2022年10月15日 (土)
【BUCK-TICK】祝デビュー35周年。横浜アリーナで2日間にわたり開催した『BUCK-TICK 2022 “THE PARADE” ~35th anniversary~』、DAY1“FLY SIDE”の模様をレポート!
REPORT - 18:00:34メジャーデビュー35周年を迎えたBUCK-TICKが、横浜アリーナで2日間にわたって行なった記念公演『BUCK-TICK 2022 “THE PARADE” ~35th anniversary~』。WOWOWでは両日の模様を放送・配信するが、まずは“FLY SIDE”と銘打ったDAY1、9月23日(土)の模様をレポートする。
オープニング映像に続いて鳴り響いたのは、「ICONOCLASM」の鋭い金属音とサイレンのようなギターリフ。紗幕状のLEDスクリーン越しに櫻井敦司(Vo)、今井寿(Gt)、星野英彦(Gt)、樋口豊(Ba)、ヤガミ・トール(Dr)の姿はまだ、透かし見ることしかできない。
極限まで期待が煽られる中、次曲「BABEL」で樋口が繰り出す、ひたひたと魔が迫り来るような不穏なベースイントロに乗せLEDスクリーンが上がり、全貌がようやく露わに。後方LEDには、神殿の土台なのか柱なのか、謎めいたメタリックなモチーフが出現、やがて巨大な塔へと積み上がっていく。
序盤で早くも現実を忘れさせ、観る者を引き込んでいくミステリアスな幻想世界。可動式のLEDスクリーンを活かした映像演出は照明と相まってリアルな奥行きを生み、眼前に次々と見知らぬ風景を描き出していった。
「唄」からの5曲は、初日と2日目とで全く異なるラインナップ。「月下麗人」を披露し終えると、「いらっしゃいませ。楽しんでね?」と語尾を上げ色っぽく挨拶する櫻井。アジアの湿った夜の花街を思わせる映像を用い、「舞夢マイム」の隠微な世界観を視覚的にも表現すると、「狂気のデッドヒート」では今井、星野、樋口が花道へ歩み出てプレイ。ヤガミは寸分の狂いもない鉄壁のプレイでステージを守っている。
「禁じられた遊び-ADULT CHILDREN-」は、優しい曲調とは裏腹に、バレエを踊る映像内の少女たちがやがて真っ逆さまに落下するショッキングな映像で幕切れとなり、度肝を抜かれた。歌い終えて櫻井は「全てのアダルトチルドレンに捧げます」と一言。たとえ歌詞に直接的な表現は無くとも、彼らの音楽の美しさは、人の痛みや苦しみに寄り添い、慈悲に裏打ちされている。今回のライブでは、BUCK-TICKというバンドの真摯さを、いつにもまして痛感することとなった。
パイプオルガンを思わせる荘厳な音色をギターで鳴らし、「相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり (2022MIX)」を呪文のように歌う今井。櫻井の姿はステージに見当たらず、その頭部がスクリーンで浮遊。閉じ込められた場所から出ようとするように激しく叩き付ける手の映像がコラージュされ、もはやライブというより前衛アートを体感しているような気分になる。
続く「楽園」はモスク風の紋様がステージに投影され、ヴェールをまとった聖女のような櫻井が登場。エキゾティックな音階とハードロックが融合した異色のミディアムナンバーは、その美しさで観る者を陶酔させ、同時に、殺し合いを止めない人間の業、傍観者に留まる“僕”の自問自答までをも描き出す。
「REVOLVER」ではムードを一変。明滅するライトの中、その歌声に、音に怒りすら感じさせる激情をメンバーはそれぞれに迸らせた。漆黒の星空と遊園地、戦火を思わせる赤い照明に息を呑んだ「ゲルニカの夜」。この日初披露となった新曲「さよならシェルター」はメジャーキーの明るい曲調だが、殺し合いを<狂っている 狂っているよ>と明確に訴える。35年という長いキャリアの折々で生み出してきた楽曲たちは、現在の社会情勢に驚くほどピッタリと重なり、普遍的なメッセージを携えていた。
BUCK-TICKというバンドは、美やファンタジーを駆使して常に真実を描き、傷付いた人々の心に寄り添ってきたからこそ、ライブ表現もこれほどまでに強い説得力があり、胸を打つのだろう。
「Go-Go B-T TRAIN」はカラフルでサイケデリックなアニメーションを背に、ミラーボールの光を浴びながら享楽的にパフォーマンス。星野はギターを身体から遠ざけるような、大きなアクションで熱くカッティング。イントロに乗せたメンバー紹介から始まった「Memento mori」に続き、会場を後方まで射抜くレーザー光線に包まれた「New World」では、オーディエンスの心の声に耳を傾けるように時折マイクを差し出した櫻井。本編はここで一旦幕を閉じ、会場には静寂が広がった。
ゴージャスなキャバレー風の映像世界の中、アンコール1曲目の「Django!!!-眩惑のジャンゴ–」が始まると、シルクハットと身を埋めるような羽根のストール、艶やかなラインダンサー風衣装で登場した櫻井。太腿を露わにしたその妖艶な姿のまま、32年前にリリースして以降、代表曲として聴き継がれている「惡の華」を披露。最後は、シンバルを鳴らし続けるヤガミのほうをメンバーが向き、呼吸を合わせてフィニッシュ。大きな拍手が鳴り響いた。「あまりしゃべらないようにしていましたが…」と櫻井は述べつつ、「35年もやってきました。また明日もやります」と語り始め、「35年前の、その時のアルバムから懐かしいやつ、聴いて下さい」との紹介から「ILLUSION」を披露。透明感に満ちたピュアな歌声、ロマンティックなアンサンブルは、全く色褪せることがなかった。
一度ステージを去って再登場すると、「Go-Go B-T TRAIN」のカップリング曲「恋」を厳かに歌唱、演奏した。銀河を思わせる暗闇と眩い光の世界がスクリーンに広がる中、続けて「夢見る宇宙 -cosmix-」を披露。振り返ればリリースは東日本大震災後のタイミングであり、慈しみ深い鎮魂歌。櫻井は両手でマイクを握り、仰け反るように渾身の力を込め切々と歌い届けていく。
「ツンとすますのもいいと思ったんですが…」と、通常はMCの少ない櫻井には珍しく口を開くと、「絶賛、今、レコーディング中でございます。感傷に浸っている間など、ございません。〆切が迫っております」とユーモラスにコメント。「35周年、皆さんにお礼を一言。ありがとうございます」と加え、10月からの全国ツアーにも言及。「皆さんまた、元気でいて、コンサートを楽しみましょう」と呼び掛ける。
今後の活動を列挙し、「まだまだ行きます」という力強い言葉も飛び出した。「皆さんにも祝福を!」と最後、ファンを讃えるように拍手を送ると天を見上げて「Solaris」へ。3曲から成るアンコール第二幕は、生と死をテーマに据えながら、美しい夢、幻を音楽によって描き出してきた彼らの軌跡を象徴していた。
この日披露したのは全21曲。この『BUCK-TICK 2022 “THE PARADE” ~35th anniversary~ FLY SIDE』の模様は、10月23日(日)午後6:00から放送・配信されるのでぜひご覧いただきたい。
さらに、DAY2の“HIGH SIDE”では、過半数を入れ替えたセットリストで繰り広げられ、我々を驚かせることになる。
その夜一体何が起きたのか、、、後日レポートでお届けしよう。
文:大前多恵
撮影:田中聖太郎
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【番組情報】
BUCK-TICK 2022 “THE PARADE” ~35th anniversary~
FLY SIDE 10月23日(日)午後6:00
HIGH SIDE 11月23日(水・祝)午後9:00
<WOWOWライブ><WOWOWオンデマンド>
※WOWOWオンデマンドでは、放送終了後~1カ月間のアーカイブ配信があります
収録日:2022年9月23日、24日
収録場所:神奈川 横浜アリーナ
【関連番組】
BUCK-TICK 魅世物小屋が暮れてから~SHOW AFTER DARK~ in 日本武道館
10月21日(金)午後5:30 <WOWOWライブ><WOWOWオンデマンド>
※WOWOWオンデマンドにてアーカイブ配信中
※全番組、WOWOWオンデマンドの無料トライアル対象外です
【番組サイト】
https://www.wowow.co.jp/music/bt/
【WOWOW公式note】
https://note.wowow.co.jp/n/n704836b2982f
2022年10月12日 (水)
【ライヴレポート】<fuzzy knot Tour 2022 ~BLACK SWAN~>2022年10月9日(日)新宿BLAZE◆「またこの生命力溢れる空間を共に分かち合おう。楽しんで生きていこう!」
REPORT - 18:10:56fuzzy knotがミニアルバム『BLACK SWAN』のリリースに伴い、初めての全国ツアー<fuzzy knot Tour 2022 ~BLACK SWAN~>をスタートさせたのは8月11日のこと。初日はShinjiと田澤が出会った場所でもある、埼玉・HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3。
終演後、楽屋を訪ねると田澤孝介が言った。「なんかね……さっき(ライブ中)も言ったけど、ステージへ上がる時に『これがファイナルになるかもしれない』と思って歌うんですよ、最近は。後悔なんて一つも残したくない。俺の全部を出し切ろうってね」。
それからfuzzy knotは宮城、福岡、大阪、愛知、神奈川を回り、ついに10月9日、ツアーファイナルを迎えた。
この日、東京では昼過ぎから雨が降っていた。
会場は今年1月の東阪ライブ<fuzzy knot Live 2022 ~S.T.F.~>の最終公演でも立った東京・新宿BLAZE。
会場の前で自分の整理番号が呼ばれるのを待っている人たちは、みんな長袖のシャツやニットなど、すっかり秋の装いになっている。
開演30分前に場内へ入ると、すでに大勢の観客がフロアに集まっていた。
fuzzy knotのライブではSEにShinjiと田澤が影響を受けた楽曲が流れるため、それが開演前の面白い要素の1つとなっている。
布袋寅泰の「さらば青春の光」、平沢進の「BERSERK -Forces-」など90年代の名曲を聴きながら、4、50代のベテランスタッフが「めちゃくちゃ懐かしい!」「青春時代に聴きましたね!」と盛り上がっていた。
そして18時になり「間もなくライブが始まります」というアナウンスの後、静かに会場の明かりが落ちた。
ステージに青と白いスポットライトが交互に激しく光り、雷を想起させる中、まずはサポートメンバーの工藤嶺(B)と与野裕史(Dr)がステージイン。
そして銀髪にオールバック、黒いアイシャドウを施したShinjiが姿を現し、無表情のまま客席に手を掲げる。
同じく銀髪に黒いアイシャドウの田澤が登場し、フワッと天井に腕を伸ばした瞬間、美しくも不気味なギターのイントロが鳴り「Inferno」で幕を開けた。
思わず誰もが体を動かすことを忘れて、直立でじっと見つめてしまうほど荘厳な雰囲気。
ツアー初日と違うのは、楽曲の持つスケール感を見事に表現しながらも、音の中に凶暴性も加わっていることだ。
田澤の伸びやかな歌声もさることながら、Shinjiのキレが明らかに違う。演奏、表情、動きにまで鬼気迫るものがあり、思わず息を呑んだ。
1曲目からfuzzy knotの覚醒っぷりを堪能したところで、田澤が「ツアーファイナル、楽しむ準備はできてるかーい!」と観客に声を飛ばすと、フロアから一斉に腕が上がった。それを見て頷くと「好きにやってみな」と呟いて「遠隔Reviver」へ。
そして「Joker & Joker」ではShinjiが自身のギターに合わせて、軽やかなステップを踏む。田澤がモニターに乗って「イエーイ!」と声を上げると、フロアに地の底から湧きかえるような熱気が生まれた。
怒涛の勢いで3曲を披露し、観客が歓声を上げられない状況を前にして田澤が「すごい、みんなの声が聞こえた気がした。
美しい世界が始まっている……」と笑みを浮かべた。「どの公演でも口にしてきたし、実際問題そういう気持ちでやってきたんですけど、(ツアー)何本目とかっていうのは僕らの都合なだけであって。確かにツアーファイナルですけど、今日が初日の人もいれば、すでにfuzzy knotのツアーを終えた人もいる。常に初日でありファイナルであると、そういう心構えでやってきました。
とはいえ、まあ名実ともに今日が本当にファイナルでございます。ただ、ずっとファイナルのつもりでやってきたので、精神的には何も変わりません。
今日という日を“最高”な時間にしようっていうのは、変わらないので悔いのないようにさ、俺らの全部を持って帰ってほしいと思ってるんで、最後まで楽しんでくれ。いいですか?」。
田澤の呼びかけに観客は力一杯の拍手で応えた。
「オッケー! 身も心も弾ませて行こうと思っておりますので、楽しんでいってください」と言って、4曲目「トリックスター・シンドローム」へ。
Shinjiがギターを弾きながら低い体勢になり、上半身を上げ下げしてリズムを取りながら揺れている横で、
田澤は音に体を預けるようにリズミカルに、力強く歌い上げる。続く「カミカゼスピリット」ではShinjiのギターソロが始まると、隣で拳をグッと握り1音1音を噛み締めるように聴く田澤。お互いの音に呼応するように演奏や歌を鳴らす姿からは、結成して1年半の間にfuzzy knotがバンドとして結束力を高めていった様子が伺える。
「みんなが声を奪われて3年近くが経つじゃないですか。でも、物理的な問題ってだけかもね。精神的には戻ってきてるのかもね、俺たちは。だから冒頭で『声が聞こえる』と言ったのは嘘でもなんでもなくて。今回のツアーはすごくいい感じで回ってこれてるってことを、Twitterでも囀ってるんですよ。
僕らそれぞれは割と活動歴の長いベテランミュージシャンですけど、fuzzy knotはまだまだ新人バンドでございます。
ようやく、この前の『BLACK SWAN』で(オリジナル曲が)18曲になってね。ライブの本数も少なかったし、色々と固まっていない中でツアーをやらせてもらって。ほんまにみなさんとfuzzy knotを作れているなって感覚を得ています。
今日初めてfuzzy knotを観る方にも、その成果をお見せ出来ていると思う。
この先、活動を続けていく中でもっと洗練されていくし、もっとカッコ良くなっていくけれども、現時点で『これがfuzzy knotです』と胸を張って言えるものに出来ているので、引き続き楽しんでもらいたい」。
そう言って、田澤はこれまで作ってきた曲についても話した。
「曲を作る上でShinjiからの指示はなくて『田澤さんの思うように歌詞を書いていいよ』と言ってくれているので、曲を聴いて導かれた世界観を言葉に変えさせてもらっていて。ライブのセットリストとして、それらを並べていくと曲と曲が繋がって、思ってもいなかったストーリーになってる。それを感じてもらえる機会があるのも、ライブの良いところだなと思っております。
次は『みんなの心を掴んでいろんな方向に引きずり回すセクション』です。じっくりと楽しんでもらえたらと思います」。
前半戦の実験的であり攻撃的なナンバーを終えて、中盤戦は情熱のうねりを表しているような「深き追憶の残火」でスタートした。
田澤がフロアの近くに立って歌い、その後ろでShinji、工藤、与野がトライアングルのように、互いに向き合って演奏。
本来fuzzy knotは田澤とShinjiのユニットではあるが、ステージの上は4人でfuzzy knotだった。Cメロで綺麗なアルペジオをバックに「いつまでも 繋いでた指と」と儚い声で歌いながら、しゃがんで宙を見つめる田澤。
「夢を置き去りに……ウワァー!」と声に力をこめた瞬間、一斉に4人の爆音が重なっていく光景は、まるでビッグバンだ。
そして寸時の沈黙の後、夕焼け色のスポットライトがふわっとShinjiだけを照らすと、悲しくブルージーなギターが鳴った。
「哀歌 -elegy-」だった。田澤は声を震わせるように歌うだけでなく、表情や全身を使って悲哀を表現し、最愛の人を失くした主人公の想いを憑依させて歌い上げた。
その後「ペルソナ」を演奏すると、田澤だけが袖へはけて3人でBand Sessionが始まった。
お互いの息遣いや表情を見ながら、一挙手一投足で鳴らしていく即興のブルース。そのままシームレスに「愛と執着とシアノス」へと突入。
この日のライブを観ていて感じたのは生々しさである。これまでのfuzzy knotのステージは楽曲の魅力を丁寧に伝えていく印象を受けたが、今回はCDに収められていない遊び心を感じられたし、既にリリースされた音源というキャンバスの上に、絵の続きを描き足しているような演奏だった。
中盤戦が終わり、ここでShinjiが初めて口を開く。
「なんかね、世間では『夏が終わった』とか言ってますけど、終わってなかったね。チーアーだよ、この会場は」と言うと、観客がウンウンと深く頷き拍手を送った。「このツアーは1本ライブをしたら、次は2週間後に他の場所でやるっていう感じで、そんなにスケジュールが詰まっている感じではなかったんだけど、やっぱり終わっちゃうと思ったら寂しいね。あのね……昨日ふと思ったんですよ。こうやってツアーを重ねるとさ、なんかグルーヴが出来ていくんだよね。演奏もそうだけど、演奏以外のことでもね。だからもっとツアーをやっていたいなと思うんだけど、終わってしまうなって」とShinjiが言うと、田澤も「確かにね。ステージ以外の部分でもメンバーやスタッフのみんなと一緒にいれて、いろんな話をして、その時間全部がfuzzy knotをやってるなって感じなんですよね。ステージだけじゃなくて、『次の曲はこんな風にしよう』とか水面下で動いてる時も俺らにとってはfuzzy knotの時間だから。しばらく、それがなくなるのは寂しいなと思う」と言葉を重ねた。
2人とってはもちろん、ファンにとってもfuzzy knotはシドやRayflowerのサイドバンドではなく、れっきとしたメインのバンドになっている。
ふとShinjiが「寂しいね」と言葉を漏らすと、「じゃあ、またやろうよ」と田澤。
「うん、やろう。僕がやってるシドは来年で20周年なんだよね。だからシドもいろいろと活動すると思うんです。ただね、せっかくグルーヴィにやってきたfuzzy knotをまるっきり止めてしまうのはもったいないなと思って。これからの予定は何も決まっていませんけど、ちょっと食い込ませたい」と来年への思いを口にすると、田澤も「ええやん! 僕はいつでも!」と今後の展開について士気を上げた。
このまま次の曲へ行くかと思いきや、Shinjiが「ところでさ、卵を上手に割れるようになった?」と新しい話題を切り出す。
心の中でズッコケる観客。そこから、最近チキンラーメンにハマっていて、卵を綺麗に割ることができない田澤に割り方をレクチャーする流れに。
意気揚々と話すShinjiと要所要所でツッコミを入れる田澤を見て、終始フロアからは笑い声が絶えない。
圧巻のライブパフォーマンスで魅了したと思いきや、MCでは夫婦漫才のような掛け合いをするギャップも実にfuzzy knotらしい。
会場の空気が和んだところで田澤がタンバリンを持ち「Sunny Days」「こころさがし」を披露し、会場の一体感を作り上げた。
そして12曲目で空気が一変する。ピアノの音とともに青いライトに照らされたミラーボールがクルクルと回り出す。
ゆらゆらと場内全体を照らす光の粒は、まるで雨を表しているようだった。そんな中、演奏したのはバラード曲「キミに降る雨」。
1番のAメロを歌っている時、田澤が泣きそうになっているように見えた。
ラストのフレーズ「願うことが 叶うなら キミに降る雨が 優しさ溢れるものに」と歌った時、先ほどとは打って変わって表情は晴れやかになり、ステージを白い照明が包み込んでいて希望の世界が広がっていた。
観客がしっとりとした雰囲気に酔いしれていると、田澤が静かに口を開く。「ある時期から“最高”って言葉を使わなくなったんですよ。
なぜかって言うと、あまりにも“最高”と言っちゃうと『どれが1番やねん』って自分でも思うし、周りからも思われる気がしたんです。
だけど、またある時からそのルールを辞めたんですよ。最高って思う瞬間があったことは真実やし、それがいくつあってもいいやんけ、と。
仮に『今日、最高』と言って『前回よりも超えたってことですか?』と聞かれたとして、別に上下のことじゃないんだよね。
『ああ、今最高。幸せ』と思う瞬間があるっていう事実がすごく大切なんじゃないかなって。そう思ってから、僕は毎回『最高』と言えるようになった。
ここから後半戦でございますけど、より心と体をいっぱい動かして、満たされて帰ってほしいなと思っております!」。
その後、ジェットコースターのような目まぐるしい勢いで進んでいった。「Set The Fire !」「ダイナマイトドリーム」で全員が手を挙げてジャンプ。
「ダンサー・イン・ザ・スワンプ」「Hello, Mr. Lazy」「#109」と楽曲の連打が続くと、さらに心臓の鼓動が加速した。
観るものを前のめりさせる求心力が凄まじい。田澤の呼びかけに、両手を上げて全身全霊で体を揺らす観客。
ステージとフロアの熱気で、室内の温度は上昇していった。
フィナーレを飾ったのは「Before Daybreak」。サビの「幸せよ 降り注げ」と歌った時、2人は同じモニターに乗り、ギターを弾くShinjiに肩を組む田澤。
互いに顔を見合わせた瞬間、ステージに全快のスポットライトが点った。そこにはキラキラした少年のような2人の眩しい笑顔があった。
エンディングが流れて盛大な拍手が起きる中、嬉しそうな表情を見せてShinjiがマイクを握った。
「田澤じゃないけどさ、『最高』って俺も軽々しく言いたくなくて。でも、今日最高じゃん! ありがとうございました!」。
最後の挨拶を終えてShinjiがステージを去った後、1人残った田澤が真っ直ぐ観客を見つめた。
「fuzzy knotの活動はしばらく空くけど、またこの生命力溢れる空間を共に分かち合おう。とにかく楽しんでいこう!
楽しんで生きていこう! 俺たちの未来は明るいぜ!」。
こうして2時間におよぶ<fuzzy knot Tour 2022 ~BLACK SWAN~>のファイナルは幕を閉じた。
……しかし、ここでライブレポートを終えるわけにはいかない。僕は、終演後に2人のところへ行った。
――お疲れ様でした! ツアーの手応えはどうでしたか?
Shinji「ライブをやる度に、どんどん良くなっていったよね」
田澤「MCで言っていたことは本音で。一緒にfuzzy knotを作っていけてる、みたいな感覚がありましたね。
それはスタッフも込みでね。毎ライブ後『この曲のあそこはこうした方が良いと思うよ』とか、みんなの考えを反映して色々と見つけていけたツアーでした。
そういう意味では、ほんまにみんなで作っていけた感じがして、それが嬉しかったですね。なかなか、ないじゃないですか? ベテランになってくると(笑)。人の言うこともあんまり聞きたくないし」
――キャリアを重ねれば重ねるほど、自分のやり方が固まっていきますしね。
田澤「だけど、今回はすぐに取り入れました。『あそこはこうだと思うよ』『じゃあ、やりましょう!』みたいな。
セットリストも初日とはMCの位置も変わったりしてるので、その辺もみんなで作っていきましたね」
――今回のツアーは一発目に「Inferno」から始まる構成でしたね。初日も素晴らしかったですが、今日はパフォーマンスの凄みが格段に向上して見えました。
田澤「自分らの魅せ方を覚えていったのかもしれないですね。実際に鳴らしてみて分かることって多いじゃないですか。
そういう意味では、最初と最後を観ていただいて差を感じたのは嬉しい意見ですね」
Shinji「あれが1曲目で良かったよね」
――生感がすごかったんですよね。その場でしか聴けない演奏というか、バンドの生々しさを感じたのが印象的でした。
田澤「うん。前までは『音源を忠実に再現しよう』ってスタンスだったかも。今回のツアーはそれを辞めて
『今歌いたい、今鳴らしたいことをやろう』みたいに決めていたんです。だからこそ、生感というかライブ感を感じでもらえたのかなと思います」
Shinji「最初の頃はね、覚えるだけで精一杯な感じだったから。活動を通して、本当に変わっていったよね」
こうして2ヶ月に渡るfuzzy knotの初全国ツアーが終わった。MCでも話していた通り、今後の予定はまだ決まっていない。
次はいつ、ステージで2人の姿を見れるのだろうか。そして、今度はどんな世界を見せてくれるのだろうか。
本公演の様子は、後日VR動画で配信が決定。詳細はオフィシャルサイトをチェック。
文◎真貝 聡
写真◎江隈 麗志
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fuzzy knot「fuzzy knot Tour 2022 ~BLACK SWAN~」
2022年10月9日 新宿BLAZE セットリスト
01. Inferno
02. 遠隔Reviver
03. Joker & Joker
04. トリックスター・シンドローム
05. カミカゼスピリット
06. 深き追憶の残火
07. 哀歌 -elegy-
08. ペルソナ
09. 愛と執着とシアノス
10. Sunny Days
11. こころさがし
12. キミに降る雨
13. Set The Fire !
14. ダイナマイトドリーム
15. ダンサー・イン・ザ・スワンプ
16. Hello, Mr. Lazy
17. #109
18. Before Daybreak
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<リリース情報>
★Mini Album「BLACK SWAN」発売中
<楽曲配信はコチラ> https://fuzzyknot.lnk.to/uwWwS9
<通常盤>品番 DCCA-103 2,200円(税込)
【通常盤 取り扱い店舗】
TOWER RECORDS(オンライン含む) https://tower.jp/item/5442639
HMV https://www.hmv.co.jp/product/detail/12956152
A-DELI https://shopping.deli-a.jp/artist/item_Info.php?itemID=12414
※その他取り扱い店舗の詳細については、各CDショップ等へお問い合わせください。
■fuzzy knot「Inferno」Music Video https://youtu.be/b-B05i9CNJM
fuzzy knot オフィシャルサイト https://www.fuzzyknot.com/
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Shinji オフィシャルTwitter https://twitter.com/shinji_sid
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田澤孝介 Twitter https://twitter.com/takayuki_tazawa
田澤孝介@STAFF Twitter https://twitter.com/tazawa_staff
2022年10月11日 (火)
【ライヴレポート】<キズ 単独公演「そらのないひと」>2022年10月9日(日)日比谷野外大音楽堂◆雨を味方につけた熱演で初の日比谷野音を完全制覇!2023年にNHKホール単独公演が決定!
REPORT - 21:00:16刺激的な楽曲と独自のスタンスで注目を集めるキズが、10月9日に初の日比谷野外大音楽堂単独公演「そらのないひと」を開催した。このライヴは、5月14日にソールドアウトで大成功を収めた日本青年館ライヴで発表されたもの。さらにキャパシティを上げた野外の舞台で、進化を遂げたキズの世界が解き放たれた伝説的な一夜となった。
朝は晴れ間が見えていたにもかかわらず、ライヴの開場を待っていたかのように降り出した雨。空は雲で覆われ、皮肉にもタイトルにぴったりの空模様だ。
彼ら自身もそれを見越していたのか、雨や雷をフィーチャーしたオープニングムービーを経て、来夢(Vo&Gt)がアカペラで歌い出したのは「黒い雨」。雨音を切り裂くように鋭い歌声が響いたあと、reiki(G)、ユエ(Ba)、きょうのすけ(Dr)の音が加わり、切実なメッセージを届けていく。そこから「首置いて帰れ!」という来夢のシャウトを皮切りに「地獄」「ステロイド」と畳みかけ、一気に轟音で制圧。オーディエンスもヘッドバンギングや拳で応え、雨天という逆境だからこその一体感に圧倒された。
きょうのすけの獰猛なビートが牽引する「ヒューマンエラー」や、reikiの印象的なリフに手拍子が湧いた「蛙 -Kawazu-」、ユエの耽美なベースラインが映える「ミルク」など、オールタイムベストなセットリストにそれぞれの個性が滲む。その中央で、ハイトーンからシャウトまで多彩な声を使い分け、生々しい感情を容赦なくぶつけながら君臨する来夢。より研ぎ澄まされた4人の存在感が目に焼き付いた。
中盤、reikiのギターと優しいメロディが絡み合うミディアムチューン「15.2」に続いて、来夢がアコースティックギターを掻き鳴らして始まった「平成」では、ただ過激なだけではないエモーショナルなステージを展開。アコギを担いでステージ前方に身を乗り出した来夢が「今日という日を俺らと一緒に生きてくれ!」と熱く叫び、熱狂を加速させていく。ラストを飾ったのは、会場全体がジャンプで揺れた「傷痕」から、最新シングル「リトルガールは病んでいる。」。ヘヴィなサウンドに乗せて、暗い世界情勢に想いを馳せずにいられない歌詞を来夢がラップを交えて歌いあげる。最後は来夢ひとりがステージに残り、「今」生きていることをオーディエンス一人ひとりの心に、そして彼自身の心に刻みつけるような絶唱で本編の幕を閉じた。
本編の終了とともに雨が上がるという劇的な自然の演出を受けて始まったアンコールは、再びヘッドバンギングの波を生み出した「十七」でスタート。キズとしては異色のギターロックナンバー「鳩」でフロント3人がドラム台に座りながら演奏するなど、本編とは打ってかわって温かなムードだ。さらに、「おしまいにしよう」と初期からのキラーチューン「おしまい」を投下。暴れ納めとばかりに沸点を上げつつも、ヴィジョンに映るメンバーとオーディエンスの表情には清々しい笑顔が溢れている。白熱のライヴを讃えるように雨上がりの空に金テープが舞い、目映いフィナーレを迎えた。4人それぞれ名残惜しそうに客席を見つめて礼をし、「世界がどうなろうと、俺らは音楽をやり続ける。これが俺らの平和だ!」という来夢の宣言で、初の野外単独公演を堂々締め括った。
興奮冷めやらぬ終演後、新たなライブ情報が届けられた。12月24日(土)に男限定GIG「漢地獄」、12月25日(日)に女限定GIG「女地獄」が、浦和ナルシスにて開催される。男性限定ライヴは今年2月以来、女性限定ライヴは初。彼らならではのクリスマスプレゼントとなるのか? チケットは現在ブログマガジン会員の先行受付中なので要チェックだ。
さらに、来る2023年3月26日(日)には、NHKホールでの単独公演「残党」の開催が決定した。日比谷野外大音楽堂を制し、またひとつ、さまざまな名演が繰り広げられてきた伝統あるステージに立つキズ。進み続ける彼らから、ますます目が離せない。
ライブレポート:後藤 寛子
LIVE PHOTO:小沼 高(Takashi Konuma)
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<セットリスト>
キズ 単独公演
「そらのないひと」
2022年10月9日(日)
日比谷野外大音楽堂
01. 黒い雨
02. 地獄
03. ステロイド
04. 銃声
05. ヒューマンエラー
06. 蛙-Kawazu-
07. ミルク
08. 15.2
09. 平成
10. Mr.BiG MONSTER
11. 0
12. ストロベリー・ブルー
13. 傷痕
14. リトルガールは病んでいる。
ENCORE
EN01. 十七
EN02. 鳩
EN03. 日向住吉
EN04. おしまい
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★キズ オフィシャルサイト★
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【LIVE情報】
キズ単独公演
「残党」
2023年3月26日(日) NHKホール
※詳細後日発表
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キズ 男限定GIG
「漢地獄」
12月24日(土) 浦和ナルシス
開場 16:30/開演 17:00
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キズ 女限定GIG
「女地獄」
12月25日(日) 浦和ナルシス
開場 16:30/開演 17:00
——————————-
[チケット]
スタンディング
前売 ¥6,000 (諸経費込 / D別) 当日 ¥7,000 (諸経費込 / D別)
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