DEZERT変革の歴史は千秋とSORAの中にあった──。
──6月18日にDEZERT史上最大キャパとなる日比谷野外大音楽堂での[DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”]が決定している中、この場では今年で11年目に入ったDEZERTのここまでの“歩み”について、千秋くんとSORAくんのおふたりにいろいろと語ってみていただきたいと思います。
SORA:そうか、もう11年なんですねぇ。実は僕、初期DEZERTとは1回ブラホ(池袋・Black Hole)でタイバンしたことがあるんですよ(笑)
──DEZERTが始動したのが2011年9月で、SORAくんがDEZERTに加入したのは翌年2012年3月でしたから、その間の出来事になるわけですね。
SORA:当時、俺はXodiacKというバンドをやってたんですよ。それで、その時はDEZERTから打ち上げに誘ってもらったんだけど、俺らのバンドしか行かない感じになっちゃってて人数集まらなかったから、結局は中止になったのを今でも覚えてる(笑)。だから、千秋と初めて話したのもその時だったんです。「ごめんね、誘ったのに中止になっちゃって」って言われて。あぁ、凄い気さくな人だなって思ったな。連絡先も、その時にブラホの楽屋で交換しなかった?
千秋:うん、まだSORAくんが楓くん(XodiacK在籍時の名前)だった時にね(笑)
SORA:ふたりとも、まだガラケーだったし(笑)。そこでメアド交換して「飲みに行こーや」ってなったんですよ。
──その頃は、一緒のバンドをやることになるとは想定していなかったわけですよね。
千秋:いや、俺としては想定してました。あの頃、DEZERTにはドラムがいなくてサポートを入れてライヴをやっていたので、うちとしては当然「ドラマーをちゃんと入れたいよね」っていう気持ちはありましたから。でも、そうは言っても誰でもいいわけじゃない。長い目で見て良い人材がいたら欲しいなと思っていた時に、ほぼ同世代だけど僕よりちょっと若くていいドラマーとして俺はSORAくんの存在を認識していたし、ちょうど彼のいたバンドも活休になるらしいっていうタイミングだったから、結論から言うとまずはサポートとしてDEZERTに参加してもらうことにしたんです。ただ、その時Sacchanは最初「ヤだ」って言ってましたけどね(苦笑)
──なんなら、去年とある雑誌で『RAINBOW』についての取材をさせていただいた時でさえも、Sacchanはいまだに「僕とSORAくんはそもそも性格が合わないですし、今回はSORAくんの音をまず理解するところから音源制作を始める必要があった」という旨の発言をされていましたよ(笑)
SORA:でしょうね。Sacchan、俺みたいな人はきっと好きじゃないと思う。
千秋:だけど、俺は「SORAくんが良いと思うから」っていうんで誘うことにしたんです。でも、あの当時って同時に他のバンドからも誘われてたみたいで。迷ってる感じだったから、それに対して俺がHOLIDAY(新宿歌舞伎町のライヴハウス)でブチ切れたこともあったんですよ。「いいよ、そんな迷ってるヤツなんかいらねーよ!」って。
SORA:そうそう、そんなこともあったねぇ。まぁ、これは今だから話せることですけど。XodiacKをやってた当時の僕は18歳くらいで若かったし、アニメの『ONE PIECE』じゃないですけどヴォーカルが「活休して他のバンドで歌いたい」って言い出した時、バンド内で「それぞれ強くなってまた集まろう」みたいな話が出ていたんですよ。千秋は千秋で、多分あの頃の俺の野獣みたいに尖った雰囲気に惹かれて誘ってくれたんだと思うんだけど、それでも自分の根底にはXodiacKのドラマーっていう意識があって「何時かは戻るんだ」っていう姿勢でいたし、しかもその時にはこれも今だから出来る話だけど俺が同時に誘われてたのはメガマソだったんですね。
──なんと。それは初耳です。
SORA:クソガキだった僕は、当時メガマソとDEZERTを天秤にかけて「自分にとっての良い経験を積めるのはどちらだろう?」とバカなり考えた結果、一瞬メガマソなんだろうなと思ってしまったんですよね。ほんとクソガキだったから。
千秋:メガマソいいバンドだしな。しかも、当時メジャーだったはずなんですよ。ただ、俺からするとSORAくんはXodiacKの件も含めて「自分は自分の道を貫く」みたいなスタンスの人だと思ってたのに、結局はネームバリューの方になびくんやなっていう風に感じて、それを全部SORAくん本人にバーって言ったんです。で、言いたいことだけ言って「はい、じゃあもうわかりました!」ってその場を去った(苦笑)
SORA:そうだ!それで俺、次の日の朝になって親父に相談したんだよ。
千秋:え、そうだったの?!
SORA:うん、今思い出した。実家のリビングで「もう既に売れてるバンドと、カッコいいけどまだこれからっていうバンドがいて、両方から誘われてるんだけど親父はどう思う?」っていう話をしたんだった。そうしたら、親父は「オマエ、そんな最初から強い状態でポケモンやってもつまんなくないか?19歳にもなろうっていうのに、オマエはどうせ就職もせずにだらしねーんだから、今から何かやるなら面白そうなことをとことんやってみたら」って言ってくれたんですよ。
──喩えがポケモンだったというのも絶妙ですし、実に素晴らしいお言葉です。
SORA:その親父の言葉を聞いて、俺はすぐに「昨日はごめん!やっぱり、やります!」って千秋に電話しました。
千秋:確か、あの時はそこからSacchanが間に入ってくれたよね。俺はSacchanに「これから一緒に上手くなっていけるドラマーとやりたいのに、メジャーっていう言葉に目がくらむようなヤツとはやりたくない!」っていうことを言ってたんだけど、そこをまずはサポートというかたちで入ってもらうことにしたり、Sacchanが動いてくれて結果としてはそこからのなりゆきでSORAくんが加入することになったんですよ。
──さすがです。当初は「ヤだ」と言っていた一方、その頃からSacchanはDEZERTの将来を客観的に判断したうえでの方策を見極めつつ確実に遂行されていたのですね。
SORA:ちなみに、正式にDEZERTに入ることになって活動を続けていくうちに、ある日XodiacKのヴォーカルだったErosくん、つまり後のICEくんから「本当に応援してるから頑張ってね」ってボソッと言われたことがあって、その時に俺の心の中にあった重りは全部なくなりました。あれは初めてDEZERTでO-WESTのワンマンをやった時くらいだったはずです。
──ということは、それが2015年のことだったのですね。
SORA:そこに至るまで、つくづく俺は優柔不断なクソガキでした。
──先ほどSORAくんは「千秋は千秋で、多分あの頃の俺の野獣みたいに尖った雰囲気に惹かれて誘ってくれたんだと思う」と発言されていましたけれど、そもそも千秋くんがSORAくんのワイルドさを必要とした理由とは何だったのでしょうね。
千秋:DEZERTは俺とSacchanが作ったバンドだけど、ふたりともキャラ的にはイケイケなところがないんですよ。わりとなんでもロジックで考えちゃうタイプなんですね。しかも、今でこそある程度の人たちから興味を持ってもらえるバンドにはなりましたけど、当時なんて全然そんなこともなかったわけですよ。だから、ガストとかで何時間もSacchanと「こういうイベントに出たら良いんじゃないか」「こういうことをしてみたらどうだろう」なんて、妄想みたいな話だけはいくらでも出てくるものの「よし、じゃあその方向に向かって行こうぜ!!」っていう勢いはないし、なんならビビってしまって動けないみたいな感じだったんですよ(笑)
──もったいない!何故そこで及び腰に??
千秋:やっぱ、気持ち的に自分にとって(DEZERTが)最後のバンドだっていう意識は強かったのかもね。俺は大学生やったし、これで失敗したら大学戻ろうって思ってたから。そういう状態だったことを思うと、DEZERTに必要なのはプレイが上手くて完成されてるタイプのドラマーじゃなくて、それこそ野獣系というか。言い方はちょっと悪いけど、何も考えずに「行こうぜ!」って勢いで進んでくタイプのバカなドラマーがいると良いな、と感じてたんじゃないかな。かなり直感的なところでね。
──そして、DEZERTは今もイケイケなのはSORAくんだけではありませんか。2016年に加入されたMiyakoくんもまた、プレイはともかくキャラ的には全くガツガツしたところのない方であるという印象です。
千秋:そうね、確かにこの4人の中だとSORAくんのイケイケ具合は突出してる(笑)
──性格の違いといえば。先だってYouTubeにて公開されたThe Walker Project-PHASE4- -Preproduction #2-のドキュメント映像で、SORAくんと千秋くんが歌詞の解釈についての話をされている場面がありましたけれど、あのくだりでもSORAくんは「歌詞の中の〈逃げる〉というフレーズがちょっと気になってしまう。自分の性格から行くと〈行こうぜ〉になっちゃうから」と発言されていましたっけ。
SORA:でもね。だからこそ、行こうぜBOYなりの悩みもあるんですよ。千秋みたいに一生懸命考えたうえで書いてる歌詞の意味が、昔は特によくわかんなかったっすから。DEZERTに限らず、僕の大好きなELLEGARDENの歌詞もそうでしたもん。たとえば「風の日」っていう曲では〈そんなもんさ〉って歌ってるところがあるんだけど、昔の僕は「いやいや、〈そんなもんさ〉じゃなくて!そこからどうするのかも歌ってくれよ!!」って思ってたタイプだったんです。今となっては自分と違う考え方をする人の気持ちもだんだんとわかるようになって来たし、自分もいろんな経験をしてきたことで「確かにそうだよな」って思えるようになったところがありますね。そういう意味で、今度の野音で無料配布する「The Walker」の詞に関しても、千秋が「別に逃げてもえぇやん」っていう意味で書いた〈逃げる〉っていう言葉に対して、最初はちょっと引っかかったとはいえ今は「一旦逃げたとしても、歩き続けてられるならいいんだしね」って感じられるようになったんですよ。あぁ、そういうところってまだまだ俺は欠落してるし、思いやりが足りないんだなっていうことはあらためて思いましたけどね。
──その“気付き”を持てるかどうかこそが、おそらく大事なことなのだと思いますよ。
SORA:要するに、行こうぜBOYには「今は行きたくないから」っていう人に対しての気配りが必要なんですよね。「大丈夫、大丈夫。行かないとわかんないじゃん!」っていう風に言う必要がある時もあるにせよ、マジでそれは違う時もあるじゃないですか。そうなると俺は凄い嫌われてしまいがちなので(苦笑)、これからはもっと人の気持ちを理解したうえで「行こうぜ!」って言える男になりたいと思ってます。
──素晴らしい。そうしたメンタリティの変化や成長は、音楽表現の場にも活かされているのでしょうね。なお、音楽性やバンドとしての方向性の面からみた時に近年で最も大きなターニングポイントとなったのは2018年発表のアルバム『TODAY』だったと思っているのですけれど、メンバーの側からみて「あの時期にバンドとしては大きく変わったかな」と自覚していらっしゃるタイミングを具体的に挙げることは出来ますか。
SORA:それは『TODAY』でしょうね、やっぱり。
千秋:だね、うん。あそこから変わり始めたのは間違いないと思う。
SORA:あれ以前の作品でも、もちろん当時の僕なりに頑張ってはいたんですけど、あのアルバムでやっと気付けたことが凄く多かったんですよ。簡単に言うと、以前の僕はドラムのことしかわからなかったし、わかろうともしてなかった。でも、あの時『TODAY』で千秋が敢えてあそこまで真っ直ぐなことをバカでもわかるように表現しようと曲や詞を作っている姿をみて、凄く刺激を受けたんですよ。そして、これはマズいぞとも思って。果たして僕は「ドラマーとしてこれだけの凄い力を持った曲に対して何が出来るんだろう?」って、それまでよりもっと本気で考えるようになったんです。
──なるほど、そういうことでしたか。
SORA:そしてね、僕はズルい男なのでそういう時はすぐ尊敬してる大好きな先輩たちに相談しちゃうんですよ。ただ、人によって返ってくる言葉は全然違ってて。ミヤさん(MUCC)に「今やってるレコーディングで千秋に凄い文句言われるんですけど、どう応えたらいいですか」みたいに訊くと「それはオマエが悪い。作曲者が納得出来るようなドラムを叩けないオマエが悪い」って言われるんですよね。それはまぁ、そうじゃないですか。そうだよなって思うんですよ。だけど、その反面で「ミヤさんは僕の気持ちはわかってくれない…」とも当時は感じちゃってたんで、そうなると次はD’ERLANGERのTetsuさんにも相談するわけです。Tetsuさんはアメリカンなノリの人だから「そんなんオマエ、自分の好きなようにやりゃあいいんだよ。オマエのドラムはカッコ良いんだから、自由にやっちまえ!」って言ってくれて、僕をとても前向きな気持ちにさせてくれました。だけど、それでも僕はチートなんで今度はkenさん(L’Arc-en-Ciel)にも連絡をしまして「DEZERTのドラマーはSORAしかいない、ということをまずは自分にとっての心の居場所を確保しておくことだね。きっと君は、千秋くんが言っていることを理解しようとし過ぎているんだと思うよ。君は優し過ぎるの。その状態で伸び伸びとやれって言われても無理ってなるのはわかるから、まずは曲と詞に正面から向き合ってみて、そこでわかったことに沿いながらやってみたら?ビートとかリズムのややこしい話は、またちょこちょこ話そうね」って言われて電話を切ったんです。
──いやはや、なんとも深いお話です。
SORA:あれ以来、kenさんとは頻繁に電話をさせてもらう間柄になっていただいてまして、僕にとっては言わばメンタリストみたいな存在になってもらってますね(笑)。でも、これはkenさん本人にも言ってるんですけど、だからって僕はkenさんの言うことをそのまま100%飲み込んでるわけではないんですよ。話を聞いてもらって、アドバイスを訊いて、それを自分自身で消化してそこからどうすべきか?っていうことを考えてから行動に移すようにしてるんです。2018年当時のことで言えば、俺は俺で考えていくうちに「こんなに凄い曲や詞を作れる人だけど、この詞の内容をみると実は千秋も困ってんじゃね?!」っていうことをちょっと思って、そこからは千秋の先を歩くようなドラムを叩かなきゃなって思ったりしたこともありました。…なんか、すいません長々と。要は『TODAY』の頃には大体こんなことがありました、ということなんですよ。
──今のSORAくんのお話の中にありました「実は千秋も困ってんじゃね?!」という部分。当時の千秋くんは実際にそのような状況でしたか?
千秋:俺は結成した時からずっと困ってましたよ。そもそも、バンドを何の為にやってるのかと言ったら当初は“明日を忘れるため”でしたもん。自分の存在証明の為に~とかでもなくて、昔は自分の存在価値をまずどこに向けてどう生きていけば良いのかということ自体に悩んでたから、その悩みを麻痺させて忘れるためにバンドをやっていたようなもので、音楽性だって別に俺自身はどうでも良かったんです。
──今やその音楽性こそがDEZERTにとっての大切な生命線のひとつでもあるというのに、なんだか不思議なものですね。
千秋:初期にやってたのは、俺がやりたい音楽というよりは、当時関わってくれてたスタッフの意見を元に作ったものでしたからね。「今キラキラしたバンドや、ゴリゴリでも少しお洒落な感じのバンドが多いから、今あんまりいない真っ黒でドロドロしたのやったらどうですか?」っていう風に。
──マーケティング先行型のバンドだったのですか。
千秋:そう、ロジカルに市場の隙間を狙ったみたいな。で、その頃に自分の悩みは何時になったら解決するんだろう?って近しい人に相談したんですよ。そうしたら「O-WESTでワンマンが出来るようになったら、やりたいことが見つかるよ」って言われて、それで僕は必死になって人生が変わるはずだと信じながら、O-WESTを結局3回やって3回目にはソールドアウトさせたんです。だけど、そこで悩みはより深くなっちゃった。じゃあ、次はO-EASTでやってみたらどうだろう?それもまぁまぁ成功しました。だけど、それでも自分がやりたい音楽が何なのはよくわかんなかったし、どう生きていけばいいのかもわかんなくてあれは完全にオーバードーズ状態だったなぁ。
──随分と不健全な状態だったのですね。
千秋:結果、当時のギターが辞めるっていうことになったわけですよ。そして、その後みーちゃん(Miyako)が入って『最高の食卓』を作って、っていう流れに関してはもう正直言うとあんまり覚えてない。勢いだけでなんとかしてた、というのが実情。
──それでいて、あの『最高の食卓』は実売的にも内容的にも相当に高い評価を受けた作品でもありました。今もって名盤との呼び声も高いです。
千秋:そうなんだよね、皮肉なことに。そして、そこから脱却するのには2018年に『TODAY』を出すまでの2年間が必要だったっていうことなんです。
──と同時に、その2年間はDEZERTにとっての暗黒期でもありましたよね。
千秋:暗黒期だったねぇ、まさに(苦笑)。しかも、あの時期にその影響を大きく受けちゃったのはSORAくんだったと思う。Sacchanは何時でも思考を整理しながら、自分がどう思うかじゃなくてDEZERTを動かすにはどうすれば良いかということを考える人だし。みーちゃんもわりと客観的に物事を捉えるタイプの人なんだけど、良くも悪くもDEZERTの変革の歴史はSORAくんと俺にあると思うんですよ。まぁ、さっきSORAくんが言ってた『TODAY』までの流れの話は俺も初めて聞いた話だったけど、あれを聞いてもあらためて俺のSORAくんに対する接し方というのは、DEZERTの変革の歴史とつながってるなと思ったな。極端なこと言うと、SORAくんへの俺の態度=俺のお客さんたちへの態度なんですよ。
──なんとなく、言わんとするところはわかります。
千秋:あのね、もっとわかりやすく言うと『TODAY』どころかさらに大きく変わったのは去年『RAINBOW』を出した後にやった[DEZERT LIVE TOUR 2021 RAINBOW -カメレオンは空を見上げて笑えるか?-]の時だったんじゃないかな。音楽というボールを使っていることには変わりないんだけど、球の種類と競技が変わったんです。昔はドッジボールだったのが、あの『RAINBOW』からはキャッチボールになった。
──局所攻撃のモードから、互いを意識し融和するモードに変わったのですね。
千秋:あたしはドッジボールが好き!っていう子もそれは一杯いると思いますよ。その気持ちを否定する気もないしね。でも、ドッジボールはずっと続かないじゃん。最後にコートに残るのは俺だけになりかねない。
──それに、あの暗黒期只中に行われた伝説の[千秋を救うツアー]では千秋くんのみならずSORAくんまでもが精神的ダメージを受けてしまうという事態も起きました。今や笑い話としてMCで語られるくらいではありますけれど、あまりにも激しいドッジボールの連続はバンドにとって芳しいものとは言えないのでしょうね。
SORA:でも、自分ではそこを当時はそんなに自覚出来てなかったんですよね。だからこそヤバかった、とも言えるんですけど。
──今さらではありますが、暗黒期にSORAくんを救ってくれたものとは何でした?
SORA:あの頃の俺を救ってくれたのは、これも尊敬する先輩であるELLEGARDENの生形真一さんの言葉でしたね。「わかるよ。うちのバンドもそういう時期があった。バンドを続ける道でそれはよくあたる壁だと思うんだ」って。そして、1回はELLEGARDENが休止して生形さんがNothing’s Carved In Stoneを起ち上げた時に、活動の過程で今度は自分が“そう”なっちゃったそうなんですね。そして、何故自分がそうなってしまうのかを考えたら、それは純粋にバンドを守る為だったということに気付いたっていうんですよ。「俺は千秋くんっていう人のことは知らないけど、バンドを護ろうとする術が人より不器用なだけで、根底はバンドを護るために言ってるんだと思うよ。SORAももうちょっと大きな心を持てたら楽だと思うんだけど。でも、それが無理な人だからこそELLEGARDENが好きなんだよね?」って言われて大泣きですよ。そこで泣くだけ泣いて、復活しました。
──これまた非常に良いお話です。
SORA:とは言っても、そこからまた波はあってまた落ちたり、上がったり、落ちたり、っていうことはあったんですけどね。
千秋:そういう意味では、SORAくんに対してイライラをステージでぶつけたり、お客さんたちがそれを観てドン引きしたり、SORAくんが病んじゃったりして、俺はやっと大事なことに気付けたのも事実なんですよ。あぁ、これはやり方が違うんだなって。もちろん、ドッジボールをいきなりキャッチボールに変えるのは難しかったし、キャッチボールをずっとじゃ飽きちゃう、つまんないっていうのもあるでしょ?あれから少しずつ何年かかけながら、みんなで「じゃあ、どうやって楽しいキャッチボールをやっていこうか?」っていうことを試行錯誤しつつ、去年のツアーと今年の春の[DEZERT LIVE TOUR 2022 “再教育ツアー”]ではそれをより良いかたちにしていくことが出来た気がしてるんです。少なくとも自分たちのチームでやろうとしたことはやり遂げられたし、そのことに対する楽しさも喜びも感じることが出来ました。
──そうした紆余曲折を経ての今があり、来たる6月18日にはDEZERT史上最大キャパとなる日比谷野外大音楽堂での[DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”]が決定していることを思うと、なんだかとても感慨深いです。
千秋:野音だけに限ったことではなく、今の自分はDEZERTの為に時間とおカネを使って来てくれる人たちとその日のライヴ空間を共有したいと凄く思ってますね。俺、ツアーとかライヴが始まる前って世話になったライヴハウスによく遊びに行くことがあって、この間そこの店長と話してる時に「あらためて訊くけど、千秋って何の為にバンドやってんの?」って言われたんですよ。多分、向こうは「自分の為っすよ!」みたいな言葉を聞きたかったんだと思うんだけど、俺は「人の為です」って答えたの。そうしたら、なんか凄い残念がってた(笑)
──あの千秋が人の為に?!となってしまわれたんですかねぇ(笑)
千秋:当然、自分の為にもやってはいるんですよ。でも、それは「俺たち生きてるんだよね?」っていうことを確認するくらいあたりまえのことでしょ。そこは大前提として、その先の次元で僕はもっと一緒にライヴの場で遊べる人たちを増やしたいし、そんな楽しさや喜びを感じられる空間をもっと大きくしたい。『TODAY』の時から始まった〈僕が踏み出す一歩〉の先にある、その過程としてのひとつがDEZERTにとっては今度の日比谷野音っていうことになるんだと思う。
──まだコロナ問題が勃発していない段階ではありましたが、以前〈くるくるまわる -2019-〉でのMCにおいて、千秋くんは「武道館」という単語を発していますものね。
千秋:だから、今度の日比谷は我々にとってのあらたなスタートラインなわけですよ。“再教育ツアー”のファイナルとしてではなくて、あくまでもここから先に向けての新しい一歩になるはず。
SORA:僕らは落ちることを知った鳥ですからね。何時かは誰かが急に暴投するかもしれないし、何時かはまた鬱になっちゃうかもしれないし、この先に何が起こるかだって分からない。だけど、経験したことで落ちる時の落ち方は覚えたし、たとえ泥だらけでもいいから歩き続けたいし、今はこのありのままの姿のDEZERTの姿をみんなに伝えたいんです。そりゃね、俺だって無駄に3回も鬱にはなってません(苦笑)
──少々身を削り過ぎな気はいたしますが…現状での最新シングル『再教育』のカップリング曲「ミスターショットガンガール」に〈派手にいこうぜ 所詮どうせぐちゃぐちゃの未来歩いていくんだ〉という歌詞があることを思っても、DEZERTはこれからも一筋縄ではいかない道を歩んでいくことになるのかもしれませんね。
千秋:「The Walker」を作ってさんざん考えたけど、結局は誰でもなんだかんだで悩むじゃん。でも、その中にはいろいろ気付きがあってさ。逃げるためでも歩くんだったらいい、真っ直ぐに進むんじゃなくても、遅くなっても、立ち止まらずに行けるならそれでいいよね、って俺は思ったから。ここからのDEZERTはどんな道を歩いていくんだろう?っていう期待とかワクワク感を、ここからみんなに提示していけたら良いかな。
インタビュアー:杉江由紀
<第1弾:千秋 × SORA>
DEZERT変革の歴史は千秋とSORAの中にあった──。
<第2弾:千秋 × Miyako>
MoranからDEZERTへ、Miyakoと千秋の7年間とは。
<第3弾:千秋 × Sacchan>
千秋とSacchanが語る、DEZERTのリアルな過去とは。
公演情報
■DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 ”The Walkers”
2022年6月18日(土)日比谷野外大音楽堂
OPEN 16:30 / START 17:30
【チケット料金】前売 ¥6,000(税込)
(問) DISK GARAGE 050-5533-0888
※入場者全員に新曲「The Walker」CD無料配布
●The Walker Project
Documentary of “The Walker”
DEZERT Official YouTubeにて配信中
●特設サイト
https://www.dezert.jp/twp/
●DEZERT YouTube
https://www.youtube.com/c/DEZERTOFFICIAL
●ミザリィレインボウ (JACK IN THE BOX 2021 Live at NIPPON BUDOKAN)
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