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2022年12月09日 (金)

【ライヴレポート】<DEZERT「The Walker」シングル購入者限定 LIVE>2022年12月7日(水)Veats Shibuya◆愛すべき音楽バカの集合体的ロックバンド、それが“DEZERT”──。

REPORT - 20:00:21

才にあふれていて賢いのに音楽バカなフロントマン・千秋。

豊かな感性と洗練された技巧の両方をあわせ持つのに音楽バカなギタリスト・Miyako

プレイヤーとしての資質と優れたリーダーシップを持つのに音楽バカなベーシスト・Sacchan

肉体と根性の鍛え方がハンパないのに音楽バカなドラマー・SORA

この4人が揃うDEZERTとは、つまり音楽バカの集合体的なロックバンドなのではなかろうか。

今やキャリアも10年超えとなり、紆余曲折を経ながらも地に足の着いた活動を続けてきた彼らは、近年バンドとして音楽に対する姿勢がますます愚直になって来ているような気がしてならないのだ。

 

 

「人間にとってのエッセンシャルなものは衣食住だってよく言うけど、多分それだけじゃないよね。やっぱり、何か楽しいことがないと。

そして、きっとおまえたちにとってはライヴがそういうものであるはずだと俺は信じてる。

音楽って必要だよね。でもさ、ステージで歌ってる俺はそんなに楽しくはないのよ。いや、楽しくないっていう言い方だと語弊があるか。

要は、楽しいだけじゃないんだよな。今は「生きてる!って感じる」みたいな感覚とかもあんまないんよ。

俺の生きてる理由はこれだ!っていうのもない。とか、そんなことを考えながらこのところ鬱々としてたらさ。

(中略)SORAくんが1227日に武道館でやる[V系って知ってる?]に向けていろいろ動いてるでしょ。

その様子を見てると「これもSORAくんにとって生きる理由のひとつなんやろうな」って考えるし、そういう姿って「いいな」と感じるわけ。

でも、1227日が終わったらSORAくん死ぬんちゃうかな?というのはあるね()

まじで、年明けのツアー「てくてくツアー」までちゃんと生きててくれよ。まぁ、おそらく生きる理由なんて日によって違うのかもしれないよね。

だから、めっちゃハズいこと言うけど俺はこれから生きる理由を探す!久しぶりに中学2年生に戻りました。

なんで生きてるんだろう?っていう言葉が俺の頭から離れんのよ。

今年のワンマンはこれで最後になるけど、来年の俺は生きる理由を探す!!これからも着いてきてくれよ」(千秋)

 千秋2_2022_12_07_01674

近々では1214日にLIVE Blu-ray&DVDDEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”』を発売することになっているDEZERTが、このたびVeats Shibuyaにて行ったのは、最新シングル『The Walker』にちなんだ[「The Walker」シングル購入者限定 LIVE]。

そして、この日の主役とも言えた「The Walker」から幕開けしたライヴの中で、本編中盤過ぎあたりに千秋が発したのが前述の言葉であるのだが、これは意訳すると「The Walker」の歌詞中にある〈立ち止まらないで歩くんだ〉という、あのシンプルにして普遍的なフレーズに繋がっているものとして解釈することが出来る気がした。

 

 「生きる理由を探す」とweb検索すると、厚生労働省の管轄するこころの健康相談統一ダイヤルの電話番号が真っ先に表示される現実を考えても、中二病を患った人のみならず多くの人々がそれについてよく悩み葛藤するものである、ということは自明である。

また、千秋は今回のライヴの中でも演奏されていたシングル『The  Walker』の収録曲「あの風の向こうへ」において、これまた歌詞中に〈生きてる理由が僕に死を思わせる〉〈僕が僕である理由が欲しくて〉といった言葉たちを織り込んでいる。

 

 傍からみれば、ミュージシャンになりたいと志してそれを実現し、もう10年以上にわたって生業として来ている千秋の姿は、むしろ生きる理由のカタマリであるようにさえ感じられるものの、

本人は「あの風の向こうへ」で〈僕が夢みてた世界はなかった〉などと歌っていたりもするわけで、どうやら彼が足るを知るにはまだまだ多くの時間や状況変化の類が必要らしい。要するに、千秋という人は音楽とバンドに対し極めて貪欲なのだろう。

 

もっとも、音楽に対して貪欲なのは楽器隊メンバーにも言えることで、今回のライヴの中で言えば最新シングル『The  Walker』のカップリング曲「モンテーニュの黒い朝食」が演奏された場面については、DEZERTの持つバンドとしての懐の深さや、彼らの優秀な音楽バカぶりが音を通じて、ありありと伝わってくるエキサイティングな時間を堪能することが出来た。

エフェクティヴにしてアヴァンギャルドなSacchanのベースソロを導入部に置きつつ、ドラマー・SORAの叩き出す気だるさと小気味よさを混在させた肉感的なリズムや、ギタリスト・Miyakoが響かせるモダンで切れ味のいいカッティング、千秋によるラップ要素をコンフュージョンさせたヴォーカリゼイションがからみあう様は、もはや貫録たっぷりなだけでなく痛快でさえあったと言っていい。

ちなみに、サブスクサービス上ではシングル『The  Walker』の中で表題曲以上に再生数を稼いでいるのがこの曲となっているようで、DEZERTの音楽的な成熟ぶりが色濃く反映されたこの新曲が早くもリスナーから大きな支持を受けているというのは実に素敵なことだと思う。

 Miyako1_2022_12_07_01973

Sacchan1_2022_12_07_02626

SORA1_2022_12_07_02594

枠組みとして考えれば、もちろんDEZERTはいわゆるV系の範疇に入るバンドになるのであろうし、世間的には「V系なんて見た目だけでファンも音楽なんかちゃんと聴いてないだろ」的な偏見がいまだにあるのだとしても、この音楽としての完成度や水準の高さを感じさせる「モンテーニュの黒い朝食」のような楽曲を提示出来るのがDEZERTというバンドであり、ファンもそれを心から愛しているという事実はもっと広く世に知られてもいいのでは??

 

なお、この日の本編最後は〈そして初めて僕が踏み出す一歩〉という歌詞でしめくくられる「TODAY」が演奏されることになったのだが、これが「The Walker」を主題においたライヴであったと考えると隙のない最適解がここで導き出されたことになる。

「今年もありがとうということでね。来年あたりはしばらくやれてなかった[くるくるまわる](コロナ前までは恒例だった年末ワンマンライヴ)もやりたいし、やりたいことがいっぱいある。みんなもいっぱい働いて、学生は勉強して、頑張りましょう。まじで頑張ろうね!」(千秋)

 

千秋1_2022_12_07_01439

Miyako2_2022_12_07_04577

Sacchan2_2022_12_07_02084

SORA2_2022_12_07_03717

アンコールでは千秋がやけにポジティヴな面持ちでこのように話したり、くだけた雰囲気でのMCをはさんでから「インビジブルビリーヴァー」でオーディエンス側と一体感のあるパフォーマンスを繰り広げたり、かと思うと「大塚ヘッドロック」では、「これから諸々のライヴ規制が解禁になっていった際に向けた予行演習」としてかつては定番だった横モッシュをごく遠慮気味なカタチで実施してみたり、とまさにアンコールならではのラフな雰囲気を楽しむことが出来た一方、シメの「「切断」」でDEZERTDEZERTであるがゆえの三つ子の魂を容赦なく解放してみせた彼らは、最終的に4人が4人ともどこか清々しい表情を見せることになったのだった。

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来たる1227日には、SORAが七面六臂の活躍をみせながらオーガナイザーをつとめている日本武道館での一大イベントV系って知ってる? powered by MAVERICK DC GROUP]の開催が決定しているうえ、年明け早々には大阪・なんばHatch、名古屋・DIAMOND HALL、東京・TOKYO DOME CITY HALLでのDEZERT LIVE TOUR 2023 「てくてくツアー」]も控えている今。

DEZERTの音楽バカぶりには、ここからさらに拍車と磨きがかかっていく予感しかしない。

 

 

写真◎西槇太一
文◎杉江由紀

 

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The Walker」シングル購入者限定 LIVE

2022 12 7 日(水)Veats Shibuya

SETLIST

01 The Walker

02 再教育

03 Thirsty?

04 ミスターショットガンガール

05 モンテーニュの黒い朝食

06 胃潰瘍とルソーの錯覚

07 あの風の向こうへ

08 オレンジの詩

09 Call of Rescue

10 おはよう

11 「教育」

12 カメレオン

13 「君の子宮を触る」

14 「ピクトグラムさん」

15 TODAY

EN1 インビジブルビリーヴァー

EN2 大塚ヘッドロック

EN3 「切断」

 

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<ライヴ情報>

 

DEZERT LIVE TOUR 2023 「てくてくツアー」

Teaser Animation> https://youtu.be/h6bbPBK6Ziw 

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202317日(土)なんばHatch  OPEN 16:30 / START 17:30 

全自由/座席有 ※入場整理番号付  () キョードーインフォメーション 0570-200-888

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202319日(月・祝)名古屋DIAMOND HALL OPEN 16:30 / START 17:30 

全自由/スタンディング ※入場整理番号付 () サンデーフォークプロモーション 052-320-9100

  …………………………………………

2023114日(土)TOKYO DOME CITY HALL OPEN 16:30 / START 17:30  

全席指定 () DISK GARAGE 050-5533-0888

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★入場者全員に音源無料配布あり(各会場別)

17日公演:無料配布音源(なにわver)

19日公演:無料配布音源(尾張ver)

114日公演:無料配布音源(大江戸ver)

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【チケット料金】 6,000円(税込) ※入場時ドリンク代別途必要

【チケット発売中】 https://linktr.ee/DEZERT_TekuTekuTour  

 

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V系って知ってる? powered by MAVERICK DC GROUP

 20221227日(火)日本武道館

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OPEN 13:00 / START 14:00

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【出演】DEZERT / キズ / アルルカン / ムック / D’ERLANGER / girugamesh / VRespect Super Session

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【チケット先行予約受付中】お申し込みは「V系って知ってる?」特設サイトへ https://www.vkei.jp/ 

 

 

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<リリース情報>

 

★Blu-ray / DVD

DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 The Walkers”」 

20221214 RELEASE

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【オフィシャルサイト限定いちご盤】(Blu-rayCD64Pブックレット+オリジナルグッズ)DCXL-56 / 15,000円(税込、送料別)

【通常盤】(Blu-ray) DCXL-7 / 7,700円(税込)

【通常盤】(DVD DCBL-21 / 6,600円(税込)

※通常盤のご予約はこちら https://DEZERT.lnk.to/KH7Vs8  

収録曲、購入者特典・イベント等詳細はこちら https://www.dezert.jp/news/detail/6140  

  …………………………………………

★NEW SINGLE The Walker」 発売中

【初回限定盤(CD+DVD)】 DCCL-245246 / 2,750円(税込)

【通常盤(CD)】 DCCL-247 / 1,650円(税込)

 

CDの購入はこちら> https://DEZERT.lnk.to/lkh8oX   

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The Walker (Official Music Video)  https://youtu.be/wvfZDc54GPU   

モンテーニュの黒い朝食 (Official Music Video) https://youtu.be/5i6uCNi1m88  

The Walker (2022.06.18 日比谷野外大音楽堂) https://youtu.be/9cIXWg04Ngs  

 

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<オフィシャルファンクラブ情報>

 

DEZERTオフィシャルファンクラブ「ひまわり会」 詳細はこちらhttps://www.dezert.jp/  

 

DEZERTオフィシャルサイトhttp://www.dezert.jp  

DEZERT YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/dezert_official  

DEZERT 公式Twitter  https://twitter.com/DEZERT_OFFICIAL  

DEZERT 公式 Instagram  https://www.instagram.com/dezert_official/?hl=ja 

SORA VoicySORAの元気になるハナシ」 https://voicy.jp/channel/1890 


2022年12月02日 (金)

【ライヴレポート】<縁 2ndワンマン「灯焔(ともしび)」>2022年12月1日(木)東高円寺二万電圧◆来年3月には渋谷近未来会館にて追加ワンマンの開催が決定!

NEWS - 22:00:25

縁待望の2ndワンマンライブが東高円寺二万電圧にて開催された。

 

1stワンマンが完売にあと一歩届かなかった為、リベンジの意味もあった今回。
見事完売御礼となり、白熱した空気がホールからも溢れている中本編はスタート。

 

初披露となったシンフォニックなナンバー「愁」をプレイした後、今日の公演がマスク着用条件のもと声出し可能である事をSUIが告げると
序盤からホールの空気はどんどん上昇していった。

 

「自らが想う大切なものを引き寄せろ」の声を元に演奏された「命」、新曲の「艶」、繊細な「儚花」とそれぞれ異なる表情を見せる楽曲が続けて披露される。
そこにはスタートから一年の歳月で築かれた縁の世界がしっかりと表現されていることをしっかりと体感出来た。

 

美沙麗とSyuを中心としたセッションを交えて、ハードなナンバー「影結び」「鴉片」「紋章」を立て続けに披露し、美しい声色と笑みで導くVo.SUI、細やかで華やかに舞うGt.美沙麗、ストレートに感情をぶつけてゆくGt.cero、控えめでありながらも確たる想いを持つBa.リゼ、身体全体でビートを盛り立ててゆくDr.Syuは自らの色でステージを彩り、その表現に応えるオーディエンスとともに空気をヒートアップさせる。

そこにはしっかりと解けない「縁」が結ばれてゆくようだった。

SUI

Misery

cero

リゼ

Syu

 

ラスト「華音」の手前、SUIは「人にとって今を生きる一年はとても大切なもの。縁は活動から一年、旬華愁灯というコンセプトを立てて四季(春夏秋冬)を表現し、それぞれの季節の景色を皆と見れた事を嬉しく思います。皆で成し遂げたこの華やかな光景を焼き付けたい。」とまっすぐな想いを伝えた。

きらびやかな楽曲とメンバー、オーディエンスは一体となり濁りもない華やかな光景が広がり本編は終了。

 

アンコールでメンバーが登場すると、今日のソールドアウトを受け2023年3月31日に渋谷近未来会館での追加ワンマンライブが決まった事が発表される。

来年のスケジュールは未定であった縁だけに、とても嬉しいニュースであろう。
そこから披露された「縁」は、彼らの始まりの曲であるだけに、とても感慨深いものがあった。

 

この日は、縁にとっての節目でありながらceroの誕生日当日でもあることから、MCに向かうところでサプサイズが。

会場があたたかい雰囲気に包まれると、縁で今夜限り?のCover楽曲「ピンクスパイダー(hide)」が披露される事を告げられると拍手が起こる。

縁らしい和楽器を取り入れたサウンドメイクが施されたカバーは、縁らしさやceroを中心としたリスペクトの想いが音からも溢れているようでとても胸を打つ。

 

その流れに乗り、ラストを飾る「八咫烏」でSUIやメンバーに導かれるようにフロントギリギリまで身を乗り出し、オーディエンスとの絆を確かめ合うように振り付けを用いた掛け合いが繰り返されるのだった。

 

熱狂のままステージは終了。
アンコールも全て終了かと思いきや、幕の中からサプライズで演奏がスタート。
こういった遊び心(?)も縁にとっての特徴なのかも知れない。

 

全12曲とワンマンとしてはまだ少ない楽曲数でありながら、当日限定バンドからしっかりと縁の世界を築き上げた縁。

その展望を待ち遠しく思うばかりである。

 

 

Text/Resonance
Photo/Lestat C&M Project

 

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2ndワンマン「灯焔(ともしび)」
2022年12月1日(木)
東高円寺二万電圧
セットリスト

 

本編
1.愁
2.命
3.艶(新曲)
4.儚花
セッション
5.影結び
6.鴉片
7.紋章
8.華音

 

アンコール
9.縁
10.ピンクスパイダー (Cover)
11.八咫烏

 

アンコール2
12.八咫烏

 

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●会場限定音源発売中
5thCD「灯」完全限定100枚
1.灯焔 2.艶 3.灯焔(インストゥルメンタル) 4.艶(インストゥルメンタル)
発売日/2022.12.01

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4thCD「愁」完全限定100枚 極残少
1.影結び 2.愁 3.影結び(インストゥルメンタル) 4.愁(インストゥルメンタル)
発売日/2022.10.26

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●サブスクリプション配信 アーティストページ
https://www.tunecore.co.jp/artists/ens824

 

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●ライブスケジュール

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rivabook presents「FINAL CUP 2022」
12/29(木)赤羽ReNY alpha
【開場/開演】16:00/16:30
【チケット券種/料金/発売】
A:チケット ¥10,000(D代別) 11/26 10:00-
B:チケット ¥5,000(D代別) 11/26 12:00-
【出演】 縁 / 他
【チケット購入先リンク】
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02k3nit3w6h21.html
※当日ご入場の際は、受付リサーチのご協力をお願い致します。

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3/31(金)渋谷近未来会館
3rdワンマン開催決定!
※詳細後日発表

 

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2022年12月02日 (金)

【ライヴレポート】<怪人二十面奏 単独公演巡業二〇二二「素晴らしき哉、人生」千穐楽>2022年11月28日(月)Veats SHIBUYA◆「一分一秒、一曲一曲かみしめながら、一切妥協のないステージができた」──マコト(Vo)

REPORT - 20:00:06

 怪人二十面奏は、そのバンド名のイメージとは裏腹に、とても一生懸命なバンドだ。コロナ禍でもひたすら前を向いてツアーを行い、ライヴを続けた。そんな期間を経て11月2日に発売された3rdアルバム『人生』。シンプル極めたこの二文字に込められた彼らの命のきらめきを、11月28日にVeats SHIBUYAで目撃した。ツアーファイナル「単独公演巡業二〇二二 素晴らしき哉、人生」の模様をお伝えしよう。

 

彼らの一生懸命ぶりは、活動スタンスだけでなくそのクリエイティブにいつもあふれている。ファンに驚きを感じてもらおうと腐心するマコトは、いい意味で戦略家だ。そんな姿勢が如実に現れたのが、この日の1曲目のセレクトだった。

 

ステージにメンバーがそろったところで、一瞬静まり返る中、マコトの歌声だけが広がっていく。アカペラから始まったのは「ヰ書」。ライヴの始まりを前のめりに待ち構えていたオーディエンスは、悲痛に満ちた特攻兵の思いを切々と歌い上げるマコトをただ見つめるしかない。冷たい空気が凍りつくように会場中を支配していた。一転、「ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム」のイントロと同時にマコトが咆哮をあげると、オーディエンスも我に返り、こぶしをあげて応え始める。

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各地で熱いライヴを展開してきたツアーの千穐楽である今日のライヴに賭ける思いを口にすると、「偶像破壊黙示録」へ。黒いメガホンを手にオーディエンスをアジテートするマコト。その横でKENは無表情ながら全身を大きく動かし、サウンドに身をまかせている。テンポよく「人間失却」へと流れ、構築されたドラマを紡ぎながらライヴらしい生々しさも全開だ。かと思えば、「しにいたるやまひ」で不可思議な世界へと誘い込み、ソフトな歌声を使ってやわらかく歌った「透明」、主人公である女性になりきった「噫無情」と、息つく暇を与えない。

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MCに入るとガラッとリラックスした様子で、ライヴをおおいに楽しんでいることが伝わってくる。会場も温かい空気に包まれ、ほっこりとしたムードに。

 

けれども、ライヴのクライマックスはこれから。「全員で行きましょう!」と熱く呼びかけて始まった「可不可」で、衣装のケープも白い手袋も脱ぎ捨て、マイクスタンドを派手に操り、ダイナミックなステージングで躍動するマコト。「最高です! やっちゃってくれ!」とKENが満足そうに叫ぶ。

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テンポの速い曲を中心に畳みかけるように続け、「アヴストラクト シニシズム」へなだれ込んでも、激しいノリや勢いのあるサウンドと適格なプレイが見事に両立し、見ごたえも聴きごたえもたっぷり。怪人二十面奏は、ヴォーカルのマコトとギターのKENの二人から成り、バンド形態ではない。ただこの日は、ツアーファイナルということもあって、まとまりのあるサウンド面でのカッコよさに特に惹きつけられた。

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渋谷での通り魔殺人を告げるアナウンスをマコトが叫ぶ。曲はもちろん「G,Jクローバー連続殺人事件」。フロアにはカラフルな包丁形のペンライトがまたたき、怪人二十面奏おなじみの光景が広がる。推し活が市民権を経た今、応援グッズとしてペンライトも知られているだろうが、包丁型のペンライトはそうは目にしない。バンド名からもわかるエログロナンセンスな世界観と、それをロックバンドとして楽しむ一面。彼らの表現の奥行はここにも現れていた。その後、本編最後を締めくくったのは、「幻創大東亞狂榮圏」。あっという間に過ぎ去ったような本編だったが、深い満足感を残してくれた。

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ツアーTシャツ姿のマコトと、バースデーグッズ(この日はマコトの誕生日)のフーディに着替えたKENが登場。リラックスした表情ながら、「一分一秒、一曲一曲かみしめながら、一切妥協のないステージができた」というマコトの言葉には、このライヴに賭ける思いの強さと達成感が込められていた。「マコトさんの誕生日をお祝いするのは20回目。親より一緒に過ごしている」と口にするKEN。今年結成7周年を迎えた怪人二十面奏だが、二人はそれ以前のバンドからずっと活動を共にしてきた。歳月を重ねてきたからこそ通じ合う感覚が、現在の彼らの表現を築き上げているのだろう。

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たっぷり4曲のアンコールで、計20曲をプレイ。バンド名にちなんでワンマンライヴの曲数は20曲と決めているうえ、曲の多くが3分程度であるため、ライヴ時間は決して長くない。それでも大満足の一夜だった。

 

12月31日には、彼らにとって初となるワンマンでのカウントダウンライヴが控えている。その夜は、年が明ける0時のカウントダウンから声出しOKにするというスペシャルな試みも。声が出せなかったこれまでの思いをぶつけるには絶好のタイミングになるだろう。ぜひ足を運んで、最高の形で2023年を迎えたい。

 

 

文:村山 幸
写真:Lestat C&M Project

 

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<セットリスト>

怪人二十面奏 単独公演巡業二〇二二
「素晴らしき哉、人生」

2022年11月28日(月)
Veats SHIBUYA

 

 

1.ヰ書
2.ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム
3.溺れるパラレル
4.偶像破壊黙示録
5.人間失却
6.しにいたるやまひ
7.近代的極東唱歌
8.透明
9.噫無情
10.可不可
11.信仰アンチミステリー
12.FAUST
13.癈人録
14.アヴストラクト シニシズム
15.G,Jクローバー連続殺人事件
16.幻創大東亞狂榮圏

en.
17.哀しきトリックスター
18.ブラックアウト ヒステリーアワー
19.死せる Cecile セルシン摂氏0度
20.然らば、人生

 

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<ライブ情報>

大晦日特別単独公演「月兎、秒讀」
日程:2022年12月31日(土)~2023年1月1日(日)
会場:SHIBUYA DESEO

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開場 22:30/開演 23:00/終演予定 25:00
※開演開場時間の変更に関するチケットの払い戻しはございませんので予めご了承ください。
※深夜公演の為、18歳未満の入場禁止。顔写真付き身分証を必ずお持ちください。

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前売¥4,800/当日¥5,300(1DRINK別途)
入場券:TICKET PAY

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12/3(土)10:00~発売

購入URL:https://www.ticketpay.jp/booking/?event_id=41461

 

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二十圓特別単独公演「関西カルト化洗脳計画」
日程:2023年1月15日(日)
会場:大阪・西九条BRANDNEW

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開場 17:00/開演 17:30
料金:¥20(当日のみ)

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入場方法/入場順
・公演当日、14:00~16:00受付にて整理券配布(番号ランダム配布)番号順に入場。
・開場時間以降ご来場の方は整理券をお持ちの方の後に先着整列入場。
・当日、受付にて¥20をお支払い下さい。1ドリンク代が別途必要となります。

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問い合わせ:BRANDNEW 06-6466-0100

 

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■怪人二十面奏オフィシャルウェブサイト■
http://k20.jp