2018年06月17日 (日)
【ライヴレポート】アルルカン × lynch. 2MAN LIVE<laughing in the dark>2018年6月10日(日)、TSUTAYA O-EAST
REPORT - 18:00:09
2018年6月10日(日)、TSUTAYA O-EASTにてアルルカン vs lynch.によるツーマン「laughing in the dark」が開催された。
アルルカンからオファーする形で実現した夢のツーマンのチケットは前売りの段階で完全にソールドアウト。この両者による「タイマン」を多くのファンが臨んでいたことが伺え、開演前から会場のフロア全体は異様なまでの熱気に包まれていた。
先攻はlynch.。
挑まれた側であるにも関わらず、余裕すら感じさせる貫禄をたたえながら登場するメンバーと共に「lynch.」と掲げられた巨大なドロップがゆっくりとステージにせり上がる中、葉月(Vo)の「聞かせてくれ!」という声で「EVOKE」からライヴはスタート。伸びやかな葉月の歌声と、貫禄たっぷりの楽器陣のヘヴィ・サウンドがO-EASTにたちまち大きなうねりを生み出す。
「ようこそ処刑台へ!」と葉月が投げかけ放たれたのは「GALLOWS」、そして「I’m sick, b’cuz luv u.」、「THE OUTRAGE SEXUALITY」と続いていく。カオティックな光景の中でも、葉月の立ち振る舞いはあくまでもスタイリッシュさを貫き紳士ささえ感じさせる。
そんな葉月のMCスタイルは先ほどまでのステージとはうって変わりどこまでも自然体。真っ赤の照明の中で繰り広げられる屈託のないトークは、良い意味でシュールさすら感じさせる。今回のツーマンに誘ったアルルカンへの感謝を述べると、あろうことかおもむろに自身のスマホを取り出し、アルルカンVo.暁のツイートを読み上げる。「行くぞ、ダメ人間!」というTwitter上のファンへの呼びかけに対し、「ダメ人間って言われて怒らないんですか皆さん?」と投げかけ会場が笑いに包まれる。「それでも今日はアルルカンのファン全員を奪う気満々だぞ!」とぶち上げ放たれたのは、まさかのアルルカンの「リビドー」のカヴァー。「今夜だけは愛し合いませんか?」「この時間が愛しい!」と、アルルカンのファンの呼び名である“ダメ人間”達への惜しみない愛を届けた。
「アルルカンのようにlynch.のことをルーツと言ってくれるバンドがいてくれて本当に嬉しかった」と、まばゆいばかりの光を歌った「ADORE」で締めくくり、lynch.をこれでもかというほど刻み付けステージを後にした。
後攻はこの日の仕掛人であるアルルカン。
「挑んだからには必ず勝って帰る」とでも言いたげな鬼気迫る気合が、閉じられた幕越しからですら漂ってくる。
「exist」のイントロと共に幕が開くと、そこにはダークなアートワークが施されたドロップを背に、逆光の中俯いたメンバーの姿が。「アルルカンです。よろしくお願いします」と暁(Vo)がつぶやき、「exist」からライヴはスタート。
1曲目から爆音の中で心の闇を吐き出し感情をぶつける暁の姿は、まるで彼一人だけがどこか違う世界に立っているかのような錯覚すら覚える。そんな彼をこの世界に引き戻そうとするかのように、拳を振りあげ、歌と音を受け止めるオーディエンスたち。
おもむろに「アハハハハ!」と、何かを嘲笑うかのような暁の笑い声と共に届けられた「in the dark」、「omit」とライヴは展開していく。
「白死蝶」では会場全体をミラーボールの光が包み、さながら満点の星空のよう。しかし、その星空の下でアルルカンが歌う人間模様は決して生やさしいものなどではなく、いつも哀しくて残酷な現実だ。その対比がなおさら聞き手の胸を打つ。
MCでは「今日この場所を選んでくれた皆さんとlynch.に感謝しつつ……」と言いながらも、「ここにいる皆さんに1つお願いがあります。人の過去のツイートを勝手に朗読しないで下さい!」と、先ほどの葉月のMCへのアンサーを繰り出し、会場の空気をほころばせる。
「今日はもらえるものは全部もらいに来ました。ここにいる人が欲しいものを持って帰れますように」と「lullaby」が届けられ、暁の名前と同じ名を授けられた「暁」では、さらにお立ち台の上からオーディエンスに己の思いを訴えかける。
ラウドなサウンドやファンと共に巻き起こす熱いノリだけではなく、人間という生き物の心の底をえぐり、ごまかしてしまいがちな生きることへの問題提起こそが、アルルカンというバンドの本質だ。
「欲しいものを求めてやってきて、ここまでの時間でまだ満たされていないということは、ここにいる全員はダメ人間ということです!」とはっきり言い切る暁。「俺の愛すべきダメ人間、見せてくれ!」と、先ほど葉月が「あなたたちはダメ人間なんかじゃない」と、かっさらっていた会場の気持ちを見事なまでに取り返してみせたのだった。そんな彼に言葉に心を掴まれたオーディエンスは本日最高のカオスと一体感で応えて見せた。
ラストの「Eclipse」では通じ合えた手応えからだろうか、一筋の希望を確かに残し、今日一番の笑顔をメンバー全員が浮かべながらアルルカンのライヴは幕を閉じたのだった。
この貴重な夜が当然名残惜しく、鳴りやまないアンコールに呼び戻される形でアルルカンの
メンバーが再び登場。
高校生のころからlynch.が憧れの存在であり、今日のツーマンが実現したことへの感謝をしみじみと語りながら、思わず涙ぐむ奈緒。こらえる涙をおさえきれないまま「バンドをやっていてよかった」と本音を語る彼の姿を見て、「嬉しい」とつぶやくlynch.ファンの声があったことをここに記しておきたい。
そんな中演奏されたのは、アルルカン結成にあたりこの5人で最初に音を出したというlynch.の「pulse_」のカヴァー。葉月をゲストボーカルとして呼び込み、6人による豪華な競演が繰り広げられた。
そして最後の最後に「puzzle」で今一度会場の心をひとつにし、挑む者と挑まれる者同士による、夢のような夜は幕を閉じたのだった。
TEXT:二階堂晃
PHOTO:山本貴也 (ViSULOG)
◆セットリスト
lynch.
01.EVOKE
02.GALLOWS
03.I’m sick,b’cuz luv u.
04.THE OUTRAGE SEXUALITY
05.リビドー ※アルルカンカヴァー
06.GEREED
07.INVINCIBLE
08.melt
09.AMBIVALENT IDEAL
10.MIRRORS
11.ALL THIS I’LL GIVE YOU
12.CREATURE
13. pulse_
14.ADORE
アルルカン
01.exist
02.in the dark
03.omit
04.墓穴
05.NEGA ABILITY
06.白死蝶
07.lullaby
08.暁
09.影法師
10.「私」と”理解”
11.像
12.ダメ人間
13.Eclipse
En1. pulse_ ※lynch.カヴァー
En2. puzzle

