DEZERT 野音開催記念!
フロントマン・千秋 × メンバー対談企画

<第2弾:千秋 × Miyako>
MoranからDEZERTへ、Miyakoと千秋の7年間とは。

──6月18日にDEZERTにとって史上最大キャパとなる、日比谷野外大音楽堂での[DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”]を前にしたバンド内対談第2弾ということで、今回は千秋くんとMiyakoくんにお話をうかがって参りたいと思います。
ちなみに、先だって5月1日には[DEZERT LIVE TOUR 2022 “再教育ツアー”]が名古屋ダイアモンドホールにて締めくくられましたけれど、あの日のアンコールでは「2015年にMiyakoくんが加入したタイミングで作られた未音源化楽曲」として「ともだちの詩」が久々に演奏されていましたよね。

千秋:あれはわりと久しぶりにやった感じではありました。

──その「ともだちの詩」は、もともと2016年1月に発表されたアルバム『最高の食卓』に収録される予定があったそうで、事実2015年10月時点でインフォメーションされた公式サイトのニュースでは「ともだちの詩」が収録曲のひとつとして挙げられてもおりました。今さらではありますけれど、この曲が『最高の食卓』に入らないまま未だに音源化されていない理由について教えていただくことは出来ますか?

Miyako:あれ、何でだったんだっけ?

千秋:何だっけなぁ。一応、ドラムRecとヴォーカルRecはしたんですよ。でも、ギターRecはしてなくて。でも、そんなにたいした理由ではなかった気がする。

──Miyakoくんも、当時ギターRecをしなかった理由は覚えていないですか?

Miyako:いやー、ほんとに覚えてないんですよねぇ。というのも、俺がDEZERTに加入したのってまさに『最高の食卓』のレコーディングの真っ最中だったから、なんならアルバムに収録予定だったということ自体も、今ここで言われるまで忘れてましたというくらいのあやふやな記憶しかないんです。
ただ、加入するってなった段階でもらったデモみたいなものに「ともだちの詩」が入っていたこと自体は今でも覚えてます。

──そうした「ともだちの詩」を、先日のツアーファイナルで唐突に演奏することになった理由は何だったのです?

千秋:なんでだろ?それもそんなに大きな理由はないよ。そうだったよね??

Miyako:うん、特別な理由はなかったよね。

千秋:だいぶ時々だけど場合によってはやったりもするし。でも、おそらく東京以外でやったのは初めてだったのかな。当時は自分にとっての日記みたいなものとして作った曲で、ちょっと『最高の食卓』の方向性とは違うっていうんで入れなかったけど、良い曲だしたまにはやってみる?っていう存在の曲ではあるんですよね。

──将来的に、千秋:今後音源化する可能性はあるのですか?

千秋:どうかなー。あんまりするつもりはないけど。

Miyako:前にさ、『TODAY』(2018年発表のアルバム)に入れるっていう話が出たことはあったよね。その時はギターも録ったんです。だけど、その時も結局は入らなかったっていう。

──もはや、幻の未発表曲になっていると言えそうですね。そして、あれが約7年前のことだと思うと時の過ぎるのはつくづく速いものです。

Miyako:あっという間ですね。もうそんなに経ってたのか、って思います(笑)

──Miyakoくんは『最高の食卓』の制作中に加入されたとのことでしたが、ただでさえ既存のバンドに新加入するのは一筋縄ではいかないことであるはずで、当時はやはりいろいろと苦労も多かったのではありませんか。

千秋:まぁ、正式加入になったのがレコーディング中だっただけで、既にその前の8月にはサポートで参加してくれていたんですよ。2015年の9月にやった(赤坂)BLITZ前には一緒にスタジオ入ってたもんね。

──前任ギタリストの方が脱退されたのがそのBLITZ公演でしたから、それ以前から水面下では旧体制と新体制が同時進行していたわけですね。

Miyako:そうなんですよ。当初はサポートで入っていて、あくまでも「新しいメンバーが見つかるまではやるね」っていう感じだったんです。

──言い方は悪いですが、腰掛け程度に考えていらしたということですか??

Miyako:というか、あの当時はバンド自体をもうやるつもりがなかったんです。前のバンド(Moran)の解散が決まった時に、自分はそう決めてました。

──Moranの解散ライヴがZepp Tokyoで行われたのも、まさに2015年9月のことでしたね。その後、本当なら「バンド自体をもうやるつもりがなかった」はずのMiyakoくんが、何故『最高の食卓』の制作中にDEZERT加入を決めることになったのでしょう。

Miyako:そこも、けっこうユルい感じだったんですよね。

──MiyakoくんがDEZERTと初めての音合わせをした時の「テレキャスを1本だけ持ってスタジオに現れ、シャラーンと弾いてみせた」というエピソードは、いまだにMCでもネタになるくらいに有名ですが、当時の千秋くんはMiyakoくんに対していかなる可能性を感じていたことになりますか。

千秋:でも、さすがにテレキャスでシャラーンってやられた時はちょっと困ったよ。正直「これ、やる気ないな」「ケンカ売られてるぜ」って思ったもん(苦笑)

Miyako:ふふふふ(笑)

千秋:今だから言えることとして、当時はいろんなギタリストの候補がいたからね。中には、あらかじめ「ぜひ入りたい!」って熱量の高いメッセージをくれてた人もいたし、技術的に凄く上手いメタラーの人とかもいて、実はけっこういろんな人たちがいて並行しながら試しでスタジオに入ってたんですよ。
もちろん、当時のみーちゃんはそのことは知らなかったはずだけど。あれが2015年の夏だったんだよなぁ。

──千秋くんからは「やる気ない」だの「ケンカ売られてる」だのと思われていたようですが(笑)、Miyakoくん自身はDEZERTと初めての音合わせをしにいった際、気持ちの上ではどのようなスタンスでいらしたのです?

Miyako:そこは単純に、テレキャスしかギターを持ってなかったんですよ(笑)。確か、あの時は「絶蘭」とか3曲くらいやったと思うんだけど、別にやる気がないっていうわけではなかったです。

千秋:でも、その段階だとまだMoranが解散してなかったでしょ。だから、それまでは「Moranに集中させて欲しいから、そこまで頻繁には練習出来ない」っていうことも条件として言われて、俺らとしても「それは仕方ないから、とりあえず入れる時はスタジオ入ろうよ」って言ったんですよ。

──そこでひとつ不思議なのは、音楽性の面での折り合いについてなのですよね。Moranがあの頃の界隈においてモダンかつ独特なサウンドを確立していたバンドであったことを思うと、2015年頃のDEZERTにMiyakoさんが加入するのにあたって、ギタリスト的に音の面でのギャップのようなものを感じることはなかったのですか?

Miyako:自分の場合はMoranだけじゃなくて、その前にやっていたバンドでもそうだったんですけど、わりと入るバンドによってギタリストとしてのスタイルは自然と変わっていくというか、絶対にこのスタイルで行きたい!みたいなこだわりはそんなにないんです。
根本的な理念として、自分の身の回りにいる人たちとか、数少ない応援してくれるファンの子たちが「カッコいい」って思うようなバンドで、出来るだけ長くギターを弾きたいという気持ちが一番強いんですね。
当然、その中ではバンドに合わせて自分が進化や進歩をしていくこともあるだろうし、自分がどうしたいかという以上にバンドをよりカッコ良くしていく為にはどうすれば良いんだろう?ということを大事にしたいんです。
だから、DEZERTに関しても特にギャップを感じたりっていうことはなかったですね。

──では、DEZERT側からすると幾人も候補がいた中でMiyakoくんに白羽の矢を立てた理由は何だったのでしょうか。

千秋:バンドとしてのDEZERTは客観的に見ても当時けっこう勢いがあって、ちょうど「これから」っていうタイミングでのメンバー脱退だったから、バイオグラフィ的な部分で「今から入ると叩かれるんじゃないか」っていうことを気にする人がその時は多かったんですよね。
そういう意味での「やってく自信がない」とか、あとは音楽性うんぬんっていうところでも懸念を持たれるケースが多くて。やっぱり、当時から曲はずっと俺が作ってて、アレンジも俺がほとんどしてたから、どうしてもDEZERTではギタリストのアイデンティティが薄くなりがちなところがあったわけですよ。
結局はそれが理由で前のギターが脱退した、っていう部分もあったんだろうし。その点からいくと、ギタリスト候補の中でMiyakoくんだけは「DEZERTの音楽をやりたい」というよりは「バンドをしたい」っていうことを言っていたから、その言葉を聞いて良いなと思ったんです。

──価値観の部分で響きあったわけですね。

千秋:自分で言うのもなんだけど、こういう繊細な俺の性格を知ってる近くにいた人たちは静かに見守ってくれた反面、少し距離のある傍観者とか周囲からは「雰囲気的にDEZERTには合わないタイプのギタリストなんじゃないか」とか「もっと攻撃的な音を出すギタリストを入れた方が良いんじゃないの」みたいな意見もいろいろ聞こえて来てたのは事実だけど、俺としては音楽性とかは関係なく、まずメンタリティの部分ほぼ100パーセントでみーちゃんに決めたと言っても過言じゃなかったです。
それに、あの頃はもうとにかくいろんなことでアタマが一杯だったんですよ。

──いろんなこと、の中身とは??

千秋:だって、発表したのは2015年の12月だったけど夏の時点で約1年後のZepp東京は押さえちゃってたわけだから。メンバーチェンジして1年でどうやってそこまで行けば良いんだろう?っていうことに必死だった俺らからすると、入る前から「DEZERTに入ったら~」みたいにゴチャゴチャ言ってくるヤツはウザくて仕方なかったんです。
そして、みーちゃから「バンドをしたい」って言われた時にあらためて気付いたんですよね。「あぁ、そうか。俺たち、バンドをしたいからこんなに頑張ってるんだよな」っていうことに。そこは大きかった。

──なるほど、そういうことだったのですか。

千秋:必死になって頑張れば頑張るほど、バンドってギスギスした部分も出て来ちゃうからね。でも、あのギタリスト脱退の件に関してSacchanは凄くドライでさ。SORAくんも「まぁ、仕方ないな」っていう感じだったし。あの頃のDEZERTは、俗に言う“揉めるバンド”の階段を順調に上がってたわけ(笑)。そういう時に、みーちゃんから言われたあの一言は今でもよく覚えてる。

──もっとも、そのエピソードは先ほどの「当初はサポートのつもりでバンドをやるつもりはなかった」というMiyakoくんの発言と、矛盾するものでもありませんか。

Miyako:それは、内心ではバンドをしたかったけど、現実的には上手くいかないことが悲しくて出て来た言葉だったんですよ。そもそも、Moranが終わったのはみんながバンドをやりたくなくなったからではなくて…個人個人にぞれぞれ事情があってのことだったところがあって。みんなバンドは嫌いじゃないし、楽器も嫌いじゃないけど、でも続けられないっていう感じだったんです。多分、出来ることならみんな続けたいっていう気持ちもあったんじゃないかな。実際、俺はそうだったし。いろんなことが絡み合って最後は解散となってしまったことが、俺はやっぱり悲しくて。
それだけに、あの頃は「バンドを長く続けられるようなスタンスで一緒にやっていける人たちは、どこにもいないんだろうな」と思ってしまっていたから、その流れで「バンドはもういいや」っていう気持ちになってたんです。

──おいたわしい。当時のMiyakoくんは、イソップ童話の「すっぱい葡萄」に出てくるキツネのような心境になってしまわれていたのでしょうね。

Miyako:だけど、いざサポートで入ってやってみた時にDEZERTのメンバーとだったら、もしかしたら自分が思い描いているバンド、望んでいるバンドをやっていくことが出来るんじゃないか?という希望を持つことが出来たんですよ。
だから、俺は『最高の食卓』の制作途中ではありましたけど、そこで正式に加入することにしたんです。

──もちろん、Miyakoくんは「自分がどうしたいかという以上にバンドをよりカッコ良くしていく為にはどうすれば良いんだろう?ということを大事にしたい」という方ではありますけれど、その一方で正式メンバーともなると、メインコンポーザーでありメインアレンジを手掛ける千秋くんとのやりとりや、ギタリストとしての役割や存在感の部分について、この7年間の間には悩まれた部分もきっと多々あったのではありません?

Miyako:それはいっぱいあります。DEZERTのギタリスト・Miyakoとして何をしていくのが良いんだろう?ってたくさん考えたし、考え過ぎてちょっと気持ちが暗く落ち込んだりした時期なんかもありました。

──具体的に、特にあの場面がしんどかったと思い起こすのは何時頃のことですか?

Miyako:うーん、どのあたりだったろう…あぁ、でもやっぱり[千秋を救うツアー]の頃になるのかなぁ。

──2017年の[千秋を救うツアー]は、ことごとくメンバー全員にとってシンドイものだったのですねぇ。

Miyako:あの時は余計なことまで考えちゃってたな、と今になって思います。考えること自体は大事ですけど、考えてすぐ答えがでるようならそんなラクな話はなくて、考えた上でその方向に進んでもダメなことっていうのがあるじゃないですか。

──おそらく、誰しもそうした経験はあるかと思います。

Miyako:努力はしてるつもりなのに、何をやっても上手くいかない負の連鎖でどんどん自分が孤立…っていうと語弊がありそうですけど、気が付いたら勝手に心の殻の中に閉じこもっちゃってたみたいな。それが、自分にとってもあの時期だったのかな。
加入してから1年後のZeppくらいまでは、別の意味で必死だったんですけどね。まずは曲を覚えなきゃならなかったし、いろいろ大変だったんですけど、Zeppが終わってホールツアーを廻った時には自分でも予想してなかった悪循環にハマっちゃいました。

──しかも、まさに[千秋を救うツアー]の頃は他ならぬ千秋くん自身も自分のことで手一杯だったりしたのではありませんか。

千秋:いや、実はそこはそうでもなかったんですよ。みんな[千秋を救うツアー]はキツかったって言うけど、仲が悪かったとかではなかったからね。普通にツアーの合間には呑みに行ったりしてたもん。人間関係は別に普通だったの。そこはうち、ちょっと変なバンドなんだろうね。
各地でライヴハウスに入って、リハやって、ライヴが始まって、どんどんライヴが進行していくにつれて仲悪くなるっていうんじゃなくて。どういうわけか、バラバラになっていくんですよ。

──それは大変由々しき状態ですね。

千秋:精神的なことで言えば、あの頃は“俺が全部やらなあかん”っていう概念に強く捕われてたのかなぁ。そして、ライヴをやってるとメンバーの足りないところとかは当たり前にあるわけだから、そこが気になってくるでしょ。自分のことは差し置いてね(苦笑)

──そのくらい、当時は視野が狭まっていたのでしょうね。

千秋:だけど、気になったらもうダメなんです。ドラムがこうやってくれないと、未来が見えない!ここでこういうライヴが出来ないと、次のステップに進めない!って、毎回ライヴをやるごとに俺はしゃかりきになっちゃってた。
俺なりに頑張ってるつもりではいたんだけど、こっちの真意が相手に伝わらないと意味がないわけでね。あれは、ほんと良い人生経験になったなぁ。単に“正しい”ことを言っても仕方ない時、仕方ない場面ってあるんです。いくら正論でも、それが伝わらないことには意味ないよねっていうことをあの時期に僕は理解しました。

──バンドはチームプレイあってのものですから、そこに気付くことが出来たのはとても大きな収穫でしたね。

千秋:だけど、俺は当時のみーちゃんとの関わりってほとんど覚えてないの。行きっぱなしのツアーで大阪なんかには10日くらい滞在してたこともあって、そういう間にSacchanとは「どうしようか?」っていうことをよく話してたし、SORAくんとはあんま話してなかったけど、みーちゃんとも話をする機会自体はいっぱいあったのね。「あそこはこういうパフォーマンスが良い」とか「そこはああいう音が良い」とか、細かい話は凄くしたんですよ。
だけど、これも今だから言えることでさ。僕からすると、前任ギタリストに対しては自分の気持ちに余裕がなかったことで上手くいかなかったという後悔というか、心の中に針が刺さっていたところがあった分、みーちゃんに対してはかなり“気を遣ってた”というか。言葉の使い方とかもね。
当時、他のメンバーには平気で放送禁止用語連発でまくしたてるような感じとかしょっちゅうだったけど、みーちゃんには全然そういうことしなかったと思うんですよ。

Miyako:そうだね、俺は言われてない(笑)

千秋:今、俺の記憶にはその気を遣ってたというところだけが残ってる感じなんです。

──ライヴ中に千秋くんがイラつきだすと、その矛先はまずSORAくんに向けられることになり、次にはSacchanにもやや飛び火するものの、何故かMiyakoくんにまでは直接的延焼はしないという構図は見かけたことがあります。
ただし、そこは裏腹でもあって千秋くんとMiyakoくんの間には妙なディスタンスを見てとることも出来たのですよね。

千秋:そこのディスタンスは、今もあると思うよ。それは時間的な面でのディスタンスとも言えるところで、俺とSacchanとSORAくんの3人にはみーちゃんが入る間の歩みがあったわけじゃない?
スタートから2015年にやった赤坂BLITZまでの間に関しては、なかなかこんな歩み方をしていったバンドはいないだろうという進み方をしていたこともあって、お互いに独特の戦友感みたいなものはあるからね。
俺からすると家族より深いくらいのところにいる存在でもあったから、つい勢いあまって「○ね」とか「○すぞ」とか言っちゃったとしても、俺はそこに関して「戦友なんやからしゃあないやん!」っていうスタンスだったんです。でも、さすがに途中から入ってきたみーちゃんにいきなりそういう風には言えないじゃん(苦笑)

──ごもっともですね。

千秋:俺にとってのみーちゃんは、戦友ではなくて純粋にDEZERTのギタリストとしてのイメージが強いんですよ。つまり、この7年間でみーちゃんと俺との距離感がSacchanやSORAくんたちと同じような感じで詰まって来た、みたいなことではないんです。むしろそこは逆。

──逆とはつまり…

千秋:ここ2年くらいで、俺とSacchanやSORAくんとの距離感は良い意味で離れたっていうことですね。いろんなことがあった中で、結果的にそれぞれのメンバーへのリスペクトの気持ちを感じたり、それぞれのメンバーとのちょうど良い距離感を取れるようになって来たのが多分まさに今“ここ”なんだと思う。

──では、念のため。Miyakoくんの側からすると、先ほどお話に出て来た“殻”がピシッと割れたのは何時頃のことだったのかも教えていただけますでしょうか。

Miyako:何時だったんだろう?…あぁ、でも去年の[DEZERT LIVE TOUR 2021 RAINBOW -カメレオンは空を見上げて笑えるか?-]の時とかなのかなぁ。

千秋:あははは(笑)。けっこう最近やんけ!!

Miyako:まぁ、そこまで徐々に徐々にではあったけど(笑)

──第三者側からしてみれば、2018年の『TODAY』あたりでも既にそれ以前に比べれば随分と状況は良くなっているようにも感じていたのですけれどね。

千秋:全然!あの頃だってメチャクチャしんどかったんだから。『TODAY』を出してからその後のホールツアーまで続いていった流れは、その前の「千秋を救うツアー]とはまた別ベクトルでの大変さをメンバーみんなが感じてたはず。あの時期はきっと、それぞれが殻にこもるとか以前に人生そのものを考える期間だったよね?

Miyako:そうそう、そうだったんだよね。でも、去年のRAINBOWツアーでやっとそれも吹っ切れたというか、視界が開けた感じがしたんです。

──事実、MiyakoくんはRAINBOWツアーから今春の[再教育ツアー]にかけて表情も明るく変わられた印象です。それも劇的に。

Miyako:ほんとですか?見え方としてもそういう違いってあるんですねぇ。

──蒸し返しにはなりますが、『TODAY』以降の“別ベクトルでの大変さ”の正体。それは今思うとナニモノだったのでしょうね。

千秋:そこで初めて、バンドとして真剣に“音楽”をやろうとしたから。それが理由だよね。自分たちには足りないものが多過ぎる、っていうことに気付いたんです。もちろん、それは僕を中心にしたところで。それで僕はボイトレに行ったりしたんですよ。

──当時、千秋くんは発声どころか発音からやり直しているとおっしゃっていましたし、バンドとしてもメトロノームに合わせてリズムを淡々と刻むという、基礎の基礎にあたる練習を徹底的にやったと話されていましたよね。

Miyako:うん、そういうのも含めてみんなでいろいろやりました。

千秋:だけど、練習したからってそんなすぐにはバンドって上手くならないんですよ。これが全員10代後半とか20代前半ならともかく、わりともうそれぞれにクセはついちゃってるから、本気で矯正しようとしたら2年くらいかかるんです。そういう意味であの頃はほんと必死だったし、俺の中での音楽的な不満も出て来た時でしたよね。
「ここはカッコ良いけど、ここはこうだと良くないと思う」とか、たとえばSORAくんにも凄い説明したりするんだけど、SORAくん的には「そこが俺の良いところだと思ってるのに」って感じるみたいなことがあったり。みーちゃんに対しても、ピッキングの仕方とかローの音をどう出したらよりカッコ良くなるかとか、相当細かいことまで注文してたし。でも、時間も手間もかけた分あの段階で自分たちのやるべきことがわかった、っていうのはDEZERTにとって大きかったと思う。

Miyako:大変だったけど、そのかわり得たものもたくさんあったよね。あれがありきの今だなって、それは凄く感じます。

──なお、音楽的な変化という点では2019年にアルバム『black hole』が発表されたこともDEZERTにとっては大きなトピックスだったように思います。

千秋:『black hole』はね、あれは…もうこの際だから言っちゃうけど、1周まわってほぼ俺のソロアルバムみたいな作品だったよね。SORAくんは「そういうこと言うなよ」ってよく言うけど、あれは俺があの時やりたかったこと、アレンジも含めて俺が出したかった音を詰め込んだんですよ。自分的には凄く好きなアルバムだった。

──聴き手からしても『black hole』はすこぶる素晴らしい作品でしたよ。

千秋:でも、そこは俯瞰で見たらどうなのかな。DEZERTというバンドに深い愛を持ってくれている人たちからすると、あれはあんまり好きじゃないアルバムだったんじゃないかな?という気もするんですよ。“俺のこと”が好きだったら好きかもね、っていう感じ?
ギターひとつとっても、もちろんみーちゃんが弾いてるけど「俺の言う通りに弾いて」ってあのアルバムはやってもらったから。その結果、最後にマスタリングしてる時には「あれ?なんかこれ、バンドのアルバムとして聴いたらあんま楽しくないな」って思った自分がいたんです。
しかもさ、その頃だとメンタリティ的には復活してたはずなのに、ライヴで『black hole』の曲をやってみたら見事にバラバラなんよ(苦笑)

Miyako:そういえばそうだったね(笑)

千秋:それで、とにかくバラバラだなって感じてる時にちょうどコロナが始まって[天使の前頭葉]が途中で止まっちゃったわけ。そういう意味では、意外と『black hole』はコロナに救われたアルバムだったとも言えるのかもしれない。いろんな意味で、あれは釣り合ってないところのある作品だったから「今じゃない」感が凄いあったよね。

──とはいえ、『black hole』に収録されている「Thirsty?」を聴いた時には個人的にとても痺れましたよ。特にユニゾンのくだりなどは非常に胸熱でしたもの。

千秋:そうね、あの中で言えば「Thirsty?」はみーちゃんがわりとブイブイいわした曲かなっていうのはある。

Miyako:ああいうのは弾いてて楽しかったです。

千秋:「Thirsty?」はみーちゃんのプレイイングとか、バンドとのハマり具合が良かったんだろうね。最近ライヴでずっとやってるっていうのは、そういうことなんですよ。

Miyako:アレンジは千秋くんが持ってきたものだけれども、「Thirsty?」って自分の手にしっくりと来る曲になってるんですよ。あとは、千秋くんがボイトレに通いだしたのと同じくらいの時期から、僕も認知症のお爺さんにギターを教えてもらうようになって、そのことを少し活かせるようになったのも実は「Thirsty?」でしたね。

千秋:そのお爺さんっていうのが、俺のボイトレの先生経由で紹介してもらった人なんだけど凄いんですよ。みーちゃんのこと、すぐ忘れちゃうんでしょ??

Miyako:そう。2週間ごとくらいで会って教えてもらうんですけど、2週間後には大体もう前のことは忘れちゃってて、僕のこともかなり忘れちゃってるんですよね。だけど、ギターだけはバリバリ弾けるんです。俺が知らない海外アーティストのいろんな音楽を教えてもらったり、そのお爺ちゃんのつながりで大先輩の中山加奈子さんと3人でブルースセッションをさせていただいたり、そういう貴重な経験も今の俺にとって大きなものになってます。
ただ、コロナになってからは全然会えていないのでまたいろんなことを教えてもらうことが出来たら良いなぁ、と思ってます。

──そうした身になる経験も踏まえて作られたのが昨年発表の『RAINBOW』であり、今春のシングル『再教育』であったのだと考えると、DEZERTはここまで貪欲に多くのものを取り込みながら進み続けてきたことになりますね。

Miyako:それは今作っている新曲「The Walker」にも言えることで、ここまでに吸収してきたことは凄く活きてると思います。昔と違って答えが出ないようなことで闇雲に悩むことなくなったし、今は霧が晴れた状態で音楽を作れてるんですよ。

──千秋くんからすると、昨今のMiyakoくんの様子を見ていてギタリストとして最も評価したいのはどのようなところですか。

千秋:ムカつかないところ。

──やたらと直截な言い方をされるのですね(笑)

千秋:いやいや、イラっとしないって大事なんですよ。これは俺だけじゃなくSacchanやSORAくんもそうだと思うし、DEZERTにとって凄く大切。何故なら、精神的に安定してたらいろんなことにチャレンジ出来るでしょ。それこそ、武道館を目指すとかそういうことも目標に出来るわけです。

Miyako:武道館はねぇ。そこを通らないことにはその先に進めないと俺は思っているので、まずは大きな目標のひとつにしたいところではありますよね。

──そこに向けての布石として、直近では6月18日にDEZERT史上最大キャパとなる日比谷野外大音楽堂での[DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”]が決定しております。現場では新曲「The Walker」のCDが入場者全員に無料配布されるそうですが、野音ではいかなる光景を生み出したいとお考えです?

Miyako:意味あい的なことからいけば、今度の野音は別に[再教育ツアー]のファイナルではないですけど、去年のRAINBOWツアーも含めてこれまでやってきたことの成果をかたちに出来る場になることは間違いないと思うので、俺としてはそれを全て発揮出来るようにしたいと思ってます。未来が見えるライヴをやって、そこからまた前に進んでいきたいですね。

──完璧なコメントをありがとうございます。最後になりますが、今やこれだけ隙のないMiyakoくんに対して、もし千秋くんが今後に向けてさらに注文したいことがあるとしたら、それは何でしょうか。

千秋:もうちょっと、自分の良さをわかった方が良いんじゃない?とは思うね。Miyakoくんは性格もナイスガイだし、フォルムも細くて面構えもイイのに、本人はそういうところを全然押し出したがらないんですよ。それってもったいないじゃない?

──もったいないですが、Miyakoくんはイケイケガツガツ系ではないですものねぇ。

千秋:でも、ここからはそろそろガツガツいかんとあかんのよ。だから、強いて言うならではあるけどさ。みーちゃんにはDEZERTのアイドルになっていただきたい。

──アイドル性は充分お持ちですよ。そうでなければ、あのような可憐なくすみピンクのスーツをさらりと着こなしたりは出来ません。

千秋:でも、着こなしてるのにしゃしゃっては来ないでしょ。俺としては、もっとしゃしゃって来て欲しいんだよねぇ。せっかくだからそこも殻から出てきて欲しい(笑)

Miyako:じゃあ、今度からはガツガツ男子になろうかなぁ。肉食系ってこと?

千秋:わかった、野音で肉喰いながら登場すればいいじゃん!

Miyako:野音だとお肉とか焼けそうだね(笑)

インタビュアー:杉江由紀


<第1弾:千秋 × SORA>
DEZERT変革の歴史は千秋とSORAの中にあった──。

<第2弾:千秋 × Miyako>
MoranからDEZERTへ、Miyakoと千秋の7年間とは。

<第3弾:千秋 × Sacchan>
千秋とSacchanが語る、DEZERTのリアルな過去とは。


公演情報
DEZERT野音デジフラ

■DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 ”The Walkers”
2022年6月18日(土)日比谷野外大音楽堂

OPEN 16:30 / START 17:30
【チケット料金】前売 ¥6,000(税込)

(問) DISK GARAGE 050-5533-0888


※入場者全員に新曲「The Walker」CD無料配布
●The Walker Project
Documentary of “The Walker”
DEZERT Official YouTubeにて配信中
●特設サイト
https://www.dezert.jp/twp/
●DEZERT YouTube
https://www.youtube.com/c/DEZERTOFFICIAL


●ミザリィレインボウ (JACK IN THE BOX 2021 Live at NIPPON BUDOKAN)


【チケット発売中!】
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