2022年09月19日 (月)
【ライヴレポート】<David 5th Anniversary Tour Final ONEMAN LIVE>◆2022年9月16日(金)・17日(土)池袋EDGE◆2days濃厚レポ!
REPORT - 22:00:35<David 5th Anniversary Tour Final ONEMAN LIVE Day.1
「旧約誓書-Mary’s Testament-」>
2022年9月16日(金)池袋EDGE
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Davidの身体を借りた聖母マリアが、いかにして罪人たちを赦したのか…。
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Davidが、今年4月よりライブを通して描き続けてきた「旧約誓書」の物語。歩みゆく中、成すべき形を求めてきた成果が、9月16日(金)池袋EDGEを舞台にしたDavid 5th Anniversary Tour Final ONEMAN LIVE Day.1「旧約誓書-Mary’s Testament-」公演で、一つの答えを導き出した。
フロア中に鳴り響く厳かな音色。そこには3人のシスターが佇んでいた。荘厳なる音へ導かれるように舞台へ姿を現すメンバーたち。シスターから手にした百合を高く掲げたDavidが「Messiah」と歌いだす。終わりを飾る物語は、本作を象徴する『Messiah –旧約–』から語られだした。幽玄な音を背に、張り裂けんばかりの想いを響かせるようにDavidは歌う。まるで世の憂いを嘆き、祈りを捧げるように。く彼が描き始めた救いの物語は、今宵、どんな調べを奏で続けるのだろうか…。
Davidの心の揺れを、増幅するように轟く演奏。Davidの高く突き上げる拳にあわせ、フロア中からも突き上がる無数の拳。『Gothculture -Decadent Art-』を通し、今宵の儀式は、早くも心の調律を合わせだした。舞台の上で雄々しく想いを響かせるDavid。感情が荒ぶるたび、フロア中から高く突き上がる拳。さぁ、この勢いを胸に、この世に渦巻く黒い感情をすべて赤く焼き尽くせ!!
Davidの身体を借り、想いを述べる聖母マリア。「ここは、わたしを信じた罪人たちが集まる崇高な場所。罪人たちの罪を赦し続けたわたしは、捕らわれ、今宵、眠りにつこうとしています。わたしに出来ることは、あなた達の見てきた過去も未来も、この身体すべてを持って赦し続けること。わたしのすべてを持ってあなた達を赦し、見守ってあげる」。
果たして、運命とは定められていたものなのか。それに抗い、みずから運命を導くことで生まれる物語なのか。Davidは『Tarot』を歌いながら、ここに集いし罪人たちに「わたしを導いてよこの身体ごと全部」と問いかけていた。雄大な。でも、荒ぶる演奏に刺激を受け、みずからの気持ちを掻き立てるようにDavidは歌う。惑いながらも心理を求め歌う姿に心動かされた罪人たちが、手を揺らし、想いを返していた。
続く『Mage』でもDavidは、みずからを闇に閉じ込め、絶望の淵に立ち、生きることを確かめるように歌っていた。どの曲でも、そう。彼は嘆き、張り裂けんばかりの想いを叫ぶことで、みずから罪を背負い続けていた。
「素晴らしき選ばれた罪人たち。手を掲げよ!!」。Davidは、『D』を手に、この空間を一気に戦いの地へと導いた。怒り、荒ぶる感情をぶつけるDavid。轟く音に身を委ねた罪人たちが、身体を大きく揺さぶり、頭を振り乱し、理性を消し去りだす。猛り狂うその様は、狂気を帯びたDavidの心と波長を合わせるようにも見えていた。その勢いは、『Rituals』でさらに大きく膨らんでゆく。演奏に合わせ突き上がる拳は、聖母マリアの化身と化したDavidと、契りを交わし、天へと導かれるようにも見えていた。高ぶる感情、高陽した空気が、この空間を赤く染め出す…。
「みずからを焼き尽くすほどの強い想いで、ここまで歩いてきました。つねに理想を追い続ける日々、今回、活動休止という決断をして、マリアはキリストを宿し、今宵眠りにつきます。理想を求めて、時に困難さえもみずから引き寄せて立ち向かっていく。そんな理想を、わたしは心から愛しています」
どんな苦境へ身を置こうと、たとえ、その身が朽ち果てそうになろうとも、心に命を帯びていれば、また、ここから羽ばたける。そんな理想を現実に変えようと、Davidは悲哀を込めた想いを隠すことなく、切なくも甘い声で『羽化と理想』を歌っていた。 次第に躍動する演奏に乗せ、みずから心の両翼を広げ、「叶うならば」と声を荒らげ、Davidは閉ざされた黒い世界から飛び立とうとしていた。それが、彼が求めた理想の姿だからこそ…。フロアでも、無数の手の翼が揺れていた。その景色が、印象深く瞼に焼きついた。
狂気を孕んだ、遊興な弦楽の音色が響きだす。Davidは、重厚ながらも軽快に跳ねた『Testament』に身を預け、 彼流の聖なる救いの歌を響かせていた。彼の歌う「Testament for my life」の歌声が、気持ちを高陽へと導いてゆく。救いを乞うようにフロア中で揺れる数多くの手の花。そして…。
「眠るわたしを、どうか見守っていて…。こんな素敵な場所に、わたしの魂を残せる。あなたたちに見守られたこの世界は、麗しき棺」。
静謐かつ麗美な調べに包まれながら、Davidはバラードの『麗しき棺』を歌っていた。その姿は、みずからの身を柩の中へ収め、魂だけを天へと昇らせてゆくようにも見えていた。Davidの身体を借りた聖母マリアは、みずからその命に終わりを告げようとしていたのだろうか…。愛しき人へ想いを寄り添え歌うDavidの姿を、誰もが食い入るように見つめていた。歌い終わり倒れ込むDavid…。
ふたたび、鳴り響きだした轟音。Davidの叫びへ呼応するようにフロア中から無数の拳が突き上がる。「罪人たちよ,飛べ!」の声を合図に飛びだした『Final Act』に合わせ、フロアにいた人たちが一斉に跳ねだした。ときに頭を激しく振り乱し、力強く手バンをしながら、気持ちを高陽へと導くDavidの歌声に合わせ、罪人たちが荒ぶる音でふたたび理性を消し始めていた。
「いけるか、罪人よ!!」。続く『荊棘の意図』や『Apolutrosis』でも、戦う神の僕と化したDavidとメンバーたちが荒ぶる牙を剥きだしに襲いかかれば、フロア中の罪人たちも身体の螺子を壊し、これまで以上に激しく身体を揺さぶり、熱狂に溺れる狂人と化してゆく。
「このステージに立つにはいろんな葛藤がありました。マリアの運命を描きながらDavidとして歌い、その運命にみずからも巻き込まれ、堕ちていった。それでも、共に理想や愛を描いた仲間たちが集まり。赦し合える。こうやってすべてを確かめあえる場所があること、恵まれているなと思います。みんなと一つのプロジェクトを完成させると、また欲が出てしまう。みんなを見て歌うことが、俺にとってのライブ。みなさんへ向けた一つ一つの思いが大切であって、寄せてくれたみなさんの思いを胸に歌っています。それは、この先も変わりません。今の、そして明日にかける思い。すべてをさらけ出します」
途切れたくない心の絆を、さらにきつく結びあうように、Davidは『Moira』を歌っていた。言葉のひと言ひと言を噛みしめるように歌うDavidの姿に、大勢の人たちの心が強く引き寄せられ、互いの気持ちを固く結び合っていた。次第に狂気を帯びてゆくDavid。上げた、絶叫…。
その姿を優しく包み込むように流れた調べに乗せ、Davidはこの世を、この身を憂うように、百合の花を手に『誓書』を歌っていた。その姿は、みずからを浄化し、昇華するようにも見えていた。
「わたしの生きる場所は、この退廃の園」。両手を大きく広げ、十字の民と化したDavidが「いくぞー!!」と声を荒らげる。彼は『Paradise lost for ”Requiem”』を通し、罪人たちの心に火を点けてゆく。熱を求めるように大きく両手を広げ、思いを受け止める罪人たち。さぁ、もっともっと美しく心を、その身を燃やし、共に一つになろうか。
最後にDavidは、『Gothculture -dawn-』をぶつけ、罪人たちと作り上げた熱狂を、忘れられない記憶として、この地に足を運んだ一人一人の心へ刻印していった。この身に刻まれた痛みに触れるたび、何時だって、この時の熱が疼くように蘇る。そのためにも、もっともっと強い熱狂の刻印を、頭を振り乱すこの身に、言葉(思い)を求めるこの心に焼きつけてくれ。
火照る熱が残る舞台へ、ふたたびDavidが姿を現した。「これからも、みなさんのために歌います。かならずみなさんの元に現れ、物語の続き、結論を示しますので、それまでDavidを待っていてください。俺は理想の世界を作り続けることを止めない。その思いと、みなさんの思いが交わる瞬間がGothcultureの続きの始まりだと思います。わたしはわたし,その思いをロザリオに込めて赦しあおうと思います」
「わたしはわたし、唱える想い、ロザリオを~」。Davidは、あらん限りの思いを歌声に込め、雄々しく『Rosario』を歌っていた。その強い意志に呼応した罪人たちもまた、力強く拳を振り上げ、激しく身体を折り畳みながら、Davidと共に熱狂を興じていた。
「この声で、導いてあげる」。最後にDavidは「この声で殺して」「側にいたくて」と『蠱惑』を熱唱。荒ぶる演奏に乗せ、何度も繰り返される魂と魂のバトル。この日作り上げた熱狂の景色をけっして忘れないようにと、Davidは罪人たちの身体へ何度も何度も熱狂と熱情という印を刻みつけていった。熱を孕んだ景色を白いページに焼きつけるように、Davidは強く握った歌声のペンを通し、今宵の物語の本にやがて、Finの文字を記していった。
エンディングに『The Falling Asleep of the Virgin』が流れ、最後の言葉という歌声を響かせたDavidはその場に倒れ込み、白い光に包まれたステージの幕が閉じる。
翌日には、キリストの生誕が待っている。その続きを成す前に、聖母マリアの、ここに生きた証を、Davidはしっかりと一冊の物語としてまとめあげていった。
PHOTO:Lestat C&M Project
TEXT:長澤智典
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<セットリスト>
『受胎告知』
『Messiah –旧約–』
『Gothculture -Decadent Art-』
『Tarot』
『Mage』
『D』
『Rituals』
『羽化と理想』
『Testament』
『麗しき棺』
『Final Act』
『荊棘の意図』
『Apolutrosis』
『Moira』
『誓書』
『Paradise lost for “Requiem”』
『Gothculture -dawn-』
-ENCORE-
『Rosario』
『蠱惑』
『The Falling Asleep of the Virgin』
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<David 5th Anniversary Tour Final ONEMAN LIVE Day.2
「新約誓書-The Confession of Christ-」>
2022年9月17日(土)池袋EDGE
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身ごもったマリアから、Davidの身体を借りて生まれしキリスト。彼が現世に残した言霊とは…。
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本当ならDavidは、長い時を通してキリストの物語を描き出そうとしていた。だが、突然の活動停止の言葉。彼は、長い工程を通して導くはずだったキリスト生誕からの物語の一部を、この一夜に放った。
9月17日(土)池袋EDGE。David 5th Anniversary Tour Final ONEMAN LIVE Day.2 「新約誓書-The Confession of Christ-」と題し、Davidの身体を借りてこの夜に降臨したイエス・キリストの物語が、今、始まろうとしていた。
荘厳なSEが鳴り響く場内。幕が開いたその先には、Joint Artistと黒いレースを体に掛けられたDavidの姿が。「目覚めの歌を…」の言葉と共にそのレースを取り払い、新約主の姿が露わになった。Davidが荒ぶる声を上げるのに合わせ、会場中に黒い音が轟きだすと、フロアに集いし民たちが思いきり頭を振り乱す。狂気を孕んだ導き手と化したDavidが、民(観客)たちをカオスな音の中へ引きずり込む。高陽した声とグロウルした叫びを巧みに駆使しながら、Davidは『Born』を通し狂乱の宴をここに催しだした。
荒ぶる感情をさらに焚きつけるように、Davidは『Stigmata』を歌唱。生誕の祝祭とは、こんなにも激しく、心が荒らぐものなのか…。それが、今の世だからこそ?!それを生まれながらにして、Davidの身を借りた救世主は示していたのだろうか…。フロア中の民たちが突き上げる拳。今宵の儀式は、最初から狂ったように熱を帯びていた。
「わたしの名は、マリアから生を与えられたキリスト。今宵、このわたしが発する言葉、旋律、いくつもの物語が、現世に生きるそれぞれの民の手で語り継いで欲しい。用意はいいか!!」
「Story Teller Ah! Ah!」、雄々しき存在と化したDavidの叫び声を合図に、『Story Teller』が飛びだした。Davidの身を借りたキリストは、今宵、どんな物語をここに描きだそうとしていたのか。荒ぶる神の化身と化したDavidの雄々しく上げる声に合わせ、フロア中の人たちが大きく身体を揺さぶり、思いを捧げるように舞台に向け、手を差し伸べていた。
「深く、深く、堕ちていけ」。燃え盛る炎をさらに大きく膨らませるように、Davidは『Ruinous』を通し、熱狂という業火の中へ民たちを引きずり込む。大きく身体を折り畳み、身を焦がす民たち。今は業火(熱狂)に身を預け、理性を消し去り、Davidの身を借りたキリストへ、すべての感情も、感覚も、魂も、熱情するこの身も捧げたい。
「もっと激しく自我を曝け出せ!」。マイクを外し、生声で叫ぶDavid。荒ぶる神の化身と化したDavidの姿へ導かれるように流れだした『荊棘の意図』。意識を混濁する轟音へ引き寄せられるまま、民たちは激しく頭を振り乱し、その場で飛び跳ね、大きく両の手を広げだす。狂気へと導く音の豪雨をその身へ浴びながら、誰もが狂乱の踊り人と化していた。
「僕は何故、守れなかった…。僕は何故、守れないのか…。僕は何故……守りたかった…」。今は亡きマリアへの思いを零すように,Davidの身を借りたキリストは『Mother Earth』を歌いだした。それは、未熟な自分への戒め?救いを求める心の嘆き??言葉のひと言ひと言を選びながら、Davidは嘆くように歌う。その痛々しくも神々しい姿を、誰もが食い入るように見つめていた。
どんな絶望の淵に立とうとも、みずからが前を見据え、心に翼を授ければ、きっと夢に向かって飛び立てる。たとえそれが黒く汚れた敗残の翼でも。Davidは『羽化と理想』を通し、絶望の底からでも理想を胸に羽ばたこうとしていた。フロア中の民たちの天高く広げ揺れ動く両手が、Davidと共に羽ばたきを欲する翼にも見えていた
壮麗な弦楽の音色に乗せ、Davidは呟くように『言霊』を歌いだす。Davidは、いや、Davidの身を借りたキリストは、どんな思いを胸に、亡き者となったマリアは何を想い天へと召されたのだろうか…。この世を平穏へ導こうとするたびに混沌としてゆく民たちの心。そんな罪人たちに赦しを与えながらも召されてゆくマリアを、キリストは歴史の語り部となり、この地で歌っていた。
「孤独さえも愛してくれて、ありがとう」。物語は、ふたたび混迷を来し出した。Davidは『Gothculture -Claustrophobia-』を手に、民たちの身体を大きく折り畳んでゆく。ふたたび乱世へ突き進む今を嘆くように、Davidは声を張り上げていた。雄々しさを増す演奏に身を寄せ、嘆き、祈りを捧げるようにDavidは歌う。
「全員で色をつけていこう、飛べるな!!」。Joint Artistたちが荒ぶる音を突きつけるのに合わせ、ふたたびDavidも感情を露に『Albinism』を歌いだした。「飛べ!!」の声に合わせ、フロア中の民たちが、その場で飛び跳ねる。激情という魂を重ね合わせたDavidと民たちが、演奏に合わせ騒ぎ狂う。まさに、ライブらしい景色がそこには生まれていた。続く『Behind』や『Final Act』でも、クラップや拳を振り上げる景色が誕生。Davidは、民たちを熱狂という渦の中へ巻き込みながら、混濁する意識の中へ物語を一つ一つしっかりと焼きつけてゆく。フロア中の人たちが高く手を掲げ飛び跳ねる様や、思いきり頭を揺さぶる光景が、なんて毒々しくも華やかだったことか…。
「昨日マリアが眠りについて、すぐにキリストに生まれ変わりました。本当に心地の好い目覚めでした。今日は、マリアの夢の中のキリストの誕生という物語を届けることが出来ました。出来ることならこれからも歌っていきたい。ただ、今のDavidは今日で最後です。だからみなさんに上手く送ってもらいたい」。
Davidとしての活動は、ここで一つの区切りを成し、何時目覚めるかわからない長い眠りにつく。愛しき民たちへ見送られながら、みずからの魂を葬送するように、Davidは切々と、でも朗々と『Funeral Procession』を歌っていた。その送る様は、ふたたび目覚めのときの鍵を、ここに集いし民たちへ授けるようにも見えていた。ここから、どれくらいの歳月が流れてゆくのだろうか。これから眠りにつくDavidの目覚めを祈る気持ちもあるが、まずは、これまでの感謝の気持ちを胸に、止まった時の空間の中へ彼を送り出そうか。
だが、ここで物語を終えないのがDavid。「あなた達は選ばれた民なんだ。夢の中でなら、何時でもその手を引いて、共に喝采を」。その「喝采を」の声に合わせ、Davidとフロア中の民たちが、激しく手を打ち鳴らす。Davidはふたたびこの空間を真紅の熱で染め上げようと『Dresscode』を歌いだした。眠りにつく前に、もうひと暴れ、ふた暴れし、忘れられない興奮という感覚をDavidは民たちの身体へ焼きつけてゆく。声を荒らげるDavidへ向かい、無数の拳が突き上がる。掲げた拳を、Davidは『Blood -Reason for existence-』を通してさらに高く突きあげれば、フロア中の民たちを螺子が壊れ暴走した人形に変え、激しく頭や身体を揺さぶっていった。Davidみずからも激しく頭を振り、狂喜と熱情の化身へと身を染め上げていった。止まぬ熱狂。そして…。
「共に新たな約束を交わそうな」。新しい自分へ何時か生まれ変わる日を願い、Davidは最後に『Messiah-新約–』を絶唱していた。『–新約–』Verは、バラード『–旧約–』Verからリメイクされ、疾走感のあるメタルチューンへと変貌していていた。彼の思いを受け止めた民たちも、Davidの姿をじっと見つめながら。でも、力強く手を揺らし、最後の啓示をしっかりと胸に抱きしめていった。何度も絶叫するDavid。その荒ぐ声が、耳から離れない。
みずから時を止めようと、ふたたび歴史が動けば、Davidは新たな時代の衣を身にまとった姿で歩みだすだろう。そんな、何時かの在りし日を願う前に、今もまだ終わらぬ夢の中、共に熱狂に浸り続けようと、Davidは『Metempsychosis』を歌っていた。その先に見える輝く夢の物語。今も一緒に、その夢を共に追いかけたい。心を晴れた世界へ解き放つ旋律を背に歌うDavidは、確かに笑みを浮かべていた。この歌の先に、まだ終わらぬ夢が眠っている。それを知っているからこそ、ふたたび夢を掘り起こすに相応しい姿となり、こんな風に共に楽しさへ溺れようと、彼は歌っていた。
「共に強く踏み出してくれるか!」。今宵で、物語は断章となる。でも,それは終章ではない。それを誰もがわかっているからこそ、熱狂という形で区切りをつけようと、Davidと民たちが持てる力と思いを『Gothculture –断章–』に乗せ、全力でぶつけあっていた。何度も繰り返される煽りのやり取り。これは戦いではない。互いに、絆を強く解けないように結び合うためのやり取りだ。きつく結ばれ、解けない熱い関係を見届け、Davidは火照る身体を、天へと召していった。
宴はまだ終わらない。最後の最後にDavidは、『Gothculture』という物語の始まりを告げた『Gothculture-序章–』を演奏。終わりの景色の中へ、また新たな出会いのための序章を記すように、Davidは最後にこの曲を届けてくれた。これが、今のDavidの出した予言だ。不確かな、まがい物な予言とは異なる、必ず現実となる予言を伝え、ふたたび彼はフロアを熱狂の様に塗りあげていった。サビ歌で、大勢の人たちがサプライズによって配布された白いサイリウムを揺らす様が印象的だった。また見たくなる、また味あわずにいれない景色を最期に作り上げると、キリストの夢は覚めていった。
PHOTO:Lestat C&M Project
TEXT:長澤智典
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<セットリスト>
『聖告』
『Born』
『Stigmata』
『Story Teller』
『Ruinous』
『荊棘の意図』
『Mother Earth』
『羽化と理想』
『言霊』
『Gothculture -Claustrophobia-』
『Albinism』
『Behind』
『Final Act』
『Funeral Procession』
『Dresscode』
『Blood -Reason for existence-』
『Messiah –新約–』
SE Tr-3
-ENCORE-
『Metempsychosis』
『Gothculture –断章–』
-W ENCORE-
『Gothculture –序章–』
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<インフォメーション>
2022年11月23日
5th Anniversary BEST ALBUMを発売予定。
※詳細後日発表
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