2023年08月16日 (水)
【ライヴレポート】<DIV「NEVER DIVIDED, JUST DIVE」>2023年8月13日(日)恵比寿リキッドルーム◆
REPORT - 18:00:242023年8月13日(日)、DIVが再結成ライヴ『NEVER DIVIDED,JUST DIVE』を、恵比寿リキッドルームにて開催。
約7年振りとなるステージで、バンドの復活を高らかに宣言した。
CHISA(Vo)、将吾(Gt)、ちょび(Ba)、satoshi(Dr)の4人によって結成されたヴィジュアル系バンド、DIV。
2012年に始動した彼らは、パワフルなバンドサウンドと緻密にデザインされたデジタルサウンドを掛け合わせたハイクオリティな楽曲を武器に、凄まじい勢いでシーンを駆け上がっていった。
しかし、2016年8月8日、突如バンドの解散を発表。明確な解散理由も発表されなかったため、様々な憶測が飛び交うことになった。
そして、2016年10月10日、日比谷野外音楽堂でのワンマンライヴをもって、惜しまれながらも4年半の活動に幕を降ろす。
解散以降もメンバー各々が音楽活動を続けていたのだが、DIVの復活は「不可能」と言われ続け、もう二度と4人が同じステージに立つことはないと、誰もが思っていた。
しかし、時は流れ、2023年3月5日。突然の再結成発表に、国内はもちろん海外からも歓喜の声があがった。
再結成ライヴのチケットは即日完売。彼らの音楽でありライヴは、今もなお、多くのリスナーの心に残り、求められ続けていた。
また、彼らはドキュメンタリー映像「Documentary of NEVER DIVIDED,JUST DIVE」を公開。
それは再結成をするにあたり、あのとき起こっていたすべてを洗いざらい話すことが、応援してくれていた人達に対しての誠意なのではないかという結論に達し、撮影されたものだった。
衝撃的な告白を交えながらも、これまで明らかにされていなかった解散に至るまでの経緯や、当時の心境を赤裸々に話し、再結成へ向けたありのままの想いを、4人は力強く語っていた。
そして迎えた8月13日。約7年振りに、DIVの4人がステージに姿を現した。
大歓声が上がるフロアに向かって、将吾とちょびは笑みを浮かべ、satoshiはまっすぐにドラムへ向かって歩いていく。
3人から少し遅れてステージに入ってきたCHISAは、超満員のフロアを見渡しながら、そこにいる一人ひとりに視線を送り、何度も小さくうなずいていた。
SE「215」が終わると同時に、時計の秒針の音が流れ始める。
カチカチと時を刻むその音が、次第にその速度を遅めていき、止まった。そこから1曲目がスタート。
4人が記念すべき日の幕開けに選んだのは、「ZERO ONE」。彼らが日比谷野音で行なった解散ライヴで、ラストナンバーとして届けた楽曲だった。
止まってしまった時計の針を再び動かすべくCHISAが歌い始めると、フロアからたくさんの拳が突き上がった。
ステージから放たれる音と、そこに乗せられた言葉達が、ただひたすらに胸に迫る。
なかでも〈終幕へ向かう世界じゃないんだよ 始まりに溢れているだろう?〉という一節は、DIVというバンドの鼓動が止まってしまったあの日とはまったく違うものとして、フロアに響き渡っていた。
そこから続けて披露された「東京、熱帯夜につき」が、感動を興奮に塗り替えていく。ベースを高く構え、しなやかなに音を奏でるちょびと、軽快なビートを色彩豊かに刻んでいたsatoshiが顔を合わせてグルーヴを高めていくと、「夏一色に染め上げようか!」というCHISAの煽りからなだれ込んだのは、「夏の行方」。
早くも登場したバンドの代表曲に、場内は笑顔で溢れかえっていた。
「今日はいっぱい曲をやる」という宣言通り、代表曲/定番曲を立て続けに繰り出していく4人。なかでも印象的だったのが、「イケナイKISS」だ。
当時よりも色彩豊かでパワフルなものに変貌を遂げていたことに驚かされたのだが、それは4人がDIV解散以降もしっかりと自身の腕を磨き続けていたことの証左だろう。
また、ウォール・オブ・デスを発生させた「DEATH GAME」では、「そっちに行っちゃおうかな」と、CHISAがオーディエンスを左右に分けたことでフロアに生まれたスペースを練り歩く場面も。
彼らの一挙手一投足から、今この瞬間を全力で楽しみながら演奏していることが伝わってくる。
そんな活き活きとしたパフォーマンスを裏付けるように、CHISAは話す。
CHISA「DIVが、私の、僕の青春だったって言ってくれる人が結構多くて。でも、俺らにとっても青春だったと思ってるんですよ。
俺らもみんなも大人っぽくなったけど、もう一回、青春を始めてみてもいいんじゃないでしょうか」
そこからも凄まじい熱量で曲を畳み掛け、瞬く間にラストナンバーの「ANSWER」へ。
大音量のオイコールが巻き起こるフロアに向けて、歌詞を口ずさみながらギターをかき鳴らしていた将吾は、ステージ前まで出てきてギターソロを轟かせていた。
ちなみに「ANSWER」は、彼らがDIVとして最初に世に生み出した楽曲である。
曲に入る前に、CHISAはこう話していた。「最初に作った曲の歌詞の中で、こう言っていました。ここに生かされてる理由が、今は解る」。
暗闇の中で光に手を伸ばすように、ここで生きていくことを証明するように、4人は力強く音を重ね合わせていた。
アンコールでは、メンバー一人ひとりがオーディエンスに感謝と今の気持ちを言葉で伝えていた。
ちょびは「2016年10月10日から時間が戻って動き始めました。またここから新しい時間を作っていきましょう」と笑顔でコメント。
珍しく緊張していたという将吾は、「SEASONS」を演奏していたときに、同曲を披露したリキッドルームでのライヴの記憶が甦ってきたそうで、「みんなもいろんなことを思い出しながら聴いているのかなって思いながら演奏していた」と話した。
satoshiは、「演奏して、みんなが笑顔でいてくれることが嬉しいなと思いながらドラムを叩いてました。
僕らはみんなを笑顔にできるバンドです。そんなバンドを7年間も奪ってしまって本当にごめんね」と、溢れる涙を隠すことなく、これまで抱えていた想いをまっすぐに伝えていた。
この日のライヴはチケットが即日完売したことを受け、生配信も行なわれていたのだが、配信はアンコールの途中で終了。
会場は撮影OKのエクストラタイムに突入した。「この“撮影OK”は、みんなの思い出だけにしたいわけじゃないです。
今日の熱狂を、ここに来られなかった人に届けてほしい。またこの曲が新しい誰かに届いて、バンドがもっとパワーアップできたらいいなと思ってます!」というCHISAの一言から、彼らが改めてこの4人で歩み続けていこうとしている強い意志を感じさせられた。
そして、「夏の行方」を再び披露。この日最大の熱狂を巻き起こした。
尚、エクストラタイムの模様は、現在「#DIVの夏日本の夏」でSNSに続々と投稿されているので、そちらで当日の会場の空気を味わっていただきたい。
また、再結成ライヴの模様はアーカイヴ配信されており、配信チケット購入者は2023年8月27日(日)23時59分まで何度でも視聴可能となっている。
歓喜に沸き続けた再結成ライヴを締め括ったDIVは、2024年7月19日(金)にZepp Shinjukuでワンマンライヴを開催することをこの日発表した。
こちらの詳細は後日アナウンスされることになっている。また、9月には『DIV presents「将吾フェス2023」』が、10月には『DIV satoshi birthday Special「マブダチ」「弟」』の2公演の開催が決定。
再結成ライヴ同様、おそらくどの公演もチケットの争奪戦は必至になるかと思われるが、「みんなには大変な思いをさせるかもしれませんが、またライヴ会場で会いましょう!」と、CHISAは再会の約束をオーディエンスと交わしていた。
誰もが予想していなかった奇跡の復活をはたしたDIV。再びその足を前に進めた4人は、ここからどんな未来を描いていくのか。
その行方をしっかりと見届けていただきたい。
TEXT◎山口哲夫
PHOTO◎S1TK、Ray Favian
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DIV 「NEVER DIVIDED, JUST DIVE」
2023年8月13日(日) 恵比寿リキッドルーム
SETLIST
1. ZERO ONE
2. 東京、熱帯夜につき
3. 夏の行方
4. LOVE IS DEAD
5. TASTE OF LIFE
6. BUTTERFLY DREAMER
7. JUSTICE
8. SEASONS
9. 漂流彼女
10. you
11. イケナイKISS
12. DEATH GAME
13. ゴールデンキネマ劇場
14. SECRET NIGHT
15. Point of view
16. ANSWER
En01. 東京ネクロポリス博物館
En02. 毒彩ギーク
En03. 夏の行方
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<配信情報>
■「NEVER DIVIDED,JUST DIVE」恵比寿リキッドルーム アーカイブ配信中
【チケット料金】 6,000円(税込)
【アーカイブ視聴期間】 2023年8月27日(日)23時59分まで(期間中は何度でも視聴可能)
【配信チケット受付URL】 https://div-official.zaiko.io/item/358262 ※配信チケット受付中
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<DIVE LIVE SCHEDULE>
■DIV presents 将吾フェス2023
2023年9月3日(日) 渋谷Milkyway <一部>OPEN 13:30 / START 14:00 <二部>OPEN 17:00 / START 17:30
2023年9月9日(土) 福岡DRUM SON OPEN 17:00 / START 17:30
2023年9月10日(日) 福岡DRUM SON OPEN 16:00 / START 16:30
【出演】 DIV
【チケット料金】 5,500円(税込・D代別)
【チケット発売中】 https://l-tike.com/acme/
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■satoshi birthday Special
2023年10月3日(火) 池袋EDGE 【Day1】 『マブダチ』 OPEN 17:30 / START 18:00
【出演】 DIV / えんそく
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2023年10月4日(水) 池袋EDGE 【Day2】 『弟』 OPEN 17:30 / START 18:00
【出演】 DIV / Chanty
【チケット料金】 前売5,000円(税込み) / 当日券 5,500円(税込 )
【チケット一次先行受付】 https://div-official.zaiko.io/
2023年8月13日(日) 19:00~2023年9月10日 (日) 23:59
【一般販売】 2023年9月24日 (日) 10:00
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■2024年7月19日(金) Zepp Shinjuku ワンマンライブ決定
詳細は後日発表
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<DIV>
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2023年08月13日 (日)
【ライヴレポート】<Ashmaze. ONEMAN TOUR 2023「Unity」 TOUR FINAL>2023年8月4日(金)恵比寿LIQUIDROOM◆自身最大キャパシティとなったツアー最終公演。 ──「人間は強いってことを証明しよう」。
REPORT - 20:00:262023年8月4日、Ashmaze.が恵比寿リキッドルームにてワンマンライヴを行った。
Ashmaze.は2019年結成。ここ数年に渡るコロナ禍に直撃し、無慈悲に淘汰されていった音楽シーンの中を、華のある5人編成と高い演奏力を武器に戦い抜いてきた叩きあげのバンドだ。
<UNITY>と題された合計8本の全国ワンマンツアーの最終公演にして、彼らにとって自身最大キャパシティとなったライヴの模様を本レポートではお伝えする。
平日にも関わらず多くの観客が詰めかけたリキッドルーム。
現在のヴィジュアルロックシーンにおけるAshmaze.への期待値とこのライヴへの注目度が伺える。
定刻と同時に暗転し、幕が左右に開くとそこにはすでに5人の姿が。
序曲に据えられたのは「ニルヴァーナ」。今年6月にリリースされた1stフルアルバム『NIRVANA.』の表題曲でもある新たな名刺代わり的ナンバーだ。リズムインと共にフロアはヘドバンの嵐で開幕早々に風速を上げていく。
「ニルヴァーナ」(OFFICIAL MUSIC VIDEO)
口ずさみたくなるサビとその裏で蠢くЯyu(Ba)のフレージングに初っ端から“らしさ”を感じ思わずニヤリとさせられる。
続いたお馴染みの「サイレン」でも歓声は音量を増し、ツアーでの成熟を覗わせた「ハナトナレバ」は詩結(Gt)の琴線に触れるフレーズ、諒(Gt)とのツインギターソロがこれでもかと波状攻撃で畳みかけてくる。
Ashmaze.は緻密な楽曲とそれを再現する高い演奏力を武器とするバンドだが、特筆すべきは5人のメンバーがそれぞれに音数で主張しつつも、押し引きの妙が実に巧みで輪郭にブレが生じないところである。
S1TK(Dr)のドラミングが自在に幻惑する「グロリア」然り、音の波に漂う双真(Vo)の歌声がその独特の声質も相まって力強さと同時に無二のドライな感触を放ち続ける。
中盤に差し掛かる頃に披露された「Hurt me」においてもこの無二の魅力を存分に体現。
「Hurt me」もまた『NIRVANA.』収録の楽曲であるが、エキゾチックなリフがリキッドルームを巨大な密林のように妖しげに彩る。艶めかしい双真の歌唱は<ねぇ愛をもっと頂戴>と浮遊するように確かな“個”を主張する。楽器隊もそれぞれの音・フレーズで上塗りするように色味を増していき、技量はもちろんのことそれに留まらないAshmaze.の新機軸を見事に表現した。ステージを照らす明かりも淫靡な虹色に染まり空気をガラリと一変させた。
▲双真(Vo)
中盤では「ゆらり」、「Q」と美しいメロディのバラードナンバーが続けて披露された。序盤から続いたオーディエンスの激しい盛り上がりの余熱をも溶かすような淡々としたプレイがむしろ微熱のように甘く狂おしい。<あなただけズルいよ>と繰り返す双真の歌声はまるで耳元で囁くように悲しく響き、リキッドルームに静寂が充満した。
激しい音楽であることは大前提であるが、Ashmaze.の真骨頂ここにありのこのミドルブロックは大きなハイライトとなった。
▲諒(Gt)
▲詩結(Gt)
諒と詩結がセンターに揃ってギターソロを披露した「渇き」でもハードな側面と同時にバンドのテーマとなっている“苦悩に寄り添う”を体現するかの如く深層へと堕ちていく。
<UNITY>とは<団結>でありメンバー同士もファン同士も高め合えたツアーになったのではないかと双真が語ったところで披露されたのは「三日月がただ遠い」。
アルバム『NIRVANA.』のクロージングソングである。荒廃した心象を鎮めるように祈りを捧げるこの曲。結成して間もなく世界的パンデミックの影響で在るべきバンド活動、ひいては本来熱狂の渦中であるべきライヴと隔離された世界を生き抜いてきたバンド故の苦悩もあるだろう。この日終始、双真は“声を聴かせろ!”、“観客が声を出せるようになったライブハウスで~”と言った趣旨の発言をした。所謂“声出しルール”が概ね撤廃されて幾ばくかの時間が経過しているが、Ashmaze.にとってこの世界は取り戻したものではなく、ようやく手に入れたものであることを再認識させられる印象的なシーンだった。
“苦悩に寄り添う”ことをテーマにしているバンドにとってオーディエンスに“いかに寄り添うか”もまた“苦悩”だったのではないか…優しくも儚い曲のアウトロに飲まれるようにそんなことを思った。
2020年にリリースされた「GENOM」の焦操感が戦闘態勢の終盤戦への突入を告げると、続いたのは「ラベンダー」。一聴するとキャッチ―だが、タクトを振るうようなS1TKのドラムを中心に独特の超変態的なグルーヴが生まれ、技術の確かなAshmaze.の新しい顔を覗かせる。
激しく求めあうオーディエンスに向けてここで投下されたのは「拝啓、嫌いなお前へ」。“待ってました!”のガソリンは加熱済のフロアを見事に完全着火し、この日最大の極悪な高揚を生み出す。ここまで比較的冷静にプレイをしていたフロントメンバーも肉声で叫び扇動する。
▲Яyu(Ba)
▲S1TK(Dr)
2019年リリースの『錯覚』より「カゲロウの錯覚」、ハードネスの中にグルーヴィーな心地よさも内包する必殺曲「INSIDE MY HEAD」と歴戦のナンバーを経て「Humming」ではタオルを回して楽しむ聴衆にメンバーも思わず笑顔で応えた。「Humming」は誤解を恐れず言えば“異色”かつ“ポップ”であり、これまでのバンド像には存在しなかった1曲である。
“苦悩に寄り添う”ことを大義としたバンドが規模を拡大していくうえで自分たちの音楽に触れる人間に対して“寄り添う”以上の一歩を踏み出しているような印象を受ける。
<世界を変えたいだとか 大それたことは言わない>と歌いつつ、今目の前にいる一人一人の世界を確かに明るく変えようとするこの曲。時系列は定かではないが、言い換えるならば「Humming」こそが<UNITY>と題されたツアータイトルの意味を成しているのかも知れない。
双真も語ったように<UNITY>には団結や結束という意味があるが、<苦悩に寄り添うこと>も団結であり、<変えた後の世界>を共に歩むこともまた結束ではないだろうか。
以前、双真はメイクを施し衣装を着る…自分が創り出した世界観の中で自分の本質を表現に昇華できると語っていたが、等身大の言葉を丁寧に紡ぐフロントマンを擁するこのバンドだからこそ、ここから数年、十年、二十年先の歩みを「Humming」が答え合わせしてくれる、そんな気がしている。
“まだまだ上に行きたい”と決意表明したうえで“人間の強さを証明しよう!”となだれ込んだラストナンバーは「INNOCENCE」。断末魔のような音の洪水が残響し完全燃焼で本編終了。
アンコールを求める声が上がるとほどなくしてステージサイドのモニターに告知映像が流れる。白と赤をあしらった<New Visual>が映し出されると悲鳴に似た嬌声があがり、さらに全国ツアーの情報も解禁された。
1箇所ずつ明かされていくが…日程の多さ(全17公演!!)に次第に喜びでどよめく会場。そして…ツアーファイナルは2024年1月22日 Spotify O-EAST!!!
この発表にはこの日一番の大歓声が沸き上がった。
アンコールに登場したメンバーは早速新衣装を纏い、披露されたのは未発表の新曲「カルマ」。
諒、詩結、Яyu、S1TKの音がぶつかり合い、セツナ系のキャッチ―なメロディが耳に残るのはまさしくAshmaze.の王道であるが、その隙間を双真の歌声と泣きのギターが双璧を成すようにつんざく展開をしていく様にハイブリッドさを感じる…はっきり言ってバンドのニューウェポン誕生を予感させる強烈な1曲だ。
この日初めて全メンバーがマイクを取ったMCでS1TKは「7年前にサポートで立った会場にワンマンで帰ってこれて良かった。」とこの日への想いを語り、Яyuは「“UNITY”はライヴでこそ生まれるべきだ」と躍動するベースラインで抜群の個性をいかんなく発揮し続けた彼らしい考えを述べた。
詩結は「このツアーでメンバー同士ぶつかることもあったけど、ここまで歩んできた道のりが正しかったことを次のツアーで証明したい」とファンの目を焼き付けるように語りかけ、一方で諒は茶目っ気たっぷりに「(次のツアーが)O-WESTから始まってO-EASTで終わるの…かっこよくない?」とキッズに戻ったかのように嬉しそうに満面の笑顔を見せた。
ヴォーカルの双真は満足気な様子を見せずに「自分たちに限界を感じていない」と言い放った。
過去との邂逅、現在の想い、未来への先駆けと語る内容がそれぞれなのも五角形の個性が際立ったこのバンドらしい実に良いシーンだった。
“これが本当のラストだ!”
最後に披露されたのは「ラベル」。
“これから先も君の側にいさせてください!”
全8公演のツアー、自身最大キャパシティ、フルアルバムリリース…そして更なる全国ツアー、O-EASTワンマン決定と目まぐるしく躍進するAshmaze.
根幹にある音楽への探求心と、ヴィジュアル系ロックへの愛情。
会場の規模を着実にステップアップし、New Visualで新たな世界の扉を拓く…かつて当たり前に存在していた様式美を踏襲しながらにして、自身の音楽にストイックに向き合う職人気質なバンド。いつしか失われていたのかも知れないDNAの血脈を感じさせられる彼らにとってここからの歩みもまた“取り戻す”ものではなく“新しく描く”世界なのだろう。
淘汰された世界に立ち続けるこの5人の次なる「通過点」を目撃せずにはいられない。
文:山内秀一
写真:Lestat C&M Project
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<セットリスト>
01.ニルヴァーナ
02.サイレン
03.ハナトナレバ
04.Phantom Shell
05.グロリア
06.羨望
07.Hurt me
08.ゆらり
09.Q
10.渇き
11.三日月がただ遠い
12.GENOM
13.ラベンダー
14.拝啓、嫌いなお前へ
15.カゲロウの錯覚
16.INSIDE MY HEAD
17.Humming
18.INNOCENCE
EN1.カルマ(新曲)
EN2.ラベル
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<Ashmaze. OFFICIAL HP>
2023年08月13日 (日)
【ライブレポート】mitsu、8周年記念ワンマンライブ「SANCTUARY -聖域-」開催。「“これから”はみんなを引っ張って、でも時には支えられて、歌っていくつもりです」
REPORT - 19:00:55mitsuが、ソロボーカリストとして活動を始めてから8周年を記念するワンマンライブ「SANCTUARY -聖域-」を7月21日、SHIBUYA REXにて開催した。
◆ ◆ ◆
「絶望の物語から始まった」と、mitsuは8周年という節目のステージで、ソロボーカリストとして歩んできた月日を振り返った。当時、バンドが解散したタイミングで多くのものを失った彼は、「歌うことにじゃない、生きることに必死だった」とも話した。自分自身を律することに必死な精神状態だった彼にとって、歌うことは救いだったというよりも、アイデンティティを見失わないためにも“歌い続けるしかなかった”のだろう。
気づけば、バンド活動の期間を上回る年月をソロボーカリストとして歌い続けてきた。よりセルフィッシュな気持ちで向き合ってきた音楽や歌を武器に戦ってきた中で、出会った人々や出来事から感銘を受けながら形成された価値観を持ってありのままの音や言葉に乗せて届ける。これこそが今のmitsuにしかできない音楽であり、それは過去を凌駕する揺るがない自信と言っていい。だからこそ、過去の自分に目を向けることができるのだと思う。たとえ、始まりが絶望だったとしても。
ただし、いくら自分に自信を持っていたとしても、それを発揮できる場所や受け止めてくれる人がいなくては成り立たない。だからこそ、それができるライブという空間の大切さをmitsuはよく知っている。本公演に「SANCTUARY -聖域-」と名付けられていたのもそれが理由であり、ライブ中に何度も「ありがとう」と伝えていたことも納得だ。
実際ライブは、幕越しに心地よい旋律とハミングが鳴り出した「エトリア」が神聖な空気を纏ったオープニングを飾り、「蛍」「スローペース」でも幻想的でありながらどんどんと躍動感を増して、じっくりと“聖域”へと歩みを進めていくようにスタートした。
「8年、続けてきました。だからこそ辿り着いた音たちがたくさん詰まったライブをしますので、どうかどうかついてきてください」――mitsu
RENA(Ba)に「よろしく!」と合図して、ベースの重低音が引き立つセクシーな一面を見せた「MIDNIGHT LOVER」や、夢時(Gt)のギターのカッティングが印象的なメロディアスな「シュガー」で見せた、サポートメンバーたちの個性との融合もまたmitsuのソロ活動において欠かせない要素でもある。もともとシンセサイザーを交えて完成していた楽曲も、今では生音のみでよりグルーヴを感じられるように進化し、その音を誰よりもダイレクトに感じ、楽しんでいるのは紛れもなくmitsuなのだ。
そして、「遥か」をマイクスタンドを用意して視線をブラさずに凛とした面持ちで歌い、エモーショナルな「キンモクセイは君と」を挟んで、「Naked」を胸に手を当てながらじっくりと届けるように歌う。そこへ、だんだんと息吹を感じさせるように歌い出した「鼓動」へ続けば、素直な気持ちを露わにするナチュラルな空気感が漂うドラマチックな一時だった。
「mitsuの音、届いていますか? 俺は34年間生きてきて、今が一番、命を込めて歌えています。<歌ってこんなにすごいんだ、こんなにもパワーが伝わるんだ>って思える、そんな場所を作ってくれて、どうもありがとうございます」――mitsu
「ここからは楽しんでいきましょう」の言葉通り、ジャズテイストな「It’s So Easy」からラストスパートへと突入すると、mitsuが寝そべって足をばたつかせたり各パートのソロ回しに沸いたりと、一層会場のボルテージが高まった。「じゃないか」でも、ロックでありながらラップを含む楽し気に乗せつつも、ポップな中で“自分らしさ”を後押ししてくれるメッセージも忘れてはいない。次に用意していた「Live Your Life」もまた、時の経過によって進化した想いがあった。トライアンドエラーを繰り返してきた8年間で悩むことも多くあったと話した中で、吹っ切れたような笑顔でmitsuはこう語り出した。
「もっと、音を聴いて感じるもので歌う、それでいいんじゃないかと。今が一番、音楽が大好きです。今が最高潮ということを言葉で、歌で伝えていけたらなと。それが使命だと、最近思っている。ずっともがいてきた中で、光に手を伸ばしていた。でも今は、光から手を伸ばしている。そういう想いになるまで8年かかった」
まさに今、光の中にいるともいえるmitsuが大きく手を開きながらソウルフルに歌う様は、光を求める人の目印になるように眩しく映った。マイクレスで歌い出せば、そこにファンも共に歌声を重ねる。この日「スローペース」「キンモクセイは君と」でも同じようなことが起こり、その様子はmitsuが発しているメッセージはただ受け取られるだけではなく、しっかりと歌を通して共有されていることを証明しているようでもあった。
さらに、目の前のファンに対してステージに立つ覚悟を伝えた上で、そのパッションを表すように灼熱にさらっていった「蜃気楼」と、間髪入れずにタガを外した「Crazy Crazy」や、タオルを振り回しながらアッパーなロックンロールに合わせて声が沸き起こった「Into DEEP」では、惜しみなく解き放たれていく熱量に「それだよ!」とmitsuがギラッと微笑みかけた。一層ヘヴィーにヒートアップした「ラストヒーロー」を歌い終えた時には、後ろを向いて拳を突き上げるmitsuが逆光の中にシルエットとして浮かびあがり、それはまるで信念に揺るがず、傷つきながらも突き進んできたヒーローの姿そのものだった。
ミュージシャンにとって楽曲とは、必ずしも“誰か”のものでなくとも、その人自身にとってのラブソングだっていい。mitsuにとって、「For Myself」はそういう曲だと思う。しかし、命がけで音楽の道を歩みながら歌っていく中で、それが“誰か”のためになる時が来る……きっとそれが、“今”なのだ。ラストに「For Myself」を、ステージバックに大きく“mitsu”と、自分の名を背負うようにして歌い上げた。表現や発言の自由を謳うも、実に匿名性の高いこの世の中で目の前の彼は堂々と自分の名をさらけ出し、生き様を示している。だからこそ刺激的で、そこに感銘を受けた仲間と共に手を取り合いながらこれからも進んで行くのだろう。
「一緒に夢を見たいし、夢を追いかけたい。これからはみんなを引っ張って、でも時には支えられて、仲間にも支えられて、これからも歌っていくつもりです。いろんな人を救えるボーカリストになれるように頑張ります」――mitsu
終演後に映し出されたムービー内で、2024年7月27日に「HOPE to LIVE」と題した9周年ワンマンライブを恵比寿LIQUIDROOMで行うことが発表された。これは、後悔したくないという思いと、過去に逃げた自分を克服するという意味も込めての決意だという。
“LIVE”というのはまさに“生きる”ことであり、それを証明する場こそがmitsuにとっては“ライブ”である。彼を今、生かしているのも、また過去に苦しめたのも歌であり音楽だ。表裏一体であることを知っているmitsuは自分自身の音楽の形と生涯向き合いながら、希望を見出していくはずだ。
文:平井綾子
写真:Intetsu
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2023年7月21日 (金) SHIBUYA REX
mitsu 8周年記念ワンマンライブ「SANCTUARY -聖域-」
[SET LIST]
1.エトリア
2.蛍
3.スローペース
4.MIDNIGHT LOVER
5.シュガー
6.遥か
7.キンモクセイは君と
8.Naked
9.鼓動
10.It’s So Easy
11.じゃないか
12.Live Your Life
13.蜃気楼
14.Crazy Crazy
15.Into DEEP
16.ラストヒーロー
17.For Myself
[サポートメンバー]
Guitar:夢時(eStrial / HOLLOWGRAM)/ Bass : RENA(3470.mon / CRAZY PUNK KID)/ Drum:大熊けいと邦夫
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mitsu Official Site
https://mitsu-official.com/
mitsu Official Twitter
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