2021年10月24日 (日)
【ライヴレポート】<ベル 7周年ワンマンツアー「拡声決起ストライキ」ツアーファイナル>2021年10月17日(日)東京キネマ倶楽部◆7周年を迎えたベル。「俺たちの8年目にどうぞご期待ください!」
REPORT - 21:00:25ベルが、東京キネマ俱楽部にてベル7周年ワンマンツアー「拡声決起ストライキ」ツアーファイナルを開催、慣れ親しんだ会場でファンと共に盛大に7周年をお祝いした。
7月にリリースされた「拡声決起ストライキ」を引っ提げ、8月から全国14都市全16公演を回るワンマンツアーを決行、これまで14公演を駆け抜けてきたベル。
昨今の情勢により、万全の状態でライヴへ挑むことも難しくなった中で、これまで全14公演を駆け抜けてきたベルは、誰1人欠けることなくこの日を迎えた。まずはその意識の高さと、彼らを含め本ツアーに関わったすべての人の努力を評価したい。
また、2部構成で行われたこの日のライヴは、有観客であり両公演とも配信を行うなど、記念すべき日を少しでも多くのファンと共有したいという彼らの想いが感じられた。
15公演目となる第1部は全編アコースティック。ステージにもフロアにも椅子が用意されており、しっかりとベルの世界観を堪能できる会場づくりがされている。
薄明るく照らされたステージへ、黒のシックなスーツに身を包んだメンバーが登場。
いつもの立ち位置へ各々が着席すると、心地よい緊張感の中「平行線」から第1部の幕が開けた。
悲しく恋を綴った楽曲に会場の雰囲気もあいまって、まるで1日限りの流しを観ているような儚さ。
“東京 此処は今日も土砂降り——” 「東京蜃気楼」で歌われたそんなフレーズは、この日の空模様とも重なり、そこにいた全員が一音一音を嚙み締めるように聴き入っていた。
“キネマらしいアコースティックを披露していけたらなと思います。”
MCでハロがそう口にすると、「もう一度」「LOST SEASONS」と哀切な恋の情景を綴った楽曲が続き、タイゾ(Gt.)の琴線に触れていくようなギターの音色が切なさをリードし、ルミナ(Gt.)も繊細に音を紡いでいく。
「アコースティックって言うと、座って楽しむみたいな空気がバチバチに出てますけど、体を揺らしたかったら揺らせばいいし、僕が手拍子って言ったら手叩いて欲しいし、固くならずに楽しんでいきたいと思います。」とハロ。
一回手拍子の練習していいですか?と、客席とやり取りした後は、ジャジーな正人(Dr.)のドラムに誘われ「カラータイマー」へ。
そして、“この会場にぴったりの今日だけのスペシャルな曲も”、と告げると、ここからはゲストであるヴァイオリン黒色すみれのさちを招き入れ、「アモーレ!」と高らかにタイトルコール。タイゾはアコースティックギターのボディも使いながらリズムを取り、賑やかなラテンのリズムに思わず身体が揺れた。
ヴァイオリンを入れた6人編成での演奏は、“アコースティックライヴ”といえど、緩急激しく展開され、ベルの世界観をよりドラマティックに演出してくれる。
その後は、行進曲の様なリズムアレンジが印象的な「三丁目ブルース」、疾走感と哀愁を纏った「自我の水槽」などを続けて披露。
「アコースティックにできないベルの曲ってないんだなって改めて思ったんですよ。」というハロの言葉の通り、どの楽曲もアコースティックアレンジではまた別の情景が思い描かれるような1曲になるのだから、贅沢でずるい。
この東京キネマ倶楽部にぴったりなナンバーを、と始まった「午前3時の環状線」は、交われないすれ違う男女が描かれた1曲、本家とは対になるように男性目線で綴ったというこだわりも。ワルツ調のメロディがもの悲しさを語っていく。
そしてアコースティックライヴのラストを飾ったのは「綿飴」。寄り添うような明弥(Ba.)のベースライン、ヴァイオリンの音色だけで歌を紡ぐ瞬間には、何度も胸がキュッと締め付けられる切なさを覚えた。
色んな挑戦をしたいと、既にリリースされているアコースティックアルバムの第2弾、第3弾への意気込みも語ったハロ。これからもベルの楽曲がアコースティックで展開される事が期待できそうである。
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聴かせるライヴを展開した第1部から少し時間を置いて、いよいよツアーファイナルとなる第2部の公演へ。
再びキネマ俱楽部へ足を踏み入れると、会場内は一変、ストライキの集会所の様な物騒さを纏っていた。フロア中、ステージ中に張り巡らされた旭日旗の書かれたビラ、ステージ下手にある階段を上がった先にはテーブルや椅子を積み重ねたバリケード、「拡声決起ストライキ」へ込めたメッセージが書かれた看板。
更にはステージ後方、上手下手に垂らされた大きな弾幕や、ステージの赤いパトランプ、センターに置かれた “共闘”と書かれた演台、その一つひとつ全てにこだわりの感じられるセットが、開演前からフロアの期待を掻き立てる。
また第2部では客席はスタンディングに。待ちきれない様子でステージを見つめるファンの姿には、いつものライヴハウスの光景が戻ってきたような感覚を覚えた。
定刻を少し過ぎたころ、暗転と共にSEが流れ込むと、フロアは手を上げ、扇子を掲げ、メンバーを出迎える。軍服を模した衣装に身を包んだメンバーが登場すると、割れんばかりの声援が聞こえるよう。
ハロが演台に立つと、拡声器を手に1曲目「拡声決起ストライキ」が始まった。
客席で掲げられた真っ赤なペンライトは、熱弁を振るうかの如く歌うハロの姿を一心不乱に支持している。そして、“「此処まで、愛を…」”の言葉で「愛と免罪符」へ続き、第1部でも演奏された「午前3時の環状線」はベルらしさの色濃く出た1曲。華やかなシャッフルのリズムに思わず身体が揺れ、間髪入れずに「ゼンマイピエロ」を披露すれば、冒頭から一気に会場のボルテージを上げていく。
「僕らよりヴィジュアル系でこの会場が似合うバンドはいないと自負してます。」とハロ。
買いかぶりなどではなく、東京キネマ俱楽部という会場は、“歌謡サスペンス”を掲げるベルの楽曲の魅力を存分に底上げしてくれると思う。
アグレッシブなギターソロが光る「ルフラン」、青一色の照明の中、縋るように言葉を紡ぐハロが印象的な「蜘蛛の糸」や、ミラーボールに照らされながらミドルテンポで官能的に展開される「綿飴」も続けて披露。
MCでは「このツアーが発表された当初、僕はキネマを一旦最後にしたいと言いました。」とハロ。ベルにとっては家の様に落ち着ける、安心できる会場であると話したキネマ俱楽部。
だからこそ、「次のステップへ行くために、今日を最後にしたいと言いました。」と語り、「最後にしたいと言ったからには、形にしたい。」と、本日の公演の模様がDVDになることを発表。現メンバーになり初めてのライヴ映像作品は、「僕らの覚悟も含めて全部パッケージにしたい。」と意気込んだ。
MCも明けライヴも後半戦へ、正人の気合の入ったドラムプレイから、メンバーのソロパートを展開。客席は拡声器の形を模したペンライトをメンバーそれぞれのカラーに変え、ステージに応える。
明弥のスラップベースでさらにテンションを上げた、「正直者は馬鹿を見る」は、タイトルままの歌詞を繰り返すフレーズが印象深い。
Wo.. Wo..のイントロが始まり、フロアも一斉に飛び跳ねた「サマーランドスケープ」は、「拡声決起ストライキ」発表への布石として公開されシーンをざわつかせた「無敵のアゲ卍SUMMER」がアレンジされた1曲。サビではタオルを振り回したり、ルミナがラップを披露するなど、色濃いコンセプトを持ちながらもバラエティに富んだ展開が得意なベルならでは。
「かかってこい!もっと頂戴!」と欲しがり「ルイスキャロル」では、ダークでファンタジーなメロディに合わせ、ウサギの耳を作ってぴょんぴょん跳ねるフロアの姿が何ともかわいらしい。
かと思えば一変、鋭いシャウトの中、頭を振り乱し狂気を見せた「ネオトーキョークラシック」、“お前たちの本気そんなもんかい?まだまだいけるだろ?”と様々なドラム展開に一気にテンションの上がる「花市匁」へと続き、ラストの「真夏のバラッド」へ。切なげな歌謡テイストはそのままに、軽快なステップでメンバーも自由にステージを駆け周り、熱気を纏ったまま本編が終了。
昨今、有観客でのライヴでは観客が声を出すことはできない為、めいいっぱいの拍手でアンコールを呼ぶことが多いが、ベルでは観客の“アンコール!”の声をスピーカーで流す斬新さ。
それはアンコールに限ったことではなく、本編でのブレイクの際にも、BGMで昭和の歌謡曲を流していたりと、声が出せない状況の中、音が途切れる事無く続く工夫で熱を冷ます暇を与えない。
黒電話の音が響き渡ると、会場がどよめいたのが分かった。懐かしいSEで登場したメンバーを手拍子で出迎え、「あの日の僕の君と雨」からアンコールはスタート。
始動した頃を意識して組んだというアンコール前半、「やってない」「華」と懐かしい楽曲が続く。
「14都市16公演ってなかなかこのご時世で攻めたツアーを回ってきました。」とハロ。
「あれ(バリケード)どうやって組んであるのか分からない、怖い(笑)」とこだわりの詰まったステージの仕上がりに驚きつつ、ここまで一緒に作り上げてくれたスタッフへ感謝の言葉を述べた。
「各地で僕たちは想いのこもったライヴを行ってきました、そして各地で色んな思いを受け取ってきました。まだまだツアーファイナルこんなもんじゃないって知ってます。ツアーファイナルキネマ、まだまだぶっ飛ばしていけるか!」と「天」へなだれ込むと、ルミナとタイゾはステージ中央で無邪気にギターの掛け合いを見せ、ハロは燻る気持ちを発散させるように高らかに歌い上げる。
さらに続く「乙女劣等行進曲」では端正な顔を歪めながら狂ったようにドラムを奏でる正人、忙しい変拍子にまだまだ熱狂が終わらない。
「馬鹿になれるか東京!」と「RED」では、観客のペンライトで真っ赤に染まった会場。下手の階段をかけ上がったタイゾをルミナが追いかけ、バリケードのオブジェを背に並んで演奏したりと仲の良さが微笑ましい場面も。
「東京蜃気楼」は明弥のどっしりとしたベースラインが作る、疾走感あるエッジの効いたナンバー。全てを出し切るかの様にフロアも激しく頭を振り乱す。
MCへ入り「改めて今日、この場所を選んでくれて本当にありがとうございます。」と何度目かの感謝を述べたハロ。「帰ってくる為にキネマを選んだのではなく、家出するつもりで。」
ベルにとってこの会場は、相性のいい慣れ親しんだ会場なんて言葉では表せないほどに、特別な思いが詰まっている。だからこそ、“巣立ちの時期”が必要と捉え、バンドもいつまでも同じ場所にとどまって満足していたらいけないと力強く語った。
「ベルってどんなつもりでライヴしてるんだろう?ってこの先絶対に思わせないんで。美しい過去ばかりじゃなくて、楽しい未来を僕らとみんなとで描いていけるように。」と、思いを込めて披露した「未来予報士」。ベルと歩む確かな未来を見据えた、ファンとの約束の様な暖かい1曲に、会場中に晴れやかな笑顔が咲いていた。
過ぎてしまう時間はいつだって名残惜しい、「本当に、本当にラスト行こうか!8年目行くぞお前ら!ついてこい!」と最後を飾ったのは「見世物小屋は鳴り止まない」。
ここに余力を取っておいたかのように飛び跳ね、最後の一瞬まで惜しみなく遊びつくすフロアに、負けじと力強いステージを魅せたメンバー。演奏を終えたときの“やり切った!”という悔いのない清々しい表情がグッときた。
ハロ以外の言葉は少なく展開されてきたこの日の公演。周年ライヴにありがちな、歴史を振り返り7年の月日をたどるような・・というようなものではなく、8年目への覚悟をしかと見せつけられた1日だったと思う。
「今から朝の入りに戻ってやり直したいくらい楽しかった、だけど!明日からの方がもっと楽しいから、俺たちが楽しませるから、ありがとうございました!」と、会場にいるファン、画面の向こうで応援するファンをしっかりと見つめ、飾らないまっすぐな言葉を伝えたハロ。なにより、7年目を迎えてもなお成長し続ける姿勢を見せてくれるのが嬉しい。
その言葉通り、公演終了後には様々な展開が発表されているので是非チェックしてみて欲しい。
「俺たちの8年目にどうぞご期待ください。」そんな彼らの言葉どおり、予測できないベルの8年目には大いに期待したいと思う。
TEXT:糸永緒菓子
PHOTO:S.Yoshiura
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