2016年02月03日 (水)
【ライブレポート】”Visual Parade” #2★2016年1月20日(水)TSUTAYA O-WEST★黒百合と影、シビレバシル、DADAROMA、DEZERTが渋谷で激突!
REPORT - 21:18:03
1月20日、TSUTAYA O-WESTにて、ぴあ主催のヴィジュアル系ライヴイベント「ぴあ Presents ”Visual Parade” #2」が開催された。
“Visual Parade”は、担当者が実際にライブに足を運んだ「感覚」を元に、毎回コンセプトを設けてブッキングをしているとのこと。第2回の今回は、黒百合と影、シビレバシル、DADAROMA、DEZERTと、新進気鋭の4組が出演した。ラインナップを見た関係者が「よくもまあここまで攻めた黒いバンドばかりを…」と漏らしたほどの面子だけあり、会場は満員御礼、出入り口の扉が閉まらなかったほどだ。
■シビレバシル
切り込み隊長を務めたのは、同期に頼らないソリッドなバンドサウンドと、変態的なステージングがインパクト大のシビレバシル。「チケットはぴあで買ってな…?」というVo.和泉の囁きと共に幕が開き、1曲目『赤い空にチェーンソー』がアカペラで歌いあげはじめられる。頭に“ぴあ”のロゴが入ったダンボールを被り、イブニングドレス(ご丁寧に胸パット入り)をまとった姿で朗々と歌う和泉の珍妙な姿に会場はざわめいた。
和泉がお立ち台代わりのゴミ箱に飛び乗って、「全員でかかって来い!」と叫び、2曲目は『脳内ブラック・ドール』。泥臭いまでにシンプルなバンドサウンドが、ドロッとしたバンドの雰囲気に合っていて、良い意味で最高に気持ち悪い。こわばった笑みで怖々クラップするオーディエンスの顔が痛快だ。
「シビレバシルやで♡今日はチケットぴあに媚を売ろうと思ってんねん!んふふふふふ♡」
イジリー岡田さながらにれろれろと舌を動かしながら楽しげに語った和泉は、「チケット買うならぴあ!」と、“チケットぴあに媚を売るコールアンドレスポンス”に会場を巻き込んだ。
「僕等ゴミ人間ってコンセプトなんですけど、ゴミ人間はメンバーで僕だけな事に気づいちゃったんだよね!!さあ!ゴミ人間って叫んで僕を気持ちよくさせてよおお!!」
ファンの「ぴあ!」コールが「ゴミ人間!」のシュプレヒコールに変わったところで、『ゴミ人間発狂カリキュラム』が放たれた。キュートな笑顔で軽快なリフをかき鳴らすGt.marya。正統派なイケメン風と見せかけて、ドロドロな低音を轟かせながら暴れ回るBa.ユウト。渋いルックスにエモーショナルなドラミングのギャップがたまらないDr.rei。そして和泉は言わずもがなだ。豊か過ぎる個性がステージ上でぶつかり合い、それに煽られるようにモッシュが巻き起こる。
そしてライブは『未練の雨』、『lost endroll』とメッセージ性の強いミドルチューンのセクションへと進む。つけまつげがとれて化粧がぼろぼろ、イブニングドレスは脱げ掛けて片乳が見えてるような状態で、むせび泣くように歌い上げる和泉。会場全体がなりふり構わない渾身の歌唱に飲まれた。
「バレンタイン…やねんな…。バレンタインプレゼントにポンポン持ってきたねん♡ふふふ…。」
ニヤニヤと笑う和泉のMCと共に会場にメンバー手作りのポンポンが配られ、『トウメイホラフキン』へ。ポンポンを振り回すフロアの光景がなんともシュールだ。O-WEST でポンポンを振り回すヴィジュアル系なんて前代未聞じゃなかろうか。
ラストは『二重人格』。和泉の歌声やmarya の泣きのギターソロが映える、メロディが綺麗な所謂歌モノだ。シビレバシルというバンドのサウンドの旨味を焼き付ける様な同曲に、オーディエンスは大きなコールで応える。1発目からやりたい放題ブチかまし、待ち受ける3バンドへ綺麗にバトンを繋げる様なステージだった。
★セットリスト
- 赤い空にチェンソー
- 脳内ブラック・ドール
- ゴミ人間発狂カリキュラム
- 中野駅北口パラサイト
- 未練の雨
- lost endroll
- トクメイホラフキン
- 二重人格
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■DADAROMA
1月12日に一周年記念ワンマンを新宿BLAZEにて成功させ、更に注目度を増しているDADAROMA。この日の彼等は多種多様なハードチューンで会場を盛り上げ、バンドの勢いをそのまま見せつけるようなステージを繰り広げてくれた。
1曲目に放たれたのはキラーチューン『「溺れる魚」』。殴り殺さんばかりのドラムアタックを合図に、轟く爆音。シビレバシルが作り上げた空気感を全て音で塗り替えるかのように、DADAROMAの時間が幕を開ける。
“さあここからハードチューン祭り本番だ!”と言わんばかりに2曲目は『アパシー・ヒューマン』。ジェントの要素なども盛り込まれた本格的なメタルへのアプローチと、キャッチーな歌メロのバランス感覚には恐れ入った。そして「あなたは私の物よ♪」のコールが印象的な『モルヒネ#2』ではフロア全体が踊り狂って、会場の熱が更に増していく。それでも猛攻は止まらず、4曲目は『ハイアンドロー』。艶やかなルックスからは想像出来ないプレイで、漢前なギターヒーロー像を描きだすGt.太嘉志。人間離れしたステージングで異彩を放ちながら、ゴリゴリに弾き倒すBa.朋。ダイナミックなフォームのドラミングが、華やかさも実力も同世代トップクラスのDr.裕介。そんなド迫力の演奏陣を、マイク映えする鮮やかなハイトーンと歌唱力で率いるVo.よしあつ。DADAROMAのカッコよさが前半戦だけでも十分に伝わったことだろう。
「今日はこんな素敵なイベントに出していただいてありがとうございます。今日はいっぱい曲をやりたいのでサクサクいきます。」
清々しいぐらいに簡潔なMCで、楽曲とライヴへのストイックさを感じさせつつ、『腐ったミカンの方程式』へ。シーケンスと生音が綺麗に重なった分厚い音の塊をぶつけられ、ファンが上手に下手にと駆け回ってモッシュ!そこから間髪入れずにDADAROMA流のダークなダンスナンバー『KIDS WAR』、そしてラストナンバーの『「ルシッド・ドリーム」』が叩き付けられた。よしあつが狂ったように笑いながら「走ってねえ奴にタックルしちまえ!」と絶叫し、モッシュ・ヘドバンの地獄絵図を描きだす。この日のイベントの音の迫力と激しさのナンバーワンはDADAROMAが間違いないだろう。
★セットリスト
- 「溺れる魚」
- アパシー・ヒューマン
- ハイアンドロー
- 腐ったミカンの方程式
- MONEY
- KIDS WAR
- 「ルシッド・ドリーム」
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■黒百合と影
ヴィジュアル系の王道をひた走る様な、攻撃的なバンドばかりがしのぎを削る、名門事務所Ains。そこから当イベントに殴り込みをかけてきたのは、黒百合と影だ。
転換時に雰囲気たっぷりに物悲しいクラシックを流し、登場前からの抜かりのない演出には流石の一言。1曲目は「とおりゃんせとおりゃんせ」のメロディが怪しく響くハードチューン『「便所」』だ。赤いライトと不気味なギターリフが渦巻く中で、ゴミ袋を被って赤いランドセルを背負ったVo.烏名鳴(からすな めい)が頭を振り回して暴れ狂う。続く『チヒロちゃんの眼球舐め』では烏名が“卑猥”と書いた習字の紙を振りかざし、弦楽器も一気に前に飛び出してフロアの熱を煽った。
「小学校は処女だから美味しいんです。小学生食べよう…!」という烏名の危うい曲フリから、3曲目は『ぺど。』 。黒百合と影はこのイベント唯一のツインギターのバンドなのだが、そのことが効果的に機能していると感じられた。同曲でも、不安感を煽るギターサウンドが楽曲のフックとなっていた。
中盤もとにかくアッパーに『絵の具まみれ』『ヨコハマメリー。』を畳み掛け、ノンストップでメガホンを使ったパフォーマンスがインパクト大の『ギチギチ』へ。同曲中に「ギターソロなんて観るもんじゃありませぇーん」とGt. こよみの前に立ちはだかったり、『断崖地獄喉輪落とし』でステージ中央に寝そべったりとやりたい放題の烏名。挙げ句の果てには「こんにちはー。すわってくれませんかねえ」とオーディエンスを座らせてヘドバンさせ、客席に降りていて行ってマイクオフでMCをするなど、フロアまで巻き込んで楽しむ手腕はお見事!
ラストの『「未遂」』ではモッシュで会場が揺れた。ステージセンターにフロント4人が集まるパフォーマンスと、総力戦でぶつけられるハードなバンドサウンドが五感全てに訴えかけてくる。
この日の出演バンドの中で、“ヴィジュアル系というジャンル”に一番まっすぐ向き合っているのは彼等だと筆者は感じた。ヴィジュアル系ライヴの楽しさを再確認させてもらったファンも少なくなかったのではないだろうか。
★セットリスト
- 「便所」
- チヒロちゃんの眼球舐め
- ペど。
- 絵の具まみれ
- ヨコハマメリー。
- ギチギチ
- 断崖地獄喉輪落とし
8.「未遂」
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■DEZERT
大トリを飾ったのは、6月にZepp Tokyoでのワンマンライヴを控え、今飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げているDEZERTだ。
「息してる?」
千秋の吐き捨てるような問いかけから、1曲目はハードチューン『「不透明人間」』。初っ端からフロア最後方までモッシュが巻き起こり、この日1番の熱量が会場を包む。繊細なニュアンスも綺麗に歌い上げるクリーンと、血を吐く様なグロウルを行き来する千秋のヴォーカル。そこに楽器隊の音がぶつかり合うように混ざり合い、激しいカオスへと誘われていく。
機材トラブルで音が出なくなったGt.Miyakoに、千秋が傍若無人にマイクを投げつける一幕がありつつ、「これは強い殺意殺意殺意…」のキラーフレーズでおなじみの『「殺意」』、更に『「遺書。」』と攻撃力抜群の曲群が続く。そして『肋骨少女』へ…、と思いきやワンフレーズ歌った辺りで千秋が歌うのをやめて終了。どうやら今の彼のご気分にこの曲はそぐわなかったらしい。そのまま何食わぬ顔で新曲『「君の子宮を触る」』が放たれる。Miyakoのウワモノとバッキングをバランスよくこなすノイジーなギター、Ba.SaZのうねりまくるベースライン、Dr.SORAのガツンと存在感を放つドラムプレイ。そして胸をかきむしるような切ない歌メロ。同曲にDEZERTというバンドのもうワンステージ上の姿を見たのは筆者だけではなかったはずだ。
『チョコレートクリームチェーンソー』では、千秋に楽器を奪い取られたSaZやMiyakoが客席にダイブ!ベースをかき鳴らすヴォーカリストとドラマーしかステージ上にいないという、なんとも奇妙な光景が出来上がるのはDEZERTならではだろう。更にフロアがウォール・オブ・デスでぶつかり合う『包丁の正しい使い方〜終息編』をブチかまされ、会場はすっかりハードモートへ。千秋もヒートアップしたのか、「僕は声出すけど、どうします?」と挑発的に煽りながら、ノリの悪いオーディエンスに水の入ったコップを投げつける。そのまま『doze.』『「教育」』を畳み掛けられ、切り刻むようなディストーションサウンドが印象的な『切断』が放たれる頃には、O-WEST はDEZERTに完全に掌握されていた。
そして、ドロドロに崩れたメイクで語りかけるように歌う千秋がトラウマものの恐ろしさだった『「宗教」』、『「擬死」』。と、ダウナーなナンバーが披露された後、ラストは『包丁の正しい使い方~思想編~』。同曲でひたすら激しく暴れ狂って締めくくられるのかと思いきや、まだ曲中なのにも関わらず千秋がさっさとステージからはけてしまった。楽器隊のサウンドだけが暫く空しく響き、挙げ句の果てに全員が演奏を放棄して強制終了。呆然とする会場だったが、幕が閉まると自然と拍手が巻き起こった。DEZERTのライヴに、予定調和は一つもない。いつだってその日だけのホンモノが披露されるのだ。
★セットリスト
- 「不透明人間」
- 「殺意」
- 「遺書。」
- 「君の子宮を触る。」
- ストロベリー・シンドローム
- 大塚ヘッドロック
- チョコレートクリームチェーンソー
- 包丁の正しい使い方~終息編~
- doze.
- 「教育」
- 「切断」
- 「宗教」
- 「擬死」
- 包丁の正しい使い方~思想編~
”Visual Parade”は、#3の開催に向けてのオファーも絶賛進行中とのこと。
今度はどんなバンド達がしのぎを削りあうのだろうか。続報を心待ちにしよう。
- TEXT:高崎 光
- PHOTO:坂口 正光
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