2021年06月02日 (水)
【ライヴレポート】<NOCTURNAL BLOODLUST 2 DAYS ONEMAN LIVE “NEW WORLD ORDER”>2021年5月25日(火)・26日(水)SHIBUYA PLEASURE PLEASURE◆3カ月ぶりの有観客ライヴを二夜連続で敢行!規制の伴う環境下で示された、“今”を象徴する研ぎ澄まされた整合感。
REPORT - 18:00:40NOCTURNAL BLOODLUSTが3カ月ぶりの有観客ライヴを二夜連続で敢行!
規制の伴う環境下で示された、“今”を象徴する研ぎ澄まされた整合感。
そして9月には新作シングル発表とともに都内6公演を実施!
5月25日と26日の両日、NOCTURNAL BLOODLUSTが、東京は渋谷のPLEASURE PLEASUREにて、『NEW WORLD ORDER』と題された二夜公演を実施した。
緊急事態宣言下、当然ながらこうした興行には依然としてさまざまな規制が伴い、観客数を制限しながらの開催となったが、両日とも発券数とほぼ同数の熱心なファンが詰めかけ、第二夜は完全ソールドアウトとなった。
昨年12月にはミニ・アルバム『The Wasteland』の発売を経て、新布陣でのお披露目となる配信ライヴを行ない、さらに今年の2月には東京・Veats Shibuyaにて『THE DAWN OF A NEW AGE』と銘打ちながら有観客での昼夜二回公演を実施している彼ら。
このご時世にあって比較的コンスタントなライヴ活動ができていると言って差し支えないはずだが、そもそもスタンディング形式のライヴハウスを主戦場としてきたバンドだけに、椅子の並ぶ環境で演奏すること自体に彼ら自身が少なからず違和感をおぼえていたに違いない。
PLEASURE PLEASUREは、かつて映画館だった場所でもあり、当然のように座席が固定された状態にある。
2階席もあり、いわゆる小ホールといった雰囲気だ。その場内、観客はほぼ一席おきに並び、開演前のアナウンスでは「起立しての観覧はOKだが、所定の席の場所から動いてはならない」というお達しが。
そしてもちろん場内でもマスク着用が義務付けられ、大声を発することも禁じられている。
もはやそうした新常識にも慣れているはずではあるが、ある意味これは観客側にとって拷問に近いものだといえる。
なにしろ目の前の5人から放出される爆音に浸ることはできても、そこでステージに駆け寄ることはおろか、叫ぶことすらも叶わないのだから。
冒頭、筋肉の鎧で完全武装したフロントマンの尋は「東京、暴れる準備はいいか!」と扇動的な声をあげたが、観衆はそれに声で反応することができない。
しかも、そこで本当にフィジカルな意味で暴れることは許されないのだ。
しかしNOCTURNAL BLOODLUSTは、そうした“世界の新たな秩序”に則りながら、今、この状況下で可能な限り刺激的で挑発的なライヴをやり遂げたと言っていいだろう。
二夜を通じ、そのライヴ・パフォーマンス自体に極端な具体的差異はなく、演奏曲の顔ぶれも多くは共通していたが、その序列は大胆に入れ替えられていた。
敢えて言うならば第一夜は起伏に富んだドラマ性が、第二夜は勿体を付けずに畳みかけるような攻撃性が重んじられていたが、そこで双方に共通していたのは、このバンドの“今”がリアルに伝わってくることだった。
当然ながら、この顔ぶれでの最初のCDとなる『The Wasteland』に収録の6曲、そしてその発売前に配信リリースされていた“Life is Once”、“ONLY HUMAN”、“Reviver”といった正真正銘の最新曲たちがライヴの軸となっていたが、興味深いのは、そこに織り交ぜられた従来の代表曲の数々が、遠い過去のものには感じられなかったことだ。
ValtzとYu-taroという新たなギター・チームによって再構築されたそうした楽曲群は、あからさまにアレンジが刷新されているわけではないのに、生まれ変わったかのような新鮮な響きを伴っていた。
かつて、ある種のいびつさを持ち味としていた楽曲が整合性を増し、より鋭利なものとして研ぎ澄まされているという印象でもあった。
しかも現体制になってから生まれた楽曲のいくつかは、すでにライヴにおける立ち位置を確立しているように感じられ、連なる楽曲同士が相乗効果めいたケミストリーを引き起こし、実際のテンポ以上の体感スピードを醸し出すようになっていた。
それゆえに約90分に及ぶ経過が、とても早く感じられた。
第二夜の終盤には、9月に新たなシングルがリリースされる予定であること、そして同月に都内で全6本ものライヴを行なう計画が固まっていることが尋の口から告げられ、オーディエンスは歓声の代わりに大きな拍手で喜びの意思表示をしていた。
その時期にライヴ会場がどれほどの自由を取り戻せているのかは、推定のしようもない。
そこでバンドと観衆の双方が解き放たれることになるのか、それともやはり“世界の新たな秩序”に縛られたままなのか?
もちろんその答えが前者であることを願いたいものだが、ハードコア・オーケストラとでも形容したくなるほどに機能的な構築美が感じられたこの二夜のライヴ・パフォーマンスを判断材料とするならば、仮に後者のような状況が続いていようと、5人はさらなる進化をその場で披露してくれることになるものと想像できる。
だからこそ、当たり前の自由さを手に入れた時の彼らがどのような混沌を巻き起こすことになるのかが、楽しみでならない。
写真◎nonseptic inc.
文◎増田勇一
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■NOCTURNAL BLOODLUST 2 DAYS ONEMAN LIVE “NEW WORLD ORDER”
5月25日(火)・26日(水)SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
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<5月25日(火) SETLIST>
1. The Wasteland
2. FACELESS
3. ZeTeS
4. Malice against
5. Punch me if you can
6. 銃創
7. Life is Once
8. ONLY HUMAN
9. BREAK THIS FAKE
10. REM
11. Left behind
12. Feel myself alive
13. Ignis heart
14. VENOM
15. Liberation
16. Deep inside
17. Reviver
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<5月26日(水) SETLIST>
1. BREAK THIS FAKE
2. Malice against
3. 銃創
4. Punch me if you can
5. PROPAGANDA
6. ONLY HUMAN
7. REM
8. the strength I need
9. Left behind
10. The Wasteland
11. FACELESS
12. Life is Once
13. Liberation
14. Deep inside
15. VENOM
16. Reviver
EN
Pleasure of Torture
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<NOCTURNAL BLOODLUST INFORMATION>
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★2021年9月1日 NEWシングル発売決定
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【初回限定盤(CD+DVD)】
価格:5,350円(税込) 品番:DCCA-1052/1053
仕様:二つ折りデジパック仕様/8pブックレット
<CD> 3曲収録予定
<DVD>
NOCTURNAL BLOODLUST “SPECIAL ONLINE LIVE”収録
※2020年12月20日に行われた新体制での初のオンラインライブを完全収録!
《収録楽曲(全16曲)》
1 Life is Once
2 ONLY HUMAN
3 THE BEGINNING
4 銃創
5 Punch me if you can
6 VENOM
7 PROPAGANDA
8 REM
9 ZeTeS
10 Malice against
11 the strength I need
12 The Wasteland
13 FACELESS
14 Left behind
15 Feel myself alive
16 Reviver
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【通常盤(CD)】
価格:1,500円(税込) 品番:DCCA-1054
仕様:ジュエルケース/8pブックレット
<CD> 3曲収録予定
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■9月、6DAYS LIVE開催決定
詳細は後日発表
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■『NOCTURNAL BLOODLUST – 2021.2.23 LIVE DIGEST MOVIE』
オフィシャルYouTube https://youtu.be/AU4JnCuVrMs
■Mini Album「The Wasteland」発売中
【初回生産限定盤】(デジパック仕様) DCCA-76 2,750円(税込)
【通常盤】 DCCA-77 2,750円(税込)
販売サイト https://linktr.ee/TheWasteland
配信サイト https://ncbl.lnk.to/TheWasteland
オフィシャルYouTube “FACELESS (MusicVideo)“ https://youtu.be/oXNhrT6GiIM
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NOCTURNAL BLOODLUST
Official Web site http://www.nocturnalbloodlust.com/
Official Twitter https://twitter.com/nokubura
Official Facebook https://www.facebook.com/pg/nocturnalbloodlust
Official Instagram https://instagram.com/ncbl_official_jp/
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2021年05月28日 (金)
【ライヴレポート】<HOWL>10月1日、渋谷WWWでの3周年記念公演を発表したHOWL。決意を込めて開催した5月8日の無観客ライブ@西永福JAMの模様をレポート!
REPORT - 19:00:17今年の秋、結成3周年を迎える4人組ロックバンド、HOWL(真宵:Vo、よっぴ:G、ゆうと:B、yuki:Dr)。エモさ溢れるハードチューンからダンスナンバー、超キャッチーなポップロックまでこなす、幅広い音楽性が持ち味だ。
圧倒的な歌メロのよさに加え、聴く者をポジティブな気分にさせるライブパフォーマンスで、ジワジワとファンを増やしている。2.5次元レベルと評されるメンバーのビジュアルも大きな人気要素だ。
そんな彼らが3周年アニバーサリーに向け、攻めのスケジュールを発表。
その第1弾が5月8日に西永福JAMで開催されたワンマンライブ“ボクラノシンフォニー”である。
当初はガイドラインを遵守した上で前売りチケット購入者&当日来場者(=入場無料)を入れての有観客、さらには配信も行う予定だった。
当日券を無料にしたのは、自分達のファンでなくとも、気軽にライブを体験して欲しかったからだという。
だが、4月25日、東京都に緊急事態宣言が発出される。結果、“ボクラノシンフォニー”は配信のみのライブに変更を余儀なくされた。
これも、コロナ禍における音楽活動の難しさということか。さらに、追い打ちをかけるようにドラムのyukiがコロナに感染(ちなみに無症状)するという事態も降りかかる。
ただでさえ、心折れる状況だが、PCR検査で無事に陰性が証明された他の3人は、yukiのドラムを打ち込みで流す形での配信ライブを敢行!
転んでもただでは起きないメンタルの強さを見せた。
無観客配信とはいえ、彼らは気合十分! ライブのスタート時間(18時30分)の直前には、全員がステージにスタンバイ。
真宵が「今日は3人ですけど……」と前置きしつつも、円陣を組み、元気に掛け声で気合を入れる。
こうして、3人だけという逆境の中、現状打破をポップに歌い上げる「ふぁぼって人生。」で配信がスタート。
2曲目もファンキーなサウンドをフィーチャーした「迷宮ディスコニック」で、アゲアゲな展開。
観客がいたら、一気にテンションが爆発していたに違いない。
最初のMCで真宵は東名阪のツアーファイナルであり、3周年記念のワンマン公演となる渋谷WWWでのライブを正式発表したことについて、「WWWの前でアー写を撮ってみました!」と語り、本日欠席のyukiについても「さっき電話したし、とにかく(みんなに)安心して欲しいです」と報告。
そして、その流れで究極の自己肯定応援ソング「生きてるだけで褒められたい。」へ。
ポップなノリで盛り上げたあとは、「honey❤︎drunker」や「極楽浄土」といった、アグレッシヴなサウンドでハードな側面を見せていく。
ただ、どれだけエモい楽曲でも、必ずサビには印象的なメロディーを乗せ、あくまでキャッチーな曲に仕上げているのはHOWLらしいところ。
6曲目の「メルティナイト」は、雰囲気を変えてミディアムナンバーを披露。真宵が甘く歌い上げる。
彼らのレパートリーには、気持ちのいい転調も多いのだが、この曲でもサラリと転調を取り入れている。
激しい曲でも、決してグロウル(いわゆるデスボイス)に逃げず、クリーンな歌声で勝負する真宵の良さが出た楽曲だ。
その佇まいからヴィジュアル系にカテゴライズされる彼らだが、もはや2.5次元系と言えそうな華やかさは大いなる武器だろう。
中盤のMCタイムでは、自宅で配信を見ているyukiと電話をつなげて生トーク。
「生きてるよ! 元気だよ! 今日は中華丼食べました」というyukiの明るい声にファンも安堵したに違いない。
さて、ここからは後半戦。
「An inch ahead」「先天性君症候群」など、グイグイくる楽曲でメンバーの演奏も熱を帯びていく。ちなみに「An inch ahead」では配信画面に自宅でドラムを叩くyukiが登場。嬉しいサプライズとなった。
遠隔ながらフルメンバーになったことで、よっぴ、ゆうとも絡んだり、動き回ったりと、有観客さながらの熱演を繰り広げる。
9曲目の「PRAYER」はキラキラのサウンドながら、聴き手に寄り添う歌詞が印象的。
“「君が信じた僕を信じたい。」また走り出すための 理由なんてもうこれで十分だ”……そんな歌詞が染みる。
その後、ライブ告知の映像が流れたあと、「#prologue」へ。
「仕合せとか不仕合せ なんて超えられた場所で 僕らはまた歌おう」という歌詞そのものが、大きな決意表明となって響いていく。
続くMCタイムには、改めて各メンバーから10月1日の渋谷WWWに向けての意気込みが飛び出す。
yukiは再度電話の向こう側からリベンジの意味も込め、「yukiバ(6月2日@渋谷MilkyWayでのbirthdayライブ)も、WWWの前の無料ワンマン(7月&8月)もツアー(9月14日@西永福JAM、9月21日@名古屋今池3star、9月23日@大阪アメリカ村Clapper)も楽しみ!」と語り、ゆうとは「やっと夢への第一歩!」、よっぴは「結成3年以内で(WWWを)やろうと決めてた。4月3日のソールド(@池袋BlackHole)があって、やっとつかめた夢! 一緒に夢をかなえたいと思います!」と、思いを語った。
真宵は「キャパが大きくなって大変だけど、絶対(WWWを)ソールドさせたい!」と力強く断言し、ラスト2曲の「愛情絶対値」と「ボクラノシンフォニー」へつなげる。
「ボクラノシンフォニー」は銀テープの演出が似合うブチ上がるナンバー。
画面の向こうのファンも、次なるライブに向けての思いが、一層高まったのではないだろうか。
コロナ禍によって予定が立てにくい世の中ではあるが、逆境にもめげずに未来を見つめる若きバンドマン達の決意は清々しい。
“生きてるだけで褒めてくれる”ようなHOWLの音楽が、ますます大きな場所で、そして多くの人達の前で響く未来に期待したい!
【取材・文:海江敦士】
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OFFICIAL WEBSITE
公式 @HOWL_staff
Vo.真宵:@myi_howl
Gt.よっぴ:@yoppy_howl
Ba.ゆうと:@yuto_howl
Dr.yuki:@yuki_howl
2021年05月24日 (月)
【ライヴレポート】<SHAG初配信ライヴ『LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE Ⅲ ~THE SHAG STRIKES BACK~』>5月20日(木)◆SUGIZOが5人の偉才と共に即興演奏を繰り広げるサイケデリック・ジャムバンド。即興音楽プロジェクトの域を越え、刺激に満ちた前衛クリエイター集団へ──。
REPORT - 11:55:10SUGIZOが5人の偉才と共に即興演奏を繰り広げるサイケデリック・ジャムバンドSHAGが、5月20日(木)、初配信ライヴ『LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE Ⅲ ~THE SHAG STRIKES BACK~』を開催した。
SUGIZOがSHAGを立ち上げたのは2000年代初頭に遡り、当初は主にクラブ&レイヴシーンで活動していたが、2020年12月に再編成のうえ再始動。新生SHAGはよりドープで過激なジャズロックのインタープレイに注力している。
アンコールを除いてMCもなく本編はノンストップで約1時間。コロナ禍により無観客という制約下だったが、会場で繰り広げたスリリングでアグレッシヴなパフォーマンスが生んだ熱量は、画面越しでもしっかりと感じ取ることができた。
定刻を15分ほど過ぎて配信画面が会場映像に切り替わると、円を描く形で位置に就いているメンバーたち。
SUGIZOの右隣は、元Yasei Collectiveの才人でパジャマ姿が異彩を放つ別所和洋(Key)、その隣は4月開催の『SUGIZO LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE II~VOICE OF LEMURIA~』に続く参加となった類家心平(Tp)、SUGIZOの対面に位置するのは超絶技巧を誇る若き才能・松浦千昇(Dr)、そして初期からのSHAGメンバーである屈指のベースヒーローKenKen(Ba)、SUGIZOソロライヴでもお馴染みのパーカッショニストよしうらけんじ(Per)という、SUGIZOが全幅の信頼を寄せる布陣である。
首領に指された松浦がドラムを強打し始めると、思い思いにテンション最高潮のフリージャズ的アドリブをぶちまけるメンバー達。
SUGIZOはギターのフィードバック・ノイズを轟かせたかと思えば、剣状のリボンコントローラーに指を滑らせてモジュラーシンセサイザーを操作。メラメラと炎を立ち昇らせるようなジェスチャーを両手でしてみせて、メンバーのテンションに着火の合図を送る。のっけから狂気全開、異界の扉が開いたようなインパクトだった。
SUGIZOソロの最初期曲群「SPERMA」、「THE CAGE」は原曲が宿す狂気を増幅させたような、パワフルなセッションを展開し、一気にその世界へと引き込んだ。
3曲目の「FATIMA」で青い光の幻想空間へと切り替わると、冒頭で別所のRhodesとSUGIZOのヴァイオリンで物憂げな旋律を奏でる。インタープレイが積み重なっていくうちにファンクやソウルの匂いが立ち昇り始め、曲が思わぬ表情を見せていく。
終盤はギターに持ち替えて思いの丈を歌い上げるようにソロ演奏で魅了。
その後KenKenによる圧倒的ベースソロ、オーラスは神秘的なピアノとクリアトーンのギターで曲を締め括った。
そしてミニマルな現代音楽的アプローチで生まれた電子音楽「Raummusik」へ。原曲では抑制的なグリッチ的ビートが高揚を生んでいくのだが、この日のパフォーマンスでは別所のピアノの躍動的なフレーズや類家のトランペットのノスタルジックな通奏音、よしうらと松浦による打楽器バトル、それに絡まるKenKenのベースラインが加わって全く異なるニュアンスを付与。
それに呼応するようにSUGIZOも情緒的なアドリブを決め、総体として新曲であるかのような変貌を遂げていた。
セロニアス・モンクによる永遠のスタンダード「Round Midnight」のカヴァーは月の満ち欠けを表現する映像と併せて類家、別所、SUGIZOによるムーディーに哀切を帯びて幕開け、そのまま「Initiation of Rebellion」へ。
KenKenと松浦が牽引する圧倒的ドープなダブ世界。
この時点で既に、曲ごとの切れ目に対する意識や時間の認識がいつしか失われてきており、そこで鳴っている音にただただ陶酔していたのだが、「D Jam」でそのトリップ感覚は更に深化。SUGIZOの手振り身振りや合図となるフレーズだけを事前に共有し、メンバーはその瞬間の自身のフィーリング、そして相手の音から触発されて生まれた音を次々に、生き生きと畳み掛けていく。
本編最後は、SHAG再始動にあたり大きなインスピレーション源となったマイルス・デイヴィスの「Bitches Brew」のカヴァー。
同曲が収録された同名アルバムはジャズとロックを融合させより高みに昇華した金字塔であり、音楽が社会に対する反骨精神と密接に結びついていた約50年前のアティチュードを今こそ取り戻すべき、というSUGIZOの思考を象徴する作品でもある。
メンバーは幾度も顔を見合わせ互いの呼吸を感じ取りながらタイミングを掴み、音を一斉に鳴らしたり時にはあえてズラしたりして、スリリングな即興演奏を展開。その瞬間にしか生まれない合奏の形は予測不能で、だからこそ尊く、その熱量は画面越しにも有り余るほど伝わってきた。
一旦ステージを去った後再登場すると、SUGIZOは「師匠・近藤等則氏、去年惜しくも亡くなりました。巨匠に向けてこの曲をお届けしたいと思います」と紹介し、アンコールとして「PRAY FOR MOTHER EARTH」を披露。氏と共に生み出した深遠で壮大なバラードである。
即興演奏の真髄を学んだ偉大な師に捧げるレクイエムは物悲しくもドープなグルーヴが心地よく、映像と照明による相乗効果も素晴らしく、魂が光に包まれ、宇宙の涯に還っていく旅路を幻視するかのようだった。高揚と静けさの共存する空気感の中で、SHAG初の配信ライヴは幕を閉じた。
結成30周年を迎えたLUNA SEAのメンバーとして、X JAPANの一員として、加えてソロアーティストとしても途切れなく活動を続けており多忙を極めるSUGIZOが、2020年代に再始動させたこのSHAGというプロジェクト。
ロック、ジャズ、ファンク、ソウル、ニューウェーブ、あらゆるジャンルを分け隔てなく混ぜ合わせ、より自由なインプロヴィゼーション表現を繰り出すジャムバンドは他に類を見ない存在だ。
また、この日ヴィジュアル面を一手に担ったVJは初期SHAGを長く手掛けてきた鬼才高岡真也、そしてミキシングはSUGIZO達が全面的信頼を寄せる日本ダブ界の巨匠Dub Master X。
彼ら英俊豪傑を擁したSHAGは即興音楽プロジェクトの域を越え、刺激に満ちた前衛クリエイター集団になりつつある。
愉楽の坩堝のような音のサイケデリアに身を委ねるのが心地良いだけでなく、再始動の背景には、上述のようにSUGIZOが社会に投げ掛ける真摯な問題提起もある。
コロナ禍で一層分断が進み差別が蔓延するこの時代に、真の自由と人権を求めるうえで音楽は欠かせない存在である、というSUGIZOのメッセージに耳を澄まし、今後一層活動を加速していくSHAGの次なる動きを注視したい。
本配信は2形態のチケットが発売中で、いずれもアーカイヴ視聴が可能である[※日本時間5/27 23:59まで。チケット購入は同日21:00まで]。
形態①は、LIVE配信視聴のみの通常チケット(¥4,500)、形態②はLIVE+アフタートーク配信を視聴でき、全メンバー直筆サイン入り生LIVE写真セット(集合+各ソロの計7枚)が特典として付くチケット(¥10,000)となっている。
アフタートークでは終演直後にSHAG全員で初座談会を実施。
視聴者からリアルタイムで寄せられたコメントを紹介しながら、ライヴの感想やSHAGの魅力、メンバー同士への想いを語った貴重なトークが繰り広げられていたので、是非ご覧いただきたい。
Text by Tae OMAE
Photo by Keiko TANABE
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▼SUGIZOオフィシャルサイト
▼SHAG特設サイト
https://sugizo.com/feature/THE_SHAG_STRIKES_BACK