2017年12月11日 (月)
【ライヴレポート】<hide Birthday Party 2017>2017年12月10日(日)川崎CLUB CITTA’◆2018年につながる壮大なプロジェクトの幕開け!
REPORT - 21:00:39毎年、恒例となっているhide Birthday Partyが、今年も12月10日(日)に川崎のCLUB CITTA’で盛大に開催された。近年は、hideに憧れるジャンルレスな若い世代のアーティストも参加し、おもちゃ箱をひっくり返したようなにぎやかなイベントとなることが多かったが、今年はhideとゆかりの深いアーティストが大集合。まさにチーム「hide」組ともいえるラインナップで、 それぞれのバンドの持ち時間もたっぷり。じっくりとバンドの演奏を、堪能できる構成になっていた。出演バンドは全9組、6時間半の長丁場のイベントだったが、ロビーにはたくさんの出展ブースがあったり、バーやカラオケのお楽しみコーナーがあったりと、来場者は存分にhideワールドを満喫していた。
13時半。まだお昼すぎという早い時間ではあるが、ステージ前は熱心なファンでいっぱいである。オープニング映像が流れた後、一番手のheidi.の登場である。SEに乗ってステージに出てきたメンバーは、「トップバッターheidi.、思い切りいきます!」と叫んで、エッジの効いたギターのイントロで始まる「レトロエレクトロ」をプレイ。ポップなノリのいい曲で、「手拍子!」と1曲目から観客を盛り上げる。hideのダンスチューン「Beauty & Stupid」、観客に拳を上げさせるスピード感あふれる「サンセットブルー」と続けて演奏して、ラストはhideの「ピンクス パイダー」でさわやかな疾走感にあふれたステージを締め括った。
二番手は、全員が宇宙服を着たアー写がインパクトのあるSPEED OF LIGHTS。hideに見いだされたことがデビューのきっかけとなったバンドshameのヴォーカルのCUTT が、昨年、結成した宇宙型エレクトロバンドである。この日はオレンジ色のつなぎに身を包み、まず最初にhideに捧げる「BIRTHDAY SONG」を演奏。CUTTが歌うようなMCで、Zilchの「INSIDE THE PERVERT MOUND」を紹介し、怒濤の演奏が始まる。CUTTは両手から客席に向かってレーザー光線を放射しながら、エネルギッシュに会場を盛り上げる。一番新しい曲で元気いっぱいの「Fu_sen Asteroid」、観客と一緒にタオルを回す「Weightless Flight」、みんなに歌わせる歌モノの「Summer Stars」と続き、最後は「この曲をハッピーに歌いたいと思って、こんなアレンジにしてみました。一緒に歌おう!」と、hideの「HURRY GO ROUND」を演奏した。
続いて、11月29日にニューアルバム「TO THE GALAXY」をリリースして、全国ワンマンツアー中のdefspiral。ツアーの勢いを感じさせる重々しく激しい「AURORA」から、演奏がスタートした。ストレートに音の直球が飛んで来るような迫力ある1曲目が終わると、hideの声が会場中に響き渡り、「DICE」のカヴァーが炸裂。hideのROCKミュージカル「ピンク スパイダー」やホログラフィックライブ「hide crystal project presents RADIOSITY」に参加したり等hideとの絆の深い彼らだけに、まるで自分たちのレパートリーであるかのように自然体で演奏している。全6曲のうち、ライヴで盛り上がる「SILVER ARROW」とこの「DICE」を除く4曲がニューアルバムからという攻めのセットリストで、充実しているバンドの雰囲気が十二分に伝わってくるステージだ。疾走するドラムス、ゴリゴリしたベースライン、トリッキーなギター、あやしいヴォーカルとdefspiralの新しい一面を魅せる「PULSE」で会場を圧倒し、彼らはステージを下りた。
2011年に再結成したZEPPET STOREは、「BLUE」でスタート。しかし、木村のギターの調子が悪く、2曲目が終わったところでライヴが中断してしまう。「本当は3曲続けて演奏するところが、2曲で終わってしまいました。リハーサルのない現場なんで」と、苦笑いをする木村。現在、彼らは5人で活動しているのだが、この日はギターの赤羽根が怪我のため、4人編成での登場となった。そんないきさつもあることから、「何かあるよね、hideさんのバースデーって」といいながら、バースデーソングを歌ったり思い出話をしながら必死に場をつなぐ4人。結局「リハでは音が出ていた」木村のギターが使えなくなり、CUTTからギターを借りてライヴを再開した。「いい意味でも悪い意味でも、今日のZEPPET STOREは印象に残ったと思います」との言葉通り、アクシデントはあったものの、ZEPPET STOREの真摯な音楽性を観客に印象づけるステージとなった。
幕が上がり、DJ-INAのステージが始まった途端、バースデーソングが流れ、TAKA(defspiral)やCUTT(SPEED OF LIGHTS)、義彦(heidi.)等が、バースデーケーキを持ってステージに乱入してきた。hideと誕生日が一日違いのINAへの、サプライズのバースデー企画である。照れくさそうに「53歳になっちゃいました」といいながらロウソクを吹き消すINAに、会場中からあたたかい拍手が沸き起こる。そして、始まったのはhideの楽曲で観客を踊らせるDJタイム。INAはブースの中で機械を操作するのみにとどまらず、ステージ前面に出て観客をあおったり、マイクを持って客席に下りたり、アクティヴに動き回る。ゲストに桃知みなみが参加し、「子ギャルダンサーズを募集したいと思います」といって、フロアの観客をステージに上げる。それぞれ華やかにコスプレしたダンサーズが自由にステージの上をダンスしまくり、DJ-INAのステージはたくさんの笑顔に包まれて終了した。
次は、hideバンドやhide with Spread Beaver のメンバーとしておなじみのDIEとドラマーMAD大内率いるポジティヴロックユニットKISS THE WoRLDの登場である。ライヴは、1曲目からめちゃくちゃ明るく元気なテーマソング「KTW」でスタート。DIE、MAD、ギターのオカヒロが短く歌いながらつないでいき、先程メンバーから「こんなに困った顔の木村くんは見たことがない」といわれていたヴォーカルの木村(ZEPPET STORE)も笑顔で歌っている。hideのカヴァー「ピンク スパイダー」では、ゲストヴォーカルにTAKA(defspiral)とCUTT(SPEED OF LIGHTS)が参加。この2人は今年の夏に開催された「MIX LEMONeD JELLY 2017」でもKISS THE WoRLDに参加していて、ファンにとってはおなじみの光景である。残念ながらあと2本のライヴで活動休止が決まっているKISS THE WoRLDだが、ポジティブな大人のロックパワー全開のステージは、観客を巻き込んでの楽しい時間となった。
続いて登場したのは、hideバンドやhide with Spread Beaver を重低音で支えて来たCHIROLYN。もともとサポートベーシストとして活躍して来た彼は、現在、ソロ名義でシンガーソングライター、弾き語りのライヴ活動も行っている。この日のバンドはスリーピースで、のっけから「DIE or GREED」「Do me favor」と、ゴリゴリのロックサウンドを披露。2曲終わったところでベースを持ち替え、うがいをしたCHIROLYNは、「今日、ちょっと声が出ねーの。弱音を吐いても、いい? 一昨日、病院行ったの。今日は死ぬ気でやるから、よろしく」とMC。後半は歌モノで、声が枯れてはいるものの、その熱い歌声からは彼の伝えたいメッセージがじわじわと伝わってくる。「人間はみんな孤独。これをロックンロールと呼んでます」とCHIROLYN流人生哲学を話した後、「そういう曲を書きました」という代表曲「君は変わっちまった」を熱唱して、ライヴは終了した。
バンドとして最後のステージを飾るのは、MADBEAVERS。hideバンドやhide with Spread BeaverのギタリストKIYOSHIとドラマーJOEが結成したスリーピースバンドである。KIYOSHIがギターを持ちながら歌い、ライヴは「幻想のイマジネーション」で幕を開けた。独特のヴォーカルと、タイトな演奏スタイルが印象的なバンドである。2005年の結成当初はベースにCHIROLYNが参加していたが、2007年からは現メンバーのEBIが参加。「SMOKING KILLS」ではEBIがヴォーカルを担当し、KIYOSHIとの息のあった掛け合いも聞かせた。「MADBEAVERS、来年、EBIちゃんが入って10年経ちます。ハッピーバースデー、hide!」とKIYOSHIがMCをして、ラストはミディアムテンポの「半透明の君へ」で締め括り、3人はステージを下りた。
そして、最後は恒例のセッション。幕が上がるとステージ上には、KIYOSHI、CHIROLYN、DIE、JOE、INAの5人が立っている。CHIROLYNが「一人足りないと思わない?」と観客に問いかけると、間髪入れずにPATAコールが沸き上がる。下手からPATAが手を振りながら出てきて、hideバンドのメンバーが揃った。
「ROCKET DIVE」のイントロが始まると、銀テープが会場に放射。バックのスクリーンからhideの映像と歌声が聞こえてきて、ステージ上の6人とスクリーンのhideがシンクロして、会場を盛り上げている。さらに、銀テープと赤い髪のhide人形を振る観客も加わって、会場はあたたかい一体感に包まれた。
「もう一曲聞きたい? もう一曲だけだよ」とCHIROLYNがいって、出演バンドのメンバーを全員呼び込む。サインボールを会場に投げながらメンバーが登場して、「TELL ME」の演奏が始まった。フロアには、カラフルなハート形の風船が落下してくる。スクリーンのhideが歌い、hideバンドのメンバーが演奏し、その他のメンバーは思い思いに踊ったり歌ったり観客をあおったり。hideに見守られながら、それぞれが好きなように楽しんでいる……まさに、hideと仲間たち関係を、ステージ上に具現化しているような微笑ましい光景だった。
ライヴがすべて終了した後、hide永眠後20年を振り返るヒストリー映像の上映と、hideマネジメント事務所である株式会社ヘッドワックスオーガナイゼーション 代表取締役 松本裕士氏の挨拶で、来年のhide 20th Memorial Projectの一端が発表になった。「2018年4月28日・29日にお台場野外特設ステージにて、hide with Spread Beaver他の出演で野外イベントを開催」「ドキュメンタリー映画の制作」「声と映像によるメモリアルボックス」「初のI.N.A.執筆本の出版」等である。さらに、その他にもメモリアルな企画がいくつも進んでいるという。来年につながる壮大なプロジェクトの幕開けで、2017年hide Birthday Partyは華やかに幕を閉じた。
「2018年。こんな年はもうないと思うので、みなさん、楽しみにしていてください」(松本氏談)
文◎大島暁美
(C)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD./photo by nonfix creative(HIROYUKI UENO/HITOMI KATADA)
2017年12月08日 (金)
【ライヴレポート】<二進化十進法>ベル、Chanty、Develop One’s Facultiesの3バンドが描く未来。夢の続きは沖縄で──。
REPORT - 12:02:50写真=心を震わせる熱いステージを見せたChanty
ベル、Chanty、Develop One’s Facultiesの3バンドによる合同全国ツアー「二進化十進法」。10月より始まった同ツアーも、14ヶ所16本目の公演地である12月1日(金)の下北沢GARDENでファイナルを迎えた。
ベル
トップを飾ったのは、ベル。気持ち馳せるスリリングなSEに乗せ、登場。「イケるかー!!」、昂る感情へ熱を塗り重ねるよう『やってない』が飛び出した。はしゃぎたい気持ちを煽るように、切れ味鋭い旋律と跳ねるビートを通し、ベルは観客たちを上へ上へ跳ねさせた。サビでは無数の手の花が頭上高く揺れている。なんなんだ、このゾクゾクッとする感覚は。もっともっと魂を震わせたい。その興奮を示すように、大勢の人たちがフロアーの中、右へ左へステップを踏みながら騒いでいた。
感情を唸らせる夢人の野太いギターのフレーズと正人の跳ねるドラム演奏に乗せ飛び出したのが、『涙傘』。明弥のベースが叩き出すディスコビートが身体を刺激する。躍動する演奏の上で切ない香りもまぶしながら、ハロは観客たちを興奮へ導いた。感情は、確実に熱を帯びてゆく。踊らずにいれない。その気持ちへ拍車をかけるように、ベルはスリリングで歌謡メロな『バイバイ』を突きつけた。 ハロの挑発する歌声や3人の疾走する演奏に刺激を受け、アドレナリンが身体中から湧き出す。その高揚感が、たまらない。むしろ、もっともっと魂を淫らに狂わせてくれ。
「楽しまなきゃ損だろ、なぁ!!」、情熱の風を吹かせるエスノビートに乗せ届けたのが『季節風』。「さぁ飛び立とう、ここから」、身体中を包む熱風へ飛び乗り一緒に跳ねたい。感情昂る熱を吹きつける音楽の風と共に、心地好く空まで舞い上がりたい。情熱ロマンチックな歌詞が、気持ちへ淫らな高揚を注ぎ込む。もっともっと気持ちを熱く揺さぶって欲しい、そんな気分だ!!
「まっ逆さまに墜ちてく そんな夢を見たから」。それまで上がり続けた気持ちへ刹那の風を送り込み、ゆっくり墜ちるように、哀切でミドルメロウな『Deneb』をベルは届けてくれた。胸をキュッと締めつける歌に抱きしめられながらゆっくり落下するように、切ない気持ちをジンワリ心へ染み込ませ墜ちてゆく感覚が、とても心地好かった。これも、ベルが切なさをチクチクとした痛い興奮に変えてくれたから?!。
「僕、バンド人生でこのツアーが一番楽しかった。一公演一公演思い出に残ってるし、夢にも出たくらい。まだまだ楽しんでいけますかー!!」、ハロの煽りへ応えるように、妖しくも極彩色なキラメキを放ちながら『RED』を演奏。火照ったダンスロックナンバーを通し、ベルはこの空間をふたたび情熱と妖艶な匂い渦巻くパラダイスへ塗り変えた。フロアー中で大きく揺れる無数の右手、その姿は興奮に身体をくねらせる踊り子たちのようだった。お馴染み、ハロと観客たちによる「ワァオ!!」「ワァオ!!」と叫ぶ熱い声のやり取り。ファンキーなフレーズへ飛び乗り、『音見世ディスコ』を奏でると同時に、グルーヴィな演奏が唸りを上げ場内で暴れだした。妖しい刺激を振りまく濃密な楽曲に挑発され、跳ねる観客たち。サビでは大勢の人たちが「ワァオ!!」と叫び、手にしたタオルを思いきり振りながら跳ね続けていた。火照った恍惚と興奮に感情が支配されてゆく。このままイキきりたい。そして…。
最後にベルは、『真夏のバラッド』をぶつけてきた。夢人の刺激的なギターの旋律に合わせ、手にしたタオルを振りまわしはしゃぐ観客たち。途中には、Chantyのメンバーらも乱入。彼らは、ファンたちと一緒に跳ねたりWAVEしたりと好き勝手に騒ぎだした。いいよね、気心知れた仲間たちだからこそ気軽に飛び入りし、みんなではしゃげるって。まさかまさか、最初からこんな嬉しいサプライズが飛び出すとは…「全バンド、トリの気持ちでやっている」とハロが最後に語ったよう、今宵のライブは間違いなく何かが起きそうだ。
Develop One’s Faculties
二番手を担ったのがDevelop One’s Faculties(以下、DOF)。アバンギャルドなSEへ誘われ、舞台に姿を現したメンバーたち。観客たちの感情へ熱い音の弾丸を連射するようにギターの音を掻き鳴らし、DOFはアグレッシブでエナジーあふれた『斑』を突きつけた。身体を痛く、激しく揺さぶる轟音情熱的な演奏が、観客たちを一瞬にして荒ぶる姿へ変えてゆく。大きく身体を揺らし騒ぐ人たちの群れ。それ以上に野生の咆哮を、彼らは雄々しき歌と演奏へぶつけてきた。
高揚導く激しいダンスロックナンバー『結果論』が生み出すウネリに身を預けながら、高く高く飛び跳ねる観客たち。雄大でスケールあふれた音のうねりへ巻き込まれたが最後、その唸りの中で激しく乱れ狂っていたい。なんて刺激的で、ヤバいくらいに虜になる劇薬音だ。興奮覚える身体へさらに熱気を注ぐよう『有為転変は世の習い』を演奏。エッジ鋭くスリリングなギター音と跳ねる演奏に触発され、身体が大きく躍動する。「わかんねぇことばっかだから 俺はここで歌ってる」「奇麗事ばっか並べんな~俺はここで叫んでる」と歌うyuya。確かに理屈なんかどーでもいい、身体が騒ぎたいと叫んでる以上、僕らは自由に騒がせてもらうよ。
スポットライトを浴びギターを掻き鳴らすyuya。Johannesのドラムビートが重なると同時に、演奏は空間美活かしたメロウな『メランコリィな生活』へ。放たれた音の数々が、場内へ身体をチクチク刺激する音の糸を張り巡らせる。その糸に絡まった僕らは、激情する演奏に身動きも忘れ、心をとらわれていた。
演奏は、冷たい風を場内へ吹きつけるように荘厳メロウな『monochro』へ。その音は、触れた人たちの心を凍らせ、ゆっくり奈落へ墜としていく。演奏が進むごと、赤みを帯びてゆく感情、それはyuyaの歌に気持ちを揺さぶられ、心が刹那の熱を感じていたから?。なんて胸を切なく掻きむしる歌だろう。その声を、その演奏を、胸の内にギュと抱きしめていたかった。それくらい感情を、彼らは蒼い音世界の中で熱く揺さぶってくれた。
激しくギターを掻き鳴らすyuya。沸きだす手拍子。そのリズムは情熱を抱いた民族音楽風の表情へ。触れた人たちを異空間へ連れだすように流れた『フラスコを振ると天秤揺れた』。気持ちの内側へ熱を注ぎ込む楽曲に刺激を受け、身体の奥底から興奮というアドレナリンが沸きだした。演奏が進むにつれ観客たちもはしゃぎだす。何時しか場内には、情熱的な演奏に刺激を受け、身体を大きく揺さぶる人たちがあふれていた。
dettoのヒステリックなベースフレーズからの幕開け。クールな中にも滾る熱を秘めた変拍子ナンバー『この世界が嫌いな人へ』の登場だ。ジワジワと上がってゆく感覚が心地好い。サビでは大勢の人たちが手を天高く上げ、身体を大きくくねらせていた。「これが音楽だ」、yuyaの言葉通り、DOFは緩急巧みに活かした演奏を魅力に観客たちを虜にしてゆく。「素敵な世界を一緒に」、身体中へ光を射すような『My World』だ。舞台の上には、先ほど演奏を終えたベルのメンバーが姿を現し、心地好く跳ねる演奏に合わせ無邪気に飛び跳ねていた。何時しか演奏はトライヴァルなダンスロックナンバーへ。その変化に合わせ、会場中の人たちも気持ちをトリップさせるダンスビートの上で心地好く跳ね続けてゆく。
「あったまってきてるよね」、先程までの横ノリな演奏から、一変。再びアグレッシブなギターロック音を突きつけ、観客たちを煽りだした。激しく疾走する演奏に煽られ騒ぐ観客たち。『残念な唄』が、もっともっと騒ぎ立てろと刺激的な音を身体中へ注いでゆく。暴れ狂いたい、もっともっと騒ぎたい。その気持ちを掻き立てるようにDOFの中で最もエモーショナルな『insert memory』が爆走。ただエネルギッシュなだけではない、変幻してゆく展開とスケールあふれた表情が触れた人たちの心へ興奮のドラマを描き出す。感情振り乱し叩きつけた歌と演奏に煽動され、我を忘れ拳を振り、騒ぎ続ける観客たち。なんて劇薬のような音楽だ。危険とわかっていても、一気に飲み干し恍惚に酔って狂いたくなる。そんな病み付きになる刺激的なライブをDOFは届けてくれた。
Chanty
トリを飾ったのがChanty。澄み渡る壮麗なキターの旋律が場内へ響き渡る。瞬時にして観客たちを冷たく美しい異空間へChantyは連れ出した。旋律の上でゆっくりと舞う芥。潤いを持った旋律の波紋広がる音へ響く声を重ねるように、芥が『冷たい手のひら』を歌いだした。千歳のギターが唸りを上げると共に、楽曲は蒼に包まれた幻想的な空間を作り出す。なんて美しい衝撃だ。魅了される?!。それ以上に感情の琴線とシンクロしてゆく歌と旋律に共鳴し、心地好い恍惚を心に覚えていた。
その演奏は、気持ちへ一瞬にして翼を植えつけた。「二進化十進法単独公演20曲目、フライト」と言い放った芥の合図で、『フライト』が唸りを上げて舞い始めると同時に、感情も一気に飛翔。芥の声をアナウンスに、会場中の人たちが一斉に騒ぎだした。高らかに響く千歳のギターの旋律、成人と野中拓が叩き出す疾走する演奏に触発され、心を熱くトリップせずにいれなかった。場内で大きく揺れる両手の翼が、その姿を示していた。
もっともっと興奮したいんだろと挑発するように煽る芥、絶叫飛び交う場内へ沸騰した熱を注ぐように『やんなっちゃう』を注入。身体を激しく揺さぶる躍動的な演奏に触発され、絶叫を上げる観客たち。サビではタオルを振りまわし、誰もが宴の跳ね人と化していた。Chanty流祭り歌が、ここに季節外れの祭りの光景を生みだした。上がり続ける興奮、天井知らずな熱狂こそ祭りに相応しい光景だ。「お前らと一緒に幸せの渦を作ろう」、フリーキーでハードエッジな『不機嫌』が飛び出すと同時に、フロアー中が頭振り乱す光景に塗り変わっていた。感情的な音を激しく挑むように突きつけるメンバーたち。なんて煽情的な楽曲だ。煽る歌や演奏に触発され、我を忘れ騒いでたい。そうしてなきゃ、Chantyの気迫に呑み込まれてしまう。剥き出しな感情には、剥き出しな熱狂をぶつけなきゃ楽しくない。頭振り乱し騒ぐ観客たちの姿が、それを物語っていた。。
「みんなで育てた曲を一つ」、タイトな成人のドラムの上で野中拓のスラップベースがファンキーなディスコビートを刻み、千歳が刺激的でトリップ感満載なギターのフレーズを突きつけた。Chantyは『インピーダンス』を魅力に、観客たちをうねる世界へ連れ出した。手拍子を求める芥の呼びかけに応えるよう、大きな熱を持って包むグルーヴへ熱く身体を預けてゆく観客たち。終盤には、演奏に合わせ飛び跳ね、興奮へ身を踊らせてゆく場面も。千歳のギター演奏へ折り重なる芥の歌声。ゆっくりとした幕開けと共に始まった『比較対象』。そこへ成人のドラムか突き刺さると同時に、演奏は一気に熱を発しながら駆けだした。Chantyは込み上がる想いを疾走する演奏に乗せ、四方八方へ解き放ってゆく。
「今が輝けるのは昨日でも明日でもなくて今日この瞬間だけだろう?。激しく音を掻き鳴らす演奏陣、身体中から熱したエナジーを撃ち放つように、Chantyは沸き上がる感情のままに『m.o.b.』を叩きつけた。絶叫にも似た声で歌い叫ぶ芥。理性なんか捨て去れ、気持ちを熱く掻き立てる歌や音と一緒に騒ぎ狂え。それが、ここには一番相応しい姿だから。力強く突き上がる拳が、頭振り乱す光景が、それを物語っていた。
「この3バンドが羅針盤となって未来へ突き進んでいく」。その言葉を示すように、Chantyは『C』を演奏し、右へ左へ駆ける観客たちを、光ある未来へ連れ出した。サビで作り上げた場内中に無数のタオルが廻り続ける光景。Chantyは揺れる大きな熱狂の波をフロアーに描き、馳せる気持ちのまま眩しい光へ心の手を伸ばしていった。「この繋がった糸が切れないように」、最後にChantyは『赤い糸』をプレゼント。スキップするよう軽快に走る楽曲、ウキウキと気持ちが弾む。誰もが身体を優しく揺らし、その演奏に大勢の人たちが心や身体を預けていた。終盤にはベルのハロとD.O.Fのyuyaも登場。観客たちと一緒に「ラララーラララー」と場内へ響かせた合唱が、途切れたくない歌声の糸として互いの心を固く結んでいった。
セッション
アンコール前には、今回のツアーを振り返る映像を上映。最後に、メンバー全員がふたたび舞台へ集結。
「この先の未来へ一緒に向かっていきませんか!、派手にやろうなー!!」、芥の煽りに続いて演奏したのが、イベントの冠にも名付けたパーティロックチューンの『二進化十進法』。Chantyの演奏を軸に、芥とハロ、yuyaがそれぞれにマイクを握り、熱唱。他のメンバーたちが舞台上ではしゃげば、客席でもステージ上のメンバーとシンクロするように大勢の人たちがジャンプ。とても耳心地好くキャッチーな楽曲のように、誰もが胸を嬉しく騒がせる演奏に合わせ、突き上げた腕を大きく振りながら、3バンドのメンバーたちと一緒にこの楽しさを味わい尽くしていた。
この熱狂、もっともっと味わいたい。「夢の続きは沖縄でやろうぜ」「ソールドさせようぜ」「ソールドさせたらTSUTAYA O-EASTで、日本武道館でやろうぜ」と叫んだメンバーたち。。。
彼らは、本気でこのシーンを「B.C.Dの3バンド」の力で塗り替えようとしている。彼らを本気で求めている人たちも、全国各地へ確実に増えている。
最後に嬉しい発表を。2018年5月12日と13日、沖縄Outpitを舞台に「二進化十進法」の追加公演が決定。ぜひ熱狂の続きを、彼らと一緒に熱い地で、熱いライブを通し、汗まみれで楽しんでくれ。
PHOTO:
TEXT:長澤智典
ベル Web http://belle-web.info/
ベル twitter https://twitter.com/belle__official
Develop One’s Faculties Web http://d-o-f.jp/
Develop One’s Faculties twitter https://twitter.com/DOF__Official
Chanty Web http://chanty.jp/
Chanty twitter https://twitter.com/chanty_news
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―セットリスト―
ベル
『やってない』
『涙傘』
『バイバイ』
『季節風』
『Deneb』
『RED』
『音見世ディスコ』
『真夏のバラッド』
Develop One’s Faculties
『斑』
『結果論』
『有為転変は世の習い』
『メランコリィな生活』
『monochro』
『フラスコを振ると天秤揺れた』
『この世界が嫌いな人へ』
『My World』
『残念な唄』
『insert memory』
Chanty
『冷たい手のひら』
『フライト』
『やんなっちゃう』
『不機嫌』
『インピーダンス』
『比較対象』
『m.o.b.』
『C』
『赤い糸』
セッション
『二進化十進法』
写真=情熱的なサウンドで酔わせたDevelop One’s Faculties(上)
幅の広い音楽性でフロアを揺らしたベル(下)
2017年12月05日 (火)
【ライブレポート】<NoGoD>ONEMAN TOUR [prùf] FINAL:2017年12月2日(土)渋谷CLUB QUATTRO「俺らは最高に幸せなバンドだ!」
REPORT - 23:29:02NoGoD、二度目の10周年を駆け抜けた集大成となるツアーファイナルは感動の渦の中終演!!
現メンバーで10周年を迎えたNoGoDが、渋谷CLUB QUATTROにて、9月から駆け抜けてきたワンマンツアー[prùf]のファイナルを迎えた。CLUB QUATTROは10年前にNoGoDが現メンバーで初めてステージに立った思い出の場所。最新アルバム『proof』を引っ提げた長いツアーのファイナルと同時に、NoGoDにとってもファンにとっても深い意味のあるライヴとなった。
真っ赤な照明のなか、アルバム1曲目にも収録されている鋭く耳を刺す「In the cage…」でステージにメンバーが集結していく。照明が眩しく輝きを放つと団長(Vo.)が登場。「break out」へ。会場では一斉に力強く拳が上がる。『元気だったか東京!!今日はよろしく!』 ハイトーンでシャウトするように叫んだ団長にファンは大歓声で答えた。華凛のベースフレーズとKのドラムフレーズが交互に響く。会場の熱は急上昇し、コーラス部分はメンバーのみならずファンも大合唱となって、ライヴはこの上ない最高のスタートをきった。
次に披露されたのは「Arlequin」。タフで妖しい道化師にステージの雰囲気はガラッと変わる。Kyrieのハモリも耳に心地いい。「カクセイ」ではKyrieが激しくも繊細なギターソロを放つと、Shinnoは会場全体を包み込むような優しい笑顔でKyrieを継ぐ。『お待たせ!俺らがNoGoDだ!!証明しようぜ、お前ら!!』と団長が煽ると歓声はもはや嵐のようだ。さらに放たれた「蜃気楼」はNoGoDの楽曲の中でも異質のオリエンタルな響きが広がる。揺蕩うように刻々と変わる展開に心まで持っていかれそうになる。そこから急激にダークサイドに堕ちる「ヘンリエッタ」へ。団長の『跳べ!!』の声に力強く跳ぶファンで起こった地響きもライヴならではの効果音となった。
「浮世Rocks」では団長とファンのコールがシンクロする中、フリもまるで練習したかのように揃い、一体化を存分に感じさせた後は、ぐっと時を溯り、フロアに浸透させるように未来を感じさせるインディーズ時代の楽曲「七色」を贈る。ちょっと所在なさげにステージから捌ける団長に少し笑いが起きつつも、楽器隊の魅力が詰まったインストナンバー「矜持と共に」では、緻密に叩き出すKyrieのギターソロから、弦が引きちぎれそうなほど荒々しいShinnoのギターソロへと。呼吸を合わせる華凛とKが笑みを交わす。高まった空気のなか、Kのバスドラムを全身で感じつつ再登場した団長。Kyrieのギターに惹かれるように天井を仰いでから語るように歌いだす「Missing」は、元々曲の持つ壮大さがさらにライヴで活き、エモーショナルな団長の歌声が切なく心に突き刺さった。再びステージはムードを変えて色気漂う「emotional disorder」へ。華凛のベースと団長の歌声が耳に心地いい“静”が同じくシンと静まったフロアにねっとりと絡んでいった。
これでもかと勢いを叩きつけてくる「煽動」では団長に覆いかぶさっていくように楽器隊が猛る。その波にのまれることなくファンの日常のモヤモヤさえも全部受け止めて歌う団長。さらにドロップされた「最高の世界」は澱のようなダーティーな様相からサビで一気に昇華して解放される美麗な陽の成分がメンバー間に広がっていく。それぞれが視線を合わせて笑い合い、その笑顔がファンにも伝染し、タイトル通りの“最高の世界”が見えた。アルバムの核ともなったタイトル曲の「proof」は、今までのNoGoDとこれからのNoGoDへの強い決意と意思を感じさせる楽曲。切なさを内包したメロディと終わりを示唆する歌詞でありながら、その先を強烈に感じさせる熱い「proof(=証明)」。本編はNoGoD自身の証明を身体全体に味わわさせられて終了した。その気持ちよさは当たり前だがもっと欲しくなる。メンバーがステージから居なくなるのを食い気味に“NoGoD”コールが巻き起こった。
乞われて再び登場した楽器隊の面々。『(渋谷CLUB QUATTROは)色んなNoGoDのターニングポイントになるライヴをやってますね』記憶を辿りながら振り返るKyrie。その間にShinnoの前にアコースティックギターがスタンバイされた。優しい光がShinnoを照らしだし、力強くも暖かい雰囲気を醸すアコースティックギターのストロークにのり、ささやくように団長が歌いだす。ゆったりと回るミラーボールが美しい光の粒を投げかけ、メンバー全員の音が加わってもサウンドは優しさを保ったまま会場の隅々まで沁みていく。大事そうに歌を噛みしめながらどんどん高みにあがっていく団長のハイトーン・ヴォーカルはほとんど咽んでいるようだ。『最近は休止してしまったり解散してしまうバンドも多い。でも俺らは、こんな幸せな空間を手放したくない。これからも一緒に、この空間を生き続けてください。』団長の言葉にステージに向けて惜しみない拍手が送られる。感動が高ぶった会場を、次の「神風」でカオスに変えるNoGoD。大合唱と共にフロアは全員ジャンプし地響きが起きる。アンコールとは思えないパワーでさらに「tonight!」でぶつける。Kのドラムの疾走感にのって華凛は頭を激しく振り、Shinnoは左右に楽し気に揺れる。Kyrieが近づいていくとお尻を向ける団長。顔を見合わせて笑う様子は本当にこのライヴがずっと続いてほしいと願わずにいられない。『何を信じていいか分からないなら、信じるものが何もないなら、俺らがお前らの生きる糧になってやるぜ!』と放たれたのは「敬虔」。地の底から響くようなKのドラムが轟き、「ノーゴッド」にもつれ込む。ヘッドバンギングの海に団長がダイヴ。華凛も最前の柵に足をかけて分厚くベースを聴かせた。左右に激しく動くShinnoと客席は完全に動きが一致し、お立ち台に乗ったKyrieが上からギターソロを落とす。Kも立ち上がってパワフルにスティックを振り下ろすが、その表情は満面の笑顔だ。『俺らは最高に幸せなバンドだ!ありがとう!!』 団長の感謝の叫びで終演を迎えた。
しかし会場からのNoGoDコールが鳴りやまない。公演終了のアナウンスが2回、3回と繰り返されても、コールが止まらない。幸せな表情で再び登場したNoGoDは、全員一言ずつ自分の言葉で感謝の気持ちをファンに伝えた。
『何を言われても、NoGoDが最高のバンドだということを、一生かけて証明してやるよ!死ぬまでついて来いよ!!』 その言葉を信じてついていくしかない。煮えたぎるパワーを真っ向からぶつけてくるこの正直すぎるバンドからは目を離すことができない。まだまだ続くNoGoDの“証明”を括目して欲しい。
ライヴ写真◎大塚秀美
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【リリース情報】
NoGoD
New Album『proof』 2017年9月20日ON SALE
◎初回限定プレス盤(CD+DVD) KICS-93522 ¥3,600+tax
<CD>先行シングル「Missing」「Arlequin」を含む全11 曲収録
<DVD>「Missing」,「Arlequin」,「break out!」Music Video収録
◎通常盤(CD Only) KICS-3523 ¥3,000+tax
<CD>先行シングル「Missing」「Arlequin」を含む全12 曲収録
(※初回限定盤より1 曲多い収録曲となります。)
・CD収録曲
01. In the cage…(Instrumental)
02. break out!
03. Arlequin
04. 蜃気楼
05. ヘンリエッタ
06. proof
07. 矜持と共に (Instrumental)
08. forever
09. 煽動
10. Missing
11. Tonight!
12. DREAMER ※通常盤のみ収録
・DVD ※初回限定プレス盤のみ同梱
「Missing」
「Arlequin」
「break out!」
Music Video 収録
【動画】
★「Missing」Music Video Full>> https://www.youtube.com/watch?v=sOgVKQOY63c
★「Arlequin」Music Vido Full>> https://www.youtube.com/watch?v=K16u3a2jRoQ
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【Profile】
2005 年結成。インディーズ時代から精力的なライヴ活動を経て、類い稀な歌唱力、曲の魅力を何倍にも増幅させる演奏スキルをもつメンバーによって、J-ROCK、ハードロック、メタル、ヴィジュアル系…と様々なシーンのそれぞれに男女関係なく多くのファンを得ているロックバンド。
ラウドなサウンドの中にいて埋もれないメロディセンスと、メッセージをダイレクトに伝える日本語を大切にしたためた詞や、時にエモーショナルに、時にこの上なく硬質に、時に一陣の風のように、ただ一つに止まらず表情を巧みに柔軟に変えていくサウンドに定評がある。ヴィジュアルも常にファンの関心を集め、その奇抜さに一歩も劣ることないエンターテイメント性溢れるライヴパフォーマンスは圧巻。またアザーサイドとして、団長のバイタリティ溢れるトークも度々メディアの注目を集め、音楽シーン外からの視線も熱い。
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【Information】
Official Website http://www.nogod.jp
Twitter @NoGoD_Official