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2021年05月01日 (土)


【ライヴレポート】配信時代のニューノーマル。アプリ×リアルライブ──進撃のイチナナ会feat.ラキの1stライブに密着!

REPORT - 17:00:45

2020年、世界は一変した。自粛を余儀なくされ当たり前のことが当たり前にできない日々と、先の見えない焦燥感に人々はふさぎこんだ。それは音楽業界、ライブハウス、そして我らヴィジュアル系の世界もまた同じだった。希望を胸に抱いて結成したバンドも、より高みを目指して継続してきたバンドも、有終の美を飾って終止符を打とうとしたバンドもいただろう。しかし多くの公演が中止になり、目も当てられないほどの被害を受けたバンドも少なくなかった。まさにそんな絶望の淵に立たされた中で一筋の光が差し込むように台頭してきた分野がある。ライブ配信だ。

 

YouTubeライブ、インスタライブ、ツイキャスなど既存のSNSや動画サイトの中でリアルタイムにストリーミングを視聴できるサービス、それがライブ配信である。これを利用し配信ライブが家にいながらにして参加でき、無観客でもライブができるとして、ファンのみならず多くのアーティストの活路、救いとなった。

 

そんな中、全く新しいアプリとして数年前から人気を集めているのが17Live(以下イチナナ)である。

 

台湾発祥のこのアプリは、日本を含むアジアのみならず、欧米でも人気となりその利用者は5000万人を超えるほどだ。そして、そのイチナナを基軸としてライブ配信をするアーティスト、芸能人も登場し始めた。その影響力は計り知れず、我らヴィジュアル系業界にもライバー(配信者)が現れ始めた。ジン(ex-SCREW)、BAN(ex-少女-ロリヰタ-23区)、有栖川塁(未完成アリス)など、著名なバンドのライバーが中心となり、トップライバーのKEKE(AMBEEK)、人気ゲームライバーの冥乃(ex-ワルアガキ)、配信時間世界一の夢浮(ex-ICe0AGe)、企画系ライバーの零々七(ex-メアリィ)、男の娘ライバーのこむ(ex-グレヱテル)などがイチナナ内でのV系シーンを盛り上げている。

 

ソーシャルディスタンス、自粛などネガティブな言葉が飛び交うリアルとは真逆で、イチナナの中では日々楽しいコメントが溢れている。そして彼らは一般層へのヴィジュアル系の訴求にも尽力しているのだ。アプリの中での会話は言わばバーチャルな世界なのかもしれない。しかし、彼らの配信には人々が本来求めているアーティストとの交流がふんだんに詰め込まれている。そこはジャンルなど関係なく、ヴィジュアル系を全く知らない層のリスナーも多く集まるボーダレスな空間だ。日頃、バンギャルをときめかせる術を熟知している彼らにとってはもはや朝飯前、アーティストとしての手腕を見せつけるにはイチナナはうってつけだった。これが「ヴィジュアル系」なのだ。その発信力が多くのリスナーの心を鷲掴みにすることに成功し、配信実績がこの一年間で急激に伸びている。

 

年が明け、BAN、夢浮、こむ、零々七から発表があった。

-2021年3月29日 ライブ決定!進撃のイチナナ会feat.ラキ-

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これまでライバーとしてアプリの中で活動してきた彼らのリアルのライブがついに決まったのだ。

この発表はとても反響が大きかった。イチナナ内にいるバンギャルのみならず、一般層からの反応も多数見られた。

 チケットのソールドアウトが予想され、ソーシャルディスタンスなどの関係から急遽会場が変更、ミニ2マン公演となった。

実際、会場は平日にもかかわらず定員オーバーギリギリなプレミアムライブとなり、V系業界の関係者の間でも話題となった。

ここからはそのライブの模様をお届けしたい。

 

 

少女-ロリヰタ-23区のSEでメンバーが登場。歓声と拍手が会場に鳴り響く中、ラキの煽りから1曲目のIris。この曲は夢浮の作詞曲・編曲による作品で、夢浮を中心にイチナナのアーティストを集めて企画されたアルバム「一期七会」の楽曲の一つである(アルバム全曲夢浮による作詞曲・編曲ミックス)。レコーディングには夢浮がギター、ベースが零々七、ドラムがBANが参加していたため、まさにご本人様登場の初披露なのである(音源版のボーカルはYouTuber兼ライバーのおとなし)。

 

BANのドラムと零々七のベースによるリズムアンサンブルからヘヴィなリフへのバンドイン。会場にいる全員が初めて見る楽曲にも関わらず、ラキの匠な扇動でいきなりボルテージMAX。自粛によりオーディエンスの抑え込まれた感情が爆発し、この勢いは終演まで失われることがないほどに盛り上がった。

 

激しい演奏とキャッチーで耳に残るメロディから一転、優しく三拍子で包まれる間奏。夢浮の流麗なギターソロとこむのバッキングに酔いしれる。その流れから一気に加速して、大サビのジャンプ、アウトロのヘドバンがRED-Zoneを揺らす。

 

最高潮の盛り上がりの中、次の楽曲はベースの零々七が活動していたバンドのメアリィから「あなたと私」。

 

魔法少女のような出で立ちで可愛らしく奏でるこむのギターリフから始まり、バンドインで客席に拳が突き乱れる。シンプルでノリやすい楽曲がラキの煽りと完全にハマっていた。また、飛び道具の拡声器もノイジーで、歌詞の「キ●ガイ生まれ」の演出に一役買っている。間奏のベースソロではゴシックな衣装に身を包んだ零々七が妖艶に前に出て、下手には観客による花が咲き、その後のBANのドラムソロでは客席中央にも花が咲いた。また、小規模なキャパシティのステージを暴れ乱れまくる夢浮に客席後方まで魅了された。

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勢いそのままに、3曲目はドラムBANのバンド、少女-ロリヰタ-23区より「VIRUS」。この楽曲は少女-ロリヰタ-23区の中でも一際アグレッシブに重きを置いた楽曲で、この流れのセトリにはうってつけだった。ヘヴィなリフに止まらないヘドバンと拳。ファンシーな装いながら激しいドラムを叩くBANに身を預け、メンバーも会場も我を忘れるほど暴れ倒した。

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オープニングSEからここまでの間が一瞬に感じるほどの熱いライブに束の間の休息。とはいえ、このMCこそライブ配信者にとってはお家芸披露の格好の場である。今回のライブは一般層のオーディエンス―つまり、イチナナのリスナーが大半を占めており、所謂V系ノリがないライブと言えた。また、2マンということも相まって、非常にアットホームな誰でも楽しめる雰囲気が会場を満たし、とても心温まるMCになった。熱いライブと温かいMCで会場はさらにヒートアップし、後半戦へ。

 

今回の自粛期間での葛藤や不甲斐ない想いを書き綴ったラキのソロ曲「惡夢」。ダークでヘヴィながら心に突き刺さるメッセージ性の高い歌詞と旋律、そしてラキの歌唱力に心の傷が癒えていく…人々の、多くのアーティストの気持ちを代弁してくれているようなこの楽曲を、今回のイチナナ会のメンバーが彩り、演出する。

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間奏明けのパートで優しく歌い上げ、最後はソウルフルに大サビで圧倒。会場に拍手が巻き起こり、そのままラキのバンドのモンストロより「ビッグマウス・マーチ」。

 

ラウドかつテクニカルな楽曲にメンバーも苦戦したそうだが、積み重ねてきた個々のキャリアでこの日はラキのファンをも湧かせた。轟音のリフとドラム、そしてデスボイス。間奏のシャッフルのセクションがあの曲を彷彿させ、ポップで遊び心満載なのが憎らしい。歌詞の風刺も小気味よい。

 

また、今回のライブ全編を通してラキの煽り、そして客席中央のラキのファンが非常にライブを盛り上げ、観客を扇動した。まさに”調教された”と言っても過言ではないライアー(モンストロのファンの呼称)達。イチナナという配信アプリのライバーではない彼やライアーにとって、このライブがアウェイではなくホームになり、お互いに受け入れ合ったことが新しい時代の到来を予感させる瞬間になったのは間違いないだろう。

 

会場の盛り上がりが絶頂まで高まったところで最後の曲、「うっせえわ」(Adoのカバー)。この日のために特別にドラムアレンジを用意してきたBANのリズムにノリ、会場全体が揺れる。本来なら右往左往にモッシュするところをソーシャルディスタンスの関係でその場でモッシュする観客だが、決して冷めることなく非常に熱いノリだった。

 

また、このライブ以前に自身のYouTubeチャンネルでカバーを披露していたラキにとってはこの曲を原曲キーで歌うのはまさに「問題はなし!」と言ったところ。女性が歌っている楽曲を原曲で歌えるというボーカリストとしての懐の深さも垣間見ることができた。

 

間奏では夢浮によるアドリブソロ。音楽理論に精通し、「指板が光って見える」と語るほどどんな楽曲も初見で弾ける彼の卓越したプレイが観客を虜にした。

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全6曲を終え、メンバーが退出するやいなや、どこからともなく野太い声の「アンコール!アンコール!」が会場中に響き渡る(BANがドラム配信でいつも使用しているSE)

 

進撃のイチナナ会feat.ラキに加えてスペシャルゲストとしてトアリ’sセッションから、わりトアリがギターで参戦。最後にもう一度Irisを弾いて大歓声の中、幕を閉じた。

 

本番の後のメンバーの顔はとても晴れやかで、一同全員「楽しかった、やってよかった」と手応えを感じていた。

 

イチナナというアプリ上でのバーチャルな体感から、ライブというリアルな体感。双極の相反する分野がクロスフェードし、それらが生み出す新しい形のエンターテイメントと、彼らの今後の活躍に注目したい。

 

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【SET LIST】

1.Iris / 一期七会

2.あなたと私 / メアリィ

3.「VIRUS」 / -少女-ロリヰタ23区

4.惡夢 / ラキ

5.ビッグマウス・マーチ / モンストロ

6.うっせぇわ / Ado

 

 

写真◉宮岡里英

 

 

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そして早くも第二弾のライブが決定!!

 

 【NEXT LIVE】

2021年5月2日(日)EDGE Ikebukuro

『池袋ハンティング~vol.2~』

開場16:00/開演16:30

前売¥4,300/当日¥4,900(D代別+¥600)

 

【出 演】

進撃のイチナナ会feat.ShamiRock / LAY ABOUT WORLD / 3470.mon / ANONYMOUS

 

【チケット】

1.e+ 4月18日10:00発売 ※URLは4/14~

https://eplus.jp/sf/detail/3414190001-P0030001

2.当日券