2022年11月10日 (木)
【ライヴレポート】デビュー35周年を迎えたBUCK-TICK。アニバーサリーライブ<BUCK-TICK 2022 “THE PARADE” 〜35th anniversary〜>から、DAY2“HIGH SIDE”の模様をレポート!11月23日(水・祝)午後9:00よりWOWOWにて放送・配信!
REPORT - 18:00:43メジャーデビュー35周年を祝し、去る9月23日(金・祝)・24日(土)、横浜アリーナでの2DAYS公演『BUCK-TICK “THE PARADE”~35th anniversary~』を開催したBUCK-TICK。10月に既にWOWOWで独占放送・配信されたDAY1“FLY SIDE”に続き、DAY2“HIGH SIDE”は11月23日(水・祝)午後9:00から放送・配信。以下、DAY2の模様をレポートする。
メンバーの登場前からオーディエンスをBUCK-TICKの世界へと惹き込んでいくオープニング映像に続き、鳴り響いたのは「エリーゼのために」のロックンロールなリフ。アグレッシヴな幕開けにゾクゾクとさせられるのはDAY1の「ICONOCLASM」同様だが、より明るく開放的な滑り出しという印象。「BABEL」が始まると、ステージ手前をヴェールのように覆っていた巨大LEDスクリーンが上昇、櫻井敦司(Vo)、今井寿(Gt)、星野英彦(Gt)、樋口豊(Ba)、ヤガミ・トール(Dr)の姿が出現する。五者五様バラバラの個性がBUCK-TICKという歪で美しい集合体。早くも非現実的な異世界がそこには広がっていた。
「こんばんは、今日もたくさん集まっていただいて、ありがとうございます」と語り始め、「35周年を皆さんにたくさん祝ってもらって、本当に幸せな5人でございます」と感謝を述べる櫻井。「いろんな曲をやろうと思ってますので、皆さんも楽しんでいってください」との予告通り、初日とはまた違った楽曲の数々をこの日は披露。とはいえ、5年前のようにくっきりと色が異なるわけではなく、中心となるテーマは両日共通で据えた上でセットリストが構築されている、という違いがあった。
「Tight Rope」ではパントマイムのような櫻井の舞いによって、まるで死の綱渡りをまざまざと目の当たりにするかのように幻視。星野がターンを繰り返しながら鋭いカッティングリフを刻む「見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ」はダークでヘヴィーに、続く「MOONLIGHT ESCAPE」では空気を一変して柔らかく清らかに。背後のLEDスクリーンに霧の立ち込める森、満月が映し出される中、逃げる(ESCAPE)ことを優しく赦すように歌い奏でていく。この曲のラスト、今井が寝そべってプレイする姿にも目を奪われた。極彩色の心臓や手が躍動するサイケポップなアニメーションを背に、櫻井が腰をくねらせながら歌い踊った「ダンス天国」。「BOY septem peccata mortalia」ではメンバー全員がとりわけエモーショナルな動きを見せ、樋口も立ち位置からグッと前へと歩み出てプレイ。歌詞にある<ケダモノ>を具現化するように、櫻井は這いつくばり舌なめずり。ここまで5曲のブロックはDAY1とは総入れ替えで、DAY2のみの披露。幻想的であると同時に、人間という存在の美しい部分も醜い部分も、光も闇も、目を逸らすことなく描いてきたBUCK-TICKならではの、本質を抉り出すような楽曲が並んだ。
曲間に生じる静寂を、今井寿の奏でる摩訶不思議なギターサウンドが埋めていく。それは前曲の余韻であったり、次曲の予告編のようであったり、あるいは全くオリジナルであったりするのだが、ライブの道先案内のような役割を果たしていたのも印象的。音楽と照明、映像の相乗効果によって生まれる幻想世界、そして何より5人の佇まいと存在感は、比類なき独自性を誇る。ライブ会場というよりも魔界に迷い込んだような、あるいは謎めいた劇場に足を踏み入れたような、BUCK-TICKのライブでしか体感できないムード。WOWOWでの放送・配信は、それに触れられる絶好の機会となるだろう。
「相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり(2022MIX)」から「楽園」、「REVOLVER」、「ゲルニカの夜」、そしてコンセプトベストアルバム『CATALOGUE THE BEST 35th anniv.』に収録されている新曲「さよならシェルター」までのシークエンスは、DAY1と不動の選曲。直接的な言葉を用いたプロテストソングではないものの、反戦のメッセージ、為す術ない傍観者の自戒の念、犠牲になる弱き者たちへの眼差しを感じ取ることができる選曲であり、2日間連続で届けなければならないライブの核であったのだろう。BUCK-TICKは自身の35周年という節目のライブに祝祭ムードに染まることを選ばず、この時代を生きるロックバンドとして届けたいメッセージを、驚くほど力強く示した。その決意と覚悟が伝わってくる、骨太なセットリストでありライブ表現になっていた。
「Go-Go B-T TRAIN」ではミラーボールが輝きスモークが噴出、キッチュでカラフルな映像演出を背に、陽気な歌と演奏で狂騒的に。初日の「Memento mori」に代わってこの日は「ROMANCE」を炎が揺らめく中で披露。櫻井はつば広のハットで燭台を手にし、貴婦人のような装いであるのに太腿を大胆に覗かせ、蠱惑的な風貌。その強烈なヴィジュアルインパクトが象徴するのは、誰にも何にも媚びることなく35年にわたって歩み続け、今なおベテランバンドという肩書きや年齢を超越している、BUCK-TICKというバンドの孤高のスタンスである。
「New World」で本編を終えると、アンコール第一部ではメジャー3rdアルバム『TABOO』から「ANGELIC CONVERSATION(2022MIX)」を披露。光が天に昇っていくようなLEDスクリーンの眩い演出と、ステンドグラスから日が差し込む荘厳な教会の映像に息を吞み、厚く折り重なりながらも決して音が濁らない美しいアンサンブルに聴き惚れた。純白から漆黒へと転じるように、「惡の華」はとことんダークに疾走。そして、生も死も喜びも悲しみも、すべてを包み込んで浄化するような「HEAVEN」でピースフルに幕を閉じた。
アンコール第二部は、現時点での最新オリジナルアルバム『ABRACADABRA』のラストに収められている「忘却」で密やかにスタートした。J-POP的と呼んで過言ではないほどキャッチーな歌のメロディーと、深遠な死生観が映し出されたシリアスな歌詞。35年超のキャリアを誇るBUCK-TICKだからこそ醸し出せる重厚さ、説得力は、ライブ終盤にふさわしい深い余韻をもたらした。「35周年始まったばっかりなので、いろいろやることたくさん……幸せなことに、あります」と櫻井。「明日からアニイ(ヤガミ)とユータ(樋口)にはツアーのリハーサルに入ってもらいます」と告げると、二人は(ヤガミは声を上げて)笑った。「そして、今井さんとヒデ(星野)は新曲をつくってもらいます。夜が明けたら始めてもらいます。私は、寝ます」と茶目っ気たっぷりに締め括ってニヤリと口角を上げた櫻井。メンバー紹介ではヤガミが力の漲ったドラムソロを披露。「還暦になると体が重たいんですよね」とのコメントに、「明日からリハーサルに入っていただきます」と櫻井は返し、笑いを誘った。そんなユーモラスなやり取りにも、バンド内の良好なムードが伺える。横浜アリーナ公演の後全国ツアーが開始することから、「次は皆さんの街へ“PARADE”が行きます。今日はありがとうございました。皆さんに、幸あれ」と結んだ。
その後届けられた「夢見る宇宙 -cosmix-」は、「忘却」の後に披露されたことで、死後の魂の行方まで描いてみせてくれているような、温かな救いを感じさせた。そして、「夢見る宇宙 -cosmix-」から最後の曲「鼓動(2022MIX)」へ、星々が煌めく銀河の映像を背に続けて届けたことによって、死の後に訪れる再生、祈り、生命の尊さ、未来の存在を強く意識できた。穏やかな表情を浮かべながらも最後まで渾身のパフォーマンスを繰り広げたメンバーたち。2DAYSの終わりに届けられた前向きなメッセージから、BUCK-TICKというバンドの包容力と、これからも歩み続ける強い意思を感じさせた。MCにもあったように、35周年のアニバーサリーイヤーはまだ始まったばかり。新しく自分たちが生まれ変わっていくことを厭わない、絶えず攻めていくロックバンドとしてのBUCK-TICK 。その姿勢と魅力を再確認できる、濃密な2DAYSだった。
◎撮影:田中聖太郎
◎取材・文:大前多恵
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【番組情報】
BUCK-TICK 2022 “THE PARADE” ~35th anniversary~ HIGH SIDE
11月23日(水・祝)午後9:00 <WOWOWライブ><WOWOWオンデマンド>
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収録日:2022年9月24日
収録場所:神奈川 横浜アリーナ
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【関連番組】
BUCK-TICK 魅世物小屋が暮れてから~SHOW AFTER DARK~ in 日本武道館
12月28日(水)午後5:30 <WOWOWライブ><WOWOWオンデマンド>
※WOWOWオンデマンドでは、全番組、放送終了後~1カ月間のアーカイブ配信があります
※全番組、WOWOWオンデマンドの無料トライアル対象外です
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【番組サイト】
https://www.wowow.co.jp/music/bt/
2022年11月02日 (水)
【ライヴレポート】<PENICILLIN30th anniversary 『ROCK ×ROCK 2022』「The Time Machine ~Return of mouth to mouth~」>2022年10月2日(日)恵比寿LIQUIDROOM◆30周年を迎え、ニューアルバム発売も控えた中での恒例・千聖BDライヴ!
REPORT - 19:00:59ロックバンドの花形ポジションは、今や“ギターソロ不要論”がシーンに蔓延るようになったこの状況においても、やはりどうしたってギタリストだと信じて疑いたくない。もちろん、フロントマンとなるヴォーカリストの存在感は重要であるし、ベーシストの粋なプレイや、ドラマーの頼もしい支えがあってこそ成り立つのがロックバンドだとは思うものの、とにかくギターヒーローのいないロックバンドは気の抜けたビールのようで個人的にはどうもいただけないのだ。そして、カッコ良いギターヒーローがいてこそロックバンドとはキレとコクを醸し出すことが出来る、というひとつの観点からいけば。まさに、PENICILLINにおいては千聖がその任をこの30年にわたって見事に果たし続けて来てくれていると言えよう。
「こんばんは、PENICILLINです。今回は昨日と今日にわたり、千聖くんのバースデーライヴとして毎年恒例の[ROCK×ROCK]をやっているわけですが、千聖くんは今年で33回目くらいの18歳になるそうです(笑)。そして、今年はちょうどPENICILLINが30周年の節目でもありますからね。先月やったO-JIROくんの誕生日ライヴ[とのさまGIG]に引き続いて、またここでも「The Time Machine」という企画で過去に行ったツアーのセットリストを今にリバイバルしていこうと思います」(HAKUEI)
ということで、このたび10月1日と2日に恵比寿LIQUIDROOMにて開催された千聖の誕生日ライヴは、今春から始まったライヴシリーズ「The Time Machine」と連動するかたちをとり、第1夜には2007年にアルバム『BLUE HEAVEN』をリリースした際のツアー内容を今に再現していく[PENICILLIN 30th anniversary ROCK×ROCK2022 「The Time Machine ~Return of BLUE HEAVEN’S DOOR~」]、そして第2夜は1997年にアルバム『Limelight』を発表した際のツアーで演奏していたセトリをベースとした[PENICILLIN 30th anniversary ROCK×ROCK2022 「The Time Machine~Return of mouth to mouth~」]として展開していくことになったのだった。
ちなみに、10月2日の公演においてオープニングを飾ったのはアルバム『Limelight』でも冒頭に位置していた、イントロ部分で千聖の弾くエモいギターフレーズがいきなり聴き手の心を鷲掴みにしてくるバラード「太陽の国」。かと思うと、次いでの「Quarter Doll」では千聖がオモチャの電子銃をピックアップに接近させるトリッキーかつ遊び心にあふれたレイガン奏法でオーディエンスの耳と眼を惹きつけることに。なお、ここでの大胆なプレイスタイルは名だたるアーティストたちとのコラボを果たしているばかりか、映画『トップガン』のサントラで「Top Gun Anthem」を弾いたことでも知られる御大スティーヴ・スティーヴンスに対するオマージュを込めたものであったと思われ、つくづく千聖は永遠のロックキッズにしてギターキッズであるのだな、ということが今さらながらにその様子からうかがえた次第である。
また、ロックと言えば毎回PENICILLINはライヴでの出で立ちという面でも常に刺激的でなヴィジュアルを披露してくれており、今回の場合まず初日は全員がそれぞれにロンドンパンクスを彷彿とさせる赤ギンガムチェックを取り入れたスタイリングで登場。さらに、この2日目については個々がヒョウ柄などのアニマル系な衣装を着こなすというコンセプトとなっていたそうで、主役たる千聖に関してはそこに両日ともO-JIROが自作したという愛情あふれるバースデープレゼントのスタッズ付チョーカをあわせていて、とにかく細部に至るまでロックなコーディネートが光っていたのもひとつの特徴だった気がする。ロックスターたるもの音でオーディエンスを魅了して欲しいのは大前提だとしても、たとえアラフィフになろうと派手でかぶいた姿を見せ続けていて欲しい、というファンの貪欲な願望をもPENICILLINは決して裏切ることがないバンドなのだ。
そのうえ、この第2夜については本編後半での「BLUE MOON」以降アンコールでの「Limelight」や、配信が終了してからのWアンコールとして演奏された「Imitation Queen」に至るまで、1990年代後半から2000年代初頭にかけて音源化された懐かしい楽曲たちがあれもこれもと提示されることになり、この夜のライヴを体験した人々はそれこそタイムマシンに乗せられたかのごとく、彼らの放つ音の数々によってある種の貴重な時間旅行を体験したことになるのではないだろうか。
なお、アンコールの合間には彼のトレードマーク=Vギターのデコレーションが施されたバースデーケーキを前に、少しばかり何時もよりハシャぎながら嬉しそうな表情をみせたり、楽しそうにメンバーと記念撮影をしていた千聖だが、いざ曲が再び始まればおなじみのKING-Vシェイプギターや、エクスプローラータイプのEXPLOSIONを自在に操り、華麗なプレイで貫録あるギターヒーローぶりを我々に堪能させてくれた彼は、今年の[ROCK×ROCK]でも圧倒的主人公としてステージ上に君臨し、30周年を迎えてなお健在なPENICILLINのロックバンド魂を牽引してくれていたのではないかと思う。
来たる11月2日には実に8年ぶりとなるフルアルバム『パライゾ』がリリースとなるうえ、11月23日からはコロナ禍発生以降としては初であり3年ぶりとなる全国ツアー[PENICILLIN 30th anniversary WINTER TOUR]が【HAKUEI BIRTHDAY LIVE】の意味も持つ12月16日のSpotify O-EAST公演まで続いていくことも決定している中、今回の2デイズライヴを通じ“カッコ良いロックバンドには間違いなくイカしたギターヒーローがいる”ということを、今一度ここで証明してくれた千聖とPENICILLIN。年内一杯続いていく彼らの記念すべき30周年が、いよいよのクライマックスを迎えていくのはきっとこれたからだ。
PHOTO: 折田琢矢
TEXT: 杉江由紀
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<セットリスト>
■PENICILLIN30th anniversary 『ROCK ×ROCK 2022』
「The Time Machine ~Return of mouth to mouth~」
2022年10月2日(日)恵比寿LIQUIDROOM
01 太陽の国
02 QUARTER DOLL
03 Melody
04 冷たい風
MC
05 BLOOD TYPE S
06 一発あてろ
07 ナルシスの花
MC
08 REAL XXX
09 夜をぶっとばせ
10 ひび割れたHOLY NIGHT
11 Hate
MC
12 BLUE MOON
13 DEAD or ALIVE
14 99番目の夜
15 天使よ目覚めて
EN1
01 Limelight
誕生日セレモニー
02 Desire
03 Chaos
EN2
01 Imitation Queen
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<リリース>
★NEW ALBUM「パライゾ」発売決定!!
2022年11月2日(水)発売
各ショップ、ECサイトにて予約受付中。
詳しくは
https://www.penicillin.jp/information/17668
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<LIVE INFORMATION>
■PENICILLIN30th anniversary 『パライゾ・マスター』 TOUR
11/23(水/祝) HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3 <QUARTER DOLL限定>
11/27(日) 新横浜NEW SIDE BEACH!!
12/03(土) 柏PALOOZA
12/10(土) 名古屋Electric Lady Land
12/11(日) 梅田Shangri-La
12/16(金) Spotify O-EAST 【HAKUEI BIRTHDAY LIVE】
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【一般発売(先着)】
11月12日(土)10:00~
受付URL:https://eplus.jp/penicillin2022/
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★PENICILLIN OFFICIAL SITE★
★ファンクラブ入会案内★
https://www.penicillin.jp/fanclub/enrollment
2022年10月31日 (月)
【ライヴレポート】<DEZERT × 夕闇に誘いし漆黒の天使達 “すっごいツインテールを決める会”>2022年10月28日(金)渋谷WWW X◆「なんか仲良いロックバンドみたいでいいじゃん」──千秋(DEZERT・Vo)
REPORT - 20:00:04DEZERTが10月28日に対バン企画「すっごいツインテールを決める会」をShibuya WWW Xにて開催した。
およそ3年ぶりとなるイベントに彼らが迎えた相手は、「コミック系ラウドバンド」を自称する夕闇に誘いし漆黒の天使達(以下、夕闇と略す)。
登録者数60万人を誇るYouTuberとしても活動している彼らは「信念のないお笑いを中心とした活動」をコンセプトに様々なネタ動画の制作を行っており、バンドの音楽性も「あるあるネタ」や小ボケが盛り込まれた歌詞をラウドミュージックに乗せるというスタイルが特徴だ。
ゆえにマキシマム ザ ホルモンやヤバイTシャツ屋さん、あるいは打首獄門同好会といったバンドとの共通項を感じるが、同じくコミックバンドを標榜する徳島の至宝、四星球とはギャグセンがやや異なる印象。
こんな感じでプロフィールだけでも300字を要する説明が面倒なバンドをどうしてDEZERTは対バン企画に迎えたのか、その理由を確かめるべく会場に足を運んだ。
ちなみに「すっごいツインテールを決める会」というイベント名は、両バンドのヴォーカリストのトレードマークであるヘアスタイルによるもので、どっちのツインテールがすごいのか、を何らかの方法で決めるのだろう。
チケットは即ソールドアウトとなったこの日の公演。フロアは開演前からオーディエンスですし詰め状態になっていた。
開場のBGMはなぜか夕闇と思しき楽曲のインストバージョン。その選曲にバンドからの意図を感じることはできない。
そのぶんこれから夕闇がどんなステージを繰り広げるのかと、期待に胸が高まる。叙情的なピアノの旋律とともにメンバーが登場し、小柳(ヴォーカル)が「ツインテールが好きなみなさん、おはよー」という挨拶から夕闇のライヴがスタートする。
1曲目は「Good Morning Dead」。向かってステージ右手に設置されたスクリーンには、演奏に合わせて矢継ぎ早に歌詞が表示される。
もちろんライヴは声出し禁止なので無意味な演出じゃないかとツッコミを入れたくなるものの、この曲が「朝起きるのってしんどいよね」というダルい気持ちを歌った曲であることが即座に理解できる。
以降も全ての曲に歌詞が表示されます!とわざわざMCで説明しているのが妙に面白かった。
その一方で巨大なツインテールを振り乱しながら歌う小柳の存在感を筆頭に、メンバーそれぞれのキャラもしっかり立っていて、バンドとしての成り立ちが真っ当であることを実感する。各々が人を楽しませることや笑わせることに腹を括っているのがわかるパフォーマンスだ。
そしてバンドのプロフィールに「ブス担当」と明記されている小柳は、ぽっちゃり型だった過去の自分と決別した(のかどうか知らないけど)ことによって、ブサメンどころかツインテールが似合うヴィジュアル系としてのメタモルフォーゼを遂げている。
とはいえ彼らの武器は「お笑い」であり、それを過剰なバンドサウンドで増幅させることによって一点突破を目指しているようだ。
DEZERTの「脳みそくん。」のカバーでは千秋(ヴォーカル)の飛び入りによって笑いの秩序が乱されるものの、あくまでも彼らは「コミック系ラウドバンド」であるスタンスを崩そうとはしない。自らを「お笑い」というテーマに縛りつけているのだ。
「ツインテールと言えば小柳、という証拠を今日は持ってきた」と前置きしてスクリーンに投影された小柳の免許証(本物)が大写しにされると、果たしてその写真にはツインテールの彼が収まっていた。
さすがに笑いをこらえきれず盛大に声を漏らすフロア。公演名に即したこんなネタまで準備する小柳に生真面目さを感じつつも、この日の彼らにとってこれが一番の切り札だったのだろう。
さらにその後披露された「正義の味方「ジャスティスマン」」で、彼らがなぜ「お笑い」に執着しているのか、その理由をこの曲に見たような気がした。
小柳似の赤タイツ姿のジャスティスマン(という設定)が戯けたダンスで歌うこの曲が訴えるのは、「正義」という価値観に対する問題提起である。
幸か不幸か、この曲には笑えるネタや小ボケがどこにも見当たらない。
正義とジャスティスを連呼する中、『誰だって「正義」の意味知らんし/価値とか以前に偽善も正義』というフレーズに刻まれている思いは、世の中にはびこる「正義のようなもの」に対する疑念であり、それだけ彼らは正義というものや正しさといった価値観と真剣に向き合っている、ということを示唆している。
つまり、ユーモアとペーソスの関係は説明するまでもない一般常識だが、彼らは悲哀や屈託の感情を、笑いという巨大なエンタメ装置を使うことで解放しようとするバンドなのだ。ゆえに「コミック系」であることを自負し、そこに自身を縛りつける必要がある、ということなのだろう。
そういう意味ではミスター千葉(ギター)が11月27日の日比谷野音を持って脱退する理由が、その縛りから解放されたところで音楽を作りたくなったというのも頷ける。
つまり彼は音楽に大きな勇気をもらった、ということなのだ。
そんな回りくどい自己表現に徹したバンドの騒がしいパフォーマンスから一転、DEZERTはいつも通りのライヴにスタートさせる。
幕開けは「「不透明人間」」。これまでなんども原稿で指摘したことだが、彼らもまた大きな悲哀と屈託を抱えたバンドであり、千秋は「この世の生きづらさ」をヴィジュアル系という世界観の中でずっと描いてきた。
つまり、夕闇の小柳とは対照的な方法ではあるものの、やっていることは2人とも同じなのだ。
とはいえ夕闇とDEZERTではバンドのポテンシャルがまるで違うことを見せつけようと、ケンカ腰な演奏が痛快だ。なかでもSORA(ドラム)とSacchan(ベース)による冷徹なビートには、貫禄すら窺えるほど。さらに印象的だったのは「Thirsty?」で見せたMiyako(ギター)の奔放なギターソロだ。
ギタリストとしては比較的控えめな存在だった彼の中で、何かが今変わりつつあるのかもしれない。
アプローチがヴィジュアル系としては斬新な「モンテーニュの黒い朝食」は、この対バンにどんな意図があるのか、を明らかにさせてくれる曲だった。ヴィジュアル系というシーンを逆手にとって生まれたこの曲は、その型破りなスタイルゆえライヴではまだ消化しきれていない面もある。
しかし、彼らがヴィジュアル系であることにこだわっている理由が明確になっている曲でもあることにも気づかされた。
夕闇がコミック系バンドであることにこだわっているのと同じように、彼らはヴィジュアル系というスタイルを自ら更新していくことで、音楽の可能性やバンドの未来を掴み取ろうとしているのだ。
こうして彼らがこの対バンを企画した意図がわかってからは、原稿という責務を放棄しライヴを楽しむのに専念することにした。
ライヴ後半、小柳が千秋の衣装を着用して登場して千秋にラップバトルの勝負を挑もうとするが、千秋が見事なフロウとアンサーで小柳を撃破し、「すっごいツインテールを決める会」に決着をつけてしまう場面には大笑いした。
さらに「「変態」」を2人で歌った後、ふとこんなことをつぶやいた千秋に思わず「おいおい」とツッコミを入れたくなった。
「なんか仲良いロックバンドみたいでいいじゃん」――。ここまで千秋がメンバー以外の誰かとステージでイチャついてる姿を見るのは初めてだったが、つまりこの一言で対バンが企画された理由がさらにはっきりした。千秋は、小柳のことが大好きなのだ(笑)。
以前の彼はとにかくバンドマン同士がイチャつくことを激しく嫌悪していた。
イベントで仲良しこよしぶりをSNSでアピールするバンドを忌み嫌い、そういった繋がりに中指を立てていたのだ。
そんなヤツが今アンコールのステージで、誰よりも後輩を可愛がり、後輩の前でボケ倒し、それを義理堅く拾ってはツッコミを入れてくれる後輩のデレになっている。
夕闇のカバーセッションを終えた後も全員での記念撮影はもちろん、千秋と小柳が撮ったプリクラをプレゼントするジャンケン大会まで実施。
それは「人間とはいったんタガが外れると、どこまでも自分を許せてしまうものだな……」という感慨に浸るには十分の光景で、それほど彼らはお互いのことを理解し合い、強いリスペクトを持って付き合っている仲であることを理解した。
開演から3時間弱、ようやく「「殺意」」で長いアンコールを締めくくった彼ら。
ステージの去り際にファニーピースを決めるその姿を見て、DEZERTにとって今日の対バンは、いつか夢見ていた自分たちへのご褒美だったのかもしれない……そんなことを思ったのだった。
写真◎西槇太一
文◎樋口靖幸(音楽と人)
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DEZERT × 夕闇に誘いし漆黒の天使達“すっごいツインテールを決める会”
2022年10月28日(金)Shibuya WWW X
<夕闇に誘いし漆黒の天使達 セットリスト>
01 Good Morning Dead
02 We Are 健康人間
03 Everyday 最後の晩餐
04 脳みそくん。(DEZERT cover)
05 正義の味方「ジャスティスマン」
06 MalibuMonster
07 ウォウウォウイェイイェイ酒ナイト
08 猫サンキュー
<DEZERT セットリスト>
01 「不透明人間」
02 「君の子宮を触る」
03 Thirsty?
04 モンテーニュの黒い朝食
05 肋骨少女
06 あの風の向こうへ
07 MONSTER
08 デザートの楽しいマーチ
09 「秘密」
10 「変態」
11 The Walker
En1 時間が戻ったら抱きしめて…(夕闇に誘いし漆黒の天使達 cover)
En2 「殺意」
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●夕闇に誘いし漆黒の天使達 INFORMATION
<最新リリース情報>
■2022/7/6リリース 2nd EP「七生活」発売中!
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<最新ライヴ情報>
■2022/11/14 渋谷CYCLONE 25TH ANNIVERSARY w/BugLug@渋谷CYCLONE
■2022/11/22 武瑠 15TH ANNIVERSARY STREET GOTHIC FES@豊洲PIT
■2022/11/27 ワンマンライブ『めっちゃ外 〜卒業〜』 @日比谷野外大音楽堂
夕闇に誘いし漆黒の天使達 オフィシャルHP https://yuyami.jp/
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●DEZERT INFORMATION
<ライヴ情報>
■DEZERT LIVE TOUR 2023 「てくてくツアー」
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2023年1月7日(土)なんばHatch OPEN 16:30 / START 17:30
全自由/座席有 ※入場整理番号付 (問) キョードーインフォメーション 0570-200-888
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2023年1月9日(月・祝)名古屋DIAMOND HALL OPEN 16:30 / START 17:30
全自由/スタンディング ※入場整理番号付 (問) サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
2023年1月14日(土)TOKYO DOME CITY HALL OPEN 16:30 / START 17:30
全席指定 (問) DISK GARAGE 050-5533-0888
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★入場者全員に音源無料配布あり(各会場別)
1月7日公演:無料配布音源(なにわver)
1月9日公演:無料配布音源(尾張ver)
1月14日公演:無料配布音源(大江戸ver)
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【チケット料金】 6,000円(税込) ※入場時ドリンク代別途必要
【一般発売日】 2022年11月12日(土)10:00~
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<映像商品リリース情報>
★Blu-ray / DVD 「DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”」
2022年12月14日 RELEASE
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【オフィシャルサイト限定いちご盤】(Blu-ray+CD+64Pブックレット+オリジナルグッズ)DCXL-5〜6 / 15,000円(税込、送料別)
※予約受付中
※予定数に達し次第、終了となります。お早めのご購入をお勧めいたします。
予約販売受付はこちら https://dezert.stores.jp/
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【通常盤】(Blu-ray) DCXL-7 / 7,700円(税込)
【通常盤】(DVD)DCBL-21 / 6,600円(税込)
※通常盤のご予約はこちら https://DEZERT.lnk.to/KH7Vs8
収録曲、購入者特典・イベント等詳細はこちら https://www.dezert.jp/news/detail/6140
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<シングルリリース情報>
★NEW SINGLE 「The Walker」 発売中
<初回限定盤(CD+DVD)> DCCL-245〜246 / 2,750円(税込)
<通常盤(CD)> DCCL-247 / 1,650円(税込)
…………………………………………
<収録曲、特典等少佐ははこちら> https://www.dezert.jp/discography/detail/1110/
<CDの購入はこちら>https://DEZERT.lnk.to/lkh8oX
<購入者対象イベント / 店舗別購入者特典 詳細はこちら> https://www.dezert.jp/news/detail/5510
The Walker (Official Music Video) https://youtu.be/wvfZDc54GPU
モンテーニュの黒い朝食 (Official Music Video) https://youtu.be/5i6uCNi1m88
The Walker (2022.06.18 日比谷野外大音楽堂) https://youtu.be/9cIXWg04Ngs
<オフィシャルファンクラブ情報>
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