2022年03月09日 (水)
★びじゅなび独占!超ロングリリースインタビュー!★【ベル】2022年3月2日リリース、ニューミニアルバム『新約 鐘が鳴ったら事件が起きる』◆5者5様の感性で“歌謡”を捉えた個性溢れる楽曲を存分に味わう事ができる、歌謡ロックバンドの真骨頂を発揮した名盤を紐解きます。
NEWS - 20:00:132022年3月2日にリリースされたベルのニューミニアルバム『新約 鐘が鳴ったら事件が起きる』。
各メンバーが1曲ずつ作曲した今作は、5者5様の感性で“歌謡”を捉えた個性溢れる楽曲を存分に味わう事ができる、歌謡ロックバンドの真骨頂を発揮した名盤となった。
進化した原点回帰を遂げたバンドの、充実した今を感じるインタビューをお届けします。
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◆今のベルだからこそ生み出せる、“歌謡”をテーマにした作品を。
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――“進化した原点回帰”と感じる、素晴らしい作品が完成しました。
一同:ありがとうございます。
――『乙女劣等行進曲』と『拡声決起ストライキ』では、それぞれに異なるアプローチで5人体制のベルの可能性を提示した。だからこそ、満を持しての原点回帰なのかなと。
明弥:その通りですね。
ハロ:タイちゃんの中で今作のアイディアが浮かんでいて、「“歌謡”を軸にした作品にするのはどうだろう?」と提案してくれたんです。
タイゾ:前作の『拡声決起ストライキ』は、コロナ禍の世の中に対する想いや大人に対して言いたい事など、リアルタイムの皆の気持ちが込められたメッセージ性の強い作品だったと思うんですね。言ってみれば、バンド本来のコンセプトとはまた少し異なるベクトルにある作品なので、次に届けるべき楽曲はどういうものだろうと考えていたんです。で、ルミナと俺が加入してからだいぶ経ちましたし、今のタイミングで改めてベルのコンセプトである“歌謡”をテーマに、メンバー5人が1曲ずつ作曲したものをミニアルバムとしてまとめたら面白い作品にできるのではないかと。ツアー中に提案したら、皆にも賛同してもらえました。
ハロ:飯塚のホテルで話したよね?
正人:いや、飯塚じゃない。
タイゾ:札幌?
ルミナ:札幌でもないですね。
明弥:たぶん、名古屋か大阪じゃない?
――皆様の記憶力に一抹の不安が・・・。
一同:(爆笑)
タイゾ:皆、違う時間軸を生きているのかもしれない(笑)。
――御多忙な日々ですからね(笑)。ひとことで“歌謡”と言っても、5者5様の幅広い曲調の楽曲が誕生しました。
ハロ:本当に。個々が積み上げてきた音楽的なキャリアもありますし、このタイミングで歌謡をテーマにそれぞれがベルの為に作曲をしてみるのは良い企画だったなと思います。選曲会には複数曲を持ってくる人も居れば1曲を決め打ちで持ってくる人も居るので、ひとつの作品としてまとめた時ベストな形になるようにバランスを考えながら制作していきました。
明弥:僕はずっとベルのメインコンポーザー的な立場で活動をしてきましたが、作曲では自分の好きな歌謡をベースにする事が多いので、他のメンバーが思う歌謡はまた微妙に違ったりもして。曲が提出される度にとても面白かったですし、全員が作曲した事で幅が広がった印象です。例えば、正人が作曲した『ミッドエンドナイト』の制作で「シティ・ポップ感が欲しいんだよね。」と言われた時、そういう音楽も聴いてはいましたけど、僕自身はそれを作曲表現に取り入れようと考えた事が無かったので新鮮でした。タイちゃんとはよく2人で歌謡の話をするだけに、『「返して。」』は一聴しただけで“絶対に好きだよな!”とわかる彼らしい楽曲でしたし、ルミナが作曲した『踏切の街』はお祭りのような不思議な歌謡に、ハロが作曲した『真っ赤な嘘』はヴィジュアル系らしい疾走感のある歌謡になっています。あと、このミニアルバムを作るにあたって、タイちゃんから「メロディーのリフレイン(繰り返し)を入れよう。」という提案があったんです。昨年11月の名阪2部制ワンマンの企画で沢田研二さんや中森明菜さんの楽曲を演奏した時、歌謡曲にはリフレインが多いと改めて感じて。やっぱりそれが王道だろうと取り入れてみたら、5曲それぞれに非常に上手くハマりましたね。
――『新約 鐘が鳴ったら事件が起きる』というタイトルにされたのは?
ハロ:ベルの1stミニアルバムが『鐘が鳴ったら事件が起きる』で、以降も同形態の作品には“続”“続々”というワードを加える形でそのタイトルを使用してきたんです。でも、ルミナ加入時に制作したミニアルバムでは“新しいベル”を提示する為にあえて別のタイトルにして。今回、今のベルだからこそ生み出せる歌謡をテーマにした作品という事を前提に考えた時、歌謡はベルの原点であり、今作はここまで続いてきたバンドの歴史があるからこそ生み出せるものになると感じたので、これは『鐘が鳴ったら事件が起きる』の正式なナンバリングタイトルにしたいなと。外伝ではない直球な作品にしようと思って、このタイトルに決めました。
――それもまた、進化しつつの原点回帰。
ハロ:はい。“新約”という言葉には“新たに結ばれる約束”という意味があるので、ファンの皆に対しても、ベルで表現する音楽に対しても、「改めて、新たに結び直す。」という意味を込めて“新約”を付けました。
――なるほど。そして、ハロさんが初めてジャケットとブックレットのデザインを手掛けられましたが、以前からデザインに御興味が?
ハロ:ありましたね。今回、明弥が「やってみない?」と提案してくれたんですけど、やった事が無い以上どうなるかは未知数じゃないですか?制作には期限もありますし、「できませんでした。」はあってはいけない。かと言って、絶対に中途半端なものは作りたくない。そんな葛藤を抱きつつも、デザイン面でも自分の力を昇華したくてコロナ禍に勉強を続けてきたわけだし、ここで断るのは違うなと思って挑戦する事に決めました。実は、他のメンバーはまだジャケットくらいしか見ていないんですよ。ブックレットの歌詞ページは、あえて見せていないんです。ファンの人達も同じだと思うけれど、完成したCDを手にしてブックレットを開く時はワクワクするし楽しいじゃないですか?それぞれの楽曲の歌詞ページはイメージに合わせて凄く凝って作っただけに、そのワクワクする気持ちをメンバーにも味わって欲しいんですよ。
――文字のフォントなども非常に凝っていらっしゃいますよね。
ハロ:楽曲タイトルは、1曲ずつロゴを制作しました。ルミナには、ロゴだけは見せたんですけど。
ルミナ:ロゴから楽曲の雰囲気が想像できて、とても良かったです!
ハロ:それを意識して作りました。これまでは作詞でしかメンバーが作った楽曲の世界観に参加できなかったので、デザイン面でもイメージ作りに携わる事ができて楽しかったです。CDを手にしてくれた人達にも、デザインも併せてじっくり味わってもらえたら嬉しいですね。
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◆王道と言える、ベルにしかできないストレートな歌謡ロック。
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――明弥さん作曲の『人間交差点』は、ベルらしさがストレートに伝わるリードにふさわしい1曲です。
明弥:選曲会には数曲持って行きましたが、その中でも最もベルの王道と言えるようなストレートな歌謡ロックです。これまでに自分が書いた楽曲の要素も加えているし、ベルにしかできない歌謡という自信がある曲です。ギターやドラムに関してもデモの時点から自分の目指す方向性を取り入れていたので、それがメンバーに上手く伝わったんじゃないかな。新しい事にチャレンジするというよりは、個々が持っているスキルを全力でぶつける形で取り組んだ楽曲だと思います。珍しくサビを繰り返して終わるアウトロにしたら、良い感じに雰囲気が出ましたね。ベルの楽曲はラストのサビからイントロに戻る曲構成が多かったので、こういう形にして良かったです。
正人:そうですね。ベルのど真ん中と言える曲調なので、何の迷いも無く、気付いたら作り終えていた感じです。楽曲の方向性も見えやすかったですね。
ハロ:目を瞑っていても叩けるんじゃない?(笑)
正人:叩けるね(笑)。それくらい、直球でど真ん中な曲です。
ルミナ:俺は今回も明弥さんに同席してもらって、「ここはこうして欲しい。」という要望やアドバイスを聞きながらレコーディングしました。MVに関しては、そろそろ大人の色気を出そうかなと意識して撮影してみました(笑)。
タイゾ:変に考え込む事も無く、自然にフレーズを付けられましたね。唯一、考えた事と言えば・・・この曲のMVは新宿のゴールデン街で撮影しましたが、俺は昔、歌舞伎町でちょっとぼったくられた事があって・・・。
――えっ!?
タイゾ:MVの中のゴールデン街で空を見上げて壁に寄りかかるシーンの撮影中は、その事を思い出していましたね(笑)。
一同:(爆笑)
ハロ:やけに哀愁があると思ったら、そういう事か!(笑)
明弥:実際、今も新宿には同じ目に遭って“明日からどうしよう・・・。”と思っている人が居るだろうからねぇ。
タイゾ:新宿のリアルな心境で、最強の哀愁を漂わせて撮影できました。あのシーンを通じて、MVを観てくれた人達にも俺の哀しみを共有して頂けたら・・・そして、「皆は気を付けてね!」という気持ちが伝われば良いですね(苦笑)。
――思いも寄らぬ衝撃エピソードでした。そもそも、楽曲から浮かんだイメージが新宿の街だったのでしょうか?
ハロ:そうです。ロケハンには僕と明弥で行ったんですが、その時点ではまだ書き途中だった仮歌詞が自分の中で納得のいくものではなくて。
――今とは異なる印象の歌詞でしたか?
ハロ:方向性は同じだけど、何となくふわっとしていたというか、誰の事を歌っているのかが明確でない感じだった。でも、ロケハンに行ったら一気にイメージが湧いて、翌朝にはほぼ完成しましたね。“足音”“雨音”“アルコール”“ネオン”などの五感を刺激する要素を散りばめる事で、楽曲の世界への没入感を高めました
――新宿という街自体、そこに居るだけで五感を刺激される場所だと感じます。あれほどまでに多種多様な人々が共存している街は、他に無いですよね。
ハロ:そうなんですよ。新宿歌舞伎町はアジアで一番の歓楽街と言われるだけあって、様々な国籍や年齢の人間が居て。人生をドロップアウトしたような雰囲気の人と普通の学生やサラリーマンが同じ道を歩いているのも、他ではあまり見ない光景ですよね。東京で生活していて、1本路地に入るだけでスラムに出くわすなんて事はそう無いですし、とても刺激を受けました。そして、歴史ある飲食店街であるゴールデン街の雰囲気がとても良い。歌詞やMVのイメージも湧きやすかったですね。
――MVのロケーションが最高でした。
ハロ:ゴールデン街でのロケが効いたなと思います。ライヴハウスの中だけで撮影を完結させていたら、ここまで広がりのある映像作品にはならなかったと思う。
――カラオケ仕様の歌詞字幕もイメージにピッタリでしたし。
ハロ:以前からやりたかったアプローチのひとつでした。制作過程でMV監督さんと映像チェックの確認連絡をする時、一番こだわってラリーが続いたのはカラオケの文字の大きさだったんじゃないかと思います(笑)。
タイゾ:最初はもう少し小さかったんだよね。
ハロ:そう。「気持ち大きめで!」と参考画像を送ったりもして、細かく調整しました。オープニングのタイトルも最初は普通に横書きで『人間交差点』となっていたので、「十字にして下さい。」とオーダーして変えてもらいました。
――そのこだわりが作品をより良くするのですね。歌詞に関してもうひとつ、掛け言葉が本当にお得意だなぁと。
ハロ:得意なわけではないですが、歌詞も進化しなくてはと思ったんです。“傾く陽は西に沈む”の部分は、“太陽は西に沈む”と“シニシズム”と“死に沈む”の3つに掛けています。
――とても驚きましたし、何より“シニシズム”という言葉がさらっと出てくるあたりが凄い。
ハロ:“シニシズム(※社会の風潮や規範など、あらゆる物事を冷笑的に眺める見方や態度のこと)”のような生き方を全て理解できるわけではないけれど、少しロックに重なる部分があるというか。自分達も含めて長くバンドを続けている人達は、おそらくどこか共感する部分があるのではと感じるんですよね。ロックの持つ社会に対する反骨・反発的な精神は、シニシズムの社会の風潮を冷笑的に眺める部分に通じると思う。これまでの歌詞で書いていそうでいなかった部分を形にできました。
――「居場所が欲しい。」「必要とされたい。」というのは誰もが抱く感情なだけに、とても響きます。
ハロ:結局は、ラストのサビの“誰かにとっての特別を 欲しがっただけだよ”が全てなんですよね。この曲の歌詞ページは僕がゴールデン街で撮影した写真と歌舞伎町の夜景を合成して作ったデザインで、なかなか良い感じに仕上げられたと思います。
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◆“シンプルに、ベタに”をテーマに作ったバラードです。
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――『「返して。」』は、最初の泣きのギターを聴いた時にタイゾさんの作曲ではないかなと。
タイゾ:その通りでした。選曲会にはもう少しアップテンポなスパニッシュ歌謡的なものも持って行って、他のメンバーの楽曲とのバランスを考えた結果、こちらのバラードが選ばれて。“よしっ!”と思いましたね。
――御自身としては、どちらかと言うとバラード推しでした?
タイゾ:他の楽曲とのバランスで選ぶ事が第一ですけど、“次のベルで出すとしたら、これが良いな。”と軽く思ってはいました。この曲は変に捻らずに、80年代のキラッとしたシンセサイザーやストリングスのようなベタな音色もどんどん入れていこうと。メロディーも、そこまで細かいわけではないし。Bメロが無くてAメロからすぐサビに行く構成で、途中ちょっとフェイクでCメロが入りますけど、とにかく“シンプルに、ベタに”をテーマに作りました。
――5曲の中で一番、一般的な歌謡曲らしさを感じるアレンジですよね。その中で、Cメロが良いスパイスになっています。
タイゾ:ちょっとした4つ打ちを入れてみました。こだわりとしては、絶対にフェードアウトで終わりたかった。昔は結構フェードアウトで終わる楽曲が多かったけれど、最近はあまり聴かないので。
――切ない余韻が残るエンディングでした。
明弥:僕自身は、沢田研二さんのようなまだそこまでシンセが流行っていない1970年代頃の歌謡を好んで聴く事が多いですが、タイちゃんは工藤静香さんや安全地帯のような1980年代の歌謡が好きなんですね。その時代になるとシンセベースが増えてきて、この曲のデモにも入っていました。シンセベースというのはシンセサイザーで演奏するベースパートなので、鍵盤で弾くんですよ。最近はKing GnuやOfficial髭男dismの影響でまた注目度が高まっていたりもして、これはいよいよ僕も鍵盤を弾く時が来たかなと思ったくらい、この曲にはシンセベースがハマっていましたね。結果的にはシンセベースに合わせて生のベースを入れたけれど、イメージはしやすかったです。具体的なプレイ面で言えば、究極の歌モノだからあまり派手な印象にはならないように、どっしり構える事を意識して演奏しました。
正人:この曲も、ドラムは凄く作りやすかったです。おそらく、デモの時点で僕が叩く姿を想像しながら作ってくれていて、タイゾさんの中の“Imaginary正人”と現実の“True正人”に何も相違が無かったです(笑)。演奏していて感情が入り込む曲ですね。
ルミナ:タイゾさんの楽曲のギターは、基本的に全てタイゾさんが考えてくれるので、俺はそれを弾く感じです。こういう曲はライヴでどんな表情をして弾けばいいのか、結構考えているんですけど・・・。
タイゾ:さっき話していた大人の色気を出してみたら?
ルミナ:ずっと舌を出しておけばいい?
一同:(爆笑)
ハロ:くちびるペロッを繰り返すの!?それはボーカル殺しだね(笑)。
タイゾ:ファンの人達がルミナばかりを見ちゃう(笑)。
ルミナ:一度は試してみるかもしれないです(笑)。
タイゾ:やってみないとわからないからね。
――ルミナさんらしい色気を楽しみにしておきます。愛情と諦めの狭間で別れを選ぶ女性を描いた歌詞が、楽曲の情感をより引き立てていますね。
ハロ:今回の5曲の中で、最初に書き上げた歌詞です。これまでもずっと僕がベルで書いてきた路線ですし、哀愁を帯びた女性の物語は歌謡曲の王道だと思うので、そういう意味では書きやすかったですね。一見すると「恋人を返して。」と歌っているようにも捉えられますが、本質的には「あなたと出逢ってから見失ってしまった“私自身”を返して。」という意味を込めた歌詞になっています。
――男性が女性の心情を繊細に歌詞に書けるって実は凄い事だよな、とも思うのですが。
ハロ:あぁ、どうなんでしょうね?それが本当に女性に刺さっているかどうかは、僕からはわからないので。ただ、日常的に“この人は何を考えているんだろう?”と思い巡らせる事が好きではあります。
――人間観察力と想像力が大切ですね。そして、こちらも言葉遊びが際立っています。
ハロ:2番のAメロの“視界(しかい)”“死体(したい)”“痛い(いたい)”の部分と、“綺麗事(きれいごと)”“嫌い(きらい)”の部分は、言葉が1文字ずつずれている事と2人の気持ちのずれを掛けていて、次のサビの頭の“言葉遊びはもう終わり”で帰結させています。やっぱり、ブックレットで歌詞を読んで欲しいなと思うんですよね。ダウンロードして外でイヤホンで聴く人が増えたから、歌詞を読まなくなったのもわかるんですけど。部屋でコンポにCDを入れてブックレットを片手に聴くようなスタイルの人は、もうほとんど居ないじゃないでしょうから。
――それもまたワクワクできる音楽との向き合い方ですし、若い世代の方達にも経験して頂けたら良いのですが。個人的には“足音探す 無意識気付く”の部分が、こういう瞬間に一番別れを実感するものだなと感じて切なくなりました。
ハロ:そうなんですよね、気付いてしまうっていう・・・たぶん、僕自身の中に結構脆い部分があるんだと思います。そうじゃないと、こういうフレーズは出てこない気がする。
――この曲を筆頭に、作品全体を通して歌の距離感・温度感が非常に心地よく伝わる印象を受けました。
ハロ:それは、楽器隊のメンバーが歌謡曲だという事を据えて制作してくれたからだと思います。歌謡曲って、歌や言葉の距離感が独特だと思うんですよね。流行りのポップスなどではオケのカッコよさが重視されていたり、歌の距離感が全く違うじゃないですか?
――歌謡曲は歌メロが耳に残る事が絶対です。
ハロ:皆がそこを一貫して制作してくれたからこそ、ベストな形で歌を届けられる作品にできました。
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◆歌謡=懐かしさを感じるイメージなので、故郷をテーマに作曲しました。
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――ルミナさん作曲の『踏切の街』は、“故郷”をテーマに制作されたそうですね。
ルミナ:はい。俺が思う歌謡=懐かしさを感じるイメージなので、このテーマで作曲しました。最初のシンセは、函館の有名なお祭りの『いか踊り』のテンポとフレーズをアレンジして取り入れたんです。
ハロ:おそらく、『いか踊り』を知らないですよね?
――勉強不足で申し訳ありません、検索してみます。
ルミナ:いえいえ。函館の人が聴いたら、“これは!”と気付くと思います。
――一度聴いたら離れないフレーズと歌詞の世界観が相まって、童謡などの持つちょっとした怖さのようなものを感じました。
ハロ:ローカル性には、そういう怖さがあるんですよ。
ルミナ:制作にあたって、ハロさんに「ちょっと嫌な気持ちになるような曲にしたいです。」と伝えたんです。
――不思議な不安感があります。
ハロ:イントロの途中に入ってくる短音の音色が、凄く不安を煽るんですよ。今までのベルには無かったテイストの面白さがある、不思議な曲ですね。
明弥:デモの時点ではドラムが入っていなかったので、“ここからどうなっていくんだろう?”というワクワク感がありましたし、メンバー全員で作り上げた感覚が強い曲ですね。ベースとギターは打ち込みで入っていたのでメロディーとの兼ね合いなどはわかったんですけど、これもまた自分では思い浮かばない歌謡だったので制作していて面白かったです。函館の祭りのリズムとは聞いていたのものの、メロディー自体は少し哀愁を帯びていて明るくはないし、ドラムのリズムも今までのベルには無い感じで。
正人:僕も『いか踊り』を知らなかったので、一体どういうものだろうとYouTubeで検索してみたんです。そうしたら、何か踊っているおじさんが出てきて(笑)。
ハロ:凄い軽快なんだよね(笑)。
正人:そう!踊っているおじさんを観て余計にわからなくなって、“う~ん、これはどうしよう・・・。”と。でも、ルミナの頭の中にはしっかりとした完成形があって「これでどうかな?」と提出したドラムに「大丈夫です!」と返ってきたので安心しました。その時点では、僕にはまだ完成形が見えていませんでしたね。見えないまま、ベースに「パス!」と渡した感じです(笑)。
――『四つ辻乱舞』などでの和太鼓的なドラミングもお得意なイメージがありますが、それとは全く違うお祭り感ですよね。
正人:そう、シャッフルですしね。完成したものを聴いて、ルミナの頭の中ではめちゃくちゃ良い曲ができていたんだなぁと思いました。
明弥:ゆっくりのシャッフルはごまかせないし、リズムをしっかり理解していないとできないんです。ちゃんとハネる事を意識する点は、とても難しかったですね。でも、日本人には自然と慣れ親しんでいる人が多いリズムでもあるので、聴いてくれる人達は馴染みやすいんじゃないかと思います。僕らが通ってきたロックなどの音楽ではあまり経験の無い曲想だったので、“ベルはこういう音楽もできるんだな、楽しいな!”と思いながら演奏してタイちゃんにパスしました(笑)。
――ギターソロ前のベース、カッコよかったです。
明弥:今作ではスラップはほぼしていないので、そこは唯一“派手にやってみよう”と弾いた部分ですね!
――明弥さんからのパスを受けたタイゾさんは?
タイゾ:最初にデモを聴いた時、リズムが“タッタラララ、タラララ・・・”だったから、俺の中での印象は水戸黄門のテーマだったんですよ。
一同:(大爆笑)
――言われてみれば!(笑)
ハロ:だから日本人に馴染みのあるリズムだったんだ!(笑)
タイゾ:でも『いか踊り』がテーマだと聞いていたから、“水戸黄門ではないんだよな・・・。”と思い直して(笑)。皆も言っていた通り、デモの段階ではそこまで沢山の音が入っていなかったので、制作が進むにつれて“こうなるんだ!”という発見もありましたし、5曲の中で完成までの過程が一番面白い楽曲でしたね。サビの歌メロが明るいようで微妙に暗くもあって、影がある不思議な感じが良いなと。ちょっと遅めのシャッフルは自分的に得意分野なので、ほぼ1テイクで録りました。ただ、これは後々の話にはなりますが、個人的にライヴでは頭のフレーズをギターよりもキーボードで弾きたい気持ちがありまして。キーボードを持っていないので、バンド費が潤ったらメンバーに相談しようと思います(笑)。
明弥:ショルダーキーボード?(笑)
タイゾ:あえて、それもアリだけど(笑)。
――いつの日か鍵盤を弾く姿が拝見できたら嬉しいです!作曲者的には、ドラム・ベース・ギターと理想通りのテイクが戻ってきましたか?
ルミナ:そうですね!そこに自分のギターを加えて、完成した時は“これだ!”と思いました。
――そして、ハロさんにパスが。
ハロ:いや・・・制作スケジュール的に、楽器隊がパスを投げ合っている間に歌詞も書かなくてはならなかったんです。なので、ドラムだけが入った状態で書き始めました。
――それは難易度が高い。
ハロ:僕的にはもっとアングラ歌謡みたいなイメージを抱いていたので、想像より華やかな曲になったなと思いましたね。歌詞を書き始めた時点では全く完成形が見えなかったし、自分の中でどこをゴールにしたらいいか一番悩んだ気がします。テンポはお祭りなのにメロディーは暗いから、お祭りっぽい歌詞を書いても暗すぎる歌詞を書いても合わないんですよ。どうしようかと悩んだ末に、歌謡曲にとって最も大事な“歌や歌詞に感情を込める”という事をあえてやめてみようと。
――歌い方がストーリーテラーのようで、いつもとは全く異なる印象です。
ハロ:ルミナが「歌の雰囲気は任せます!」と言ってくれたので、あえて無機質に歌ってみたんです。サビ以外は、語りと同じテンション感で歌いました。それによって楽曲の怖さが増したと思います。
――フィクションとはいえ、地方の過疎化というのは現実世界とリンクした内容ですし、情景描写がリアルだから余計に怖い。
ハロ:ストーリーとしては、過疎化が進む街の大人達が街ぐるみで言い伝えをでっち上げて、我が子が街から離れる事を阻止しようとする。幼い頃は言いつけを守っていた子供達も、成長すると踏切の先に新しい世界が広がっていると気付いて・・・という感じですね。物語の表の設定ではAメロが状況説明、Bメロが子供達の声、サビが大人達の声になっていますが、裏の設定ではAメロは同じく状況説明、Bメロは老いていく大人達の声、サビが街の先人達を見送る若者の声になっていたりします。『踏切の街』という言葉自体、何となく怖い感じがするんですよね。パスを回し合っている楽器隊と同時に、歌詞も上手くゴールできたんじゃないかと思います。
――パス回しと並走する難関だっただけに(苦笑)。
ハロ:そう、同時に横を走っていたので(笑)。完成した時に手応えと驚きを感じられたし、この音源の中でも一番のアクセントになりました。
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◆苦手な都会の風景も、楽曲を引き立てる要素のひとつになるんだなと。
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――正人さん作曲の『ミッドエンドナイト』は、ポップでオシャレな聴きやすさのある楽曲です。
正人:どちらかと言うと僕は都会が好きではなくて、特に都会の喧騒が苦手なんです。でも、ある時YouTubeでシティ・ポップを流してイヤホンで聴いていたら、苦手な都会の風景も楽曲を引き立てる要素のひとつになるんだなと感じて。自分でもそういう曲を作りたいなと思って書きました。ドラマーが作ったにも関わらず、ドラムは全く動かない曲です(笑)。
――ええ、予想外の曲調に少し意外性を感じました。
正人:「この1本のリフでいける」という判断がつくのは、ドラマーだからこそだとは思います。あとはもう、メンバーのアレンジが素晴らしかったので!
ハロ:Yo-shiTさんが素晴らしかったね。
正人:そうだね。
――正人さんの実のお兄様であるYo-shiTさんがアレンジを手掛けられたそうですね。
明弥:Yo-shiTさんには、これまでもシンセのアレンジをして頂いた事があって。この曲はYo-shiTさんの得意ジャンルだと思ったし、手掛けてもらえたら更に良くなるだろうという気持ちが強かったので、「お願いしてみたら?」と。
ハロ:ある意味、安部兄弟の共演だよね。
正人:兄がこういう曲を得意としている事は僕も知っていたので、「好きにやってくれ。」とオーダーしました。いや、良い仕事をしてくれましたね!(笑)
一同:(爆笑)
明弥:デモが送られてきた時点で、サビのメロディーが印象的で。Aメロ・Bメロも凄くオシャレですけど、一度聴いたら忘れられないサビが本当に凄いなと思いました。「こういう曲調にしたい。」という正人の要望が明確だったので、自分も山下達郎さんをはじめとする当時のシティ・ポップを聴いて、イメージを理解した上で取り掛かりました。ドラムに関してもきっちり決まっていたので、バスドラとの縦の線をしっかり合わせる事を意識してレコーディングしましたね。
正人:演奏的には、今作の中で一番難しい曲かもしれない。
明弥:難しかった!ずっと同じ事を繰り返すって、難しいんですよ。
正人:頭がおかしくなりそうになる(笑)。
タイゾ:実は、俺はプライベートでも結構シティ・ポップを聴いていたんです。だから、正人がデモを持って来た時は“遂に、ベルでもこういう曲をやる時が来た!ギターは任せろ!”と思いましたね。ライヴでもレコーディングでもよくワウペダルを使うんですが、この曲に関しては細かいフレーズ重視というよりは、音色での印象付けという立ち位置を担いたいなと。フレーズではなく音色で自分を出す事を意識して、それが楽曲に上手く溶け込んだのではないでしょうか。ギターの録音データを送ったら、「ナイス!」と返信がきましたし(笑)。
正人:いいねボタンを押しました(笑)。
タイゾ:高評価を頂けたようです(笑)。
正人:ギターもベースも“これこれ!”と思えるデータを送ってきてくれたので、自分的には大満足です。
ルミナ:俺はシティ・ポップを全く通っていないので、逆に新しさを感じながら弾きましたね。
明弥:昨今、シティ・ポップは再評価されているみたいで。
――“TikTokなどで、若い世代に1980年代~90年代頃の音楽が注目されている”というニュースを目にしました。魅力ある音楽が時代を越えて愛されるのは素敵な事です。
明弥:そうですよね。この作品を聴いてくれた人達がまた別のタイミングでこういう楽曲に触れる機会が生まれたら、更に馴染みが良くなるんじゃないかな。
――歌詞では、これもまた誰しもが一度は感じた事があるであろう感情が描かれています。
ハロ:この歌詞は、僕自身です。何かを変えたいのに変え方がわからず葛藤したり、言葉に表しようがない漠然とした不安を抱いたり、そういう気持ちを書きました。黒いベルベットの夜のカーテンに針を刺して開けた穴から星を覗いてみたり、双子座のピアスホールを開けてみたり、都会の空を眺めながら鬱屈した日常をゆらゆらと漂っているような歌詞です。歌詞はイメージに相違が無いよう必ず作曲者に確認をしてから書いているんですが、正人からは「サビのリフレインで、ちょっとした言葉遊びをして欲しい。」「カタカナを多用して欲しい。」という要望があったので、こういう形になりました。“見えない(Mid end night)”→真夜中の終わり、“泣けない(Not can I)”→できない、“覚めない(Some end night, Same night)→幾つかの夜の終わり・同じ夜、“消えない(Can I)”→できる。ベルの楽曲のサビで、ここまでの言葉遊びをした事は無かったんじゃないかな。
――言葉の意味だけでなく、音としても強く残りました。
ハロ:歌詞にもバランス感が必要ですが、この曲はとても絵が浮かぶんですよね。今回メンバーが書いた4曲それぞれに付けた歌詞は、自分としても気に入っています。
明弥:横浜のスタジオでマスタリング作業を行ったので、帰りに首都高を走りながらこの曲を聴いたんです。歌詞に“夜のハイウェイ”という言葉が出てきますけど、本当にピッタリで!横浜からの帰り道だとベイブリッジやレインボーブリッジの綺麗な夜景が見えるので、CDを手にした男の子達はぜひ、この曲を聴きながらドライブデートをして欲しいですね(笑)。
――確かに!“もたれて眠る 三日月のブランコ”“夜空のパレット 三日月の揺り籠”といったフレーズも、本当にオシャレで素敵です。
ハロ:ありがとうございます。ブランコや揺り籠で、振り子のように行ったり来たりする主人公の心理を表現してみました。楽曲に触発されて、オシャレな言葉が出てきたんだと思いますよ。ちなみに歌詞カードのページデザインはこの曲だけ“絵”なので、一番時間が掛かりました。
正人:そうなんだ?
ハロ:パッケージが完成するのを楽しみにしていてください(笑)。
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◆僕にとって往年の懐かしさを持ったヴィジュアル系の楽曲は、ある種の歌謡曲なんです。
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――ハロさん作曲の『真っ赤な嘘』は、切ないメロ・疾走感のあるリズム隊・ツインギターでのソロという往年のヴィジュアル系要素が満載の楽曲です。
ハロ:まさに、王道のヴィジュアル系の詰め合わせです。疾走感、キメの多用、サビの途中でハーフテンポになって、語りが入っている・・・僕の大好きなヴィジュアル系です。そして、インタビューの最初に話した通り今回は作曲の際にリフレインを取り入れるというルールがあったので、サビの“真っ赤な嘘”をひたすら繰り返して強調してみました。後からメンバーに言われて知ったんですが、どうやらベルの楽曲史上、最もテンポが速いらしくて。
正人:うん、一番速い!
明弥:BPM230くらいあると思う。
ハロ:選曲会には1コーラスのものを4曲持って行って、その中にはビッグバンドのようなシャッフルの楽曲なども含まれていたけれど、僕がヴィジュアル系を好きだという事はずっと発信してきているし、僕にとって往年の懐かしさを持ったヴィジュアル系の楽曲は、ある種の歌謡曲なんですよね。ヴィジュアル系の系譜を辿れば歌謡曲も出てくるはずで、僕自身の解釈での歌謡曲として何を選ぶべきかを考えた時に、この曲が良いのではないかと。
――ライヴでファンの方々が手扇子している姿が目に浮かぶような。
タイゾ:確かに!
ハロ:ライヴの光景が見えやすい楽曲だと思いますね。曲調に合わせて、昔の振りとかをやって欲しいかもしれない(笑)。“咲く”という文化が生まれたのは2000年代ですけど、できた当初と今では微妙に変化しているんですよ。この曲のギターソロあたりで、誕生当初の“咲く”がまた見られたりしたら楽しいですね。何も言わなくても皆、自然と身体が動くんじゃないかな。
正人:この曲は歌謡ドラムというよりも“ヴィジュアル系でしょ!”という意識で叩きましたね。ヴィジュアル系を聴き始めた頃に慣れ親しんだ曲調なので、当時を思い出しながら王道のフレーズを入れてみました。
――気持ちの良い疾走感ですよね。
正人:うん。ヴィジュアル系を聴いている子達は皆、好きな感じだろうなと思う。
明弥:ですね。シンコペーションで、この手のリズムでキメがあるって、最高のヴィジュアル系楽曲じゃないですか。自分もそういうものを聴いて育ってきた人間なので、一番サクッと録り終えた曲ですね。ライヴで演奏するのが楽しみです。
――セットリストの、テンションがピークになるあたりに組み込まれそうですし。
ハロ:そうそう。僕としては、ギターソロの入りがめちゃくちゃ好きです。
――私もツインギターがセンターに並んでソロを弾くようなヴィジュアル系を観て育った世代なので、必然的にテンションが上がります。
ハロ:わかります(笑)。音源で聴いていても、ギターソロで鳥肌が立ちますから。しかも、サビの主旋律をなぞるところから始まるソロって、もう王道中の王道ですよね。最高でした。
タイゾ:中学生くらいの時に聴いていたヴィジュアル系の曲調だったので、中学時代を思い出しながら弾きました。ギターソロはちょっとダサカッコいい感じというか、あえて“今、それをやる?”という感じのものを入れたかった。エッセンス的には、Bメロでメタルのジェント系というジャンルを取り入れています。左チャンネルのギターの音の波形をわざと切って、バツッ、バツッ、という音を出していて。そこだけは、少し新しい要素を加えてみました。で、ギターソロで“うわっ、ダサカッコいい!”となるという(笑)。
一同:(笑)
タイゾ:聴いてすぐに“これがハロくんのヴィジュアル系の歌謡なんだな!”と理解できましたし、良い曲だなと思いました。
ルミナ:そうですね、ヴィジュアル系を好きになった頃の懐かしい気持ちで弾きました。俺も、“ダサカッコいい”は好きなので(笑)。ライヴではいかに“カッコいい”にしていくかですね。
ハロ:レコーディングは進化した今の環境と機材で行うので、当時のような音色で録る事は難しいじゃないですか。実は、ミックスの時に正人に「とても良い音で録ってくれたのに申し訳ないんだけど、スネアの音を10年古くしてくれないか?」と相談したんですよ。
――それは「最先端の音にしたい。」という注文より難しいのでは。
正人:難しいですね。あえてチューニングを狂わせたドラムで試したりもしたんですけど。
――デモテープが主流だった時代の音色やバランスを求めていらしたんですか?
ハロ:そうそう!
明弥:全員で一発録りした感じのね(笑)。
ハロ:さすがにバランス的に難しくて諦めましたけど、本当は全ての音色を10年前にしたい楽曲でした。
タイゾ:一応、スネアの音を昔っぽくしてもらう事は試みたんですよ。でも、聴いてみたら「たぶん後悔するからやめておこう。」となって(苦笑)。
――作品全体のバランスもありますからね。
タイゾ:そう、やるなら全体のバランスをそれに合わせないと違和感が出てしまうので。このツインのギターソロを俺とルミナが背中合わせで弾いたりしたら、もう・・・(笑)。
ハロ:ぜひ、背中合わせで弾いて欲しい!(笑)
タイゾ:それはベタ過ぎる!(苦笑)
一同:(爆笑)
タイゾ:とはいえ、作曲者の要望に従おうと一応は思っていますけど(笑)。
明弥:おぉ!(笑)
ハロ:今でこそ大人になってしまったから“何か違う”と感じてしまうのかもしれないけれど、きっと往年のヴィジュアル系が好きだったバンギャさん達は求めていると思いますよ(笑)。歌詞に関しては、最初はもっと一昔前の雰囲気で書き始めたんですが、作品全体で5曲のバランスを考えた時に、度を超えるとベルの中では異端過ぎてネタ曲になってしまうなと感じて。途中まで書いてはみたものの、ネタ曲を作りたいわけではなかったので方向転換して書き直しました。
――“散乱したブロン”や“外傷無き裂傷”、どうしても救えなくて手を離すしかない痛みを感じます。
ハロ:僕がこれまでの人生で関わってきて、今はこの世に居ない人達を思いながら書いたんです。だから、生温い体温感というか妙な温度感があるんですよ。全てがフィクションとは思えないような言葉を散りばめました。
――メロディーとストーリーの相乗効果が美しい、締め括りにピッタリな楽曲でした。以上5曲、歌謡の幅広さや面白さを堪能できる、5者5様の歌謡曲がバランス良くまとまった作品でした。
ハロ:過去にも現在にも“歌謡”を軸に掲げているバンドは幾つも存在しますが、『新約 鐘が鳴ったら事件が起きる』はベルにしかできない歌謡を形にできた作品だと思っています。
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◆連夜の集中単独公演『中毒症状:哀愁』では、今のベルの歌謡と哀愁を堪能できる2日間をお届けします。
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――この作品を携えて、連夜の集中単独公演『中毒症状:哀愁』が3月11日・12日の渋谷REXから東名阪で開催されます。
ハロ:はい。これまでの単独は各地で1日ずつか、2部制にして1日に2本ライヴをする形で行ってきましたが、2部制というのはどうしてもバタバタしてしまうんですよね。やっぱり1日1本に集中する形はバンドにとってもベストではありますし、こういうご時世になって地方へ足を運ぶ機会がどうしても減ってしまった中で、少しでも長くその地に滞在して自分達の音楽を届けたい気持ちも強かった。今作は歌謡を軸にした作品にすると決まっていたので『中毒症状:哀愁』というタイトルにして、今のベルの歌謡と哀愁を堪能できる2日間をお届けします。
――今作収録の5曲は全て演奏されますよね?
ハロ:はい。ただ、5曲を2日間に分けて演奏するのか、1日で全てを聴けるのかはまだわからないです。ベルは持ち曲が84曲くらいあるので、本当にいろんな楽曲で戦えるんですよね。
――持ち曲が増えるほど演奏したい楽曲も増えて、セットリストを組むのが大変そうです。
ハロ:そうなんですよ。2日間あればそれぞれに異なる見せ方ができますし、ぜひ両日とも足を運んで楽しんで欲しいです。
――そして、2年前に中止となった2MAN企画が『サクラ大戦-REVENGE- 2MAN LIVE』として4月2日からリベンジ開催されます。
ハロ:遂に、ですね。今回このリベンジ企画のフライヤーを制作していて、コロナ禍で活動を止めるバンドも多かった中、対戦相手はしっかり前を向いて音楽を生み出し続けているバンドばかりだった事が本当に凄いなと思ったんです。そういう人達を相手に選んで良かったと改めて感じました。
――heidi.、GRIMOIRE、Leetspeak monstars、ヤミテラ、Ashmaze.(※公演開催日順)、様々な音楽性とカラーを持ったバンドが集まりました。
ハロ:本当に。2年前には予定に無かった、ヤミテラも加わってくれましたし。イベントなどでは絡む事があったんですが、常々「ベルと2MANをしたい。」と言ってくれていた事もあって、新たにお誘いしてみました。全5本、大戦ですから全員ぶっ倒しに行きますよ!
――強力な武器が84曲もあるだけに、各日どんな戦いになるのか楽しみです。今年の春も盛りだくさんですね!
ハロ:コロナ云々を言い訳にするのはもう嫌ですし、歩みを止めない為には突き進んで行くしかないですからね。先日も5人で年間スケジュールのミーティングをして、「こういう事をしよう。」「ああいう事をしよう。」と具体的な話もしました。2022年も楽しい1年にするので、ベルについてきてもらえたら嬉しいです。
取材・文:富岡 美都(Squeeze Spirits/One’s COSMOS)
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<リリース>
★ニューミニアルバム
「新約 鐘がなったら事件が起きる」
2022.3.2 発売
【収録曲】
1.人間交差点
2.「返して。」
3.踏切の街
4.ミッドエンドナイト
5.真っ赤な嘘
5曲+DVD付き
¥2800(税抜)
▶︎全曲トレーラー
https://www.youtube.com/watch?v=9JQT5iyda4s
▶︎「人間交差点」MV FULL
https://youtu.be/mqOaCALOFJk
★★リリースワンマンツアーやインストアイベントも決定!★★
■連夜の集中単独公演
「中毒症状;哀愁」
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【東京】
3月11日(金)・3月12日(土)
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【大阪】
3月19日(土)・3月20日(日)
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【名古屋】
3月26日(土)・3月27日(日)
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▼チケット&その他スケジュールはこちら
http://belle-web.info/category/schedule/
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初めまして限定2マン企画
「サクラ大戦-REVENGE-」
開 催 決 定 !
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「第壱夜」
4月2日(土) vs heidi.
チケット発売:2月19日〜(e+ A1〜)
https://eplus.jp/sf/detail/3565040001-P0030001
「第弐夜」
4月9日(土) vs GRIMOIRE
チケット発売:2月20日〜(e+ A1〜)
https://eplus.jp/sf/detail/3565050001-P0030001
「第参夜」
4月16日(土) vs Leetspeak monsters
チケット発売:3月5日〜(e+ A1〜)
https://eplus.jp/sf/detail/3565060001-P0030001
「第肆夜」
4月22日(金) vs ヤミテラ
チケット発売:3月6日〜(e+ A1〜)
https://eplus.jp/sf/detail/3565070001-P0030001
「第伍夜」
5月1日(日) vs Ashmaze.
チケット発売:3月12日〜(e+ A1〜)
https://eplus.jp/sf/detail/3565090001-P0030001
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