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2023年11月14日 (火)


【ライヴレポート】<FAIRY FORE「Jagged Little Pil 現王園崇生誕祭-今日の主役はたかしです!-」>2023年11月12日(日)町田プレイハウス

REPORT - 12:00:45

「LOVE SICK」や「VIVID」、「ジェット」などアニメ主題歌にも起用された数々のヒット曲を持つ4人組ロックバンドFAIRY FORE(フェアリィフォーレ)。

解散から18年を経て2023年4月に神奈川・横浜のライブハウス“7thアベニュー”にて 1日限定復活ライブを行ったが、チケットが取れなかった!というファンも多く、9月に改めてワンマンライヴを開催した。

このワンマンライヴの際にオープニングアクトを務めたのがFAIRY FOREのボーカリスト・現王園崇のソロプロジェクトであるJaggeg Little Pill(つまり当日は現王園が出ずっぱり状態)。

11月12日には“現王園崇生誕祭”としてJaggeg Little Pillのワンマンライブが行われたので、その模様をレポートしたい。

 

 

まずはオープニングアクトとしてGメン5が登場。FAIRY FOREのYASU(B)とYOKO(D)を擁する5人組だ。ここ町田プレイハウスを拠点としていたLUNA SEAの「LOVELESSや、中森明菜の「DESIRE」など聴き応えのある楽曲をカバー。

FAIRY FORE「VIVID」のブレイク部分で“♪ハッピーバースデー崇~”と合唱していると、なんと早くも現王園本人が登場してメンバーたちとハグ。曲後半もしっかり観客を煽るなど、疾風のように現れて嵐のように去っていった。

 

会場も十分に温まったところで、いよいよJaggeg Little Pillのターン。アラニス・モリセット1995年のアルバム『Jaggeg Little Pill』から「All I Really Want」がSEとして流れる中、メンバーが登場した。現王園はチェックシャツをゆるっと羽織り、裾をロールしたボトムと赤スニーカーというカジュアルないでたちだ。

 

1曲目はFAIRY FOREのミニアルバム『LOOP』に収録されていた「SWEET-ness」のセルフカバー。美しいトランス系のイントロに導かれ演奏が入ると、予想外のパワーに度肝を抜かれた。キメ部分で一瞬タメてから、次の瞬間にはバンドの持つポテンシャルを一気に開放する。歌メロも歌詞も確かにFAIRY FOREの楽曲のままなのだが、アレンジとプレイによってここまでアグレッシブな曲に生まれ変わるとは。

 

「いい感じいい感じ、踊っていこうか」と現王園がオーディエンスを促しながら始まったのは、Jaggeg Little Pillの「Miss Say-La」。弦チームの3人はヘドバンしたりステップを踏んだり、アッパーなリズムを体現。現王園も激しく頭を左右に振り、歌の合間にも「声出して!」「もっとください。俺の誕生日だぜ!」などずっと声を出し続けている。常に全力。タフさに驚かされるが、これが現王園というボーカリストの凄さだ。

 

 

 

続く「恋の進化論~program Darwin」も、これまたバンドが全力でかかってくる楽曲。現王園はタオルをクルクル回しながら観客を煽る。ドラムの音量は半端なくデカいのだが演奏がきっちりタイトなので、他のパートや楽曲の魅力もクリアーに聴かせる。純粋な音圧が心地よい。ちなみにこの時、物販コーナーのチラシ額縁スタンドが振動で倒壊したのだが、このバンドの波動エネルギーを物語っているような出来事だった。

 

 

 

観客から飛ぶ「おめでとう!」の声に応えて、現王園が感謝を述べる。「最高な気持ちです。皆さんに対してブレがないよう、音楽を通して全力で皆さんの気持ちをハイにできたら。それだけは約束します」

 

「Deep in slowdance」もハードなナンバー。現王園はフロアに座り込んで歌ったかと思うと、立ち上がってモニターアンプに足をかけたり、少しの間もじっとしていない。続く「風船」はさらに攻撃的な楽曲。可愛らしいタイトルとは裏腹に、ダークで悲しげなイメージが曲全体に漂う。両手でマイクを握り、天を仰いで激情を歌にぶつける現王園。V系にしては声がストレートで強いボーカリストだとは思っていたが、こういうエモいタイプの楽曲には本当にハマるんだなというのも新たな気づきだった。

 

「今いちばんお気に入りの曲です」と紹介されたのは「FEELING BAD」。ツインペダルの固いビートと、ミラーボールに光るカラフルなライティング。電子音とラウド系の歪んだサウンドのさじ加減。明るいのか憂鬱なのか、イカれたバランスの超個性的な曲だが、それがJaggeg Little Pillの持ち味なのだとだんだん理解が追いついてきた。

 

 

 

シンプルかつキャッチーな「かけちがえた魔法」は4つ打ちのビートがダンサブル。観客も体を揺らして楽しそうだ。「もう1曲甘くとろけそうな曲いくよ」と紹介されたのは「youphilous」。ポップなラブソングだけれど、あくまで演奏は硬派、音はエッジィというスタンス。サビ前で現王園は膝を思い切り縮めたワイルドなジャンプで観客を沸かせた。

 

 

 

 

 

ここで現王園がお色直しのためしばし退場。その間はサポートメンバーであるTACA(G)と土屋トモカズ(D)がトークを。横浜7thアベニュー公演の際の動画撮影エピソードや、DVD作成のための動画編集裏話をはじめ、土屋が南アフリカへ旅行した時の事件についてなど、おもしろネタ満載。また、この日の前半でまさかのスネアヘッドが破れるというトラブルが発生した話題を前フリに、圧巻のドラムソロも披露した。

 

 

 

ここからは怒濤の3曲を続けて。「たとえ世界が終わっても」では、リズムがキックだけの部分で土屋が立ち上がってバスドラを踏んだり、TACAがギターソロでライトハンドをフィーチャーしたり、ロックバンドらしいアプローチで攻める。現王園もサビで柵から身を乗り出し最前列の観客と拳を突き合わせてワンコーラスまるまる歌うなどパッションがダダ漏れだ。「Not’ gonna LOOSE」は、歌が入るまでFAIRY FORE楽曲のセルフカバーだと気づかなかったほど、荒々しく生まれ変わっていた。ベーシストが低い位置にあるマイクに屈んで、下を向いてコーラスする姿もパンクっぽくてエモい。「こんな特別な日、今日一日しかないね。tonight!」と紹介された「tonight」は英詞ながら、音楽がつなぐ観客との絆を感じさせる華やかなナンバーだった。

 

 

 

 

そして、集まってくれたファンや仲間への感謝を改めて述べてから、現王園はこう続けた。「次に皆んなと会った時にもっと音楽を楽しんでもらえるように、僕は明日からまた少しずつ積み重ねていきたいと思います」

 

ラストは「予感」。開放感ある明るい曲調のミディアムで、3.3.2の変拍子フレーズが入ったりするのだが、違和感なく楽しめるほど良質なポップさも併せ持つ楽曲だ。サビではオーディエンスが手を左右に振らし、弦の3人も軽くジャンプしながら演奏するなど、一体感に包まれて本編は終了した。

 

アンコールではGメン5も呼び戻し、この日の出演者が全員ステージに登場。現王園とYASU、YOKOの3人の姿がプリントされたバースデーケーキも用意され、ロウソクの炎を現王園が吹き消すと出演者たちがクラッカーを一斉に鳴らす。本当に温かくハッピーなひとときを味わった。

 

最後は、FAIRY FOREの楽曲でもありJaggeg Little Pillもアルバムでセルフカバーしている「この花が咲いて枯れるまで」を全員でセッション。最初はJaggeg Little Pillのメンバーが演奏を担当していたが、2番はGメン5のジュン(vo)がマイクを渡されて歌唱。後半ではベースとドラムもYASUとYOKOに交代し、FAIRY FOREメンバーによる演奏で有終の美を飾った。「YASUとYOKOちゃんは今日でいったん活動終了になりますので、しっかり目に焼き付けて!」という現王園の言葉が心に残った。

 

FAIRY FOREの再結成ライブをきっかけにJaggeg Little Pillの存在を知った人も多いかもしれないが、個人的には1人でも多くの音楽ファンにJaggeg Little Pillを聴いて欲しいなと思う。解散した過去のバンドを封印してしまうミュージシャンも珍しくない中、Jaggeg Little PillはFAIRY FOREの楽曲を2023年のスタイルに生まれ変わらせて演奏し、その延長に枝葉を伸ばす形で新しい活動を続けている。いわば現王園のライフワーク的な表現活動とも言えるのがこのJaggeg Little Pillなわけだが、2000年前後のV系ファンにも最新型ロックが好きな人にも刺激的に響くのがJLPの強み。同じ時代に生まれた1人のミュージシャンが今後どんな音楽作品を生み出していくのか、注視していきたい。

 

 

取材・文=舟見佳子

 

 

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