2019年05月18日 (土)
【ライヴレポート】<mitsu PRESENTS『みつどもえ』>2019年5月17日(金)TSUTAYA O-WEST◆立ち塞がる壁の向こうに輝く世界を、仲間と一緒に見たい────。
NEWS - 20:00:56
かつてはν[NEU]のヴォーカルとして人気を博し、現在はソロアーティストとして活動中のmitsuが主催する、3マンライブ『みつどもえ』。
4月5日のTSUTAYA O-WESTからスタートした3本勝負が、5月17日TSUTAYA O-WESTにて幕を降ろした。
最終日には、約1年前の『みつどもえ』でも競演したDevelop One’s FacultiesとBlu-BiLLioNが登場。
それぞれがバンドにとってのターニングポイントを迎えているということもあり、いちだんとパワーアップしたライブでその勢いを見せつけた。
主催ライブならではの試みとして、O.Aでアコースティックナンバーを届けてきた、今回の『みつどもえ』。
初日の『エトリア』(オリジナル)、2日目の『Time goes by』(Every Little Thingカヴァー)に続き、最終日を彩ったのは『らいおんハート』(SMAPカヴァー)だった。
名曲カヴァーは、「初めてmitsuの音楽に触れる人に気軽に聴いてほしい」という想いから、“余興”として準備してきたもの。
とはいえ、一言一言に丁寧に感情を吹き込んでいくmitsuの歌声と、泰斗(Key)&柴由佳子(Vn)による洗練された演奏が生み出すハーモニーは、“余興”と呼ぶにはあまりにも豪華。
通常の対バンイベントではなかなか体験できない濃厚なひとときが、観客の興奮を静かに煽っていった。
最終日のトップバッターは、サポートベースを迎えた新体制で活動中のDevelop One’s Faculties。
幕開けと共に、Asserter(ギターヴォーカル)のyuyaは呟くように『光』を歌い始めた。
じわじわと熱を帯びたフロアは、続く『hope』で激しく燃え上がる。
そして、ファストラップのごとく高速で言葉の弾丸を撃ち放った『ボーダーライン』、繰り返すフレーズが中毒性高めな『アンインテリジブル』、キラーチューン『斑』など、音楽ジャンルに囚われない変幻自在なアプローチで観客を翻弄。
ラストは、ミラーボールが輝く中、『My World』を歌う観客の声がメンバー達を包み込み、6月から始まる『ONEMAN TOUR 「Hello.」』に向けて背中を押した。
一方、2番手を務めるBlu-BiLLioNは、今年1月から休止していたバンド活動を5月7日に再始動させたばかり。
清涼感溢れるハイトーンヴォイスとドラマティックなバンドサウンドが心を震わすラブソング『Aqua』で、冒頭からフロアを青色に染め上げていく。
MCでは、ヴォーカルのミケが、前回『みつどもえ』で共演した際にDevelop One’s Faculties・yuyaとロックな絆を築いたことを明かし、笑いを誘う場面もありつつ。
楽器陣を交えた熱い叫びが印象的な『Believer’s High』、ベストアルバム『Best-BiLLioN』収録の新曲『HOME』といった楽曲達が、Blu-BiLLioNの完全復活を実感させた。
また、タオルを片手に踊った『Ready?』では、対バンのファンも巻き込んで、会場を1つに。
最後は6人の音・個性がハジける『響心identity』で駆け抜け、トリのmitsuにバトンを渡した。
ふいに、ラテンの香り漂うイントロが流れ始める場内。心地良い緊張感の中、幕が開けると、ステージには豪華なサポート陣<夢時(Gt)、KOUICHI(Gt)、Sato(Ba)、Aki(Dr)、泰斗(Key)、柴由佳子(Vn)>を従えたmitsuがスタンバイしていた。
強気な視線で挑発しながら1曲目に届けたのは、『みつどもえ』では初披露となる最新曲『蜃気楼』。
汗ばむ夏の夜のような妖艶さを纏ったサウンドと、常に燃え続ける情熱を描いた等身大の歌詞――その絶妙なバランスは、始動当初から、mitsuの進化を見守り続けるコンポーザーKOUICHIとの共作だからこそ成せる技だ。
もちろん、それはKOUICHIに限らず。この日も、最強のサポートメンバー達との見事なコンビネーションプレイが随所に光る。
Satoのベースに手招きされ、滑り込んだ『MIDNIGHT LOVER』では、MVと同様に仮面をつけたダンサー<RYO、TAKA-KI>も登場し、ソロアーティストという枠を越えた華やかなエンターテインメントショーで観客を魅了。
体を這うような艶めかしい歌声も、初日・2日目とはまた違った彩りを加えていた。
中盤には、しっとりとバラードを届ける一幕も。泰斗が奏でるピアノに乗せて、そっと歌い始めたのは、DaizyStripperの風弥~Kazami~が作曲したという『Naked』。
<長すぎる夜も 雨の朝も あなたがそばにいてくれたら>
そう、絞り出すように歌うmitsuの想いを残さず受け止めようと、観客は食い入るようにステージを見つめる。
<ねえ 教えて 教えてよ ねえ>という問いかけがループする『遥か』も、さまざまな出会いと別れ、変化や後悔を繰り返しながらステージに立ち続けるmitsuらしいメッセージソング。
そのまま、自問自答の先に見出した1つの答え、“ダンス”を取り入れた最新曲『じゃないか』へと繋ぐと、観客も一緒になってキュートに踊った。
じつは、『みつどもえ』初日に『じゃないか』を初披露し、
「30歳にして初めてダンスに挑戦しました。10年前の俺だったら絶対やめろって止めてた(笑)」
と語っていたmitsu。
その言葉からもわかるように、ヴィジュアル系の様式美を大切にしながらも、固定概念に囚われずに新たなスタイルを確立していくことは、彼がヴォーカリストであり続けるために欠かせない変化だ。
しかし、それを笑顔で受け入れてくれる同志<ファン>がいるからこそ、自信を持ってステージに立てていることを彼はよくわかっている。
それゆえ、どんな時もmitsuは本音で観客に向き合うし、そんな心の距離の近さが、これほどまでに血の通ったライブを生み出しているのだ。
実際、4周年記念の恵比寿LIQUIDROOM公演を控える今、彼にとって仲間の存在はより大きなものに変わっていた。
MCでも、赤裸々すぎるほどに「恵比寿LIQUIDROOMを観に来てください!」「320円のチケットもあるので、友達を誘って来てください!」と訴えかけていたが、“mitsuという挑戦のストーリー”において、観客はもはや傍観者ではない。
1人1人が船の船員となり、共に立ち向かわなければ、正直、恵比寿LIQUIDROOMという大きな壁は乗り越えられないだろう。
それでも、「立ち塞がる壁の向こうに輝く世界を仲間と一緒に見たい」という好奇心が、昔から変わらない歌への情熱が、mitsuを冒険へと駆り立てる。
その泥臭くもまっすぐな気持ちに応えるよう、mitsu・メンバー・観客が互いに激情をぶつけ合った『Crazy Crazy』、タオルを振り回し、楽しい気持ちを見せつけた『Into DEEP』……と、曲が進むごとに高まる一体感が頼もしい。割れんばかりの掛け声を全身に浴びたmitsuは、「声出てるね!」「みんな、すごいね!」と笑顔を輝かせると、ドレッシーな衣装を汗で濡らしながら全力で暴れ倒した。
そして、この先も、自分が実感している熱さだけを信じて突き進むことを改めて誓い、ラストナンバー『For Myself』へ。上手くいかない現実に追い詰められ、引きこもっていた時期に作ったというささやかな希望の曲が、この瞬間、彼の目の前にいる1人1人の心を結んでいった。
時には弱い自分と向き合いながら、地道ながらも1歩ずつ進んできた4年間。
その日々を噛みしめるように、仲間達の頼もしい歌声に耳を澄ますと、mitsuは「今日が最高に楽しかったから、これを糧にして、明日からまた日々を戦っていきましょう」とエールを送った。
6月にはイベントライブへの出演もありつつ、スッと前を見据える彼の顔には、恵比寿LIQUIDROOMへの覚悟が滲む。
『みつどもえ』を通して、バラエティーに富んだヴィジュアル系アーティストとの勝負を繰り広げたmitsuだが、本当の勝負相手は自分自身なのかもしれない――。
Text:斉藤碧
Photo:ayak
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