2023年07月10日 (月)
【ライヴレポート】<「H.U.G TOUR 2023 -LOVE THAT NEVER ENDS-」TOUR FINAL>2023年7月7日(金)白金高輪 SELENE b2◆
REPORT - 14:00:56D’ESPAIRSRAY、Angeloのギタリストとして活動してきたKaryuが中心となり、ヴォーカリストのryo(HOLLOWGRAM /DALLE)、マニピュレイターの横山和俊と共に2022年に結成したH.U.G。始動と同時に大きな注目を集めた彼らはデビューの場となった2022年9月8日にSpotify O-EASTで行われたイベント【DEVIL’S PARTY 2022 Vol.2】でオーディエンスに強いインパクトを与え、2023年3月24日にSpotify O-WESTで行なわれた1stワンマン・ライブ【SHOWCASE01】も大成功に終わらせた。
いい波に乗ったことを感じさせるH.U.Gは、2023年6月10日に1stアルバム『HELIOS』をリリース。洗練されたヘヴィネスを湛えた彼らの音楽性は高い評価を得て、より多くのリスナーが彼らを注視することとなる。そして、『HELIOS』のリリースと同時に始まった<H.U.G TOUR 2023 -LOVE THAT NEVER ENDS->はサポート・メンバーにNAOKI(b:FANTASISTA/ex.Kagrra,)とTAKEO(ds:PIERROT/Angelo)という強者を迎えた布陣で臨み、各地で観応えのあるライブを披露。アルバム同様ライブも好評で、H.U.Gのメンバー達は確かな手応えを感じたに違いない。
そして、多くのリスナーを虜にした同ツアーのファイナル公演が7月7日に白金高輪SELENE b2で開催された。ウィークデーのライブでいながら当日は多数のリスナーが会場に集まり、オンライン配信も実施されるという華やかさに包まれた公演となった。
暗転した場内にダーク&サイバーなオープニングSEが流れ、H.U.Gのメンバー達がステージに姿を現した。客席から大歓声と熱い拍手が湧き起こり、横山が奏でる静謐なピアノの調べに続いて一気に加速する「SEEDS」からライブはスタート。貴公子を思わせる眩いオーラとエモーショナルな歌声、アクティブなステージングでオーディエンスを魅了するryo。膝の辺りにギターを構えたワイルドなシルエットとソリッドなギター・サウンドの取り合わせが最高にカッコいいKaryu。ミステリアスな雰囲気を漂わせつつ多彩な音色で楽曲を彩る横山。強い存在感を発するメンバーが並び立った姿とラウドかつ洗練感を帯びたサウンドにオーディエンスも熱いリアクションを見せ、ライブは上々の滑り出しとなった。
その後は「今日が最終公演になりました。ありがとうございます。この日を迎えられて、とても嬉しいです。今日はここにいる全員の声と力を貸してほしいと思います」というryoの挨拶を挟みつつパワフル&スタイリッシュな「HUG」やヘヴィなギターと浮遊感を纏ったキーボードのマッチングを活かした「DON’T DOUBT」、ファットにドライブする「BLOOD PIN」などをプレイ。重厚さとキレのよさを兼ね備えたサウンドは心地好さに溢れているし、メンバー全員が織りなす激しいパフォーマンスには目を奪わずにいられない。説得力に溢れたステージからは今回のツアーを経て、H.U.Gがさらなるパワーアップを果たしたことが如実に感じられた。
ライブ中盤では煌びやかな「HEART」や無機質な歌中と心を駆り立てるサビの対比を活かした「BUTTERFLY」を披露。「それでも人は同じ過ちを何度も繰り返す。争い、戦争を起こす。暴動も起こっている。それでも人はどうしたって、大切に思っている人のもとへ帰っていくと思う。いくつの悲しみや死を乗り越えても、必ず僕らは愛する者のもとへ帰る。さあ、一緒に帰ろう」というryoの言葉と共に届けられた「熾-oki-」からライブは後半へ。ヘヴィネスとエキゾチックな香りを融合させた「Marry of the blood」(D’ESPAIRSRAY)、アッパーな「Flash dancers」などで幅広さを見せ、ストーリー性を感じさせる流れに惹き込まれたし、キャッチーなナンバーも甘ったるくはない、アグレッシブなシーンでも華麗さが失われないといった彼らの魅力を、たっぷりと味わせてくれた。
もうひとつ、ラウド&ソリッドなKaryuのギターを核に据えたH.U.Gのサウンドのカッコよさはライブで一層際立つことも印象的だった。生で体感するH.U.Gの炸裂力や怒涛の勢いなどは圧倒的なので、まだ彼らのライブを観たことがない人には会場に足を運ぶことを強くお薦めしたい。
アグレッシブな「WHO IS THE ROMEO」と退廃的な雰囲気でオーディエンスを惹き込む前半から膨大なエネルギーを放出しながら高速で疾走する後半に至る「HELIOS」(新曲)でオーディエンスのボルテージをさらに引き上げた後、ラストソングとしてスロー・チューンの「LOVE THAT NEVER ENDS」が演奏された。
場内が最高潮といえる盛り上がりを見せたシーンの直後に、エモーショナルな「LOVE THAT NEVER ENDS」をしっかり聴かせる辺りも実に見事。同曲の激しさと透明感を併せ持ったサウンドは深く心に染みる力に満ちていて、「LOVE THAT NEVER ENDS」を演奏し終えてH.U.Gがステージから去っていった場内は感動的な余韻に包まれていた。
アンコールではH.U.Gのメンバーに続いて、スペシャル・ゲストとして摩天楼オペラの燿がステージに姿を現した。H.U.Gの1stアルバム『HELIOS』はスケジュールの関係でNAOKIがレコーディングに参加できなかったため燿やZERO(THE MICRO HEAD 4N’S/OFIAM/Luv PARADE)、Ni~ya(NIGHTMARE)、MASASHI(Versailles)といった錚々たる顔ぶれがベースを弾いていることも話題を呼んでいる。今回のライブでは燿が招かれ、彼がCDでベースを弾いた「SEEDS」をH.U.Gと共に届ける形で披露された。
燿が加わった「SEEDS」に客席からは大歓声が起こっていたし、その場の空気にすぐに馴染んで余裕の表情で良質なベースを聴かせた燿もさすがの一言に尽きる。H.U.Gからの粋なプレゼントをオーディエンス全員が喜んで受け止めたことがはっきりと伝わってきた。
その後は「DROP」と「HELIOS」を、畳みかけるようにプレイ。最後の瞬間まで全力でいきあげるH.U.Gにオーディエンスも熱狂的なリアクションを見せ、白金高輪SELENE b2の場内はツアー・ファイナルにふさわしい盛大な盛り上がりとなった。
初の全国ツアーを、最良の形で締め括ったH.U.G。ファイナル公演を観て、彼らが個性的かつ上質な音楽性を備えていることに加えて、ライブバンドとしても非常に魅力的であることを実感できた。アンコールのMCでKaryuは「このひとつの波紋がどんどん大きくなるようにがんばりますので、応援よろしくお願いします」と語ったが、H.U.Gがより多くのリスナーを巻き込んでいくことを予感せずにいられない。今後の彼らの動向にも大いに注目していきたいと思う。
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[SET LIST]
01. SEEDS
02. HUG
03. DON’T DOUBT
04. BLOOD PIN
05. DROP
06. HEART
07. BUTTERFLY
08. 熾-OKI-
09. Marry of the blood
10. Flash dancers
11. WHO IS THE ROMEO
12. HELIOS
13. LOVE THAT NEVER ENDS
En
01. SEEDS(ゲストベーシスト:燿)
02. DROP
03. HELIOS
(文・村上孝之/写真・岡本麻衣(ODD JOB LTD.))
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【最新情報】
★H.U.G TOUR 2023 -HELIOS-
10月9日(月・祝)名古屋 SPADE BOX
10月10日(火)大阪MUSE
10月13日(金)赤羽ReNY alpha
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<サポートメンバー>
MASASHI(B/Versailles)
TAKEO(Dr/PIERROT 、Angelo)
★Karyu Birthday Live
12月9日(土)横浜Bronth
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【配信情報】
8月9日(水)【ハグの日】Wrap-up party
「tour 2023 -LOVE THAT NEVER ENDS-」を共に回った5人でお届けする、
初ツアー終了打ち上げ & H.U.G 結成1周年記念配信
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【音源配信情報】
1st Album『HELIOS』
各配信サイトでストリーミング配信中!
オンラインショップでも販売中!
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【H.U.G OFFICIAL HP】
【Twitter】
https://twitter.com/hug_official89
【YouTube】
【Karyu Official SITE】
【Karyu Twitter】
【Karyu Instagram】
https://www.instagram.com/karyu_official_/
H.U.G OFFICIAL SITE
H.U.G
Vocal:ryo(HOLLOWGRAM/DALLE)
Guitar:Karyu(Angelo/Luv PARADE/ ex.D’ESPAIRSRAY)
Manipulate&Keyboard&percussion:横山和俊(YokodieS)
サポートBass:NAOKI(FANTASISTA/ex.Kagrra,)
サポートDrums:TAKEO(PIERROT/Angelo)
スペシャルゲスト:燿(摩天楼オペラ)
2023年07月10日 (月)
【ライブレポート】<ZEAL LiNkun TOUR 2023>2023年6月30日(金)新宿BLAZE◆仲間と繋いだ「ZEAL LiNkun TOUR 2023」完結!――「私たち、ヴィジュアル系頑張って行きますので、バンギャ辞めんなよ!」
REPORT - 14:00:32
ユナイト主催のイベントツアー「ZEAL LiNkun TOUR 2023」が、6月30日に新宿BLAZEにてツアーファイナルを迎えた。5月から始まり7都市全9公演に渡って行われたこのツアーには、総勢11バンドが参加。大盛況のうちに幕を閉じたツアーファイナル公演の模様をレポートする。
「ZEAL LiNkun TOUR 2023」というタイトルから、かつてヴィジュアル系専門CD SHOP[ZEAL LINK]が主催して実施していたイベントライブを彷彿した方も多いはず。実際パロディであったことから、約5時間に渡るライブ中、「この感じ、懐かしいなぁ」と思うシーンがいくつもあった。素直に“あの頃”感じたイベントライブの熱気を感じ、コロナ禍や昨今のライブ事情で激減してしまった多くのバンドが集結するライブの空気感を再び体感出来た気がした。ただ誤解のないように伝えておきたいのは、今回のイベントの意義は、単に和気藹々と懐かさに浸るだけのものではなかったということ。
今回集まったのは、ボーカル不在中のユナイトをサポートしたゲストボーカルが率いるバンドや親交の深いバンドが中心だった。彼らの中で「あの頃のように、楽しく回れるイベントをやりたい」という声が上がったことが、このイベントを開催する発端となった。オーガナイザーでもあるLiN(ユナイト / Gt)はそれを“ノリから始まった”と話したが、ライバルであり仲間でもある協調性から1つの事柄を巻き起こしたこと自体が非常にアツい。そして、それぞれのバンドが持つ個性や強みの活かし方をもってして、戦い方を確立しているバンド・アーティストたちがぶつかりあうイベントライブならではのエネルギーが確実に存在し、重要なのは、それを生み出しているのがリアルタイムでポリシーを持って戦っているバンド・アーティストたちだという現実。これらすべてが詰まっていた「ZEAL LiNkun TOUR 2023」は、とても刺激的だった。
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O.A 寿司かも新米
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幕開けを飾ったのは、O.Aの≪寿司かも新米≫。LiNと莎奈(ユナイト / Dr)がトークを繰り広げるアットホームなひと時に加え、セミファイナルの札幌公演にて予告されていた通り、ツアーファイナルで「旅立ちの日に」の合唱が実現した。ここにはミケ(我が為)、HAL(ACME)、チャーリー(アンフィル / 我が為 サポートDr)、夕霧(DaizyStripper)も参加し、イベントの冒頭に卒業ソングが響き渡るというなんともシュールな一幕になったが、この合唱での声出しが後に控えるバンドのライブに備えての良い準備運動となって、会場を温めた。
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ν[NEU]
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トッパーを務めたν[NEU]は現在、2024年12月に据えた“ゴール”に向かって活動中。幕越しにスタートした「RED EMOTION~希望~」から胸を掴む存在感を放っていたと同時に、いわゆる復活という想像のラインを遥かに超えたメンバーの進化した姿があった。バンドのグルーヴに合わせて、歌や音の浸透力が抜群に上がっている、これが“今の”ν[NEU]だ。その中で「恋模様」や、まさにイベントキラーの強みとして繰り出した「YES≒NO」「ピンクマーブル」を通して速攻でフロアを躍動させたのは、<さすが>の一言に尽きる。
そして、一体感を帯びながら「スプラッシュ!」で鮮やかに優しく弾ける中、下手の袖で見守っていた椎名未緒(ユナイト / Gt)へmitsuとヒィロが笑顔で視線を送る様子もあった。これまでも、そしてこれからも限られた時間の中でν[NEU]は“希望”をテーマに掲げて活動を続けていく。<今が人生で一番楽しいんだからな!>と最後にmitsuが叫んだ言葉通り、今を人生の最高潮として見せるメンバー各々の生き様を目に焼き付けて欲しい。
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我が為
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ミケがソロプロジェクト・我が為として活動を始めてから、初の対バンツアーへの参加となった今回。<参加出来て良かった>という理由として、<マジな人が多い>という環境があったと話していた。その中で見せつけた我が為のライブからは、シンプルにミケのボーカリストとして持つ良質な部分を存分に堪能することが出来た。「欠陥品だけの世界」では壮大かつ力強さを、「new tone」では手拍子が似合うポップさに覗かせるチャーミングさを、楽曲に応じて変幻自在な表情を見せるところも、間違いなく彼の魅力だ。
そして、中盤に<挑戦していきたい>と語った上で、1st SINGLEとなる「自問他答NIPPON」を初披露するという攻めの姿勢も見せた。さらに、スピード感に乗せてタオルを回した「TOBIKIRI H↑GH」から、幸福感に満ちた「ユーフォリアの音が鳴り響く」でシンガロングが響いたエンディングまで、ミケが抱くまっすぐな想いを込めた歌声が観客を魅了し、自分の歌を聴いてくれる人々にまっすぐに向き合う姿に胸を打たれた。
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ACME
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センターに構えるCHISAの装いがグラムロックなテイストを感じさせるも、ステージからはずば抜けたラウドサウンドが放たれ続ける。しかも、全5曲を通してMCを挟むことなく間髪入れずに。初っ端から最後まで最高潮のボルテージを魅せ続ける、これがACMEのタクティックだ。
「楽しんでるか、派手にやろうぜ!」と扇子が舞った「マグロ解体チェーンソー」から、ヘッドバンギングが巻き起こった「ROTTEN ORANGE」。そこへ「Resisted temptation」を畳みかけたかと思えば、「WONDERFUL WORLD」ではメロディーに乗せて“WONDERFUL WORLD”とコールしながら拳を掲げる様子には、エモーショナルな気持ちを掻き立てられた。ラストの「Kagaribi」まで鋭さが衰えることなく、観客との距離を詰めていく迫力は圧巻。新旧網羅した精鋭な楽曲たちを通して最後まで威厳のあるシャウトで歌い上げ、「マジで最高のツアーだった!」と笑顔で叫んだCHISAが見せた充実感が眩しかった。
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mitsu
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<この4人で、今日しか出せない音を楽しんでいってください>とmitsu自身がライブ中に話していた通り、演奏陣が流動的なソロという活動形態において、それは醍醐味のひとつと言えよう。今回、ツアー全ヵ所に出演したmitsuのサポートドラムは、<俺、やるよ>と莎奈が名乗りを上げてくれたという。「ZEAL LiNkun TOUR」で作り上げてきた“音”の集大成でもあるこの日、「鼓動」からバンドサウンドと莎奈のコーラスが重なるソウルフルなmitsuの歌声が会場中に満ちていった。
このツアーでしか体験し得ない刹那的なものを“楽しい”というシンプルな感情に乗せて、自由度高くフロアと共に揺れた「蜃気楼」「Live Your Life」「into DEEP」へと深みを増す展開。そして、最後に用意されていた「For Myself」は、タイトル通りmitsu自身の曲だ。終わる・失うことを経験してもなお歌うことを選んだ彼が、アウトロに乗せて訴えるように語り掛けたのは、<決して絶望しないでください。落ち込んでも、希望があるということを歌で伝えていきたいと思います>という、ν[NEU]で見せたものよりもセルフィッシュな、魂のこもった決意だった。
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アンフィル
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ツアーに全ヵ所参加した上で翔悟は、本気でぶつかってくれる“仲間”から特別な気持ちをたくさん得たと話した。嬉しかったこと、悔しかったこと、それらの経験がまたアンフィルを強くし、向上心を抱かせたという。アンフィルの挑戦的な想いは、この日に新衣装をお披露目したことにも表れていたようにも思う。さらに、冒頭の「ラヴァ」「VANILLA PARADE」「迷い姫」と続いたアップテンポながらも丁寧なライブ展開は、音楽を通して誠実でまっすぐに勝負する姿勢をしっかり示しているようでもあった。
そして、全ヵ所で絶対に心がけていたというのがバラードをやることだったと語り、<たくさんの恋が咲いて、たくさんの恋が散るような歌舞伎町にぴったりだと思って、取っておきました>と「恋に堕ちる」を披露。最後は、アンフィルというバンド名の意味は“糸”だと伝え、その糸が繋いでいるのはファンだけでなくバンドとの関係にも及んでいるとメッセージし、「unfill」で鮮やかに締めくくった。何を大切にし、何を見せたいかという強いポリシーを感じさせる等身大のバンド感に、常に胸が躍るライブを届けてくれた。
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DaizyStripper
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仲間や、そこに生まれる絆に対して実にスマートなアプローチが出来るバンド、それがDaizyStripperだ。ライブはまず、夕霧が冒頭を“明日も新宿中晴れますように”と粋に歌い替えた「ダンデライオン」からのスタートで、皆が指揮を振りながら口ずさんで一体感を生んだ彼らの原点でもある1曲に続いたのは、最新楽曲の「絶唱OH YEAH!!」。バンドもファンも、ライブにおいて“声”を取り戻すことが出来たリアルにピッタリな1曲に、会場のボルテージが上昇したのは言うまでもない。
そして<ユナイトには、たくさんの希望をもらいました――ファイナルなので、とっておきの希望を届けたいと思います>と夕霧が話し、セットリストに記載されていた謎の「KIBOU」という楽曲へ続くはずだった……が、なんと演奏が始まったのはユナイトの「シトラス」で、これはとっておきのサプライズだった! 下手の袖では椎名未緒が一緒に手を掲げている姿もあり、ある意味この「シトラス」の演奏をもって、ゲストボーカルとしてユナイトの楽曲を歌い続けてきた一連の流れからの節目を遂げたようにも思えた。ラストスパートは、会場をモッシュの波で揺らした「GIRL HUNT」「decade」で有終の美を飾り、DaizyStripperらしく仲間への愛を惜しみなく発揮したステージとなった。
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カメレオ(secret)
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ラストのユナイトを控えた転換中、「チェックチェック……」と本日の出演者にはない、しかしどこか聞き馴染みのある声が聞こえてきた。<1曲だけ盛り上げに来た、カメレオだー!>とHIKARU.が叫ぶと、名古屋公演のみに出演していたカメレオがシークレットで登場。勢いよく幕が開くとともに、「ニート姫」で瞬時に会場の熱気をさらっていく。中盤、かつてレーベルメイトでもあったCHISA(ACME)がHIKARU.とお揃いの角ヘアセットで飛び入り参加。この出来事もまた、イベント終盤の火付け役となった。
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ユナイト
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ユナイトにとって、この「ZEAL LiNkun TOUR 2023」は“楽しい”という感情を大事にしながらも、新ボーカルに希を迎えた“これから”に向けての意気込みや感謝をファンはもちろん、支えてくれたバンド仲間たちへ伝えていく場でもあった。ヘッドライナーとして、実に多くの想いを内包して臨んでいたことは想像に容易い。しかしライブが始まると、新生ユナイトの新曲「花晨」「iScream」「sheeple cirQus」を冒頭から畳みかけ、そこから溢れて来るバンドのグルーヴやストレートに伝わる楽曲の魅力が、この5人のユナイトが早くも強固になっていることを手応えとして感じさせた。
このツアー中に希は対バン相手からたくさんの刺激を受け、<いろんな感情が大暴走して大変なことになってる!――忘れられない音楽と歌を、届けに来ました>と、バンドのセンターで堂々と自分が歌う理由を述べた。「ubique」や「ice」のようにしっかりと盛り上げる場面を通し、最後に<これからのユナイトは何のためにステージに上がり続けるか>と前置きして、流れよく“終わらない歌を歌う為”と歌い出した「starting over」。演奏し終える一瞬まで、新たに生み出すものはもちろん、これまで築いてきたものさえも希と共にブラッシュアップし、そこには明るい未来が待っていることを改めて確信として感じさせるアクトだった。
ラストに全出演者によるサインボール投げが行われた後、希が話したことが印象に残っている。DaizyStripperがサプライズで演奏した「シトラス」を楽屋で聴いていた彼が思ったこと――
<“ユナイトの曲だ”じゃなくて、“僕らの曲だ”と思ったんです>
彼がバンドの一員として実感したことを思わせる、非常に嬉しい胸が熱くなる言葉だった。
今回の「ZEAL LiNkun TOUR 2023」に出演したバンドと、参加したファンが再確認させてくれたことは、ヴィジュアル系という文化の中に生まれる音楽やライブにはまだまだパワーがあるということ。だからこそ、今回参加した誰もが口にしていた<またいつか>の可能性はあると信じている。時を重ねる毎に、人間として成熟したヴィジュアル系バンド・アーティストたちが生み出すものにはかけがえのない価値があり、それぞれの個性を音を楽しむことで表現している素晴らしいシーンに出逢えたことを誇りに思いたい。そんな思いを後押ししてくれたのが、最後に椎名未緒が言った「私たち、ヴィジュアル系頑張って行きますので、おまえらもバンギャ辞めんなよ!」の一言でもあった。
写真●白石達也
レポート・文●平井綾子
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【セットリスト】
O.A 寿司かも新米
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ν[NEU]
1.RED EMOTION~希望~
2.恋模様
3.YES≒NO
4.ピンクマーブル
5.スプラッシュ!
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我が為
1.欠陥品だけの世界
2.new tone
3. 自問他答NIPPON
4.TOBIKIRI H↑GH
5. ユーフォリアの音が鳴り響く
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ACME
1.マグロ解体チェーンソー
2.ROTTEN OGANGE
3.Resisted temptation
4.WONDERFUL WORLD
5.Kagaribi
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mitsu
1.鼓動
2.蜃気楼
3.Live Your Life
4.into DEEP
5.For Myself
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アンフィル
1.ラヴァ
2.VANILLA PARADE
3.迷い姫
4.恋に堕ちる
5.unfill
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DaizyStripper
1.ダンデライオン
2.絶唱OH YEAH!!
3.KIBOU(シトラス / ユナイトカヴァー)
4.GIRL HUNT
5.decade
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カメレオ(secret出演)
1.ニート姫
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ユナイト
1.花晨
2.iScream
3.sheeple cirQus
4.ubique
5.ice
6.starting over
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エンディング
サインーボール投げ・記念撮影
2023年07月09日 (日)
【ライヴレポート】<AKi Tour 2023 『Liberation』>2023年7月6日(木)新宿LOFT◆「「ありがとう」じゃ、俺の想いは伝わらないです。だからバンドを続けるんだと思います」
REPORT - 19:00:15ロックバンド・シドの明希(Ba)によるソロプロジェクト“AKi”が、6月より全国4箇所を回った<AKi Tour 2023 『Liberation』>のファイナル公演を7月6日(木) 東京・新宿LOFTにて開催した。
AKiとしてライブを行うのは昨年12月以来、念願の声出し解禁ライブツアーのファイナルとなったこの日。SEが鳴り、ミラーボールの光が瞬く中、加藤貴之(Gu)、MOTOKATSU(Dr)、YOUSAY(Gu)がステージに登場。
超満員の観客の手拍子に迎えられ、ステージにゆっくり登場したAKiは耳に手をあてて歓声を求めると、フロアから「アキーーッ!」と絶叫に近い歓声が上がる。笑みを浮かべたAKiがベースを構えるとSEにバンド演奏が重なり、1曲目「OVERRUN」でライブがスタート。グルーヴィーなビートに身体を揺らす観客から、自然発生的に湧き上がる歌声。
コロナ禍以前は当たり前だったそんな光景があまりにも尊く新鮮に映り、胸がギュッと締め付けられる。
そうか、それにしてもやけに新鮮に感じると思ったら、「OVERRUN」は2022年のリリースだから、こうしてライブでみんなの歌声が重なるのを見るのが初めてだったのだ。
約3年間のコロナ禍も諦めず、配信や規制下でのライブを精力的に行ってきたAKi。
「新宿LOFT! 分かってんだろ、ファイナルだぞ? ひとつになろうぜ!!」と、フロアを煽って始まった「Be Free」や「FAIRY DUST」もライブ定番曲だが、会場中がジャンプや掛け声を合わせて生まれるライブ感で、コロナ禍とは全く違った印象を受ける。
「飛べ、飛べ!」とフロアを煽るAKiのベースサウンドや歌声も、観客との相乗効果でいつもより勇ましく力強く響き、AKiのアグレッシブなベースプレイがバンド演奏をグイグイ引っ張っていた「Monolith」は、いつも以上にヘヴィで息の合ったバンドアンサンブルを生み出していた。
新宿LOFTという会場の特性や音響の効果もあると思うが、AKiの重厚かつテクニカルなプレイがグッと前に出る瞬間を幾度も感じたこの日。
ベースを軸としたサウンドメイクもAKiバンドの特徴であり、大きな魅力であることを改めて感じさせられた。
オーディエンスの黄色い声援が飛び交う中、セッション的な演奏に乗せて、AKiが観客に語りかけたMCでは、「一緒にぐちゃぐちゃにならない? 今日そのつもりで来てるんだけど、俺。最高の夜を共に作りませんか? さぁ、始めようか!」と煽り、男の色気をたっぷり醸し出すヴォーカルで魅了した「共犯」が始まる。「LIVE TO DARE」、「ジウ」と続き、会場をディープな世界に染め上げると、せめぎ合う各々のプレイが強靭なバンドサウンドを生み出した「Collapsing」へ。
激しいだけじゃない、AKiの様々な表情や魅力で魅せた前半戦を経て、「みんなの声が本当に嬉しいです。大きな声が心に響いてます」と観客に告げると、「Wait for You」、「SCREAM」と、しっかり聴かせるミディアムバラードが続く。切なくも美しい歌声と哀愁あるサウンドで観客を魅了すると、「Skyfall」では<叫んだ声と言葉 誰に届いたかな>の歌い出しに応えるような大合唱がフロアから起き、会場中の心がひとつになる。
観客の温かい歌声に“確かな愛”を確認し、「みんな愛してるよ」と告げたAKi。願いと祈りを込めたAKiの歌に、会場中の観客が大合唱で応える光景はあまりに美しく、幸福感に満ち溢れていた。
多幸感溢れる「Skyfall」を歌い終え、「みんなの声、世界一じゃない? ひょっとして。間違いなく、世界の中心はここ歌舞伎町だと思います。みんな歌ってくれてありがとう!」と笑顔を浮かべたAKi。
「シドのツアーが終わって、ライブがしたくてしたくてたまんなくて切った、このど平日のライブですが。
みんな、ツアーが終わってすぐに付いて来てくれてありがとう!」と、このツアーを開催した経緯を話すと、「知っての通り、シドは20周年を迎えました。シドって船は無事に航海を続けて、そこからAKiって船が生まれて。みんな両方愛してくれて、本当に嬉しいです!」と感謝を告げる。
「ここからめちゃくちゃやりたいんだけど、この愛を受け止めてくれるかい? そして最大を返してくれるかい?」と煽り始まった「Silly」の攻撃的な歌と演奏で再び会場に熱気を生むと、ライブも終盤戦。「libido」、「Brave New World」とライブチューンを畳み込み、「ラスト行けるか?」と始まった本編ラストは「STORY」。
全身全霊、全てを出し切る全力のステージを放つAKiと、拳を突き上げて掛け声を合わせてそれに応える観客。
長かったコロナ禍を経て、進むべき未知なるストーリーへの一歩を再び踏み出したこの日のラストは、明るい未来を指し示す希望溢れるエンディングとなった。
鳴り止まないアンコールに、再びステージに登場したAKiとメンバー。メンバーそれぞれがマイクを回してツアーの感想を語ると、AKiから9月より始まる<AKi 2MAN Tour 2023 「NO BORDER.」>の開催を発表。フロアから大きな拍手と歓声が起きる。
AKiは「戦うんじゃなくて、手を取り合って、お互いの音楽をぶつける。そして、もうひとつ新しいものを作る。そういう対バンにしたいです」とツーマンツアーへの思いを話し、「バチバチっていうよりは、手を繋いでなにかを変えていく。俺たちが信じた音楽、俺たちを信じて来てくれたみんなのロックを信じて、このツアーを駆け抜けようと思います」と意気込みを語った。
「みんな盛り上がれる?」と確認し、熱い夏の始まりを宣言する「狂奏夏」で始まったアンコールは、「NEW ERA」、「The Inside War」と続き、フロアの盛り上がりは最高潮!
ラストのMCでは7月23日(日) Zepp DiverCity TOKYOから始まる、シドの<SID 20th Anniversary Premium FANMEETING TOUR 2023>、そして秋のツーマンツアーへの意気込みを語ると、「毎回毎回、言ってるけど、「ありがとう」じゃ、俺の想いは伝わらないです。だからバンドを続けるんだと思います、曲を書き続けるんだと思います。愛してます、今日は本当にどうもありがとう!」とファンへの感謝を告げ、「この想いを曲にしました」と、新曲「Only One」を披露。力強いビートと壮大な演奏に、たくさん愛と感謝を乗せた真っ直ぐな歌声で、一人ひとりへの想いを丁寧に届けた「Only One」。
ロックバラード調のストレートな表現や、<ずっと守るよ なによりも>といった熱いフレーズがダイレクトに胸を突き刺す新曲が熱い想いと強い印象、そしてここからの活動への期待を残して、ライブの幕を閉じた。
アンコール時に発表した<AKi 2MAN Tour 2023 「NO BORDER.」>は、9月24日(日) 神奈川・Thunder Snake ATSUGIを皮切りに、全国6箇所にて開催。
チケットは7月12日(水)に、シド 明希のオフィシャルオンラインサロン「Resonants」会員を対象に優先予約を開始。
各公演にて対バン相手の異なるこのツアー、ライブやチケット販売の詳細は公式サイトをチェックして欲しい。
PHOTO◎上原 俊、hy
TEXT◎フジジュン
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AKi Tour 2023 『Liberation』
2023年7月6日(木) 新宿LOFT
SETLIST
01. OVERRUN
02. Be Free
03. FAIRY DUST
04. Monolith
05. 共犯
06. LIVE TO DARE
07. ジウ
08. Collapsing
09. Wait for You
10. SCREAM
11. Skyfall
12. Silly
13. libido
14. Brave New World
15. STORY
En01. 狂奏夏
En02. NEW ERA
En03. The Inside War
En04. Only One(新曲)
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≪ライブ情報≫
AKi 2MAN Tour 2023 「NO BORDER.」
2023年9月24日(日) 神奈川 / Thunder Snake ATSUGI
2023年10月1日(日) 大阪 / バナナホール <Guest Artist> SHIN
2023年10月11日(水) 埼玉 / HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3 <Guest Artist> アルルカン
2023年10月14日(土) 宮城 / 仙台darwin <Guest Artist> TOTALFAT
2023年10月21日(土) 愛知 / ell. FITS ALL <Guest Artist> 武瑠
2023年10月28日(土) 東京 / SHIBUYA CLUB QUATTRO <Guest Artist> DEZERT
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【チケット料金】
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■VIPスタンディング ¥15,000(税込・ドリンク代込)
※9月24日(日) Thunder Snake ATSUGI公演のみ
<VIPチケット特典>
・AKi 直筆サイン入りVIP PASS(シリアルナンバー&ネーム入り)
※シリアルナンバーは、チケットに記載されている整理番号と同じナンバーになります。
・終演後メンバーによる公開打ち上げ
・握手会 ※公開打ち上げ終了後に実施いたします。
※VIPチケットはオフィシャルオンラインサロン「Resonants」会員、ID-S BASIC会員のみの受付となります。
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■スタンディング ¥6,600(税込・ドリンク代別) ※4歳以上有料
【オフィシャルオンラインサロン「Resonants」優先予約】
受付期間 2023年7月12日(水) 12:00~7月18日(火) 23:00
詳細はコチラ https://www.dangercrue.com/AKi/live.php
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