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2023年12月06日 (水)


【ライヴレポート】<VISUNAVI presents Visual Rock is not “DEAD”003>2023年11月23日(祝・木)池袋EDGE◆びじゅなび主催ライヴ第3弾終演。最強vs最強。ホンモノ以外不要の新時代、ここに幕開け。

NEWS - 21:30:31

びじゅなび主催ライヴ第3弾<Visual Rock is not “DEAD”003>が池袋EDGEで開催された。

812日に恵比寿リキッドルームで開催された第2弾ライヴの終演後に解禁された本公演。

CHAQLA. / 孔雀座 / 色々な十字架 / nurié / MAMA. という現在最も勢いがあると言っても過言ではない顔ぶれの一斉揃い踏みは決して小さくない反響を呼んだ。

 

凌ぎを削る同志であり、永遠のライバル。

 

 

彼らにとって仲間とは

互いの傷を舐めあう相手に在らず。

彼らにとってとは

認め合い手を取り共に闘う。しかし、隙を見せれば容赦なく谷底へ蹴落とすべきもの。

 

 

四の五の言ってる暇があったらかっこいい音楽やれよバカ。

この場所には最強以外不要。唯我独尊。

 

-WHO’S NEXT のサブタイトル通り、今もっともアツい世代・本気の男たちによってVisual Rockシーンの未来を占うことすら不要の熱狂の一夜になった。

その模様をお届けする。

 

   ◆     ◆     ◆ 

 

 

トップバッターを務めたのは大阪を拠点に幅広い楽曲で確かな支持を得るnurié

今年は新宿BLAZEでのワンマンライヴも敢行した彼らが真っ赤なライトに照らされ登場すると大角龍太朗(Vo)ぶちあげていこうぜEDGEを号令に「akuma」からスタート。

 

 

 

▲大角龍太朗(Vo)

 

各パートが激しく主張しつつもぶつかり合わないバランス感覚と大角のドライな質感の歌唱で一気に会場を縦ノリの熱狂に。

 

サポートの永山銀(Ba)から染谷悠太(Dr)と繋いで廣瀬彩人(Gt)が弾き倒すソロ回しも秀逸な「今宵、未来の為に歌おう。」、オマージュリリックの絶好調ならヤーマンだをイベントオーガナイザーの苗字に替えた「骨太もんちっちくん」、突き抜けるサビの爽快感と最低だと歌われるリリックの対比が抜群に耳を惹くキラーチューン「RooM-6-」と、いわゆるダウンチューニングしたリフを主軸にした量産型ものではなく、多岐に渡る音楽性とキャッチーなメロディラインで実力者らしく巧みにイベントをnurié色に彩っていく。

 

 

▲廣瀬彩人(Gt)

 

 

▲染谷悠太(Dr)

 

 

▲永山 (Support Ba)

 

 

バンドマンだけではなくオーディエンスと共にこのシーンを作っていきたいという新時代のアティチュードを高らかに宣言する大角の言葉の後に披露されたのは、今年リリースされたMini Albumの表題曲「瞳に映らない形と性質、それを「」と呼んで」。

 

安全地帯から吠えんなの歌詞に賛同とばかりに急加速的にフロアから拳が上がる。芸術的な描写も魅力であるが、ストレートな感情交換もロックバンドnuriéを形成する主たる要素だ。

 

 

ラストは最新シングルでもある「冷凍室の凝固点は繋ぐ体温」。

大きなアクションで感情を露わにする楽器隊とは対照的に、自ら生み出した楽曲に再憑依するように研ぎ澄まされた大角の歌唱と美しいメロディに会場は静まり返った。

苦悩に苛まれ激情に委ねたパフォーマンスは楽曲の本来の世界観である失った体温とは異なる若干の微熱を残した。

演奏陣が姿を消した舞台には、大角龍太朗が溶けていくように独り佇んでいた。

観客にも高い集中力を要求するnuriéはこのイベントが馴れ合いではないことを証明する、まさにトッパーとして十二分に余りあるステージを見せつけた。

 

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2番手に登場したのは孔雀座。

始動から半年も経たないキャリアであるが、アグレッシヴネスに特化しつつも言葉の回しとメロディにフックのあるバンドだ。

アジアンともアラビアンとも取れる異国情緒を感じさせるSEで登場した彼ら。

お香を焚く演出もあり、五感を使い会場の空気を手玉に取るこの辺りもライバルを強く意識してのものであることは想像に難くない。

最後に未羅(Vo)がステージ袖から勢いをつけてジャンプをして登場。

この日に賭ける想いを全身で表現してみせた。

 

 

彼らにとって同会場で行われるワンマンライヴ前最後のステージとなるこの日。

 

フロアのオーディエンスを1人残らず喰らい尽くそうという覇気が伝染し、「DANCE IN THE DARK」から熱狂的な盛り上がりを見せる。想定より上々なフロアにニヤリと笑みを浮かべた未羅(Vo)はそのステージプランを変えるどころか、更に自身を焚きつけるようなアクションで没入する。感情に任せ後頭部から飛び降りる危険なシーンもあったが、不退転の覚悟は留まることを知らず、アンタ「ら」じゃなくて、アンタの声を聴かせろ!と煽り続けた「MAY DAY」、間髪を置かずに披露されたラップをフィーチャーしたハードチューン「929」と休む間を与えず圧倒していく。

 

 

▲未羅(Vo)

 

 

▲武(Gt)

 

 

Leon(Gt)

 

 

▲やなぎ(Ba)

 

 

▲或(Dr)

 

 

結成から半年も満たずキャリア的には他の4バンドに劣る孔雀座。

しかし、体重を乗せることでしか進行しないステージにこのバンドのでしか得られないカタルシスを存分に感じさせた。

ヘアメイクも崩れきるほど汗ばんだ彼らは、そんな自らを証明するように最後に大切な1曲を感情過多に届けた。

次は誰の番だ?決まってるだろ。俺たちだ。俺が歌っている限りVisual Rockは死なない。

未羅の言葉の余韻が残る。

 

今持てる武器で刺しにいく愚直なスタイルで、正直なところ持てる力以上のものを表現しきったのではないか。「奇跡」という言葉に集約させるのは不本意であるが、この夜の孔雀座はそう言わしめるだけの強烈なエネルギーを纏っていた。

nuriéに続いてこのイベントの意味を咀嚼したライヴは孔雀座自身にとっても今後の大きなハイライトになるのではないだろうか。

 

 

 

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3番手は今各方面で話題の異端児、色々な十字架。

元々エイプリルフールの企画から生まれた彼らは、自身初となる恵比寿リキッドルームワンマンを大成功に収めてからわずか2日、よりにもよってヴィジュアル系を強調するある意味で大アウェーのイベントに満を持しての参戦となった。

 

幕が開くとそこには漆黒の衣装に身を包んだ5人が既にポジションについていた。

1曲目は意表をつく「スワロウテイル」。純度の高いクリーンのアルペジオとtink(Vo)の低音が程よく分離したミドルチューンはどう考えても90’s Visual Rockへの傾倒を感じさせるもの。興味本位で好奇の目で見ていた客層、色々な十字架の熱心なファンであるしし者の双方をあっと驚かせ手玉に取ったが、ステージ上手に設置されたスクリーン幕のリリックムービーには国民的アニメキャラクターの名称が容赦なく投影されていて、このバンドの異端かつルール・社会的倫理観の欠如を象徴している。

 

▲色々な十字架①

 

 

続いた「蜜」は一気に00’sの香りを漂わせた。tacato.kikatoのツインギターによるこれでもか!というソロの応酬はこのバンドが年代を問わず幅広いヴィジュアル系の血を色濃く引いていることを感じさせる。

 

 

tink(Vo)

 

 

tacato. (Gt)

 

 

kikato(Gt)

 

 

好奇から受け入れ態勢に入ったオーディエンスの温かさを気に留めることもなくtink我々が漫才師です。えー、キングオブメロディです。と、マイペースかつ独特なMCを展開。

俳優の高橋じゃね!?とツッコミたくなる隙も与えず、近寄りがたい独特な距離感も印象的だ。

会場の空気がややほぐれたところで続いたのはアルバム『少し大きい声』のリード曲とも言える「TAMAKIN」。

 

 

 

人間の孤独をタマキンに置き換えて描写した問題作だが、ここでもtinkの太く確かなヴォーカリゼイションの裏で的確かつ強靭なビートを刻むdagaki(Dr)、動きまくるmisuji(Ba)のラインと一筋縄ではいかない。

また、杭を打つようなtinkのパフォーマンスはPIERROTの「Adolf」を想起させる。

 

 

misuji(Ba)

 

 

dagaki(Dr)

 

 

ラストの「凍らしたヨーグルト」まで終始、古き良きヴィジュアル系の王道を彷彿とさせる楽曲で駆け抜けた色々な十字架。

話題先行型でもなく、むしろ近年稀なほどにヴィジュアル系に精通しているバンドの存在感はこれからのVisual Rockシーンで確固たるものになるであろう。

終演後にバックステージでtink変化球の楽曲や暴れ曲はやらないと決めていたと語っていた。敢えて必殺技を封印して臨んだ覚悟のライヴ。思えば2日前のリキッドルームワンマンでも披露されていなかった新衣装もこの日に解禁された。

大晦日には<V系って知ってる! -VISUAL ROCK COUNT DOWN 寸前GIG 2023->への出演も決まっている。異端であることが王道であるヴィジュアル系シーンでのこれからの躍進が実に楽しみだ。

 

 

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4番手で登場したMAMA.は一気に会場の空気をダークサイドに押し戻す。

SEKAGUYA」が鳴るとフロアから一斉に手が挙がる。

首を傾げるようにフラフラと髪を奇抜に染め上げた命依(Vo)がステージに現れると、「BLACK DOG.」でイベント後半戦の口火を切る。

 

 

希望も救いもないダークな世界観を叩きつけるが、厚みのあるサウンドは整然としていて実に聴き心地が良く、MAMA.のサウンドプロダクトのレベルの高さが伺える。

 

 

▲命依(Vo)

 

 

▲かごめ(Gt)

 

 

JiMYY(Gt)

 

ダークな音楽性が高い評価を得ているMAMA.だが楽曲はバンドサウンドに留まらず、スクラッチ音やトラップを取り入れ、歌唱もラップを導入するなど引き出しの多彩さも印象的だ。

「命日」では“一番楽しんだやつが勝ち!”と吠え、今宵が勝負の場であることを再確認させる。

 

 

▲真(Ba)

 

 

▲蓮(Dr)

 

開放的で自由度の高いステージはまさに先述の音楽を楽しむを体現しているようだ。呼応するように曲間でもオーディエンスの歓声が常に響き渡っていた。

 

最新曲にして、すでに熱量は完成形の様相を見せる疾走感溢れる「アシッド・ルーム」、引き算のシンプルなリフがヘドバンの嵐と一層大ヴォリュームの嬌声を巻き起した「Psycho」、かなりの人口密度を引き裂くウォールオブデスでヴァイオレンスがマグマの如く噴き出した制御不能の「GREEN HEAD MEN」といつになくハードな楽曲の応酬で観客を熱狂の渦中に巻き込んだ。

 

 

枯渇するフロアへ向けて最後!と執拗に煽り、投げつけたのはまさかの「業」だった。

宴の終わりを告げる悲壮なバラードだ。命依は呼吸も絶え絶えに悶えのたうち回りながら叫んだかと思えば、神経が切れたように不気味な笑みを浮かべる。

曲の終盤、讃美歌のようなブロックに到達するとフロアから一斉に拍手が起こるその光景はどこか宗教的ですらあった。

悪い夢でも見ていたのではないかと錯覚させるような、アップダウンの落差が激しい圧巻のメニュー。命依は中指を立てた両手をかざしステージを去った。

 

 

   ◆     ◆     ◆ 

 

 

トリを務めたのはCHAQLA.だ。

CHAQLA.も結成から1年に満たないバンドだが、その抜群のアートセンスとオリジナリティは狂信的な支持を得て噂が噂を呼び、早くも対バンキラーの地位を確立している。

この尖りまくった4バンドを経てCHAQLA.が何をしでかすのか期待が充満したところで暗転。

驚いたことにこの日はANNIE A(Vo)のアカペラからスタート。幕が開くとドラムセットに巻き付かれたイルミネーションライトが煌々と暗闇に光りCHAQLA.の世界へと誘われる。

序曲に据えられたのは「この世の終わり」。鷹乃助(Ba)Bikky(Dr)がそれぞれ操るシンセベースとサンプラーの音色が焦燥感を掻き立てるダウナーチューンだ。

釈然としない現実を発出するラップを基軸にした曲が終わると、続いたのは変拍子のクラップが導入になるミクスチャー調の「リーインカーネーション」。Bikkyのマシンガンのように連打されるバスドラとANNIE Aの力強くも憂いを帯びた歌唱が音源以上に攻撃的に襲い掛かってくる。

 

 

 

ANNIE A(Vo)

 

 

▲のあか(Gt)

 

 

kai(Gt)

 

MCでマイクを取ったANNIE Aこのイベントのメンツを見た時にあちぃと思いました。友達ばっかりだし楽屋も賑やかで…”と前置きしながらもニュージェネレーションなんて言われてますが、ただのロックバンドです。ファンも含めてバンド、全員でぶっ殺しに行こうぜ!!と皆殺しを宣言。

予測不能ならしさは顕著で「首魁の音」、「ミスキャスト」と5人は音楽を愛すべき悪童っぷりを発揮。のあかとkaiの両ギタリストはステージを端から端へと駆け回り客席にせり出さんばかりにアジテートを繰り返す。一方、ANNIE Aがベースのチューニングをいじくると、鷹乃助メインヴォーカルを奪うというカオスっぷり。

 

 

▲鷹乃助(Ba)

 

 

Bikky(Dr)

 

どこを見ればいいかが不明なほどに同時多発的に五者五様の個性的なアクションが起き続けるライヴは荒れ散らかっているようでいて、会場全体を巻き込んだ狂気的グルーヴを生み出した。

さらには“PAさんもう1曲やっていいですか?と半ば強引に急遽「太陽の悪魔」をプレイ。

 

余談だが、転調を多用したミクスチャー楽曲は今後シーンのトレンドになる可能性が高いとも感じる反面、転調を繰り返しても1曲の中で統一感が損なわれなずに立体的に構築されるのはCHAQLA.の天賦の性でありオリジネイターとして説得力を持った武器だ。

 

 

ダメ押しのような「PLAY BACK!!」ではkaiがフロアに乱入し、最後までやりたい放題で狂乱の池袋EDGEを余すことなく焼き尽くした。

音楽は魂を超える。死ぬまでやめねぇぞ!という等身大のANNIE Aの言葉に<Visual Rock is not “DEAD”>の意義を再確認した。

 

   ◆     ◆     ◆ 

 

ネクストブレイカー筆頭とは言うが、ヴィジュアルも異なれば、音楽性も異なる。ましてやアティチュードも異なる5組。

nurié、孔雀座、色々な十字架、MAMA.CHAQLA.

実際、完売札止めとまではいかなかったものの予想を遥かに超える多くのオーディエンスがフロアを埋め尽くした。

 

ヴィジュアル系“V“Visual Rock”

確かなようでいて曖昧でもあるこの共通する符号の下に集った一夜。

生きるうえで確かなものなどきっとないのだろうが、己の信念に基づいて生きてさえすれば他人の芝生など、所詮どうだっていいのだ。

この夜集まった5組はいずれも信念に忠実だから同席できたのではないだろうか。

 

魂の信念か、信念の魂か。

偽物に用はない。

本物だけが生き残りを赦される新時代が今、幕を開けた。

 

 

文:山内秀一

写真:A.kawasaki

 

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SET LIST

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●nurié

1. akuma

2. 今宵、未来の為に歌おう

3. 骨太もんちっちくん

4. RooM-6-

5. 瞳に映らない形と性質、それを「」と呼んで

6. 冷凍室の凝固点は繋ぐ体温

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●孔雀座

1. DANCE IN THE DARK

2. MAY DAY

3. 929

4. ケセラセラ

5. 催眠警報!!!!

6. 正体

…………………………………………

●色々な十字架

1. スワロウテイル

2. 蜜

3. TAMAKIN

4. 大きな大きなハンバーグ

5. 凍らしたヨーグルト

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●MAMA.

SE.KAGUYA

1. BLACK DOG

2. 命日

3. アシッド・ルーム

4. Psycho

5. GREEN HEAD MEN

6. 業

…………………………………………

●CHAQLA

1. この世の終わり

2. リーインカーネーション

3. poison

4. 首魁の音

5. ミスキャスト

6. 太陽の悪魔

7. PLAY BACK!!