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2020年04月05日 (日)


超濃密ロングインタビュー!【Chanty】2020年3月25日発売、3rd Mini Album「正体不明」◆結成時からバンドが持ち続けてきた魅力に、現体制ならではの新しい要素とバンドマジックを加えて生み出した今作について────。

NEWS - 18:00:41

Chantyから届けられた、3rd mini album『正体不明』。

結成時からバンドが持ち続けてきた魅力に、現体制ならではの新しい要素とバンドマジックを加えて生み出した今作について、4人に語って頂いた。

6周年を経て、より充実した状態で音楽と向き合う彼らが紡ぎ出す音色と言葉を楽しんで欲しい。

 

 


 偶然50%、必然25%、各々の好み25%で生まれた作品。


 

――昨年リリースした2枚のシングルを経てのミニアルバム、今作はどのような構想から始まったのでしょうか?

成人:Chantyの場合、最初の時点で「こういう作品を作ろう。」と構想をガッチリ固めて制作することがほぼ無いんですよね。その時に個々が思ったことや作りたいものが、自然と同じ方向に向かっていく形が多い。

白:そうですね。本当に、自然とこういう形になっていったと思います。

野中:偶然というと聞こえが悪いかもしれないけれど、各々が考えていることに重なる部分が多い4人なので。偶然50%、必然25%、あとの25%は個々の好みで生まれた作品じゃないかな。

白:僕らほどプライベートで好む音楽が近いバンドは、珍しいと思うんですよね。周りを見ても、あまりそういう話は聞かないですし。

 

 

――確かに。4人揃ってライヴを観に行かれることもあると仰っていましたよね。

白:はい。他のメンバーが1人で行こうとしているライヴを知って、いいな、俺も一緒に行きたかったなと思うこともあるくらいです()

成人:あとは、白くんが加入後の早い段階で最初から在籍していたんじゃないかと感じられるくらいChanty6年間を自分の中に取り込んでくれたことが大きいと思います。それは、レコーディングを重ねるほど強く感じますね。

白:ギュッと詰め込んだ分、ちょっと色々はみ出してきていますけど()

野中:きっと、メンバーから見えないところで想像の倍以上の努力をしてくれているんだろうなと感じます。

白:改めて言われると、ちょっと恥ずかしい・・・()

一同:()

 

 

――昨秋の時点で新音源のリリースとワンマンツアーを同時発表されていましたが、今作の選曲でツアーを意識した部分はありますか?

野中:発表の時点では、リリース日に関して「寒いうちにリリースします。」というアバウトなアナウンスだったんですね。“10月~11月頃にレコーディングをして、余裕を持ったスケジュールで作ろうという考えもあったものの、なかなか思うように進まないところもあり。なので、ツアーを見据えて作ったアルバムという言い方をするのは少し違うかもしれないけれど、結果的にはこういう作品になりましたね。

 

 

――なるほど。聴かせて頂いた時、ライヴ感を意識して選曲なさったのかなと感じた部分があって。

一同:あぁ、それはあるかも。

成人:本当に、なるべくしてなった感じです。

 

 

――その時々に表現したいものを純粋に生み出しているのは、素敵なことだと思います。

白:確かに、その時に好きなものを詰め込んでいますね。

 

 

――だからこそ、先程のお話にあったメンバー間で好きな音楽が一致していることがプラスに。

白:そう。自分が作った原曲を各々がアレンジしてきてくれた時、ちょっと違うなとなったことが無いんですよ。

野中:うん、無いよね。メンバー全員が、予想を上回る素晴らしいアレンジをしてくる。原曲を作った自分のほうがあ、ヤバい!と思うくらい()。だからこそ、もっともっと良くしたいという気持ちになる。

白:相乗効果が生まれる。

野中:今回の制作では、一層強くそれを感じることができました。

 

 


以前からある良さと、今の体制になってからの良さ、その両方を共存させていきたい。


 

――制作にあたって、各自が意識したこと・挑戦したこと・悩んだことなどあればお聞かせください。

野中:僕個人は、挑戦したことは無いですね。変な意味ではなく、おそらく自分はChantyで挑戦したことって今は無いんです。難しくてカッコいいフレーズを80%の完成度で弾くよりも、自分ができる範囲でこれだ!と感じられるフレーズを120%で弾きたい。現状はそういう考えでいるので、冒険や挑戦はしていないです。

白:加入して最初のレコーディングの時から“Chantyの楽曲が元々持っている良い部分を引き継ぎたいと思っていたので、今回もその意識は持ちつつ、新体制だからこその新しいスパイス的なものも取り込んでいけたらいいなと。以前からある良さと、今の体制になってからの良さ。その両方を共存させていきたいという気持ちは、この先もずっと変わらず持ち続けると思います。自分としては、自然とそういう楽曲やフレーズが出てくるようになってきたんじゃないかと感じます。

野中:自分だけかもしれないけれど、今回収録された楽曲達を聴いていたら、以前のChantyみたいな印象が少しあるような気がしたんです。『叫びたくなったから』や『嫌いなこと』の時は、そこまで感じなかったんだけど。

 

 

――確かに、今回はライヴで盛り上がるであろう攻めの曲調も多かったので、そういう側面での“Chantyらしさのようなものを感じました。

野中:うん。別に、前と同じようなことをしているわけではないんだけどね。

 

 

――新体制直後から相当数のライヴを経験されたことによって得たものが表れたのかな、と。

白:確かに!特殊なことをしていても、これはChantyではないなと感じることが一切無いし、とても自然なんです。前作以上に、それを強く感じましたね。

 

 

――成人さんはいかがですか?

成人:拓ちゃんと一緒で、挑戦ということについては毎回意識していないです。自分の中で常に第一に考えているのはボーカルを邪魔しないことなので、無理に派手なフレーズを入れて目立ったりはしたくない。あくまでも聴きやすさを重視して、自分なりの音量調整などを意識しています。だから、「このフレーズが聴きどころです!」みたいな話はできないんですけど()

野中:めっちゃわかります()

成人:自分の中にあるこれがChantyというものを上手く形にできたらという気持ちでやっているだけなので、セールスポイントは特に無いんです。

白:リズム隊の2人は、狙いどころが玄人思考なんですよ()

野中:聴きどころを素直に答えるなら、ボーカルですね。全曲、ボーカルかもしれない。

白・成人:そうだね。

芥:えっと、聞かなかったことにします。

一同:(笑)

 

 

――それは伝わってきます。その上で、それぞれのパートにもしっかり存在感があって、尚且つゴチャつかないのがChanty特有だなと。

野中:そこに関しては、白くんがしっかり考えてくれているからこそじゃないかな。

白:意外と考えていないよ()。特に、『パッチワーク』は凄かったよね。

野中:凄かった!エンジニアさんから、「ボーカルもギターもベースもドラムも全員やっていることがバラバラで、でも隙間に全部ハマっていて、作業していて楽しかった。」と言われました。それも、偶然ですけど()

芥:音楽理論的な面での知識人が居ないバンドなので。

野中:でも、それがChantyなのかもしれないです。メンバーの中に誰か頭脳派が居て計算してやっていたら、こうはなっていないと思う。おそらく、音楽理論で考えたらアウトなフレーズもあるんですけど、そこも含めてChantyとして上手く着地した感じがします。

芥:そうだね。俺も、個人的に意識したことなどはあまり無いんですよ。

野中:たぶん、楽器を始めた頃は自分はここがカッコいいから、作品に残したいみたいな想いを誰もが持っていたと思うんですけど、ここまで続けてくるとそれがもう無くなっているんですよね。

白:個としてのことよりも先に、全体像を見据えているのかもしれない。

 

 

――バンドとして理想的だと思います。

芥:そうですね。俺はスケジュール的な部分も含めて、いつもどおり死にそうになったことくらいです()。でも、もう死に慣れしてきたので・・・。

一同:()

野中:スケジュール的には、今回が一番死にそうやったよな?

芥:うん。でもね、大丈夫だったんですよ。

白:「冷蔵庫を開けたり閉めたりしなくて済んだ。」と言っていたもんね()

 

 

――冷蔵庫??

芥:レコーディングが辛くてストレスを感じ過ぎると、叫びながら冷蔵庫の扉の開け閉めをしてしまうことがあったんです()

野中:ストレス発散の矛先が冷蔵庫に()

芥:家で歌録りを行うので、ぶつけどころのないものが溜まってしまうとそんな行動に出たりしていたんですけど、今回は大丈夫でした。歌詞制作も、適度に時間が無くて適度に眠れなくもなりましたけど、乗り切れましたね。レコーディング・ハイが残っているのか、完成した今のほうがちょっと眠れない()

 

 

――まだアドレナリンが()

芥:そう、きっと身体が持ち堪えてくれたんでしょうね。集中力もありましたし。歌詞に関しては、もしかしたら今までの自分とは少し違う要素が入ったかもしれないです。意識的に狙ったことではないですけどね。

 

 

――お話を伺っていると、狙っていないことChantyの強みな気がします。

芥:もっと狙えるようにもなりたいですけどね。インタビューで「計算です!」と言えるようになりたい()

野中:狙っていないって、武器でもあり弱点でもある気がするんです。

成人:今回のレコーディングでも、「こういうものを作ろう。」と軽いテーマみたいなものを持って取り組んでみた曲があったんですけど、結局は形にならなかったですね(苦笑)

芥:ずっと「(狙わなくて)結果、良かった。」と言い続けてきているから、それも怖いなとは思っています。

野中:狙って形にできなかった場合、スタジオでテンションが下がりますし、喫煙所に行く回数が増えます()

芥:野中くんのテンションはひとつのバロメーターというか、彼の様子によってアレンジ作業が順調かどうかわかることが多いんですよ()

成人:わかる()

野中:えっ、俺!?()

一同:()

 

 


行き場が無かったり、わからなかったりするものへの、希望や焦りや憎しみ。改めて、そういうものを書こうかなと。


 

――「正体不明」という作品タイトルが、非常に早い段階から発表されていました。

芥:ミニアルバムとかのタイトルって、大体の場合は歌詞の内容からなぞらえて付けられたりするじゃないですか?でも、俺は楽曲がしっかり固まってからじゃないと歌詞が書けないタイプなので、ここ数年はずっと「そろそろ関係者用の資料を作るから、タイトルを出して欲しい。」と野中くんに言われても「無理です!」と言い続けてきたんです。

野中:実際、本当にタイトル未定と書いた資料を提出してきました()

芥:でも、今回は催促される前に「タイトルは『正体不明』でいこうと思っています。」と伝えたんです。

野中:そう、早かった!なので、これまでタイトル未定としていたところに、今回は『正体不明』としっかり書くことができました。ただ、収録曲の詳細については-1 未定”“-2 未定って・・・()

一同:(大爆笑)

芥:さすがに、そこまでの冒険は俺にはできなかった!()

 

 

――変更が出て差し替えるほうが大変ですしね()

野中:うん。だから、本当に『正体不明』でしたね()

 

 

――『正体不明』というワードが早い時期に生まれたのは何故だったんですか?

芥:その時点ではまだ歌詞はできていなかったですけど、ある程度曲が固まっていく中で方向性が見え始めていた時期で、自分の中にはこういう歌詞を書いていきたいなと浮かんできていて。行き場が無かったり、わからなかったりするものへの、希望や焦りや憎しみ。改めてそういうものを書こうかなという気持ちになって、それが『正体不明』という言葉になって表れた。だから、タイトルを発表した時は「俺は『正体不明』というテーマで歌詞を書こうと思っています。」と報告をした感じだったんですよね()

 

 

――実際、全曲通して拝聴した時、不確かなもの・不確かになってしまったものや感情に対する怒り、不安や葛藤、そこから生まれる光のようなものを感じました。

芥:そうなんですよ!それも腑に落ち切っていない感じで構わないんですけど、そういうことです。先にタイトルをつけて、それに基づいて書こうと思った経験はあまり無いですけど、今回は真ん中に土台として『正体不明』があったからこそできた歌詞のアレンジなども多かったと思います。

 

 

――1曲ずつ伺っていきます。『piano#6』は作品の幕開けにぴったりな楽曲、やはりChantyの世界観にはピアノがよく似合います。

芥:いつもお願いしている、山口茜さんに弾いて頂きました。6周年公演の時から使っている楽曲で作品を始めてみようと思って。ライヴのSE的に感じて欲しかったんです。ピアノって良いですね。

成人:メンバー皆、ピアノは好きですね。

芥:この曲には、僕らの行進曲のようなイメージを持っているんです。ちょっと足を引きずりながら、それでも進んでいくような・・・。

野中:わかる。ちょっと張り詰めた演奏ですけど、弾いてくれた山口さんはそんな張り詰めてはいない方なので、そのギャップが面白いなと思いました()

 

 

――とても繊細な音色です。

野中:本当に繊細で、切れてしまいそうな感じですよね。

 

 

――次の『逆上のパルス』がライヴの1曲目で一気にテンションを上げるような始まり方をするので、良い形で引き立てあっていて。

芥:『逆上のパルス』のイントロで、高田馬場AREAのステージ幕が開いたような感じがしますよね()

 

 

――この2曲の流れを聴いた時に、ツアーのことを意識した構成なのかなと感じたんです。

芥:偶然なんです()

野中:やっぱり、カッコつけて「そうなんですよ!」とは言えないバンド()

 

 

――ある時、突然「狙っていました!」みたいなコメントしか返ってこなくなったら、それはそれでどうしましょう・・・()

一同:()

芥:曲順は俺が中心で考えていて、最初は『おやすみ』から始めようと思っていたけれど、すべての歌詞を書き上げてレコーディングをしてみたらちょっと違うなと感じたんです。『piano#6』が頭なのは決定していて、(次は)『逆上のパルス』かもしれないと。

白:うん。曲の繋ぎ方を想像した時に一番しっくりきたし、こういう流れが好きだなと思った。

野中:イベントライヴのセットリスト感があるよね。

芥:今までのアルバム作品も含めて、結果的にライヴのセットリストとして演奏できそうな曲順になっていると思う。

 

 

――流れ的にも曲数的にもぴったりですし。

芥:内容も曲のバリエーションも含めて偶然ではあるんですけど、並べてみたら結局は必然的にそういう正解に導かれるんですよね。きっと『おやすみ』が『逆上のパルス』の位置にきても、Chantyをよく知ってくれている人達はこれもアリだなと思ってくれるだろうし。

一同:そうだね。

 

 

――『逆上のパルス』は、焦燥感と疾走感を孕んだ爆発力のある曲です。

白:収録曲が決まっていく中で、少しパキッとした曲もあったら良いんじゃないかと思いからこの曲が生まれました。

芥:確かに、この曲でアルバムが締まったし、バランスが整った。それまではちょっと、某地方で食べた返し少な目のラーメンみたいな感じが・・・()

一同:(大爆笑)

 

 

――説明をお願いします()

野中:某地方でメンバーとラーメンを食べに行って、僕は塩ラーメンを頼んだんです。で、出てきたラーメンのスープの色が凄く薄かったからこれは出汁に力を入れているタイプなのかな?と思って食べてみたら、スープがただのお湯なんですよ()

 

 

――!?

野中:おそらく、スープに何かを入れ忘れていて。メンバーにも味見してもらったけど「本当に味が無い!」と()

白:薄味だったものを誇張して話しているように思われるかもですけど、本当にお湯の中に麺が入っていましたね()

野中:見た目は塩ラーメンだったんですけど()。それで喩えると、この曲がこの作品に辛みそを加えてくれた感じですね。

芥:味付けを締めてくれました。俺も冒頭から叫んでますし。逆上して血が上った感じ。辛みそのような心の叫びを聴いてください()

 

 

――歌詞も~~じゃないと否定の言葉が続きますし、珍しい印象です。

芥:八つ当たりです。生粋の嘆き人間として、これまでも色々な形で嘆いてきましたけど、この曲は嘆きとは少し違う、ただの八つ当たり。

 

 

――否定・断言・突き放す。

野中:で、最後は黙ってろよで終わるという()

芥:黙ってろよ ちょっとと言いながら、実際は誰も何も言っていないんですよ。

 

 

――誰かに攻撃されているわけでもないのに自分の中で穏やかでいられないという経験、誰しもにあると感じます。

芥:そう、この曲は穏やかじゃないですね。個人的には、白ちゃんのテレッテッテテレ・・というフレーズがパルスっぽくて好き。

野中:あれが無いと曲の印象が全く違うもんね!

成人:確かに。

白:あれは、ディレイというエフェクトでやまびこみたいに聴こえる効果を使っています。野中:カッコよく完成して良かったです!

 

 


音楽は色々な形を選んで旅をしているんだなと思った。


 

――タイトルからして秀逸な『ファントムミュージック』。

芥:ダサいですよねぇ・・・()

 

 

――ダサいとは全く思いませんでしたよ!

野中:1980年代の映画のタイトルにありそうだなと思いました。少し色褪せしたポスターが目に浮かぶ()

芥:壁で少し斜めになってしまった感じの()。日本でファントムという言葉を使っていい曲といったら、B’zさんの『LOVE PHANTOM』しかないでしょう!と思ったんですけどね・・・(メンバーに向かって)このタイトル、大丈夫でした?

白・野中・成人:(爆笑)

芥:他の収録曲のタイトルは既に決まっている状態で、バックジャケットに全てを並べた時の並びの美しさみたいなものを、文字数のバランスや字面なども含めて考えていて。漢字でもないし、どうしようかな?と悩んでいる中で、まさかと思いつつ『ファントムミュージック』と置いてみたら、一番綺麗におさまったんです。これは良いかも!と思ったものの、皆に言うのが恥ずかしくて()

野中:わりと何回も「『ファントムミュージック』で大丈夫ですか?」と訊いてきたよね()

成人:そうそう!()

芥:11人に耳打ちで確認までしました()

野中:たぶん、世間一般的にはこのタイトルをダサいとは思われないと思う。

 

 

――そう思います。

芥:本当に!?

野中:タイトルの並びだけで考えた話をするなら、『ポリシー』のほうがダサいと思う。

一同:(大爆笑)

芥:確かに、歌詞の内容を見ずに『ポリシー』という単語だけで考えるとダサいよね()

野中:そう、内容を考えたら全然ダサくないしChantyらしいんですけど。『ファントムミュージック』は別にダサくなかった。

芥:良かった。ミュージックという言葉をどうしても使いたかったんですよ。

 

 

――不確かになってしまった音楽の在り方についての歌詞ですからね。

芥:そうです!わかってもらえて良かった。

 

 

――これは伝わりやすいと思いますよ。

芥:直接的にCDという単語は使っていないし、CDがテーマの歌詞というわけではないですけどね。最初は音楽がCDからサブスクリプションなどに移行してというようなことを書こうとしたんですけど、書き進めるうちにそのことを寂しがっているのは(作り手である)こちら側だけであって、音楽は色々な形を選んで旅をしているんだなと思ったんですよ。レコードとかカセットとかCDとか、こちらが勝手に媒体を選り好みしていただけで、音楽自体は旅をしながら色々なところに僕らの曲を連れて行ってくれているだけなんだと。僕らはCD世代ですし、個人的にCDという形が好きなのは確かですけど、最終的に姿形が見えなくなって心配もあるけれど、待っているよということが書けて満足です。

 

 

――何事にも利点と欠点がありますし、それぞれと上手く付き合っていけたら理想的ですよね。個々のリスナーがベストだと思う形で受け取ってもらうことが、音楽や楽曲にとっての幸せなのかもしれません。

芥:うん、そうですね。その人の真実で受け取ってもらえたら。この歌詞は最後にできたんですけど、このミニアルバムではもう自分のことや誰かのことは書き尽くしたから、他の題材で書きたいなと考えていて。最初は、野中くんが「歩きスマホのことを歌詞に書いたらどう?」と言ってくれていたんですよ。

野中:街を歩くと、歩きスマホをしている大人が多過ぎるんですよ。自分も地図を見る時くらいはありますけど、ちゃんと周りを気にするものじゃないですか?でも、ずっとスマホだけを見て下を向いて、僕が避けても避けたほうにぶつかってくるくらい周りを見ていない人ばかり。子供のほうが余程しっかり周りを見ているし、注意する側であるはずの大人が何をしているんだ!と思ってしまって、そのイライラを芥さんにぶつけたんです()

芥:今までも例え話的な歌詞は書いていましたし、そろそろまたそういうものも良いかなと思って書き出してみたんですけど、ちょっと頭の中が違ってきてしまったので、歩きスマホのことはまた次回以降にします()。題材としては、凄く書きやすそうだと思うので。

 

 

――ユニークにもシニカルにも書けそうなテーマですよね。

芥:うん。歩きスマホかサブスクかの2択で、今回は後者になりました()“CDありがとう、音楽ありがとうという歌詞を書けたので良かったです。

白:曲に関しては、別々にあった2曲の原案をくっつけました()

芥:白ちゃんが先に原案を出してくれていた曲と、俺がわりとギリギリな時期に出した曲があって。その時点で、俺はまだ白ちゃんが出してくれていた曲をちゃんと聴けていなくて、自分の原案を出してから聴いたら「あれ?コード進行とか一緒じゃない?」となったので、2曲を混ぜて完成しました()

野中:それぞれの曲の良いとこ取りですね()

白:サビのコード進行とか、ほとんど一緒だったからね。

 

 

――1人の作曲者が作った2曲をミックスしたら良い化学反応が起きたというお話は時々耳にしますが、違うメンバーが同時期に作った曲をミックスというのはレアですね。

一同:確かに!

白:お互いのアレンジをほとんど変えずに混ぜたよね。

芥:そうそう!スタジオでも早かった。

白:自分としては、初期Chantyの香りがすると思った。

野中:初期がどんなだったかもうよくわからない()

成人:俺もよくわからない()

芥:『ソラヨミ』とかくらいの時期のChantyにありそうだと言っていたよね。確かにそうかもしれない。

 

 


人類みな、歩くオムニバスCDみたい。


 

――先程もお話に出た『パッチワーク』は、本当にChantyだからこそまとまって聴こえる楽曲です。

野中:レコーディングの直前に「あと1曲足りないな・・・。」となったんですよ()

一同:(爆笑)

野中:で、白くんがいろんな曲を出してくれて。

白:15秒くらいのイントロをたくさん作って持って行ったんです。そこから広がるだろうと思って、「入り口だけ持っていくから選んで!」って。

野中:その中で、「めちゃくちゃカッコいいじゃん!」となったのがこの曲です。たぶん、白くん本人はこれが選ばれるとは思っていなかったんじゃないかな。

 

 

――実際、イントロからとてもオシャレな曲だなと思いました。

野中:ですよね。

芥:良い曲ですよね。で、これを選ばれるとは思っていなかった白ちゃんが焦ってバーッと2コーラスくらいの構成をまとめてきてくれたんですけど、その時点ではまだメロディーの無い状態だったこともあって、どこがAメロでどこがBメロなのかさっぱりわからなくて()

成人:その状態で、それぞれが曲を覚えて演奏してみたら・・・()

野中:構成の解釈が全員違う、衝撃的な展開に()

一同:(大爆笑)

野中:「えっ、ここがサビなの!?」()

芥:「いや、ここがサビでしょ!?」()・・・そんな混乱を繰り返して、皆でホワイトボードに構成を書き出しながらアレンジして。

成人:あれは面白かったね()

芥:全員が間違っているというレアケースでした()

野中:こんなこともあるんやって思いました()

白:それぞれが違う捉え方をしたからこそ、『パッチワーク』という今の形に至ったんだと思う!

成人:うまい!

芥:本当にそうだね、パッチワーク=継ぎ接ぎだもんね。

野中:基本的に、Chantyの楽器隊はパートごとではなくスタジオで「せ~の!」で録るんですけど。この曲だけは、スラップ奏法の部分の指とピックの切り替えがレコーディングではスムーズにできないので、珍しく家で録りました。

成人:この曲が一番、曲に対して力を使っていないと思う。

野中:使えなかったんですよね()

成人:そう、どこがサビかもわからないところから始まったから()

芥:蜂の巣を散らすようなスタジオでしたけど、カッコいい曲ができました。

白:まさか、あのスタートからこんな曲に仕上がるとは。原曲を持ってきた自分が一番、驚いていますね()

 

 

――これぞ、バンドマジック。

白:そう。Chantyは、ほとんどバンドマジックですよ。

芥:歌詞に関しては、これも音楽の話です。『ファントムミュージック』はどちらかというと作り手側のことを書いたので、『パッチワーク』では受け手側のことを書きました。この曲の主人公は、とてもイマドキな人で、いろんなものを継ぎ接ぎに自分の中に取り入れて、「よし、明日も生きていこう!」と思っている人。Bメロで書いたとおり、曲や歌詞を書いている人間に全てを求めてはいないんですよね。これは自分自身も含めての話ですけど、作り手には理論武装をして色々なことを言う人も居れば、綺麗事を書いていてもたくさんの人を泣かせながら生きてきた人も居る。かと言って、純粋培養・滅菌室育ちの綺麗なフレーズが好まれるかといえば、そういうわけでもない。音楽を自分の良いように解釈して継ぎ接ぎにして移植しながら生きている。サブスクやYouTubeといったものが広がってから、継ぎ接ぎしやすい環境が整ったじゃないですか。ひとつの作品のバックボーンなんて知る由もないし、ジャケットや歌詞カードも一切見ない人もいる。何なら、1フレーズのみで曲の意味を解釈して聴いている場合もあるわけです。でも、それも別に悪いことではなくて。

 

 

――1フレーズのみで聴かれると、その楽曲に込めた意味とは正反対の解釈をされてしまう可能性もあるわけですよね?それに対して「正しく伝わらない!」とジレンマを抱いたりはしないですか?

芥:以前はそういうことを思ったりもしていましたけど、今は無くなりましたね。実際、自分自身も同じだなと感じることもあるし。人類みな、歩くオムニバスCDみたい。

 

 

――今回も名言が出ました・・・!

芥:もしかしたら、頭がヴィジュアル系、足が歌謡曲、胴体にヒップホップやボサノバみたいな凄い継ぎ接ぎ人間が現れるかもしれない()。そんな風に形成されている人と出会ったら、それもまた面白いじゃないですか。『ファントムミュージック』ではというものに重きを置いて音楽を見ている人の俯瞰的要素を、『パッチワーク』ではちょっとイマドキな感じで見ている人の俯瞰的要素を書けたんじゃないかなと思います。

 

 

――アーティストは作り手側の視点に終始してしまうことが多いと感じるので、作り手と受け手の両視点を俯瞰して歌詞にされたのが素晴らしいなと思います。あと、共感同調って近いようで実際は全く違う言葉ですよね。

芥:あっ、この歌詞はそこから始まったんです!共感という言葉は、とても近くに居るようで居ないんですよ。凄く良い言葉だけど、時として凄く無責任な言葉でもある。同調も、「同じです!」と言いながらも凄く無責任な言葉なんですよね。今のご時世は、同調の風潮のほうが強いんだろうな。

 

 


楽曲に完成は無いんだと、改めて気付かされました。


 

――『君と罰(正体不明ver.)は、楽器ができない人間が一聴すると難易度が高そうだなと感じました。

野中:ベースは簡単ですよ!

成人:ドラムも難しくはないです。

白:ギターはトゥルルルのところがちょっと難しいです()。それ以外は、そこまでではないかな。

芥:ボーカルは楽しいです()

一同:()

 

 

――とても気持ちよく歌われているなぁと思いました ()

芥:はい。結構、ジェットコースターなメロディーなので。

 

 

――冷静に曲を分析しながら聴こうとすると、難易度が高く感じるんです。

白:言われてみれば、あまりちゃんと分析しないで演奏していたかもしれない。何気なく弾いていたけれど、3拍子の流れから4拍子の流れがとても自然なのは逆に凄いですよね。

野中:確かに・・・そう考えて聴いてみると、実は難しかったです()

芥:この曲は約6年ぶりの再録ですけど、ずっと「録りたいね。」と言っていた曲で。

 

 

――何故、この曲だったんですか?

芥:自分達の中では、「もっと良い形にできたね。」と引っ掛かっていたところがあったんです。過去に生み出した形を否定したいわけではないけれど、「今の自分達ならもう少しできることがあるのに。」と5人体制の時からずっと言っていました。なかなか機会が無くて、今回ようやくタイミングが合ったので。今できる『君と罰』をやってみた結果、俺個人としては最初に思っていたのとは違いましたね。

野中:そうなの!?

成人:『君と罰』のどんな未来を想像していたの?

芥:俺は、『君と罰』にとっての正解ってなんだろう?と考えてしまっていたんですよね。ずっともっと良くしたい、いつか再録をしたいと思っていたけれど、『君と罰』の具体的な未来が思い浮かんではいなかったんです。それが今回こういう形になって、凄くカッコよく仕上がったんですけど、これが『君と罰』の完全な未来なのかはまだ俺にはわからないんですよね。

白:あ、それはわかりますね。個人的には、元々の『君と罰』も皆が言うほどクオリティーが気になるとは感じていなかったので、今回のものと聴き比べて甲乙つけるものではないと思っています。

芥:そう!俺の中では以前の形を超える、これまでのChantyに関わった6人の想いを込めた『君と罰』くらいの感じで作れたらいいなと思っていたんですけど、できあがってみたら今のChantyの『君と罰』というだけであって、これがこの曲の最終的な完成形ではないのかもしれないなと。

 

 

――楽曲も生き物ですから、バンドと一緒に形を変えていくこともありますよね。

芥:うん。もしかしたら、5年後くらいにまたその時の『君と罰』が出てくるかもしれない。『君と罰』試験みたいな感じで()

野中:定期的にやってくるのは面白いかもしれない()。俺は、最初の『君と罰』は音質などのクオリティーの面で納得ができなくて。やっぱり、当時の自分達の状態やバックボーン的なものを全て知っているからかもしれないですけど、色々な面で未熟な状態で作った作品に聴こえてしまうんですよね。今回生まれたものには今っぽいエモさがある。これが最終的な完成形なのかと言われたら、楽曲に完成形を求めたこと自体が無いのでわからないですけど。

芥:再録ということもあるし、当初の俺は完成形を求めようとしていたと思う。結果、楽曲に完成は無いんだと改めて気付かされました。

成人:ずっと演奏してきた曲だし、身体に馴染んでいるから何気なく演奏できたところもあるんですけど、改めて今回の形と過去の形を並べて聴くと新曲のような感覚になりましたね。ずっとやっていたからとか昔から聴いていたからではなく、自分の中ではこの4人での新曲として落ち着きましたね。

 

 

――作品の中で新曲達と並んでも、浮いている感じが無いですよね。

一同:うん。

野中:でも、友達が自分の元カノと付き合っているみたいな恥ずかしさを感じるんだけど()

一同:(爆笑)

芥:わかる()。実は、俺も今のところあまり聴けていなくて、マスタリングまで待って聴こうと思っています。裸の状態では聴けないというか、友達の裸を見ているような感覚になるので()

野中:そう!それか、友達の元カノと自分が付き合っている感じです()。何か妙に恥ずかしいんですよねぇ。

 

 

――きっと過去を知っているからでしょうね()

野中:確かに!うまいこと言いましたね()

芥:今、こういう形にできて良かったなと思います。

 

 


自分の中の不安を、純度100%で表現しました。


 

――『スライドショー』、個人的にとても好きな1曲です。

白:ですよね()

野中:僕も好きです()

 

 

――これもまたサビのメロディーの開き方などにあ、Chantyと感じる部分がたくさんあって。

芥:やっぱり、それぞれそういう感覚があるものなんですね。

野中:そこは、自分達ではあまりわからない感覚だから。

白:でも、そういう感想は多いと思う。

成人:うん。俺も、これが一番“Chantyだなと思うし。

芥・野中:本当!?

野中:「どれが一番Chantyっぽいか?」と訊かれたら、わからないかも。ただ、単純に大好物な曲ではあるんですよね。こういうギターロックな歌モノが大好きなので。

成人:この曲の芥さん、別人に感じるんですよ。

野中:そう!歌い方が違う気がする。

芥:そうかも。Aメロとか、トレンチコートを着てカッコつけて女性を待っているニヒルな男みたいな感じがして、恥ずかしいんですよ・・・()。歌メロのキーの高低差が激しいし、歌詞の内容的にもキー的にもどうしても優しい雰囲気の歌い方になるんですけど。

野中:サビのメロディーや母音の感じで、歌い方が違って聴こえるのかなと思った。

芥:なるほど・・・。これは、特にライヴで変わっていく曲だと思いますね。もう少し艶っぽくなるのか、エモーショナルになるのか、今の時点では自分でもわからない。ただ、ちょっと(高低差が)辛い。

白:持ち時間が長めのライヴの最後あたりにきたら辛そうだけど、そういう位置にハマりそうな曲だと思う()

芥:うん、おそらくフィニッシュブローだよね()

成人:俺の感覚では、この曲の中には3人くらい芥さんが居て、その3人に心を揺さぶられましたね。歌声も含めて、心動かされたなと思う。

芥:この曲の中に、3人居る!?

成人:自分的には居る。

芥:そうかぁ・・・確かに、そうかもしれない。自分で歌っておいてあれですけど、このミニアルバムには違う人が何人か居る感じがするんですよ。『ファントムミュージック』あたりも、違う人っぽさがあるし。

 

 

――自然とそうなっていて、後から気付くことなのかもしれませんね。

芥:ですね。この歌詞は、自分の中の不安を純度100%で表現しました。俺は、ファンの人達に対してあまり求めないというか、例えば「絶対ライヴに来いよ!」というようなことはあまり口にしないタイプですけど、そういう想いが100%無いのかと問われたら、そうではないんですよね。寂しいと感じることだってある。その普段は表に出てきていない感情を100%引き出した歌詞ですね。ステージの幕が開いた瞬間、誰が居るかわからない。当然、いつも来てくれている人達が居るかどうかもわからない。どう感じて、どう観てくれているのか、言葉を交わすこともできない。この数年、ここに居るという言葉を口にし続けてきて、自分の中で変に意識し過ぎていたところもありますけど、一方では常に何かが終わることに対する不安を抱いているし、去る時には「さようなら。」なんて言ってもらえないし。そんなことを考えていると、こちらが思っていることなんて伝わっていないんだろうなと疑心暗鬼になってきて、「良かったです!」と伝えてくれた言葉すら信じていいのかわからなくなってしまったり。ただ、歌詞を書いていく中でそうか、そっちも同じだよねと気付いたんです。

 

 

――確かに。

芥:まぁ、これも正体不明なんですけど。最後に人の気も知らずにと書いてはいるけれど、だからと言って「これで終わりにしよう。」と言いたいわけではないですし、ただこんな風に感じることもあるよと綴っただけなので、聴いた人がどう捉えるかはわからないですけど。「恋をしています!」みたいな感じで見てもらっても構わないですし()。・・・「この曲の歌詞は?」と訊かれた時に「実は、報われない恋をしていまして・・・」とか言ってみたいですね()

一同:()

野中:ちょっと甘酸っぱい感じのね()。確かに、ボーカリストってそういうイメージやんな。でも、今の話の流れからすると、甘酸っぱいよりもトレンチコートになってしまう・・・。

一同:(爆笑)

 

 

――この歌詞は、1人の女性とのお話には思えないかもしれません・・・()

芥:やっぱりそうですか()。まぁという言葉を使ってしまっている部分もあるしね。

 

 

――音楽は生き続けるとか楽曲で繋がっていられるという言葉をよく耳にしますし、それもひとつの真実ですが、目に見える確信があるわけではないから、お互いに不安になることもありますよね。

芥:そうですよね。結局、繋いでいるものは言葉でしかないので。本当に誇らしく思う反面、言葉でしかないんだなと感じる時もある。

 

 

――言葉もまた不確かなものだから。

一同:うん。

芥:この曲のCメロに固結びした小指というフレーズが出てきますが、同じことをSoanプロジェクトの『濁った瞳』という曲でも歌っているんですよね。Soanプロジェクトのほうは、わりと力強い感じです。

 

 

――芥神ですからね!

芥:そう、神様バージョンなので()

野中:Chantyのほうは悲観的やな()

芥:うん、人間味のあるバージョンなので()。もしかしたら、Soanプロジェクトの歌詞を読んだ人が「ちょっと、こっちの歌詞を否定していない!?」と思うかもしれませんけど、そういう言葉の不確かさがあるのも事実なので。何人かのファンから「『濁った瞳』の歌詞とタイトルはChantyっぽい。」と言われたんですけど、俺自身もより近いところに居るものだと思っていて、そういうことも含めて固結びした小指というのを書きたかったんです。あとは、好きに解釈してもらえれば良いです。

 

 


狙わずに素直に作ったほうがChantyらしくなりました。


 

――最後を締める『おやすみ』。

野中:去年の10月くらいからあった曲です。

 

 

――今作の中で最初に完成した楽曲ですか?

野中:そう思うじゃないですか?完成したのは、わりと後でした。ちょっと熟成させていたんです()

白:そうだね()

成人:「この曲は必ず収録するだろう。」という話は、ずっとしていたんですよ。

芥:「これは1曲目だ!」と話していたよね。インタビュー序盤にも話しましたけど、時間があったようで実際は無かったんです。それは、適当にやっていたわけではなくて。

白:本当にそう。

芥:想像よりきつかったですけど、ひとつひとつ全力でクリアしていったからこそ、結果的にこんな形にできたと感じられるので良かった。“1曲目は、これで間違いなし!と思っていましたね。

 

 

――取材用の資料として先に3曲だけ送って頂きましたが、その時はきっとこれが1曲目だろうなと感じましたね。オープニング感があるというか。

芥:あ、やっぱりオープニング感があるんですね。でも、全部の曲ができあがると変わってしまうもので。

白:他の曲も含めて考えると、という話だよね。

芥:歌詞を書いているうちに、これで締めたいなという気持ちが強まっていったのかもしれない。

 

 

――そう、歌詞を読むと“1曲目ではなさそうだなと。

芥:そうなんですよ。

白:自分の中でもう少しChantyらしさを引き出したいなということをわりと強く考え始めていた時期で、でもなかなか上手く曲にできなくて、もういいか!と吹っ切って臨めたと思います。

 

 

――少し肩の力を抜かれたことが功を奏したのかもしれません。

白:狙わずに素直に作ったほうがChantyらしくなりました。考えすぎて、頭が凝り固まっていたのかもしれないです。

成人:そういうものかもしれないね。

野中:個人的に、このミニアルバムで一番Chantyっぽさを感じる曲かもしれない。それぞれのメンバーがどういうステージングをしているか、ライヴでの光景が浮かぶんですよね。

芥:わかる。この歌詞は、一番素直に書けました。ちょうど、新型コロナの流行が報道され始めた時期に書いたんですけど・・・今、誰もが辛いじゃないですか。マスクもティッシュもトイレットペーパーも無くなったり。別にコロナのことを書いた歌詞ではないですけど、タイミング的に今の世界の状況に対して思うことも表れているとは思います。あとは、六道輪廻とか、よく言われている人間は7回転生するみたいなことを書きました。

 

 

――だから七度目の眠り

芥:そうです。そのさまよいびとは、七度目なんですね。俺、自分が七度目を迎えた時にどうなるのか考えたんですよ。もう次が無いとなると、その先はずっと光なのかな?それとも、目を閉じたままになるのかな?とか。今、世界中にもう何度目かわからない苦しみや痛みを持っている人達がたくさん居るから、眠っている時くらいはその苦しみから解放されますように・・・という気持ちで書きました。

野中:眠っている時だけは、何も考えなくて済むからね。

芥:そう。・・・言うても、自分はあまり眠れないんですけど(苦笑)

一同:()

 

 

――全世界の誰もが不安を抱いている時期に、とても響く歌詞でした。

芥:本当に、答えでも何でもない歌詞ですけど、痛いのは誰もが一緒だから、自分だけが辛いとは思わないで欲しい。ちゃんと眠って、体調を整えて乗り越えましょう!

 

 


決めるべきところで、しっかり決められるバンドになりたい。


 

――そして、久しぶりのワンマンツアーとなります。(※取材日時点でのお話の為、日本国内の状況の変化によりツアー日程の延期・中止などが起こる可能性もございます。随時、オフィシャル情報をご確認ください。)

芥:2年ぶりですね。

野中:また炊飯器を持って行く?()

 

 

――以前のツアーで作っていらした炊き込みご飯、とても美味しそうでした()

野中:あ、でも今回は長期間まわりっぱなしの箇所が無いからな。

芥:今回はひとつひとつのライヴを噛みしめながら進む時間が欲しかったので、あえてこういうスケジュールにしました。ランナーズ・ハイのように駆け抜ける形のツアーも俺は結構好きなんですけど、バンドの状態がとても良い今だからこそ、ひとつひとつ丁寧に咀嚼して、セットリストをゆっくり考えながらまわるのも良いかなと。あとは・・・Chantyは、一球入魂したライヴに限って思うようにいかなかったり、外したりすることが意外と多いんですよ。逆に、スタジオで準備万端に整えられないような状況下で、口頭で意見を交わして挑んだライヴが予想外と良かったりもする。言ってしまえば、決め打ちすることにちょっと弱いバンドなんです。自分の中には、予定調和ではない部分に頼っているのはどうなんだろう?という気持ちがあるんですよね。例えば、有名アイドルグループの方達は、2日間全く同じ演目で公演をしても感動を与えられる。それってプロだと思うんですよ。僕らの場合は性格的にも、ツアーの全公演を同じセットリストで行うということはしないですけど、決めるべきところでしっかり決められるバンドになりたい。

 

 

――制作のお話にあった「狙ってできないことを良いとは思っていない」に通じる部分ですね。

芥:そうそう。狙わずにできることや、予定調和じゃない部分で良い結果を出せるのはひとつの強みであるとわかっているんですけど、そこに頼り過ぎてはダメだから。個人的には、周年や大きめのワンマンの時に後悔が残ることも多いんです。実際、ノーミスでできるくらい万全の準備をしているにも関わらず、そういうことが起こるわけです。ということは、このバンドはそこが弱い。悪いハプニングにも弱いし、良いハプニングに対しても、それ以上のことを自分達のアドリブで残せない。「これ!」と決めている時は、バンドマジックが起こせなかったりする。ファンの人達が見て何か変わったと感じるような部分ではないかもしれないですけど、そのあたりの上手いバランスを取れるようになりたいと思っています。全公演同じセットリストだったとしても観に来てくれた人達に「来て良かった!」と思ってもらえるような、そういうライヴができるようになりたいですね。

そうだ、言い忘れましたけど、今回のアルバム、俺の中で『正体不明』についてひとつ答えを置いてツアーをまわろうと思っていて。そのあたりも、ツアーをまわりきった後にどんな答え合わせができるのか、楽しみにしています。

 

 

取材・文:富岡 美都(Squeeze Spirits/One’s COSMOS

 

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<リリース>

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https://artistmarket.jp/artists/chanty/

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2020年3月25日(水)
Chanty 3rd Mini Album「正体不明」

¥2,500+税 / 品番: MNPK-024

 

♪収録曲

1. piano♯6
2. 逆上のパルス
3. ファントムミュージック
4.パッチワーク
5.君と罰(正体不明 Ver.)
6.スライドショー
7.おやすみ

 

サブスクリプションも配信開始!

https://www.tunecore.co.jp/artist/Chanty

 

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