【This Is The “FACT”】 千秋×尋対談


  • 千秋(DEZERT)

  • 尋(NOCTURNAL BLOODLUST)

 

2016年のヴィジュアル系シーンを激しく疾走するDEZERT。

彼らが主宰するイベントが2017年1月29日(日)に新木場STUDIO COASTにて「DEZERT PRESENTS 【This Is The “FACT”】」と題され開催されるが、その開催に先駆けて出演全バンドのヴォーカリストと、このイベントの首謀者・千秋(Vo)との対談企画が実施された。

 

当びじゅなびでは、高濃度の最凶ヘヴィサウンドを掲げ、2016年10月にさいたまスーパーアリーナにて開催された「LOUD PARK 16」にもオープニングアクトとして参戦。日本のみならず、海外でも高い支持を得ている「NOCTURNAL BLOODLUST」のボーカリスト・尋を迎えて対談を敢行。
意外にも(?)終始、穏やかに進んだインタビュー。
“「ありがとう」と思ってもそれを素直に言えない”二人が見せる<FACT>とは?

 

 

――2人が初めて会ったのは?
千秋「SORAくん(DEZERTドラム)がもともとノクブラのNatsuくん(NOCTURNAL BLOODLUSTドラム)と知り合いで。で、Edge(池袋のライヴハウス)のイベントか何かで呼んでもらって」
「はいはい」
千秋「そう。でもその時は別にお互い興味もなく」

 

――普通に対バンして終わり、みたいな?
「仲が悪いわけでもないけど。普通な感じ」
千秋「音楽のアプローチがお互い全然違うから、音楽的な話にもならず。Cazquiくん(NOCTURNAL BLOODLUSTギター)とギターの音についてちょっとだけ話したけど。それが……5年ぐらい前とか?」
「もっと前じゃない? 忘れた(笑)」

 

――じゃあけっこう前から接点はあって。
千秋「もちろん。2マンもやったことあるし。東名阪で。で、今回ノクブラを誘ったのには理由があって。まずノクブラとアルルカン、この2バンドは絶対出て欲しかったんですよ。6バンドのうち3バンドはすでに武道館ワンマンをやってるバンドに出て欲しくて。あとの3バンド、つまりノクブラとアルルカンとウチらは武道館を本気で目指してるバンドっていう縮図を作りたかったんです」

 

――って勝手に言ってますけど。
「武道館、やりたいっすよ」
千秋「武道館を狙ってるバンドと武道館をやったバンド。世代とかで分けたくなかったんで、そういう括りでやりたかった」

 

――ノクブラは武道館を目指してるバンドなんですか?
「目指してるっていうか、普通にやりたいですよ(笑)。やっぱりバンドマンならやりたいと思うんじゃないですか? でも武道館が目標ってわけではなくて。到達点を決めたらそこで終わっちゃうような気がするんで。通過点って言ったら偉そうだけど、ゴールだとは思ってないですね」
千秋「俺もそれは同じ。たぶんノクブラとアルルカンとウチらは武道館に立てたとしてもそこをゴールだと思わないバンド。だってゴールは死でしょ。死しかないもん」

 

――そうなの?
「ま、死ですかね」

 

――同意した(笑)。で、そういう考えを持ってるバンドが主催するイベントだけに、それぞれのバンドのアイデンティティを示す場所にしたいと。
千秋「そうです。〈This is The “FACT”〉っていうのは、ビジュアル系で一番カッコいい場所っていうか〈真実の場所〉っていうメッセージを込めてるんですよ。あと6バンドなのにあえて〈フェス〉って言ってるのは、まぁ言ったもん勝ちっていうか、イベントよりフェスのほうが面白そうじゃないですか」
「やっぱ〈祭り感〉は大事だよね。イベントって言うとなんか固いし。あとウチらと同世代のバンドが上の世代のバンドを呼んでフェスをやるっていうのはなかなか出来ないことだと思う。ウチらみたいな中堅が先輩バンド呼ぶのってあんまりないんで」

 

――ちなみにさっき音楽的なアプローチが違うって言ってましたけど、バンドはもちろんフロントマンとしても対照的な2人だと思います?
「俺の場合は……松岡修造的というか(笑)、『頑張れ! やれば出来る!』みたいな感じで。初めて来たお客さんは特にそうなんですけど、どうしていいかわかんなかったりするんですよ。別に〈こうやれ〉っていうルールもないけど、なんか怖くて暴れられないとか思われるのがイヤなんで」

 

――見た目も音も優しそうには見えませんけど(笑)。
「でも怖がらせるためにやってるわけじゃないんで。イメージとか先入観だけで判断されたくないからこそ、お客さんには『もっと頑張れ!』って。それでライヴをもっと楽しむことが出来るはずなんで」

 

――それがノクブラ流のエンターテインメントであり。
「やっぱりエンターテインメント性は大切にしてるので。NOCTURNAL BLOODLUSTって音楽的にもライヴもどこか芝居というか演劇的な要素があると思うんですよ。その中でどう楽しむか?みたいな。で、たぶん千秋くんはウチらとは違って、素の自分を見てもらいたいというか」
千秋「でも素の自分をステージで晒すのはキツいですよ(笑)」
「そうなんだ(笑)」
千秋「そりゃ自分の素を見てもらって、それで好きになって貰えたら幸せですよ。それってもはやお客さんが恋人みたいなもんじゃないですか。でも結婚するわけじゃないし、男だって親友になるわけじゃないから。その素と芝居の狭間みたいなのが出るところに、今回出るバンドのボーダーラインがあると思いますけど」

 

――ボーダーラインっていうのは?
千秋「俺、LM.CとかMUCCとかA9は、そういう一線を超えたバンドじゃないかなって思うんです。そこの悩みというか葛藤みたいなものを越えて自由にやれてるバンドというか。でも俺らもノクブラもアルルカンもまだそこが微妙で。素の自分とバンドを背負った自分、その狭間で揺れるんですよ」

 

――なるほど。でも、そもそもビジュアル系って素の自分とは違う何かになることで成立するジャンルでもあって。とことん素の自分から離れて何かになりきったり、非現実的な役柄を演じることで夢を見させたり。その辺はどう思ってるんですか?
千秋「そもそもロックってどっちかっていうと素の自分としての生き様を見せる、みたいなところがあるじゃないですか。だからビジュアル系でもX JAPANとかLUNA SEAみたいにキャリアがあるバンドだと、ビジュアル系なのにストーリーが勝手に生まれてカッコいいんだけど」

 

――なるほど。
千秋「それだけビジュアル系ってもともとファンから自分から遠い存在だったはずなのに、今や一番ファンと接してるのがビジュアル系じゃないですか?別に良いんですけどね。」

 

――そういえばそうだ。
「僕らもビジュアル系の世界に来た時は〈こんな世界もあるんだな〉って思いましたよ。〈これがこの世界のやり方なんだ〉と。でもそこで〈なんで普通にバンドをやらないんだ?〉とは思わないけど。つまりロックだからどうとかビジュアル系だからこうとか、そういうことを意識し過ぎるのは良くないと思いますね」

 

――ノクブラはもともと違うジャンルにいたバンドだけにね。
「しかも僕、たぶんメンバーの中でも一番ビジュアル系ってものに疎い人間なんですよ。だからマインドとかパフォーマンス的なものは後から取り入れたり吸収したりして、それで辿り着いたのが今のスタイルというか。最初はどうやってお客さんを盛り上げればいいのか分からなかったんで、いろんなバンドのライヴを観に行ったりDVDを観たりして勉強して。あとはヘンなキャラを作ったりいろんなビジュアルに変えたり」

 

――試行錯誤を繰り返して。
「それこそ自分に合わないキャラを作ってやりにくかったこともあって。そうするとライヴに入り込めないし」

 

――つまり素の自分ってものから離れすぎるとライヴが楽しくないと。
「そうです。だから100%自分と違うものを演じるって、僕の性格的にはやりにくいです。
素の自分を80%ぐらい出しつつ、残った部分に演技とかパフォーマンスとかエンターテインメント性を加える。そのほうが楽しいし、そうすることでお客さんも応えてくれるようになったんで」

 

――なるほど。で、一方の千秋くんはどうですか? 素の自分の割合とか考えます?
千秋「うーん、そこまで素の自分ってものを考えてやってなかったかも」

 

――じゃあ自分はどういう意識でステージに立ってますか?
千秋「……それが分かんないから悩んでるんじゃないですか」
「でもキャラを演じてる感はあるよね」
千秋「キャラはもちろん少なからずあるとは思うよ。〈この発言はパブリックイメージ通りでしょ〉みたいなとか。今はあんまり考えてないけど……っていうか今話してて思ったんだけど、尋くんはすでに一線超えた人なのかもね」

 

――それは自分と比べてみて?
千秋「うん。『自分のスタイルがある』って言えるところが。俺はまだ言えないから。自分のスタイルとか考えたことないし。だから話聞いてて〈もしかして一線超えてるのか!?〉ってちょっと思ったんだけど。だから、さっき武道館がどうこうって言いましたけど〈自分のスタイルを貫くバンド〉、これがテーマでいいやって。でもこれからもスタイルはどんどん変わってくし。いろんなものを吸収していくから」

 

――尋くんから見てステージでの千秋くんはどう見えますか?
「最近のライヴは観てないから分かんないけど……本当はもっとはっちゃけたいんじゃないかなっていうのは思いましたね。ステージでメンバーを茶化したりお客さんも茶化したりするけど、ライヴ始まったら真面目だったりするし……でも本当はもっとやりたいことがあって、でもそれを見せちゃうとお客さんの見方が変わってしまうから自分を抑えてるというか。実際はどうなの?」
千秋「やりたいこと全部やったらそれこそ犯罪者になりかねないですよ。ムカつくヤツがいたら殴る、みたいな」

 

――尋くんが言ったことと近いけど、照れ隠しの言動だったりパフォーマンスはよくありますよね。あぁ本音が言えないからああ言ってるんだ、みたいな。
千秋「…………」
「……って言われてますよ(笑)」
千秋「照れ隠しはありますよ」
「はははははは」

 

――例えば「ありがとう」って思ってもそれを素直に言えないタイプというか。
「言わないね。『ありがとう』は絶対言わない」
千秋「でも『サンキュー』は言ったことあります。『あり……サンキュー!』って(笑)」

 

――「ありがとう」の「あり」まで出たんだ(笑)。
「でも心から思ってるなら言えばいいんじゃない? ウソでも言ってる人いっぱいいるやん『愛してる!』だの『大好きだよ!』って」
千秋「俺、そういうの好きじゃないから」
「俺も好きじゃない」
千秋「思ってもないのに言えないでしょ、さすがに。あとたぶん『ありがとう』って言おうと思ったことないですよ。だって『来てくれてありがとう』っていうのは大前提じゃないですか。言わなくてもよくないですか? 金払って来てくれて、わざわざありがとうって、俺がお客さんなら『そういうの言うわんでいいからこいや!』って」

 

――理屈ではそうかもしれないけど、それでも言いたい時があるんでは?
千秋「俺の場合、ウワッて感極まるとダイブするから」
「ダイブは禁止やで(笑)」

 

――あはははは! 今の話で2人の共通項が見つかったような気がします。
千秋「そうですか?」

 

――自分らしくいたいってこと。だから100%演じることは出来ないし、思ってないことをMCで言えないんだろうし。そういう意味での〈FACT〉というか、そんなバンドが集結したフェスってことなのかなって。
千秋「あ! 上手くまとめようとしてる! 無理矢理じゃないですか?」
「や、これ言い続けたら終わらへん(笑)」

 

――じゃあ最後に締めてください。
千秋「〈This is The “FACT”〉って、最初に僕が思ったバンドでそのまま決まったんですよ。スケジュールとかみんないろいろあると思うけど、快くOKしてくれて。だから絶対楽しいと思うし……みんな来ればいいと思う」

 

――と主催者が言っておりますが(笑)。
千秋「絶対楽しい。いいイベントになるしかない。誰かがキレたり悪いライヴしても、それもドラマになると思う、〈This is The “FACT”〉なら」

 

文◎樋口靖幸

 


公演情報

■DEZERT PRESENTS
【This Is The “FACT”】

【日程】 2017年1月29(日)
【会場】 新木場STUDIO COAST

【開場/開演】14:00/15:00
【料金】
前売¥6,000(1F/オールスタンディング) 税込 ※入場時ドリンク代別途必要
前売¥6,500(2F/指定席)税込 ※入場時ドリンク代別途必要

【出演】
DEZERT
A9
アルルカン
LM.C
MUCC
NOCTURNAL BLOODLUST

★チケット一般発売日: 12月4日(日)より開始
イープラス
チケットぴあ (Pコード:310-276)
ローソンチケット (Lコード: 76007)

[問]HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999


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