2023年03月03日 (金)
【ライヴレポート】<[ kei ] MAKE A MIRACLE>2023年2月25日(土)渋谷ストリームホール◆改名後初ライブ。「歌ってるシングルを出すとか夢にも思わなかった」──。
REPORT - 21:00:45バンド休止後、これまでもソロとして活動を続けてきたBAROQUEの圭が、[ kei ]へとアーティストネームを変更。2月25日、東京・SHIBUYA STREAM HALLにて改名後初となるライブ<MAKE A MIRACLE>を開催した。
[ kei ]として記念すべき第一歩を踏み出したこの日の公演のレポートをお届けする。
オールブラックでビシッときめたサポートメンバーの高松浩史(Ba/THE NOVEMBERS/Petit Brabancon)、植木建象(Dr)に続いて、ステージにやってきた[ kei ]は黒い上下の衣装のなかに真っ白いドレッシーなノースリーブシャツを着て登場。圭から[ kei ]へ。
その新たなる幕開けとなるオープニング。彼はギターを身につけず、代わりにハンドマイクを持ってステージの中央に立ち、新曲「PANDORA」を軽やかに歌い始めた。
この曲はBAROQUE活休後、初めて作った歌ものの曲で、本公演ではそれを過去に披露したものからアップデートさせた[ kei ]バージョンで、改めて披露。元々はバンドのギタリストとしてヒーローになることを夢見ていた[ kei ]。だがバンド活休後、1人で活動する道を選んでみたら、パンドラの箱を開けたように様々な困難が降り掛かってきた。
けれども、困難を乗り越えたあと、その箱の中を覗き込んでみたら、現在のように舞台の中央で歌ってギターを弾く自分が想像もしていなかった[ kei ]というアーティストがいた。今回の公演は、彼が自分の夢や理想にはなかった[ kei ]にたどりつくまでの物語を描いたものになっていた。
ライブはこの後一気にソロの出発地点となったアルバム『silk tree.』へとさかのぼる。どんな壁にぶちあたろうが、それでも自由を求めた「17.」をなぜ自分は歌ものとして作ったのか。幼い頃のピュアな気持ちにコネクトしていく「pitiful emotional picture.」をなぜ歌ものとインストが合体したような独特な曲で表現したのか。まずは[ kei ]としてのアーティスト像を最初に切り開いていったヒントが、ソロの原点であるこれらの過去の創作物にあったことを曲を通して明かしていく。
ソロになって、一時期は歌ものとインストのライブを分けるなど、ライブのあり方を模索していた時期もあった。だが、いまでは様々なトライを経て、インストと歌ものを1本ライブのなかに美しく同居させる独自のライブスタイルを築き上げた[ kei ]。ジャケットを脱いだ[ kei ]は次にインスト曲「longing star.」をパフォーマンスして、キラキラと星が輝く夜空の彼方へと観客たちをロマンチックなサウンドで誘い出す。
そこから「the blueroom.」では変則的なビートに乗っかって、歪んでいく時空を飛び跳ねながら移動。「eve.」では音とともに揺らめきながら空間を気持ちよく浮遊していたら、ギターソロが始まったとたんに猛烈なエネルギーのシャワーを浴びるなど、ここでは[ kei ]ならではの音世界が、聴き手の五感、想像力をじわじわと刺激。
最初は曲ごとに細やかな映像が添えられていたこのようなサウンド主体のセクションも、いまは歌ものと同じような感覚でオーディエンスは音を全身で受け止め、自由に楽しんでいる。アーティスト同様、ファンもライブの楽しみ方を手探りで模索しながらここまでたどり着いたのだろう。フロアからはそんな背景がうかがえた。
このあと、柔らかいトーンの歌声でバラード「Home sick」(Cover)をごくごく自然に届けて、オーディエンスの感情をそっとナチュラルモードへと引き戻したあと、[ kei ]が不意にステージ上でフロアに背中を向け、着ていた白シャツを脱いで、黒いロングスリーブシャツに着替え始めた。会場の空気がそこでさっと切り替わり、曲はインスト曲「vita.」へ。アンビエントな暗闇が広がり、体の奥底を浄化するようにギターの音がさりげなく静かに体を侵食していくところから曲はスタート。
そこから、ライトの点滅が激しくなると同時に、サウンドは豹変。アルバム『4 deus.』のアートワークのように、はだけたシャツから肉体をあらわにしながら、[ kei ]が魂の奥底で悶え、叫んでいる自分をさらけ出していったところは圧巻だった。パンドラの箱を開いた後、自分の中から吹き出してきたすべての苦悩や恐怖、怒りをぶちまけるように、ステージで3人の音が激しくぶつかり、絡み合い、狂気を撒き散らしていったアンサンブルはまさに音の洪水。
そんなエキサイティングなステージが15分以上も繰り広げられ、その渦に引き込まれたままのフロアは、極限状態までカオスが極まった状態になっていった。こんな、誰も見たことがないような深い狂気体験ができるのも、いまや[ kei ]のライブの醍醐味。演奏が終わった後、[ kei ]自身も「凄い体験でした」とさっきのプレイを振り返る。そして、この先「こういうところにも新しい曲を入れたい」と意欲を示してみせた。「次は歌詞はスーパー闇だけど、みんなのジャンプを見せて」とフロアを煽り、軽快なポップチューン「STAY」からライブは後半戦へと突入。
「STAY」のサビ前、[ kei ]が自ら「3.2.1ジャンプ!」と掛け声をおくり、フロアを一斉ジャンプへと導くシーンや、ストレートな歌声で爽快なポップチューン「青空に吹かす夜、晴れ渡る日」(Cover)を高らかに歌い上げる姿は、バンド時代は想像もしなかったパフォーマンス。パンドラの箱を開け、苦悩を出し切ったあとに箱の中に残ったもの。
それは、想像もしなかった意外な自分の姿だったのだ。陽気な2曲の連投でフロアを気持ちよく盛り上げたあとは、歌もののダークサイドへと繋いで、破壊力抜群のエレクトロなダンスチューン「SIN QUALIA」をラップを交えながら歌い、「I LUCIFER」ではエモーショナルに叫びながら、ギターをエネルギッシュに弾き倒して場内を激しく熱狂させていった。興奮したフロアからは“[ kei ]”と叫ぶ声が沸き上がり、ソロになって以降初の声出し公演を体験した[ kei ]は、たまらず嬉しそうな笑顔で観客に応えていく。
「みんなもヒートアップしたから、次は一緒に月でも眺めながらクールダウンしよう」とやさしい声で観客に伝えた[ kei ]は、この後ソロになって以降発表したアルバム『uotpia.』から「moon dreams.」と「spirit in heaven.」の2曲を続けてアクト。エレクトロニカなサウンドにより磨きをかけ、作り出したスペーシーな音空間に、[ kei ]がギターで純粋無垢なメロディを放つと、観客たちはたちまち心を奪われ、圧倒的な没入感とともに曲に浸っていった。
「素敵な景色、見れましたか?」と会場に語りかけた[ kei ]は、今年メジャーデビュー20周年を迎えたことに触れ、この日会場で先行発売した改名後初のシングル「MIRACLE」について「20周年に(自分が)歌ってるシングル出すとか夢にも思わなかった。人生、不思議」と本音を吐露した。そうして、この後は2008年に発売したソロの始まりとなったシングル「the primary.」、続けて最新シングル「MIRACLE」をプレイ。
圭と[ kei ]を一つ線でつないでいった終盤のこのシーンを通して、彼は、みんながいてくれたからこそ自分はかつて描いていた夢や理想を超えたところにいる[ kei ]というアーティストに出会えた。これこそが、みんなが引き起こしたMIRACLE=奇跡なんだということをファンに伝えていった。
そして、そんなかけがえのないファンのみんなを、「utopia.」で包み込んでいった[ kei ]は、さらにこの日のサプライズゲストとして鬼塚康輔(Sax)を舞台へ呼び込み、最新シングルに収録した「ETERNAL HEART」をレコーディングメンバーで生再現。
煌びやかなサックスとの共演で「ETERNAL HEART」という気品あるクラシカルなバラードソングが、よりスウィートに、よりファンタスティックなサウンドとなって、会場にいるみんなを夢のような幸せな世界へと連れていったところで、ライブは多幸感が広がるなかフィニッシュ。最後に「名義が変わっても友達でいて下さい。よろしくお願いします。また近々会いましょう」という言葉を残して、 [ kei ]はステージを後にした。
この後、[ kei ]は改名後初となるニューシングル「MIRACLE」を3月1日にリリース。同日にはサブスク配信も開始し、iTunesオルタナティブチャートでは初登場3位を記録した。(https://kei-official.jp/digital_music/)
現在は、『MIRACLE』リリースにともなうインストアイベントも開催しているので、ぜひこちらもチェックして見て欲しい。
文◉東條祥恵
ライブ写真◉尾形隆夫
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[ kei ]
MAKE A MIRACLE
2023年2月25日(土) 渋谷ストリームホール
SET LIST //
PANDORA *New Song
17.
pitiful emotional picture.
longing star.
the blueroom.
eve.
Home sick ※Cover
vita.
STAY
青空に吹かす夜、晴れ渡る日 ※Cover
SIN QUALIA
I LUCIFER
moon dreams.
spirit in heaven.
the primary.
MIRACLE *New Song
utopia.
ETERNAL HEART *New Song
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【RELEASE INFO.】
[ kei ]
NEW SINGLE //
MIRACLE
2023.03.01 wed RELEASE
[ kei ] – MIRACLE (Music Clip_Full ver.)
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<初回限定盤>PGSK-039/040 (CD+DVD) ¥8,800(tax in) ※特殊パッケージ仕様
<通常盤>PGSK-041 (CD) ¥2,200(tax in) ※紙ジャケット仕様
Distributed by FWD Inc.
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<初回限定盤>
[disc1 : CD]
1. MIRACLE
2. ETERNAL HEART
3. MIRACLE (Instrumental Ver.)
4. ETERNAL HEART (Instrumental Ver.)
5. pitiful emotional picture. ([ kei ] Ver.)
6. SIN QUALIA ([ kei ] Ver.)
[disc2 : DVD]
TOUR // SENSE OF WONDER -LIVE at SHIBUYA PLEASURE PLEASURE 2022.08.12-
1. the sin.
2. I LUCIFER
3. SIN QUALIA
4. longing star.
5. eve.
6. STAY
7. the salvation.
8. the primary.
9. ring clef.
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<通常盤>
[CD]
1. MIRACLE
2. ETERNAL HEART
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●INSTORE EVENT (サイン&トーク)
3月3(金) 19:00 HMV&BOOKS SHIBUYA
4月1日(土) 18:00 エンタバアキバ
4月8(日土) 13:00 タワーレコード名古屋パルコ店
4月8日(土) 18:30 タワーレコード梅田NU茶屋町店
4月15日(土) 18:00 タワーレコード新宿店
●INSTORE EVENT (PREMIUM LIVE)
3月20日(月) 19:30 タワーレコード渋谷店
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2023年03月03日 (金)
【ライヴレポート】DIR EN GREYのドラマー・Shinyaのソロプロジェクト「SERAPH」、1年振りに開催したコンサートが大盛況にて終了!
REPORT - 19:44:54DIR EN GREYのドラマー・Shinyaのソロプロジェクト「SERAPH」が、2月24日に東京・神田スクエアホールにて<Shinya Birthday Event – SERAPH Concert 2023「Sea of Serenity」>を開催した。
昨年に引き続き2年連続で開催されたSERAPHのコンサート。コロナ禍での空白期間を除き、2月24日にはSERAPHのコンサートに足を運ぶ、というのが最早ファンにとってはお馴染みになっているだろう。
開演前の会場では紫やオレンジ、夜明けを思わせる照明と鬱蒼と茂る枝葉。はたまた珊瑚にも見えるシルエットがゆったりと壁面を揺蕩っており、まるで海中に沈んでいるかのような錯覚に陥る。
ライブコンサート開始直前の会場内は期待混じりの緊張感が張り詰めている場合が多いが、この演出により非常にリラックスした状態で開演を迎えることになった。
開演と同時に映像が流れる。公演告知のティザー映像でも観た海岸、そこにShinyaと分割された画面にもう1人のSERAPHメンバーであるMoa (Piano&Vocal) が現れる。2人とも別々の場所にいるのであろうか、左右に向けて歩みを進める。そして邂逅を果たすのだが2人の目線は交わらない、しかしながら同じ方向、水平線に浮かぶ太陽が燃ゆる天を見上げている。これは日の昇る朝焼けなのか、それとも日の堕つる逢魔時なのだろうか。今回SERAPHがどのような物語を提示してくれるのか、その期待に高揚感を感じざるを得ない。
映像に続きSERAPHの2人が登場。今回はドラムとピアノに加えヴァイオリンの姿も見える。そんな三重奏で始まったのはフェリックス・メンデルスゾーン作曲の「ヴァイオリン協奏曲ホ短調 作品64」3大ヴァイオリン協奏曲と呼ばれるドイツのロマン派音楽を代表する傑作である。一曲目にいきなりクラシック、しかもヴァイオリンが主役とも言える曲を選曲したことに度肝を抜かれる。しかし、驚くべきはそれがドラム、ピアノとの三重奏として完璧なアレンジになっていることだ。全体でのハーモニー、ヴァイオリンソロからのドラムとピアノのインといった構成の妙。そしてこの曲が産まれた時には想定されていなかったであろうドラムのアレンジには特筆すべき点が多々あった。ヴァイオリンの細かなフレーズにはタム回しでハーモニーを奏で、後半の盛り上がりではビートを刻む。ドラムという楽器がこんなにも表情豊かな楽器だったのかと気付かされる。それらそれぞれが主役として際立っており完全なSERAPHの音として完成されていた。
いきなり凄いものを観せられた、と余韻もままならぬまま続くは「Lovshka」。深い雪の森、雪原の映像と共に始まる。そしてここでもサプライズ、なんとヴォーカルのメロディをMoaではなくヴァイオリンが奏で始める。映像の美しさも相まり、荘厳かつ極上のシンフォニーを浴びせられる。
Moaのヴォーカルが入り「Reisn」を歌い上げる。人間とは何か、命の尊厳を問うこの曲はコロナ禍が落ち着きつつあり、心の余裕ができた今となってはよりメッセージの解像度を高く感じることができた。続いては雨を意味する「Lluvias」だ。SERAPH公演では何度か聴いた曲だがこの日は少し表情が違うように感じた。今までは“あなたが泣く時は寄り添って泣こう”という歌詞の通り、慈愛に満ちたメッセージを受け取っていたが、今回はむしろ“勇敢に生き抜いて”と雨の中でも前に進まなくてはいけない生命の強さを静かに、重く伝えようとしているように感じた。
そして“海底の深淵に忘れられた都市の記憶”がテーマの「Abyss」。激しさと妖艶さが入り混じり、テクニカルなドラムフレーズからの間奏ではバスドラ主体の力強いビートといった聴きどころの多い曲であるが、歌詞では“セラフを記憶せよ”のメッセージが非常に印象的である。
思い返せば「Lovshka」から「Abyss」までの流れはまるで天から雨を伝い海へと続いているような流れになっていた。天と大地、そして海を繋ぐのは雨。それはまるで天使が地に、そして海に舞い降りて来たかのように思えた。前回の公演タイトルは“廃墟の痕跡”と訳せる「Spuren des Ruins」。そして今回のタイトル「Sea of Serenity」は“静寂の海”を意味する。滅亡した世界の新たな始まりは生命の根源たる海から始まっている。今回のテーマは“新たな始まり”なのではないだろうか。
さて、「Majesté」では再びヴァイオリンがメロディを奏でる。耽美で華やかな楽曲であるが、ヴァイオリンが主旋律を奏でることによって一層舞踏会の雰囲気が醸し出されていた。舞踏会を途中で抜け出しガーデンへ、そしてまた舞踏会に戻りフィナーレへ。実際にそのような経験をしたかのような錯覚に陥った。
夢心地の中Shinyaがマイクを持ち話し始める。物静かな印象を持たれるShinyaだが、静かながらにきちんと笑いも取るMCも彼の魅力である。
海岸での映像撮影時の話や、メンデルスゾーンの楽曲を演奏した際の苦労話などを語り、次の曲へと移った。
ShinyaとMoaの2人構成になり続くは「Sauveur」。「Majesté」と同じく宮殿での舞踏会を想起させられるが、「Majesté」が威厳のある厳かな会だとすれば、こちらは軽やかな三拍子に加え、目まぐるしいコード展開と転調によってより優雅で華やかな会である。その表情の変化を違和感なくスムーズに受け入れられるのもSERAPHの表現力のなせる技だろう。
そして波のさざめく音の中Shinya、Moaが退場する。心地よい凪のような時間を感じるも刹那、その波音に合わせるかのようにハープが音を奏で始める。ヨハン・フィリップ・クリーガー作曲の「メヌエット」だ。まるで神聖な物語の導入のような、深い海に沈むいくつもの魂を安らげるような優しげで蠱惑的な音が会場を満たしていく。ヴァイオリンが物語を語るかのようにゆっくりとその音色を重ねていく。
ハープを加え、カルテットのスタイルで始まったのは「Uisce」。先ほどまでの静寂な海から徐々に不穏さを増し緊張感が高まる。Shinyaのドラムがインすると同時に急展開する楽曲は、時折Moaのフルートも轟き、まるで荒れ狂う波のように激しさを増していく。そしてまた海は静寂さと激しさを繰り返す。繰り返される自然の脅威、そして“痛みを思い出して”とMoaが歌い上げる。人知の及ばぬ厄災も、人の過ちも繰り返される。全てを見透かされるような鋭いメッセージが突き刺さった。
そのままカルテットスタイルで「Destino -Sea of Serenity ver-」へと続く。Moaは歌わず楽器隊のみで奏でられたが、主旋律をハープとヴァイオリンが弾いたかと思えばピアノが同じく主旋律を響かせる。4つの楽器が渾然一体となって見事なハーモニーを創り出した。
オープニングと同じロケーションでの映像が流れ、淑やかに始まったのは「Génesi -Sea of Serenity ver-」。SERAPHで唯一リリースされている楽曲であり、ファンにとっても馴染みのある曲だが、こちらも特別なアレンジで演奏されていた。少しスローなテンポでそれぞれの楽器が情感たっぷりに奏であげる。聴き馴染みのある曲もアレンジ1つで新鮮な表情を見せてくれる。リリースされているバージョンではピアノが余韻を残しつつ曲が終わるのだが、今回はShinyaのドラムで締めくくったのも大きなサプライズとなった。ドラムの残響が心地よく空気に溶け込む中、本日2回目となるMCが始まった。
「恒例のグッズ紹介を前でやります」と、いつもドラムの位置からは動かずにMCをしていたShinyaがステージ前方に移動し話し始めた。どうやらイヤーモニターをワイヤレス化したことによって移動が可能になり、前方でのMCが可能になったとのこと。持ち前のユーモアたっぷりにグッズを紹介した後に「今日は大人な感じのSERAPHをお送りしているんですが皆さんどうですか?」と問うと会場からは大きな拍手が。来年の開催について触れた部分では「来年2024年の2月24日は、僕の好きな24という数字が2つも入っているのでやってみたいです」と前向きな姿勢を見せてくれた。
そしていよいよ最後の曲へ、とShinyaは何故かドラムには戻らない。会場全員が不思議に思っているとなんとShinyaがピアノに向かう。一気に騒めく場内の空気を他所にShinyaはピアノに、Moaはフルートを持ってピアノの前へ鎮座する。観客の聞こえぬ悲鳴が響く中、Shinyaのピアノによりラストナンバー、「Kreis」がスタート。私も含め全員が度肝を抜かれた。何せShinyaが長いキャリアで初めてピアノをステージで演奏しているのだ。今回の公演ではサプライズの連続であったがここにきて最高のサプライズである。しかも彼の持ち前の美しい演奏スタイルはピアノでも存分に発揮されている。繊細かつ華麗なタッチで「Kreis」が彩られ第一部のコンサートは終演を迎えた。
前回のSERAPH公演では、滅亡した世界で人々はどう生きていくのか、と強く問いかけられるような公演であった。しかし今回は天から降りてきた熾天使SERAPHが、我々を静かの海に誘い、癒し、創造への活力を与えてくれる一夜となった。全ての生命の根源たる海、この美しい世界を産み出したのもまた海なのだ。ここから始まる新たな世界へのヒントをSERAPHは与えてくれた。
さて、続く2部ではお馴染みの“Shinya Special Talk Event”が行われた。詳しい内容は会場に足を運んだ人のみのお楽しみであるが、一部内容を紹介しよう。恒例の質問コーナー、謎解きコーナー、Shinya自らが作成したShinyaクイズなど盛りだくさんであるが。中でもShinya本人も驚くサプライズがあった。なんとDIR EN GREYのDie (Guitar) がバースデーケーキを運ぶという演出だ。会場にいたファンはもちろん、何も知らされていなかったShinyaは驚きのあまりステージ端に逃げる動揺っぷりだ。その後の2人のやりとりは会場にいた人のみぞ知る、ということにさせて頂く。
こうして特別な一夜は終わりを迎えた。次回の開催にも期待が高まるばかりである。
撮影= Lestat C&M Project
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♦︎SET LIST♦︎
Opening. Overture lll
01. Violin Concerto in E-moll Op.64 – Felix Mendelssohn
02. Lovshka
03. Reisn
04. Lluvias
05. Abyss
06. Majesté
07. Sauveur
08. Menuett in Fis-moll – Johann Philipp Krieger
09. Uisce
10. Destino -Sea of Serenity ver-
11. Génesi -Sea of Serenity ver-
12. Kreis
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●SERAPH Official Website
●Shinya Channel
http://www.co-yomi.com/shinya/index.php
●SERAPH 公式Twitter
@Seraph_JP
●DIR EN GREY オフィシャルサイト
2023年02月18日 (土)
【ライヴレポート】<nurié 小鳥遊やひろ生誕祭『YAHIROCK FES 2023』>2023年2月13日(月)渋谷近未来会館◆この日、最も言葉にされ、言葉以上に音に託されてきたのが、小鳥遊やひろへの「愛」だった。
REPORT - 22:00:352月5日はnuriéのベース、小鳥遊やひろの誕生日。彼と出会い、心を通わせてきたミュージシャンたちが集い、彼がこの世界に誕生し生きたことを音楽で祝う、小鳥遊やひろ生誕祭『YAHIROCK FES 2023』が、大阪と東京で開催された。ここでは2月13日、渋谷近未来会館で行われた東京での模様をレポートする。
先陣を切ったのはシェルミィ。ヴォーカルの豹が「今日は盛り上げることに徹底した」とステージから語ったように、アグレッシブなステージングと情熱で一気に会場のボルテージを上げた。続いて、SECRET BAND として登場したCHAQLAは、始動ライブを行う前にも関わらず、nuriéからの熱いオファーに快諾しての出演。独自の世界観の片鱗を衝撃的に叩きつけた。続くumbrellaは、音楽への実直な思いを、4人の重なり合う音で美しく表現。確実なキャリアを重ねてきたからこその存在感で、ラストには、小鳥遊やひろが好きだった「五月雨」を届けてくれた。3ピースバンドとしての直球サウンドに、全員が歌う楽曲など楽しさを展開した洗脳Tokyo。大阪では一番手で登場したRides In ReVellionは、重厚感と煌びやかな演奏、ヴォーカル黎の圧倒的な歌声で、トリのnuriéにバトンを渡した。
大角龍太朗が奏でるギターの音色と歌だけで始まった「晴天に吠える。」からライブをスタートさせたnurié。大角は「全力で楽しんでいきましょう」と、その表情に笑みを浮かべ、今日を忘れられない日に彩っていきたいという思いを伝える。「透明に混ざる。」で、早くもピークに達した後は、新曲「akuma」を初披露。先の2曲とはまるで違い、真っ赤なライティングがよく似合う、己の欲望を激しく呼び覚ますアグレッシブなナンバーで、今後のライブでこの曲がどんな高まりを見せてくれるかが楽しみな楽曲だった。呼び覚まされた感情に、続く「RooM-6-」で、さらに聴く者の感覚を刺激。ステージ前方から後方まで、オーディエンスは身体を揺らし、手を振りかざすなど、明らかに「この曲は知っている」という光景が広がり、小鳥遊やひろが生前最後に奏でた楽曲が、nuriéの代表曲となっていることを証明していた。荒々しさの中で、大角がかつてないほどの高音ヴォーカルを響かせた「百鬼夜行」まで、彼らは駆け抜けるように演奏を繰り広げた。
出演バンドへのそれぞれのエピソードと共に感謝を伝えた大角は「こんなに愛されている人間がメンバーにいるバンドです。だから、もちろんかっこいいに決まっています。俺たちも、やひろさんのようにもっと愛されていかないといけないと思っていますので、今日ここにいる方に、愛していただけるように、俺たちも愛を込めて歌わせていただきます。俺たちからの思いを受け止めてください。俺たちもあなたの思いをしっかり受け止めます」と告げ、「愛を歌わせろ人生」へ。最後は、小鳥遊やひろが好きだった曲「15才」。大角は「届け」という言葉を放ったが、誰もが届いていることを確信していただろう。
この日、最も言葉にされ、言葉以上に音に託されてきたのが、小鳥遊やひろへの「愛」だった。nuriéはもちろんのこと、全ての出演バンドが、自分たちが表現できる「愛」をまっすぐに誠実にステージから届けていたことが何よりも印象的だった。それぞれのバンドたちはこれからもこの日に演奏した曲を、ライブで奏でていくだろう。しかし、『YAHIROCK FES 2023』で会場に響き渡った音や歌は、明らかに、小鳥遊やひろへの「愛」で満ち溢れた、この日にしかない特別な音楽だった。そんな音楽を生み出すことができるバンドたちだからこそ、今後シーンを揺るがし、これまで見たことがない新しい景色を描いていくのではないだろうか。来年へと続いていく『YAHIROCK FES』では、一体どんな輝きが放たれるのか。終演後の止まらない昂りは、新たな可能性の始まりを感じさせてくれた。
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◆セットリスト◆
01. 晴天に吠える。
02. 透明に混ざる。
03. akuma
04. RooM-6-
05. 百鬼夜行
06. 愛を歌わせろ人生
07. 15
(文・武村貴世子)
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【LIVE情報】
2023年4月3日(月) 心斎橋CLAPPER
「 瞳に映らない形と性質、それを「」と呼んで 」
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開場 17:30 / 開演18:00
前売り ¥3,000 / 当日 ¥3,500
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▽チケット
⚫︎FC先行(抽選)
3/4(土)10:00~3/10(金)23:59
【FC当落発表】3/11(土)
⚫︎一般発売
3/12(日)10:00~
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2023年4月22日(土) 渋谷近未来会館
染谷生誕単独公演
「 紫電一閃、轟く音のその向へ 」
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OPEN 17:30 / START 18:00
前売 ¥3,000 / 当日 ¥3,500
…………………………………………
▽チケット
⚫︎FC先行(抽選)
3/18(土)10:00~3/26(日)23:59
【当落発表】3/28(火)
⚫︎一般
4/8(土)10:00~
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★nurié OFFICIAL SITE★