2023年12月11日 (月)
【イベントレポート】2023年11月27日(月)東京・新宿Zirco Tokyo◆超個性派イベント・Mr.JACK presents 「斬ふぇす’23」大団円で完結!
NEWS - 18:00:44
ニコニコ生放送で好評配信中の番組『Mr.JACKが斬る!』初となる派生イベント、その名も<Mr.JACK presents 「斬ふぇす’23」>が11月27日(月)に東京新宿にあるZirco Tokyoで開催された。
▲YUKKE手作りによるおでかけJACKたん
『Mr.JACKが斬る!』はMAVERICK DC GROUPの代表である大石征裕=“JACK”を模した謎の人形がMCを務め結成から5年以内の新人アーティストをゲストとして迎える異色のバラエティ番組である。
ボイスチェンジャーで加工を施されたMr.JACKの声を務めているのが、奇抜かつ豊富なアイデアを持つMUCCのベーシストYUKKEということもあり、他に類を見ない番組として支持されている。
この番組はいわゆる<ヴィジュアル系>バンドに限らず、ジャンルの垣根を超えたゲストが出演しているが、何を隠そうこの<Mr.JACK presents 「斬ふぇす’23」>はまさに“異種格闘技戦”とも言えるラインナップになっている。合計4バンドのうちヴィジュアル系は我楽多とnuriéのみ。残り2バンドは仏教バンドとして活動中のTHE 南無ズ、ゴリゴリのヘヴィメタルを女性ヴォーカルReganが体現するSAISEIGA…と蓋を開けてみるまで結末が予想不能。そんな稀有なイベントを目撃するために好事家たちが徐々に会場に集まり始めた。
まず会場に入ると目を惹くのがステージセットだ。中心には障子に磔にされたMr.JACKが配され妖しくライトで照らされている。一体何が起こるのか・・・開演時間になるとメタル調の出囃子と共に障子の奥に刀を持った巨大なシルエットが現れる。大きなスライム!…否!本日の主役であり、宴の総指揮官Mr.JACK(等身大生首)のお出ましである。
▲Mr.JACK
“可愛い!”
“大きすぎる!”
“キャー!怖い!”
など、あらゆるタイプの嬌声を浴びた等身大Mr.JACKはご満悦でこのイベントの趣旨を語る。
「今まで番組で出演バンドの面白いところを見てもらったと思うけど、今日はかっこいいところを観て行ってくれよ!」
“予め人と成りに触れてあえて先入観を持った状態でライヴを楽しむ”ことはこのイベントの醍醐味であり本質だ。
ほどなくして登場したのは我楽多だ。
5人編成の、見た目通り純然たるヴィジュアル系バンドである。
ヴォーカルKōjiが国民的アンパンアニメの主人公型ライトを持って登場したかと思えばイベントの口火を切る「haraguchi」で会場の空気をまさに<斬ふぇす>仕様にする。
と、言うのもこの楽曲、詰め込まれた音数、ラップ・デスボイス・ポップなサビ・アニメ風のパートと転調に次ぐ転調など音の情報が渋滞しまくっていて全くもって初見では楽曲の判断がつかない。おもちゃ箱をひっくり返したような楽曲に筆者は唖然としてしまったが、好事家たちの反応はのっけから上場で非常に好意的であった。
▲Kōji(Vo)
独特の張りを持った声が特徴的なヴォーカルKōjiの物怖じしない姿勢と、やはりメンバーの人柄が番組を通して予め伝わっていることによる効果が顕著だ。
▲ウズ(Gt)
▲蛍(Gt)
▲りく(Ba)
▲RiU(Dr)
「で」、「めんどくさい」もシリアスとコミカルの狭間を行き来するが、硬質なギターによるリフを基調にしつつも、執拗な転調による曲の情報量が多く、正体を掴ませないながらも、オーディエンスに届けることに成功し求められている“V系らしさ”、“トッパーとしての役割”を見事に果たした。
「アヒル」まであっという間に駆け抜けた5人は最後に“I love YUKKE.”と感謝の捨て台詞を述べて嵐のようにステージを去った。
よく聞けば我楽多は結成して1年強とのこと。このキャリアでこのセリフを吐ける怖いもの知らずなところが愛される理由なのだろう。ポジティヴにステージを謳歌する彼らには終始良好なリアクションが送られた。今後に是非とも期待したいバンドだ。
◆ ◆ ◆
2番手はTHE 南無ズ。
このイベントのキーと言っても過言ではない4人組“仏教バンド”である。
着物を纏った紅一点おがみ おが(Dr)、虚無僧笠を被り、その素顔が隠された虚無弦 僧四(Ba)、そして涅槃崎 悟(Vo&Gt)、坊主の彼岸田 盆(Vo&木魚&おりん)の二人は普段は漫才ネタに非常に定評のあるお笑いコンビ<ドドん>で活躍中・・・ちょっと待ってくれ。我楽多の嵐が去った後にも更なる情報の渋滞である。いっそ下道に降りてしまおうかと思っても時すでに遅し。まんまとフィクサーであるYUKKEの敷いた道路をノンストップで走るしかないのだ。番組視聴者には説明不要だが彼岸田 盆は実際に実家が愛媛のお寺である正真正銘のお坊さんである。
▲彼岸田 盆(Vo&木魚&おりん)
木魚をサンプリングしたSEにクラップが巻き起こる光景が敬虔なのかはたまた不敬なのかは判断に困るところだが、“待ってました!”の空気の中アルバム『ナム・ストーリーは仏前に』のクロージングソングである「合掌time」からスタート。
ハードロック調の懐かしいサウンドに“合掌をしようしよう”と繰り返されるあまりに印象深いサビではスラップベースでアクセントを加えるという小気味よさであっという間に会場を我が物にする。お位牌型のハーモニカソロなど、“お笑い”の要素をふんだんに取り入れ大満足のステージを繰り広げた。一方、この日が誕生日当日だという涅槃崎 悟の実直故に色気のあるヴォ―カリゼイションはそのスマートな佇まいも相まって惹きつけるものがあった。
▲涅槃崎 悟(Vo&Gt)
▲虚無弦 僧四(Ba)
▲おがみ おが(Dr)
以前YUKKEが“THE 南無ズはお笑いの片手間にやっているバンドという認識ではない”という旨を語っていたことを思い出す。彼岸田 盆に至っては“お笑い芸人・お坊さん・バンドマン・坊主バー勤務”と4足の草鞋を履いた活動をしており、“片手間以外なんと言えよう”と思えなくもないが、ラストのキラーチューン「てら・テラ・寺」まで1秒足りとも飽きさせることなく巧みなスキルでイベントの色を決定付ける名アクトで観客の心をがっちり掴んだ。何足草鞋を履こうが履きこなせばいい。まさに釈迦に説法というわけだ。
今回唯一の女性ヴォーカルということで事前から注目・期待度が高かったのはSAISEIGA。
サーチライトのような照明が真っ赤に照らす中、最後に現れたRegan(Vo)はバットを持って登場。トッパーからア●パンマン、お位牌、と来てバット…ここでもまたカラーの違いが明確だ。
Katsuki(Ba)が上手ポジションというフォーメーションの男女比率2:2の4人組だが、主たる音楽性はメタル。この日ここまで鳴ったどの音よりも獰猛なサウンドは夢烏(MUCCファンの呼称)とは親和性がありそうだ。
未知の客層にやや緊張感も観て取れたが、柔軟に楽しむことへのアンテナに長けた観客は思い思いに音を楽しんで応える。頭を振る、身体を揺らす、拳を掲げると様々だが、一体感に固執せず鳴る音に素直なリアクションを返すフロアは全ての出演者にとって、未知であり新鮮だったのかもしれない。1曲目の「HANABI」が終わるころにはステージとフロアに隔たりは全くなかった。一気に空気を変えたところで披露したのはユニゾンが音の壁として襲ってくる「JUMBLE」、この日無料配布された新曲「轟音爆散TORNADO」でもReganのグロウルと爆音に対してヘドバンが巻き起こる。
▲Regan(Vo)
▲Katsuki(Ba)
▲Wakkun(Gt)
▲桐子(Dr)
イントロからアンセム感を放つ「RIDE ON」、重量感が溢れながらも複雑なリズムでグルーヴを生む「Level5」まで全5曲を凝縮してまさに“勝ちにくる”セットリストで一気に駆け抜けた。
シャウトだけでなく歌唱でも魅せたReganにはMCで「可愛い~」と女性客からの歓声も多く飛んでいて、照れながら笑顔を見せる場面もあった。この辺りもYUKKEが明言していた“各バンドのいつもとは違う顔を引き出す”を感じる瞬間だった。
思えばここまで出演したバンドはいずれもアウェー感と闘うことを義務付けられていたように感じる。本来ホームであるヴィジュアル系の我楽多ですら、いつもと異なる空気を感じていたわけでTHE 南無ズやSAISEIGAに至っては出てみないとわからない状態だったのではないか。各ステージに共通して、自分たちを知らない層に向けた戦い方をしていたように見受けられつつも、この癖の強いニッチなイベントにまで足を運ぶ熱心なファンとの絆を再確認することにもなった。
◆ ◆ ◆
そんな絶妙なバランスで見事に渡ったタスキを最後に受け取ったのは大角龍太朗(Vo)、廣瀬彩人(Gt)、染谷悠太(Dr)からなるnuriéだ。大阪を拠点にする彼らはこの日が5日間に渡った長期の東京遠征最終日でもあった。
疾走感のある「瞳に映らない形と性質、それを「」と呼んで」から転がり出したステージは個々の高いスキルと大角のメッセージを全面に押し出した楽曲で一気にワンマンライヴ状態に。
▲大角龍太朗(Vo)
限られた時間の中で全てを出し尽くすように「今宵、未来の為に歌おう。」、「akuma」とうねる廣瀬のギター、パワフルかつ手数の多い染谷のドラミングがサポートメンバーとは思えない永山銀と生み出すグルーヴで様々な客層を束ね上げていく。
▲廣瀬彩人(Gt)
▲染谷悠太(Dr)
イベントに寄せることなくあくまで自分たちのプレイに注力する様からは、ある種の貫録を感じると共に、トリを務めるプライドを感じた。良質なメロディとバンドの根幹にある大角の言葉で真っ向勝負を挑むnuriéはまさにジャンルにこだわらない<斬ふぇす’23>を締めくくるに相応しいと言える。彼らの多彩なマテリアルの中からも極めて殺傷能力の高いラインナップを揃えたメニューの最後は大角が“この声くれてやるよ!”と叫んで「透明に混ざる。」を披露。
おもちゃ箱をひっくり返したようなぐちゃぐちゃさが痛快なイベントの最後を見事に音楽の力で収束させた姿は、ここ最近の彼らの中でもベストアクトに近かったのではないだろうか。
この日はステージの転換中にMr.JACKとyou、kiyo(Nicori Light Tours/ ex.Janne Da Arc)の超豪華3MCによるTALK STAGEにてトークセッションを行うという催しもあったのだが、出演を終えたばかりのバンドが登壇するといずれも温かい拍手に包まれたことも追記しておきたい。
youが「手ぶらでライヴハウスに来ることの怖さ!」と感想を述べ爆笑をさらうとkiyoは「なんで僕らがMCなん?」と疑問を呈する。
偉大な先輩方と絡むことが未来ある若手アーティストにとって励みになる旨を述べたMr.JACKの言葉には、これまで『Mr.JACKが斬る!』へ出演してきた全ての若手アーティストの成功と未来への期待を祈る愛情を感じずにはいられない良いシーンだった。
この日の開場BGMもYUKKEセレクトによるもので、開演前に筆者にも“絶対好きなやつだと思うよ”とニコリとしていたが、その内容はこれまでYUKKEが今年様々なプロジェクトで交流を重ねてきた若手アーティストの楽曲がズラりと並んでいたのである。
この思いやりこそがこの宴の温かさの秘密だったのかもしれない。
アンコールのセッションではMUCCの「流星」か「TONIGHT」がプレイされることが明かされていたが、選ばれたのは「TONIGHT」!
登壇したMr.JACKもステージに留まらず、フロアに降り大盛り上がりの観客と共に存分に「TONIGHT」を楽しむ一幕もこの夜ならでは。ファンに負けず劣らず「TONIGHT」のノリを熟知しているMr.JACKの姿にも“可愛い!”、“怖すぎる!”など様々な声が飛び交ったことは言うまでもない。
▲フロアに乱入するMr.JACK(等身大)
終演後には来場者へMr.JACKの<お見送り斬り>も実施された。YUKKEの発案で4D仕様(効果音、フラッシュに加えスタッフが扇ぐ団扇で風を感じることができるという極めてアナログな演出である)のお見送りは番組でお馴染みの“KILL!”で行われた。
最後まで来場者を笑顔で返そうという心意気まで実に温かいイベントだった。
終演後各バンドの物販スタッフからは、他のバンドをお目当てとする来場者が手売りチケットやグッズを手にしてくれて嬉しかったという声も聞こえた。
図らずも異種格闘技戦となった<Mr.JACK presents 「斬ふぇす’23」>、一つの番組を通して親和性を生み出す第一歩となった。
またこのMr.JACKにしか成し得ないフェスに出会う日が来ることを楽しみにしている。
開催してくれなければそれこそ、Mr.JACKに“KILL!である。
TEXT:山内秀一
PHOTO:冨田味我
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<SET LIST>
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我楽多
- haraguchi
- で
- めんどくさい
- 訳ワカメchan
- 手
- アヒル
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THE 南無ズ
- 読経
- 合掌Time
- 天上天下唯我独songs for you
- ダンディ坊さん
- 土竜と鼠の鎮魂歌
- てら・テラ・寺
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SAISEIGA
- HANABI
- JUMBLE
- 轟音爆散TORNADO
- RIDE ON
- Level5
…………………………………………
nurié
- 瞳に映らない形と性質、それを「」と呼んで
- 今宵、未来の為に歌おう
- akuma
- RooM-6-
- 【ばいばい】
- 透明に混ざる。
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ENCORE SESSION
- TONIGHT (MUCC)
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【斬ふぇす’23】OPEN-START & SET CHANGE BGM selected by Mr.JACK(YUKKE)
https://open.spotify.com/playlist/0bOkAZIhhzWRar9HvmVDgZ?si=5a6f0cccd10b4c58
【Mr.JACKが斬る!特設ページ】
https://archive.visunavi.com/mr_jack/
【Mr.JACK公式X】
https://twitter.com/MrJACK_KILL
【ニコニコ動画】
https://ch.nicovideo.jp/maverickdci