2023年09月18日 (月)
【ライヴレポート】<FAIRY FORE ワンマンライブ>2023年9月17日(日)町田PLAY HOUSE◆
REPORT - 21:00:51町田PLAY HOUSEと言えば、LUNA SEAが活動していたライヴハウスとしてよく知られている。その会場で生まれ、解散ライヴを行ったFAIRY FOREが、18年の歳月を経て町田PLAY HOUSEに集い、ワンマンライヴ「Do you want some more? おかわりはどぉ」を行った。4月の限定復活ライヴでは予定されていなかった“おかわり”の模様をお届けしよう。
まずオープニングアクトとして、現王園が現在ソロプロジェクトとして活動中のJagged Little Pillが登場。FAIRY FOREのヴォーカルとは別人なのか双子の兄弟なのか、本人としても設定が曖昧なまま(笑)、ウォーミングアップと称して会場を温める。11月12日にここ町田PLAY HOUSEでワンマンを控えており、音楽活動を続ける彼の現在に触れてみてほしい。
そしていよいよおなじみのSEが流れると、FAIRY FOREのライヴがスタート。YASU、YOKO、サポートギターのTACA、そして最後に現王園が姿を現した。歓声に応え、笑顔がこぼれるが、表情からは緊張もうかがえるよう。フェードアウトするSEと入れ替わるようにメルヘンチックなオルゴールの音色が流れ、オープニングを飾るのは「Merry-Go-Round」。キラキラ輝きを放つようなメロディを、甘く伸びやかに歌い上げる現王園の変わらぬ個性が懐かしい。ベースソロではYASUが神妙な面持ちで真剣にプレイし、YOKOの表情からもプレイに集中していることがうかがえた。
続いて、「CHILD OF WIZARD」が始まると、ダンサブルなリズムに心地よく体が揺さぶられる。“何度も”や“いつか”といったワードが繰り返される歌詞に、希望を見つめ続ける姿勢がにじむ。それは若さや青さから生じた言葉だったのかもしれないが、同時に今なお力を与えてくれるものでもある。YASUが初めて作曲した「VIRGIN」を続け、手拍子で同じリズムを刻めば、心地よい一体感が広がった。
最初のMCでは、PLAY HOUSEが40周年を迎えることに触れ、予定されていなかったこのライヴをすることを決心した思いを語る現王園。アニメの主題歌として子どもの頃に知ったというファンからのメッセージを紹介して、「ジェット」が始まる。歳月の流れや世代を超え、音楽が愛され続けていく証のひとつがここにあった。さらに異国情緒のある旋律に、独特の世界観を漂わせる「MR.BADMAN」を続けると、YASUはかけ声とともにこぶしを突き上げ、ファンを先導。会場の熱は徐々に高まっていく。
激しく明滅する照明の光の中、「School Days」。現王園の男らしい厳しい表情が照明に照らし出され、繰り返されるリフや気持ちよく揃ったキメに、ロックバンドらしいカッコよさが光る。そこへ「Darling」が優しく流れ出すと、パッヘルベルのカノンのモチーフとゆったりとしたリズム、優しく力強い歌声に会場全体が包み込まれ、さらに亡き人を思う切ない心情が広がった。曲の世界に入り込むファンを前に、いっぱいの光で満たされたステージからメンバーは一度去っていく。
ここで、“年をとった少年たちが息を整える”ための休憩タイム(笑)。リハーサル風景やYASUのトレーニング風景など、思わず笑いがこぼれる映像を交えつつ、今日のワンマンの目標として掲げたSOLD OUTを無事達成したことを報告。入念に準備を重ね、この日を迎えたことが伝わってきた。
そしてライヴは後半戦へ。YASUが現れた後に「CAN’T YOU CELEBRATE?」をイメージしたSEが流れ出したところへ、現王園とYOKOが結婚式へ向かうカップルのように腕を組んで登場。実は二人は出会って40年の長い付き合い。というわけで、いきなりのルビー婚(結婚40周年記念)が行われることに。現王園が列席者へ挨拶するように来場のお礼を告げ、さらに両親へもお礼を。この日は実際に、家族など近しい人が足を運んでいることもあり、よりアットホームな空間となっていた。
後半戦は、FAIRY FOREと言えばこの曲、「SWEET-ness」から。メンバーも会場もリラックスしてきたのか、楽しく和気藹々とした空気が広がる。続くMCでは、YASUのステージドリンクにカレー(!)などが仕込まれていたことが判明、「いじりすぎ」と訴える一幕もあり、ひたすら楽しく幸せな空気でいっぱいに。
「トバしていく」という言葉どおり、「LIFE」でストレスを発散するかのように皆で元気よくジャンプ! さらに軽快なビートとともに気持ちよく突っ走った「VIVID」。現王園はイキイキと表情を輝かせながら、ステージを自由に動き、後方から見守るYOKOも笑顔を浮かべ、楽しんでいる様子が伝わってきた。
ライヴもいよいよ終盤、「Idoll」が始まるとともに、待ってましたとばかりにフロアではヘドバンに揺れる頭が目に入ってくる。ここまでにはなかった熱量が一気に解き放たれたよう。そんな光景を目にした現王園は、過去にイベントで日本武道館のステージに立ち、最高の景色を見たと口にしたうえで、「一番見たかったのは今日の景色です」と断言した。
「一番自身のあるこの曲でお別れしたいと思います」と最後を飾ったのは、デビュー曲「LOVE SICK」。歳月を経ても、曲が持つエネルギーが衰えてないことを再確認する。ファンの合唱と、それに耳を傾ける現王園の表情に、バンドとファンが重ねてきた時間と離れていた歳月、それらを経た今のかけがえのなさをひしひしと感じた。「2023年9月17日、FAIRY FOREでした!」という高らかな宣言とともに、本編は終了。
アンコールで現王園がまず口にしたのは、このワンマンができた喜びと、次のライヴが決まっていないこと。「今日で一旦終わります」という言葉に寂しさを感じないと言えば嘘になるが、だからこそここまで全力でプレイし、全力で楽しみ尽くせたのかもしれないとも思う。
予定されていたアンコールは「Boys be ambitious」と「この花が咲いて枯れるまで」。歌詞を書いたとき、耳にしたときには想像もしなかった未来や未来の自分がいる。そんな人生の不可思議さを、FAIRY FOREと共に歳を重ねてきたファンの方も感じたのではないだろうか。
演奏を終え、繰り返しお礼を告げる現王園の横で、YASUから「もう一曲やりたくね? ダメ?」の一言。出し切れなかったのではなく、名残惜しくてしかたがなかったのだろう。どの曲を演奏するか、ファンからリクエストを募ったりしつつも、最後はデビュー曲「LOVE SICK」で締めくくることに。喉がギリギリの状態になってしまった現王園を支えるようにファンの声が響き、YASUもYOKOも本当にこれが最後とがむしゃらにプレイする。すべてを出し切った心地よさと一抹の寂しさが会場を満たした。
その後も、ファンがメンバーを自由に撮影したり、ファンを交えて記念撮影をしたり、最後の最後まで、この一瞬一瞬を楽しませたい、そして楽しみたいという気持ちにあふれた時間が続いた。復活ライヴをする理由や考え方はさまざまだが、バンドとファンの再会が喜ばしいことであるのは間違いなく、それだけでいいとも言えるだろう。惜しくもこの夜、町田PLAY HOUSEに足を運べなかったファンの方は、販売されるライヴDVDの詳細を待っていてほしい。
文:村山 幸
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【2023.9.17 FAIRY FORE ワンマンライブ】
@町田ThePlayHouse
1.Merry Go Round
2.CHILD OF WIZARD
3.VIRGIN
4.ジェット
5.Mr.BAD MAN
6.school days
7.Daling
–映像–
8.SWEET-ness
9.LIFE
10.VIVID
11.アイドル
12.SEXUAL EXCITEMENT
13.LOVE SICK
-Encore-
14.Boys be ambitious
15.この花が咲いて枯れるまで
-Special Encore-
16.LOVE SICK