2024年02月10日 (土)
【ライヴレポート】<AKi LIVE 2024 「Birthday Bash!」>2024年2月3日(土)東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)◆AKi、豪華出演者とともに祝った、誕生日ライブ「Birthday Bash!」を完遂!
REPORT - 18:00:17ロックバンド・シドの明希(Ba.)によるソロプロジェクト“AKi”が、自身の誕生日である2月3日(土)東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)にて、<AKi LIVE 2024 「Birthday Bash!」>を開催した。
HAZUKI、LM.Cと豪華ゲストバンドを迎えて行ったこの日のライブ。AKiもいつもとは異なる、特別編成によるバンドを従えて登場。
一夜限りのスペシャルなステージで、Zepp Shinjuku(TOKYO)を熱くした。
開演時間となり、トッパーで登場したのはHAZUKI。フロアを埋めるオーディエンスを凝視しながらゆっくりとステージに登場すると、「すげぇ集まったな!」とひと言告げ、「Ω」でライブをスタート。ど頭からフルテンションかつ攻撃的なHAZUKIのステージに応えて、フロアの熱も急上昇。
「みんなの声を聞かせてもらおうか?」と扇動し、オーディエンスの熱い掛け声で始まった「HEROIN(E)」はヘヴィなビートにヘドバンが波打ち、ファンの合唱が起きた「七夕乃雷 -Shichiseki no rai-」は全員が手を振り合わせて、会場が一体感に包まれる。
MCでは「自慢したいくらい楽しくやってます!」と語るソロプロジェクトについて話し、「AKiさんとソロ同士の対バンって初めてじゃないかな? めちゃくちゃ燃えております」と意気込みを語ったHAZUKI。
「CALIGULA」、「霊蕾-laylay-」、「ROMANCE」とバラエティ豊かな楽曲が続いた中盤戦。激しく艶っぽくエモーショナルにと、様々な表情を見せる変幻自在の歌声で魅了すると、「あとは暴れるだけ。頭振る準備は出来てますか?」と「C.O.M.A.」を投下し、ヘドバンや手拍子を合わせるオーディエンスでフロアが沸く。
さらに、「やっぱイベントだからさ、スペシャルなもの見たいよね?」と告げるHAZUKIの呼び込みで、AKiがステージに登場。
AKiがベースで参加し、オーディエンスの手拍子とコールで始まった曲は「AM I A LØSER?」。
顔を向け合い歌とベースで会話するような姿に、仲良しぶりが見えたHAZUKIとAKi。
楽しそうにステージを駆け回り、一人ひとりのメンバーと笑顔を交わしてプレイするAKiにバンドの熱量が上がる。
ラストは「みなさんが暴れるために存在する曲です!」と始まった「BABY, I HATE U.」の性急なビートとラウドなサウンドでフロアを掻き回すと、「まだまだ新人ですけど、これからもカッケェ曲作ってくんで、よろしくお願いします!」と挨拶して「DRACULA」を披露。
HAZUKIがギターをかき鳴らして真っ直ぐな歌を届けるとフロアから歌声が起き、温かい雰囲気でライブの幕を閉じた。
転換中はMCの団長(NoGoD)が登場し、AKiとHAZUKIを招いてトーク。
「ただカッコいいだけじゃない、底知れない音楽をやっているHAZUKIを呼びたかった」と、AKiがHAZUKIを呼んだ理由を明かすと、嬉しそうな笑顔を見せてAKiの肩を抱くHAZUKI。こんなシーンが見られるのも、このイベントの楽しみのひとつ。
続いての登場はLM.C。SEと拍手に迎えられて楽器隊がステージに登場すると、SEにAiji(Gt.)がギターを重ね、maya(Vo.)が「In Future, New Sensation.」の語りを乗せながら登場。
<誕生日 さぁ始めよう>と歌詞を変えて歌ったイントロダクション的な曲から挨拶を挟み、「誕生日!」「おめでとう!!」のコール&レスポンスを煽って「Chameleon Dance」で本格的にライブがスタートすると、ダンサブルなビートにオーディエンスが自然と体を揺らす。
軽やかにステップを踏んでアグレッシブなパフォーマンスを見せるmayaのリードに会場中がジャンプを合わせると、ハッピーな空気が会場を包んだ。
圧倒的存在感を放つmayaのヴォーカル、切れ味鋭いAijiのギター。「No Emotion」、「Virtual Quest」と続き、強烈な個性がぶつかり合って生まれるLM.Cの世界観にオーディエンスが酔いしれてると、アッパーな「@FUNNY PHANTOM@」で再び会場中を踊らせて、Aijiのギターソロで魅せて、フロアの熱を上げる。
「すげぇ熱い! すげぇ楽しい!」とmayaが興奮気味に告げたMCでは、「主役にアゲて渡すだけ。でも、まだ全然渡せない!」と話し、「信じられない空気を作るから。それが一番の誕生日プレゼントだと思うんで」と宣言。
続いて、「じゃあ、主役呼んじゃおうかな。本日の主役は誰?」とオーディエンスに問いかけ、「AKi~~~!」の叫び声でAKiが登場。
「ヴィジュアル系っぽい曲やるんで、よろしく!」と始まったセッション曲は「OH MY JULIET.」。
ツインベースで重量感の増したサウンドに、mayaの伸びやかな歌声。
AKiはAijiと顔を見合わせて息の合ったプレイで魅せると、楽器隊と共にコーラスを合わせて、楽しそうに笑顔を浮かべる。
サビ部分ではオーディエンスのシンガロングが起きて会場がひとつになると、「誕生日!」「おめでとう!!」のコール&レスポンスに送られてAKiがステージを去る。
「大切な日にやりたいなと思ってる曲です」と、たっぷり気持ちを込めた歌と演奏で聴かせた「DREAMscape」から「Elephant in the Room」と続いた後半戦は、「The BUDDHA」に会場中が歌声を合わせて、ラストは「どんなミュージシャンにも通ずる志!」とmayaが叫び、「PUNKY ❤ HEART」を投下。
沸き立つフロアを見据えて、mayaとAijiが並んでセンターに立つ堂々とした姿に「俺たちがLM.Cだ!」という誇りを感じた。
大トリで登場したのは、この日の主役であるAKi。SEが鳴り、この日限りの特別編成によるバンドメンバーである、ドラムのShinya(DIR EN GREY)、ギターのHIROTO(アリス九號.)と咲人(NIGHTMARE)がステージに登場すると、フロアから大きな歓声が上がる。
メンバーに続いて登場したAKiにさらに大きな歓声が上がると、手を挙げてオーディエンスに応えるAKi。
センターに立ってベースを背負うとミラーボールの眩い光が会場を彩り、咲人のギターイントロで1曲目「共犯」でライブがスタートする。
全体のグルーヴはもちろん、ちょっとしたフレーズまで。ライブで聴き慣れた曲ながら、バンドメンバーが違うとこんなに印象が違って、こんなに新鮮に聴こえるんだと感心しながら歌と演奏に見惚れていると、続く「STORY」へ。
Shinyaの力強くも繊細でしなやかなドラムとAKiの正確かつ重厚なベースが生み出す強靭なビート、HIROTOのエネルギッシュなギターと咲人の熱くエッジィなギターのアンサンブル。
そして、このスペシャルなメンバーの演奏に引き立つ、AKiのパワフルな歌声。間奏部分ではAKiとギター2人がセンターに並び、テクニカルかつ息の合ったツインリードで魅了してと、見どころ満載の特別編成によるAKiバンドの歌と演奏にフロアが大きな盛り上がりを見せる。
MCでは、「最高のプレゼントをHAZUKIとLM.Cからもらっちゃいました。そして、最高のプレゼントをこのフロアからももらいたいんだけど。
気持ち、持って来てる? 拳、持って来てる? 声も持って来てる?」と問いかけ、大きな歓声が上がるフロア。
「めちゃめちゃ幸せですよ! 全員同じ音楽を感じて、最高のライブを作りませんか?」と告げ、始まった曲は「FAIRY DUST」。
オーディエンスが手拍子を合わせて楽曲が始まると、心地よい音に心を委ねて気持ち良さそうに体を揺らすフロアに「飛べ、新宿!」とAKiが煽り、会場中がジャンプを合わせる。
ディープな世界観を描く「ジウ」でオーディエンスの心を引き込むと、「こんな幸せでいいんですかね?ってくらい幸せです。紛れもなく、今日が一番最高です!」と笑顔で感想を語るAKi。
HIROTOと咲人がアコギに持ち替えて披露した「SCREAM」、「Wait for You」としっかり聴かせる曲が続いた中盤戦。
続くMCではバンドメンバーにマイクを回すと、「横からアッキーの幸せオーラがビシバシ伝わってくるんですよ」(HIROTO)
「今年、一番楽しい」(Shinya)「めちゃくちゃ楽しい。誘ってくれて、めちゃくちゃ嬉しかったですよ」(咲人)とそれぞれが感想を述べる。
4人の激しいプレイがせめぎ合い、強烈な熱を生み出した「Salvation」で始まった後半戦。
パワフルな演奏にAKiのハイトーンが映える「OVERRUN」、会場中がタオル回しを合わせた「狂奏夏」と続き、強烈な熱気を放つフロアに「ありったけの気持ちとありったけの拳と声に感謝します!」と叫んだAKi。
残る力を振り絞るようなオーディエンスの大合唱で始まった本編ラストは「The Inside War」。
渾身の歌と演奏、パフォーマンスで魅せるAKiバンドに、熱い気持ちと拳と掛け声で応えるオーディエンス。
互いに全てを出し切って、最高潮の盛り上がりを見せる中、一夜限りのスペシャルなステージが幕を閉じた。
鳴り止まないアンコールに、再びステージに登場したAKi。
「これからスペシャルセッションをやるんですけど、僕のルーツの曲を一曲選ばせてもらいました。
僕が勇気と情熱をもらった、大好きなアーティストの曲を最高のメンバーと演ってみたいと思います」と説明し、まずはAKiバンドの3人を呼び込む。
続いて「スペシャルゲストを呼んでいいですか?」と、HAZUKI、LM.Cを呼び込む段取りだったが。
咲人の弾く「Happy Birthday」の伴奏にオーディエンスの大合唱が起き、サプライズでAKiのお誕生日祝いが始まる。
HAZUKIとLM.Cと団長がバースデーケーキと花束をステージに運び込むと、「花束、狂い咲いてますね! ありがとうございます!!」とAKiが照れくさそうに喜びを語る。
「お誕生日おめでとう!」と、みんなから改めてお祝いの言葉が送られると、いよいよスペシャルセッションが始まる。
「かかって来い!」とAKiがオーディエンスを煽り、AKiとAKiバンドにHAZUKI、LM.C、そして団長によるスペシャルセッションで披露された曲はAKiのルーツであり、この日出演した全ての人が多大な影響を受けているLUNA SEAの「TONIGHT」。
HAZUKI、maya、AKi、そして団長の4人がヴォーカルを取り、AKiバンド+Aijiという豪華メンバーの歌と演奏に、出演者もオーディエンスも大盛り上がり! 歌い終えて興奮さめやらぬ会場に、「もう一発行けるか!?」AKiが叫ぶと再び「TONIGHT」の演奏が始まり、全員がぐちゃぐちゃに入り交じるカオス状態の中、お祭り騒ぎでライブは終演。
出演者にとってもオーディエンスにとっても、忘れられないスペシャルな一夜となった。
終演後、ステージに一人残ると、「言うことないけど、一個だけ。夏、ツアーやります。よろしく!」と告げ、大歓声を浴びながら名残惜しそうにステージを去ったAKi。
6月より全国5ヵ所で開催されるツアーの詳細は、オフィシャルサイトをチェックして欲しい。
PHOTO:上原 俊、hy
TEXT:フジジュン
AKi LIVE 2024 「Birthday Bash!」
2024年2月3日(土) Zepp Shinjuku(TOKYO)
SET LIST
■HAZUKI
01. Ω
02. HEROIN(E)
03. 七夕乃雷 -Shichiseki no rai-
04. CALIGULA
05. 霊蕾-lay lay-
06. ROMANCE
07. C.O.M.A.
08. AM I A LØSER? w/ AKi
09. BABY, I HATE U.
10. DRACULA
■LM.C
01. In Future, New Sensation.
02. Chameleon Dance
03. No Emotion
04. Virtual Quest
05. @FUNNY PHANTOM@
06. OH MY JULIET. w/ AKi
07. DREAMscape
08. Elephant in the Room
09. The BUDDHA
10. PUNKY ♥ HEART
■AKi
01. 共犯
02. STORY
03. FAIRY DUST
04. ジウ
05. SCREAM
06. Wait for You
07. Salvation
08. OVERRUN
09. 狂奏夏
10. The Inside War
≪AKiライブ情報≫
AKi Tour 2024
2024年6月15日(土) 神奈川 / Thunder Snake ATSUGI
2024年7月6日(土) 愛知 / 名古屋ell. FITS ALL
2024年7月7日(日) 大阪 / OSAKA MUSE
2024年7月13日(土) 埼玉 / HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3
2024年7月27日(土) 東京 / 渋谷WWW
<バンドメンバー>
Guitar HIROTO(アリス九號.)
Guitar 加藤貴之
Drums 影丸(–真天地開闢集団–ジグザグ)
詳細は後日発表!
▼リリース情報
New Digital Single「Salvation」 Out Now! 品番 DCCA-1126
楽曲配信はコチラ https://aki.lnk.to/Salvation
AKi オフィシャルサイト http://www.dangercrue.com/AKi/
明希 / AKi オフィシャルX https://twitter.com/AKiSID_official
シド 明希 オフィシャルオンラインサロン「Resonants」 https://lounge.dmm.com/detail/3041/
シド オフィシャルサイト http://sid-web.info/
シド オフィシャルX https://twitter.com/sid_staf f
シド オフィシャルWeibo https://www.weibo.com/sidofficial
HAZUKIオフィシャルサイト https://hazuki-xanadu.jp/
LM.C オフィシャルサイト https://www.lovely-mocochang.com/
2024年02月07日 (水)
【ライヴレポート】<MAMA.presents. VISUAL NEW SPIRIT.>2024年1月30日(火)新宿BLAZE◆「VISUAL NEW SPIRIT.」という符号の下に集った6つの音楽が、それぞれの方法論でしのぎを削った総力戦。
REPORT - 21:00:38MAMA.presents. VISUAL NEW SPIRIT.が1月30日(火)に新宿BLAZEで開催された。
ダークな音楽性で高い支持を得ている気鋭の若手バンドMAMA.の主催ライヴには彼らをはじめ、CHAQLA.、ぶえ、NAZARE、nurié、HOWLが出演した。
ライヴシーンで精力的に活動するこの6組はニューエイジを代表する存在であり、このタイミングで彼らが同時に新宿BLAZEに立つことには少なくない意味と確かな意義があった。
今年7月に閉館することが発表されている同会場は、キャパシティ800人を誇り、新宿歌舞伎町の中心という好立地ということもあり数々の若手バンドマンにとって憧れの場所かつ、端的に言うと挑むべき目標の一つでもあった。
以前インタビューで、この新世代対バンについてMAMA.のフロントマン命依は“誰でも立てる場所では意味がない”という旨の発言をしていたが、その辺りからも、この公演は新宿BLAZEを制圧することよりも、挑戦することに意味を見出すものであることが伺えた。
結論から言おう。この日会場のフロアは半分も埋まらなかった。この事実は受け止めなければならない。だが、その空洞は目撃し損ねた者へのヘイトではなく、むしろ希望を感じさせるものとなったようにも思う。それは何故か?
「VISUAL NEW SPIRIT.」という符号の下に集った6つの音楽が、それぞれの方法論で、しのぎを削った総力戦の模様をお伝えしたい。
◆ ◆ ◆
オープニングを務めたのはぶえ。
楽曲の大半をヘヴィなリフとシャウトが占めるのが特徴であるが、サウンドだけでなくその身体がへし折れんばかりに大きなアクションでアジテーションしていくスタイルはこの大会場でも変わらず。
ぶえの楽曲には変化球が存在しない。いや、すべてが変化球でもある。良く言えば真っすぐ、悪く言えば一辺倒とも言えなくない。だが、その楽曲群に4人のメンバーが怒りや苛立ち、時に焦りに似たリアルな感情を乗せることで響きが変わる稀有なバンドだ。この日も観客1人1人と対峙し、“嫌なら帰れ!”と唾を吐きつける。その独善的な振る舞いは、好みが分かれるもので、賛否が生まれることも必至である。積極的に嫌われようとする姿勢は、日常の中に生じる“嫌われたくない”、“誰かに好かれたい”そういった感情の裏返しのようにも見える。荒々しい暴君のようなステージの一端に臆病な内面を隠し切れない人間臭さが覗く、そこにこそぶえが発する強烈なエモーショナルが存在する。「嘔吐、応答せよ」まで、毒にも薬もならない甘言に中指を立てるように全5曲を叩きつけた。終盤、伐(Vo)は自らの死に場所を探すように、フラフラと客席後方まで乱入し、果てるように倒れた。己を否定し、必要悪になることで、存在理由を確かめる。これがぶえの鳴らした魂のロックだ。
ぶえは3月10日に解散する。
◆ ◆ ◆
2番手に登場したのはNAZARE。
メタリックな音像とそのクールな出で立ちで登場から会場の空気を一変させ緊張感を漂わせた。硬派なステージやアティチュードは、迎合とは真逆のものであるが会場全体を巻き込んでいくのは、確かな演奏力によるもの。澪(Vo)がホイッスル、グロウルを織り交ぜながらここ一番でクリアなハイトーンを響かせ魅了すると、パワーコーラスに呼応するようにフロアからは拳が上がる。
この日もNAZAREの強力な武器である轟音は絶品で、とりわけ最新曲の「幻想に咲かれては」では感情を露わにしたかと思えば、冷静さも見せ、あくまで一音一音の説得力で緩急をつけフロアを自在に操って見せた。ファストなのは楽曲だけでなく、展開も同じで、公演前のインタビューで澪が発言していた“目と耳で感じればそれでいい”の通りに特段MCを挟むこともせず、持ち時間いっぱい全6曲を披露した。
ラストの「Break it down」まで言葉ではなく、そのステージだけで完結させるスタイルはNAZAREの硬派さが際立つ一方で、その潔さに痛快な清々しさをも感じさせるものではなかっただろうか。2023年5月にツアーファイナルを行った思い入れのある会場に十分な爪痕を残し、ステージを後にした。
◆ ◆ ◆
ダークサイドに会場が塗りつぶされたところで登場したのはHOWL。
1曲目は最新アルバム『PATHW●RD』より「デルフィニウム」。音楽的引き出しの多彩さでここまでの空気をグラデーションさせる4人は比較的攻撃的なナンバーを並べ会場を味方につけた。キラキラと言うには暗い、ダークと呼ぶにはポップ…彼ら特有の立ち位置故に対バンライヴは常に戦い方の選択が要求されるが、この日このライヴを選んだオーディエンスとのフィーリングは実に良好。HOWLの実力が浸透してきたことも一因であるが、後にMAMA.の命依(Vo)が“HOWLとは音楽で分かり合えた”とMCで語ったように、意志の共鳴も大きな理由だ。
まさにそんなバンドカラーを象徴する「シャーデンフロイデ」は流麗なメロディと焦燥感を煽る曲展開が起爆剤となった。艶めかしさとフロントマンとしての骨太さを増した真宵(Vo)の姿はカリスマ性を感じさせるものになっていたうえに、楽器隊は音の主張だけでなく佇まいも大きな会場に映えるものへとブラッシュされている。フロアにウォール・オブ・デスを要求した「隷従エスコート」然り、バンドのシェイプが一段階高みに登っていることを感じさせる充実のステージだった。やはり今年も要注目の存在と言えるだろう。
◆ ◆ ◆
イベント後半戦の口火を切ったのは地元大阪を拠点とするnurié。
大規模全国ツアーを終えたばかりとあって、このライヴを楽しむことに注力していることを表すかのように、大角龍太朗はなんとIN FLAMESのTシャツを着用して登場。変則的なリズムで揺らす「RooM-6-」から“お前らそんなもんちゃうやろ!”と感情を発出する姿が印象的だった。続いた「I’m RAISE CLUB」のストレートなロック然り、大角を中心にバンドがリビルドされて引き立っているのが分かる。ツアーで培ったユーモラスな演劇風MCを導入に縦ノリを加速させた、お馴染みの「骨太もんちっちくん」といつになくリラックスしている空気の伝染で陽気な風を吹かせた。
彼らにとって決意のワンマンの場となった会場という気負いは皆無で、全国ツアーでの手応えを存分に感じさせると共に、nuriéにとって新機軸となるスタイルには早くも自信が見て取れた。音楽的な説得力があるからこそ、笑いを交えたMCワークにもブレがない。小気味よく小爆発を絶え間なく繰り返すライヴは心地よく、そのアンサンブルが心に着火する「瞳に映らない形と性質、それを「 」と呼んで」まで弛まぬ温度感で駆け抜けた。この曲のリリックでもある“感覚を取り戻す為に”を体現する姿はここからの未来を期待させるものであった。
◆ ◆ ◆
楽器隊の4人がジャムるようにセッションを始め、教祖のような出で立ちのANNIE A(Vo)を召喚してCHAQLA.のステージは幕を開けた。
オープニングナンバーは「BACK TO THE FUTURE」。リズムが複雑に交差し転調しながら疾走感を増して一瞬にして熱気を高めてしまったが、まさにヴィジュアル系とはそういう存在、非日常なのである。そんなことを再認識させながら、続いた「ミスキャスト」ではもはやコール&レスポンスのおさらいが不要なほどに楽曲が浸透していることを証明して見せた。
ミクスチャーを基調にしつつも、変拍子、転調に加え、楽しみ方にもありとあらゆる要素が詰め込まれたライヴは、誰もやらないことをやるという無形の信念に準ずるもので、まさにSPIRITを叩きつけるもの。ヴィジュアル系というジャンルに混在する様式美と自由度の要素で言うと、後者をチョイスするCHAQLA.は暴風雨のような破壊力を持った「PLAY BACK!!」まで独自の魅力を全4曲に込めた。
若さ故の粗さはあれど、逆算された答えに依存しない形態は真新しさを感じさせる。自身の信念や美学の追及をやめない姿勢、これがCHAQLA.のアートだ。
◆ ◆ ◆
ラストはこの企みの首謀者、MAMA.。
“命燃やせ!”と黒いジャージに身を包んだ命依(Vo)の咆哮が炸裂した1曲目は、最新曲の「MARIA」。この日もさることながら、目前に迫ってきた恵比寿リキッドルームワンマン対砲用のニューウェポンは、披露から間もないのにも関わらず早くもアンセム的な雰囲気を纏い一体感を生んだ。赤とピンクの照明が妖しげなトリップ感を助長した「アシッド・ルーム」の扇動力、代表曲的立ち位置の「BLACK DOG.」が醸すダークサイドと、いずれも何か一つの要素に傾倒することなく緻密に角度を変えながら闇を照射していくMAMA.の王道たるステージだ。
途中、“ヴィジュアル系をこれから始めるんだ!”という命依の発言もあったが、自分達の居場所を守るのではなく作る、その決意こそがこのイベントの動機であり命題である。旗上げは別に誰でも良かった。誰もやらないから俺たちがやってんだよ。そんな首謀者達の想いに賛同するように、この日一番の嬌声が巻き起こった爆発力が圧巻だった「Psycho」。徘徊するメンバーたちが不穏な「命日」とまさにベストオブMAMA.のメニューでこのイベントの持つ責任と対峙してみせた。
“俺、全部背負ってんだよ!”で雪崩れ込んだのはこれやっておかなきゃ帰れないでしょ!の「GREEN HEAD MEN」。モッシュピットが巻き起こる必殺技をぶちのめして長時間に渡るイベントは幕を下ろした…かに思えたが“まだレコーディングもしてないんだけど…”と前置きし、最後に新曲を披露した。
「RAIN」と名付けられた楽曲は、<ラップ>、<ギターソロ>、<これまでのMAMA.ではあり得ない>などといくつかの要素を持った、非常に新しい一面を覗かせるものだった。『ANIMISM』で到達したひとつの完成形から更なる刺激を欲した結果生まれたであろう、意外性のあるこの曲、実のところ開演直前までプレイするかどうかの協議が行われていた。その全貌は2月10日に迫った恵比寿リキッドルームワンマン「神殺し」で再び確認出来るのだろうか。抜群のセンスと意志を全面に押し出し、鳴りやまぬアンコールを背にMAMA.はイベントを締めくくった。
◆ ◆ ◆
踏み絵。
終演後ふとそんな言葉が浮かんだ。
身の丈よりもひと回り以上大きいキャパシティだからこそ何かに迎合することなく、今在るべき姿で立つことが最適解であることを確かめる。意思確認。
よそ行きでは意味がない。ブレることのない信念を強固にするためにこの場所が必要だったのかも知れない。
確かにフロアが満員になることはなかった。そのことについて命依は“わかってたよ、うるせえな”と吐き捨てたが、それでもこの夜には希望があった。
バンド同士が敬意を持ち友情を大切にしていることが理解された挑戦だったからこそ、オーディエンスもバンドもひとつになる共犯的関係が結ばれたのではないだろうか。
もちろんこれは定期的なユニットライヴでもなければ、契約書で縛り付けた密約もない。この6バンドが再び集まることは二度とないのかも知れない。事実ぶえは3月に解散する。
それでも思い出作りでもなければ、その辺にゴマンと転がっているような縄張り争いでもなかったことは目撃した者には明白だった。開催に向けてMAMA.のメンバーが“俺たちだけが得をしてもマジで意味がない。新しい世代の本物同士で闘うんだ。”としきりに語っていたことを思い出す。六者六様、自分たちの音楽に誇りと信念、プライドがあるからこそ解りあえる。外っツラなんかじゃない。新しい思想ではなく、変わらない信仰を持って道を切り拓くことこそが、VISUAL NEW SPIRIT.
MAMA. CHAQLA. ぶえ NAZARE nurié HOWL
再び巡りあえることを待つと共に、彼らがシーンの底力を証明することを期待したい。
TEXT:山内 秀一
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【SET LIST】
…………………………………………
<ぶえ>
- 毒殺、絞殺、撲殺、参回殺す
- 痴漢
- 君を小さくする魔法
- 4秒後、無駄死に
- 嘔吐、応答せよ
…………………………………………
<NAZARE>
- SAD[ist.]
- INSOMNIA
- IDEAL
- 幻想に咲かれては
- DELETE.
- Break it down
…………………………………………
<HOWL>
- デルフィニウム
- ANOTHER BIRTHDAY
- シャーデンフロイデ
- 隷従エスコート
- アンダーテイカー
…………………………………………
<nurié>
- RooM-6-
- I’m RAISE CLUB
- 骨太もんちっちくん
- akuma
- 瞳に映らない形と性質、それを「 」と呼んで
…………………………………………
<CHAQLA.>
- BACK TO THE FUTRE
- ミスキャスト
- リーインカーネーション
- PLAY BACK!!
…………………………………………
<MAMA.>
- MARIA
- アシッド・ルーム
- BLACK DOG.
- Psycho
- 命日
- GREEN HEAD MEN
- .RAIN
MAMA. 単独公演「神殺し」
日程:2024年2月10日(土)
会場:恵比寿LIQUIDROOM
時間:OPEN 17:15 / START 18:00
神チケ ¥10,000 / Aチケ ¥5,000 /当日 ¥1,000 (ドリンク代別)
《入場順 》
神チケ→神チケEX→Aチケ→一般→当日券
Aチケット発売中!
2024年02月05日 (月)
【ライヴレポート】<nurié New Single Release Oneman Tour「0.000℃」>2024年1月28日(日)渋谷チェルシーホテル
REPORT - 22:00:44「えっ? 結構並んでない!?」「入れるの開演ギリギリになるかもね」。そんな会話が聞こえてきた。昨年12月10日の仙台を皮切りに行われてきた全国8ヶ所での開催となった、nurié New Single Release Oneman Tour「0.000℃」は、当日券無料のワンマンツアー。ツアーファイナルとなった渋谷チェルシーホテルの会場へと下る階段には、当日券を求めて多くの人たちが列を成していた。会場を見渡すと、腕を組みながらどんなものだろうか? と見定めるような視線をした男性の一人客も点在していた。
大角龍太朗(Vo)
「瞳に映らない形と性質、それを「」を呼んで」から幕を開けたファイナルのステージ。メンバーは、12月に発売した最新シングル「冷凍室の凝固点は繋ぐ体温」のMVでも着用していた全身白をベースにした衣装に、手首や首などに赤い組紐を巻きつけた出立ちで登場。単発でのライブと違い、この日に至るまでの過程を感じさせる安定力と共に、ファイナルのステージにかけるメンバーの並々ならぬ情熱がフロアにほとばしる。「akuma」でオーディエンスを右へ左へと揺らし、「I’m RAISE CLUB」では早くもヴォーカル大角龍太朗の首筋に汗が光る。そして、「俺たちの未来のために歌いに来た」という言葉から「今宵、未来の為に歌おう」へ。オーディエンスがうさぎの耳のように掲げた両手が大きなハンドクラップを鳴らす「うさちゃんず」では、ここまで駆け抜けるように歌い上げていた大角がふっと笑顔を見せた。
ありったけの力でメンバーの名前を叫ぶフロアに向かっての最初のMCは、テーマパークでのアトラクションに乗る際の注意事項アナウンスのパロディに、まさかのミッキーマウス・マーチが流れるという関西出身バンドらしいユーモアも展開。ツアーだからこその、演奏とMCのギャップに思わず笑みがこぼれる。このとき、PA、照明、撮影など、ファイナルならではのスタッフが集結していることが伝えられたのだが、大角が「ライブレポートにはライブの瞬間が蘇ってくる魔法がある」といった話をしたときに、筆者は「今日のライブレポートのハードルが上がるからそれ以上は喋らないでくれ…」と思ったこともあえて記載しておく。
廣瀬彩人(G)
和んだ雰囲気に続く曲は、nuriéで最も“絶好調”な曲「骨太もんちっちくん」。この日は当日券が無料ということで、初めてnuriéのライブに足を運んだ人にもわかりやすいように、曲のフリも丁寧にレクチャーされ、腕組みをして観ていた男性客も、後方で観ていた外国人グループも、見よう見まねで振り付けを楽しみながら、どんどんnuriéのライブに魅きこまれていた。イントロが鳴っただけで「きゃー!」という喜びの歓声が上がる、ライブで聴くからこそ高揚感が高まる「ミルクティートリップ」へ続き、シティポップを思わせるビートに心地よく身体を委ねたくなる「阿呆やん。」では、ギターの廣瀬彩人の確かなギターが、ギタリストとしてのポテンシャルの高さを窺わせる。ツアーファイナルだからこそ、この曲は外せなかったであろう1stシングル「モノローグ」は、nuriéというバンドが始動したときから、楽曲においていかに一線を画しているかが伝わってくる。陶酔感を打ち破るかのように鮮烈な照明が激情を煽る「【ばいばい】」では、直前までの雰囲気を一転させるようにフロアも折り畳みで応える。「人として人で在るように」、「白を溢す。」とロックバンドとしての真髄を見せる演奏の熱量は、大角の剥き出しの言葉の歌詞と共に一人ひとりの心の温度を上げていく。
染谷悠太(Dr)
後半戦は、ドラムの染谷悠太のドラミングが炸裂する「RooM-6-」、「百鬼夜行」とヴィジュアル系だからこその怪しげな世界観と、理性を手放したくなる興奮に誘い込み、大角は「さぁ道を開けろ、新時代が始まる」と告げ、そして、不条理な世の中に反旗を翻すように「生き継ぎ」を叩きつける。ただ、彼らの楽曲はそんな世界でも奇跡的に出会えた大切な人との日常の小さな幸せを見失ってはいない。共に過ごすからこそ気づくことができる愛を慈しむバラード「あくび」、溢れ出す恋心を歌った「カンセツショウメイ」といった2曲のラブソングを丁寧に届けた。
「R.A.M.I」で再びエネルギーを高めた後のMCでは、大角の「俺たちのファンになってくれて本当にありがとう」の言葉から、「おまえがダメなときは俺たちがいつだってその手を引っ張ってやる。でも、俺たちがダメになりそうなときは俺たちを引っ叩いてでも、この手を引っ張ってくれよ。そうやって、俺はファンとnuriéと共に歩いていきたい。だからこそ、nuriéというバンドは舐められるわけにはいかない」と話し、最新シングル「冷凍室の凝固点は繋ぐ体温」に収められた楽曲「舐めんな」を披露。さらなる高みを目指して突き進むバンドに呼応するかのように、フロアも両手を掲げて楽曲に音源以上の力を宿らせていく。今日この日だからこそ生まれたバンドとオーディエンスの感情の上昇は、続く「愛を歌わせろ人生」に、愛と生のダイナミズムをみなぎらせ、「生きてて偉い」の魂の輝きへと注がれ、「透明に混ざる」でクライマックスを迎えた。「0.000℃」というタイトルを掲げて行ってきたツアーの最後を締めくくる曲は「冷凍室の凝固点は繋ぐ体温」。このツアーを生きた日々で得た全てを込めて放たれるその音は、間違いなくこの日のライブで最高の演奏となっていた。
今回のツアーが始まる前に、nuriéは「表現したいライブを本編に全て詰め込みます」と、アンコールは原則行わないという声明を出していた。しかし、ファイナルはやはり特別だ。オーディエンスに何が聴きたいか? と問いかけ、最後は盛り上がりたいという気持ちに応えて「骨太もんちっちくん」を追加。大角はステージからフロアに降りて客席にマイクを向けるなど、完全に垣根を取り払った一体感で沸かせた。こうして、会場に集った誰もが大満足の笑顔を浮かべて、nurié New Single Release Oneman Tour「0.000℃」は華々しく幕を閉じた。
nuriéは5周年ワンマンライブとなる、7月29日、Veats Shibuyaへ向かって新たな一歩を踏み出した。このツアーのファイナルで「若手が新時代を作る」と宣言した大角。いつの日か「nurié以降のバンドは」と言われるであろう、nuriéが起点になるような時代の変化まで、あと少しだ。
◆セットリスト◆
01. 瞳に映らない形と性質、それを「」と呼んで
02. akuma
03. I’m RAISE CLUB
04. 今宵、未来の為に歌おう
05. うさちゃんず
06. 骨太もんちっちくん
07. ミルクティートリップ
08. 阿呆やん。
09. モノローグ
10.【ばいばい】
11. 人として人で在る様に
12. 白を溢す。
13. RooM-6-
14. 百鬼夜行
15. 生き継ぎ
16. あくび
17. カンセツショウメイ
18. R.A.M.I
19. 舐めんな
20. 愛を歌わせろ人生
21. 生きてて偉い
22. 透明に混ざる。
23. 冷凍室の凝固点は繋ぐ体温
En
- 骨太もんちっちくん
(文・武村貴世子/写真・Ayami Kawashima)