2021年12月03日 (金)
【ライヴレポート】<Eins:Vier LIVE 2021 ”NOVEMBER LUST”>2021年11月27日(土)Shibuya STREAM HALL◆「ここまでの30年とか31年の間この3人が音楽の世界で生き残って来たということは本当に素晴らしいこと」──Luna(Ba)
REPORT - 20:00:55あたたかくて、優しくて、それでいて何時もどこかには翳りや憂いをも滲ませながら、その根底にはしっかりとした力強さと頼もしさが感じられる音楽を、紆余曲折を経つつも今日に至るまで誠実に紡ぎ続けてきたバンド。思うに、Eins:Vierとは我々にとってそんな存在なのではなかろうか。
そして、彼らEins:Vierは本来であれば2020年に30周年記念を迎えてそれに伴う動きをみせていくことになっていたはずだったのだが、いわゆるコロナ禍の影響により予定されていたライヴやツアーが相次いで中止・変更・延期へと追い込まれてしまうことに。故に、結果として各公演にはあらたに[30th+1 ANNIVERSARY. SINCE1990-2021]という題目が冠されたうえで、今年2021年に入ってから開催されていくことになったのだった。
ただ、それだけイレギュラーな出来事が続いたからこその番狂わせ的な展開として、先日11月27日には公式に“2021”と銘打った唯一のライヴとして[Eins:Vier LIVE 2021 “NOVEMBER LUST”]が少人数制での観客動員+リアルタイム配信の形式で渋谷ストリームにて追加開催されることになり、これはある意味でバンド側にとってもファンにとっても大変喜ばしい予測外な事態とあいなったわけだ。
かくして、本当の意味で“30th+1 ANNIVERSARY”を締めくくるライヴとなった今宵のステージにおいて、まず彼らが奏で出したのは、昨年21年ぶりの新曲を5曲収録したミニアルバムとしてリリースされた『five sights』からの「touch or don’t touch you know」と「100年の幻想」で、そのいずれからも感じられたYoshitsuguの響かせるアルペジオの繊細さや、Lunaの鳴らすベースラインの中にあふれる歌心、Hirofumiが発する声によって描き出される機微は、まさにEins:Vierならでは!と言えるものばかり。
むろん、両曲とも彼らにとっての最新曲であると同時にそれぞれに色合いも違うのは確かなのだが、たとえば老舗ピッツェリアのマルゲリータやらマリナーラやらビスマルクなどがそれぞれに違うテイストを持ちながらも、その土台となる生地の組成自体は基本的にどれも同じであるというのとどこか似ていて、Eins:Vierという老舗バンドが醸し出してみせる根本的な味わいは30年の時を超えても、曲調があれこれと違ったとしても、良い意味でどれも全くブレずに変わらないものとして味わうことが出来るものなのである。
ちなみに、ピッツァの場合で言えばどんな時でも同じような食感の生地を作り出すというのは単に何時も同じように作成すればいいという次元の話ではなく、日によって気温や湿度に合わせて生地配合や発酵度合を見極めて順応させていく必要があるそうで、これまたその複雑な構図はバンドが音楽を生み出していく過程とも不思議と共通点があるように思えてならない。
つい我々が安易に口に出してしまいがちな“Eins:Vierらしさ”という言葉の裏には、きっと彼らの音楽に対する揺るぎない信念、尽きることのない情熱、微細にして徹底したこだわり、といった各ファクターが限りなく作用しているのであろうし、その時々の状況によってもさまざまな加減は変わっていき、それによって多様性をはらんだEins:Vierの世界は見事に構築されてきたものなのであろう、と筆者は推測している。
「こんばんは。[LIVE 2021 “NOVEMBER LUST”]ということで遂に始まりましたが、ここまでには30th ANNIVERSARYを“30th+1 ANNIVERSARY”としてやってきて長い長い歳月が経ちました。今日はそのファイナルでもありますし、実は“2021”と題してやる初めてのライヴでもあります。欲望をむき出しにして、思いっきり楽しみましょう!」(Hirofumi)
新曲群から一転してのすこぶる懐かしい「メロディー」に始まり、10年前の再結成時に出演したイヴェント[V-ROCK FESTIVAL ’11]でも演奏されていた「Words of Mary」、聴いていると往年のライヴの光景が自然と甦ってくる「Notice」…と、すっかり気分が高揚したところで本編中盤に場内へと降り注がれたのは、冬の穏やかな情景を映し出した名曲「街の灯」。
アッパーな曲で派手に盛り上がるのが楽しいのはもちろんのことだが、Eins:Vierには普遍的な魅力を持つ名曲が数多く揃っていることも特徴的な点で、その感覚はこの後に歌われたリリカルな「花の声」などからも伝わってきたものだったのではないかと思う。
「今日は少し優雅に自分に酔いしれながら弾こうかなーなんて思ってたんですけど、いざライヴが始まってみたら何時もと変わらん全力ですわ(笑)。まぁ、一昨年から久しぶりの新曲も作っていろいろと準備もして「さぁ、30周年行くぞ!」となった途端にこの有り様でちょっと時間は空いてしまったけど(苦笑)、それでもここまでの30年とか31年の間この3人が音楽の世界で生き残って来たということは本当に素晴らしいことであるなと思ってます。今回の30周年は途中で予定が中止になったり変更になったりでいろいろあったし、正直「何時終わるんやろう?!」って感じるくらい長く果てしない道のりでしたが、それでもなんとか今日までたどりつくことが出来ました。まぁ、1年半かけて長々とやって来たおかげで今日のライヴが追加で増えたわけなんで、これはとても素敵なことだとは思いませんか?僕もめっっっちゃ嬉しいです!感謝してます、ありがとう!!」(Luna)
ここからの本編後半ではEins:Vierにとっての鉄板ライヴチューンとして長年にわたり君臨してきた「L.e.s.s.o.n」と「In void space」が連打され、場内に集ったファンらは声こそ発せないとはいえよりいっそうの盛り上がりぶりをみせることになり、それこそライヴタイトル通りの “NOVEMBER LUST”がこの場面では炸裂したと言えるだろう。
また、アンコールでは95年夏にメジャーデビュー・シングルとして世に送り出された不朽の名曲「Dear Song」で〈忘れられなかった あのメロディーに想いをはせながら…〉という一節に今さらながらの感慨を感じることも出来たほか、この曲ではLunaだけでなくサポートドラマーの岡本唯史氏も一緒に歌詞を終始口ずさんでいた点が印象的で、その微笑ましい様子から岡本氏の胸の中にある深いEins:Vier愛を感じたのは何も筆者だけではあるまい。
なお、この後には「In your dream」など計3曲が演奏されたWアンコールもあり、その場ではLunaから今回の[LIVE 2021 “NOVEMBER LUST”]の模様を軸とした4枚組のBlu-ray作品が後日発売となることが発表され、Eins:Vierの30th Annivesaryプロジェクトはそのリリースをもって最終的に完結することが告げられたのだった。
「今までもこれからもずっとEins:Vierを好きでいてくれる人たちに贈りたいと思います。聴いてください…!」(Luna)
Eins:Vierのおりなす心のこもった音楽たちを存分に堪能出来たこの夜、渋谷ストリームホールの場内へと最後の最後に放たれたのはシングル「蒼い涙」のカップリング曲でもあった「Liquid blue sky」。〈眠れずに不安な夜が来ても 大丈夫さ 夜明けは待ってる さぁ明日へ〉というこのポジティヴな歌詞の内容を思えば、何故この場で彼らがこの曲を奏でたのかは明白で、この歌は今この時世を生きる人々へのメッセージとして伝わってきた。
あたたかくて、優しくて、それでいて何時もどこかには翳りや憂いをも滲ませながら、その根底にはしっかりとした力強さと頼もしさが感じられるEins:Vierの音楽は、これからも彼らを愛するわたしたちと共にこの先の未来へと進んでいってくれるに違いない。
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Eins:Vier LIVE 2021 “NOVEMBER LUST”
2021/11/27 Shibuya STREAM HALL
M-1 touch or don’t touch you know
M-2 100年の幻想
-M.C-
M-3 メロディー
M-4 Words for Mary
M-5 Notice
-M.C-
M-6 街の灯
M-7 花の声
M-8 Not saved yet
●Luna M.C
M-9 three stories
M-10 I mean what I say
M-11 L.e.s.s.o.n
M-12 In a void space
【ENCORE①】
En-11 Come on loser
●Luna M.C
En-2 I feel that she will come
En-3 Dear song
【ENCORE②】
En-4 In your dream
En-5 In your next life
En-6 Liquid blue sky
END SE
TEXT:杉江由紀
PIX:荒川れいこ(zoisite)
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【オフィシャルHP】
https://eins-vier.wixsite.com/eins-vier
【five sightsデジタル配信】
【five sightsティザー映像】
【Eins:Vier Youtube Channel】
https://www.youtube.com/user/EinsVierOfficial
2021年12月03日 (金)
【ライヴレポート】AMBEEK<アンビエンス.イークvol.5~takuma. Birthday~>2021年12月2日(木)新宿WildSideTokyo◆「1年の区切りとなる今日を最高の1日にできて嬉しい」──(Gt.takuma.)
REPORT - 11:58:5312月2日(木)、AMBEEKは新宿WildSide Tokyoを舞台に、ギタリストtakuma.の誕生日を祝う2 NAN EVENT「アンビエンス.イークvol.5~takuma. Birthday~」を開催した。ゲストにアンドゥーが登場。当日の模様を、ここにお届けしたい。
SEに合わせ、フロア中から生まれた熱い手拍子。その音へ導かれ、メンバーらが舞台へ姿を現した。「ヤレるかー!!」と熱く叫ぶKEKEの声を合図に、AMBEEKのライブがスタートした。
冒頭を飾ったのが、「RESONATE」だ。メンバーらはド頭から重厚なダンスロック曲を叩きつけ、観客たちの頭や身体を激しく揺さぶれば、上へ上へと跳ねさせる。気持ちを騒がせ、身体中に熱いエナジーを注ぎ込む楽曲に触れているのにじっとしてなんかしてられない。メンバーらは雄々しい姿を見せ、観客たちを煽り続けてゆく。フロアでは、感情高ぶる衝撃を全身に浴びた観客たちが、止めることなく身体を激しく揺さぶり続けていた。
「お前ら,頭振るの好きだろう、いいかー!」の言葉を証明するように、AMBEEKはデジタルでラウドな激ロックナンバー「モノガタリに生かされモノガタリで失った「暁」その結末」を叩きつけ、観客たちの頭をガンガンに揺さぶっていった。ただ激しいだけではなく、歌詞へ詰め込んだ熱量が強烈に胸へ突き刺さる。体感的な衝撃を持ちながらも、楽曲自体が歌心を持っているからこそ、熱狂に溺れ、身体は飛び跳ねながらも、心の中ではKEKEと一緒に心地好く歌っていた。現実を忘れ、快楽の世界へ飛び込み暴れるのはもちろん。そのうえで、心も酔わせる。だから、その歌を追いかけたくなる。
激しく昂る感情をもっともっと熱く騒がせ熱狂の中へ落とし込みグチャグチャにしてやろうと、AMBEEKは激熱な煽り曲「Scar」を突きつけ、観客たちの頭をガンガンに揺さぶれば、拳を何度も天高く突き上げさせてゆく。騒ぐ気持ちが治まらない。挑む姿勢でエナジー漲る歌や演奏を叩きつけるメンバーらの気迫に刺激を受け、もっともっとその熱を全身に浴び続けたい気持ちに心が染まっていた。
KEKEの歌から楽曲はスタート。続く「茜」は、重厚なウネリを持って観客たちの腰を揺らすヘヴィでグルーヴィーな横揺れナンバー。KEKEの歌声やメンバーらの唸る演奏に合わせ、観客たちが手を振り上げ、身体を左右に大きく揺らしていた。身体でヘヴィなグルーヴを感じながらも、KEKEのメッセージを込めた歌に気持ちが熱く沸き立ち続けていた。だから、身体の火照りが治まらないんだよ。
「MERRYGOROUND」が流れだしたとたん、観客たちが思いきり上へ上へと跳ねれば、荒ぶる演奏へ噛みつくように頭を揺さぶっていた。サビで観客たちが手やタオルをくるくるまわしながらも跳ね続ける様が、最高だ。騒ぎたいんだよ、身体中を熱情した気持ちが駆けめぐる。誰もが螺子が壊れ暴走したメリーゴラウンドのような演奏の上で、理性を捨て去り、熱狂の虜になって騒ぎ狂っていた。
曲が進むごとに、激しさと熱が増してゆく。いや、曲自体は次々と色や表情を変えているのだが、身体を騒がせる轟音をライブの中心軸に据えているからこそ、一度上がった気持ちが冷めるどころか、どんどん熱を脹らませてゆく。「CLOVER」でも、そう。歌心を持った楽曲にも関わらず、メンバーらが激しい演奏を叩きつけるからこそ、フロア中の人たちも大きく咲かせた手の花を揺らし、KEKEの情熱的な歌声をその両手で次々と受けとめていた。
MCでは、takuma.の誕生日を祝い、バースデーケーキをプレゼント。何故か、味見をドラムのMINAMIがしたあとで、takuma.もケーキを嘗めていた。takuma.は「1年の区切りとなる今日を最高の1日にできて嬉しく思ってます」と感謝の言葉を述べていた。
ライブも後半戦へ。フロア中の観客たちの拳をこれまで以上にぐるぐるとまわせば、次々と手の花を咲かせるように、AMBEEKは「自虐メカニズム」を演奏。とてもキャッチーな歌なのに、激しく駆ける演奏が、心地好さへ刺のような刺激をグイグイ押しつけてゆく。だからこそ、痛い刺激を持った歌や演奏を抱きしめたくなる。痛みを感じながらも、その刺激がむしろ興奮と恍惚を身体中へ与えていく。
激しく跳ねた演奏が炸裂。AMBEEKは轟音ダンスロック曲「CLEA Re QuEstion」を叩きつけ、フロア中の人たちをずっと跳ねるように躍らせていた。メンバーらが激しく身体を揺さぶり演奏すれば、その姿へ思いや熱狂を重ねるように、観客たちも掲げた腕や身体を揺さぶり続けていた。
「まだまだ満足しねぇぞ、本気をみせろ、一つになろうぜ!!」。KEKEの声を合図に飛びだしたのが、エレクトロな要素も加えた激烈なラウドロック曲の「little MONSTER-名も無き少年–」だ。キャッチーな歌に心が騒げば、体感的な衝撃を与える演奏に触発され、今まで以上にフロア中の人たちが高く、高く飛び跳ねていた。メンバーらと観客たちが熱狂を喰らいながら共に身体を折り畳む様も、圧巻だ。大きく手を揺らし騒ぎたい。でも、気持ちは欲望を詰め込んだその歌を追いかけたい。
互いに興奮という極みへ突き進むように、最後にAMBEEKは、今の自分たちの本音の思いを濃縮した「カレナコトハ」を轟音に乗せ叩きつけ、共に未来へ突き進もうと熱い誘いをかけてきた。いや、彼らが強い眼差しを持って突き進む意志を示すからこそ、その意志に触発され、AMBEEKが描こうとしている未来の景色を共に追いかけたくなる。そうさせてゆくパワーを「カレナコトハ」が、AMBEEKのライブが持っていた。
身体はズッと熱狂に溺れていた。でも、胸に熱い高揚を覚えていたのは、彼らの放つメッセージに、勇気というエナジーを心に注ぎ込まれていたからだ。この熱狂にずっとずっと触れていたい。
AMBEEKは、2022年2月10日(木)に赤羽ReNY alphaを舞台に「AMBEEK 3rd Anniversary 無料ワンマン」を開催する。このチャンス、絶対に逃すな!!
TEXT:長澤智典
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【拡散】
2022年02月10日(木)赤羽ReNY alpha
3rd Anniversary入場無料ONEMAN
“革鳴” 詳細発表!!
来場者から抽選で1名様に最高10万円!
キャッシュバック!
&リツイート賞あり
応募方法
①このアカウントをフォロー
②このツイートをRT
https://twitter.com/Ambeek_official/status/1466421943905751042
拡散、ご来場お待ちしております!
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★LIVE情報★
AMBEEK 3rd Anniversary 無料ワンマン
日程:2022年2月10日(木)
会場:赤羽ReNY alpha
※詳細後日発表
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【つかさ生誕祭のお知らせ】
2022.01.11(火)渋谷REX
AMBEEK Presents つかさ生誕祭
「寿司ざんまいseason2」
【出演】AMBEEK / カイリ、聖、Ivy、琉霞
OPEN 18:00 / START 18:30
¥4,000+D / ¥4,500+D
★チケット:
■e+プレオーダー受付
受付期間:12月7日(火)12:00~12月16日(木)23:59
入金期間:12月18日(土)13:00~12月20日(月)21:00
■一般発売:12月26日(日)10:00
■先行、一般共通URL
https://eplus.jp/sf/detail/3541280001-P0030001
【問い合わせ】
渋谷REX (03-5728-4911)
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AMBEEK Web
AMBEEK twitter
https://twitter.com/ambeek_official
AMBEEK 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UChTh8G8rk1LQcDzKtyQQIBg
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セットリスト
「RESONATE」
「モノガタリに生かされモノガタリで失った「暁」その結末」
「Scar」
「茜」
「MERRYGOROUND」
「CLOVER」
「自虐メカニズム」
「CLEA Re QuEstion」
「.little MONSTER-名も無き少年–」
「カレナコトハ」
2021年11月26日 (金)
【ライヴレポート】<INORAN 2021-2022 PREMIUM ACOUSTIC LIVE>11月23日(火・祝)Billboard Live TOKYO初日公演◆「みんなとこうやってライヴができるのは、なんて幸せな時間なんだろうと思います。」
REPORT - 18:00:1211月23日(火・祝)、INORANがBillboard Live TOKYOにて『INORAN 2021-2022 PREMIUM ACOUSTIC LIVE』の初日公演を行った。同会場での公演は2021年の3月以来となり、アコースティックセットでの音楽表現はINORANが大切にしてきた継続的な試みである。9月に『TOKYO 5 NIGHTS』で繰り広げた5日間連続のロックンロール・ライヴとも、10月にリリースした最新アルバム『ANY DAY NOW』で見せた全編打ち込みのEDM的アプローチとも全く異なる内容で、INORANというアーティストの振り幅の大きさに改めて驚嘆。INORANがヴォーカルとギターを務め、葉山拓亮 (Piano)、荒井桃子 (Violin)、島津由美 (Cello)と共に4人で音を紡いだ。1stステージ、2ndステージの1日2公演を実施、ここでレポートするのは1stステージの模様である。この後大阪、横浜での公演を控えているため、ネタバレを一部回避して記述した。
ドレスアップして出掛けるにふさわしい、ラグジュアリーな会場。4人掛けのテーブルにはアクリル板を十字型に設置するなどコロナ対策はもちろんしっかりと施されているが、会場とコラボしたオリジナルドリンクを提供するなど、音楽を楽しむムードは開演前から空間に満ちていた。客席の間を通り抜けてステージに登場したメンバーに、大きな拍手が起きる。優しいピアノの音色からスタートした1曲目は「Walk along」。ヴァイオリンとチェロのハーモニーにうっとりと聴き惚れる。椅子にラフな姿勢で腰掛け、ハートフルな歌声を響かせるINORAN。大きく身体を動かすことなくても、手をヒラヒラと空に舞わせたり胸に置いたりするジェスチャーからしっかりと心情が伝わってきた。アコースティックギターを手に取って歌い始めたのは「Beautiful Now」。「千年花」ではギターを背中に回し、スタンドからマイクをもぎ取るようなアクションも交えながら、緩急豊かに歌唱。序盤でまず再認識したのは、INORANの歌唱がロックンロール・ライヴでのそれとは根本的に異なること、音数の少なさが際立たせるメロディーラインそのものの圧倒的な美しさだった。
「いろいろ昔の曲とか、アレンジし直したりして“新装開店”で今回は届けたいと思ってます」(INORAN)とMCで語った通り、全く別の形に生まれ変わった曲もある。特にハッとさせられたのは「raize」。寄せては返す波のように奏でられるピアノで幕開け、ヴァイオリンとチェロが思いがけないアプローチで加わっていく大胆なアレンジで、INORANが歌い始めるまでは何の曲か分からなかったほど。驚きと楽しさ、感動、音楽の自由さに喜びを感じる気持ちが、次々と心に沸き起こっていった。
セットリストは1stと2ndで数曲入れ替えがあり、筆者が取材で足を運んだのは1stだけだが2ndも是非体感したかった、と思わされるチョイス。これは全体を通して言えることだが、元々バラードだった曲も、元来は激しいアレンジだった曲も、アコースティックセットに変わることでただ単に“優しくなる”わけでは決してなかった。テンポはスローでも躍動的であったり、静けさの中に熱い炎を感じさせたり、音楽から迸るエネルギーを手に取るようにありありと感じることができるのだった。
「いろんなことがありましたよね、皆さん。僕たちもこの2年間、音楽をつくり続けてました」とコロナ禍に何気なく言及しつつ、「音楽って、ただただ完成度を高めようとか、そういうことじゃなくて。大きなテクニックとか志とかじゃなくて、とても大きな愛をみんなで共有するということが、音楽の……こういうコンサートの意義なんじゃないかな?って」とINORAN。「温かい時間にしたい」「特別な時間だと思っている」と言葉を重ね、オーディエンスに真摯に語り掛けている姿が印象的だった。
「Ling Time Comin」はロッカバラード風のピアノで幕開け、コード進行も刷新。ステージには温もりのあるオレンジの光がそっと灯り、会場にいる全員で、まるでひとつの暖炉や焚火に手をかざして温まっているかのような感覚に。寒さ、痛み、悲しみも、それを言い合える相手と過ごせば温かい。そんなことをふと思うような体験だった。INORANは目の前の親しい人に話し掛けるかのように、ナチュラルに歌唱。ヴァイオリンとチェロが昂っていく終盤はドラマティック。心を揺さぶるパフォーマンスに大きな拍手が起き、INORANもメンバーを拍手で讃え、微笑んでいた。
コロナ禍に見舞われても制作のスピードを落とすどころか加速し、2020年から2021年に掛けてアルバムを立て続けにリリースしてきたINORAN。「3枚出したんだけど、イケイケで。そういった時に、このビルボードでのライヴがものすごく希少というか、尊い場所だったんだなと思って」と、アコースティックセットの意義を改めて噛み締めている様子。かつてのビルボード公演ではカヴァー曲披露も恒例となっていたが、今回は自身の楽曲のみで構成。「昔の曲が“問い掛け”てくるんですよ。『おいおい、俺を忘れてないか?』『私を覚えてる?』みたいな。同じ曲でも、置かれた時代によって、歌詞も違って聞こえるんだよね」と選曲プロセスを振り返った。そういった曲からの“問い掛け”にINORANが耳を傾け、古くから大切にしてきた楽曲と新たな気持ちで向き合い、届けようとした新たな息吹。このライヴが温かく愛に溢れていたのは、そのことと無関係ではないだろう。
感染防止の観点から、まだ歓声やシンガロングには自粛を求めざるを得ない状況である。しかし、INORAN自らレクチャーし、観客を巻き込んでクラップでリズムを刻む場面を設けるなど、一体感を高めるアプローチで楽しませていた。「みんなとこうやってライヴができるのは、なんて幸せな時間なんだろうと思います。心からどうもありがとう。これからもこの空間を大切に大切にしていくのと同時に、来年も育んでいきたいと思っています」と感謝と決意を示した。ある曲の途中、ステージの背後に光り輝く夜景が出現する瞬間は、ビルボードならではの見どころ。忘れることのできない美しい情景だった。
12月25日(土)に行われるBillboard Live OSAKA公演ではクリスマス・プレートを楽しめるプランも用意されており、特別な時間をより印象深く演出。2022年1月16日(日)にはBillboard Live YOKOHAMAでの公演が控えている。ロックンロール・ライヴで立ち上がらせる燃え盛る炎とは違った、暗闇にポッとキャンドルを灯すような心温まる時間。INORANがメンバーと共に織り成す特別な空間に、是非身を置いてみてほしい。
取材・文:大前多恵
Photos by 田辺佳子
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▼LIVE INFORMATION▼
INORAN 2021-2022 PREMIUM ACOUSTIC LIVE
2021年12月25日(土) Billboard Live OSAKA
◇1stステージ [開場]15:30 [開演]16:30
◇2ndステージ [開場]18:30 [開演]19:30
[料金]
サービスエリア¥14,000(クリスマス・プレート&グラス・シャンパン付)
カジュアルエリア¥8,500(グラス・シャンパン付)
[お問い合わせ] ビルボードライブ大阪:06-6342-7722
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=13047&shop=2
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2022年1月16日(日) Billboard Live YOKOHAMA
◇1stステージ [開場]15:30 [開演]16:30
◇2ndステージ [開場]18:30 [開演]19:30
[料金]
サービスエリア¥8,500
カジュアルエリア¥8,000(1ドリンク付)
[お問い合わせ] ビルボードライブ横浜:0570-05-6565
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=13049&shop=4
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■LUNA SEA 30th Anniversary Tour -CROSS THE UNIVERSE- GRAND FINAL
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2022年1月8日(土) さいたまスーパーアリーナ
[開場]15:30 [開演]17:00
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2022年1月9日(日) さいたまスーパーアリーナ
[開場]13:30 [開演]15:00
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[チケット料金]
全席指定¥11,000(税込)
※未就学児童入場不可 ※座席はステージ横・後方を含みます。
[お問合せ]クリエイティブマンプロダクション TEL:03-3499-6669(月・水・金 12:00~16:00)
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INORANオフィシャルファンクラブNO NAME?会員限定イベント
NO NAME? PRIVATES? #38 -2021 LAST MEMBERS’ MEETING-
2021年12月29日(水) 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
◇第1回 [開場] 14:45 [開演] 15:30
◇第2回 [開場] 18:15 [開演] 19:00
[チケット料金]
全席指定¥5,500(税込)
※DRINK代別 ※未就学児童入場不可
[お問合せ]NO NAME? 03-5333-1014
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▼イベント出演情報▼
Char 45th Anniversary CONCERT SPECIAL
2021年12月11日(土) 日本武道館
[開場]16:00 [開演]17:00
[出演] Char、三人の侍(奥田民生、竹中尚人、山崎まさよし)、布袋寅泰、AI、佐藤準、Fender 75th Special Session(春畑道哉、INORAN、山内総一郎日野 “JINO” 賢二、すぅ、あいにゃん)
[チケット料金]
全席指定 前売¥9,900(税込)/当日¥11,000(税込)
※小学生以上チケット必要、未就学児童入場不可
[お問合せ]HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
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DANGER CRUE 40th Anniversary
JACK IN THE BOX 2021
supported by MAVERICK DC GROUP
2021年12月27日(月)日本武道館
[開場] 14:00 [開演] 15:00
[出演] Petit Brabancon、fuzzy knot、NOCTURNAL BLOODLUST with GUEST、DEZERT with GUEST、MUCC feat.GRANRODEO、D’ERLANGER(CIPHER/SEELA/Tetsu)feat.HYDE/INORAN(LUNA SEA)/逹瑯(MUCC)、44MAGNUM feat.高崎晃(LOUDNESS) -JACK IN THE BOX SPECIAL VERSION-、MDC 40th Anniversary SUPER ALL STARS
and more…
[チケット料金]
全席指定 前売¥8,800(税込)当日¥9,900(税込)
※4歳以上有料
[お問合せ] SOGO TOKYO 03-3405-9999