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2021年12月06日 (月)


【ライヴレポート】<怪人二十面奏 六周年記念単独公演巡業二〇二一「THE NUMBER TWENTY REVENGE」千秋楽>2021年11月28日(日)赤羽ReNY alpha◆「この時期に全国ツアーをみんなの力で乗り切ったことは僕らの力になったと思います」──マコト(Vo)

REPORT - 22:00:44

コロナ禍で、これまでの活動ができなくなったたくさんのバンドが試行錯誤を迫られた。配信ライヴに力を入れたり、SNSを使ったコミュニケーション図ったり、可能な限り有観客ライヴを実施したり。そんな中で怪人二十面奏は、いち早く全国ツアーを決行した。

 

11月28日、赤羽ReNY alphaで迎えたツアーファイナルは、そんな彼らの選択の結果が如実に現れたライヴとなった。コロナ禍におけるバンドの選択に正解も不正解もないことは言うまでもないが、少なくとも怪人二十面奏は、自分たちの選択が正しかったことを確信しただろう。

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開演を待ち構える観客の前に、これまでのツアーのライヴ映像が次々に映し出される。このツアーでは、ライヴごとに異なる過去の衣装を着用し、これまでの活動を振り返る趣向となっていた。彼らの衣装は、「第一章 怪人二十面奏参上篇」からずっと明らかなコンセプトをもとに作り上げており、衣装の変遷は彼らにとってバンドの歴史でもある。

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この日は、「第九章 懐古的未来世界 篇」の衣装のお披露目でもあったからか、マコトとKENがステージに揃い、一曲目の「Pied Piper of Hamelin」が始まっても、フロアは若干ざわついている印象。それが、これまでのバンド活動の中でも一番短いというショートパンツにガーターベルトというマコトのいでたちのせいなのかは不明だが、新しい衣装が、一瞬呆気にとられるようなインパクトを思いがけず与えてしまったようだ。

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マコトは容赦なく力が入った様子でホイッスルで煽り、続く「偶像破壊黙示録」ではメガホンを手に扇動していく。「ヲルガン坂に見る夢は」ではファンも小さなメガホンを手にしたかと思うと手拍子を打ち鳴らし、その場でジャンプ! 徐々にライヴの空気に身をゆだねていく。

 

「赤羽!、やってまいりました」とマコトが名乗りを上げると、今日がツアーファイナル(千穐楽)であることを告げ、これまでの19本の思いを背負って臨むと力強く宣言。ここでマコトが“リベンジ”という言葉を使ったのは、本来であれば昨年に五周年記念ツアーを実施する予定だったからだ。

 

それにも関わらず、緊急事態宣言のためにツアーは中断、その後に予定していた振替公演さえ、再びの感染拡大で配信ライヴへの変更をよぎなくされた。だからこそ、ツアーが許される状況になって、いち早く彼らは全国ツアーを決行したのだ。ギリギリの状況の中、感染対策をしながら何とか無事19本を終え、20本目のファイナル公演を終えることでリベンジが果たされる。力が入るのも当然と言えるだろう。

 

「想望カルト」から、怪人二十面奏らしい歌謡曲テイストをたっぷり交えながら、曲の世界観をくっきりと描き出していく。「人間失却」ではフロア全体で揃って手拍子でリズムを刻み、さらに体を二つ折りにして激しいノリを展開した。そんな光景を見ていると、ソーシャルディスタンスを保っているとは言え、コロナ禍のライヴとは思えない、コロナ以前に戻ったような、そんな錯覚さえ覚えた。

 

コロナ禍のライヴでは、声が出せない、自由に動き回れない、そんな制限の中で行われている。まだまだ以前のようにライヴを楽しむのが難しい状況だ。そんな中、強い意志を持って全国ツアーを経験してきた彼らもそのファンも、現状の制限のうえで思い切りライヴを楽しむ術を発見したかのように見えた。どんな状況でも人は適応できるもの。この日、目にしたライヴの光景は、楽しむことに100%集中している、その点においてまごうことなきライヴならではの景色だった。

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「噫無情」を切々と歌い上げたマコトが、「楽しんでくれてますでしょうか?」とMCを始める。地方ではクダけたMCもしたそうだが、今日は真面目にと神妙な顔つき。KENも「よく来てくれました。いい状態で迎えられて楽しみにしてした」と穏やかに口にする。

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そしてこの日がマコトの誕生日であることに触れ、「マコト様のお生まれになった日」とKENが讃える。マコト本人としては、何年か前に年をとらなくなったそうだが、「一番短いパンツを履くとは思わなかった」と照れつつも、「攻めてるね~」と言われご満悦な様子。

 

しばし新衣装の話で盛り上がりを見せていたが、「いろいろ考えてたけど、みんなの顔を見てたら楽しむだけ」とマコトが素直な思いを口にし、ツアーをやり遂げたことを踏まえて「前に進んでいきたい」と決意を新たにしているようだった。

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普段でも、20本ものツアーを終えれば、間違いなくバンドは成長して帰ってくる。コロナ禍というこれまで想像もしなかった状況で敢行したツアーに挑んだ彼らの緊張や不安を想像すると、それはキャリアの長い二人にとっても特別なものだったはずだ。それを乗り越えた彼らは、どれだけ多くの物を手に入れただろう。このように彼らの決心が実を結んだことを嬉しく思った。

 

「可不可」から終盤戦に向けて、さらに激しく、MCどおり観客ははっちゃけていいく。マコトもKENもステージから前方へと乗り出し、観客を挑発していく。「G・G・P・G」では、タイトルを叫べない観客の代わりに、ステージから叫び声が突き刺さってくるように耳に届く。ヘドバンで応える観客。怪人二十面奏の魅力のひとつとも言える、ある種の仰々しい空気がステージに満ち、観客を飲み込む。

 

「アヴストラクト シニシズム」では、KENも「どうですかー?」と観客を煽り、マコトがさらに「イケんのか?」と畳みかける。観客同士が接触していなくても、確実に熱を帯び、熱くなっているのがわかる。ニュース速報のような語りから「G・Jクローバー連続殺人事件」が始まると、観客はその場で思い切り踊り出す。会場中の空気もサウンドも、イキイキと躍っているように感じられ、じっと立って観ているだけで、躍動感が身体に伝わってくるようだった。

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「最高の景色です」と満足げなマコトが、「もうちょっと」と「死せる Cecile セルシン摂氏0度」を始めると、ファンもさらに豹変。思い切り勢いをつけたヘドバンに長い髪が振り乱れる。思えば以前はこんな風に、ちょっと遠慮があったほうがいいのでは…と心配になるほど、みんなが頭を振り乱していたものだった。今はその遠慮のない思い切りのよさが、とてもステキだ。そのまま本編最後を「ダムド」で締めくくると、スピードを上げてその勢いのまま一気に駆け抜けるように、幕を下ろした。

 

アンコールでは、マコトの誕生日をお祝いするべくケーキがステージに登場。お祝いを受けて笑顔を浮かべつつも、マコトは「誕生日はオマケ。何と言っても今日はファイナル」と、ツアーを完走できたことが嬉しくてたまらないといった様子だった。

 

表情豊かに、悲哀に満ちた「其の証」を聴かせ、「生命力」でほとばしる感情をむき出しに、最後の最後まで全身全霊で自分たちの音楽に向かう姿を見せてくれた二人。長くサポートを務め、このツアーを共にしたShinsaku、龍、IORI-菴-の三人とスタッフにお礼を告げる表情は晴れ晴れとしている。

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「この時期に全国ツアーをみんなの力で乗り切ったことは僕らの力になったと思います」と、何度となく繰り返したマコトの言葉は、2月の東阪ワンマン「二癈人」、そして3月発売のシングル『癈人録/しにいたるやまひ』で証明されることだろう。コロナ禍の終わりは見えない。もちろんまだライヴに足を運ぶことができないファンもいるだろうが、いつかまた思い切りライヴを楽しめるときのために、バンドの現在の活動を応援し続けてほしい。そんなことを改めて感じた夜となった。

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文・村山幸
フォト:米田