2024年02月07日 (水)
【ライヴレポート】<MAMA.presents. VISUAL NEW SPIRIT.>2024年1月30日(火)新宿BLAZE◆「VISUAL NEW SPIRIT.」という符号の下に集った6つの音楽が、それぞれの方法論でしのぎを削った総力戦。
REPORT - 21:00:38MAMA.presents. VISUAL NEW SPIRIT.が1月30日(火)に新宿BLAZEで開催された。
ダークな音楽性で高い支持を得ている気鋭の若手バンドMAMA.の主催ライヴには彼らをはじめ、CHAQLA.、ぶえ、NAZARE、nurié、HOWLが出演した。
ライヴシーンで精力的に活動するこの6組はニューエイジを代表する存在であり、このタイミングで彼らが同時に新宿BLAZEに立つことには少なくない意味と確かな意義があった。
今年7月に閉館することが発表されている同会場は、キャパシティ800人を誇り、新宿歌舞伎町の中心という好立地ということもあり数々の若手バンドマンにとって憧れの場所かつ、端的に言うと挑むべき目標の一つでもあった。
以前インタビューで、この新世代対バンについてMAMA.のフロントマン命依は“誰でも立てる場所では意味がない”という旨の発言をしていたが、その辺りからも、この公演は新宿BLAZEを制圧することよりも、挑戦することに意味を見出すものであることが伺えた。
結論から言おう。この日会場のフロアは半分も埋まらなかった。この事実は受け止めなければならない。だが、その空洞は目撃し損ねた者へのヘイトではなく、むしろ希望を感じさせるものとなったようにも思う。それは何故か?
「VISUAL NEW SPIRIT.」という符号の下に集った6つの音楽が、それぞれの方法論で、しのぎを削った総力戦の模様をお伝えしたい。
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オープニングを務めたのはぶえ。
楽曲の大半をヘヴィなリフとシャウトが占めるのが特徴であるが、サウンドだけでなくその身体がへし折れんばかりに大きなアクションでアジテーションしていくスタイルはこの大会場でも変わらず。
ぶえの楽曲には変化球が存在しない。いや、すべてが変化球でもある。良く言えば真っすぐ、悪く言えば一辺倒とも言えなくない。だが、その楽曲群に4人のメンバーが怒りや苛立ち、時に焦りに似たリアルな感情を乗せることで響きが変わる稀有なバンドだ。この日も観客1人1人と対峙し、“嫌なら帰れ!”と唾を吐きつける。その独善的な振る舞いは、好みが分かれるもので、賛否が生まれることも必至である。積極的に嫌われようとする姿勢は、日常の中に生じる“嫌われたくない”、“誰かに好かれたい”そういった感情の裏返しのようにも見える。荒々しい暴君のようなステージの一端に臆病な内面を隠し切れない人間臭さが覗く、そこにこそぶえが発する強烈なエモーショナルが存在する。「嘔吐、応答せよ」まで、毒にも薬もならない甘言に中指を立てるように全5曲を叩きつけた。終盤、伐(Vo)は自らの死に場所を探すように、フラフラと客席後方まで乱入し、果てるように倒れた。己を否定し、必要悪になることで、存在理由を確かめる。これがぶえの鳴らした魂のロックだ。
ぶえは3月10日に解散する。
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2番手に登場したのはNAZARE。
メタリックな音像とそのクールな出で立ちで登場から会場の空気を一変させ緊張感を漂わせた。硬派なステージやアティチュードは、迎合とは真逆のものであるが会場全体を巻き込んでいくのは、確かな演奏力によるもの。澪(Vo)がホイッスル、グロウルを織り交ぜながらここ一番でクリアなハイトーンを響かせ魅了すると、パワーコーラスに呼応するようにフロアからは拳が上がる。
この日もNAZAREの強力な武器である轟音は絶品で、とりわけ最新曲の「幻想に咲かれては」では感情を露わにしたかと思えば、冷静さも見せ、あくまで一音一音の説得力で緩急をつけフロアを自在に操って見せた。ファストなのは楽曲だけでなく、展開も同じで、公演前のインタビューで澪が発言していた“目と耳で感じればそれでいい”の通りに特段MCを挟むこともせず、持ち時間いっぱい全6曲を披露した。
ラストの「Break it down」まで言葉ではなく、そのステージだけで完結させるスタイルはNAZAREの硬派さが際立つ一方で、その潔さに痛快な清々しさをも感じさせるものではなかっただろうか。2023年5月にツアーファイナルを行った思い入れのある会場に十分な爪痕を残し、ステージを後にした。
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ダークサイドに会場が塗りつぶされたところで登場したのはHOWL。
1曲目は最新アルバム『PATHW●RD』より「デルフィニウム」。音楽的引き出しの多彩さでここまでの空気をグラデーションさせる4人は比較的攻撃的なナンバーを並べ会場を味方につけた。キラキラと言うには暗い、ダークと呼ぶにはポップ…彼ら特有の立ち位置故に対バンライヴは常に戦い方の選択が要求されるが、この日このライヴを選んだオーディエンスとのフィーリングは実に良好。HOWLの実力が浸透してきたことも一因であるが、後にMAMA.の命依(Vo)が“HOWLとは音楽で分かり合えた”とMCで語ったように、意志の共鳴も大きな理由だ。
まさにそんなバンドカラーを象徴する「シャーデンフロイデ」は流麗なメロディと焦燥感を煽る曲展開が起爆剤となった。艶めかしさとフロントマンとしての骨太さを増した真宵(Vo)の姿はカリスマ性を感じさせるものになっていたうえに、楽器隊は音の主張だけでなく佇まいも大きな会場に映えるものへとブラッシュされている。フロアにウォール・オブ・デスを要求した「隷従エスコート」然り、バンドのシェイプが一段階高みに登っていることを感じさせる充実のステージだった。やはり今年も要注目の存在と言えるだろう。
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イベント後半戦の口火を切ったのは地元大阪を拠点とするnurié。
大規模全国ツアーを終えたばかりとあって、このライヴを楽しむことに注力していることを表すかのように、大角龍太朗はなんとIN FLAMESのTシャツを着用して登場。変則的なリズムで揺らす「RooM-6-」から“お前らそんなもんちゃうやろ!”と感情を発出する姿が印象的だった。続いた「I’m RAISE CLUB」のストレートなロック然り、大角を中心にバンドがリビルドされて引き立っているのが分かる。ツアーで培ったユーモラスな演劇風MCを導入に縦ノリを加速させた、お馴染みの「骨太もんちっちくん」といつになくリラックスしている空気の伝染で陽気な風を吹かせた。
彼らにとって決意のワンマンの場となった会場という気負いは皆無で、全国ツアーでの手応えを存分に感じさせると共に、nuriéにとって新機軸となるスタイルには早くも自信が見て取れた。音楽的な説得力があるからこそ、笑いを交えたMCワークにもブレがない。小気味よく小爆発を絶え間なく繰り返すライヴは心地よく、そのアンサンブルが心に着火する「瞳に映らない形と性質、それを「 」と呼んで」まで弛まぬ温度感で駆け抜けた。この曲のリリックでもある“感覚を取り戻す為に”を体現する姿はここからの未来を期待させるものであった。
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楽器隊の4人がジャムるようにセッションを始め、教祖のような出で立ちのANNIE A(Vo)を召喚してCHAQLA.のステージは幕を開けた。
オープニングナンバーは「BACK TO THE FUTURE」。リズムが複雑に交差し転調しながら疾走感を増して一瞬にして熱気を高めてしまったが、まさにヴィジュアル系とはそういう存在、非日常なのである。そんなことを再認識させながら、続いた「ミスキャスト」ではもはやコール&レスポンスのおさらいが不要なほどに楽曲が浸透していることを証明して見せた。
ミクスチャーを基調にしつつも、変拍子、転調に加え、楽しみ方にもありとあらゆる要素が詰め込まれたライヴは、誰もやらないことをやるという無形の信念に準ずるもので、まさにSPIRITを叩きつけるもの。ヴィジュアル系というジャンルに混在する様式美と自由度の要素で言うと、後者をチョイスするCHAQLA.は暴風雨のような破壊力を持った「PLAY BACK!!」まで独自の魅力を全4曲に込めた。
若さ故の粗さはあれど、逆算された答えに依存しない形態は真新しさを感じさせる。自身の信念や美学の追及をやめない姿勢、これがCHAQLA.のアートだ。
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ラストはこの企みの首謀者、MAMA.。
“命燃やせ!”と黒いジャージに身を包んだ命依(Vo)の咆哮が炸裂した1曲目は、最新曲の「MARIA」。この日もさることながら、目前に迫ってきた恵比寿リキッドルームワンマン対砲用のニューウェポンは、披露から間もないのにも関わらず早くもアンセム的な雰囲気を纏い一体感を生んだ。赤とピンクの照明が妖しげなトリップ感を助長した「アシッド・ルーム」の扇動力、代表曲的立ち位置の「BLACK DOG.」が醸すダークサイドと、いずれも何か一つの要素に傾倒することなく緻密に角度を変えながら闇を照射していくMAMA.の王道たるステージだ。
途中、“ヴィジュアル系をこれから始めるんだ!”という命依の発言もあったが、自分達の居場所を守るのではなく作る、その決意こそがこのイベントの動機であり命題である。旗上げは別に誰でも良かった。誰もやらないから俺たちがやってんだよ。そんな首謀者達の想いに賛同するように、この日一番の嬌声が巻き起こった爆発力が圧巻だった「Psycho」。徘徊するメンバーたちが不穏な「命日」とまさにベストオブMAMA.のメニューでこのイベントの持つ責任と対峙してみせた。
“俺、全部背負ってんだよ!”で雪崩れ込んだのはこれやっておかなきゃ帰れないでしょ!の「GREEN HEAD MEN」。モッシュピットが巻き起こる必殺技をぶちのめして長時間に渡るイベントは幕を下ろした…かに思えたが“まだレコーディングもしてないんだけど…”と前置きし、最後に新曲を披露した。
「RAIN」と名付けられた楽曲は、<ラップ>、<ギターソロ>、<これまでのMAMA.ではあり得ない>などといくつかの要素を持った、非常に新しい一面を覗かせるものだった。『ANIMISM』で到達したひとつの完成形から更なる刺激を欲した結果生まれたであろう、意外性のあるこの曲、実のところ開演直前までプレイするかどうかの協議が行われていた。その全貌は2月10日に迫った恵比寿リキッドルームワンマン「神殺し」で再び確認出来るのだろうか。抜群のセンスと意志を全面に押し出し、鳴りやまぬアンコールを背にMAMA.はイベントを締めくくった。
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踏み絵。
終演後ふとそんな言葉が浮かんだ。
身の丈よりもひと回り以上大きいキャパシティだからこそ何かに迎合することなく、今在るべき姿で立つことが最適解であることを確かめる。意思確認。
よそ行きでは意味がない。ブレることのない信念を強固にするためにこの場所が必要だったのかも知れない。
確かにフロアが満員になることはなかった。そのことについて命依は“わかってたよ、うるせえな”と吐き捨てたが、それでもこの夜には希望があった。
バンド同士が敬意を持ち友情を大切にしていることが理解された挑戦だったからこそ、オーディエンスもバンドもひとつになる共犯的関係が結ばれたのではないだろうか。
もちろんこれは定期的なユニットライヴでもなければ、契約書で縛り付けた密約もない。この6バンドが再び集まることは二度とないのかも知れない。事実ぶえは3月に解散する。
それでも思い出作りでもなければ、その辺にゴマンと転がっているような縄張り争いでもなかったことは目撃した者には明白だった。開催に向けてMAMA.のメンバーが“俺たちだけが得をしてもマジで意味がない。新しい世代の本物同士で闘うんだ。”としきりに語っていたことを思い出す。六者六様、自分たちの音楽に誇りと信念、プライドがあるからこそ解りあえる。外っツラなんかじゃない。新しい思想ではなく、変わらない信仰を持って道を切り拓くことこそが、VISUAL NEW SPIRIT.
MAMA. CHAQLA. ぶえ NAZARE nurié HOWL
再び巡りあえることを待つと共に、彼らがシーンの底力を証明することを期待したい。
TEXT:山内 秀一
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【SET LIST】
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<ぶえ>
- 毒殺、絞殺、撲殺、参回殺す
- 痴漢
- 君を小さくする魔法
- 4秒後、無駄死に
- 嘔吐、応答せよ
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<NAZARE>
- SAD[ist.]
- INSOMNIA
- IDEAL
- 幻想に咲かれては
- DELETE.
- Break it down
…………………………………………
<HOWL>
- デルフィニウム
- ANOTHER BIRTHDAY
- シャーデンフロイデ
- 隷従エスコート
- アンダーテイカー
…………………………………………
<nurié>
- RooM-6-
- I’m RAISE CLUB
- 骨太もんちっちくん
- akuma
- 瞳に映らない形と性質、それを「 」と呼んで
…………………………………………
<CHAQLA.>
- BACK TO THE FUTRE
- ミスキャスト
- リーインカーネーション
- PLAY BACK!!
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<MAMA.>
- MARIA
- アシッド・ルーム
- BLACK DOG.
- Psycho
- 命日
- GREEN HEAD MEN
- .RAIN
MAMA. 単独公演「神殺し」
日程:2024年2月10日(土)
会場:恵比寿LIQUIDROOM
時間:OPEN 17:15 / START 18:00
神チケ ¥10,000 / Aチケ ¥5,000 /当日 ¥1,000 (ドリンク代別)
《入場順 》
神チケ→神チケEX→Aチケ→一般→当日券
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