NEWS

2023年10月23日 (月)

【ライヴレポート】<HUSH @JURASSIC結成25周年記念3Days Live“Vary Sembassa”>2023年10月19日(木)目黒LIVE STATION>

REPORT - 21:00:03

 熱き衝動に駆られるかのごとく、ソリッドで荒々しいロックンロールを自由奔放に響かせるHUSHの姿は、むしろあの頃よりもよほど生き急いでいるように見えた。

 

 2002年1月から2004年9月にかけ、元・ALL I NEEDの橋都章人と元Plastic Treeの大正谷隆が中心となり活動したHUSHが、約19年も続いていた活動停止期間を経て奇跡の復活を果たしたのは今春のこと。そして、この復活がなにゆえ奇跡的であったのかと言えば、メンバーのうち2人は事実上バンドマンを引退していたからなのである。

 

 ギタリスト・米澤誠一郎は現在もホームバンドであるW.A.R.P.での活動を中心に音楽活動を続行しており、ドラマー・大正谷隆も子でびる隊変態支店などでのライヴをコンスタントに行っているものの、なんとベーシスト・高瀬宏之についてはもっぱら愛媛で社長業に徹しており、HUSHが停止して以来17年もずっと楽器そのものを弾いていなかったのだとか。また、フロントマン・橋都章人についてはHUSHの後にBeauty Maniacsやacalliとして活動した経緯があったとはいえ、病気療養などを経て長らくステージには立つことがないまま月日が流れて来ていたのだ。

 

 そのような状況下にあって、HUSHが復活することになった理由のひとつには2021年11月に逝去したhiro(te’)の存在が大きかったようで、橋都章人は以前SNS上に“ヒロが亡くなって「いつかまた」って言葉の脆さを知りました。”との投稿を残しているほか、このたびのHUSH復活に向けては“オレは死ぬ前に後悔したく無いから帰って来た。”という投稿をしていたりもする。

 

 かくして、今年4月に彼らは横浜7th Avenueにて3デイズ主催ライヴ[HUSH 3days -cocoon8414155516-]敢行することになり、ここでは橋都章人にとって唯一無二な盟友であるANCAHANGの率いるSEX MACHINEGUNSや、HUSHを慕う後輩バンド・FAIRY FORE(実は彼らもこのライヴが限定復活ライヴだった)、先だって8月にヴォーカリスト・ISSAYが不慮の事故で急逝してしまったDER ZIBET、宙也+榊原秀樹(De-LAX/極東ファロスキッカー) など、多彩なメンツがそれぞれに華を添えるかたちでHUSHの復活を祝して集うことになったのだった。(しかも、3日間ともチケットはソールドアウト!)

 

 また、今夏にはtest-No.主催の【CHAIN the ROCK fes 2023】に参加したほか、秋に入ってからは10月1日に前述したhiro(te’)の地元である金沢でもHUSH主催のイベントを行ってきていおり、HUSHにとって現状インフォメーションされている中では最後の公演となったのが、この目黒Live Stationにて行われた[JURASSIC 結成25周年記念 3Days Live]の初日にゲストとして出演したライヴとなる。

 

 なお、JURASSICとのツーマンであった今宵は復活後最長となるセトリが組まれていて、ここでの冒頭を飾ったのは米澤誠一郎の弾くリフが牽引するかたちで、HUSHの繰り出す生々しいグルーヴが場内を瞬く間に呑み込んでいった「naive」。名は体を表わすの言葉そのままに、このバンドが生来持っている濃密なパッショネイトが大爆発した「EXPLODE」では、放たれる激音に対してオーディエンスが即座に反応し、フロアはここから一気に沸き立つことにもなった。

 

 高瀬宏之の弾く野太いベースラインが印象的に響いた「嘘の薬」、大正谷隆の叩き出す鋭くラウドなビートが曲をよりドライブさせた「can’t you hurt me?」、橋都章人が咆哮するかのようなヴォーカリゼイションと極めて熱量の高いライヴアクトをみせた「Going to distortion」と、どこをとってみても4月の復活当初と比べるとHUSHはライヴパフォーマンスの切れ味と練度を増していたと言っていいだろう。ここまでたった数本の本番を経過しただけで、HUSHが往時のような輝きを取り戻していたことにも正直なところ驚きを感じたが、スタンス的にはむしろあの頃よりもよほど生き急いでいるように見えたところも非常に印象的で、そこには若気の至りにまかせた荒々しいロックとは明らかに違う、さまざまな過去の経験に裏打ちされた熱き衝動から生まれる赤裸々なロック、というものがひしひしと感じられたように思う。

 

 

 

 

 

 そもそも、同期機材の類に頼ることなくひたすら人力で奏でるロックンロールの貴重ぶりも、考えてみれば今や相当なものになってしまうわけで。逆に、これだけ身を削った体当たりな音楽を具現化できるバンドが今現在どれだけ日本にいるのか、という点でもHUSHのライヴからは彼らの熱き魂をダイレクトに感じることが出来た気がする。

 

 

 

「JURASSICの結成25周年、おめでとうございます。彼らともけっこう長い付き合いにになりますが、今日こうして呼んでもらえたことが嬉しいです。そして、HUSHは今日で一旦お休みになりますけれども、解散はしません」(橋都章人)

 

 

 

 そう断言してから、彼がギターを手にして歌い出したのは〈おやすみ ありがとう おやすみ また明日〉という歌詞が、オーディエンスに対しての真摯なメッセージになっていたロッカバラード「おやすみの唄」。さらに、このあとに聴けた美旋律が切なく響いた「乱反射」でも、センチメンタリズムの漂う音がHUSHの持つアナザーサイドを存分にうかがわせていたのではなかろうか。

 

 それでいて、この夜が佳境を迎えたことを告げた「SHINING DAYS」以降は再びソリッドで荒々しいロックンロールがこれでもかと連打され、ラストの「SPIN」に至っては観客たちが曲名よろしくこぞってフロアでスピンをしてみせながら、ワンマンにも等しい最高の盛り上がりをみせることに。

 

 

 

 

 

「俺たち、おまえらと一緒にやれてきて良かったぜ。19年ぶりの半年間、ありがとうございました。ロックンロールは死んでいません!」

 

 ちなみに、この日はJURASSICのアンコールで「SPEED」をYU+KI.と橋都章人が共に歌う一幕もあったが、いずれにしても1990年代末期から活躍していた彼らが、今を生きて音を奏で歌うことが出来ているというその現実はただただ尊い。あれから時は瞬く間に流れ過ぎ、音楽のハヤリスタリも当たり前のように変わって、もはやロックンロールはスマートでもなければお洒落でもない存在になってしまったのかもしれないが、きっと橋都章人が言ったとおりまだそれでもロックンロールは死んでなどいない。

 

 熱き衝動に駆られるかのごとく、ソリッドで荒々しいロックンロールを自由奔放に響かせるHUSHの“明日”は、彼らが生き急ぐ未来に必ず待ち受けているはずだ。

 

 

 

 

文◎杉江由紀

 

====================

 

★HUSH OFFICIAL X(ex.Twitter)★

https://twitter.com/HUSH_2023


2023年10月16日 (月)

【ライヴレポート】<「H.U.G TOUR 2023 -HELIOS-」TOUR FINAL>2023年10月13日(金)赤羽ReNY alpha◆

REPORT - 20:00:13

 ギタリストKaryuex. D’ESPAIRSRAYAngelo)とボーカリストのryoHOLLOWGRAM)、マニピュレイターの横山和俊により、2022年に結成されたH.U.G。顔見せ的にいくつかのイベントに出演した’22年を経て、今年に入ってからの彼らは324日にSpotify O-WESTで初の単独公演を行い、610日に1stアルバム『HELIOS』をリリース、さらに6月から7月にかけて<H.U.G TOUR 2023 -LOVE THAT NEVER ENDS->と銘打った全国ツアーも実施するなど、本格的な活動をスタートさせた。『HELIOS』の完成度の高さに加えてライブも好評で、現在のH.U.Gはより多くのリスナーから注視される存在となっている。

 

 そんな中、H.U.Gの最新作となる両A面シングル「CORE」が1025日にリリースされることと同作を携えた東名阪ツアー<H.U.G TOUR 2023 -HELIOS->が109日から1013日にかけて行われることがアナウンスされた。夏のツアーから期間を空けない意欲的な動きに胸を高まらせたファンや、気になっているH.U.Gを今回のツアーで見にいこうという気持ちになったリスナーは多かったに違いない。名古屋SPADE BOXOSAKA MUSEでは、H.U.Gのライブを待ちわびるオーディエンスにより両日ともに熱い盛り上がりを見せた。そして、<H.U.G TOUR 2023 -HELIOS->を締め括る東京公演が、1013日に赤羽ReNY alphaで開催された。

 

 場内にオープニングSEが流れ、H.U.Gの面々がゆったりとした足取りでステージに姿を現した。客席から湧き起こる大歓声と拍手を圧するように轟音が鳴り響き、ライブはダークな歌中とスケールの大きなサビを配した「HELIOS」で幕を開けた。ビシッとした空気感を放ちながら演奏するメンバー達の姿とラウド&タイトなサウンド、中間のセクションでアップ・テンポに移行する「HELIOS」の楽曲構成などにオーディエンスのボルテージは一気に高まり、客席は早くもヘッドバンギングの嵐と化した。

 

 「HELIOS1曲で場内を掌握したことを感じさせる中、アッパーな「HUG」とヘヴィな「BLOOD PIN」が続けざまに演奏された。ドレッシーかつ鮮やかな赤い衣装に身を包み、エモーショナルな歌声からファットなシャウトまで自在に使い分ける表情豊かなボーカルを聴かせるryo。激しいステージングとソリッドなギターワークで、ステージの熱気をどんどん高めていくKaryu。ミステリアスな雰囲気を漂わせながらアイディア豊富なキーボード・アプローチとシュアなパーカッション・プレイで楽曲のエモーションを増幅させる横山。3人が生み出すケミストリーは本当に魅力的だし、コンビネーションの良さに磨きがかかってよりバンド感が増していることも印象的だ。

 

 

 

 

 

 

 3曲聴かせたところで、「こんばんは、H.U.Gです」とryoが挨拶。「あっという間のツアーですけど、今日最終日を迎えて皆さんとお会いできることを、とても嬉しく思っています。どうも、ありがとうございます。今回、「CORE」という両A面のシングルを出します。今日1番最初に披露した「HELIOS」と、その対になる「VENUS」という曲があります。皆さん、一緒に愛を降らせてみませんか?」という言葉に続けて、新曲の「VENUS」を披露。ダークかつサイバーなテクスチャーとキャッチーなサビをフィーチャーした同曲は魅力に富むと同時に、ライブ映えも抜群といえる。耳に馴染みのない新曲でいながら、場内はいいムードで盛りあがっていた。

 

 その後は「熾-OKI-」や「Marry of the blood」「DON`T DOUBT」といったナンバーが相次いで届けられた。圧倒的なヘヴィネスと美しさを併せ持ち、さらに退廃的な雰囲気が香るH.U.Gの世界観は聴き手を深く惹き込む強大な力を備えている。と同時に、今回のライブではそんな彼らの持ち味が一層強靭さを増していることに驚かされた。この辺りからは初の全国ツアー<H.U.G TOUR 2023 -HELIOS->を行なったことで修正すべき課題などが見つかると共に、バンドとして表現したいものがより明確になったことがうかがえる。

 

 バンドとして目指す方向に迷いがなく、様々な部分を強化することでH.U.Gならではのアーバンな闇感肉感的な非現実感などに更なる磨きがかかり、彼らは独自の魅力を湛えた唯一無二の存在に進化したといえる。ライブを観ていると徐々に思考が麻痺していき、頭が真っ白な状態でラウド&エモーショナルな世界に浸る快感を、たっぷりと味わわせてくれた。

 

 どんどん深化していった後「DON`T DOUBT」に続いて爽快感に溢れた「DROP」が演奏されたが、バンドの幹がしっかりしているためバリエーションを担う楽曲の良さが一層際立っていることも印象的だった。メンバー3人がそれぞれの個性を継承したうえでH.U.Gになったことを感じさせたことも含めて、一層凄いバンドになったなと思わずにいられなかった。

 

 シリアスに愛を歌った歌詞や抑揚を効かせたアレンジなどでオーディエンスの心を鷲づかみにして、最後に心地好いカタルシスを与える「LOVE THAT NEVER ENDS」を聴かせた後、ライブは後半へ。サポートのTAKEOdrPIERROTAngelo)とMASASHIbVersailles)も含めたメンバー全員を紹介するインストを皮切りに、ハイボルテージな「WHO IS THE ROMEO」やパワフルな「SEEDS」などが畳みかけるように演奏された。フィジカルなパフォーマンスを展開しながらラウドなサウンドを鳴り響かせるH.U.Gに応えてオーディエンスも熱いリアクションを見せ、場内のボルテージはさらに高まっていく。

 

 

 

 

 

 

 そして、本編のラストソングとして「HEART」をプレイ。翳りを帯びた前半から力強くビシビシと胸を打つ後半へと高揚していく流れが見事に決まって、場内は怒涛の盛り上がりを見せた。完全燃焼するライブならではの爽快感や感動的な余韻を残して、H.U.Gはステージから去っていった。

 

 今回のツアーで、より魅力を増した姿を披露してみせたH.U.G。<H.U.G TOUR 2023 -HELIOS->を終えた後の短期間であらゆる部分に更なる磨きをかけて説得力を増したのはさすがの一言に尽きる。1025日にリリースされる「CORE」が良質な仕上がりを見せていることもあり、今後のH.U.Gは更なるスケールアップを果たすに違いない。それを、強く予感させる素晴らしいライブだった。

 

 最後に、アンコールでメンバーが語った言葉を記しておこう。

 

「みんな、ありがとう。たった3本という短いツアーになりましたが、中身は本当に濃くて、めちゃくちゃ熱い3日間になろうとしています。確実にボルテージが上がっていく感じとか、みんなが応えてくれる感じとか、めっちゃいいツアーをしたなと思っています。皆さんのお陰です。ありがとうございます」(ryo

 

「みんなを愛しています。今日終わってもね、また見てください。そして拡散しましょう。“H.U.Gって最高だよね!と。H.U.G、最高でしょう? よろしくお願いします。そんな熱い気持ちを持っている横山でした(笑)」(横山)

 

「このツアーは本数は本当に少ないですけど、バンドの成長が凄いなと思う。皆さんに感謝しています。ありがとうございます。もう23本多いツアーをやれるようにがんばっていきますので、よろしくお願いします」(Karyu

 

 

 

 

 

(文・村上孝之/写真・春川眞)

 

====================

 

[SET LIST]

 

01. HELIOS

02. HUG

03. BLOOD PIN

04. VENUS

05. -OKI-

06. Marry of the blood

07. DON’T DOUBT

08. DROP

09. BUTTERFLY

10. LOVE THAT NEVER ENDS

11. MEMBER CALL

12. WHO IS THE ROMEO

13. SEEDS

14. HEART

 

En

01. VENUS

02. Flash dancers

03. BLOOD PIN

04. HELIOS

 

====================

 

●H.U.G

 

 

 

VocalryoHOLLOWGRAM/DALLE)

GuitarKaryuAngelo/Luv PARADE/ ex.D’ESPAIRSRAY)

ManipulateKeyboardpercussion:横山和俊(YokodieS)

サポートBassMASASHI (Versailles) 

サポートDrumsTAKEOPIERROT/Angelo)

 

 

====================

 

 

【最新情報】

 

====================

 

 

<ライブ情報>

 

 

■H.U.G Karyu BirthDay Live -CORE-

2023129(

横浜みなとみらいブロンテ (Bronth.LIVE)

https://www.bronth.live/

…………………………………………

開場16:00開演17:00

…………………………………………

[サポートメンバー

BassMASASHI (Versailles) 

DrumsTAKEO (PIERROT/Angelo)

…………………………………………

スタンディング 6,600(税込/D)

全自由 (整理番号順の入場)

3歳以上チケット必要・3歳未満入場不可

[]サイレン・エンタープライズ03-3447-882

…………………………………………

現在、Karyu Official Fan ClubK’RONE」会員様先行予約受付中!

お申込みはこちら

https://karyu-official.com/contents/680512

受付期間:1013()22:001023()23:59

 

 

====================

 

<リリース情報>

 

New SingleCORE』(流通盤)

20231025日(水)発売

CDSIXR-002 1,500(税込)

…………………………………………

<収録曲>

01. HELIOS

02. VENUS

 

 

====================

 

<インストアイベント情報>

 

CORE』リリース記念インストアイベント開催中!

【日程】

…………………………………………

1021日(土)20時~

タワーレコード新宿店

先行販売

…………………………………………

1028日(土)13時~

タワーレコード池袋店

…………………………………………

1028日(土)17時~

littleHEARTS.新宿店

サポートメンバーを含む5名での開催となります。

1028日のみ、MASASHIは欠席となります)

イベント内容はトークイベント+サイン会(A4ミニポスター)を予定しております。

当日の状況により、イベント内容は変更になる可能性もございます。

予めご了承くださいませ。 

 

====================

 

<イベントライブ出演情報>

 

Crazy Monsters Halloween Party 2023

Day.21029日(日)新宿ReNY

出演:Crack6THE MICRO HEAD 4N’SKneklid RomanceKαinH.U.GDacco、クマムシ
司会:NoGoD団長

[H.U.Gサポートメンバー

BassMASASHI (Versailles) 

DrumsTAKEO (PIERROT/Angelo)

…………………………………………

D主催「Mad Tea Party Vol.37

115日(日)新宿BLAZE

出演:DGOTCHAROCKAluzTHE MICRO HEAD 4N’SH.U.G

[H.U.Gサポートメンバー

BassNAOKI (FANTASISTA/ex-Kagrra,)

DrumsTAKEO (PIERROT/Angelo)

…………………………………………

Eins:Vier Presents “KATHARSIS 2023”

1222日(金)赤羽ReNY alpha

出演:Eins:Vier、メリー、H.U.G

[H.U.Gサポートメンバー

BassNAOKI (FANTASISTA/ex-Kagrra,)

DrumsTAKEO (PIERROT/Angelo)

 

 

====================

 

H.U.G OFFICIAL HP

http://hug.bitfan.id

X

https://twitter.com/hug_official89

YouTube

http://youtube.com/@h.u.g

Instagram

https://www.instagram.com/hug_official89/

Karyu Official SITE

https://karyu-official.com

Karyu X

https://twitter.com/karyu_official

Karyu Instagram

https://www.instagram.com/karyu_official_/


2023年10月13日 (金)

【ライヴレポート】<ν[NEU] 14th Anniversary ONEMAN tour【ν[NEU] BEST】>2023年10月1日(日)渋谷REX◆ν[NEU]、過去を今へ繋げていくワンマンツアーがスタート。「今日から今のν[NEU]が始まった気がする」──。

REPORT - 20:00:48

ν[NEU] BEST】ツアーのテーマは、「過去を今に連れて来る」こと。これは20241229日に定めたゴールを迎えるまでの間に、「過去、今、未来」を繋げていく活動の一環でもある。今回、へと連れて来る過去のマテリアルとなるのが楽曲たち。各メンバーのバースデーに合わせて開催する全4本のライブを通して、厳選した過去の楽曲にもう一度息を吹きこもうというわけだ。そこで101日に渋谷REXを舞台に行われたツアー初日は、インディーズ時代に着目したライブとなっていた。

 

ツアーの目的に寄せて、少しだけ過去を振り返ってみた。ν[NEU]というバンドは、ヒィロがリーダーを務めていた前身バンドを起点に、ЯeIが加入した段階でバンド名をν[NEU]と改め、のちにmitsu、タクミ、華遊が加入した経緯を踏まえると、それはそれは長い歴史とたくさんのターニングポイントがあった。その中で、主観ながらも最初の大きな再起を図ったタイミングは、現在のメンバーになった時だったと記憶している。その当時に抱かれた繊細ながらも沸々とした野望を青い希望として記したのが「PULSE」だ。ある意味、今へと繋がるスタートの象徴とも言える「PULSE」が今回のライブの1曲目を飾り、超満員の観客を前にどこか穏やかで堂々たる面持ちのメンバーの姿は、初っ端から胸を打つものがあった。

 

 

 

 

そして、ν[NEU]のテクノ・ポップな音楽性やライブにおける抜群なエンターテイメントの独自カラーが確立した頃、「限界への挑戦」をテーマに飛躍しようとリリースしたのがALBUMLIMIT」だった。そのリード曲「LIMIT」が2曲目にスタンバイしていたのだが、スタートをミスするトラブルによってライブは中断。しばし朗らかなやりとりを挟んで、ЯeIの「『LIMIT』です!」という緩めなタイトルコールから再演したのだが、これは決して忖度ではなく、直前の微笑ましい砕けた展開が有難かった。どうしても過去に対峙するとセンチメンタルな気持ちが起こりがちだが、それが払拭された状態で「LIMIT」中のブレイクやバンドサウンドが強調された演奏に乗せて、歌メロを流暢に歌い上げるmitsuの歌からなる楽曲のポテンシャルを高めたアプローチをフラットに堪能できたからだ。当時、“6人目のメンバーと謡っていた同期(シンセサイザー)の存在は程よく曲にアクセントを持たせるだけの存在となり、現在はバンドサウンドに重きが置かれている。それによって生まれるグルーヴが、「GoSick」でも存分に活きていた。

 

 

 

 

 

ここで長期に渡って眠っていた、いわばレア曲が登場。名乗りを上げたヒィロが「Signal」をタイトルコールすると、イントロが鳴り出した瞬間に悲鳴にも似た歓声が上がる。よりソリッドにブラシュアップされた演奏に耳を傾けながらハッとしたのは、当時の心境で書かれた歌詞が、どこか現在の彼らにリンクしていたこと。始まったからこそ答えを求めている。そしてそれは、導かれる運命の先にあったことなのかもしれない。「エコー」へと続けば、記憶に刻み込まれた振り付けで音が鳴れば自然と体が動くもので、さらにν[NEU]ならではのテイストでヴィジュアル系の世界観で描いた「壊れた夜、並べた嘘」でもヒートアップ。「ゆびさき」のように艶めかしさとノスタルジックさを交えた表情も、素直に懐かしい。そんなインディーズ時代から蘇らせた楽曲だからこそ強く感じたのは、歌いたいように、演奏したいようにやるという、回顧だけではなく更新を目的とした今のν[NEU]が演奏する意義。あの時できなかったことができるようになった経験を重ねた今だからこそ、楽曲を最良の形で同じ時間軸に並べることが「過去を今に連れて来る」ことの最大の目的なのだ。

 

 

 

 

久しぶりな楽曲が続いたところで、終盤にはお馴染みの曲たちを並べたゴールデンタイムが用意されていた。やはり「YESNO」や「cube」の瞬間的な熱量は見事で、「in my secret…」では「張り詰めた空気さえ楽しむことができちゃったらЯeIぽんにおめでとうとか言えちゃうんだよね!?」と歌い替えながら、コールアンドレスポンスで誕生日のЯeIを「おめでとう!」とお祝いする場面も。再び「LAB」や「妄想接吻」、「ピンクマーブル」といったν[NEU]のライブに欠かせない楽曲の力も存分に見せつけていく。

 

 

 

熱を帯びた会場を再びエモーショナルな空気に包んだのが、「New World」だった。冒頭で振り返った通り、現メンバーでの活動開始時「PULSE」に並んで世に放った曲だ。

 

もう二度と 決してもう二度と もう二度と 諦めない

 

このフレーズを耳にする度に、バンドの、あるいはメンバーそれぞれが幾度となく再起を図り、決して負けまいと生きてきた彼らの人生を歌っているようで、勝手ながらν[NEU]そのものを表すテーマソングのように位置付けてきた。そんな曲をこの日、mitsuは「ν[NEU]らしい曲」と笑顔で言った。それは、積み重ねてきたことは何一つ無駄ではなかったと確信へと変えるには十分な一言だった。

 

 

 

 

 

クライマックスを飾った「スプラッシュ!」こそ、実はν[NEU]がバンド名を改めた頃から存在している曲で、かなり長い時間をバンドと共にしてきた曲でもある。優しい旋律が琴線を震わす、文字通り思いが溢れる曲。ヒィロは笑みを浮かべ、mitsuとタクミはЯeIのもとに歩み寄って行き、サポートを担っている夢時がタクミへ優しいまなざしを向けながら2人揃って楽し気にユニゾンを繰り広げる――この曲が演奏された5分ほどの間に、胸がいっぱいになるシーンが詰まっていた。ν[NEU]が復活して以降、責任感が強いメンバーだからこそどこか緊張の糸が張っていたように感じていたが、それがふと緩んだ日でもあったように思う。きっと、バンド=楽しいと心から感じながらステージに立ってていたんじゃないだろうか。

 

「今日から今のν[NEU]が始まった気がするんです」――mitsu

 

この【ν[NEU] BEST】というツアーは、次回はインディーズ&メジャーを、ラストはメジャーと回を重ねることでν[NEU]過去をすべて追っていく。そして、この日の終演後には2024年に「タイムカプセル」と題した主催ツアーを発表した。過去を今へと繋げる今年いっぱいの活動を経て、2024年は今を未来へと繋げていく。この日、ν[NEU]が過去を更新する姿を目の当たりにしながらも、「コレはきっと変わらないんだろうな」と思ったのは、志高く強靭な心を持って何度でも突き進む起点を作れるということ。そういう希望を持ったバンドなのだ、これまでも、これからも。

 

 

 

 

写真◎Intetsu

文◎平井綾子

 

 

====================

 

<セットリスト>

 

1.PULSE

2.LIMIT

3.GoSick

-MC-

4.signal

5.エコー

6.壊れた夜、並べた嘘

7.ゆびさき

8.YESNO

9.cube

-MC-(メイン)

10.in my secret…

11.LAB

12.妄想接吻

13.ピンクマーブル

14.New World

-SMC-

15.スプラッシュ!

 

 

====================

 

▼ν[NEU] Official Site

http://neu-official.com/

▼[NEU] Official X

https://twitter.com/neu_official/