2022年08月21日 (日)
【圭】ツアー完走。誕生日と重なった最終日に伝えた“生きる理由”と次なる挑戦
REPORT - 18:00:312022年8月12日、東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて圭が< TOUR // SENSE OF WONDER>を締めくくった。
6月からスタートした本ツアーは、圭が初めてバンドを最小限の3ピース形態に変え、マンスリーで関東近郊の会場で開催。圭の誕生日とも重なった最終日は、ツアーのなかで初のホール公演となった。当日、夜空に現れた満月に代わって、自身が“Mr.フルムーン”として光り輝いたステージのレポートをお届けする。
本ツアーのSEは3公演ともクラシックだった。
ショパンの美麗なメロディーが響き渡るなか、KENZO(Dr/彩冷える)、高松浩史(Ba/THE NOVEMBERS)に続いて圭(Gt&Vo)が現れ、それぞれの定位置についていく。
サウンドチェックのようにみえて、お互いが絶妙なタイミングで音を絡ませ、グルーヴィーでラグジュアリーなジャムセッションを展開していくオープニングは、このツアーから始まったもの。3人の音の駆け引きが高まっていったところで「the sin.」のイントロを創り出し、ライヴは幕開け。
この日は会場の都合で、ツアー初日から使っていた映像の演出はなし。その分、オーディエンスは終始歌とバンドサウンド、ステージのパフォーマンスを体感することだけに集中することになった。
KENZOの鋭いビートが、こんな激しい疾走感を巻き起こしていたんだと驚いた「I LUCIFER」。
“耳を塞いで~”と歌い上げ、ギターソロを爆発させていった圭も、この日は歌声、ギターに加え、ノースリーブの衣装で腕までむき出し状態だったため、パフォーマンスの生々しさが増幅。
インダストリアルな質感でダンスビートが進行していくなか、高松のベースが心地よいグルーブを滑らせていった「SIN QUALIA」では、圭は圧巻のギターソロを披露したかと思えばその直後、特注のスタンドから即座にマイクを外し、ラップパートを体を前傾させながら歌唱。ギターを弾きながら、シンガーとしてもアクティブなパフォーマンスが魅せられるようになったのはこのツアーの成果だ。
演奏が終わると、「ようこそ」と挨拶を届け、本公演は映像演出がない分、「この3ピースは最強なんで、俺のすべてをさらけ出すから」と力強く宣言。そうして「青空に吹かす夜、晴れ渡る日(cover)」を繰り出す。カヴァーソングとはいえ、こちらは圭ど真ん中にある王道のロックチューン。
バンドアンサンブルと歌メロが、ポップにキラキラとまぶしい音像となって体を軽快に駆け抜けていったときの爽快感。その破壊力はやはりダントツに馴染みがよく、このツアーでこの曲は見事にいまの圭のライヴを象徴するキラーチューンへと急成長を遂げた。
シンセとキック音がループするなか「満月を迎えた8月12日は俺の誕生日。みんなは星たちになにかお祈りした?」と会場に語りかける圭。クールに見えて、満月生まれの自分を“Mr.フルムーン”と名付けたり、こんなファンタジックなことがさらっといえてしまうのも彼の魅力。
そんな発言から曲はインスト曲「longing star.」へ。ギターフレーズで観客を引き連れ連れ、キラキラ星が輝く夜空までランデブーしたあとは、「eve.」でそこから水の中へ。深海まで差し込むやわらかい光のような浮遊感ある音色が、ギターソロから突然太い音に変貌し、うねりをあげてアグレッシブな音を放ちだす。
次の「MEMENTO」では「eve.」で創り出したパッションを内包したアンサンブルにエモーショナルな歌が加わり、曲の緩急に合わせて歌とアンサンブルが渾然一体となって生命の壮大な物語を緊迫感ある演奏で魅せていった場面は、迫力満点。観るものをどこまでも惹きつけ、感動に浸らせていった。
楽曲に陶酔しきっている客席を見た圭は「映像がない分、ステージ上のメンバーのエネルギーが届いてると思うんだけど、どうよ?」と話しかける。観客から拍手が沸き起こると「“食らってる”って顔してるよ」と彼は余裕の微笑みを返す。
歌ものばかりをやる必要はない。どんなに会場が沈黙に包まれようが、オーディエンスはインスト曲も歌ものと同じようにライヴを楽しんでくれているのだ。そのようなファンとの信頼関係が自信となった結果、元からあるギタリストの圭を改めて中心軸に戻し、そこからアーティストとしての自分を全方位で解放していったのがこのツアーといえる。
そうして、圭は次の「pitiful emotional picture.」のアクトへ。温かい光に包まれるこの曲は歌ものとインスト曲、どちらも楽しめる進行で曲が展開。まさに今回のツアーを象徴するような作品を、圭は2009年、ソロを始めたときにすでに作っていたというのが驚きだ。
3人のセッションがじょじょに緩やかになり、「Home sick(cover)」のおやすみソングで夜のとばりが下りると、そこからインスト「monolith.」でさらにディープな世界へ。音の浮遊感がたまらないシューゲイズなサウンドで、美しいモノクロの幻想的な世界へと観客たちは没入。
そうして、曲が終わったあとも恍惚とした表情を浮かべて、遠くにいったままのオーディエンスに対して「戻っておいで! 戻っておいで!」と慌てて声をかける圭が面白かった(微笑)。
このあと、1年前の誕生日は渋谷ストリームホールで<THE ELEGY-夜明けの明星–>と題したライヴを1部はインスト、2部は歌ものと楽曲を分けて行なったことを振り返り「このツアーではインストも歌も、BAROQUEでやってない曲、カヴァー曲、いろんな音楽をやって。自分が作ってきた音楽の歴史を『utopia.』というアルバムが、時空を超えてつないでくれた」と打ち明けた。そうして、ライヴはいよいよ終盤戦へ。
圭はここから明るく軽快なテイストの楽曲を連発して、場内を盛り上げていく。まずはBAROQUEで1度も演奏していなかった「STAY」。この曲は、今回のツアーから圭の「3,2,1,ジャンプ!」の掛け声で、オーディエンスが一斉にジャンプ。ジャンプでテンションが上がった客席は、次に「17.」が始まると、イントロから盛大なクラップを巻き起こしてみせ、「the salvation.」では腕を上げ、体を揺らしてアップチューンをどこまでも楽しみ尽くした。
この後、圭は「曲は正直だよ」といって「17.」、「the salvation.」を作った時期に思いを馳せ、当時は人生に挫折し、壁にぶつかり、誰か俺になり代わってくれと叫んでこれらの曲を作ったこと。そうして「STAY」を作ったあと、なにもかも失ったことを伝え、その上で「いまはバンドを失っても、もっと大きなものを得たと自信をもっていえます。いつ、どんな瞬間でも自分を信じて、諦めずに見つけばいい」とフロアに向けて熱いメッセージを投げかけた。
その言葉を体現するように「the primary.」、そして観客それぞれの内へと潜っていって、どこか温かく心地よいタイム感で響く「utopia.」、そこから視界がどんどん開けていくスケール感をもった「spirit in heaven.」へと続け、陽のエネルギーで会場を包み込んでいった。
「今日はエモいライヴでした」と充足感たっぷりの表情で本公演の感想を述べた圭は、続けて「子供の頃、なんで自分は生まれてきたんだろうと思って。それぞれ自分にしっくりくる理由を見つけていくんだろうけど。俺はなんで生まれてきたのかが分かったよ」といって、とても真剣な表情で会場内を見つめた。そうして「みんなに会いにきたんだよ」と告げたのだった。その言葉に観客たち強く心を震わせているのが伝わってきた。
そして、ライヴはついにクライマックスへ。圭がピアノの前に座り、ラストソングのバラード「ring clef.」を静かに歌い出す。“麗らかな日も 病める日も その笑顔を見つめているよ 隣でずっと”と歌う圭の姿はこの日凛とした強さがあって、その声はどこまでもやさしく、心が洗われるようだった。
そうして、会場に集まった人々を清々しい気分にしたところでライヴは終了。演奏が終わったあと、3人は仲良くお立ち台に並んで挨拶をし、ステージを後にしたのだった。
この日の公演のなかで、次のワンマンライヴはSHIBUYA STREAM HALLにて12月26日、27日、自身初の2DAYS公演に挑戦すること。さらに、その間に「新曲が聴けたり、リリースがあるかもしれないので楽しみにしてて欲しい」と告げた圭。
まずはその前に、9月3日、埼玉・秩父ミューズパークで行われるBugLug主催のロックフェス<バグサミ2022>、10月15~16日(圭の出演は15日のみ)、大阪・服部緑地野外音楽堂にて行われる<Band Shock REVOLUTION~びじゅある祭2022~>への出演が決まっているので、圭のソロでは初の野外、初のフェス出演となるステージも期待して欲しい。
文◉東條祥恵
ライブ写真◉尾形隆夫
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<LIVE INFO.>
圭
NEXT // ONEMAN LIVE
2022年12月26日(月) shibuya STREAM HALL
2022年12月27日(火) shibuya STREAM HALL
To be announced…
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<EVENT LIVE info.>
BugLug主催Fes.
「バグサミ 2022」
2022年9月3日(土) 埼玉県・秩父ミューズパーク
OPEN 11:30 / START 13:00
出演:BugLug
生憎の雨。 / 甘い暴力 / 蟻 / アルルカン / 色々な十字架 / キズ / 己龍 / KiD / 圭-kei.- / コドモドラゴン / ザアザア / ZOMBIE / NAMELESS (50音順)
▼バグサミ 2022|特設ページ
https://buglug.jp/special/bugsum2022/
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Bands Shock REVOLUTION~びじゅある祭2022~
2022年10月15日(土) / 10月16日(日)
大阪府・服部緑地野外音楽堂
※圭の出演は10月15日(土)
OPEN / START:
(10/15) 11:30 / 12:30
(10/16) 11:00 / 12:00
出演アーティスト:
(10/15) 甘い暴力 / アルルカン / 己龍 / 圭-kei.- / ダウト / DaizyStripper / BugLug / OA:VIRGE
(10/16) 生憎の雨。 / コドモドラゴン / ザアザア / THE MADNA / DEZERT / DIAURA / 夕闇に誘いし漆黒の天使達 / Royz / OA:蟻
(50音順)
▼びじゅある祭2022|オフィシャルサイト
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<RELEASE INFO.>
圭
NEW ALBUM
『utopia.』
NOW ON SALE
…………………………………………
収録曲 // COMPLETE 12 TUNES
scene1____spirit in heaven.
scene2____longing star.
scene3____helix.
scene4____mobius.
scene5____sanctuary.
scene6____cell structure.
scene7____monolith.
scene8____the sin.
scene9____eve.
scene10____in the light.
scene11____embrace.
scene12____utopia.
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All Music & Produced : 圭
Guitar & All Instruments : 圭
Recording & Mixing, Mastering Engineer : 圭
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<通常盤>PGSK-038 (CD) ¥3,500
Manufactured & Distributed by sun-krad Co., Ltd.
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<会場・通販 限定盤>【数量限定】 PGSK-037(CD) ¥6,500
※特殊パッケージ LPサイズジャケット仕様
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サブスク配信中
■圭
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2022年08月19日 (金)
【DEZERT】<「study」#11 -真夏の“TODAY”補習編->2022年8月17日(水)SHIBUYA PLEASURE PLEASURE◆「あの時がなければ、今もしかしたらこんな風には続いてなかったかもしれない」──千秋(Vo)
REPORT - 20:00:11今日に生きる彼らは、この夜ステージ上で自分たちの音楽を活き活きと伸びやかに表現し、4年前のあの頃では決してみられることのなかった屈託のない笑顔までをもみせてくれたのだった。
こんなにも素晴らしい“今日”を引き寄せ、確実に我がものとすることが出来たのは、ほかならぬ彼ら自身による功績だろう。
この8月にDEZERTがSHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて集中開催してきたシリーズライヴ「study」は、彼らが過去に発表したアルバムについて文字通り補習するための場であり、8月17日の[「study」#11 –真夏の“TODAY”補習編–]は、これまで[「study」#9 –真夏の“タイトルなし”補習編–][[study」#10 –真夏の“最高の食卓”補習編–]と続いてきた今年度夏季補習を締めくくるものとなった。
「もう4年前か。今日は4年前に出したアルバム『TODAY』を再現というわけではないな…なんて言えばえぇんやろ?あの『TODAY』というアルバムは総じて“ありのままに生きたい”だとか、そういったことが言葉として多く並べられたものになっていたんですが、あれから4年が経った今の自分たちが“ありのままで生きたかった4年前とどう変わったか”ということを表現出来れば良いなと思ってます。
もちろん、今日で全ての結論が出るわけではないし、DEZERTも君たちもこれから先に道は続いていくだろうだから、そんな未来にも思いを馳せつつ今日を楽しんでいきましょう。今日一日が〈生きててよかった〉っていう日になるようにね」(千秋)
「沈黙」「おはよう」と、まさにアルバム『TODAY』発表後に行われた[DEZERT LIVE TOUR 2018「What is “Today”?」]の時と全く同じ曲順で始められた今回のライヴにおいて、千秋が最初のMCで述べたのは前述の言葉だ。
そもそも、2018年にDEZERTが発表したアルバム『TODAY』は、メンバーの面々が後に自ら「暗黒期であった」と認めている2017年の[千秋を救うツアー][千秋を救うツアー2]を経て、紆余曲折と試行錯誤の末に完成した彼らにとっての重要分岐点となった作品で、音楽的な面ではより幅広いスタンスでロックというものと対峙し、歌詞の面でも普遍性やわかりやすさを意識したところが多分に見受けられた。
と同時に、彼らはこの『TODAY』を完成させた直後に自分たちで運営していた事務所から現所属事務所であるマーヴェリックへと移籍し、結果として『TODAY』はそのマーヴェリックのレーベルからリリースされることになったことも大きなトピックスであったと言える。
「…悩んでるな、この『TODAY』を作ったバンドは。不安やったんやろな。怖かったんやろなぁ」(千秋)
「蛙とバットと機関銃」で〈仕方なく手にした武器は折れそうなバットだった〉という歌詞を〈~マイクだった〉と歌い替えてみせたフロンマトン・千秋は、この曲をパフォーマンスし終わった後にこうボソッと呟いたのだが。
確かに、あの『TODAY』には葛藤し模索するロックバンドの姿が映し出されている曲が多くみられるものの、ここでのあらたなアプローチが後の展開につながっていったケースも多い。
たとえば、この夜の公演でも演奏されていた「蝶々」「浴室と矛盾とハンマー」「Hello」「オレンジの詩」といった曲たちを筆頭に、ギタリスト・Miyakoと共に千秋もギター&ヴォーカルでマイクスタンドの前に立つ機会は、『TODAY』から一挙に増えていったと言っていいのではなかろうか。
また、SORAとSacchanによるリズム隊のグルーヴが強化されたうえ、音楽的な幅も格段に拡がったことで間口も広くなったのか、バンギャのみならず顕著に男性ファンが増えていったのも『TODAY』を出した時期からの著しい変化で、なんと今回の[「study」#11 –真夏の“TODAY”補習編–]についても、今期「 study」の中では圧倒的に男性オーディエンスの数が多くみられたほど。
「僕はノスタルジックっていう言葉がキライなんですよ。過去は大事だけどさ。あと、原点回帰?とかもワケわからん。戻る意味とかある??ただ、あらためて『TODAY』の曲たちをやってて思うのは、もともと「「殺意」」とか「「君の子宮を触る」」とかって歌ってたヤツが、いきなり“生きててよかったと思える日を探すバンドになってた”っていうのはちょっと怖いよな(笑)。いや、俺自身はイイと思うんだけどね。(中略)
まぁ、あの頃に感じてたような不安って今もなくなったわけではないし、俺たちは結局ちょっとだけ才能があるから悩むんよな。全く何もなかったから絶望するしかないけど、それぞれ4人ともちょっとだけ才能があるばっかりに悩んじゃうんです。
でも、むしろとことん不安になるしかないって最近は思うようにもなってるし、そうなったことで自分の気持ちはかなり楽になりました。(中略)
そして、やっぱり俺は未来に何かを期待したい。これを2018年の時点でわかってたら…当時もっと良いライヴを出来てたとは思うんやけども。敢えて綺麗事を言うと、あの時がなければ今もしかしたらこんな風には続いてなかったかもしれないよね」(千秋)
そういえば、当時『TODAY』の内容に対しては「DEZERTは成長した」「DEZERTは良いバンドになった」という評価が多々寄せられていた反面、ファンの一部からは「DEZERTは売れ線に走った」「DEZERTは変わってしまった」といった声も噴出し、中にはもったいないことに“あがっていった”人々もいたのだとか。
また、アルバムとしての『TODAY』の完成度が高かった一方[DEZERT LIVE TOUR 2018「What is “Today”?」]については、まだまだバンド内の状態がベストコンディションまでは整い切らなかったことがあったようで、舞台上には時折ピリついた空気が漂っていたのも事実。
故に、各曲の持つポテンシャルが現在ほどは活かされ切ってはいなかったところがあったような気はするが、そこに関しては今回の「 study」をもって完全回収し見事挽回をしたことになるはず。
ちなみに、今回の「study」では3夜ともに演奏されていた2013年発表のアルバム『特製・脳味噌絶倫スープ~生クリーム仕立て~』に収録されていた「飼育部屋」、同じく2013年発表のセカンドシングル『「ぼくの死骸と君のチョコレート。」』収録の「チョコレートクリームチェーンソー」の2曲も「けっこう育った」そうで、この酷暑にあって自ら補習を課した意義は予想以上に大きかったらしい。
なお、この日の「飼育部屋」ではメンバー紹介と称したメンバー同士の無邪気なジャレあいがみられ、4人の嬉々としている姿が微笑ましかったこともここに付記しておきたい。4年前であれば、想像も出来なかった眩しく尊い光景がそこに在ったのだ。
当然のごとく、そうした様々な場面を経てから本編ラストで聴けた「TODAY」はただただ感無量の一言。
4年前よりもずっと、頼もしさと優しさの両方をたたえた律動を叩き出すSORA。
4年前よりもずっと、寛容で深いベースラインを紡ぎつつ千秋とシンクロしたコーラスワークまで決めるSacchan。
4年前よりもずっと、情熱的で熱い音を響かせるMiyako。4年前よりもずっと、力強く愛のこもった歌を聴き手の心に直球で投げてくる千秋。
〈生きててよかった そう思える夜を探してく覚悟 気付いたよ そして初めて僕が踏みだす一歩〉
歌っている詞自体は4年前と基本的に変わらなかったとしても、あの当時のこの曲が悲壮感と焦燥感を超えたうえでのカタルシスへと到達する赤裸々な歌であったとするならば、今日のこの曲はDEZERTの未来に対する“期待”感をどこまでも膨らませるような希望の歌として聴こえてきた。この違いはあまりに大きい。
しかも、アンコールでの「おやすみ」では「TODAY」とは対照的に歌詞の多くがかなり歌い替えられることになり、聴き取れた範囲では
〈少し迷ったっていいさ〉
〈少し迷っても 僕が助けてあげると そんなことは言わないけど 今は笑って欲しい〉
〈瞳は閉じたくないから 君の隣で歌うよ〉
〈自分がわからなくて 自分が足りなくて それでも期待して〉
〈今日はおやすみ〉
といったフレーズたちがあらたに歌われていた。主旨を違えることなく、その時点に最もフィットした歌を伝えられる千秋のこの才覚はつくづく素晴らしい。
一転しての「大塚ヘッドロック」では、プレイ前にグダクダのフリートークで場がゆるみまくり、ややシュールなモノマネが連打されたり、果ては千秋のフリでLUNA SEAの「ROSIER」を無理やりメンバーにコピーさせるも何故かサビまでたどりつかないなど(笑)、なかなかの無軌道ぶりまで久しぶりにみせてくれたところについては、全て千秋の優れた才覚をもってとりあえず帳消しとしよう。
かくして、アンコールのシメでは「「君の子宮を触る」」と「「切断」」でDEZERTならではの濃密なはっちゃけ方をしてくれた[「study」#11 –真夏の“TODAY”補習編–]は、かれこれMCも含めてトータル2時間半超という長丁場とあいなった。
終演後に観客らが規制退場をする際には、またもSacchanが(今回のMC中に千秋から実は最近13キロも痩せたとの情報アリ)インスト曲「-26時の冷凍庫–」を鍵盤で生演奏しながら見送るオマケ付で、集った人々は誰もが幸せな気持ちで帰途へと着いたことと思う。
さて。夏季集中補習が終わればやがて始まるのは2学期だ。
10月12日に発売されるあらたなシングル『The Walker』で、それこそ〈僕が踏み出す一歩〉の先を歩き出すことになるであろうDEZERTは、きっと次なるシーズンも今日というその瞬間を真摯かつ懸命な足取りで生きていくに違いない。
文◎杉江由紀
写真◎西槇太一
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「study」#11 –真夏の“TODAY”補習編–
2022年8月17日(水)SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
<SETLIST>
01 沈黙
02 おはよう
03 蝶々
04 Sister
05 MONSTER
06 蛙とバットと機関銃
07 「遭難」
08 浴室と矛盾とハンマー
09 飼育部屋
10 Hello
11 オレンジの詩
12 肋骨少女
13 「変態」
14 「遺書。」
15 insomnia
16 TODAY
En1 おやすみ
En2 大塚ヘッドロック
En3 チョコレートクリームチェーンソー
En4 「君の子宮を触る」
En5 「切断」
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<DEZERT最新リリース情報>
★NEW SINGLE 「The Walker」
2022年10月12日(水)発売
<初回限定盤(CD+DVD)> DCCL-245~246 / 2,750円(税込)
<通常盤(CD)> DCCL-247 / 1,650円(税込)
【CD】※初回限定盤/通常盤共通
1. The Walker
2. あの風の向こうへ
3. モンテーニュの黒い朝食
4. The Walker (instrumental)
5. あの風の向こうへ (instrumental)
6. モンテーニュの黒い朝食 (instrumental)
【初回限定盤特典】
・特典DVD付
The Walker Music Video -Director’s Cut ver-
The Walker Music Video -Behind the Scenes-
「神経と重力」Live Video at 日本武道館 (JACK IN THE BOX 2021)
・初回盤仕様ジャケットデザイン
・トレーディングカード 3枚入り(ランダム封入)
【通常盤特典】
・トレーディングカード1枚入り(初回プレスのみ。ランダム封入)
※トレーディングカードの絵柄は選べません。(全10種類)
<CDのご予約はこちら>https://DEZERT.lnk.to/lkh8oX
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<NEW SINGLE「The Walker」の購入者限定LIVE>
12月7日(水) Veats Shibuya OPEN 17:45 /START 18:30
≪NEW SINGLE「The Walker」購入者対象イベント≫ ※初回限定盤対象(通常盤は対象外となります。)
■「ポストカードにサインして渡スン会(かーい)」 10月15日(土)17:00 タワーレコード梅田NU茶屋町店6Fイベントスペース
■「生写真渡スン会(かーい)」 11月26日(土) 13:00~/14:00~ タワーレコード渋谷店5Fイベントスペース
■アコースティックライヴ 11月26日(土) 集合19:00 開始19:30 タワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUDIO
<購入者対象イベント / 店舗別購入者特典 詳細はこちら> https://www.dezert.jp/news/detail/5510
≪DEZERT最新ライヴ情報≫
■DEZERT × 夕闇に誘いし漆黒の天使達 “すっごいツインテールを決める会”
2022年10月28日(金) Shibuya WWW X OPEN 17:45 / START 18:30
■DEZERT × Royz “デザートとロイズでアナタのハートに火はツキマス~?…多分ダイジョウブデスっ!”
2022年11月15日(火) 東京キネマ倶楽部 OPEN 17:45 / START 18:30
【チケット料金】1F・オールスタンディング 6,000円(税込・全自由)
※整理番号付、入場時ドリンク代別途必要、営利目的の転売禁止、未就学児入場不可
【オフィシャルHP先行受付(抽選)】 https://eplus.jp/dezertxroyz1115-official/
受付期間:2022年8月20日(土)12:00~8月27日(土)21:00
入金期間:2022年8月31日(水)13:00~9月6日(火)21:00
※イープラス抽選受付、スマチケのみ、お1人様2枚まで(同行者登録有)
【一般発売】2022年9月25日(日)10:00~
(問) DISK GARAGE 050-5533-0888
■2023年 東名阪ツアー
2023年1月7日(土) なんばHatch
2023年1月9日(月・祝) 名古屋 DIAMOND HALL
2023年1月14日(土) TOKYO DOME CITY HALL
※詳細は後日発表
≪オフィシャルファンクラブ情報≫
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2022年08月18日 (木)
【ライヴレポート】<LM.C TOUR 2022「怪物園」>2022年8月1日(月)渋谷 duo MUSIC EXCHANGE◆ずっと待ち望んでいた夜。長く待ち焦がれていた夜。「今日こうして一緒に盛り上がれてることが本当に幸せです」
REPORT - 18:00:18ずっと待ち望んでいた夜。長く待ち焦がれていた夜。
今宵のLM.Cとわたしたちは、ようやく募りに募った想いを叶えることが出来たのである。
「Yeah!どうもLM.Cです。ツアー[怪物園]ファイナル、いよいよ始まりました!今日はブチあげていきましょう。ご覧のとおり、久々の発声ありのライヴということですがイケますか?今までたくさん我慢してきたり、調整してきたと思うんで、その想いを今日はぶつけていってください。まぁでも、別に無理して騒ぎ散らかす必要はないし。ただ、もう我慢しなくて良いっていうことではあるんでね。みなさん、好きにやっちゃってください!、よろしくお願いします!!」(maya)
思えば、ここまでの道のりの遠さは本当に相当なものだった。
今春に待望のアルバム『怪物園』が発表となり、そこから久々のツアーが開始になったはいいものの、紆余曲折があってまずはmayaの体調不良により一旦ツアーが中断とあいなり、それにもともないファイナルも延期となることに。
そして、ようやく振替公演や追加公演のスケジュールが決まりほぼそれを完遂しかけたところまで来て、なんと今度は6月末のツアーファイナル公演が開催される前夜になって、Aijiの突発性難聴が発覚するというアクシデントが勃発…。
幸いAijiの病状はそこまで深刻なものではなかったようで、すぐに復調したそうなのだが、本来であれば5月に終わるはずだったツアー[怪物園]のファイナルは、これらの流れから8月1日の渋谷duo MUSIC EXCHANGE公演まで持ち越されることになったのだ。
ただ、これらの事実は一方で怪我の功名?あるいは人生塞翁が馬といった、災い転じて福となる系のコトワザ的な事態が起きることともつながり、日程変更と共にライヴ会場が変更になったことによって、遂に政府ガイドラインは遵守したうえでの“発声”が可能となり、今回のLM.Cはようやく久しぶりに歓声と歓喜にあふれたライヴを実現することが出来たのだから、タイミングであったり時の巡り合わせというのはなんとも不思議なことしきり。
何事もなく春の段階でツアーが終わっていたのであれば、今回のような展開にはなっていなかったかもしれないのだと考えると、これはある意味で予想外の幸運が舞い込んだとさえ言えるような気がしてならない。
かくして、この夜アルバム『怪物園』の冒頭を再現するかのようにSE「開園」からの意味深な言葉とドラマティックな音世界が交錯する「Elephant in the Room」や、争いや諍いの絶えない現世をシニカルかつアグレッシヴに描いた「Valhalla」と2曲を最初に続けたところで、フロントマン・mayaは冒頭で書き出したような言葉をMCとして我々へと届けてくれることになったのだった。
しかも、このMC明けに演奏されたのが「DOUBLE DRAGON」であったというのも実に意味深い展開で、ここで歌われた〈誰も奪えないMelody 途切れないように 積み重ねる 最高のFantasy〉という歌詞は、まさにこの記念すべき夜にこそ最高に相応しいものだったと言えるのではなかろうか。
「いろいろと日程が変わったりしたことで、来られるはずだったのに来られなくなってしまった人たちがいるということも重々承知してはいるんですが、それでもこうしてバンドが続いてツアーファイナルが迎えられたというのは、とても幸せなことだと感じてます。久しぶりに声を出してもいいですよ、となっていることも凄く嬉しいしね」(maya)
ちなみに、このライブ当日の2日前=7月30日には同会場にてmayaのバースデーライヴが1日3部制にて行われており、これが実質LM.Cにとっての声出し解禁公演でもあったことから、2部の途中では観客たちが「It’s a Wonderful Wonder World」を歌いだした声を聴いたmayaの涙腺が感動で大崩壊する、という一幕があったこともここにしれっと付記しておきたいと思う。
とはいえ、まだまだ声を出すにはマスクが必要となり、全てが元通りというわけにはいかないのも厳然たる事実とはなるが、アルバム『怪物園』の中で失われし夏の情景を描いた歌としての存在感を滲ませていた「Lost Summer」、もともとはフィクションとして描かれたにも関わらず現実のパンデミックとシンクロしてしまった「Campanella」や「Happy Zombies」といった曲たちや、〈こんなばずじゃなかった そんな話さえ過去のモノ〉という歌詞が綴られていた「End of the END」が、今回のツアーファイナルでは“渦中”のそれとしてではなく、どれもそこから大きく一歩を踏み出した立ち位置から歌われていたことが何よりの救いであった、と感じたのは何も筆者だけではあるまい。
「みんなと一緒に歌えるこの状態を、自分はずっと求めてたんだなって今あらためて感じてます。多分、この2年半くらいはある種そこを諦めて受け容れてたんだろうね。だけどやっぱり、昔のみんなが歌ってる映像とかを観ると認めたくないけど「羨ましいな」って感じる自分もいてさ。そういう時期を経ての今があって、まだこの先もどうなるかはわからないけど、今日こうして一緒に盛り上がれてることが本当に幸せです」
本編後半で聴けた、タイトル通りの愛の歌である「The LOVE SONG」での〈掛け替えのない愛しき全てに 終わらない未来を描き続けるよ〉というメッセージ。LM.Cの描く真理が音と言葉の両方に凝縮されていた「The BUDDHA」。さらには、セトリにはなかったもののmayaの独断で急遽のブッ込みプレイが実現した「OH MY JULIET.」。
既にこの頃には、mayaやAijiが煽らずともフロアから曲にあわせた掛け声がしっかりとあがっていて、その様子は傍観していてとても微笑ましいものだったと言える。
なお、このあと「俺たちの志!」というmayaの叫びを受けてから始まった「PUNKY ❤ HEART」で本来ならば終わりだったはずのこのライヴは、結局またもう1曲「星の在処。-ホシノアリカ-」が追加されることで大団円を迎えることになったのだが、もともと東日本大震災が起きた時にLM.Cが希望をつなぐ歌として生み出したこの曲には、歌詞に〈輝きながら 泣いて笑った この居場所は誰にも譲れない〉〈加速し続ける 向かい風の中 その声を守るから〉というくだりがあるのだが。
あの震災の頃にも世間から目の敵にされがちだったエンタテインメントが、パンデミックの勃発でも何かとやり玉にあげられてきた中で、それでもLM.Cはやるべきことを常に果たしながらこれまでの日々を闘い抜き、そして遂にここに至ったのだという経緯を思うと…キラキラとしたポップチューンである「星の在処。-ホシノアリカ-」が、いっそうの輝きをたたえた宝物のような曲として聴こえてきた。
「どうもありがとうございました!(中略)今回のツアーはmayaの流行り病とか、自分の身体のこととかいろいろあって、15年LM.Cをやってきた中でこんなに予想外なことってなかったし、完走出来るのか不安だったこともありましたが、最後まで諦めずにやりきることの大事さも学べたツアーでした。ほんと、ライヴをやれるっていうのは当たり前じゃないっていうことを、あらためて実感しましたね。まぁ、急な振替だったんで今回は来られなくなってしまったという人もいると思いますが、来月にはLINE CUBE SHIBUYAでまたやるんでね。そこでもみんなで炸裂していきましょう!!」(Aiji)
「楽しかったです、ありがとうございました。この先もいろいろあると思いますけど、我々はこれからも活動をつなげていく予定なのでよろしくお願いします!LM.Cやってて良かった!!またね、Chao!!!」(maya)
来たる9月25日のLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でのワンマン公演[左耳のピアス。]は、LM.Cにとって昨年10月から続いてきた15周年イヤーの最後を締めくくる大切な場。こちらについては現状で会場側の方針により声出しはNGとなるそうだが、そうだとしても今回ここで待ち望んでいた夜を手に入れることが出来た我々は、もはやあれこれと憂いるべくもない。あとは少しずつ、より事態が良き方向へと動いていくのを待てばいいだけだ。
大丈夫。
LM.Cはこれからも、さまざまなかたちで我々の想いを叶えていってくれるに違いない。
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<LM.C Information>
▼LIVE
・2022年9月25日(日)
LM.C 15th Anniversary Live “左耳のピアス。”
LINE CUBE SHIBUYA
OPEN 15:30 / START 16:00
・チケット一般発売
8月20日(土)10:00~
▼Release
New Album「怪物園」発売中
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