2022年04月02日 (土)
★必読対談企画★第弐夜【ハロ(ベル) × RyNK(GRIMOIRE)】<ベル主催『サクラ大戦-REVENGE-2MAN LIVE』>次回は2022年4月9日(土)高田馬場CLUB PHASE!
NEWS - 20:00:59現在、絶賛開催中のベル主催『サクラ大戦-REVENGE-2MAN LIVE』。
2020年に開催予定もコロナ禍の影響により中止を余儀無くされた企画が、パワーアップして遂に実現した。
それを記念して、ベルのVo.ハロが各バンドのボーカリストを招いてお互いのアーティスト性や人間性を深く掘り下げる対談企画が始動。
第弐夜のゲストは、GRIMOIREのRyNK。
常に物事を深く考察する、自称“面倒くさい思考回路のボーカリスト”対談の行方や如何に。
*次回第参夜は4月9日(土)記事配信予定です!
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◆「2MANについて」と「絶妙な距離感」と「ボーカル精神論」のお話。
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ハロ:GRIMOIREさんとはイベントなどで御一緒する機会が多いのですが、何故かずっと“友達の友達のバンド”というポジションのままだったんです。距離が縮まらないというよりも、お互いに無理に縮めようという気も無く、隣の隣に自然体で居るような、そんな距離感の存在でした。ファンの方々にはGRIMOIREさんもベルも好きだという方が結構いらして、前々から「2MANをして欲しい。」という声が届いていたんですね。それもあって、サクラ大戦の企画を考案した際に真っ先に浮かんだバンドがGRIMOIREさんでした。2年前のサクラ大戦は中止になってしまったものの、昨年GRIMOIREさん側からお誘い頂いて、ようやく初の2MANが実現したんです。ただ、コロナ禍という事もあって楽屋も離れていたし、今回はもっと2MANらしい距離感を作っていけたらと思っています。
RyNK:今、ハロさんが仰った“友達の友達”という関係性が本当に的確で。隣の隣の席みたいな、何とも言えない距離感なんです。ベルというバンドのイメージや楽曲の世界観などはライヴを拝見してインプットしていたものの、メンバーさんがどういう人となりなのかは全く想像がつかなくて。これはバンドマンあるあるですが、ちょっと心を閉ざしているというか。別に牽制しているわけではないけれど、色々な人と仲良くなる事が苦手。僕らもそうで、気になっていてもあまり近づけないし、怖いわけではない・・・と言いつつ、若干ビビッていた部分はあったかもしれません(笑)。ハロさんに対しても、あまりズカズカと踏み込んではいけないなと感じていました。
ハロ:あ、本当ですか?
RyNK:「何、こいつ・・・。」みたいに思われてしまいそうで(苦笑)。
ハロ:いやいやいや!(笑)学校で喩えるなら“気付いたら同じグループに居た。”くらいの感じで、距離を縮める取っ掛かりが無かったんですよね。知り合ってから時間が経ち過ぎてしまった事もあると思う。最初の時点でもっと近付くきっかけがあれば、また違ったのかもしれないけれど。
RyNK:確かに。本当に不思議ですよね。
ハロ:大体の場合、最初にメンバーの誰かが仲良くなってバンド同士でも交流が始まるパターンが多いけれど、ボーカルというのは機材の話もできないし、なかなか難しい部分もあるので。
RyNK:ボーカリストって、一旦きっかけを掴めば凄く仲良くなれる傾向はあるんですよ。ただ、同時にどこかで怖がっていて一番心を開きづらいのも事実。
ハロ:ボーカリストの根底には“理解されたいけど、されたくない。”みたいな意識があるんですよね。だから、関係が親密になり過ぎる事に対して憶病になる節があると思っています。数年前によくドラム会とかギター会が開催されていましたけど、僕はああいうものが苦手だと感じるタイプでしたし。
RyNK:ボーカリストは大所帯になる事が無いですよね。
ハロ:大人数で話すような話題が無いんですよ。1人1人声質が違うから、愛用しているマイクの話をしたところで実りが無いですしね(笑)。僕はボーカリスト同士の深い話をほとんどしてこなかったので、ファンの人達もきっとこれまであまり聞いた事が無いと思うんです。だからこそ、この対談は面白い企画にできるのではないかなと。ボーカリストは皆、どこかしら変な部分がある気がします。
RyNK:ちょっと曲がっているんですよね。人当たりは良い人が多いと思うけれど、どこかでバリアを張っているような。
ハロ:僕の場合は仲良くなればなるほど強くライバル視するようにもなって、相手を知れば知るほどカッコいいライヴを見せられた時に悔しさを覚えますね。今回のライヴはタイトルからして『サクラ大戦』ですが、やっぱり2MANも対バンも戦いだと思うんです。昨今のヴィジュアル系には“皆で仲良く”みたいな風潮があるじゃないですか。ファンの方達同士が仲良くするのは素敵な事ですけど、ボーカリストがMCなどで無理に仲の良さを強調した空気を作るのは違うと思っていて。仲が良いならば尚更、ライバル視し合う事が切磋琢磨に繋がるはずだから、今日はちょっとバチバチできたらなと(笑)。お互いの考えから刺激を受ける事で、2MAN当日のモチベーションにも良い影響が出たら良いですね。
RyNK:なるほど。ハロさんが仰ったのは表面的ではなく内面の深い部分の話だと理解していますけど、その上で僕はどちらかと言うと仲良くやっていきたいタイプなんですね。自分自身が強い人間ではないので、バチバチする事が苦手というか。バンドを始めた当初は、当然そういう“戦い”というような気持ちでやっていたんです。でも、続けていく中で“その競争と自分という人間は合っているのか?”と考えるようになった。今現在のヴィジュアル系に当てはまるかどうかはわからないですし、バンドの音楽性にもよりますが、やっぱり“お客さんを暴れさせてなんぼ”みたいな風潮があって、その関係が成立しているバンドのほうが見栄えが良いという事実もありますよね。そして、そういうバンドの中には対バン相手に対して攻撃的な言葉を吐いたりするバンドも居る。それもひとつのエンターテイメントとしてアリだとは思うけれど、自分にそれができるのかを考えたら、できないしやりたくもないなと。そういう意味での競争から離れていった結果、競争より共存を求めるようになったのではないかと思います。バンドマンから見たら、僕は超軟弱野郎なんですよ(苦笑)。
ハロ:いや、それはRyNKくんのボーカリストとしてのスタンスだから正解です。僕も、対バン相手を貶すようなパフォーマンスは苦手ですね。ステージ上でのプロレスだとわかってはいても、その言葉を聞いたファンが気持ち良いか良くないかが重要だと思うから。
RyNK:そう思います。
ハロ:SNSが中心的なツールになって、一時期は僕自身にも“発信し続けなくてはいけない。”とか“発信しないと忘れられるのではないか。”といった強迫観念がありました。だけど、MCにしろSNSにしろ、ただ言葉数を発すれば良いわけではなくて、たったひとことだからこそ誰かに響く場合もある。それを理解した上で、僕はステージで言葉ではないもっと深いところで戦いたいし、その切磋琢磨の先に共存があるのかなとも思います。
RyNK:そうですね。こういう精神論は、本当に考え方次第で。僕は他のボーカリストの人達に対してよく焦燥感や劣等感を覚えるのですが、もしその人達と競争できる要素が自分にあるとするなら、“彼らとは違う価値観を持ってやること”なんですね。それが、僕にとっての対抗する術だった。「自分はそうではないし。」というのは、一種のアンチテーゼでもあり、逃げでもあるんですけど。さっきも言った通り、やっぱり少し曲がっているんだと思う。
ハロ:おそらく、バンドを始めた当初はお互いにもっと真っ直ぐだったと思うんですよ。
RyNK:そうです!
ハロ:バンドを続けていくと、どんどん歪んでいくものですよね。
RyNK:わかります、もう真っ直ぐには戻れないくらい歪んでいますよね(笑)。
ハロ:最初は、“自分がイメージする良いボーカリスト”という漠然とした理想に近付こうと努力をする。だけど、段々とその理想には向き・不向きがある事を悟って、自分自身には向かないスタイルだと気付いた時に、どういう表現を目指したいのか見失う時期がくる。その時期を乗り越えると、「これが自分だ。」と認めていけるようになるんですよね。僕自身も、そう思えるようになったのはここ2年くらいじゃないかと感じます。
RyNK:僕もそうです。その“見つけたもの”が正解なのか間違いなのかはわからないですけど。結局は、自分がどう感じるかでしかないから。
ハロ:自分が納得できない事をしても仕方が無いから、それが正解です。きっと、色んな人が行き着く答えだと思う。・・・最初から、なかなか深い部分の話ができている気がしますね。
RyNK:最近、自分はもう病気だなと思うんですよ(苦笑)。少しだけ時間が空いたから30分程度でも配信をしようと始めたツイキャスで、本当に軽い世間話をするはずが、いつの間にか“人生とは。”みたいな内容になっていたりして。
ハロ:ありますね(笑)。
RyNK:今飲んでいるコーヒーの話からでも、きっと“人生とは。”に繋げられます(笑)。
ハロ:それが、“常に頭のどこかで人生について考えているからなのかどうか。”というテーマですらも掘り下げていけますよね。そうなると、おそらくまた話が逸れて長くなります(笑)。
RyNK:ですね、話題を変えましょう(笑)。
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◆「ライヴ前のルーティン」と「1人行動」と「メンタル」のお話。
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ハロ:ライヴの日のルーティンはありますか?
RyNK:時期によって変化しますね。ライヴの前にカラオケに行って練習してからという時期もあれば、少しだけお酒を飲んでリラックスしてからという時期もありました。最近は、会場入りをしてから空いた時間でカフェに行く事が多いです。
ハロ:同じ事をやっていた時期があります。楽屋に大勢の人が居ると話さなくてはいけないような空気を感じて、それが凄く苦手で。だから、カフェに行っていたんです。
RyNK:わかります!僕の場合、これはバンドを組む前の高校時代からそうだった気がするけれど、“地下に入る”という感覚があまり得意ではなくて。ライヴハウスって、地下にある場合が多いじゃないですか?本当に申し訳ない話ですが、そういう理由もあって時間が空いたら楽屋の外に出る事が多いです。
ハロ:カフェ選びのこだわりはあります?
RyNK:そこは適当ですね。有名チェーン店の場合もあれば、事前に調べて個人経営の喫茶店を探すこともあるし。
ハロ:僕の場合は、必ず純喫茶を探すようにしていました。
RyNK:似合います!
ハロ:雑多な雰囲気のカフェだと楽屋に居るのとあまり変わらない感覚になってしまうので、BGMが心地いい場所に居たい。カフェに居る時間に何を考えていたか今はあまり覚えていないけれど、おそらくその日のライヴの事をイメージしながら過ごしていた気がします。
RyNK:僕のカフェ巡りは最近のマイブームなので、ライヴに関係無く普通の休日に行くことも好きになって。Instagramを始めたばかりの人みたいに、コーヒーの写真を撮ってみたりもします(笑)。何をやってるんだろうって感じですけど、楽しいんですよね。
ハロ:わりと1人行動が好きですか?
RyNK:好きですね。1人で温泉旅行に行けるタイプです。
ハロ:僕も、1人で旅行するのが好きなんですよ。
RtNK:楽しいですよね!ここ2年くらいで初めて1人旅をして、その魅力に目覚めました。
ハロ:基本的に足の向くまま気の向くままに行動していたいし、誰かが一緒だとどうしても気を遣ってしまうから。
RyNK:どんなに仲が良い相手でも、どこか気を遣うところはありますよね。
ハロ:うん。1人行動が好きな気持ちは凄く共感できる。僕の場合、旅先の街で何者でもない自分で居られている瞬間に酔っているところもあると思いますが(笑)。
RyNK:1人旅をしている自分に酔っているというのはありますね(笑)。「自分探しの旅で・・・。」とか「黄昏に・・・。」とか、アーティスティックな理由を言おうと思えば言えますけど、結局は1人旅をしている自分自身を良いなと思っているという。
ハロ:旅で得たものが、その後の自分の表現に何かしら反映されていたら良いなと。僕も、ルーティンは時期で変わります。色々と試していく中で“これは良い!”と感じた事をしばらく続けると、段々と慣れてしまうのか自分にとっては効果が薄れてくるんです。それでまた新しい何かを模索して・・・という事を繰り返しています。
RyNK:確かに、同じルーティンを何年も続けている人はあまり居ないイメージがあります。
ハロ:ボーカリストは、その日の体調なども全てライヴに表れるじゃないですか。例えば、“今日は少し喉の調子が良くないかもしれない。”とか“肩が凝っているかもしれない。”だったらわかりやすいけれど、何なのか理由がわからない調子の悪さを感じる日もあるんです。メンタルなのかと考えてみるものの、メンタルにしては身体が重かったり、息が上がるのが早かったりして。ライヴの日の朝は、起きるとまず“今日は大丈夫かな?”という不安から1日が始まる。
RyNK:身体が悪い時はメンタルが引っ張られて、メンタルが悪い時は身体が引っ張られる、そんな感覚がありますね。身体とメンタルは表裏一体だけど、自分自身はどちらかというとメンタルのほうが大きく影響していると感じます。酷い風邪をひいている日に良いライヴができる事もあるし、体調が悪くてもメンタルが強い状態の時は乗り越えられたりする。やっぱり、ボーカリストのメンタルは特にデリケートなのかなと思います。
ハロ:その話で言うと、僕はメンタルが落ち込んでいる時のほうが良いライヴができるんですよ。
RyNK:それは凄いです!
ハロ:あくまでも自分の感覚においての話ですが、悩みが無かったり、体調も気分も絶好調だなという時は、逆に良いライヴができなかったり。メンタルが下降している時のほうが、楽曲の世界観に入り込みやすい気がします。
RyNK:どういう世界観の楽曲を歌っていて、どういう事を伝えたくてステージに立っているかによるのかもしれません。これはどこのバンドでもあるかと思いますが、自分が“微妙だったな。”と感じるライヴが高く評価される事ってあるじゃないですか?
ハロ:ありますね!
RyNK:ずっと“どう考えても良い出来では無かったのに、何を観て良いと言っているんだろう?”と不思議でしょうがなかったんです。でも、もしかしたら今ハロさんが仰った自分の悲壮感みたいな要素が、表現のひとつとして受け手側に魅力的に映る事があるのかもしれないなと思いました。悩みが無くなる事は一生無いから向き合って生きていくしかないんだな、と最近よく感じています。
ハロ:個人的には、大きな悩みが解決した時期をどう乗り越えるかのほうが試練ですね。僕は、わりと自分を追い込んでいたいタイプで。ある時、こなすべきタスクが多ければ多いほどパフォーマンスが向上すると気付いたんです。それからはひたすら仕事を詰め込むようになって、未経験の事に対しても「俺がやる。」と言うようになった。単純に、何もしていない自分が不安なんですよね。
RyNK:その不安はよくわかります。僕も、昨年末頃にバンド以外の事も含めてとても多忙な時期があって。でも、本当に忙しかったけれど充実はしていたんですよね。年が明けて色々な事が一気にクリアになったら、時間に余裕はできたのに物凄い虚無感に襲われてしまった。僕自身は自分を追い込みたいという意識は無いけれど、やるべき事が多い状態のほうが自分の存在意義を見出せるんだなと実感しました。
ハロ:やっぱりボーカリストってダウナー傾向があるので、考える時間が増え過ぎるのも良くないんでしょうね。そういう時にポジティヴな方向に考えを拡げていける人が羨ましいなと思う。きっと、その人にはその人なりの悩みがあるんだろうけど。
RyNK:根っからのポジティヴ思考なボーカリストって、少ない気がしますね。多忙な時期は「これをやって、次へこれをやる!」という風に思考が働くから、普段よりは少し前向きになっているような気もしますけど。
ハロ:その分、反動もありますけどね。例えば、大きなワンマンツアーを終えた後などは虚無になりがちな気がします。おそらく、ファンの方達も同じなんですよ。ワンマンツアーのファイナルをひとつの区切りとしてバンドから離れる、なんて言う方も居るくらいで。それだけ濃密な時間で、エネルギーも使うし精神力も削る。僕らメンバーもファンの方達も一緒なんですよね。だからこそ、僕は自分が虚無にならないようにタスクを詰め込むんです。自分なりの解決策というか、予防線ですね。
RyNK:凄いです。でも、あの何もしないと不安になる感じって何なんですかね。自分でも、“やり遂げた後くらい、ちょっと安らげよ!”と思うんですけど(苦笑)。予定が詰まっている時は充実しているとはいえ、やっぱり身体は疲れるしストレスも溜まるんですよ。その状態から安堵したはずなのに、何故またメンタルで疲れなくてはならないんだろうって。本当に上手くできていないなと思います。
ハロ:結局、その安らぎを単独行動に求めるんですよ。
RyNK:あぁ、そういう事か!
ハロ:1人旅をしてみたり、自分の感情やバイオリズムを整える事を無意識に求めているんじゃないかな。コロナ禍で全てのライヴ予定が白紙になった時、かなり絶望したんですよね。しばらく虚無だったし、段々と自分が何者なのかもわからなくなって。これまで自分は音楽で勇気や元気を届けていたつもりだったのに、結局こういう有事の時には何もできないんだと思い知って、あの時期は本当に絶望でしかなかった。部屋を間接照明にしてお香を焚いて、Lo-Fi系の音楽を流しながらずっと現実逃避していましたね。
RyNK:お香以外、ほぼ同じ事をしていました(苦笑)。僕の場合は、気分が落ちている時以外も基本的にそういう過ごし方なんですけど。LEDテープライトをデスクの後ろやカーテンレールに貼ってちょっとホテルライクな雰囲気にして、Chillっぽい音楽を流して。Lo-Fiな音楽は流行っていますけど、本当に癒し効果があります。
ハロ:同じ過ごし方をしているボーカリストが意外と多そうで嬉しい。・・・ルーティンから始まって、また話が深いところまでいきました(笑)。
RyNK:本当にどこまでもいってしまうので、どこかで止めないと(笑)。
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◆「深掘りすると危険な歌詞」のお話。
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ハロ:ベルは最近ミニアルバムをリリースしたんですが、先日初めて歌詞解説配信というものをやってみたんです。僕はずっと、歌詞の解説はしたくないタイプで。基本的な解釈は聴き手に委ねたいし、自分が「こういう事だ。」と提示するとそれが100になってしまうじゃないですか。話した言葉が価値観の押し付けになるのが嫌なんです。
RyNK:全く同じ理由で、僕もやりたくないタイプです。
ハロ:だからこれまでは一切やってこなかったんですけど、今回の作品は特に言葉遊びが多かった事もあって、押し付けにならないように「実は、ここにはこういう言葉遊びがありました。」というような内容で配信してみたんです。それによって「なるほど!という事は、ここはこういう意味だったんだ!」と個々の考察に繋がってくれたら良いなと思って。その結果、何だかんだ言っても自分が歌詞に対して向けた気持ちや仕掛けを話す事自体は楽しかった。説明したくはないんだけど・・・。
RyNK:気付いて欲しいんですよね。
ハロ:そう、気付いて欲しい。僕がそれを口に出した瞬間に、僕自身の理想からはかけ離れてしまうというジレンマを抱えていて。今回の解説もファンの方達は喜んでくれましたけど、自分の中には未だに“やって正解だったのかな?”と思う気持ちもあります。新譜を出す度にインタビューで「この曲の歌詞については?」といった質問をされますが、限られた時間の中で他のメンバーが話す時間もあるわけで、歌詞についてだけ長く話すわけにはいかない。他のボーカリストは、インタビューでどのあたりまで話しているんだろうと思って。
RyNK:僕はインタビュー自体が本当に何年振りかというくらい、メディア系の仕事に関わってこなかったんです。なので、インタビューを受けていた当時の話になってしまいますけど、その頃はメンバーの誰が何を担当しているというような事はあまり表に発信していなかったんですね。しかも、当時の僕は基本的に話さないスタンスだったんですよ。インタビュアーの方に対して取材の場でお話はしていましたけど、会話として記事には載らないわけです。だから、自分自身や歌詞について深掘りして話すような事は無かったですね。「こういうモチーフで・・・。」と言った抽象的なイメージ+αくらいでした。
ハロ:あとはもう「各々で感じて受け止めて下さい。」と。
RyNK:そうですね。でも、なかなか真意には気付いてもらえないです(苦笑)。まぁ、自分が隠し過ぎているところもあるでしょうけど。「これはわからないよ!」と言われてしまえば、確かにそうだよなと・・・天邪鬼なので。
ハロ:歌詞を書く人間には、天邪鬼が多いと思いますよ。
RyNK:自分自身の事を、本当に面倒くさい人間だなと思っています(笑)。
ハロ:だから、ボーカル会が無いんでしょうね。それぞれの精神論の話になってしまうから、楽しいお酒の場にならない気がする(苦笑)。
RyNK:僕も、アルコールが入った状態で音楽の深い話はしないほうが良いと思っています。今みたいにフラットな状態でないと、変にヒートアップしてしまいそうで。「時々は喧嘩もしたほうが良いよ。」という考えの方も居ますけど、僕は飲みながらヒートアップは良くないと思う。
ハロ:建設的な話し合いができるなら良いけれど、熱くなればなるほどそうはできないものだから。
RyNK:必要以上に感情的になってしまいますからね。
ハロ:また逸れてしまったので、作詞の話に戻ります(笑)。僕は新曲のデモをもらったら、何をしていても頭の中に流れてくるくらい自分の中に楽曲を落とし込むんですね。そうするとそのメロディーに言葉が勝手にスッとハマり込んでくる瞬間があるので、そこから広げていくことが多い。どういう歌詞の書き方をされていますか?
RyNK:僕の場合は、自分がメロディーや曲の土台を作った時点からスタートします。そこから、メンバーに投げていく。
ハロ:その土台は歌も入っている状態?
RyNK:入っている時もありますが、僕の場合は意味よりも響きを先行するところがあって。仮歌で入れた全く意味のわからない言葉、めちゃくちゃな英語などを活かしてみたり。メロディーと言葉のバランスがハマらないと採用しません。“こういう意味の言葉を乗せたい。”と思っても、自分の中でその部分のメロディーにマッチしていなければ却下。僕自身がリスナー側の立場で知らない曲を聴く時、歌詞の内容がそこまで入って来ないタイプというか、“このメロディーのこのフレーズが印象的だった。”という聴き方をするんです。例えば、「愛してる。」という言葉もメロディーによって聴こえ方が全く変わりますよね。どんなに単純でパッとしない印象の言葉でも、“このメロディーでこのタイミングで聴いたら凄くカッコよく聴こえる!”という場合もあるし。そういう部分を重視しているので、言葉の響きがメロディーに合うかを第一に考えてから、意味を後付けで考えていったりもします。勿論、先に“こういう内容で書きたいな。”と思って書き始める事もありますけどね。それこそ、さっき話していた“歌詞をどう捉えるかは、その人次第。”という事が自分自身にも当てはまるというか。最初からあまり決め付けずに、“このメロディーのこの言葉を、どう捉えて広げても良いんだな。”と書き進めていく感じです。
ハロ:言葉を音的に捉えている?
RyNK:どちらかと言うとそうかもしれません。ただ、ハロさんと同じで言葉遊びが好きなので、言葉の響きと意味の両面からどうにか落とし込んでいくんです。だから、歌詞を書くのは凄く疲れるんですよね。完成した時は“上手くハマった、気持ちいい!”と思うけれど、書いている最中は辛い。
ハロ:生みの苦しみってありますよね。時々、「1曲1時間もあれば書ける。」という方も居るじゃないですか。
RyNK:居ますね!僕には理解できないんですけど。
ハロ:僕の場合、そう聞くともう歌詞を読む気を失くしてしまうんですよ(苦笑)。読んだ結果“本当に凄い歌詞だな!”と思う事もあるとは思うけれど、生みの苦しみという部分で共感できないと知った時点で自分の中にひとつバリアが張られてしまう。
RyNK:それって、さっきの“歌詞を解説しないほうが良い。”という話に繋がると思うんですよね。1時間で書いた事実を知る事が無ければ、素敵な言葉として受け取れたかもしれないわけで。だから、今このテーマで話していて凄く楽しいですけど、あまり深掘りし過ぎるのはどうなのかなという気持ちもあります。
ハロ:わかります。歌詞についてはこれ以上深堀りすると危険そうなので・・・。通常のメンタルで聴いた時には何も感じなかったのに、ある一定のメンタルで聴いたら物凄く響く事がある。そこが、歌詞の面白さなんじゃないかなと思います。
RyNK:同意です!
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◆「ボーカリストという面倒くさい生きもの」のお話。
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ハロ:こうして話してみると、ボーカリストって面倒くさい生きものだなと改めて思いますね(苦笑)。
RyNK:本当に(苦笑)。もう少し、物事をストレートに捉えられたら良かったなと思います。何かに対して感動を覚えても、“凄く良い!”と真正面から捉えられずに、“本当に良いか?自分は本当にこれに感動しているのか?”と自問自答してしまうようなところがあるので。
ハロ:それこそ「全米が泣いた!」なんてキャッチコピーを掲げて大ヒットしている映画って、僕は観たくなくなってしまう。作詞の話と同じで、“泣ける”という前情報を知ったばかりに“泣かなくてはいけない!”という強迫観念のようなものを抱えてしまって物語に没入できなくなるんです。勿論、実際に観たら泣けるのかもしれないけれど・・・でも、もっとフラットな状態で、何気なく立ち寄った映画館で観る知らない映画で感動したいなと思う。“泣く”というのは、心から感動したり悲しかったりする感情の表れじゃないですか。それを、何故「全米が泣いた!」なんてポップなキャッチにして使うんだろう。
RyNK:確かに。あのフレーズを考えたコピーライターって、色んな意味で凄い。
ハロ:“(全米が泣くとか)まず、嘘だろ。”って思うけど(笑)。
RyNK:うん、嘘ですよね(笑)。
ハロ:あのフレーズには、アメリカという国に対する日本特有のコンプレックスも感じるし。「アメリカ人が泣いたんだから、日本人も泣くでしょう?」という社会的風潮と同調圧力も込みの言葉だと思うんですよね。
RyNK:そこまでは考えた事が無かった・・・!
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◆「どうしても受け付けない言葉」のお話。
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ハロ:おそらくこれは僕が歳を重ねてしまったという事でしょうけど、流行り言葉みたいなものを受け付けられなくなってきていて。「〇〇しか勝たん。」とか聞くと、鳥肌が立つんです(苦笑)。
RyNK:いや、それは年齢の問題ではないです。流行っているからとか関係なく、僕もその言葉に対して嫌悪感があります。今でこそあまり気にしなくなってはきたものの、流行り始めた頃は本当に無理でしたね。何がそこまで嫌なのかわからないんですけど・・・言葉の意味は「〇〇が最高!好き!」みたいなポジティヴなものですし、流行り言葉を全て受け付けないわけではないと思うんですよ。ただ、あの言い回しは異常に鼻についてしまって。反面、そういう事を気にしない柔軟さが欲しいと感じる事もあります。そういう言葉を遣う事によってファンの方達が少しでも好きなメンバーの発信を「楽しい!」と思ってくれるのであれば、それができたほうが柔軟なんだろうなと思ったりもしました。
ハロ:RyNKくんの言う通り言葉自体はポジティヴですし、ファンの方達は自分の好きなメンバーを褒める意味で遣ってくれている事はわかりますから、言われたからどうというわけではないんです。ただ、自分を含めアーティスト側の人間がその言葉を発信する事に対しては嫌悪感が強いですね。バンドを始めた当初は、時代に迎合しようと一生懸命だった時期もありました。僕、去年で個人のInstagramをやめたんですよ。正直、Instagramを始めた理由も迎合だったし、Twitterと上手に棲み分ける事も難しかった。写真と文字を添えて投稿する事は、Twitterでも可能ですからね。あの時期は間口を広げようと思って色々とやっていたけれど、間口が多い事が必ずしも良いのかどうか深く考えるようになりました。
RyNK:確かに、そこは難しいですね。
ハロ:段々と“Instagramにはこの写真を、Twitterにはこういう文章を投稿しよう。”なんて考えている時間を微妙だなと感じるようになってきて。さっき話した自己定義に繋がりますけど、僕がInstagramに写真を投稿した事を喜んでくれている人が居るというのは想像でしかないし、その虚像の為に頑張っている自分が虚しく思えてきたんです。それなら、僕はTwitterだけに絞ろうと。“幸せ”という自己定義を他者や世の中の価値観に委ねてしまう事が凄く怖い。歌詞を書く時も、10年後には消えているであろう言葉はなるべく遣いたくなくて悩むんですよね。ベルの場合はメインのコンセプトが“歌謡”なので、演出としてあえて“携帯”なんて言葉を遣う事はあるんですけど。
RyNK:「勝たん。」は絶対に遣えないですね(笑)。
ハロ:遣えない(笑)。でも、誰にも遣われなくなって死語になったら逆に受け入れられたりするのかもしれない。
RyNK:確かに。やっぱり、表現者は「マイノリティこそ正義。」みたいなところがあるから。ただ、さっきも言ったけれど、そういう自分を少し崩したいという想いも抱いています。勿論、表現者としての大切なものは持ち続けたいですが、こだわりが強過ぎる事で吸収できなくなってしまうのは怖い。矛盾してしまうけれど、もう少しフラットに物事を受け入れられる自分でありたいという願望も最近はあったりします。昔は無かったんですけどね。
ハロ:それは、他人から押し付けられる形ではなく、自分自身で新しい価値観を見出そうとしているからでしょうね。自分というフィルターを通すか、他人というフィルターを通すか、それによって受け取り方は全く変わってきますし。同じものであっても、誰かに押し付けられたら拒絶したくなるけれど、自分自身で噛み砕けたなら全く抵抗を感じなかったりするんじゃないかな。
RyNK:アイドルの楽曲を、大衆音楽として捉えて跳ね除けるのか、クリエイティヴとして捉えて受け入れるのか。そんな話と少し近いかもしれません。
ハロ:バンドであっても、ヴィジュアル系というのはその言葉自体が概念ですよね。音楽性を表す言葉ではないし、その概念の中に本当に多種多様なバンドが存在している。そして、自分達とは全く違うベクトルで活動しているバンドさんも居て、そういう方達とイベントで共演する事もある。その時に、どこかで“受け入れられないな。”と感じてしまっている自分が居て、それは良くないなとも思うんです。だけど、そこに関しては自分を変えようとも思わないので・・・難しいですよね。
RyNK:本当に。自分の中の矛盾に葛藤する事は多々あります。
ハロ:一生、矛盾し続けるかもしれないです。
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◆「幸福観」のお話。
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ハロ:僕は人の価値観に凄く興味があるので、今回の対談ではそれぞれに違った価値観について訊いていきたいなと思っていて。RyNKくんとは“幸福観”について論じようかと思います。
RyNK:難しいですね。
ハロ:RyNKくんにとっての、“人としての幸福”とは何でしょう?
RyNK:ん~・・・きっと、あまり良い答えではないと思うんですけど、“勘違いし続けられること”でしょうか。どう説明すべきか、本当に夢の無い話になりますが(苦笑)。人と人との関係って、究極にドライに言うと、どこまでも虚像でしかないと思うんです。恋愛で喩えたら、Aさんが「好きだよ。」と言ってBさんが「僕もだよ。」と答えたとしても、そこに確証というか流行りの言葉で言うならエビデンス的なものは無いじゃないですか?証拠が無いし、誰にも証明できるものではないから、それを究極にドライに言うと“勘違い”だと僕は考えているんです。さっき出た歌詞の話でも、「この歌詞は1時間で書きました。」という言葉さえ聞かなければ、“この歌詞を書くのに何日も、下手したら何ヶ月もかかったのかな。”と勘違いできたかもしれないし、そのほうが感動できたかもしれないわけですよね。それは、色々な事にあてはまるんです。勘違いで自分に物凄い自信を持っている人だって、“幸福な人だな。”と思うし。自分だって“この人は僕の言葉で感動してくれている。”と勘違いできたほうが幸せ、みたいな(笑)。
ハロ:その考え方は、バンドを始める前からですか?
RyNK:いや、これはバンドを続けていく中で持った思考ですね。僕は、発信と受信って勘違いの連続だと思うんです。こんな言い方をすると凄くドライで嫌な感じに受け止められるかもしれないけれど、ある種の幸福なんじゃないかな。真実を話す事が幸福とは限らない。
ハロ:認識の差異が実は幸せなんじゃないか、ということ。
RyNK:はい。勘違いできている瞬間が一番幸福なんじゃないかと、わりと真剣に思っています。変な話、恋愛していても「あの子、俺の事が好きなんだろうな!」と思っていたほうが絶対に幸せじゃないですか(笑)。告白して振られたら、それはもう不幸になってしまう。よく「付き合う前が一番楽しい。」なんて言いません?両想いでも、そうではなくても、“その瞬間は勘違い”というか。
ハロ:とても面白いなぁ。僕にとっての幸せを考えると・・・まず、ある時から僕は他者に期待する事をやめたんですね。自分という芯が無いと、誰かの言葉に傷ついたり、流行にフラついたりして、自分が何をしたいのかすらわからない状況になる。おそらく、その時の僕は他者に期待したり、今の話に出たような他者とのすれ違いを楽しむ余裕も無くなっていたんです。だから、僕は自分が正しいと感じる事をして幸せを見出そうと決めた。僕の中での幸福観は、“自分という人間”“自己定義”だと。そういう考えになってから、生きる事がとても楽になったんです。幸福観は人それぞれ持っているもので、それをきちんと噛み砕けている人が上手に生きられている人なんじゃないかなと思う。
RyNK:そう思います。主観しか無いわけですからね。客観視を必要とされる場面もあるけれど、客観も少し遠回しにした主観だと思う。
ハロ:本当にそうですよね。客観と言っても、結局は他人の気持ちを主観で想像しているわけですから。今日は色々と深い部分の話ができて楽しかったです。4月9日は良い1日にしましょう。結局のところ・・・
ハロ&RyNK:『サクラ大戦』しか勝たん!!!!!(大爆笑)
取材・文:富岡 美都(Squeeze Spirits/One’s COSMOS)
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初めまして限定2マン企画
「サクラ大戦-REVENGE-」
開 催 !
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「第壱夜」
4月2日(土) vs heidi. ★終了★
チケット発売:2月19日〜(e+ A1〜)
https://eplus.jp/sf/detail/3565040001-P0030001
★次回★
「第弐夜」
4月9日(土) vs GRIMOIRE
チケット発売:2月20日〜(e+ A1〜)
https://eplus.jp/sf/detail/3565050001-P0030001
「第参夜」
4月16日(土) vs Leetspeak monsters
チケット発売:3月5日〜(e+ A1〜)
https://eplus.jp/sf/detail/3565060001-P0030001
「第肆夜」
4月22日(金) vs ヤミテラ
チケット発売:3月6日〜(e+ A1〜)
https://eplus.jp/sf/detail/3565070001-P0030001
「第伍夜」
5月1日(日) vs Ashmaze.
チケット発売:3月12日〜(e+ A1〜)
https://eplus.jp/sf/detail/3565090001-P0030001
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★heidi. OFFICIAL SITE★