2017年08月06日 (日)
【ライヴレポート】<hide presents MIX LEMONeD JELLY 2017>2017年8月5日(土)新木場STUDIO COAST◆hideの想いに共鳴した約30アーティストが集結
REPORT - 15:48:012017年8月5日、東京の新木場STUDIO COASTにて、hide presents MIX LEMONeD JELLY 2017(以下MLJ)が開催された。 MLJとは、まだ日本にフェスという言葉がなかった1990年代に「楽しいこと、面白いものをたくさん集めて、お祭りをやろう!」とhideが発案して始めたイベントである。今年も彼のその精神を受け継ぎ、共鳴したアーティストが約30も集結して、盛大なお祭りとなった。
会場には、RIGHT STAGE、LEFT STAGE、BLUE SKY STAGE、ISLAND STAGEという名前のステージが4つ。BLUE SKY STAGEはその名の通り野外、ISLAND STAGEはDJ中心のステージとなっている。その他、フェスには欠かせないグッズ売り場やhideの曲名をつけたカクテルやフードを販売している屋台等が並び、会場に華やかな雰囲気を添えている。
RIGHT STAGEの開演時間少し前に、ステージの幕に1997年のMLJ時のhideの姿が映し出される。hideにナビゲートされるように、この日の出演バンドの写真が次々と映し出される。映像が終わった瞬間に幕が落ち、「おはようございます! いくぞ!」というTAKAの声でdefspiralのステージが始まった。昨年のMLJではトリを飾った彼らが、今年はトップバッター。曲は、hideの「ROCKET DIVE」。hideのイベントには常連の彼らだけに、カヴァーというよりも自分たちのレパートリーのように自然と演奏している。エッジの効いた大人のロック連発に、会場に入ってきたばかりの人たちの拳も振り上げさせるパワーは、さすが。
RIGHT STAGE とLEFT STAGEは、交互にライヴが行われる。LEFT STAGEには、全員が宇宙服に身を包んだSPEED OF LIGHTSが登場。途中でhide with Spread BeaverのKIYOSHIが飛び入りして観客を盛り上げる。そして、RIGHT STAGEに登場したのは、ニューロティカ。はじけるようなパンキッシュな演奏を連発し、ラストの「絶体絶命のピンチに尻尾を高く上げろ」では、恒例の掛け合いでファンを喜ばせた。
メンバー全員がステージに出てきて、「さぁ、ライヴのスタート!」と思いきや、いきなり「普通のバンドだったらここからライヴが始まるんだけど、jealkbのライヴはMCから始めさせていただきます」という日本一腰の低いヴィジュアル系バンドjealkb。
昨年、メンバーが増えて、この7月には「第二章」と銘打ったニューアルバムをリリースしたばかり。ポップなセンスはそのままに、より硬派により激しい楽曲をプレイしたが、さすがにお客さんをひきこむ力はピカイチ。一番うしろの観客まで巻き込んで、会場を揺らしていた。2人お揃いのスタイリッシュな衣装で登場したLM.Cは、観客にヘドバンをあおりながら、激しい曲を立て続けに演奏。女性メタルバンドAldiousは、テクニカルな演奏で観客を圧倒した。hideの弟分的存在のJは、今年ソロ活動20周年。ちょうどMLJの1回目が開催されたのが20年前なので、その思い出を語りながら、ストレートで飾り気ないロックを炸裂させた。hideのメドレーからライヴをスタートさせた大門弥生は、ギターを弾きながら歌うスタイルもさまになっていた。
hideと同期の筋肉少女帯は、50代パワーを炸裂させる。実際にhideとセッションをしたり、イベントに出演してもらったエピソードを話しながら、代表曲「イワンのバカ」「日本印度化計画」「踊るダメ人間」を演奏。「hideさんに習って、ギタリストだけど1曲歌います」といって、ギタリストの橘高文彦が「小さな恋のメロディ」を歌い、最後は「10月25日にニューアルバムを発売します」と発表してステージを下りた。LEFT STAGEの最後を飾るのは、ミクスチャーロックを牽引し続ける山嵐。かつてhide MUSEUMのCAFÉ Le PSYENCEに出演経験があることから、このイベントに出演することになったという。楽器隊の轟音と激しいラップが、会場の空間をねじふせていく。20周年のMLJ、20周年をむかえた山嵐が出演できるのは、タイトルと主宰者のワガママに本気でむかいあって、本気で笑って楽しんでるあなたたち、お前たちのおかげです。熱い音楽の絵を描いていきましょう」と地元愛あふれる「湘南未来絵図」でステージを締めくくった彼ら。ヘヴィだけど、どこか人情味のある暖かい余韻に包まれていた。
灼熱の炎天下のBLUE SKY STAGEでは、熱い熱いライヴが繰り広げられていた。
トップバッターのカルメラはホーンセクションのいる8人組で、ジャジーな雰囲気ながらノリのいい楽曲で観客を沸かせた。hideファンのメンバーがいることから、今回の出演が決まった名古屋のアイドルグループ「チームしゃちほこ」。5人色違いの衣装に身を包み、キュートで元気いっぱいの歌声を聞かせてくれた。女性ロックバンドexist+traceは、クールで激しいサウンドでファンを魅了した。続いて、hide with Spread Beaverのキーボーディストとして、ゆかりの深いDIE率いるKISS THE WoRLD。中盤から、defspiralのTAKA・RYO、CUTTが飛び入りして、「ROCKET DIVE」で観客を盛り上げた。
Gremlinsは、現在、活動を休止中のナイトメアのギタリストHitsと、ドラマーKNZの2人からなるユニット。眉の上に小さな角をつけた独特のヴィジュアルのHitsは、「僕自身もギターと出会う、音楽と出会うきっかけがhideさんだったので、今日、出られてとても嬉しいです」と、MC。ベースにナイトメアの盟友Ni~yaとギタリストになお(DaizyStripper)を迎え、ノリのいいダンサブルな楽曲を披露した。MAGUMI AND THE BREATHLESSは独特の世界観で、見る物を圧倒。カルメラのホーンセクションも参加して、よりいっそう華やかなステージを見せた。
STARMARIEは5人組女性ダンスユニットで、ドールっぽいパフォーマンスを見せてくれた。heidi.は、和テイストのギターサウンドで夏らしさを演出。アップテンポのダンスチューンで会場を踊らせた。BLUE SKY STAGE のトリを飾ったDaizyStripperは、外見もセトリもhideへの愛が全面にあらわれていた。なんと全員が、hideのコスプレ。ギタリスト2人は、hideモデルのギターを持っている。最後に歌った「letter」はhideへの想いを書いた曲で、心をこめて歌い上げた夕霧は、想いが届いたかを確認するように空を見上げて、「hideさんに出会えた俺たちは、最高に幸せ者だ!」と叫び、ステージを下りた。
ISLAND STAGEは、入口付近の比較的小さなスペースだったが、常にお客さんがあふれるほどの人気だった。hideのイベントではおなじみの桃知みなみ、DJダイノジ、DJ HIROAKI ASAIと続いた後、Kiyoshiはギターを持って登場。アコースティックギターでオリジナル曲を2曲、「限界破裂」「DOUBT」を歌った後、ゲストにTAKA(defspiral)を呼び入れてしっとりと「FLAME」を歌い上げた。hide Film GIGでは、1997年のMLJ初回の貴重な映像が流された。その後、DJ INAは45分間ノンストップのhideメドレーで、中盤からはお客さんをステージの上に呼んで踊らせ、hideのライヴを彷彿させるシーンを見せてくれた。元ヴィジュアル系バンドのミュージシャンという変わった経歴を持つ桂りょうばは、古典落語の人情噺「しじみ売り」を披露。Island stageは、DJあり、トークあり、ライヴあり、落語ありと、バラエティに富んだステージだった。
4つのステージがすべて終わり、この日のイベントのトリはRIGHT STAGEのZEPPET STORE。hideに見いだされて、LEMONedレーベル発足のきっかけとなったバンドである。「hideさんに愛されて愛されまくったZEPPET STOREですが、今年もステージに立たせていただいて感謝しています。完成品は間に合わなかったけど、hideさんに届くように歌います」といって演奏された「ROSE」を、観客はじっくりと聞き入っていた。
すべてのステージが終わった後、MCの浅井博章が登場し、再び出演者をステージに呼び込む。ラストは、全員で「ROCKET DIVE」を演奏して、この日のイベントは幕を閉じた。
ライヴという楽しいお祭りの余韻が名残惜しくて、「まだまだ遊び足りないよー!」と叫んでいたhideも、この日のMLJの楽しくて自由な空気を見て、きっと空の上から目を細めていただろう。「hide」というひとつのキーワードだけで、多くのアーティストとファンが集まるエネルギッシュでクリエイティブなこのイベントは、これからも多くの人を楽しませ続けてくれるに違いない。
記事:大島暁美
写真:nonfix creative(大武 紘明 / 齋藤 正 / 宮崎 慎之輔 / 高澤 哲平 / 中村 義昭)
提供:hide presents MIX LEMONeD JELLY 2017 / HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD.
2017年07月28日 (金)
【ライヴレポート】<7月27日(木)Zepp Diver City Tokyo>「イベントの良さは時間じゃない」濃密な夜にキリトも感激、Angelo主催イベントでminus(-)・A9・NOCTURNAL BLOODLUST・MEJIBRAY熱演!
REPORT - 11:26:27
Angelo主催イベント「THE INTERSECTION OF DOGMA」が7月27日、Zepp Diver City Tokyoで開催された。
2012年に初めて開催された当イベントもついに5回目。
今回も世代やジャンルを超えた幅広いバンドが東京・お台場に集結し、会場に集まったファンを熱狂させた。
まずオープニングを飾ったのはminus(-)。
藤井麻輝の凛とした佇まいと力強いツインドラムが会場を一気に独自の世界観で包み込む。
続いて登場したMEJIBRAYはさらに出演バンドの幅の広さを見せつける。
メロディアスでキャッチャーな部分も持ちながらも、全体を通してハードで攻撃的な楽曲が続いた。
「暴れ回って行こうか!」と登場するや否や客席を煽ったのはNOCTURNAL BLOODLUST。
尋(Vo)は「久々のライブに緊張している」と話しながらも1曲目の「Malice against」からラストの「V.I.P」まで「もっと!もっと!」と観客のボルテージを上げる。
トリのひとつ前だということで自らを「白身魚のポワレみたい」と料理のコースで例えたのはA9だ。
実際にイベントの前にAngeloに挨拶した時の様子を将(Vo)は「キリトさんを間近で拝見しまして、バンドやっててよかったと思った」と興奮気味に話し、イベントへ参加できたことの喜びを表した。
そしていよいよAngeloが登場。
待ち望んでいた観客たちからの大きな歓声と対照的に静かに登場するメンバーたちだが、「暴れちまえよ」というキリト(Vo)の言葉をきっかけに1曲目の「Daybreakers」から最高潮の盛り上がりを見せていた。
さらに「どのバンドのファンも狂ってるんだから、力を出し切ってぶっ壊そうぜ」という言葉通りKOHTA(B)、Karyu(G)、ギル(G)もステージを縦横無尽に駆け回る。
アンコールでは、満足そうな表情を浮かべたキリトが「どのバンドもかっこよかった」とイベントを振り返ると会場からは自然と拍手が沸き起こった。
それぞれのバンドの持ち時間は30分弱だったが「良さは時間の長さじゃない」というキリトの言葉がこの日のイベントを表している。
興奮と熱狂の中今年の「THE INTERSECTION OF DOGMA」は終演。
7/28、7/29も同会場のZepp Diver City TokyoでのワンマンライブとAngeloの熱い夏祭りは続く。
====================
【LIVE】
「INTER PLAY MEMBERS PRESENTS ’17 [DOGMATIC PARTY case of Angelo]」
7.28(金)Zepp DiverCity Tokyo 18:15/19:00
7.29(土)Zepp DiverCity Tokyo 16:15/17:00
Angelo 11th Anniversary「HETERODOXY」
10.04(水) 豊洲PIT 18:15/19:00
====================
【Release】
9th ALBUM
HETERODOX
初回限定盤(CD10曲+DVD)
2017.9.27/IKCB-9556~7 /¥3,500(本体価格)+税
通通常盤(CD10曲)
2017.9.27/IKCB-9558 /¥2,800(本体価格)+税
発売元:(株)ブロウグロウ
販売元:(株) ソニー・ミュージックマーケティング
2017年07月18日 (火)
【ライヴレポート】<ギャロ>単独公演 『SHIBUYA BLACK CIRCUS』第四夜◆7月16日(日)渋谷PLUG◆アルバム『NERO』の世界を堪能!
REPORT - 12:42:02
5月にスタートしたギャロのシリーズ公演「ギャロ単独公演 『SHIBUYA BLACK CIRCUS』」も、7月16日(日)に渋谷PLUGを舞台にした単独公演で4本目。今回は、「ギャロ単独公演 『SHIBUYA BLACK CIRCUS-NERO-』」と題し、アルバム『NERO』に収録した曲たちを軸に据え、満員の観客たちを前に演奏。
フロアー中の観客たちが、手にしたスプーンと皿を打ち鳴らしてゆく。そのリズムを煽るように演奏が駆けだした。メンバーらに刺激を受け絶叫を返してゆく観客たち。
熱が生まれ始めた場内へ、ギャロは勇壮な演奏を轟かす『夢宴』をぶつけてきた。ジョジョの合図を通し、調べは勇猛さを増していく。その昂りに触発され、場内を埋めつくした人たちが頭を振り乱し、両手を掲げ、宴に溺れていった。この宴、夢見心地どころか悪夢を描き出してゆく。もちろん、意識をブッ飛ばせる最高の悪夢をね。
熱狂する観客たちの意識の螺子を腐食させようと、ギャロはヒステリカルでフリーキーな『腐食』を突き付けた。身体を突き刺す痛い演奏へ触発されるたびに冷静な神経がどんどん切れてゆく。荒れ狂う音のうねりへ触れるたび、理性の消えてゆく感覚を誰もが頭の片隅で感じていた。
「とてもマニアックな日にご来場していただき、すごく感謝しています。さぁ、お前たちの白い皿と銀の匙を大空に掲げようじゃないか」。ジョジョの声と『大東亜魔方陣』の演奏を合図に、フロアー中に白い皿と銀のスプーンが掲げられた。今宵のディナーを熱狂で味わおうと、満員の観客たちが皿やスプーンを頭上高く掲げ、ビートに合わせ叩き出した。なんて異様な光景だ。でも、それがギャロのライブを味わうマナー。中盤では誰もが跪き、頭を振り乱していた。これは熱狂を味わう儀式だ。お行儀の悪いディナーほど、自由に味わい尽くせるものはない。
胸をくすぐる歌物作『極東恋時雨・鼠』でも、頭上高く掲げた白い皿と銀のスプーンがタイトなビートと重なるように揺れていた。観客たちがギャロの音楽を味わい尽くそうと食器を翳すなら、ジョジョは満員の観客たちを熱狂というスパイスをまぶし、むしゃぶり喰おうとしていた。
「腹一杯喰らい尽くせ!!」。ギャロのライブに於いて、つねに凄まじい熱狂の一体化を描き出す『夢魔-INCUBUS-』の登場だ。誰もが理性の螺子をブチ壊し、大きく両手を揺らし、笑顔で熱に浮かされていた。刹那な高揚と恍惚を身体中で感じようと頭を振り乱し、絶頂の交響曲に身を預け、興奮の宴へ心乱し溺れ続けていた。
「久しぶりの楽曲が揃っているので、今日はいい緊張感を持って臨めるステージです」とジョジョが言えば、ワジョウが楽曲のノリ方講座も解説。
楽曲は『大日本黒鶏主義者聯盟行進曲イ短調』へ。ワジョウの吹く笛の音を合図に手拍子してゆく観客たち。彼の動きに合わせ一緒に飛び跳ねれば、ワジョウと共に「粉砕」と叫び、サビではタオルを振りまわし、間奏では折り畳んでと、激しいドラマを描く楽曲の中へしっかり一体感を描き出していた。
イントロが流れたとたん、場内から飛び出した黄色い嬌声。演奏は激しさを抱いたまま『市電拾七番系統売國奴轢死事件』へ。狂気を帯びた絶叫と刹那くもメロウな歌が交錯。気持ちを昂す演奏に身体は嬉しく騒ぎながら、心はジョジョの歌声へしっかり寄り添っていた。
いなたさを携えた演奏の上で、ジョジョが物語を語るように言葉を紬ぎ、歌をはべらせてゆく。『帝都四号魔水路』が届けたのは、アンニュイでメロウな。でも、影と刹那を抱いた夢魔の世界。怪しい空間へ誘うようにギャロは歌や演奏をぶつけてゆく。ねっとり絡みつくおどろおどろしいドラマは、意識へこびりつく刺激を与えてくれた。
ワジョウのギターが連れ出したのは、闇を背負いながらも浪漫を感じる旋律。ジョジョが沸き上がる感情のまま朗々と歌うと同時に、演奏は黒い高揚を抱いた『流星』へ。けっして輝きを放つ楽曲ではない。むしろ、刹那を折り重ねるように歌声や旋律は響いてゆく。でも、その音の連なりが、胸をキュッと熱く突き刺すロマンチックな高揚を与えてくれた。なんて美しくも黒く刹那な浪漫を与える楽曲だ、哀愁味を帯びたその世界へ心地好く溺れていたかった。
ブルージーなノヴのギターの旋律か響くと同時に、場内へ哀愁味を抱いた風が吹き始めた。ミッドメロウな『芥子』が、触れた人たちを現世ではない、何処か不思議な世界へ導いてゆく。踏み込んではいけないのに、でもその妖しい調べに微睡みを覚えフラフラと足を踏み入れ、心が淫らに溺れてゆく。切ない恋の物語へ痛みを覚えながらも、淫靡な音色へずっと浸っていたかった。
ここで、ファンたちのリクエスト企画に応じ、人気曲トップ5を披露。第5位を記録した『ALICE IN DEAD END』が流れたとたん、場内は一気に飛び跳ね騒ぎ出すパーティ空間へ変貌。ジョジョの煽りを受け叫ぶファンたちの声のなんて凄まじかったことか。理性を壊し、無邪気に踊り狂い、身体を折り畳む楽しさがフロアー中に生まれていた。ヤバいくらいにブッ飛んだパーティじゃないか!!
第4位と第3位は連続で演奏。凄まじいマシンガンビートを合図に叩きだしたのが、『黒鶏論-破壊篇-』。跳ねる演奏の上で、メンバーの動きと重なりあうように右へ左へ身体を向けたり、右手を振り上げ演奏に合わせ飛び跳ねてゆく観客たち。
続く『詐欺師』でも、激しく轟く演奏と哀愁を匂わせるジョジョの歌声に合わせ、観客たちが身体を揺らし騒ぎに興じていた。大きく手を振り、心をとろけさせる熱い演奏へ微睡みながら嬉しく身を委ねていた。
第2位と第1位は、ギャロファンには納得のメニュー。『嬲魔-BELIAL-』のイントロが流れたとたんに飛び交った嬌声。毒々しくも妖しい熱を放つ演奏は、まるで漆黒の闇の中で繰り広げる儀式のよう。見てはいけない、触れてはいけない世界だからこそ強く惹かれ、接触したとたんに感染し理性が壊れてしまう。そんな感覚を抱きながら、誰もが黒い渦の中で雄々しい声を上げ、暴れ、酔いしれていた。
第1位に選ばれた『淫魔-BELPHEGOR-』が流れたとたん、両手に皿とスプーンを掲げた人たちが右へ左へモッシュし、宴に興じる様を描き出した。高揚刹那メロなサビ歌のパートでは、誰もが全力で頭を振り続けてゆく。触れた人たちを隠微な熱狂の虜にし、理性を壊し、本能のままの姿へ戻してゆくこの歌は、とても中毒性の高い媚薬のようだ。
「僕たちも8年やってきて、今、この形がベストだなと思っています。誰も欠けちゃいけないと思って、ここまで来ています。ただ、何時も全力疾走していたことからバンドの身体がバテてしまった。でも、僕らは自分らの居場所を守りたい。僕たちは、みんながいるからステージで音楽を奏でたいなと思っています。でも夏を過ぎてからちょっとスケジュールを開けました。その間、地下活動を通して制作へ入ります」(ジョジョ)
「8年もやっていれば、いろんなことかあります。仲間たちが止まってしまう姿を何度も目の当たりにしてきました。自分たちをどうすべきかも考えてきました。中途半端な状況という場合、辞めるのも続けるのも簡単なんだ。でも、もう一回自分たちと向き合って、もう一度帯を閉め直す時間を作ろうと、9月から次の11月のツアーまで少しだけ期間を空けました。それまで、ちょっと待っててください」(カエデ)
ライブは終盤戦へ。「日頃の悲しみや苦しみも、俺の心の闇も全部ここで食い尽くしてください」、ジョジョの言葉を受けて流れたのが、重く激しく攻めたてる『極彩式魔列車-GA110-』だ。感情を剥きだしに挑みかかるメンバーたち、その勢いへ熱狂で想いを返してゆく観客たち。突き刺すような黒い痛みに触れていることが、今は、とても心地好い。
心乱す悪魔のワルツが流れ出した。会場中の人たちが両隣の人たちと手を繋ぎ、演奏に合わせ、ゆっくりその身を揺らしていた。そして…演奏が激しく唸ると同時に、観客たちは『極東裁判-黒鶏-』に合わせ激しく身体を揺さぶりだした。舞台前方では逆ダイしてゆく風景も。どんどん暴れ狂え、それが一番正しい自分らしい楽しみ方だ。
ワジョウの掻き鳴らすギターの音に続けて飛び出したのが、疾走フリーキーナンバーの『東京市下谷区少年盗賊団・虎徹』。演奏に合わせ、場内にウェイブが起きれば、座りながら想いを捧げる場面も。サビではタオルや腕を振り踊る光景も生まれていたように、誰もが自由に騒ぎへ興じていた。
「悲しみも苦しみも妬みも痛みも全部食い尽くします」、ジョジョの声を合図に、満員の観客たちが手にした皿をスプーンで叩き出した。激しく轟く『魔王-闇詩-』に意識を預け、熱狂や狂騒というメインデッシュを誰もが楽しく喰らっていた。
「最後の最後まで、お前らの美味そうな夢をここに吐き出してこい」、最後も、首がむち打ちになるほどの勢いでヘドバンや折り畳みを繰り広げた『夢葬』を通し、ギャロは会場を野獣どもの宴の場へ彩っていった。熱狂?!、そんなの喰らい尽くせばいい。満腹になっても、それでも喰べ続ければいい。今夜のディナーも、かなりこってりだった。
アンコールでは、パートチェンジで演奏。アンディがドラムを、ノヴがベースを、ジョジョとカエデがキターを、そしてヴォーカルをワジョウが担当。「腹減ったなぁ」、ジョジョのMCを真似するワジョウ。彼らが演奏したのは、『東京破廉恥劇場-ヱデン-』。跳ねた演奏の上でワジョウが楽しげに歌い踊れば、その熱を、観客たちも同じよう無邪気な笑顔で受け止めていた。こういう遊び心飛び出すところも嬉しいじゃない。演奏は、だいぶグダグダでしたが。
続く『共鳴』で、ギャロは身体に残ったパワーをすべて吐き出す勢いで猛々しく攻めだした。場内へ突き上がる無数の拳。間奏では、客席中央に飛び下りたジョジョへ左右に分かれた観客たちがモッシュするようにぶつかるウォール・オブ・デスも登場。
その熱をとことんまでアゲてやろうと、最後の最後にギャロは『神風型駆逐艦・闇風』をぶつけ、場内へ逆ダイしてゆく様を描きだした。延々と続く逆ダイの光景。ギャロは理性をブッ壊した悪夢の宴をを作りあげ、今宵の夢を、この空間の中へ封じ込めて逝った。
8月2日には、渋谷O-CRESTを舞台にシリーズ最終章となる「ギャロ無料単独公演 『SHIBUYA BLACK CIRCUS-RINASCIMENTO-』」が開催になる。タイトルに記されたよう、この日は無料でライブを開放。これまでギャロに興味を抱きながらも、まだライブを体感したことのない方は、ぜひこの機会を逃さずに利用して欲しい。
PHOTO:TAMA
TEXT:長澤智典
====================
★LIVE情報★
平成29年08月02日(水)
渋谷オークレスト
ギャロ無料単独公演
『SHIBUYA BLACK CIRCUS-RINASCIMENTO-』
開場:18時00分 / 開演:18時30分
前売:0円 / 当日:0円
※ドリンク代別途
★『SHIBUYA BLACK CIRCUS-RINASCIMENTO-』★
※シングル『無題』『ALICE IN WORLD`S END』ミニアルバム『東京シンデレラ』『東京破廉恥大サーカス -新世界-』『黒鶏論 -NEO JAPANESQUE BEAUTY AND DESTROY-』収録曲が中心の公演と為ります
無料入場用ウェブチケット
——————————-
- 他、ライブ情報
2017.07.24 [Mon] 池袋サイバー
2017.07.25 [Tue] 池袋サイバー
2017.08.02 [Wed] 渋谷オークレスト
2017.08.03 [Thu] 池袋ブラックホール
2017.08.06 [Sun] 名古屋ホリデーネクスト
2017.08.07 [Mon] 心斎橋ドロップ
2017.08.10 [Thu] 池袋エッジ
2017.11.04 [Sat] 池袋エッジ
2017.11.06 [Mon] 札幌クラップスホール
2017.11.07 [Tue] 札幌クラップスホール
2017.11.09 [Thu] 仙台マカナ
2017.11.17 [Fri] 名古屋エルフィッツオール
2017.11.18 [Sat] 大阪ルイード
2017.11.20 [Mon] 福岡DRUM Be-1
2017.11.21 [Tue] 福岡DRUM Be-1
2017.11.27 [Mon] 渋谷TSYTAYA O-WEST
====================
-セットリスト―
『夢宴』
『腐食』
『大東亜魔方陣』
『極東恋時雨・鼠』
『夢魔-INCUBUS-』
『大日本黒鶏主義者聯盟行進曲イ短調』
『市電拾七番系統売國奴轢死事件』
『帝都四号魔水路』
『流星』
『芥子』
『ALICE IN DEAD END』
『黒鶏論-破壊篇-』
『詐欺師』
『嬲魔-BELIAL-』
『淫魔-BELPHEGOR-』
『極彩式魔列車-GA110-』
『極東裁判-黒鶏-』
『東京市下谷区少年盗賊団・虎徹』
『魔王-闇詩-』
『夢葬』
-アンコール-
『東京破廉恥劇場-ヱデン-』
『共鳴』
『神風型駆逐艦・闇風』
====================
ギャロ Web http://9allo.jp/
ギャロ twitter @9alloxNero