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2023年04月05日 (水)

【ライヴレポート】<The Benjamin 8th Anniversary ONEMAN TOUR 2023「Bless in the Octave」Final>2023.03.21 浅草花劇場◆「明るい光のほうを向いてしまう、そんな本質が根づいている」

REPORT - 21:09:55

2023年3月21日、観光客の賑わいが戻ってきた浅草で、The Benjaminの8th Anniversary ONEMAN TOUR 2023のファイナル『Bless in the Octave』が行われた。新型コロナウイルスによる影響を受けた一昨年、昨年の周年記念の鬱憤を晴らすかのように、メンバーとバーバラ(The Benjaminのファンの総称)が熱く盛り上がった夜の模様をお届けしよう。

 

会場である浅草花劇場は、日本最古の遊園地といわれる花やしきの一角に位置する。レトロな情緒たっぷりのアトラクションを横目に会場へ向かうという、普段のライヴにはない感覚に少しドキドキ、ワクワクしながらホールへ。そこには、最新シングル「Beelzebub」からのモチーフであるハエのイラストが描かれたバックドロップが観客を待っていた。

 

開演時刻を迎え、けたたましいほどにSEが鳴り響く。メンバー3人が登場、黄色い歓声が沸き起こる。ようやく声出しが解禁になり始め、ライヴにおける観客の声の存在の大きさを改めて感じるこの頃。ジャンルやアーティストによってファンの歓声は異なるものだろうが、The Benjaminのそれは間違いなく黄色い声だ。メンバーの名前を連呼する黄色い声に、会場が一気に華やいだ空気になった。

 

ライヴの開始を告げた「Beelzebub」で、豹変したかのようにファンがこぶしを振り上げ始め、3人の表情にも気合いがみなぎる。そのまま「Bisque Doll Magic」へ、激しくも仄暗い世界観を漂わせつつ、記念すべき特別なライヴは上々の滑り出しとなった。

 

このツアー初日から既にライヴでの声出しを解禁にしていたこともあり、ファンもすっかりライヴの感覚を取り戻している様子。そこへさらに、「全力で来いよ! いい加減な気持ちで来るな!」と、Mineyが強い言葉で煽る。

 

 

「Bumble Bee」ではMashoeのランニングベースがリズミカルに観客の体と会場の空気を揺らし、続いて「ビスケット」「Blurry Senses」では、その声で会場を包み込む。曲によってはMiney以外のメンバーもメインヴォーカルを担当するThe Benjaminだからこそ、Mineyとはタイプの違うMashoeの歌声は大きな魅力のひとつだ。

 

 

8周年記念ライヴだけに、新旧の曲を織り交ぜつつ、ライヴは展開。そしてさらに、汽笛の音から始まったのが新曲「バスタートレイン」。ジャジーなリズムに合わせ、ノビノビと自由にノリを楽しむ3人を前に、ファンも初めて耳にする曲をおおいに楽しんだ様子。

 

「どんどん新しいものをつくっていきたい」というMineyのMCどおり、自分たちの創作意欲に貪欲に、音楽に対して果敢に、ずっと挑戦し続けているのがThe Benjaminというバンドだ。そんな彼らのライヴだからこそ、ファンと一緒にひたすら音楽を楽しむ特別な空間になるのだろう。

 

 

「ベルガモット」では、ひときわプレイに集中しているTackyの存在が光り、ギターソロではギタリストとしてのMineyと二人で背中を合わせてギターを奏でるロックバンドのステージならではのシーンが。終盤に向かって、会場はますます盛り上がりを見せていく。

 

 

荘厳な印象の鐘の音から「Babel」がスタート。Mashoeの咆哮に応えるようにファンのノリも猛々しさを増すと、続く「ベンガルタイガー」から「Bark in the Garden」で激しさはマックスに。この2曲は、コロナ禍真っ最中に試行錯誤で活動を続ける中で生まれ、2022年3月にシングル「Bark in the Garden」とそのカップリングとしてリリースされた曲。ここでThe Benjaminは大きく変貌を遂げ、いわゆるヴィジュアル系と呼ばれるシーンの王道をいくサウンドや曲調を奏で、黒い衣装をまとうようになった。その変化は今なお現在進行中であり、彼らの進化はまだまだとどまることを知らない。

 

次の「BELIEVE」は、2022年7月にリリースされた3rdアルバム『BELIEVE』の最後を飾るタイトル曲。“信じること”をテーマにしたストーリーの最後を飾る曲は、8周年記念のこの日にふさわしく、あふれる喜びと強い決意とともに心に響いた。黒い衣装を身にまとい、退廃的な雰囲気を漂わせ、攻撃的な言葉を口にしていても、やはり彼らの根っこには、明るい光のほうを向いてしまうような、そんな本質が根づいているように思える。

 

本編最後を飾った「SORA-Boeing229-」の伸びやかなMashoeの歌声も会場いっぱいに広がる高揚感も、そして笑顔ではしゃぐMiney、Tacky、Mashoeの姿も、言葉で表現するなら、つまりは“幸せ”ではないだろうか。そんな彼らの本質を実感したところで、本編終了。

 

 

アンコールでは、Mineyが亡き父親への思いをつづった名曲「Because-Love is Here-」、最初の緊急事態宣言を経験して生まれた「ブーツを脱いで」と続け、最後はもちろん「バーバラ」。ファンへの愛情をたっぷり込めた演奏を全身で受け止めるバーバラの姿に、会場は温かな幸福感に包まれていた。

 

最後にMineyが、「もっとカッコよくなります!」と宣言してステージを去ったが、これこそがThe Benjaminの目指すところを言い得ているだろう。さまざまな曲を生み出し、スタイルは変化しつつも、カッコいいロックバンドであることは変わらない。9年目、10年目へと、どれだけカッコよくなるか、期待をふくらませながら追いかけていきたい。

 

 

 

文:村山 幸
写真:米田 光一郎

 

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The Benjamin
8th Anniversary ONEMAN TOUR 2023 「Bless in the Octave」Final 2023.03.21 浅草花劇場

[setlist]

1.Beelzebub
2.Bisque Doll Magic
3.BumbleBee
4.ビスケット
5.Blurry Senses
6.ボードレールに沈む海
7.ブーゲンビリア
8.バスタートレイン
9.ブルータス、オマエもか
10.ベルガモット
11.Babel
12.ベンガルタイガー
13.Bark in the Garden
14.BELIEVE
15.SORA -Boeing229-
encore
16.Because -Love is here-
17.ブーツを脱いで
18.バーバラ

 

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[ライブ情報]

BadeggBox presents「BATTLE FEVER TOUR 2023」
04.08 (Sat) 名古屋MUSIC FARM
04.09 (Sun) 大阪CLAPPER
04.15 (Sat) 横浜Music Lab.濱書房
04.22 (Sat) 上野音横丁

 

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[音源情報]

 

5th Single NOW ON SALE
タイトル:「Beelzebub」
アーティスト:The Benjamin
発売日:2023.2.8
形態:シングル
品番: BDBX-0095
価格: 2,200円(税込) 2,000円(税別)

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収録曲:
1.Beelzebub
作詞/作曲:Minemura Akinori
2.ボードレールに沈む海
作詞/作曲:Minemura Akinori

発売元/販売元:BadeggBox

 

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ライブ会場/バデッグボックスオンラインショップ限定販売
http://badeggbox.shop-pro.jp/?pid=172681253
購入特典詳細(DVD「2022.10.16 渋谷Plesure Pleasureワンマン映像」)
http://thebenjamin.jp/news.php?id=632

 

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[動画情報]
MV「Beelzebub」トレーラー映像
https://youtu.be/2CCnhhszlTI

MV「ボードレールに沈む海」トレーラー映像
https://youtu.be/i3Oa5Li6vBg

LIVE 20221016 SHIBUYA PLEASURE PLEASURE ダイジェスト
https://youtu.be/Xl9YoiI0Z14

[オフィシャルwebサイト]
http://thebenjamin.jp/


2023年04月03日 (月)

【縁(えにし)】縁の描いた旬華愁灯を巡る物語、ここに最初のピリオドを打つ──。

REPORT - 19:00:45

(えにし)=Vocal : SUI  Guitar : 美沙麗 Guitar : cero Bass : リゼ Drums : Syu

 

 

  固い絆で結ばれ続けてきた5人が、ちょうど1年前に、“1年間の活動を見据えたプロジェクトとして縁を結成。「音楽を通して春夏秋冬=四季を巡る旅を表現し伝えようと、桜の時期に花咲かせ、ふたたび桜の花が咲いた1年後の景色までを目標」と定めて活動を始めた。

 

あれから、1年。331() 渋谷近未来会館で行った「旬華愁灯結び〆」を持って、縁は「旬華愁灯プロジェクト」の幕を閉じた。この日は、最初で最後??となるアルバム『旬華愁灯』を携えてのライブでもあった。当日に、どんな景色がライブ空間として広がっていったのであろうか、それをここに伝えたい。

 

 艶やかで、雅な音色が鳴り響く場内。そこへ重なる重厚な調べ。幕が開いたその先には白い後光が射す縁のメンバーたちの姿があった。

 

  「結び〆!!」と叫ぶ声を合図に、縁は,ライブに熱狂の景色を描き続けてきた『八咫烏』から物語を綴りだす。SUIが、観客たちが、手にしたタオルや拳を振りまわし、轟き渡る演奏に身を任せ、大きく身体を揺さぶりだす。SUI自身も、最初から観客たちと至近距離で気持ちをぶつけあうことを楽しんでいた。 柵に足を乗せ、観客たちを挑発する美沙麗。間奏のギターソロでは、美沙麗に向けてたくさんの手の花が咲いていた。理性の留め金を外した観客たちは、荒ぶる音に身を委ね、身体を大きく揺さぶっていた。ライブはまだ始まったばかり。でもこの空間には、終盤戦にも似た、感情を剥きだしで思いを交わしあう景色が生まれていた。

 

 改めて、互いの絆を熱情と熱狂で結びあうように、縁は『縁』を演奏。勇壮な様で歌い、奏でる演奏陣に向け、フロア中の人たちが、時に飛び跳ね、大きく手を花咲かせ、髪の毛を振り乱し、彼らとの深い縁を、身体と熱情を通して改めて感じていた。

 

  「一夜と通して、縁の1年間を存分に体感していただきます」。SUIや美沙麗の煽り声を受け、フロア中からも「Oi!Oi!」と熱い声が沸き立つ。声出し可能なライブだからこそ、メンバーと観客たちが互いに拳を振り上げ、声を張り上げながら、互いの唇が近づくくらいに距離を縮めていた。その勢いを胸に、互いの絆をさらに硬く結び合おうと『影結び』を演奏。SUIの歌声に向け、フロア中から熱い声が響き渡る。雅でたおやかなサビ歌では、誰もがSUIの歌声に心地好く身を寄せ、共に思いを重ねあわせていた。とはいえ、メロディアスでシンフォニックながらも激しいドラマを描く楽曲のように、『影結び』でも、終始、熱情したバトルが繰り広げられていた。精神も肉体も、このまま熱狂という渦の中へ飲み込まれていきそうだ。

 

 「この1年のいろんなことを思い返しながら、走馬灯のように季節を感じていただけるライブにしていこうと思います」「過ごした季節の中には、楽しいことはもちろん。憂いや、いろんな思いに駆られたときもありました。過ごした日々を思い出しながら、この思いを伝えましょう」(SUI)

 

 

四季を通じて駆け続けてきた思いを歌を介して巡るように、縁は『儚花』を演奏。尺八の音色の合図に、SUIの歌声が物語をめくるきっかけとなり、5人は思いや思い出の景色を巡るように、熱を秘めた優しい演奏を通して、一人一人の心にあるスクリーンへ様々な景色を映しだす。SUIの歌声を語り部に、思い出のページがめくられるたび、ここへ到るまでの日々が、次々と色鮮やかに脳裏に映しだされていた。

 

  「儚きこの想いよ、艶やかに舞うわ」。感情の奥底に眠っていた狂気を引っ張り出すように、縁は、重厚かつ妖艶な音を轟かせ、『艶』を歌い奏でていた。SUIの揺れ動く気持ちにあわせ、演奏陣が激情した演奏を描き出せば、揺れ、乱れる歌声や演奏にあわせ、観客たちも感情を重ね、乱れるままに、その演奏に身を溺れさせていた。

 

 舞台の上には、荒ぶる音を操るSyuと、気持ちを荒らげる旋律を響かせるceroの姿があった。2人はセッションしながら、この会場に沸き立つ黒い衝撃を与えてゆく。荒れ狂う音へ導かれるように、ふたたび5人が舞台へ集結。

 

 

  「今、目の前に見える大切なものを引き寄せろ!」。SUIの言葉を合図に、重低音が轟く妖美で黒い音がこの会場を飲み込みだす。縁は『命』を通し、ここに生きている証を一人一人の心へ強く刻み込むように歌い奏でていた。SUIの動きにあわせ、フロア中の人たちも同じ動きを示し、気持ちを同化してゆく。美沙麗のギターソロに向かって花咲く景色。曲を通して伝えてきた感情の色にあわせ、ときに頭を振り乱し、ときに花咲くなど、一人一人が楽曲に気持ちを委ねていた。

 

 

  演奏は、さらに攻撃性を増して襲いかかる。『夢幻蝶』でも、乱れ狂う感情にあわせ、フロア中の人たちがさまざまな動きを見せていた。サビ歌でSUIが響かせた、胸をキュっと揺さぶる艶やかな歌。対して演奏陣は、黒く、時に真っ赤に染めあがった感情的な旋律の数々を突き刺し、一人一人の心から理性を消してゆく。互いに感情を剥きだしに、裸の気持ちと気持ちをぶつけあう、その光景が、ここへ、確かに生まれていた。

 

 「縁は、限られた活動を通して確実に確かな縁(えん)”を築いてこれました。そんな皆さんとそれぞれの日々を忙しくいきる日常を抜け出して、こうして会える機会は当たり前じゃないこともより強く感じています。でも、直接会って思いを伝えることは失くしてはいけない大事な事、場所だと思っています。ライブを大切にしていきたい。そんな今日という日を大切にしたいし、この与え合う時間をもっともっと謳歌していきたいです。みなさんの力を、共に、ここに集めてください。この時間を謳歌しようか!

 

  SUIが、サプライズで製作したという縁オリジナル扇子をステージ上から配りだす。その扇子を使って、共に縁を感じようと奏でたのが『謳歌』。冒頭からSUIと、フロア中の観客たちが、手にした扇子を大きく揺らしながら、ここに集えたことに幸せと喜びを覚えていた。互いに大きく扇子を揺らし、この場に風を巻き起こしながら、歓喜した思いをこの空間や次の未来へつながるようにずっと舞い踊らせていた。その希望の風は、きっと近未来へと吹いてゆくはずだ。

 

  温かい熱に、さらに熱情した風を巻き起こそうと、縁は轟音を轟かせながら『鴉片』を叩きつけ、観客たちを大きく飛び跳ねさせた。舞台の最前へと出て観客たちを煽るceroSUIの導きに合わせ、フロア中の人たちが乱れ、騒ぎ続ける。激情と妖艶、多様な姿を『鴉片』の中に描きながら、物語は熱をどんどん上げてゆく。

 

 「この華やかな景色。そこを彩っているのは、みなさんがいるからこそ。この世界はあわせ鏡のよう。僕たちが自信を持ってここに立つことで、みなさんも自信を持って前を向ける。その縁を大切にしていきたい」。「降り注ぐ華やかなメロディーに乗せて」の言葉を具現化するように、美しく華やかな音符の花が、この空間を舞い踊りだす。フロア中の人たちも、『華音』へ導かれるように飛び跳ねれば、美しく開放的な美沙麗のギターの旋律にあわせ、大きく腕を振り、心華やぐ歌の風を全身に感じていた。思いを優しく包むような麗しきメロディーに乗せて、言葉を紡ぐSUI。彼の歌へ寄り添うように、フロア中の人たちが大きく手を揺らし、気持ちを一つに溶け合わせていた。過去の歩みを身にまといながら、ここから新たな次元へと向かうように、誰もが虹の彼方に見える景色に向かって、心を羽ばたかせていた。

 

 縁は、再び会場を赤黒い熱情と熱狂で包み込み、この空間をカオスな世界へ塗り上げようと、荒ぶる音をぶつけてきた。「かかってこい!!」と、観客たちを煽り続けるSUI。みずからも身体を折り畳み、絶叫。その身体や心に、消えない思いの紋章を縫いつけるように、最期に縁は『紋章』を叩きつけた。熱い手バンのやりとり、爆裂した演奏にあわせ、誰もがヘドバンし、身体を強く折り畳み、縁の生み出した漆黒の熱情した宴の中へ飛び込み、ともに恍惚を感じあっていた。その様は、まるで聖なる儀式のよう。縁の5人にかしづくように、会場中の人たちがすっかり隷属していた。胸を何度も叩くなど、興奮を隠せないSUI。まさに最高の結びを、5人はここに見せてくれた。

 

  観客たちの求める声を受け、彩り鮮やかな五色の傘を差しながら、ふたたび5人が舞台に姿を現した。縁は『愁』を通し、この場を轟音と雅な空気が乱れ舞う空間に染めあげだした。SUIの歌声へ誘われるように,フロア中の人たちが、理性を消し去り、熱情した狂人と化し、気持ちが赴くままに暴れていた。美沙麗のギターソロに向け、フロア中の人たちが大きく両手を広げ、旋律の雨を受け止める姿も印象的だ。互いに感情を剥きだしに、裸の自分になり、強く求めあっていた。最期の最期まで、互いに剥きだした感情で一つに溶け合う。それが、縁らしい姿じゃない。

 

  「大きな灯火を全員で灯していくぞ」。最期に縁は、訪れた人たち全員と、結び合ってきた絆を、さらに固く結び合うように「君との結びを」と『灯焔』を歌っていた。SUIの手拍子にあわせ、フロア中の人たちも身体を揺らし、手拍子をし、両手を花咲かせ、喜びの笑みを浮かべ、このひとときをしっかりと心に刻んでいた。最後に生まれた、「灯してもう一度 灯して心を 何一つ変わらないこの 姿(かたち)は見えない 未来(きみ)との結びを 叶うまで思い続ける」の合唱。SUIと観客たちとの歌声で、互いの縁はけっして解けることなく結びあっていた。

 

 ふたたび舞台に姿を現したメンバーたち。5人は、最期の最期にふたたび『八咫烏』を演奏。「かごめかごめ」と激しく煽るSUIの声や演奏に合わせてヘドバンが起きれば、SUIと一緒に会場中の人たちがタオルを振りまわし、この会場に熱風を巻き起こしていた。誰もがこのひとときを、忘れたくない記憶としてしっかりと身体に刻んでいた。一人一人が神の国へと向かって飛び立つ八咫烏となり、絶叫の声を張り上げながら暴れ狂っていた。終盤には逆ダイが生まれれば、SUIの指示によりフロアに巨大なサークルを作り、その中へSUIが飛び込み、まわりを取り囲んだ観客たちが、SUIに向かって思いきり折り畳みする景色がそこには生まれていた。

 

最期はグチャグチャの逆ダイの景色が生まれるなど、誰もが感情を解き放ち、本気で暴れ騒いでいた。最期にSUIと観客たちが全力でヘドバンしてゆく様もまた、縁らしい。この熱気、絶対に消えやしない。

 

  次に結んだ紐が解かれ、また結びあおうとするのか、今はまだわからない。ただ、そのときが訪れると、ずっと信じていたい。

 

 

PHOTO: Lestat C&M Project

TEXT:長澤智典

 

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331()

渋谷近未来会館

「旬華愁灯結び〆

セットリスト

 

『八咫烏』

『縁』

『影結び』

『儚花』

『艶』

『命』

『夢幻蝶』

『謳歌』

『鴉片』

『華音』

『紋章』

 

-ENCORE-

『愁』

『灯焔』

 

-W ENCORE-

『八咫烏』


2023年03月28日 (火)

【ライヴレポート】<キズ単独公演「残党」>2023年3月26日(日)NHKホール◆雨降る夜に、「雨男」たる来夢の率いる“残党”たちが全身全霊を賭して臨んだ聖戦

REPORT - 21:00:09

 雨が降ろうと、槍が降ろうと、あるいは世界のどこかで鉛の粒が降りやまずとも。残党たちが全身全霊を賭して臨む聖戦は、今宵その熾烈さを増していったと言える。

 

 2017年春に始動してからというもの、今春で6周年を迎えるキズがこのたび初のNHKホールにて行った単独公演のタイトルは[残党]。ちなみに、昨年末に行ったとあるインタビューの場において、フロントマン・来夢はこのホール単独公演に[残党]と冠した理由を以下のように語ってくれていた。

 

「今一度キズっていうバンドのことを考えたうえで、今の僕らに最も似合う言葉ってなんだろうな?って考えた時、出て来たのが残党っていう言葉だったんです。つまり、僕らもファンもVISUAL ROCKの残党、っていうことですね。そして、いまは残党だとしても、いつまでも残党でいると思うなよ!っていうところを見せつけていきたいんですよ」

 

 

 自らがシーンの新時代を担っていく存在なのだ、という強い自覚と気概を持つキズは今まさに右肩上がりで注目度と動員数を上げて来ているバンドであり、なんでも今回のチケットは昨年10月に日比谷野外大音楽堂で開催された[そらのないひと]の時を上回る勢いで、SS VIP席2階VIP席A席が続々とソールドアウトしたのだそう。

 

 なお、昨年末に日本武道館で行われた大規模イヴェント[V系って知ってる?]でキズの圧倒的なステージングを初めて体験し、今回のライヴに足を運ぶことを決めたという人々も少なくなかったようで、今回のNHKホール公演はキズにとってあらたに残党仲間を増やし、勢力を拡大化していく場としてもかなり重要なものだったと思われる。

 

 

 では、その大切な節目においてキズがまずどのような初手を選んだのかと言えば。1曲目に奏でられたのは昨夏に発表され鮮烈なサウンドと切れ味の鋭い歌詞が話題となったシングル曲「リトルガールは病んでいる。」で、ここではホールならではのステージ構造を活かしながら、各メンバーが“せりあがり”から登場するという仕掛けが場内のオーディエンスを一気に沸かせることとなった。特に、来夢が“残党”と黒地に白で染め抜いた旗を肩にかけている姿はなんとも象徴的で、誰しもの眼に灼きついたのではなかろうか。

 

 曲の律動に合わせ、観客たちが派手に飛び跳ねることでホール全体までもが振動することになった「傷痕」。ビビッドなライティングの中でダイナミックなパフォーマンスされていく様がやたらと美しかった、キズにとって代表曲のひとつ「ストロベリー・ブルー」。冒頭から、いきなりメインディッシュ級の逸品を矢継ぎ早にサーブするキズのスタンスは実にいさぎよく明解だ。

 

「さぁ、やろうか!NHKホール!!」(来夢)

 

 来夢がそう咆哮したのを合図に、残党たちの発する熱量がここからますます増していったのは言うまでもない。reikiのいななかせるギターフレーズがホール中いっぱいに響きわたった「ヒューマンエラー」や、ユエがヘヴィな音像の狭間でドライヴするベースラインを聴かせてくれた「0」、きょうのすけがフロアタムを効果的に使いながら曲に込められた物語の重みを醸し出してくれていた「夢」も、それぞれに曲のトーンこそ違えど胸に伝わってくるバイブスは一様にして高密度なものになっていた。

 

 

 しかも、本編中盤に入って来夢がアコギを弾きながら春の歌「十九」を歌いあげだしたあたりからは、いよいよキズの真髄と本領が発揮されていくことになり、差し迫った死生観が交錯するような楽曲となっている「平成」、炎を使った舞台演出が曲の描く世界とまさに重なった「地獄」へとかけた流れは、キズというライヴバンドの持つ表現力の高さを存分に味わうことが出来る秀逸な場面となっていたはず。

 

 

 そのうえ、本編ラストでは本公演を前にMVが公開された新曲「雨男」が聴けることになり、ここでは既存曲「黒い雨」「ミルク」との関連性や、当日の東京を濡らしていた現実の雨模様にも想いを馳せながら、ドラマティックにして赤裸々な言霊と説得力ある音楽的メッセージを我々はキズから受け取ることになったのである。中でも、曲後半での〈ボクノイノチカネニカエロ〉なる詞の1節と「俺に売るものはもう何もない だから次は俺の命を買ってくれ」という、正真正銘の筋金入り雨男・来夢の絶叫は強烈かつ衝撃的でさえあった。

 

 

 「ピアスにフード」をはじめとして、アンコールでは計4曲を聴かせてくれたキズがこの夜のラストソングとして提示してくれたのは「My Bitch」と名付けられた初公開にしてリリース予定未定のバラード。

 思うに、この「My Bitch」というタイトルについては意図して露悪的な言葉を使ったと推測出来るフシがあり、この場で聴いた感覚では生々しさの滲む真摯なラヴソングだと捉えることが出来る一方で、そこにはキズらしい暗喩も含まれているように感じられた。〈雨が降るなら 僕がきっとそばに 死ぬ時も 君がきっとそばに〉というくだりからはどこか「雨男」とのつながりも浮かび上がるせいか、これはむしろキズが現在地点で歌うひとつの声明になっていると受け止めた方がしっくり来るというか…ともあれ、ここはいずれこの曲が正式発表される際に詳細が解明されることを待ちたい。

 

 

 かくして、全曲をパフォーマンスし終わったあとのメンバーたちは全員が確かな手応えを感じていたようで、reikiがはしゃぎながらきょうのすけに抱きついたり、ユエは柔和な表情で場内を見わたしたり、来夢は半ばへたりこむようにステージに座っていたのだが、そんな彼らの姿からうかがえたのは良い意味でのやりきった感。

「ステージで死んでもかまわない、ステージに全てを賭ける、っていう姿勢。それが僕にとってはVISUAL ROCKの本質なんです」

 以前に来夢はインタビューでこのような発言もしていたことがあり、キズは今回のNHKホール公演[残党]で、その精神をこれまで以上の次元で実践することになったのだろう。来たる6月16日にはSpotify O-EASTでの[キズ BLOG MAGAZINE 限定GIG 「ELISE」-Members only-]、梅雨が明けるかどうかのタイミングとなる7月17日 には日本青年館ホール単独公演[君の涙で遊んでいたい]、また8月26日には豊洲PITでのライヴも決定したという今、ここで彼らが得た経験値は相当に大きい。

 

 

 雨が降ろうと、槍が降ろうと、あるいは世界のどこかで鉛の粒が降りやまずとも。残党たちが全身全霊を賭して臨む聖戦が、もしここからいっそう熾烈さを増していくことになったとて、キズの4人はあの大きな旗を翻しながらこれからもVISUAL ROCKの本質を貫き、その志を全うしていくことになると確信する。何故なら、あの「My Bitch」で歌われていたように。彼らは〈もう今更 後戻りはできない〉のだから。

 

 

取材・文◎杉江由紀

写真◎尾形隆夫、小林弘輔

 

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LIVE情報】

 

キズ BLOG MAGAZINE 限定GIG

ELISE

2023616() Spotify O-EAST

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[開場 / 開演]

17:00 / 18:00

…………………………………………

[チケット料金]

スタンディング

前売 6,000 (諸経費込 / D)

…………………………………………

【ブログマガジン会員一次申込】

受付期間:2023326()21:00202342()23:59

入金期間:202346()12:00202349()23:59

 

TicketTown

https://www.tickettown.site/

 


 

キズ単独公演

「君の涙で遊んでいたい」

2023717(/) 日本青年館

詳細後日解禁

 

2023826() 豊洲PIT

 

キズ 主催TOUR「友喰イ 2023

422() 愛知・Nagoya ReNY limited

55(/) 大阪・BIGCAT

521() 東京・Spotify O-EAST

[チケット料金 (スタンディング) ]

前売 5,800 (税込 / D)|当日 6,800 (税込 / D)

【一般発売】(イープラス/ローソンチケット/チケットぴあ)

202348()

 

▽各LIVE詳細

https://ki-zu.com/schedule/

 

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RELEASE情報】

2023.3.22 RELEASE

LIVE DVD『キズ 単独公演「そらのないひと」2022.10.9 日比谷野外大音楽堂』

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【初回限定盤】DMGD-026/027 (DVDCD) 12,100(tax in)

50Pフォトブックレット封入

*動画配信視聴コード封入(5日間の配信からいずれか1日セレクト視聴可能)

…………………………………………

【通常盤】DMGD-028/029 (DVDCD) 7,700(tax in) 

https://ki-zu.com/discography/4552/

 

 

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キズ [kizu]

SITEhttps://ki-zu.com/

Twitterhttps://twitter.com/ki_zuofficial?s=20

YouTubehttps://www.youtube.com/c/kizuofficial

Instagram :https://www.instagram.com/kizu_official_/

SUBSCRIPTIONDOWNLOAD : https://ki-zu.com/digitalmusic/