2023年10月23日 (月)
【ライヴレポート】<HUSH @JURASSIC結成25周年記念3Days Live“Vary Sembassa”>2023年10月19日(木)目黒LIVE STATION>
REPORT - 21:00:03熱き衝動に駆られるかのごとく、ソリッドで荒々しいロックンロールを自由奔放に響かせるHUSHの姿は、むしろあの頃よりもよほど生き急いでいるように見えた。
2002年1月から2004年9月にかけ、元・ALL I NEEDの橋都章人と元Plastic Treeの大正谷隆が中心となり活動したHUSHが、約19年も続いていた活動停止期間を経て奇跡の復活を果たしたのは今春のこと。そして、この復活がなにゆえ奇跡的であったのかと言えば、メンバーのうち2人は事実上バンドマンを引退していたからなのである。
ギタリスト・米澤誠一郎は現在もホームバンドであるW.A.R.P.での活動を中心に音楽活動を続行しており、ドラマー・大正谷隆も子でびる隊変態支店などでのライヴをコンスタントに行っているものの、なんとベーシスト・高瀬宏之についてはもっぱら愛媛で社長業に徹しており、HUSHが停止して以来17年もずっと楽器そのものを弾いていなかったのだとか。また、フロントマン・橋都章人についてはHUSHの後にBeauty Maniacsやacalliとして活動した経緯があったとはいえ、病気療養などを経て長らくステージには立つことがないまま月日が流れて来ていたのだ。
そのような状況下にあって、HUSHが復活することになった理由のひとつには2021年11月に逝去したhiro(te’)の存在が大きかったようで、橋都章人は以前SNS上に“ヒロが亡くなって「いつかまた」って言葉の脆さを知りました。”との投稿を残しているほか、このたびのHUSH復活に向けては“オレは死ぬ前に後悔したく無いから帰って来た。”という投稿をしていたりもする。
かくして、今年4月に彼らは横浜7th Avenueにて3デイズ主催ライヴ[HUSH 3days -cocoon8414155516-]敢行することになり、ここでは橋都章人にとって唯一無二な盟友であるANCAHANGの率いるSEX MACHINEGUNSや、HUSHを慕う後輩バンド・FAIRY FORE(実は彼らもこのライヴが限定復活ライヴだった)、先だって8月にヴォーカリスト・ISSAYが不慮の事故で急逝してしまったDER ZIBET、宙也+榊原秀樹(De-LAX/極東ファロスキッカー) など、多彩なメンツがそれぞれに華を添えるかたちでHUSHの復活を祝して集うことになったのだった。(しかも、3日間ともチケットはソールドアウト!)
また、今夏にはtest-No.主催の【CHAIN the ROCK fes 2023】に参加したほか、秋に入ってからは10月1日に前述したhiro(te’)の地元である金沢でもHUSH主催のイベントを行ってきていおり、HUSHにとって現状インフォメーションされている中では最後の公演となったのが、この目黒Live Stationにて行われた[JURASSIC 結成25周年記念 3Days Live]の初日にゲストとして出演したライヴとなる。
なお、JURASSICとのツーマンであった今宵は復活後最長となるセトリが組まれていて、ここでの冒頭を飾ったのは米澤誠一郎の弾くリフが牽引するかたちで、HUSHの繰り出す生々しいグルーヴが場内を瞬く間に呑み込んでいった「naive」。名は体を表わすの言葉そのままに、このバンドが生来持っている濃密なパッショネイトが大爆発した「EXPLODE」では、放たれる激音に対してオーディエンスが即座に反応し、フロアはここから一気に沸き立つことにもなった。
高瀬宏之の弾く野太いベースラインが印象的に響いた「嘘の薬」、大正谷隆の叩き出す鋭くラウドなビートが曲をよりドライブさせた「can’t you hurt me?」、橋都章人が咆哮するかのようなヴォーカリゼイションと極めて熱量の高いライヴアクトをみせた「Going to distortion」と、どこをとってみても4月の復活当初と比べるとHUSHはライヴパフォーマンスの切れ味と練度を増していたと言っていいだろう。ここまでたった数本の本番を経過しただけで、HUSHが往時のような輝きを取り戻していたことにも正直なところ驚きを感じたが、スタンス的にはむしろあの頃よりもよほど生き急いでいるように見えたところも非常に印象的で、そこには若気の至りにまかせた荒々しいロックとは明らかに違う、さまざまな過去の経験に裏打ちされた熱き衝動から生まれる赤裸々なロック、というものがひしひしと感じられたように思う。
そもそも、同期機材の類に頼ることなくひたすら人力で奏でるロックンロールの貴重ぶりも、考えてみれば今や相当なものになってしまうわけで。逆に、これだけ身を削った体当たりな音楽を具現化できるバンドが今現在どれだけ日本にいるのか、という点でもHUSHのライヴからは彼らの熱き魂をダイレクトに感じることが出来た気がする。
「JURASSICの結成25周年、おめでとうございます。彼らともけっこう長い付き合いにになりますが、今日こうして呼んでもらえたことが嬉しいです。そして、HUSHは今日で一旦お休みになりますけれども、解散はしません」(橋都章人)
そう断言してから、彼がギターを手にして歌い出したのは〈おやすみ ありがとう おやすみ また明日〉という歌詞が、オーディエンスに対しての真摯なメッセージになっていたロッカバラード「おやすみの唄」。さらに、このあとに聴けた美旋律が切なく響いた「乱反射」でも、センチメンタリズムの漂う音がHUSHの持つアナザーサイドを存分にうかがわせていたのではなかろうか。
それでいて、この夜が佳境を迎えたことを告げた「SHINING DAYS」以降は再びソリッドで荒々しいロックンロールがこれでもかと連打され、ラストの「SPIN」に至っては観客たちが曲名よろしくこぞってフロアでスピンをしてみせながら、ワンマンにも等しい最高の盛り上がりをみせることに。
「俺たち、おまえらと一緒にやれてきて良かったぜ。19年ぶりの半年間、ありがとうございました。ロックンロールは死んでいません!」
ちなみに、この日はJURASSICのアンコールで「SPEED」をYU+KI.と橋都章人が共に歌う一幕もあったが、いずれにしても1990年代末期から活躍していた彼らが、今を生きて音を奏で歌うことが出来ているというその現実はただただ尊い。あれから時は瞬く間に流れ過ぎ、音楽のハヤリスタリも当たり前のように変わって、もはやロックンロールはスマートでもなければお洒落でもない存在になってしまったのかもしれないが、きっと橋都章人が言ったとおりまだそれでもロックンロールは死んでなどいない。
熱き衝動に駆られるかのごとく、ソリッドで荒々しいロックンロールを自由奔放に響かせるHUSHの“明日”は、彼らが生き急ぐ未来に必ず待ち受けているはずだ。
文◎杉江由紀
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