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2017年09月05日 (火)

【ライヴレポート】ソロデビュー20周年を迎えたINORAN、そのキャリア集大成となる全国ツアーがスタート!

REPORT - 18:15:32

 今年、ソロデビュー20周年という大きな節目を迎えたINORAN。

8月にリリースされた新作『INTENSE/MELLOW』は、これまでリリースされたフルアルバム11作、ミニアルバム1作から11曲をセレクトしリアレンジを施し、さらに新曲「Ride the Rhythm」と「Shine for me tonight」を加えた、渾身のセルフカバー・ベストアルバムである。

 

 現在、INORANは本作を従えて、全国ツアー『SOLO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2017 –INTENSE/MELLOW-』の真っ最中だ。
 今回は、20周年のアニバーサリー・ツアーということもあり、セットリストに“α(アルファ)”と“β(ベータ)”という、異なる2パターンが用意されている。
 今回のライブレポート執筆にあたり、αが披露されたツアー初日の長野CLUB JUNK BOX(9月1日)と、βが演奏された2日目の新潟GOLDEN PIGS RED STAGE(9月2日)のライブを観覧した。

 

 セットリストαとβがINTENSEとMELLOWという要素で分かれていないのなら、一体何が違い、彼はどんなメッセージを我々に伝えたいのだろう? 
 INORANは、今回『INTENSE/MELLOW』のMELLOW SIDEを制作する過程において、アコースティック・ギターと歌が持つ魅力を再認識したそうだ。
この要素をライブで表現するために、彼はセットリストαでアコースティックなバンド編成、βでアコースティック・ギターの弾き語りと、異なるアンサンブルをそれぞれに採用している。

 もうひとつ“キー”となるのが、10thアルバム『BEAUTIFUL NOW』「Beautiful Now」と、11thアルバム『Thank you』の「Thank you」のオリジナル・バージョンとリアレンジ・バージョンが、それぞれの形でαとβに組み込まれていること。

実際、両日に異なるバージョンで演奏されたこれら2曲は、セットリストαとβの展開をよりドラマティックなものに変える役割を果たしていた…
 これらを踏まえると、αとβという特別なセットリストに込められたINORANのメッセージが、より明確に見えてくる気がする。

 また、事前に筆者に届いた仮セットリストでは、αとβの重要な位置を占める曲にいくつかの候補が記載されていた。

そのことをINORANに尋ねると、「ツアーを経て、αとβでやる曲は変わっていくし、会場の雰囲気や自分達のフィーリングに応じてαとβという順番だけでなく、αをやった次の日に、さらにアップデートされたαをやる可能性も十分にある」という答えが返ってきた。
 ということは、今回のセットリストαとβで演奏される曲を完璧に把握して、そこにINORANが込めた想いを理解するには、もう全公演を観るしかないわけだ(笑)が、筆者は“このツアーは全公演を観る意味が絶対にある”と断言できる。

それ程までに、現在のINORANの音楽性は凄まじい進化と深化を遂げているし、彼と彼が絶大な信頼を寄せるYukio Murata(g)、u:zo(b)、Ryo Yamagata(ds)によって生み出される、グルーヴィでタイトなバンド・サウンドは何度観ても最高に心地良い。
 

 

そんなソロ・アーティストとしてのINORANの様々な拘りが随所に凝縮された今回のツアー、ここからは、ツアー初日の長野CLUB JUNK BOXと、2日目の新潟GOLDEN PIGS RED STAGEのライブレポートとお届けしよう!

 

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■9月1日(金) 長野 CLUB JUNK BOX

 この日の長野は最高気温26度、最低気温19度。

夕方に吹く、少し冷たい風は秋の気配を感じさせるが、会場のCLUB JUNK BOXは、大勢のファンの熱気で溢れ返っていた。

 ステージにINORAN、Yukio Murata、u:zo、Ryo Yamagataが登場すると、20周年ツアーの初日を祝うために駆けつけたオーディエンスから、割れんばかりの大歓声が起こる。

INORANはそんなファンの笑顔を嬉しそうに眺め、11thアルバム『Thank you』のインスト曲、「Come Away With Me」でライブはスタートした。

 昨年、INORANはインタビューで「ひとつひとつのライブを凄く楽しめているし、成長し続けるこのバンドの音を、もっと多くのファンに観てほしい」と語っていた。

その言葉通り、オープニング曲の「Come Away With Me」は、Ryoとu:zoにより躍動感溢れるパワフルなグルーヴ、INORANとMurataのツインギターによる鮮やかなアルペジオと激しいリフを内包し、このバンドならではのロックな魅力が存分に伝わる。

この曲で始まるセットリストαは、開始直後からケタ違いのエネルギーに溢れている。

 セットリストαは、「Awaking in myself」や「2Lime s」という、近年のライブで定番となっている曲の並びと勢いを崩さずに、そこに『INTENSE/MELLOW』の今のINORANらしい音楽性にリアレンジした人気曲が加わることで、より絶妙な緩急のコントラストが生まれ、そこに新たな試みとなるアコースティック・セットが加わることで、バンドの気持良いリズムとサウンドにさらなる幅が出ていた。
 その後、INTENSE SIDEバージョンの「Spirit」をプレイし、そこから続くパワフルなロックナンバーの連続に、会場のボルテージもさらにヒートアップしていく。

 MCでINORANが「ヘイ長野、アーユーレディ? 今夜は皆のエロいところをたっぷり見せてくれよ!」と語り掛け、クールな激しいギターリフが炸裂する「Awaking in myself」と「2Lime s」を連投。

この2曲が収録されている『BEAUTIFUL NOW』でも、「Awaking in myself」と「2 Limes」の曲順は続いており、近年のライブでも連続して演奏されることが多いが、この2曲によって起こる観客の盛り上がりは、いつも本当に凄い!

 前半戦ハイライトは、ロックなINTENSE SIDEバージョンで披露された「千年花」だ。

この曲は、以前リクエスト・ライブで1位を獲得した人気ナンバーだが、オリジナルのアコースティックで切ない雰囲気とは違う、今回のバージョンも実に刺激的である。

この曲のAメロをINORANが歌い始めた時に、後ろのファンから「あっ、これ『千年花』だ!」という、驚きの声が上がっていたが、それほどまでに『INTENSE/MELLOW』の曲は、どれもライブを意識して劇的な変化を遂げている。

その後の“千年も前の世代と同じ願いと歌うよ いつまでもこの景色が途切れることのないように”というサビ・パートでは、これまでのライブ同様に大きなシンガロングが起こった。

 中盤は“バー・メロウ”と銘打ち、アコースティック・ギターにカホンを交えたアコースティックな編成で「no options」をプレイ。オリジナル・バージョンはヘヴィなリフのロックナンバーであるが、今回演奏されたMELLOW SIDEバージョンでは、アコギのリズミカルなバッキングとINORANの味わい深いボーカルが印象的だ。その後に披露された「人魚」もそうだが、バー・メロウのセクションでは、INORANのボーカリストとしての味わい深い魅力が、最大限に発揮されていた。

 アルバム『Thank you』の完成時、INORANは

「これまで歌うことにトライしてきたけど、実は自分の声ってそんなに好きじゃないんです。

LUNA SEAというバンドでRYUICHIという凄いボーカリストが隣にいたのもあって、もうボーカルの理想が高過ぎるからね(笑)。

でも、それでも歌い続けていくうちに、やっと自分の声をちゃんと信じられるようになったよね」

と語っていたが、今のINORANは、ライブでどの曲もとても楽しそうに歌う。

 その後、INORANがMCで、Ryoのカホンを指差しながら「この楽器、なんていう名前か知ってる? うん、カホンだよね。じゃあコイツは? そうu:zo!」と、Ryoの隣で微笑むu:zoをイジりながら、「こういう編成って初めてだけど悪くないよね。でも、もうバー・メロウは閉店です」と、茶目っ気溢れるコメントをして会場を和ませた。

 アコースティック・セットで会場をムーディな雰囲気に染め上げた後、「ここから、さらにアゲるために新曲をやります。皆に“イエー!”ってコール・アンド・レスポンスしてほしいけど、できるよね? 今日は、ライブレポートのためにライターさんに観覧してもらっているから、“レスポンスが凄かった!”って書かれるくらい、皆で声出してくれよ!」と語り掛け、INTENSE SIDEの新曲「Ride the Rhythm」をプレイ。INORANの熱いリクエストを受けて、オーディエンスもブレイクで一丸となり、一際大きなコール・アンド・レスポンスを彼らに向かって返した。

 終盤のハイライトとなったのは、10thアルバム『BEAUTIFUL NOW』のタイトル曲「Beautiful Now」。本曲は、『INTENSE/MELLOW』にアコースティックなアレンジで収録されているが、この日はセットリストの流れを考慮して、ロックなオリジナルの躍動感を活かしたバージョンでプレイされた。
 筆者は、『BEAUTIFUL NOW』の完成がINORANのキャリアの中でも、大きな“ターニングポイント”になったと感じている。

その後の取材でも、彼から度々そういったコメントを聞くことがあったが、「Beautiful Now」には、新作『INTENSE/MELLOW』のテーマでもあるINTENSEさと、MELLOWのバランスが本当に絶妙で、彼の卓越したメロディセンスが遺憾無く発揮されている。

 そして、「Beautiful Now」は、ライブ会場の雰囲気をINORANが導きたいと思う方向へしっかりと導いてくれる曲でもある。

それは、今回の『SOLO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2017 –INTENSE/MELLOW-』も変わらずで、この日も、オーディエンス達から思い想いに気持ちがこもったシンガロングが巻き起こっていた。

 ラストのMCで、INORANが「ツアー初日から俺、結構飛ばし過ぎだよね(笑)。でもさ、今年の高校野球を観て思ったんだけど、皆必死になって優勝を目指すわけじゃん? やっぱり今日一日って、掛け替えのない美しいものだし、常に全力で勝負したいんだ。ってことで、最後はこの曲を皆で声出しして終わりましょう!」と語りかけ、最後のナンバー「All We Are」をプレイ。

そしてサビの大合唱の中、ツアー初日は終わりを迎える。終演後、INORANは「またこのメンバーで絶対に長野に来るからな。どうもありがとう!」と、笑顔でファンに自身の想いと感謝の気持ちを述べた。

 

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■9月2日(土) 新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE

 2日、前日のエモーショナルだったライブの余韻に浸りながら、新幹線で次の会場がある新潟へと向かう。
 移動時間の中で、何年か前にINORANが「人それぞれにグルーヴがあるように、全国の街にも独自なグルーヴが存在している。だから、そこに住む人間って、絶対に街のリズムに影響を受けるんだよ。街によってライブ演奏の感じ方やレスポンスも違うけど、それがとてもおもしろいんだ!」と語っていたことを、ふと思い出した…。

長野の街は、ゆったりと落ち着いて繊細な心地良いビートを持っていた。新潟という街には、一体どんなグルーヴが流れているのだろう?

 この日の新潟の気温は28度。山に囲まれた盆地ということもあり、少しの蒸し暑さを感じる。新潟駅前でバスに乗って、会場のGOLDEN PIGS RED STAGEがある、中央区の東堀通6番町を目指す。

 会場に集まった新潟のファンは非常に情熱的で、彼らが大勢集まったこの日のライブはソールドアウト。今日の会場で演奏されるのはセットリストβだ。
 開演時間にドリーミーなSEが流れ、ステージにアコースティック・ギターを持ったINORANが登場する。

そう、このセットリストβは、彼一人による弾き語りによる「Come Closer」で、ライブがスタートするのだ。

 2ndアルバム『Fragment』収録の「Come Closer」は、今も根強い人気を誇っているが、近年ライブでは中々披露されなかった曲でもある。そんなファン待望のナンバーを、INORANはギターをかき鳴らしながら、力強く歌い上げる。

 ツアー前に受け取った仮のセットリストでは、この弾き語りセクションのために様々な候補曲がリストアップされていたが、そのどれもがINORANとファンを繋ぐ大切なナンバーばかり。

この日は、ソロの弾き語りのラストとして、アコースティック・バージョンにアレンジされた「Beautiful Now」が披露された。

今後、彼がどんな曲をこの弾き語りセクションでセレクトするか、興味は尽きない。

 弾き語り終了後、Ryo、Murata、u:zoらバンドメンバーがステージに登場し、INORANが「さぁ、いくぞ新潟。いいところ見せてくれよ!」とオーディエンスを煽り、バンド編成で「grace and glory」と「Sprit」という、超強力ナンバーで一気に畳み掛ける。
 この日のオーディエンスは本当に熱狂的で、まだライブの序盤なのにも関わらず、会場のボルテージは既にマックス間近。どの曲も大声でシンガロングし、ガンガン腕を振り上げて、バンドの演奏に応える。

 そんな観客のリアクションに呼応するかのように、演奏中にINORANとu:zoは手を上げてさらに観客を煽り、繰り返されるバンドとオーディエンスのコール・アンド・レスポンスによって、会場のボルテージはさらに上がっていった。

 その後、INORANは「新潟、お前ら本当に大好きだ。いきなり頭から最高じゃんか! 今日は、誰も想像しないところまでいこうぜ」とオーディエンスを讃え、セットリストの中でも特にロックで攻撃的なナンバーである、「Awaking in myself」と「2Lime s」を連投。
 今回、αとβというセットリストを実際にライブで体感し、その中で“これはもの凄い曲だ!”と、大きな感動を覚えた曲がある。それは、この後に披露された「Shine for me tonight」なのだが、この新曲はINORANらしいメロディセンスの魅力がフルに発揮されており、本当に素晴らしい。

 温かい音色のギター伴奏から始まる「Shine for me tonight」は、“Lately I’ve been thinking when you’re lying next me”というAメロから始まる…。
 人に対するピュアな感情をストレートに伝えた曲といえば、新作のMELLOW SIDE収録の「Sakura」もそうだが、この「Shine for me tonight」は、メロディの全てにキャッチーな“INORAN節”が全開で、何度聴いてもその独自な曲の情景とメロディに思わず唸らされた。
 ある人の存在によって、今の自分にとっての”大事なもの=Shine”に気付き、それに対して素直な感謝の気持ちを述べている歌詞も、実にポジティブでINORANらしい!

 ソロとしてINORANを取材する時に、彼はいつも曲作りやボーカルに対する拘りについて満ち足りた表情で語ってくれる。ソロ・アーティストとしてのINORANの20年は、曲を作って歌うシンガーソングライターとして表現の中で、より自分らしいメロディを求め、それに呼応する美しいギターの表現をストイックに探し続ける““終わりなき旅”だったと思う。その旅路の中で、彼はソロとして“完成した時に本当に満ち足りた気持ちになった”と語る、『BEAUTIFUL NOW』と『Thank you』という充実作を生み出し、そして、そこに落とし込まれた動と静の二面性にフォーカスして、新作『INTENSE/MELLOW』完成させた。
 この日のセットリストβには、今もさらなる高みを目指すINORANらしい、ソロとしての様々な表現とチャレンジが内包されていた。
 その後、Ryo、u:zo、Murataのパフォーマンスをフィーチャーしたインストを披露し、「Rightway」の掛け合いでバンドとオーディエンスはより強くその絆を深め、ライブはいよいよ終盤に向かう…。

 最後のMCで、INORANは「今日、20年間の“何か”が見えた気がしたよ。ありがとう。長い間生きていると、色々とめんどくさいこととか、諦めたいこととかあると思うんだ。でもさ、お前らがそういう時は俺が絶対に支えるよ。だから、もしも俺がそうなった時は、お前らが支えてくれよな!」と語り掛け、ラストの「All We Are」をプレイ。サビとブレイクの大合唱でバントとファン皆がひとつとになる中、2日目のライブは終了。演奏が終了しても鳴り止まないオーディエンスの拍手と歓声を聴き、INORANは「やっぱり、お前ら最高だよ。また必ず新潟に戻ってくるから、その時はよろしくな!」と熱いエールを送り、GOLDEN PIGS RED STAGEのステージを後にした。

 INORANは、これから本ツアーで9月7日(木)に広島、8日(金)に福岡、10日(日)に熊本、12日(火)に高松、14日(木)に京都、16日(土)に大阪、18日(月)に名古屋、21日(木)に札幌、23日(土)に盛岡、24日(日)に仙台を回り、自身の誕生日である29日(金)に、新木場STUDIO COASTで“B-DAY LIVE CORE929/2017”と銘打ったツアー・ファイナル公演を行う。

 ソロデビュー20周年に相応しい、INORANというアーティストの魅力がたっぷりと詰まった、αとβという異なる世界観のセットリストが、これからのツアーでどんな形になっていくのか?そして、29日のファイナル公演ではどんな曲達を演奏して、ファンと素晴らしい瞬間をシェアするのか?今からとても楽しみでならない!  

 そして、これからも10年、20年と孤高のミュージシャン、INORANの飽くなき“音の旅”は続いていく…。

 

文◎細江高広
写真◎RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)







2017年09月04日 (月)

【ライヴレポート(2)】★Soanプロジェクトwith芥 Oneman Live★<真夏の夜の夢-下駄と帯紐と私、愛する貴女のため->艶やかな浴衣姿で描き上げた、真夏の夜に爆音轟いた熱狂の宴。2017年8月23日(水)渋谷REX

REPORT - 17:16:20

その帯紐をほどいた先に何があるのか?

8月23日、日本中の男女が毎年苦悩する最大の謎が渋谷にて解き明かされるかもしれない。

「真夏の夜の夢」と題したSoanプロジェクトがお送りする夏のツーデイズワンマン、2日目はWith芥がお届けする。

「静」と「動」というコンセプトにおいて「動」を担うwith芥。

攻撃的なライブパフォーマンス、心に突き刺さる「轟音」と「声」。

その一体感は夏の締めくくりにふさわしい一夜となるだろう。

渋谷の地下室に祭り囃子が鳴り響き、煩悩との戦いの火蓋は切って落とされる。

 

 

9月6日に発売になる最新アルバム『調律、その脈動に問う』の先駆けとなるライブとして。いや、それ以上に今回、Soanプロジェクト with 芥は『真夏の夜の夢-下駄と帯紐と私、愛する貴女のため-』というテーマを軸に、今年の夏の想い出を猛爆な宴として届けてきた。それは、熱狂の夢物語!?。8月23日(水)渋谷REXを舞台に行われた公演の模様、そろそろ以下へ記そうか。

 

 

 此処は、櫓を囲む夏祭りの場?!。舞台の上に居たのは、彩り豊かで煌びやかな浴衣に身にまとったメンバーたち。芥に至っては花魁姿だ。フロアーにも、この日のテーマを事前に察知したのか浴衣姿の人たちが多く訪れていた。

宴は、雅な香りと重厚な音を重ねた和豪な新曲『Soan_B014_20170727通常ver.(仮)』から幕を開けた。冒頭に生まれた重く低く激しく轟く音の洪水へ、意識が一気に浸食された。メンバーの煽りに負けじと激しく身体を折り畳む観客たち。サビに描いた雅びな歌声へ心は酔いながら。終始爆音を轟かせ、彼らは観客たちの理性へ黒い熱色を塗りたくっていた。Soanプロジェクトwith芥の演目の中へ、新たな熱狂曲が加わった。

 

さぁ、始めようか」、豪快で黒い歪みを上げたオリエンタルなリフビートが、追い打ちをかけるように襲いかかった。暴れ猛る『不確かな箱庭』の演奏に、フロアー中の人たちが大きな手の花を咲かせ、大きく頭を振り乱し、彼らが仕掛けた戦いへ全力で立ち向かってゆく。渦巻くノイズ。でも今宵は、黒く唸る音や叫び声が心澄み渡る祈りにも感じていた。

 

 激烈なギターのリフが身体をグサグサと、いや、無数の矢をいっぺんに受けた勢いで身体へ突き刺さった。この痛みは、身体中から興奮を呼び起こす。轟く『隔つ虚構紡ぐ真実と憧憬』に触発された大勢の人たちが、服の乱れさえ意識から消し去り、大きく拳を振り上げ激しい音の熱に浮かされていた。雄々しい姿で挑むように歌う芥の姿の、なんて華激で艶やかだったことか。

 

爆音の絨毯が一気に頭上から覆いかぶさった。Ivyの招いた手拍子に合わせ、大きく両手を打ち鳴らす観客たち。沸き上がる興奮が、もっともっと身体を激しく揺さぶれと呼びかけてきた。『薄紅は舞い散り寂光に消える』に合わせ、芥と共に雄叫びを上げ、誰もが全力で飛び跳ねてゆく。場内の人たちも含め、今宵の浴衣が、まさかこんな戦闘服に様変わるとは…。乱れる裾も気にせず左右へモッシュしてゆく姿が、とても頼もしく見えていた。

 

不協和音響く場内。痛い調律…歪んだピアノの音色の上で言葉を呟く芥。「さぁ、この首筋をずっとずっと…」。芥の嗚咽にも似た叫びを合図に『透過幕』が連れ出したのは、爆裂した音の中から見えた不思議な異境の宴。意識をギチギチと掻きむしる音の上で芥は艶やかに、憂いを秘めた心を嘆くように歌い叫んでいた。 意識が倒錯してゆく。荒れすさぶ音の荒野の中、重い音の熱風に身をさらしながらも心は恍惚を覚えていた。悲嘆に暮れる中だからこそ、それを愉悦にも感じていた。

 

歪んだ心を黒い音で包みながら、Soanプロジェクトwith芥は『sign…』を通し、歪む観客たちの意識を痛い陶酔の世界へ導いた。艶やかで刹那を秘めた芥の歌声に心を寄せながら、荒れ狂う音の渦に巻き込まれ身体を大きく揺らさずにいれなかった。

 

重く、でも透明感を抱いた音が場内へ大きな波紋となり広がった。「不確かなこの世界で…さぁ感じあおう」。鈍く淡い音が卑屈に螺子曲がりながら心を浸食してゆく。「聞かせてよ君の声を」、『パラドクス』が不確かなこの世界で共に溶け合おうと呼びかけてきた。歪な感情を真っ直ぐに伸ばしながら、一つに重なりあおうと芥は火照った歌の掌を差し出してゆく。綺麗に重ならなくて構わない。互いの間に生まれた熱が、歪な隙間を埋めてくれるはずだから。

 

幾つもの白い光の筋、その輝きに照らされた芥が『undelete』を朗々と歌いだした。重厚な演奏が追従すると同時に、場内は一気に荒れ狂う戦いの地へ塗り変えられた。雄々しき神と化した芥の声を先導(煽動)に、メンバーが、観客たちが、歪んだ叫び声と拳を振り上げ全力でぶつかりあう。雄大で激高な楽曲が、この空間にいる人たちを野生に変えてゆく。何時しか誰もが理性を捨て、獣の心と化していた。

 

頭上高く掲げた両手を叩きながら…顔が歪む勢いで頭を振り乱し、狂乱の戦(いくさ)へ身を墜としてゆく観客たち。『朽ち木の行方』が、もっともっと黒い闘争心を呼び起こせと煽りだした。黒く歪んだ熱狂の渦に巻き込まれ、そのまま奈落へ墜ちてゆく感覚を観客たちは喜んでいた。それが、闇の中に見えた興奮という宴だからこそ…。

 

重厚な黒い音の塊が、一気に身体を押し潰してゆく。その圧を、しっかり両手で受け止めていたかった。たとえ圧し潰されようと、そこへイキきった興奮を観客たちは覚えていた。『meteo trive』に刺激され飛び交った絶叫。振り乱れる髪の波。そこには理性など微塵も感じれない。誰もが、角の生えた野獣と化し、互いに壊れるまで暴れ狂えと熱狂へ溺れていた。

 

 「天井をぶち破るつもりでいこうぜ!!」、芥の声に続き「いっちゃおうぜ!!」とSoanが。激しく煽りたてる。『arrive』に合わせ、会場中の人たちが全力で飛び跳ね、「オイオイオイオイ!!」と声にもならない絶叫を上げていた。「求めれば求めるほど」何かを失おうが、この興奮と高揚さえ受け止めていれたら、それで満足だ。繰り返される絶叫。浴衣の乱れなど忘れ、何時も通りの化粧崩れな興奮が、夏の宴に相応しい汗ほとばしる光景を描き出していた。

 

今宵の宴へ花を添えるように奏でたのが、JITTERIN’JINNの『夏祭り』。打ち上げ花火のような派手な勢いを持ってパンキッシュなロッカビートが炸裂。何時しか観客たちが飛び散る火花変わりにタオルを振りまわし、場内に大輪の花を咲かせていた。原曲以上に重厚さと黒い火花を撒き散らしていたのも、Soanプロジェクトwith芥らしさ。

 

ぶち上がった熱狂をさらにイキきらそうと、Soanプロジェクトwith芥は『躁狂の踊り子~山紫水明の宴~』を突き付けた。タオルを振りながら右へ左へ駆ける観客たち。挑みかからんばかりの気迫を持って観客を煽るSoan。熱狂導く神の権化と化した芥は、「踊れ」「唄え」「狂え」と熱狂をむさぼり喰らう餓鬼どもを、もっともっとと煽り続けていた。ブレーキを持たない暴走列車と化したSoanプロジェクトwith芥のライブは、つねに加速を上げながら、会場へ真夏らしい天井知らずの熱狂を描き続けていった。演奏後も、興奮止まない観客たちの絶叫が会場中へこだましていた。

 

アンコールでは、冒頭を飾った新曲の(Soanいわく)殺人キラーチューン和ソング『Soan_B014_20170727煽りループver.(仮)』を、ロングバージョンとして演奏。この楽曲は、Soanいわく『躁狂の踊り子~山紫水明の宴~』Ver.2のイメージで作成。

 

猛り狂う和ビートが炸裂。観客たちも理性の螺子を緩める楽曲に合わせ左右に走れば、熱い手拍子や折り畳みなど、毛羽立ち艶めいた轟音和ロックへ嬉しく身を任せ騒ぎ祭っていた。しかも楽曲をループさせることで、止まない暴れ狂う風景も誕生。Soanプロジェクトwith芥のライブに、また新たな理性破戒曲が加わったのは間違いない。

 

最後の最後にSoanプロジェクトwith芥は『hysteria show time』を演奏。満員の観客たちの意識を真っ白に染め上げ、床が揺れるほどの騒ぎ狂う光景を会場に作り上げていった。顔をクシャクシャにはしゃぐ観客たちの姿が、なんて眩しかったことか。それがどういう意味か…そこは、わかるだろ。

 

 

 今宵生まれた真夏の熱狂の宴は、真冬の宴へと引き継がれてゆく。その次の扉が開くまで…いや、その前に数多くのインストアイベントを通し、Soanプロジェクトwith芥のメンバーらとの会話を通した宴を楽しんでいただけたら幸いだ。

 

 

PHOTO:遠藤真樹

TEXT:長澤智典

 

 

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【Soanプロジェクトwith芥 Member】

Produce・Music・Drums:Soan

Lyric・Vocal:芥(from Chanty)

Guitar・Voice:K

Guitar・Voice:Shun

Bass:Ivy(from ラッコ)

 

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【Set List】

Lyric:芥 Music:Soan

1.『Soan_B014_20170727通常ver.(仮)』

2.『不確かな箱庭』

3.『隔つ虚構紡ぐ真実と憧憬』

4.『薄紅は舞い散り寂光に消える』

5.『透過幕』

6.『sign…』

7.『パラドクス』

8.『undelete』

9.『朽ち木の行方』

10.『meteo trive』

11.『arrive』

12.『夏祭り』(Cover)

13.『躁狂の踊り子~山紫水明の宴~』

 

En1.『Soan_B014_20170727煽りループver.(仮)』

En2.『hysteria show time』

 

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【Release Information】

Soanプロジェクト2nd Mini Album

『旋律、静かな願いと。調律、その脈動に問う。』Release

 

  • Soanプロジェクトwith手鞠

2nd Mini Album『旋律、静かな願いと』

2017.8.9(水)Release 6曲入り

¥2,600(tax in¥2,808) 品番:S.D.R-317

 

  • Soanプロジェクトwith芥

2nd Mini Album『調律、その脈動に問う』

2017.9.6(水)Release 7曲入り

¥2,600(tax in¥2,808) 品番:S.D.R-318

 

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【インストアイベント】

8.9(水)発売 S.D.R-317『旋律、静かな願いと』インストアイベント

 

インストアイベント参加メンバー:Soan / 手鞠 / 祐弥(Guest)

 

8.27(日)Like an Edison東京店

時間:13:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)

info:03-3369-3119

 

8.27(日)little HEARTS. SHINJUKU

時間:16:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)

info:03-6380-0421

 

8.27(日)池袋Brand X

時間:19:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)+ジャケットサイン会

info:03-3980-6780

 

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9.6(水)発売 S.D.R-318『調律、その脈動に問う』インストアイベント

 

インストアイベント参加メンバー:Soan / 芥 / Shun(Guest)

 

9.23(土)Like an Edison東京店

時間:13:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)

info:03-3369-3119

 

9.23(土)高田馬場ZEALLINK

時間:16:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)

info:03-6908-9682

 

9.23(土)池袋Brand X

時間:19:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)+ジャケットサイン会

info:03-3980-6780

 

9.24(日)little HEARTS. SHINJUKU

時間:13:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)

info:03-6380-0421

 

9.24(日)新宿自主盤倶楽部

時間:16:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)

info:03-3371-3851

 

9.24(日)渋谷ZEALLINK

時間:19:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)+ジャケットサイン会

info:03-5784-9666

 

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Soanプロジェクト2nd Mini Album

『旋律、静かな願いと。調律、その脈動に問う。』

 

・8/9(水)Release Soanプロジェクトwith手鞠『旋律、静かな願いと』(S.D.R-317)

・9/6(水)Release Soanプロジェクトwith芥『調律、その脈動に問う』(S.D.R-318)

どちらか1枚購入者対象予定でアウトストアイベント(4shot撮影会)

 

アウトストアイベント参加メンバー:Soan / 芥(from Chanty) / Shun

 

9.30(土)大阪RUIDO

※ライブ終演後

購入対象店舗:大阪little HEARTS. / 大阪ZEAL LINK / 大阪Like an Edison

 

10.1(日)名古屋ell FITS.ALL

※ライブ終演後

購入対象店舗:名古屋fiveStars / 名古屋ZEAL LINK / 名古屋Like an Edison / 名古屋little HEARTS.

 

内容:撮影会(4SHOT)

 

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New!!

2018年「旋律、静かな願いと-2018 1st Oneman Live-」開催決定!!

2018.2.11(sun)新横浜NEW SIDE BEACH!!

※座席指定有・シッティングワンマン予定。詳細後日発表

 

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2017年09月04日 (月)

【ライヴレポート(1)】★Soanプロジェクトwith手鞠 Oneman Live★<真夏の夜の夢 偶像女装-ドーリィオブロリイタ->ゴシックロリータ姿で届けた妖艶で幻影的な一夜。2017年8月22日(火)渋谷REX

REPORT - 17:00:14

真夏の夜の夢が誘うは瑞夢か悪夢か…

「Soanプロジェクト。」

ドラマー、ピアニスト、作曲家としてマルチな才能を発揮するSoanを発起人とし、with手鞠、with芥2つの表現を用い、シーン屈指のプレイヤーをメンバーに迎え活動を展開する音楽への挑戦と提示の形。

そしてその思想の根底にあるのは「ヴィジュアル系への誇りと深い愛」である。

自らの信じるヴィジュアル系というカルチャーの理想と矜持の為に、当然誰よりも「それ」を理解している事が重要である。

その課題として今回Soanが提示したテーマ、それは「ヴィジュアル系たる者、どんな姿も絵にならなくてはならない!

「Angelic pretty」の全面協力を得てSoanプロデュースのwith手鞠メンバー真のヴィジュアル系への真夏の強化計画。

導き出される回答は次元を超越した完全世界かはたまた混沌の完全事故か?

 

 

 最新アルバム『旋律、静かな願いと』をリリース。その作品を手にSoanプロジェクトwith 手鞠が、8月22日(火)渋谷REXを舞台に、『Soanプロジェクトwith手鞠 Oneman Live「真夏の夜の夢 偶像女装-ドーリィオブロリイタ-」』と題した一夜限りの夢の物語を描き出した。

 確かに、最新アルバムの楽曲を軸に据えた演目ではあった。でも、今宵は「真夏の夜の夢」。しかも、「ドール」や「ロリータ」という謎のキーワードも…。彼らは現実では目にすることも、体感することも希有な”夢”を、今宵の舞台上に描き出した。

その物語、気になりますか?ではこれから、夏に現れた一夜の夢の宴の模様をお届けしようではないか…。

 

 

 「月から滴る嗜好のひとときを、今宵はご堪能ください」。手鞠の言葉を合図に、今宵は生音の調べを場内へ優しく響かせるように幕を開けた。まさかの嬉しい宴の始まりだ。冒頭を飾ったのが、アニメ「ベルサイユの薔薇」のテーマ曲『薔薇は美しく散る』。優雅さを抱いたアコギとヴァイオリンの調べの上で、ドレスに身を包んだ手鞠が伸びやかに「薔薇は薔薇は気高く咲いて 美しく散る」と歌いかけた。間奏では、演奏陣のセッションも登場。情熱的な楽曲が、こんなにも優雅で気高い音楽として今宵の宴へ手招いてゆくとは。早くも心はうっとりと、その調べに想いを寄せていた。

 

今日はあえてソアージュとでも名乗りましょうか」、舞台上のメンバーはみな、「Angelic pretty」のロリータ服を身にまとっていた。「みなお気づきの通り、すでに悪夢が始まっております」という手鞠の言葉通り?!の、ここでしか見れないメンバーたちの姿は、とても美しくも新鮮に瞼へ飛び込んできた。

 

そこは、装い鮮やかな衣装と音色の醸す香りが寄り添う空間。ノスタルジックな景色の中へ導くように、『そして君は希望の光の中に消えた』が哀愁と優雅さを重ねあわせ流れだした。その楽団は、会場の人たちの心を異国の舞台へ誘っていた。そこは夕陽が欠ける黄昏時の風景?!。それとも、明日に想いを馳せる宵闇の空間?!。その歌は、明日へ希望を募らせながらも、触れた人たちを漆黒な闇の底へゆっくりと導いていった。

 

前の演奏の余韻を繋ぐように響くシンバルの音、その余韻を膨らませるように優雅な演奏が場内へ広がりだした。一見優雅に思えるが、『sign…-resonance-』が僕らに見せたのは陰りを持った幻惑な世界。それは夢魔の舞台?!。それとも…。失くした君を追いかけた心が迷い込んだのは、君が求めるもう一つの理想?!。それとも、見たい現実の物語?!。想いの満ち欠けが、触れた人たちの心をキュッとつかんでいた。

 

 調律…小さな泡のようにゆっくりと沸き上がり、水面に広がるアコギの音色。「幼い頃の記憶、失くしたヴィスクドール。ヒリヒリと痛む涙の痕跡。伸ばした優しい手…今の私にはその体温だけが、この心を維持する唯一の術なのです」。手鞠の言語りをきっかけに、音の雪を降り注ぐよう演奏は美しくも儚さを抱いた『焦燥の日々の帷、憔悴する白雪姫(スノーホワイト)』へ。心の揺れを手鞠はみずから発する言葉を通し、一人一人の心のカンバスへ滲む音の色として描き出した。郷愁を抱く音色の絵の具が、手鞠の声の絵筆を通し、触れた人たちの心へ想いの風景を塗り重ねてゆく。今宵は、素直にその色へ染まりたい。薄い香りを抱いた絵の具は、何時だって消すことは簡単だ。でも今は、滲んだその景色をずっと心に描いておきたかった。

 

儚さを持ったピアノの調べ。その旋律は、滲んだ闇の中へゆっくりと手招いた。「あなたのこの場所に今も私の存在を捜している。でもそれは…」。その演奏が僕らに見せたのは、見たいと願っていた思い出の風景?。それは、闇のスクリーンへ映し出された夢幻(ゆめまぼろし)?。たとえそれが、今だけ見える幻でもかまわない。『投影された在りし日の肖像と云う名の亡霊』に触れながら、映し出された思い出の亡霊(物語)に心は嬉しさを覚えていた。瞼に湛えた悲しみの涙が、あなたを滲ませていた。「ごめんね…さよなら…ありがとう…愛していたわ。。。」、その言葉の余韻が胸に痛かった。

                                                 「もしも神という存在が慈悲深く全能な存在なら…」。その問いかけは、人の心の真理へ、相反する二つの答えの審判を求めてゆく。祈りを捧げるように歌う手鞠の歌声、彼の嗚咽した叫び声を荘厳で憂いを帯びた演奏が支え、背中をそっと押してゆく。『それは呪いと同義語の魂の鎖 永遠に続く祝福と云う名のカルマ』を通しSoanプロジェクトwith 手鞠は、本当に守るべき真実とは何かを、絶望の淵から愛おしさを持って歌いかけた。その演奏は、廃墟の中から生まれた祝福のようにも響いていた。そこに希望を抱けるなら、何時だって彼らの歌は、どんな闇の断崖だろうと光や愛を授けてくれる。そう、始まりと終焉は何時だって輪廻しているのだから…。

 

林檎とは心臓、命の日々。強気願いや念を込め、手渡す相手の命を燃やす…語らう人の姿は見えず」。悲嘆に暮れる想いへそっと手を差し伸べるように、『林檎の花の匂いと記憶野に内在する存在。』がゆっくりと響き渡る。涙に溺れる真夜中の心をほのかな香りを持った演奏で抱きしめられたら、心は、滲んだ涙の海の底へ底へと墜ちていきそうだ。あなたの抱いた両腕の深い器の中で、微かな香りに生を覚えながら、今はゆっくりと墜ち続けていたい。

 

意識遠のいた身体の器へ、手鞠の歌声が共振し始めた。『相対する質量の交錯する熱量 』の演奏が、亡骸のような身体へ僅かな熱を注いでいく。サビへ向かい光を集めだした歌声と温もりを抱いた音色が、その身に、心へ、少しずつ前へ立ち上がる希望の熱を注入してゆく。その温もりと同化したくて、誰もがその場へじっと立ちながら、温かい想いの日射し降り注ぐ演奏を浴びていた。心穏やかで無垢な姿へと再生してゆく演奏が、何時しか笑顔の花を胸に、頬に咲かせていた。

 

調律…「何処か遠くへ…この喧騒を位置と逃れて、隔絶された場所へ。来る日も、また来る日も願うけど、変わることない日常。変えられない自分への苛立ち。でも、フとした瞬間に思い出す。その景色塗りかえてゆく存在が、きっとあなたなのだろう」。重厚なヴァイオリンの調べと繊細なピアノとアコギの旋律が半透明な糸のように絡み合う。手鞠の唱える言葉のひと言ひと言を追いかけたくなる。『夕闇に鳴動する衝動と幸福の在処』が見せたのは、茜色に染まった白日夢?。郷愁を抱かせる風景にノスタルジーを覚えるのか?!。それとも、異国の町中で奏でる楽隊の演奏に切ない微睡みを覚えてゆくのか…。その夢は、今じゃない、ここ(個々,此処)へ連れてゆく。さぁ、あなたの心に響いた手のなる場所へ、想いを馳せようではないか。

 

微睡む音色が幻惑の舞台へ連れ出した。「あなたは他人との違いを恐れている。同じ存在に安堵を求めている。そのくせ過剰なまでに他との違いを主張し、それを個性と主張する。だからみんなInstagramなんか始めてしまうんだ。芸能人でもないお前の人生なんて興味はない」。力強い言葉を強調するように、Soanプロジェクトwith 手鞠は漲る情熱を調べに重ねながら『正否の相違、或いは利害の不一致』を突き付けた。何時もは震えそうな存在をねぎらう彼らが、奏でる拳へ漲る情熱を降り注いだとき、そこには魂を躍動させる高揚が生まれていた。静の中へ生まれた衝動。それは生きる熱、沸き立つ血潮。心が震えだした、昂る気持ちに嬉しく震えていた。

 

野に咲く花は雨の冷たさを知っている。そして、人の死の汚れや重たさを知っている。充分な光を与えられたものには到底理解の出来ないことでしょう。たとえ愚かだとわかっていても、荒れ果てた根に深く伸ばした根に生を行き届かせ、血の花を咲かせるんだ」。タイゾの情熱的なアコギの演奏とSachiの熱を抱いた旋律との交わりを合図に、異国情緒を抱いた音色に乗せ『感情を媒介として具象化する感傷の逝く宛』が力強く響きだした。溜め込んだ熱をすべて吐き出すように、演奏陣は凛々しく、激情した鋭利な音を叩きつけてゆく。熱した演奏の上で、沸き立つ想いのままに歌をはべらせる手鞠。本編最後にSoanプロジェクトwith 手鞠は、愛憎含んだ情熱的な心模様をぶつけてきた。鈍い血の色にも似た演奏が、身体の中を浸食してゆく。その黒く濁った音の血は、いつしか意識へ野生を植えつけていた。

 

アンコールの最初に披露したのが、新曲の『春色の音色、記憶回廊(仮)』。初春の頃のほのかな温かさを覚える楽曲だ。これはSoanプロジェクトwith 手鞠流の卒業や旅立ちソング?!。こんなにも輝きに満ちた歌は、初めてではなかろうか?!。この歌を通し、Soanプロジェクトwith 手鞠としての新しい始まりの表情を感じていた。

 

とても楽しい悪夢でした」。その言葉を最後に、Soanプロジェクトwith 手鞠は『それを僕は普遍と呼び、君はそれを不変と詠んだ』を演奏。手鞠の大きく振る手の動きと重ねあわせ、会場中の人たちが左右に大きく手を振り、心を一つに結んでいた。すべての悲しみを浄化するように流れた『それを僕は普遍と呼び、君はそれを不変と詠んだ』を通し、今宵の夢のような宴を、忘れたくない一夜の幻を、優しい笑顔で受け止めていた。

 

 

 Soanプロジェクトwith 手鞠のライブは、触れた一人一人の心へ一つ一つ物語を描き出してゆく。一人一人がそれぞれの物語の中へ、みずからが主人公となった物語を重ね合わせていく。リアルに体感してゆく生きた感涙の短編映画集を、その身でぜひ味わっていただきたい。

 

 

PHOTO:遠藤真樹

TEXT:長澤智典

 

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【Soanプロジェクトwith手鞠 Member】

Produce・Music・Drums・Piano:Soan

Lyric・Vocal:手鞠

Acoustic Guitar:タイゾ(from Kra)

Acoustic Guitar・Chorus:祐弥

Violin:Sachi(from 黒色すみれ)

 

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【Set List】

Lyric:手鞠 Music:Soan

1.『薔薇は美しく散る』(Cover)

2.『そして君は希望の光の中に消えた』

3.『sign…-resonance-』

4.『焦燥の日々の帷、憔悴する白雪姫(スノーホワイト)』

5.『投影された在りし日の肖像と云う名の亡霊』

6.『それは呪いと同義語の魂の鎖 永遠に続く祝福と云う名のカルマ』

7.『林檎の花の匂いと記憶野に内在する存在。』

8.『相対する質量の交錯する熱量 』

9.『夕闇に鳴動する衝動と幸福の在処』

10.『正否の相違、或いは利害の不一致』

11.『感情を媒介として具象化する感傷の逝く宛』

En1.『春色の音色、記憶回廊(仮)』

En2.『それを僕は普遍と呼び、君はそれを不変と詠んだ』

 

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【Release Information】

Soanプロジェクト2nd Mini Album

『旋律、静かな願いと。調律、その脈動に問う。』Release

 

  • Soanプロジェクトwith手鞠

2nd Mini Album『旋律、静かな願いと』

2017.8.9(水)Release 6曲入り

¥2,600(tax in¥2,808) 品番:S.D.R-317

 

  • Soanプロジェクトwith芥

2nd Mini Album『調律、その脈動に問う』

2017.9.6(水)Release 7曲入り

¥2,600(tax in¥2,808) 品番:S.D.R-318

 

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【インストアイベント】

8.9(水)発売 S.D.R-317『旋律、静かな願いと』インストアイベント

 

インストアイベント参加メンバー:Soan / 手鞠 / 祐弥(Guest)

 

8.27(日)Like an Edison東京店

時間:13:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)

info:03-3369-3119

 

8.27(日)little HEARTS. SHINJUKU

時間:16:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)

info:03-6380-0421

 

8.27(日)池袋Brand X

時間:19:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)+ジャケットサイン会

info:03-3980-6780

 

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9.6(水)発売 S.D.R-318『調律、その脈動に問う』インストアイベント

 

インストアイベント参加メンバー:Soan / 芥 / Shun(Guest)

 

9.23(土)Like an Edison東京店

時間:13:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)

info:03-3369-3119

 

9.23(土)高田馬場ZEALLINK

時間:16:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)

info:03-6908-9682

 

9.23(土)池袋Brand X

時間:19:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)+ジャケットサイン会

info:03-3980-6780

 

9.24(日)little HEARTS. SHINJUKU

時間:13:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)

info:03-6380-0421

 

9.24(日)新宿自主盤倶楽部

時間:16:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)

info:03-3371-3851

 

9.24(日)渋谷ZEALLINK

時間:19:00

内容:トーク+握手会+撮影会(4SHOT)+ジャケットサイン会

info:03-5784-9666

 

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Soanプロジェクト2nd Mini Album

『旋律、静かな願いと。調律、その脈動に問う。』

 

・8/9(水)Release Soanプロジェクトwith手鞠『旋律、静かな願いと』(S.D.R-317)

・9/6(水)Release Soanプロジェクトwith芥『調律、その脈動に問う』(S.D.R-318)

どちらか1枚購入者対象予定でアウトストアイベント(4shot撮影会)

 

アウトストアイベント参加メンバー:Soan / 芥(from Chanty) / Shun

 

9.30(土)大阪RUIDO

※ライブ終演後

購入対象店舗:大阪little HEARTS. / 大阪ZEAL LINK / 大阪Like an Edison

 

10.1(日)名古屋ell FITS.ALL

※ライブ終演後

購入対象店舗:名古屋fiveStars / 名古屋ZEAL LINK / 名古屋Like an Edison / 名古屋little HEARTS.

 

内容:撮影会(4SHOT)

 

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New!!

2018年「旋律、静かな願いと-2018 1st Oneman Live-」開催決定!!

2018.2.11(sun)新横浜NEW SIDE BEACH!!

※座席指定有・シッティングワンマン予定。詳細後日発表

 

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