、まさに無比のものであったし特筆すべきはその音の波を乗りこなす峯田の存在感ではなかったか。

またこの顔ぶれで集いたいといった旨の発言が飛び出したのも頷ける、一夜限りにしておくのはあまりにもったいない銀河系バンドのステージは会場を訪れた有害人類にとっても忘れ得ぬものとして記憶に刻まれたことは想像に難くない。

 

 

<RAZOR>

 

 

 

イベントもいよいよ終盤。

期待が高まる中、織田信長役の神尾晋一郎が舞台に上がる。

織田信長は本能寺で死したと語り継がれる史実への疑問を投げかける朗読は、己の存在を証明できるのは己のみであり、目で見たものだけが真実ではないのか。

「お前たちの存在を、証明しろ」と強いメッセージを投げかける。

序曲に据えられたのは<第六天魔王軍>のイメージソングである「存在証明」。

メタリックなRAZOR節と開放感あるサビメロの流麗さが印象的な1曲。猟牙のハイトーンと神尾の低音ヴォイスと妖しく響く高笑いでRAZORが内包する激しさにエレガントさが加わる化学反応が起こった。泰然たる振る舞いでありながらどこまでも華やかなステージに有害人類も即座に反応。

 

 

 

 

 

金髪ポニーテールでキメた猟牙のシルエットはどこか蛮骨な戦国武将を想起させ、黒と赤のロングガウンを纏い、立ち姿が美しい神尾との対比が映える。

激しくも疾走感のある「追憶の果てに眠れ」も猟牙と神尾の声が一定の距離を保ちながら溶け合い織りなす甘美なハーモニーが圧巻で、ここが座席ありのホールであることを忘れさせるような縦ノリを巻き起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

その勢いのまま雪崩れ込んだRAZORのステージは「GRAVITY EMOTION」からスタート。激しい音像の印象が強いRAZORだが、フックになるメロディラインと華やかさを共存しているのが強固な武器で、コーラスの美しいこの曲からマガツノートイベントの顔として会場を支配していく。予めプレイすることが予告されていた「嫌、嫌、嫌。」では猟牙が往年のロックスターばりにマイクスタンドを掲げ、すでに温まっている会場全体を更につぶさにアジテートしていく。激しいリフと美しいメロディの掛け合わせは2000年以降のヴィジュアル系ロックの王道とも言えるもので、ヴィジュアル系に触れていない層には名刺代わりになるものでありながら、1曲の中で様々な展開が仕掛けられているのが一筋縄ではいかないRAZORの魅力だ。

我々、バンド野郎たちと声優野郎たちとの混ざり合いで生まれたイベントが成長し、大阪で開催できて嬉しい。これからもイカれたバンドとイカれた声優でもっとデカいことやっていくからマガツノートに期待しててくれ!とマガツノート愛を高らかに宣言した。

 

 

 

ハイテンションで駆け抜けた「瓦礫」、打ち鳴らされたドラムからリズムインで待ってました!の歓声が上がった黄金のメロディが炸裂する名曲「千年ノ色彩」と繋いでラストに披露したのはストレートなメッセージが響く「nothing here」だった。いくら着飾ろうと拭えない人類が持つ愚かな内面と痛みを孕んだ激情型ロックンロールを問いかけるように叩きつけRAZORはステージを締めくくった。

 

 

<ALL CAST SESSION>

 

イベントラストは峯田、小笠原、馬場、美藤、岡本、神尾が再び登壇。

スクリーンに投影された映像で「戦シーズン 参rd Battle 電影乱世」(いくさシーズン サードバトル サイバーウォーズ)」の放送の決定というビッグサプライズが発表されると歓声と大きな拍手が巻き起こった。さらに新キャラクターである遠州のCVを住谷哲栄が務めることも併せてアナウンスされた。

また、加えてマガツノートとGEKIROCK CLOTHINGとのコラボグッズのロングスリーブ T シャツとウエストバッグの発売、さらにはホリーホックと Ashmaze.のコラボ楽曲「カザハナ」のサブスク配信スタートと有害人類にとって嬉しい発表が相次いだ。

6人は再登場したRAZORの獰猛な演奏を背に受けとどめとばかりに「DEVIL ASYLUM」を投下!

集結した有害人類はジャンルの分け隔てなく最後の瞬間まで音を満喫してみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャスト陣が横一線に並ぶ絵は壮観で、ヘヴィな楽曲ながらHAPPYな空気を充満させ大団円の中で長時間に渡ったイベントは幕を下ろした。

 

 

   ◆     ◆     ◆ 

 

 

メディアミックス。言葉の表層だけを捉えるとビジネス的な匂いが鼻につく。

そんな打算はクソ喰らえだよ。

果たしてそう思うだろうか?

この日展開されたステージやコラボレーションは、互いの利益の合致にのみによって成されたものでないことは目撃した者なら容易に理解できるものであった。

声優、バンドマン。

独立した点と点が、声と音が、重なり合うには互いにリスペクトがなくてはならない。

大阪冬の夜。ステージに上がった者たちは一点の曇りもなくその交わりを楽しんでいた。

猟牙の言葉を借りるならばイカれたバンドマンとイカれた声優によるカルチャーの交差点で鳴らされるイカしたセッション。

声と音。

ボイスドラマとバンド。

なんだどっちもかっこいいじゃねえか。一緒にやる?なんかすげーこと出来るんじゃねえの?

未来への可能性を広げるべく、マガツノートの歩みはまだまだ続いていく。

<マガツノート 解放区 冬の陣>はこの日の大阪公演に続いて、2024128()にパルテノン多摩で開催されることが発表されている。大阪とは異なるラインナップで描かれるその世界を是非存分に楽しんでほしい。

 

 

TEXT:山内秀一

 

 

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SET LIST

 

 

MAMA.

SE.KAGUYA

1.BLACK DOG.

2.アシッド・ルーム

3.業

 

 

<峯田大夢・小笠原仁・馬場惇平 × BabyKingdom

1.GOLD

 

 

BabyKingdom

1.アンクドファラオ

2.大阪ちんぷんかんぷんROCK

3.めっちゃアーメン

4.PENGUIN DIVE

 

 

luz

1.FANATIC

2.幽世

3.Doll in Doom

4.クイーンオブハート

5.MONSTER’S CRY

 

 

<美藤大樹×岡本和浩×Ashmaze.

  • カザハナ

 

Ashmaze.

1.カゲロウの錯覚

2.ニルヴァーナ

3.拝啓、嫌いなお前へ

4.INNOCENCE

 

 

<解放区SP SESSION BAND

1.JESUS(LUNA SEA Cover)

2.破壊天秤

3.リブラ

 

 

<神尾晋一郎×RAZOR

1.存在証明

2.追憶の果てに眠れ

 

 

RAZOR

1.GRAVITY EMOTION

2.嫌、嫌、嫌。

3.瓦礫

4.千年ノ色彩

5.nothing here

 

 

<峯田・小笠原・馬場・岡本・美藤・神尾>

1.DEVIL ASYLUM

 

 

 

<解放区冬の陣東京公演>

 

日程:2024128()

時間:開場16:00/開演17:00

会場:パルテノン多摩

出演:峯田大夢/堀江瞬/小笠原仁/馬場惇平/仲村宗悟/

岡本信彦/大河元気/美藤大樹/岡本和浩/沢城千春/

野島健児/小野将夢/堂島颯人/

[Hz]ZOMBIE/ザアザア/HAZUKI/摩天楼オペラ

GUESTdeadman

 

<チケット>

特級有害人類席 <上手エリア>:17,000

特級有害人類席 <中央エリア>:17,000

特級有害人類席 <下手エリア>:17,000

一般指定席:8,000

一般発売中

https://l-tike.com/magatsunote/

 

 

★「戦シーズン 参rd Battle 電影乱世」20241月放送開始!

放送時期

2024131()放送開始

媒体

ラジオ大阪・ミクチャ・YouTube

 

視聴方法

OBCラジオ大阪×ミクチャ番組「サクラバシ919(月~金 23:0025:00)内で最速放送

毎週水曜日 24時過ぎ~各話約15分 

生放送のため放送時間が変更になる恐れがございます。

水曜日メインパーソナリティー:神尾晋一郎(マガツノート・織田信長役)

 

視聴方法 :

(1) OBCラジオ大阪(AM1314kHzFM91.9MHz)

(2) radiko(スマートフォンでラジオを聞けるアプリ)

(3) ライブ配信&動画アプリ「ミクチャ」でのライブ配信

(4) 2430~よりマガツノート公式YouTubeチャンネルよりプレミア公開

放送後1週間、「ミクチャ」アプリ内で番組アーカイブを視聴可能

 

 

<マガツノートOFFICIAL HP>

https://magatsunote.com/