2022年08月31日 (水)
★ロングリリースインタビュー!★【ベル】2022年8月27日リリース、New Single「さよならムービースター」◆“映画”をコンセプトに、音源とツアーがリンクする作品を構築──「“ライヴを意識しつつ、新しい要素も加えたベルらしい曲”をテーマにしました。」(Gt.タイゾ)
NEWS - 20:00:258周年記念ワンマンツアー『シネマティックシアター』の開幕を目前に控えたベルが、12th single『さよならムービースター』をリリースした。
ベルらしさと新しさを融合した今作には、変わらぬ核を持ちながら常に挑戦と成長を続けるバンドのリアルタイムの魅力が詰まっている。
ライヴ感溢れる新曲達と共に10月22日・浅草花劇場のファイナルまで全国を駆け巡る、彼らのツアーにもぜひ足を運んで欲しい。
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“映画”をコンセプトにまた音源とツアーがリンクする作品を構築してみたい。
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――『さよならムービースター』、ベルらしさと新しさが融合された素敵な作品が誕生しました。今作のコンセプトから伺えますか?
ハロ:9月3日から始まる8周年記念ワンマンツアーの前に作品のリリースをしようと、まずは選曲会で曲を決定するところから始めました。同時進行でツアーのコンセプトも考えていて、昨年開催した7周年記念ワンマンツアー『拡声決起ストライキ』での音源とライヴをリンクさせた世界観がベルにとても合っていたので、今回は“映画”をコンセプトにまた音源とツアーがリンクする作品を構築してみたいなと。順序的には、ツアーのタイトルのほうが少し先に決まりましたね。
――フライヤーも拝見しましたが、こちらのデザインもとても美しくコンセプトに沿ってまとまっていて。
ハロ:今回の“映画”というコンセプトも、歌詞も、フライヤーのデザインも、幸いな事に僕が提案や担当をさせてもらえているので、トータルとして1本の芯を通せているのではないかと思います。
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“ライヴを意識しつつ、新しい要素も加えたベルらしい曲”をテーマにしました。
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――タイゾさん作曲の『さよならムービースター』から伺っていきます。
タイゾ:前作のミニアルバム『新約・鐘が鳴ったら事件が起きる』は作曲段階から“メンバーそれぞれが思う歌謡”というテーマがありましたが、今回はまだそこまで明確にテーマが決まっていない時期に曲作りが始まったので、個人的にどういう曲を作ろうかと考えまして。結果、まさにさっき言ってくれたように“今までのベルを感じつつ、新しい要素も取り入れたもの”を作りたいと思いました。その上で、ベルはコロナ禍に入ってからもわりとしっかりライヴ活動を続ける事ができていますし、ライヴで演奏した時の事も考えたい。前作で自分が作曲した『「返して。」』はしっとりしたバラードだっただけに今回はちょっと弾けたい気持ちもあって、“ライヴを意識しつつ、新しい要素も加えたベルらしい曲”をテーマにしました。イントロからツインリードギターで、テンポもわりと速い。ベルの既存曲には無かったタイプの曲にできたんじゃないかな。
――疾走感が印象的ですし、ルミナさんによるRapも入っていて、ツアーに持って行くのにピッタリなライヴ映えする楽曲だと感じました。
タイゾ:そうですね。俺は、曲の中にメンバーをフィーチャーする部分を作るのが好きなんです。以前の『サマーランドスケープ』でもルミナはRapを担当していましたし、“今回もまたルーミーのRapセクションを作ったら面白いんじゃないかな?”と思って入れました。Rapに関しては細かい指定をせずに「テンション高めでお願いします。」とだけ伝えたんですけど、送られてきたデモが凄く良い感じで一発OKでしたね。
――ルミナさんのRap、本当にパワーアップされていました!
ルミナ:ありがとうございます!
――Rap部分の歌詞も書かれたそうですね。
ルミナ:はい。普段から歌詞を読む事が好きなので、ハロさんの歌詞を自分なりに消化して準えつつ書きました。ちょっとヴィジュアル系っぽさを感じる言葉・・・例えば“リストカット”と“リスクカット”を掛けてみたり、韻を踏みつつ意味のある単語を入れてみました。
――言葉のハマり方が素晴らしくて、ギターのみならずRapの才能も存分に発揮されているなぁと。
ハロ:以前のバンドの時からRapをしていたのを僕らも知っていたので。あの部分はルミナのソロだからね(笑)。
ルミナ:はい(笑)。ベースのリズムに乗れるように、今回はわりと言葉を詰めましたね。
――明弥さんのスラップが炸裂している上にルミナさんのRapが乗ってくるのがカッコいいやら衝撃的やらで、初めて聴いた時はその部分を3回くらいリピートしてしまったくらい。
ハロ:わかります。僕も初めてしっかり聴いた時“めちゃくちゃカッコいいな!”と思いましたから。
――Rapからの流れで入る間奏も、楽器隊の音の絡みがとても気持ち良かったです。
タイゾ:あ、目の付け所が良いですね(笑)。元々のデモでは、その間奏の部分にもう少しギターソロっぽいフレーズを入れていたんです。でも、“Rapの勢いからギターソロにいくのは何か違うな”と感じていて、ベースがスラップでずっと続いているし、ギターソロというよりギター・ベースバトルみたいなもののほうがしっくりくるんじゃないかと。
――ジャムセッションのような雰囲気を感じました。
タイゾ:うん、そういう感じにしたいと思って今の形になりました。
――フロアが揺れて盛り上がっている様子が目に浮かびます。
タイゾ:ここのパートは本気で盛り上げたいですね!まだどうなるかはわかりませんが、ライヴでは間奏部分の尺を伸ばしてみようかと考えていたりもして。個人的には、ツアーを経てそういう変化が起きていくのも面白いのではと思っています。
――では、各パートのレコーディングのお話を。
正人:この曲を持ってワンマンツアーに行くので、疾走感は保ちつつも、できるだけステージングで自分が自由にカッコよく動けるような隙間を作りました。
――華やかなステージングが目を惹く、魅せるドラマーなだけに。
正人:ありがとうございます。
――ステージングも楽しみにしています。明弥さんはいかがですか?
明弥:やっぱりこの曲のベースの聴かせどころはスラップだと思うんですけど、スラップ自体はデモの時点から入っていたので、最初はデモのとおりに弾いてみたんですね。でも、手癖的な問題もあってか自分の中では“意外と難しいな。”と感じたので、自分なりのパターンを作ってみたら、しっくりはきたけれど難易度は一層上がってしまい・・・だけど、自分としても凄く納得のいくベースを弾けたので、自信を持って「カッコいいスラップができたよ!」とタイちゃんにデータを送りました(笑)。
タイゾ:うん!!!
――バッチバチに弾き倒していらっしゃいますからね!
明弥:あまりこういう事は言わないですけど、自分でも自信を持っているスラップです。最初はRapとその後のみがスラップだったけれど、どうせ弾くならと思ってBメロにも少し入れてみました。楽曲のエンディングもスラップで終わるんですが、あの最後の2小節が一番緊張しますね(笑)。
タイゾ:勢いで終わらせようかとも思ったけれど、最後にちょっと誰かに緊張して欲しいなと思って(笑)。
一同:(笑)
タイゾ:“誰に緊張してもらおうかな・・・今回は、あっきーかな!”って(笑)。ひとフック入れてみました。
――結果、凄まじくカッコいい仕上がりとなりました!
明弥:そうですね。自分以外のメンバーが作った曲のほうが、ベースフレーズに集中できるんですよ。自分でも作曲をしますけど、派手なフレーズを弾いているのはメンバーが作った曲が多いです。自分で作曲した場合は常に曲全体の事を考えつつ、色々なパートに気を配りながら制作を進行しなくてはならないので。この曲はタイちゃんを中心に作り上げていく形だったから、ベースだけに100%集中してこういうフレーズを入れる事ができました。ライヴが楽しみですね。
――イントロにアコースティックギターが入っていますが、タイゾさんはアコギとエレキの2本持ちですか?
タイゾ:はい。ただ、アコギを弾いた直後にリードギターが入ってくるので、ライヴでこのまま再現するのは無理なんです。なので、イントロで掻き鳴らしているアコギもライヴではエレキで弾こうかなと考えています。まぁ、そのうちにハロくんがアコギで弾いてくれるので期待していてもらえたら。(←突然の無茶振り)
ハロ:!?!?
一同:(笑)
ハロ:・・・いつか(笑)。
――いつかはそんな日がくるかもしれない、ということで(笑)。
ハロ:あくまでも、“かも”ですよ!(笑)
タイゾ:実は、この曲のキーパーソンはハロくんだったりします。最初の形から何かもうひと工夫欲しいなと考えていた時に「最後のサビで転調してみたらどう?」とアイディアを出してくれて、“あ、転調があった!”と思ってアレンジしてみたら物凄くしっくりきたんです。良い仕事をしましたね、ハロくんは(笑)。
ハロ:ありがとうございます!(笑)
――ルミナさんはいかがでしたか?
ルミナ:タイゾさんの作った曲は基本的にタイゾさんが提案してくれたフレーズのとおりに弾いているので、そこに関してはいつもと変わらず。デモの段階からライヴで盛り上がりそうな印象を持ちましたし、サビの「♪さ~ら~ば~」に合わせてフロアのファンの人達が手を振りながら跳ねている様子が目に浮かびました。
――盛り上がる要素が満載ですよね。
ルミナ:そうですね。ライヴで演奏するのが本当に楽しみです。
ハロ:曲の話で言うと、ベルは歌謡曲を軸にしているバンドなので、歌の音の譜割りが詰まったような曲はあまりやっていなかったんです。ですが、この曲は珍しくBメロでバーッと捲し立てるような詰め方をしていて、そこは今までのベルでは挑戦していなかったボーカルフレーズだなと思います。
――頭サビのメロディアスさからはBメロやRapへの展開は想像がつかなかったのですが、聴いてみたらとても良い形でお互いを引き立てあっていて、そこがある事によってサビが一層映えるなと感じました。
ハロ:Aメロはわりと歌謡曲的な譜割りで、Bメロでパッと捲し立てるような展開をして、サビからは楽器隊と共に疾走感溢れる感じになっていく・・・その目まぐるしい展開が、僕自身も歌っていて凄く気持ちが良いですね。ボーカルレコーディングも、タイちゃんが「ここは言葉を切らずに繋げよう。」といったディレクションをしてくれて一緒に作っていきました。
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ある意味、自分の理想へ向けた訣別です。
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――歌詞には、夢が破れたり心が折れそうになったりしたその次のステップが描かれています。
ハロ:この曲のデモを聴き込んでいる時、最初に浮かんだワードが“さらばムービースター”だったんです。そうやってポンと浮かんでハマったワードは歌詞の核となる場合が多いので絶対に逃がさないように捕まえて、そこからストーリーを拡げて行くことにしました。ワンマンツアーのタイトルを『シネマティックシアター』にして“映画”という一貫したテーマで展開すると決めたけれど、ひとことで“映画”と言っても様々なジャンルがあるものだし、このテーマを基に何を書こうかと最初は悩んだんです。僕らが毎年大切にしている周年ツアーというのは、1年の集大成を見せながらファンの人達に感謝を伝えに行くツアーでもあるので、このコロナ禍の中でまた1年を過ごしてきた自分自身の心境を歌詞に反映したい気持ちもありました。コロナ禍も既に3年目になって、色々な事を諦めざるを得ない瞬間も、過ぎていく時間にやきもきする事も沢山あった。その想いを歌詞に落とし込もうと、様々な要因で心が折れそうになった時にあと一歩踏みとどまれた理由や気持ちを書く事にしました。バンドを始めた当初は、誰しもが当たり前のように階段を上っていけるものだと信じていたし、“こんなふうになれたら良いなぁ。”とか“何年後には武道館に立って…”なんて考えたと思うんです。でも現実は、目指すものは目に見えているのに走っても手を伸ばしても届かない。そこで“これが現実なんだ。”と足を止める事は容易いけれど、僕はいつまでも理想を追いかけるのではなく、今の自分と向き合った上で足を動かし進み続けたいと思った。“ムービースター”というのは、僕が描いた理想の存在の比喩なんです。僕は特別じゃないし有象無象のエキストラみたいな存在かもしれないけれど、自分の中の理想とお別れして、胸を張って劣等生だと歌って走る事ができるのも才能なのではないか。そんな気持ちを、開き直って歌詞にしてみました。
――“劣等生”“凡庸”“有象無象”“みっともない”など、ひとつひとつの言葉は辛いものが多いですが、歌詞としては全てを認めて前に進む強さが描かれているから前向きですよね。
ハロ:単語で見ていくとネガティブですけど、歌詞全体を通して読むと凄く前向きです。
――今の自分を認めて誰かの歩いた道ではなく自分の道を見つけて進んで行く、そんな強さを持ちたいなと思いました。
ハロ:バンドも同じですから。メンバーチェンジなども経験しながらベルとしてここまで活動を続けてきた中で、やっぱり僕らは誰かの背中を追いかけるのではなく自分達というものを追求していくべきだと感じるし。『さよならムービースター』は、ベルらしさも新しい挑戦もある曲なので、何をやっても「これが俺達だ。」と胸を張って言えるように、こういう歌詞にしました。ある意味、自分の理想へ向けた訣別です。だから、ブックレットのこの曲の歌詞は手書きなんです。今作のデザインはミネムラさん(The Benjamin/THE BEETHOVEN)にお願いしたんですが、僕の手書きの文字をそのまま印刷して頂きました。自分に対する訣別の手紙という想いを込めての手書きです。
――何かしらの夢を追いかけて生きて挫折を経験した全ての人達に響く歌詞だと感じます。
ハロ:挫折に大きい・小さいって無いじゃないですか?どんな夢であれ、その人にとっては最大なものですから。だからこそ、挫折を経験した時に自分を見つめ直すきっかけのひとつになれたら、そういう背中を見せられたら良いなと思っています。
――以前「聴いてくれた誰かがハッと何かに気付けるきっかけを作れたら。」と仰っていましたが、今回も“自分のことすら変えれずに 世界が変わるのを待ってた”と“希望など呪いと同じだろう”というフレーズにハッとさせられました。
ハロ:ありがとうございます、僕もそのフレーズが気に入っています。人間って「変えたい、変えたい。」と言ってはいても、実際は自分ではない“何か”が変わるのを待ってしまっていたりするものですからね。
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聴けば聴くほど癖になるような曲ができたと思います。
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――続いて、明弥さん作曲の『コンプライアンス』。こちらもまた新しい印象のオシャレな楽曲です。
明弥:歌謡というベースは崩さず、でも新しい歌謡を作りたいなと考えた時に、80年代の電子音・・・例えばYMOだったり、ああいう感じの音を取り入れたいなと思って作り始めた曲です。あまり抑揚が無くて、独特の浮遊感みたいなものがあって、ライヴ感も欲しかったので少しテンポを上げたりもして。自分でも非常に癖が強い曲だなと感じますが、ベルでそういう曲を作るのは俺かなと(笑)。2回目のサビが終わった後のフレーズなどからも伝わると思うけれど、過去に作曲した『ルイスキャロル』にしても、元々ああいうちょっとあやしい音階が好きなんですよね。作っていくうちに“ここまできたら、もう少し面白い事を入れてしまおうか。”と思って、変拍子と転調も入れてみました。
――癖の強い方向に振り切ってみよう、と。
明弥:そうですね。サビも含めてあまり抑揚があるわけではないけれど、聴けば聴くほど癖になるような曲ができたと思います。同期に関しても、5人体制になってからは自分の曲ではあまり入れてこなかったんですけど、この曲は久しぶりにガッツリ入れてみようと頭から同期始まりにしてみました。
――あの同期はイントロから“お、この曲は?”と意識を持っていかれて、非常に効果的でした!では、各パートのお話をお願いします。
正人:ドラムが意識したのは電子感と、それに加えてデモを聴いた段階で僕的にはちょっとファンク味も感じたので、そういうニュアンスも少しだけ取り入れました。安全地帯をはじめ80年代の音楽って、独特なスネアの音がするんですよね。あの音に近付けるために、レコーディングでミュートして録ったスネアを、ミックスの時にあえて拡げています。そうする事によって、独特な音の印象になるんですよ。個人的には、凄く良いドラムの音にできたと思っています。あとは、この曲を聴いていると顎を動かしたくなるというか回したくなる感じがして(笑)。
一同:(笑)
――感覚的に伝わります(笑)。
正人:途中で変拍子が入っているんですが、顎を回して聴いてくれている人達のリズムを止めて邪魔したくなかったので、ドラム的にはあえて一番簡単な変拍子にしました。例えば『アイデンティティー』の変拍子などはとても複雑なんですけど、今回はあえてすんなり聴いてもらえるように演奏しています。
明弥:ベースは結構同じフレーズが繰り返されるので、ドラムのキックにきっちり合わせる事を意識しました。シンセベースという同期で打ち込んだベースと自分が弾いた生のベースをマッチさせながら演奏しているんですが、そのシンセベースがかなりタイトなんですね。全てをそちらに合わせてしまうと生で弾く意味が無くなってしまう気がしたので、自分が生で弾いている感も出せるようにバランスをとりつつ。音色としても、今までのベルでは使った事が無かったオートワウというエフェクターを取り入れています。これはわりと飛び道具的なエフェクターで、自分は本来“ベースはベースで良い”と思っているほうなので、飛び道具系はあまり好きではないタイプなんですけど。
ハロ:飛び道具系を使うとリードっぽくなっちゃうから。
明弥:そうそう。今回は上手くハマってくれて、挑戦できたので楽しかったですね。
タイゾ:あっきーが送ってくれたパラデータ(※パートごとのトラックをバラバラにしたデータ)を聴いた時に、“これは俺だ!”と思いました(笑)。たぶん、あっきーは俺がこういうフレーズを弾きそうだなって考えて入れてくれたんだろうなと感じるフレーズが多くて。
明弥:そうですね。
タイゾ:サビでタッタカタカタカタカ・・・と聴こえるギターにはディレイというエフェクトが掛かっているんですが、俺は普段からよくそういうフレーズを弾いているので入れてくれたんだろうな。あとはカッティングも好きなので、弾いていて楽しい曲です。家でスラーっと弾いたデータを「どんな感じだい?」と送ったんですが、わりと大丈夫だったよね?
明弥:うん、バッチリでした!“カッティングがタイトだな~!”と思いました(笑)。
――この曲は“タイト”がキーワードになりつつあるような。
タイゾ:そうですね。俺はライヴではわりとギターを荒く弾きたいタイプですけど、カッティングだけは聴いていて気持ち良くなって欲しいので、縦のラインを絶対に崩さないようにしっかり意識しています。間奏ではワーミーというエフェクターを使っていて、レコーディングでは一応フレーズを決めて録りましたけど、ライヴでは毎回その場のパッションで変えて弾こうかなと。間奏前にハロくんの「そいつが僕だ」というセリフが入っているので、そのテンション感によってどう弾くかを決めようかなと。
ハロ:なるほど、僕の責任が重大だ。
タイゾ:ですね(笑)。そうすれば、その日ならではの『コンプライアンス』を聴かせられるのではないかと思います。ギター的には、間奏まではタイトにタイトにしっかり弾いて、間奏でちょっと自由になって、そこからまたタイトに戻るという流れになる予定です。ライヴが楽しみですね。
ルミナ:俺はこの曲が凄く好きなんです。シンセの感じとか、流れていくようなサビ・・・“これぞサビ!”という感じではない、ちょっと不思議な雰囲気がとても好き。俺は加入当時カッティングが苦手でしたけど、その頃よりも成長できたとレコーディングをしながら自分自身でも実感する事ができました。これもまた、ライヴで演奏するのが楽しみです。あと、この曲のレコーディングで明弥さんの家に行ったんですけど・・・(笑)。
明弥:レコーディングの時、ルミナはいつも俺の家に来てくれるんですね。『コンプライアンス』は2曲目に録ったけれど、彼はわりと淡々と作業をしていてあまり言葉も発さなかったから、この曲の事をどう思っているのかがわからなくて。“どうなんだろうな。”と思いつつ全てを録り終えたら、最後の最後に「これ、めっちゃ良い曲ですよね。」と言ってきて“そんな風に思っていてくれたのかよ!”って(笑)。
一同:(爆笑)
――全て録り終えるまで心に秘めていらしたんですか?
ルミナ:いや、ずっと良いと思ってはいたけれど“あえて伝えるのもなぁ。”というだけだったんですよ(笑)。
――最後の最後に伝えて頂けて良かったですね!
明弥:本当に良かったです!
ルミナ:その時の明弥さん、めちゃくちゃ嬉しそうな顔をしていて(笑)。
一同:(爆笑)
ルミナ:その顔を見て、“伝えて良かったな!”と思いました(笑)。
――ルミナさんが録っている間、ずっと“どう思っているんだろう?”と心配されていたのでは・・・。
明弥:そうですね(笑)。ライヴ曲にしたい気持ちはあったけれど録っている段階ではまだライヴでどうなるかは見えづらいですし、シングル感というよりTHEカップリングという雰囲気の曲だし、好みが分かれるだろうなと思うので。気に入ってくれていて良かったです。
――そして、ハロさんの歌い方もいつもとは違って感じました。明弥さんから「あまり抑揚が無い曲」というお話がありましたが、歌も淡々と冷めている印象というか。
ハロ:うん、冷めていますよね。曲からもエモーショナルとは違う感じだと伝わっていたので、そこにボーカルが強い語気でいくのはちょっと違うなと。ライヴ曲っぽくはあるけれど、一般的なライヴ曲のような歌い方は似合わない。意識して変えたというより、曲に導かれるまま歌っていったら自然とこういう感じになりましたね。ただ、途中で変拍子になる部分で楽器隊がエモーショナルになるので、その前に僕も一緒にエモーショナルになりたくて、明弥に「語りを入れても良いですか?」と訊いて入れさせてもらいました。あの語りが無いとボーカルだけがずっと淡々としていて、楽器隊は変拍子で楽しんでいるのに僕だけ置いていかれるような感覚だったので。
明弥:『真っ赤な嘘』でも『拡声決起ストライキ』でもセリフを入れていましたし、(ハロは)本当にセリフが好きだなぁと思いました(笑)。自分自身はそこに強いこだわりも無かったですし、入れたいと思うならその気持ちを大切にしたいなと。
ハロ:さっきタイちゃんが僕のセリフのテンションによって間奏のギターを変えようかと言っていましたけど、僕もあそこはライヴによってテンションを変えようと思っています。例えば、音源では「そいつが僕だ」と言っているけれど、ライヴであれば「それがお前だ!」になっても良いわけじゃないですか。
――確かに、それもカッコいいです!
ハロ:そこまでは淡々としていて、あの語りを経て楽器隊のエモーショナルなパートに入っていく。僕の中ではそこがこの曲で一番盛り上がるポイントだと思っているので、セリフも言葉が段々と強くなって早口になっていくように意識しています。歌に関しては、曲が持っている雰囲気やグルーヴ感を邪魔しないように歌おうという感覚でしたね。
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エンターテイメントまでが規制の対象にされてしまったら、誰も何も表現できなくなってしまう。
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――『拡声決起ストライキ』同様、現代社会において危惧すべき部分をかなり直球に描いた歌詞だと感じます。
ハロ:そうですね。“コンプライアンス”という言葉は日常でもよく耳にしますし、そういった規制の影響もあって昨今のバラエティーがあまり面白くないと自分自身も感じていたりして。
――毎日のようにコンプライアンスに関する報道がありますし・・・。
ハロ:一般人が自称しているコンプライアンス警察みたいな存在まで現れて、どんどん言いたい事も言えない世界になっていくんじゃないか。僕自身も、歌詞を書く時など言葉遣いに物凄く気を遣うんですよね。そんな世界の中で、この嘆きをいかに歌詞にできるだろうかと考えながら書きました。最後の最後に「これらは僕の独り言です。」と書いた事によって、独り言であれば規制できないだろう?と少し挑発的な締め方をしています。
――歌詞の中のかなり多くの言葉が、虫食い状態で読めなくなっていますよね。
ハロ:歌詞の中のちょっと強い言葉を虫食いにしたので、ブックレットを見てもほぼ読めないと思います。サビの歌詞に“隠した本音(ことば)じゃ何もわからない”と書いたので、「これじゃ何も読めないし、わからない。」と感じてもらえるくらい、あえて多くの言葉を隠しました。
――多様性を認める事や差別をなくす事などはとても大切ですが、時としてそれに過敏になり過ぎて逆差別を生んでしまったり・・・過度のコンプライアンス強化によって、ある意味とても怖い世界になりつつあるのではとも感じていて。
ハロ:そうですよね。バラエティーやアーティストといったエンターテイメントに関しては、そういう規制の対象外にして欲しいと思っています。寧ろ、コンプライアンス的なものに気を遣って日常生活を過ごしている多くの人達が何の気兼ねもなく観て大笑いできるバラエティーや、“自分が言いたい事を歌ってくれた!”と感じられる楽曲を届けるアーティストが必要だし、エンターテイナーはそういう存在になれるはずなのに、エンターテイメントまでが規制の対象にされてしまったら誰も何も表現できなくなってしまう。
――心から同意です。皆様は公人だから、常にコンプライアンス警察の目に晒されているようなものですし。
ハロ:SNSにしても、みんな同じような事しか書かなくなっていきますよね。
――本当に。それでも、表現者には自由であって欲しいと願っています。
ハロ:うん。僕はその分、歌詞に書こうと思っています。「昔は良かった。」なんて言葉をよく聞きますが、僕が主に生きてきた時代は平成なので、そういう気持ちを込めて“平成レトロポリス”という言葉と、それに対比する“令和ニューノーマル”という言葉を入れてみたり。
――コロナ禍以降、“ニューノーマル”や“新しい〇〇”といった言葉が多用されるようになりましたが、個人的には非常に厄介で紙一重な言葉だなぁと。
ハロ:わかります。まぁ、曲自体は歌謡なので冒頭の歌詞は歌謡曲っぽいワードにしたくて、“ワイドショー”という言葉から始めました。『さよならムービースター』の冒頭が“さらばムービースター”、『コンプライアンス』の冒頭が“ワイドショー”、そしてツアータイトルが『シネマティックシアター』と、全て“観るもの”“視覚的なもの”で繋げてあったりします。
――なるほど!私自身もインタビュー原稿を書く時は特にひとつひとつの言葉や表現に気を遣うので、この歌詞が非常に刺さりました。
ハロ:いざとなったら、原稿も虫食いにしてしまうとか(笑)。
――そうやってエンターテイメントを新しい発想で転換していく精神は、これからの世界で凄く大切だと痛感します。
ハロ:読み手に“何て言ったのかな?”と想像させる事も、時には大事だと思いますからね。
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僕らの挑戦を観に来てくれた人達に「ベルはまだまだやる気だな!」と感じて欲しい。
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――そして、“移動式映画館”がコンセプトの8周年記念ワンマンツアー『シネマティックシアター』が9月3日・浦和ナルシス公演よりスタートします。
ハロ:僕らが作り上げる作品はCDだけではなく、1本1本のライヴもパッケージされた作品だと思うので、“移動式映画館”というテーマにしました。現在、メンバーそれぞれのパロディーポスターを順番に公開しているんですけど。
――このインタビュー前日に公開された第一弾は、タイゾさんによる北野武監督作品『ソナチネ』のポスターでしたね。
タイゾ:そうなんです、好きなんですよ。
――それぞれが好きな映画作品のポスターに?
ハロ:作品の内容ではなくポスターのデザイン重視で選んでいるメンバーも居ます。あのポスターは、何かしらの形で会場でも見てもらえるようにしたいなと考えているところです。ライヴハウスに足を踏み入れたら、“あれ、いつもとは少し違うぞ。”と感じてもらえるような没入感を生み出したい。
――“没入感”も大切なキーワードですね。ベルはコロナ禍においてもライヴにリリースにと果敢に挑戦して走り続けていらした印象が強くて、その中で8周年を迎えられる事が本当に素晴らしいなと感じます。8年の実感はどのようなものでしょうか?
ハロ:長いとも短いとも思わなくて、本当に“8年かぁ。”という感じです(笑)。勿論、ここまで繋がってきた事での8年なんですけど、僕らは毎年の周年ツアーに“現時点での集大成を見せるぞ!”という気持ちで挑んで、ツアーを終えたら“よし、またここから1年走るぞ!”という気持ちに切り替わる。節目というか、そこで気持ち的なリフレッシュをしているんですね。メンバーやファンとの関係性を再確認して、また次へと進んでいくような。
正人:確かに、毎年の周年ライヴでまた切り替えていくイメージがあります。
――1年ごとにバージョンアップしていく感じ。
ハロ:そうですね。当然、“前年の周年ツアー以上のものを。”という事はずっと考えています。
――今回のツアーは全国11公演、ファイナルは10月22日・浅草花劇場です。昨年の宣言どおり、ファイナルは恒例だったキネマ倶楽部を離れて初めての会場が選ばれました。
明弥:キネマ倶楽部でないならどこでやろうかという話になった時に、僕らはまだホールでやった事が無いのでやってみたいなと思ったんです。幾つかのホールをイベンターさんにピックアップして頂いて、実際にそこでライヴをしたバンドさんから情報を頂いたりもして、この会場に決めました。あと、浅草ってベルっぽいじゃないですか。
――ええ、立地と会場名からして似合います。
明弥:新しくて綺麗なホールなんですよ。面白いのが、このホールは花やしきの中にあるような立地なので、建物のすぐ横をジェットコースターが走っていく(笑)。
一同:(笑)
明弥:おそらく2階席にもお客さんを入れるのではないかと思うので、立って観ているのがしんどい方でも2階席でなら観て頂けるのではないかと。1階席の子達には立っていて欲しいですけど(笑)。
ハロ:そうだね(笑)。椅子がある感じがまた映画館っぽいですよね。
――初ホール含め、進化したベルを拝見できるのが楽しみです。最後に、このツアーをどのようなものにしたいかお聞かせください。
正人:ここ数年、ライヴへ行く事自体に色々なリスクがあるとされる中でも変わらず足を運び続けてくれるというのは、おそらくとんでもない愛が無いと無理な事だと思うんです。だから、そうやって会場に集まってくれた人達に対して、それ以上の愛を持ってぶつかっていく事が僕の中での周年ツアーのテーマです。「コロナお父さんによって引き裂かれた僕達が、ライヴハウスで再び出逢う―――。」なんて、まさに映画じゃないですか(笑)。
一同:(笑)
正人:そんな素敵な映画を作り上げていけるツアーにしたいと思っています。
タイゾ:自分は途中加入なので、メンバーチェンジがあっても変わらず応援し続けてくれている人達や、元々自分のファンで加入したからベルも追いかけようと決めてくれた人達に、感謝の気持ちを込めて演奏します。俺はそういうものをSNSで文字にする事があまり好きじゃないし、結局はライヴでしか想いを伝えられない人間なので、個人的にはそういう気持ちを持ってツアーをまわりたいです。バンド全体の事で言うと、自分自身も“ベルにはこういう雰囲気もあるんだ!”って新しい発見をしたい。新曲を引っ提げてツアーをまわる事によって、“こういう流れのライヴも面白いね!”とレパートリーが増えたらいいなと。今後に繋がる何かを掴めるツアーにしたいですね。
明弥:公演数的には昨年より少し減ってはいますが、例年以上に1本1本を大切に濃いものにしていきたいですね。今回のツアーはファイナルこそ制作会社に入って頂くけれど、それ以外の公演は全て僕ら5人で話し合って会場や工程を決めたので、ほぼ100%手作りなんです。それができるのもこのバンドだからこそだし、そういう強みをどんどん見せていきたい。セットリスト的には、色々な楽曲を演奏したいなと。ベルの楽曲はどこに行っても戦えるものばかりだと思うし、最近のライヴのセットリストにしても定番みたいなものは無く本当に色々な楽曲を演奏しているんです。以前の僕らなら煽り曲の後にバラードをやったりはしなかったけれど、そういう流れも組み立てていけるようになってきつつあるので、面白い事をしたいです。あとは、とにかくファンの皆に感謝を伝えに行くツアーにしたいと思います。
ルミナ:ツアーのコンセプトが“映画”なので、生と映画の融合というか、ベルというバンドのドキュメンタリー映画みたいなライヴを見せたいです。自分自身を出したいし、時には飾っていない部分も見せたい。ルミナという人間の人間性を見せられるツアーにしていきたいですね。俺はいつもあまりメイクや髪形を大きく変える事をしないけれど、今回のツアーでは七変化的にやっていこうかなと思っているので、そういう部分も楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
ハロ:この5人で周年ツアーをまわるのは、今回で3回目なんです。1回目に関してはコロナ禍で延期などもあってスケジュール通りには行えなかったので、ちゃんと1本パッケージされたツアーとしては2回目の感覚ですが。で、今回は現体制になってから初めてメンバー全員が同じ衣装なんですよ。
――お揃いの衣装は『ジェラシー』以来?
ハロ:おそらく。うちはメンバーそれぞれが着たいシルエットやメンバーカラーによって決める事が多くて、全員バラバラだったりボーカルだけ違う型にしたりという事が続いていたので。自分達としては、ベルのバンドコンセプトである“歌謡サスペンス”というものを、リリースしてきた楽曲的にもバンドとしての完成度的にもここ2~3年でよりブラッシュアップできている感覚が強くあるんですね。その状態で5人お揃いの衣装でまわるツアーというのもまた、とても楽しみだなと思います。僕の中では常に“次は何に挑戦できるかな?”“どんな挑戦をしたらファンの人達が面白いと感じるかな?”と考えているので、今までは組んでこなかったような流れのセットリストにも挑戦するツアーにしたいし、僕らの挑戦を観に来てくれた人達に「ベルはまだまだやる気だな!」と感じて欲しい。
――バンドに期待し続けて欲しいですよね。
ハロ:はい。どのバンドも同じでしょうけど、コロナ禍でできる事が制限されていく中で、僕ら自身もずっと可能性を探っているんですよね。今回の楽曲達然り、やっぱり僕はベルにしかできない事が必ずあると思っているので、そういうものをバンドとして探り続けて更にブラッシュアップさせていきたい。それが、僕がこのツアーに懸ける想いのひとつです。あとは、さっきルミナも言ってくれたように、ドキュメンタリーというかノンフィクションの生身の人間である僕らを見せていきたい。明弥が話した通り、このツアーのほとんどは僕ら5人で作り上げたものなので、映画によくある「急にこうくるのか!」みたいな裏切りも込みで、今までの周年とはまた違うものとして楽しんでもらいたいです。今月もライヴが沢山ありますけど、この1年間、本当に様々なイベントに出演させて頂いて、そこでベルのことを見つけてくれた人達も居て。8年続いているバンドというと「途中から応援しづらい。」と感じる人も居るかもしれませんが、僕らはこのツアーでまた新しいものを作り上げていくわけだから、何年目かなんて気にせず好きなものに素直になって参加してみて欲しいです。いつでもウェルカムですし、ずっと応援してくれている人達にも、これから観てみようかと思ってくれている人達にも、今のベルを楽しんでもらいたい。僕らはその想いを全て受け止めて、ライヴで何百倍にもして返していく。そういう覚悟でまわるツアーにします。ベル8周年記念ワンマンツアー、そして5年ぶりのBCDツアーへ。鬱々とした世の中に光を描き続けるので、どうか僕らが君の住む街の近くに行った際や、8周年記念ツアーファイナルの10月22日・浅草花劇場にも足を運んでくれたら嬉しいです。
取材・文:富岡 美都(Squeeze Spirits)
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<LIVE>
9.3(土) 浦和ナルシス
9.4(日) 新横浜NEW SIDE BEACH!!
9.10(土) HOLIDAY NEXT NAGOYA
9.11(日) 静岡Sunash
9.17(土) 四日市 Club Chaos
9.19(月祝) 福岡DRUM SON
9.24(土) 神戸 太陽と虎
9.25(日) 大阪RUIDO
10.1(土) 札幌Solid
10.2(日) 札幌Solid
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■TOUR FINAL & 8th Anniversary
10.22(土) 浅草花劇場
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<リリース>
★2022.8.27発売
New Single
「さよならムービースター」
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1.さよならムービースター
2.コンプライアンス
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¥1,500(tax in)
【CDショップにてインストアイベントも開催!】
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▲Vocal.ハロ
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▲Guitar.ルミナ
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▲Guitar.タイゾ
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▲Bass. 明弥
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▲Drums.正人
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