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2023年04月26日 (水)

【ライヴレポート】<DEZERT LIVE 2023 / 天使の前頭葉-結ふ->2023年4月24日(月)SHIBUYA CLUB QUATTRO◆「名前のわからないあなたたちのその手と声が、きっと俺たちの人生に意味がある、救いがあると、僕は信じてこの曲を歌います。」(Vo.千秋)

REPORT - 20:00:21

DEZERTが、2023年4月24日に<DEZERT LIVE 2023 / 天使の前頭葉-結ふ->を東京・SHIBUYA CLUB QUATTROで開催した。

同公演のオフィシャルレポートを届けたい。

 

このライヴは、3月から4月頭にかけて全国6都市で行われたツアー<DEZERT LIVE TOUR 2023 / 天使の前頭葉-零>の追加公演。

セットリストは、「天使の前頭葉」が収録されたアルバム『black hole(2019年リリース)』の楽曲が中心となっていた。

彼らは2020年にも<DEZERT 2020 TOUR 天使の前頭葉>というタイトルの全国ツアーの開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で全公演中止。つまり、今回は3年越しのリベンジツアーだったのだ。

チケットはソールドアウト。週初めの月曜日にもかかわらず、フロアは満員だ。

 

暗転後、SEのない無音の空間にメンバーが登場すると、大きな歓声と拍手が沸き起こる。

《生まれてしまったことがもう間違いだ》というフレーズから始まる「Dark In Black Hole」でライヴは幕を開けた。

生きる苦しみと絶望を音に込めて発散するように、滑り出しから爆音を轟かせる。そんな彼らに共鳴するよう、観客たちもイントロから思い切り頭を振っていた。

不協和音が響く中、ステージを照らすライトが真っ赤に変わると「「誤解」」が始まり、会場の空気が張り詰める。

ダウナーかつ緊張感のある独特の雰囲気は、DEZERTのライヴならではだ。

 

続く「バケモノ」は、対照的に疾走感のあるキャッチーな曲。先ほどまでの重たい空気がガラリと変わり、観客たちは「オイ! オイ!」と声を上げながら拳を突き上げる。

千秋(Vo)は、Miyako(Gt)、Sacchan(Ba)の元へ順番に近づき、メンバーをも煽るような仕草を見せた。

すると、「Thirsty?」では、2人がお立ち台に乗ってフロアを扇動。

後方でSORA(Dr)も全身の力を叩きつけるような激しいドラムプレイを見せ、ステージとフロアが一緒に熱を高め合っていく。

ミラーボールが回るムーディーな空間で「ラプソディ・イン・マイ・ヘッド」を披露したあとは、「みぎて」へ。

間奏部分ではドラム台の周りにメンバーが集まり、アイコンタクトを交わし合いながら各々の楽器をかき鳴らす。

その美しい光景と、音源以上に迫力のある音の洪水は、まさにロックバンドの生ライヴにおける醍醐味だ。

 

 

 

 

 

 

このツアーのキーとなる「天使の前頭葉」、そして「白痴」を続けて披露した後、楽曲の作詞・作曲を手掛ける千秋は、2019年から2020年にかけてのことを思い返しながら、“『black hole』はあまり好きではなかった”と語り始める。

「『black hole』は僕のエゴで作ってたような気がして、これがバンドになるのか不安だった。そんなときにコロナが来て、ライヴが中止になって、一瞬ラッキーって思っちゃったんよ。そんな自分が恥ずかしい。(中略)でも3年は長かった。3歳年をとってるってやばくないですか。」

そうコロナ禍におけるバンドマンとしての焦りや赤裸々な感情を吐露すると、「でもとりあえず僕は、普通に戻った世界をありがとう、嬉しいわと思ってます。

この4人多分真剣に人生やってこなかったけど今真剣にやってると思うよ。今日だけは君たちも真剣にやってみようよ!」という煽りから、「御法度」へ。

千秋の言葉通り、勢いのいい手拍子から気合の入ったヘドバンを繰り出す観客たち。

上がったボルテージは「大塚ヘッドロック」でさらに急上昇。

ステージのギリギリまで身を乗り出す千秋は熱狂するフロアへ、今にも飛び込んでしまいそうだ。

「こんな社会に一言申す。楽しく生きてくださいね! 流されんなよ!」と力いっぱいの愛あるメッセージから始まったのは、「感染少女」。

DEZERT流の応援歌のようなこの曲を受け取った観客たちは、相変わらず激しく頭を振って応える。

 

次の「Call of Rescue」を始める前に、千秋はこんな言葉を観客たちにおくる。

「今日あなたたちが残した声や存在、それが僕の救いだったと死ぬとき胸を張って言えるように、精一杯生きよう。最近は毎回そう思うことにしてます。

名前のわからないあなたたちのその手と声が、きっと俺たちの人生に意味がある、救いがあると、僕は信じてこの曲を歌います。改めまして、DEZERTです。よろしくお願いします」。

バンドマンとして、そして表現者として、あまりにも誠実な言葉だった。その言葉に精一杯応えるよう、観客たちは真っ直ぐにステージを見つめながら4人の音に聴き入る。

言葉で刺したあとは、音で心を震わせる「神経と重力」へ。高く跳んだり自由に回ったりとアクティブに動き回りながらギターをかき鳴らすMiyako。

キーボードとコーラスも器用にこなすSacchan。そしてすさまじい雄叫びを上げながら重たい音でリズムを刻むSORA。

盛り上がりのピークが延々と続くような爆発力で、フロアを圧倒した。

 

 

 

 

 

ここからライヴはフィナーレへ向かって加速。活動初期の名曲「遮光事実」のイントロが始まると、「ワァッ!」と大きな歓声が沸き起こり、飛び跳ねて喜んだり、マスク越しに思わず口元を抑えたりするファンの姿も見えた。

ライヴ定番曲の「「遺書。」」では、サビの合唱パートで観客たちに1オクターブ上で歌うように千秋が指示すると、まるで合唱隊のような美しすぎるハーモニーが生まれ、会場には笑いが巻き起こる。

「再教育」で最高潮のテンションに達した会場へ、満を持してドロップされたのは、「半透明を食べる。」。

積み重ねてきた勢いと熱を爆発させながら、本編は終わりを迎えた。

 

 

 

 

アンコールで再びメンバーが登場すると、緩い雰囲気でMCへ。千秋は「思い描いたバンドマンにはなれんかった。もっと喋らない感じのヴィジュアル系やりたかったけど、何が正解かわからんくて。楽しいだけでもおもろない。酒飲んだだけじゃ満たされんし、良いことあってもすぐ病んじゃうやん。どうやって生きる? その答えがわからんからライヴしよう。楽しくない日もあるでしょう。これから先、千秋老けたなとか思う日もあるでしょう。そういうのもひっくるめて、これからもよろしくお願いします」と、また誠実に言葉を重ねる。

 

温かい拍手と共に始まったのは、「I’m sorry」。アコースティックギターの優しい音色に合わせ、観客一人一人に語り掛けるように歌う姿からは慈愛すら感じられた。

「春の歌を一曲やります」という前フリから「さくらの詩」へ。突然のレア曲に、驚きと喜びの声が上がる。

急遽セットリストに追加したという「ミザリィレインボウ」の前には、「世界なんて僕たちには早すぎるんで。僕とあんたらの今日この夜が、正しかったと胸を張って言えるように、2023年まだまだやっていきます」と頼もしい言葉をおくる千秋。

壮大なサウンドと美しいメロディーで普遍的な愛を存分に歌い上げたあと、さらに「これは何回でも証明していくんで。寒いと言われようと、変わっちまったと言われようと、俺はそう生きていくんで」と宣言した。この言葉は、自らを鼓舞しているようにも感じられた。

「True Man」で希望を歌ったあとは、キラーチューン「「君の子宮を触る」」へ。約2時間かけて積み重なったステージとフロアの繋がりが、この曲で完全にリンクし、勢いと熱狂がもう止まらない。彼らの強い感情を最後に昇華させるのは、やはり「「切断」」だった。

千秋は「そうや! 2019年の12月にここで言ったこともう一回言わせてもらうわ! 絶対武道館に連れてったるから!」と、バンドとしての野望を改めて宣言。

その力強い言葉に賛同するように、フロアにいるほぼ全員が激しく頭を振る。DEZERTとファンで作り上げるこの光景が武道館に広がる様子が、このとき確かに想像できた。

 

 

熱狂のまま「天使の前頭葉」ツアーに決着をつけたDEZERTは、6月1日から開催される東名阪ツアー<DEZERT × vistlip 2MAN TOUR “でざとりっぷ!”>へと進み、6月17日からは<DEZERT LIVE TOUR 2023 “きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”>で全国へ。

そして、9月23日にはバンド名を冠した<DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT->を開催する。

一本一本のライヴで思いを伝え、観客の心へ丁寧に訴えかけるDEZERT。

千秋が不安を感じていたという『black hole』の楽曲たちも、既存のライヴ定番曲に劣らない盛り上がりを巻き起こしていた。

それは、ツアーを通して楽曲がしっかりと育ったという確かな証拠だろう。

バンドとしての役割を愚直に果たそうとするDEZERTに、私たちは安心してついていこう。

その誠実な音楽と不器用な言葉で、何度でも救ってくれるはずだから。

 

 

 

PHOTO:Taka”nekoze photo”

TEXT:南明歩

 

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DEZERT LIVE 2023 / 天使の前頭葉-結ふ-

2023年4月24日(月)SHIBUYA CLUB QUATTRO

<SETLIST>

 

01 Dark In Black Hole

02 「誤解」

03 バケモノ

04 Thirsty?

05 ラプソディ・イン・マイ・ヘッド

06 みぎて

07 天使の前頭葉

08 白痴

09 御法度

10 大塚ヘッドロック

11 感染少女

12 Call of Rescue

13 神経と重力

14 遮光事実

15 「遺書。」

16 再教育

17 半透明を食べる。

 

EN1 I’m sorry

EN2 さくらの詩

EN3 ミザリィレインボウ

EN4 True Man

EN5 「君の子宮を触る」

EN6 「切断」

 

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≪LIVE SCHEDULE≫

 

■DEZERT X vistlip 2MAN TOUR “でざとりっぷ!”

6月1日(木) 名古屋Electric Lady Land  OPEN/START 18:00/18:30

6月2日(金) 大阪 ESAKA MUSE PEN/START 18:00/18:30

6月11日(日) 恵比寿 LIQUIDROOM OPEN/START  17:15/18:00

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【チケット料金】 スタンディング 前売¥6,000(税込) 

 ※入場時ドリンク代別途必要、営利目的の転売禁止、就学児童入場不可

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★チケット:

【オフィシャルHP先行受付(抽選)】受付期間:4月24日(月)12:00〜4月29日

(土・祝)21:00

 ※受付URL:https://eplus.jp/dezertxvistlip23-official/

 ※e+抽選受付、各公演1人2枚、スマチケのみ(分配可)、同行者登録有り

【一般発売】5月13日(土) ※イープラス公式リセールの予定有り

 

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■DEZERT LIVE TOUR 2023 “きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”

2023年6月17日(土)CLUB CITTA’  OPEN 17:00 / START 18:00

2023年7月1日(土)新潟NEXS      OPEN 17:30 / START 18:00

2023年7月9日(日)仙台Rensa     OPEN 17:30 / START 18:00

2023年7月15日(土)福岡DRUM Be-1  OPEN 17:30 / START 18:00

2023年7月16日(日)福岡DRUM Be-1  OPEN 17:30 / START 18:00

2023年7月22日(土)岡山CRAZYMAMA KINGDOM  OPEN 17:30 / START 18:00

2023年7月23日(日)高松MONSTER  OPEN 17:30 / START 18:00

2023年7月29日(土)札幌ペニーレーン24  OPEN 17:30 / START 18:00

2023年8月26日(土)名古屋DIAMOND HALL  OPEN 17:15 / START 18:00

2023年8月27日(日)なんばHatch  OPEN 17:15 / START 18:00

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【チケット料金】 6,000円(税込・ドリンク代別)

 スタンディング(大阪公演以外の9公演)、全自由/座席有り(8月27日大阪公演のみ)

 ※入場整理番号付き

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★チケット:

【チケット一般発売日】  2023年4月29日(土・祝) ※公式リセール実施予定

 

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■LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT-

 9月23日 (土) LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

 ※詳細は後日発表。

 

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DEZERTオフィシャルサイトhttp://www.dezert.jp 

DEZERT YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/dezert_official 

DEZERT 公式Twitter  https://twitter.com/DEZERT_OFFICIAL 


2023年04月16日 (日)

【ライヴレポート】FAIRY FORE 1日限定復活レポート◆2023年4月15日(土)横浜7thアベニュー

REPORT - 19:00:55

解散したバンドが再びステージに立つことは、今では決して珍しくないだろう。けれども、それぞれのバンドごとに、その再結成はひとつずつまるで異なるものなのだ。2023415日、FAIRY FOREの一日復活をその目で見て、そんな思いを新たにした。

 

90年代から2000年代のいわゆるヴィジュアル系の黄金期に活動したFAIRY FOREは、耳なじみのよいメロディと歌で多くのファンを魅了した。エイベックスからメジャーデビューを果たしたが、20051211日に解散。現在、ヴォーカルの現王園崇はJagged Little Pill(ジャグド リトル ピル)としてソロ活動を積極的に続ける一方、ベースのYASU、ドラムのYOKOは第一線から退いている。

 

そんな彼らの復活ライヴは、先輩でもあるHUSHによるイベント『HUSH 3days -cocoon8414155516-』がその舞台となった。FAIRY FOREにとっても馴染み深い横浜7th Avenueはソールドアウト。ぎゅうぎゅう詰めになった観客を前に、お馴染みの懐かしい曲にパロディーを取り込んだSEが流れ、笑い声と手拍子が沸き起こる。ライヴハウスという空間の中では、期待でいっぱいのワクワクした気持ちが最後方まで伝わってくるように感じられるのが不思議だ。ひと際大きな歓声を受けて、現王園が登場。いよいよ18年ぶりのFAIRY FOREのライヴが始まった。

 

「一人でも多くの人が知っていて、喜ぶであろうと曲を選んだ」というセットリストの一曲目は、「SWEET-ness」。イントロの柔らかなサウンドと明るい光が会場に広がっていくさまに、ファンは一気に当時へ連れ去られたのではないだろうか。現王園の変わらぬ歌声が耳に飛び込んできたとき、FAIRY FOREが目の前にいることをたまらなく実感した。

 

 

 

キャッチーで伸びやかなメロディに、楽器隊から生み出されるシンプルなバンドサウンド。その音楽もこのライヴに向かう姿勢もピュアでまっすぐだ。特段に緊張するでもなく、大仰に感傷に浸るでもなく、ただこの瞬間、音楽に没頭する姿は潔く、見た目よりも大きく感じた。そのまま「皆さま、一緒に踊りましょう!」と「CHILD WIZARD」が始まると、軽快なリズムに自然に体が揺れる。そしてサビへと差し掛かると、思わず口ずさんでいる自分に気づく。

 

冗談を交えつつ、「お久しぶりです」と軽くMCを挟むと、続いて「IDOLL」。YASUが全力でぶつかってくるようなプレイを見せる後ろで、YOKOはクールにプレイに集中。ファンの反応を確かめるように、フロアへ目をやっていた現王園から笑顔がこぼれた。「VIVID」では、勢いよく転がっていくようなテンポに合わせ、ファンも一緒に元気いっぱい声を上げる。エネルギッシュなステージはブランクを感じさせない。

「全開でやってます」というYASUの言葉と、冗談混じりにチラッと見せる疲労具合どおり、この6曲に全力を注ごうと

しているのが見て取れる。それも、「楽しみたいし、楽しませたい」という現王園の心からの願いゆえだ。ことさらドラマチックに復活を盛り上げるのではなく、ただFAIRY FOREの音楽を愛し続けてくれているファンにもう一度その音楽を届ける、今日に賭けるそんなシンプルな思いが伝わってきた。

 

 

 

SEXUAL EXCITEMENT」から、いよいよ熱気は高まり、さらなる盛り上がりへ。YOKOは激しくパワフルなプレイで気迫を見せ、YASUはすべてを出し尽くす。曲が終わったところで、お互いに軽口を叩いていじり合い、笑い合い、この瞬間を噛み締める。でも、そんな時間もあと少し。最後に届けられたのは、デビュー曲である「LOVE SICK」だ。一曲目からFAIRY FOREというバンドの豊かな才能に改めて目を見張り、ここまで素直に楽しんできたが、ファンの合唱を耳にすると思わずぐっと胸が熱くなった。

 

何度も何度もファンへの感謝を口にし、互いに笑顔を交わし、じゃれ合ってはしゃぐ3人。ただ潔くまっすぐに、自分たちの音楽を奏で、現在の自分たちにできることを全うした姿は晴れ晴れとしていた。実はこのライヴは、たまたま現王園が思い立ってHUSHの橋都章人にかけた一本の電話が、きっかけになったのだという。そんな偶然によって生まれた奇跡の夜だったからこそ、ファンとともに自分たちの音楽をひたすら楽しむ、かけがえのない時間となったのだろう。そのときを共にできたことに心から感謝したい。

 

最後に一言付け足すとするならば、「何かが、始まる」?

 

 

写真◎シュウ
文◎村山 幸

 

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FAIRY FORE

Vo.現王園 崇
B.YASU
Dr.YOKO

サポートG.TACA

 

 

4/15横浜7thアベニュー
FAIRY FORE

1.SWEET-ness
2.CHILD OF WIZARD
MC
3.IDOLL
4.VIVID
MC
5.SEXUAL EXCITEMENT
6.LOVE SICK


2023年04月13日 (木)

【ライヴレポート】Petit Brabancon<KNOTFEST JAPAN 2023>◆2023年4月2日(日)幕張メッセ国際展示場 9-11ホール

REPORT - 20:00:56

42日、Petit BrabanconKNOTFEST JAPAN 2023に出演した。これはPetit Brabanconにとって初のフェス出演である。

コロナ禍真っ只中の2021年に始動、2022年にファーストアルバム『Fetish』をリリースしてツアー『Resonance of the corpse』を実施と、手練によるドリームチームとしてではなく、あくまでゼロから始まったロックバンドとして初期衝動を解放し続けてきた2年間である。

その成果と鋭利さが、フェスのショートセットの中で衝動的に解放されていくようなアクトだった。

 

 

 

本国では「Dark Carnival」と愛称される、メタル、ニューメタル、ポストハードコアの祭典。その暗黒祭は気持ちのいい晴天に恵まれ、爽やかな風が吹き抜けている。

そんな穏やかな空気を切り裂かんとするように、牙を剥くプチブラバンソンが描かれた黒いバックドロップがステージ上に君臨。

普段は穏やかで友好的な犬であるプチブラバンソンが怒り吠えるこの絵が、まさにPetit Brabanconの音楽が何たるかをそのまま表していると改めて思う。

世界、慣習、普通の形に対して従順だと思ったら大間違いだ、人間の型の外で這い回って叫びながら存在する命がある--そんな表明が「安穏なものが凶暴化して狂っていく」という姿に表れているのだ。

京(VoiceDIR EN GREY)がyukihiroDrL’Arc-en-CielACID ANDROID)に声をかけてゼロからバンドがスタートしたのが、ウィルスの脅威以上に人間の構造の歪みを暴露し続けたコロナ禍のど真ん中であったこと。

それは、京が怒りと衝動と嘆きをより一層ストレートに叫ぶ必然性を時代の中に感じ取ったからなのだと思う。

そしてまさに、インダストリアルなビートを叫び一発で切り裂いていくPetit Brabanconの歌は、あらゆる構造によって人間の匂いがなきものにされていく密閉された社会と「俺はここにいる」という表明を同時に描いているものなのだ。

 

 

 

 

午前11時、ステージに5人が現れる。文字通り黒山の人だかりになったピットを京が両手で煽りながら“Isolated spiral”がスタートした。

挨拶は「かかってこい」の一言である。重たいビートと不穏なギターが絡み合って漆黒の渦を作り出すこの楽曲は、まさにPetit Brabanconの心臓部分を表している。体を捻りながら読経とグロウルを行き来する京に、

antzGtTokyo Shogazer)とミヤ(GtMUCC)の怒鳴りが重なってビルドアップしていく様は、真綿で首を絞められて生きる人間が限界から発する怒りの表明そのものである。

 

 

 

 

「クソどもが、吐き出してこい! 溜まってんだろ!」。この京の言葉は、ステージ上から「クソ」を見下ろす者の言葉ではない。

むしろ、この爆音の中では共闘の言葉として聞こえてくるから不思議である。

ひとつになれない、愛を答えにできない、「みんな」という言葉が空虚にしか見えない--そんな、普通の外でしか生きられないが故に「クソ」として日々を這い回る人間のためにこの歌はあるのだ。

歌詩の中に込められた怒りと悲しみは、そしてステージ上でのたうち回るような京の姿は、それを徹底的に訴えている。

立て続けにプレイされた“渇き”ではさらに痛切なグロウルが鳴り響き、その叫びに呼応して観客も半狂乱の様相である。

誰もがバラバラ、誰もが好きなように自分の衝動を解放し、相容れない人間達のユナイトとでも言いたくなるような、ある種の矛盾が成立している様が美しい。

 

観客のハンドクラップを煽ってantzとミヤと高松浩史(BaThe Novembers)が縦に跳ねた“OBEY”でも、一見ポップな曲調を敢えて汚す不穏なギター、毒々しい声の螺旋が印象的だ。

緻密なアンサンブルでありながら、しかしそれを自分達自身でぶっ壊していくような、そんな衝動一発のアクトが連打されていく。

語りと叫びが目まぐるしく入れ替わっていく“I kill myself”では、京の声自体がグルーヴの中核を担う。

yukihiroの繰り出すビート感だけに限らず、5人それぞれが発するサウンド・怒鳴り、体自体がリズムと歌心になっていて、それこそがこの音楽の心臓にある「気持ち悪い」「居心地が悪い」「世界に俺がいない」という感覚を物語っている。

 

 

 

「もっといけんだろうが!」という京の怒号からなだれ込んだ“Dont forget”からはさらにバンド全体が直情的に昇っていく。

ドラムンベースのリズムを背骨にしたこの楽曲は、Petit Brabanconの凶暴性を「感じさせる」のではなくストレートに叩きつけるものである。

目覚めろ、覚醒せよと何度も訴えるようなこの歌を、ステージ前方の鉄箱に登って叫び続ける京。

ピットではクラウドサーフとモッシュが巻き起こり、さらなる熱の交感がバンドと観客の間に生まれていく。

Dont forget”--怒りと苦しみを抱えていること自体がお前はお前である証明なのだと訴え、それを刻みつけて忘れないための歌。

この歌は、このバンドは、傷でしか自分の輪郭を認識できない人間を赦し、そして代弁しようとしているのだ。

ただの怒りではない。ただの嘆きではない。痛みを共通言語にするしかない人間の、孤独の共同体として叫び続けるのがPetit Brabanconなのである。

曲ごとに衝動を解放して体をステージに叩きつけるようになっていく5人の姿からは、そんなことを感じてしょうがない。

 

2本のギターとベースがドス黒い螺旋を描く“Pull the trigger”、エキゾチックな同期音からヘヴィなアンサンブルに雪崩れ込んでいく“無秩序は無口と謳う”、

そして「狂っちまえ!」という口上が叩きつけられたラストナンバー“疑音”。

京がマイクを放り投げ、「ボコッ」という音と共にステージを去っていくPetit Brabancon5人。最後までステージ上に残ったのは、ミヤのギターの残響だった。

最後の最後まで鋭利な音だけを突き刺して深い爪痕を残していく様にもまた、Petit Brabanconの音楽の意味そのものを感じるのだった。

 

なお、Petit Brabancon6月に新たなEPをリリースすることを発表し、7月からは全国6箇所を回るツアー「INDENTED BITE MARK」の開催が決定している。

コロナ禍におけるガイドラインと同時に、人間の怯えが引き起こす攻撃と軋轢に心が縛られ続けた数年。

そんな長い夜が明けんとしている2023年、徹底して衝動に従順な彼らの音楽はいよいよ本領を発揮するだろう。

叫べばいい、もがけばいい、生きればいい。Petit Brabanconはそう歌い続ける。

 

 

 

 

写真◎河本悠貴/Taka “nekoze photo”

文◎矢島大地(MUSICA

 

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Petit Brabancon KNOTFEST JAPAN 2023 DAY2FESTIVAL”> 

202342() 幕張メッセ国際展示場 9-11ホール

Setlist

 

 

 

 

1.Isolated spiral

2.渇き

3.OBEY

4.I kill myself

5.Don’t forget

6.Pull the trigger

7.無秩序は無口と謳う

8.疑音

 

Spotify> https://spoti.fi/3Ux3YBe 

 

Petit Brabancon New EPリリース

20236月発売予定

5曲収録予定

詳細は後日発表

 

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LIVE SCHEDULE

 

■<Petit Brabancon Tour 2023INDENTED BITE MARK」>

Petit Brabancon Tour 2023INDENTED BITE MARK

712日(水) 東京 Zepp DiverCity     OPEN 18:00/START 19:00  []HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999

713日(木) 愛知 Zepp Nagoya       OPEN 18:00/START 19:00  []サンデーフォークプロモーション 052-320-9100

717日(祝・月) 大阪  Zepp Osaka Bayside    OPEN 17:00/START 18:00  []SOUND CREATOR 06-6357-4400

722日(土) 宮城 SENDAI GIGS      OPEN 17:00/START 18:00  []ノースロードミュージック仙台022-256-1000

723日(日) 神奈川  KT Zepp Yokohama       OPEN 17:00/START 18:00  []HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999

729日(土) 福岡 Zepp Fukuoka OPEN 17:00/START 18:00  []キョードー西日本 0570-09-2424

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【チケット料金】

 <SSスタンディング(前方エリア・オリジナル特典付き)   25,000円(税込・整理番号付き・ドリンク代別)

 <一般スタンディング>  8,800円(税込・整理番号付き・ドリンク代別)

 <2SS指定席(2階席前方エリア・オリジナル特典付き)> 25,000円(税込・ドリンク代別)

 <2階指定席>  8,800円(税込・ドリンク代別)

【チケット一般発売中】 イープラス:https://eplus.jp/pb/ 

 

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Official Web: https://www.petitbrabancon.jp/ 

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YouTube: https://www.youtube.com/c/PetitBrabancon_official 

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