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2019年07月29日 (月)


【ライヴレポート】<怪人二十面奏 単独公演巡業二〇一九「汎幸聲命」千穐楽>2019.7.25 TSUTAYA O-WEST

REPORT - 10:44:02

アルバム『聲命力』の発売から一ヶ月。ワンマンツアーを終えて、怪人二十面奏が東京へ戻ってきた。ツアーファイナルの会場は、TSUTAYA OWEST。ワンマンでは初となるこの会場を自分たちの色に染め上げた、熱い一夜の模様をお届けしよう。

 

開演時間ちょうどに暗転すると、ファンの声が暗闇いっぱいに溢れる。鼓動の音に続いて、SEが流れ出すと共に幕は開いた。その中央に立っていたのは、手足を紐でつながれた、操り人形そのものと化したマコトの姿! ライヴハウスのステージという場所からは異様とも言えるその光景に、一気に目を奪われる。

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SEが止まった一瞬の間に紐が切れると、生気のない手足がその拘束から解かれた。と、思った途端、「ダムド」が始まり、いよいよライヴはスタート。マコトも、怪人二十面奏のヴォーカリストである、いつものマコトに生まれ変わったかのようにイキイキと動き出す。

 

このオープニングは、江戸川乱歩の作品の登場人物を模したバンド名や、ステージの背景やアルバムジャケットに使用されている丸尾末広のイラストといった、彼らの世界観に通じるもの同様、その個性を語る上で重要なポイントであることは間違いない。けれどもこの日、ロックバンドとしての彼らが持つ魅力も、いかんなく発揮されたことは声を大にして伝えておきたい。それは、最初から激しいステージングで、その気合いを剥き出しにして見せたKENの姿にもはっきりと表れていた。

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「ダムド」から「狼」へとなだれ込むと、オーディエンスは元気いっぱいのジャンプで応える。続いて、ニュースを告げる、古いアナウンスのような語りで始まったのは、「G,J クローバー連続殺人事件」。独特の空気感とマコトらしいメロディが堪能できる一曲だ。

 

最初のMCでは、ちょうど一ヶ月前、626日に発売したアルバム『聲命力』の曲たちが、ツアーを経てさらに成長したことを満足そうに告げた。今日は、そんなツアーの最後を飾る大事なファイナル。千穐楽のこの夜に、さらに盛り上がっていきましょうと、マコトが呼びかけた。

 

リズミカルに、そしてサビではスピード感いっぱいに、心地よく流れ、照明も含めたキメで見せ場も作った「想望カルト」、勢いたっぷりにパワフルなシャッフルで体を動かした「アヴストラクト シニシズム」、さらにスピードをあげつつもメロディをきちんと聴かせた「明日へ」と続く。

 

「見えない未来を受け止めよ」という意味深な言葉から、タイトルコールに導かれて始まったのは「近代的極東唱歌」。気迫のこもった歌声が会場いっぱいに広がる。うっすらと予感させた不穏な空気は、赤い照明がステージを染め上げ、サイレンが鳴り響いたところで、明確なものとなる。KENのつまびくフレーズが、「一銭五厘ノ命ノ価値ハ」の始まりをドラマチックに告げた。朗々とした歌声で、何のための命なのかと訴えかけるマコト。この曲の背景にあるであろう、昭和の暗い一時代を生きた人々になりきるように語った台詞は、凄みさえ感じさせた。

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一転、ピアノの音色から「命日」が始まると、悲しみをたたえた世界が広がっていく。つぶやくような、問いかけるような歌声は、人間臭い感情に満ち満ちている。最後のKENのギターの音色から、次の「噫無情」へ。アルバム『聲命力』収録のこの曲は、個性的なメロディが多い怪人二十奏の曲の中では、ある意味キャッチーとも言えるメロディを聴かせる曲。マコトのエモーショナルな歌声が、メロディのよさを素直に届けてくれた。

 

曲が終わると、少しリラックスした様子で、「晴れてよかったね」と話し始めたマコト。話を振られたKENは、「ヤバいっすね」と口にすると、このステージを満喫している気持ちを口にする。このツアー中にMCでよくしゃべるようになったそうだが、曲中とはガラッと雰囲気を変えて、マコト曰く小粋なトーク(笑)を楽しませてくれるのは、ファンにとってもうれしいことだろう。

 

「行くぞ~っ!」というKENの気合いいっぱいの声から、とうとう後半戦。急き立てるような「可不可」では、オーディエンスのノリもいよいよ激しさを見せていく。それに応えるように、KENはステージ前の柵へと足をかけ、フロアへと前のめりになってプレイ。マコトとKENが一緒になって煽ったのは、「ヲルガン坂に見る夢は」。オーディエンスは赤い小さなメガホンを手にし、ステージに応える。「ブラックアウトヒステリーアワー」、さらに「死せるCecile セルシン摂氏0度」と、ますます勢いをつけてクライマックスへと疾走していった。

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「まだまだ行くで、最高の景色を作りましょう!」と、マコトがさらにオーディエンスを焚きつけたところで、「劣等感」が始まる。赤いペンライトならぬ、包丁ライトをオーディエンスが、楽しそうに陽気に見えるのは、少々不思議な光景。畳みかけるような「消心叫奏シネマ」のマコトの歌は、切々と訴えかけてくる。怪人二十面奏で聴かせるマコトの歌は、どれも濃く、鋭い感情に満ち満ちている。一方KENのギターは、ふっと耳をかすめ、深く印象に残るフレーズをあちこちに忍ばせているのが特徴と言えそうだ。

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本編最後を飾ったのは、アルバムのタイトル曲でもある「生命力」。マコトもKENも全力をぶつけるようにステージに挑んでいく。お立ち台の上でしゃがみこんで、力を振り絞り、全てを出し切るように声を発し続けたマコト。「生命力」というタイトルにふさわしい、自身の命や存在そのものを賭けた、圧巻のパフォーマンスだった。全てを出し切ったからだろうか、曲が終わるとすぐさまステージから去り、KENもそれに続いて行った。

 

アンコールを求める声に応えて、ツアーTシャツに着替えてステージに戻った二人。「砂の街」を聴かせた後、マコトは改めてこのワンマンについて振り返った。怪人二十面奏にとってO-WESTでのワンマンは通過点でしかないこと、まだまだ夢を見たいこと。過去には、もっと大きな会場でワンマンをした経験もある二人だ。当時と今では、シーンを取り巻く状況がまるで異なることは、二人はもちろんファンもわかっていることだろう。けれどもマコトは、「本気で夢見てます」と語った。それは、世の中の流れなど無視して高みを目指して突き進む、という力強い宣言だ。その心意気をおおいに買いたいと思う。

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「哀しきトリックスター」の後、「ここからまた始まります、ありがとう!」と告げて、最後は「其の証」。マコトならではのメロディに乗せて感情をまき散らし、KENも激しいコーラスで一緒に声を届ける。今の自分たちの全てを出し切るかのような、そんな二人の姿は清々しくさえあり、2ndアルバムである『聲命力』が、そして作品を引っさげたこのツアーが、大きな節目となったことが伝わってきた。

 

マコトが「ありがとう」と高らかに吠えて、ステージを去った後、早くも次のワンマンツアーの告知映像が流れ、今日の勢いのまま、彼らが突き進んでいくことが約束された。これでこの日のワンマンはすべて終了。けれども、アンコールを求める声は全くおさまる様子がない。

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延々と続く声に応えるように、予定外のアンコールのため、再び二人がステージに登場する。最後の最後に贈られたのは、「愛憎悪」。この予定外のプレゼントで、この日の夜は幕を下ろした。結成4周年を迎え、5年目の活動へと向かう怪人二十面奏は、このライヴの成功を糧に、ますます力強く進んで行くことだろう。前を、上をみつめ、ひたすら前進しようとするその姿勢に、大きな声援を送り続けたい。

 

文:村山 幸

撮影:米田 光一郎

 

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Setlist

1.ダムド

2.

3.G,Jクローバー連続殺人事件

MC

4.想望カルト

5.アヴストラクト シニシズム

6.明日へ

7.近代的極東唱歌

8.一銭五厘ノ命ノ価値ハ

9.命日

10.噫無情

MC

11.可不可

12.ヲルガン坂に見る夢は

13.ブラックアウト ヒステリーアワー

14.死せるCecile セルシン摂氏0

15.劣等感

16.消心叫奏シネマ

17.生命力

アンコール1

18.砂の街

19.哀しきトリックスター

20.其の証

アンコール2

21.愛憎悪

 

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  • LIVE情報


■BadeggBox presentsBEGINNING BRILLIANT AUTMUN TOUR 2019

9.22()渋谷DESEO
出演:The Benjamin/怪人二十面奏/ザ・シンナーズ/マツタケワークス/マルコ
10.04()仙台HOOK
出演:The Benjamin/怪人二十面奏/THE NOSTRADAMNZ/マルコ
10.05()宇都宮HELLODOLLY
出演:The Benjamin/怪人二十面奏/マツタケワークス/マルコ

 

■怪人二十面奏濱書房籠城スリーデイズツーマン企画「怪人とXXX
9.27()Music Lab.濱書房 出演:怪人二十面奏 /The THIRTEEN
9.28()Music Lab.濱書房 出演:怪人二十面奏 /蘭図
9.29()Music Lab.濱書房 出演:怪人二十面奏 /ホタル

 

■怪人二十面奏 単独公演巡業二〇一九 秋 「ネオ・シュルレアリスム」

11.28()池袋EDGE

11.30()京都MOJO

12.01()大阪心斎橋FANJ

12.16()新宿BLAZE

 

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オフィシャルHP

http://k20.jp/