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2014年06月18日 (水)


<ライヴレポート>★Sadie★2014年6月5日(Thu)BLEACH OUT A BLACK STAIN ツアーファイナル 赤坂BLITZ!!

NEWS - 13:30:00

来年の結成10周年を控え、5月14日にミニアルバム『bleach』を発表したSadieが、全国7都市を回るワンマンツアー“BLEACH OUT A BLACK STAIN”を敢行。6月5日に赤坂BLITZでファイナルを迎え、バンドとして進むべき一つの“答え”を導き出してみせた。

 初期楽曲を中心に、既存曲に大胆な破壊と再生を施してリスナーを驚かせた『bleach』を掲げた本ツアーの目的は、真緒いわく「どの時代からSadieを知った人でも共有できる空間を作る」こと。必然的に新旧取り混ぜたメニューはシンプルかつ素晴らしく流れのスムーズな3部構成で贈られた。幕明けの「Jealousy」からキャッチー&メロディックな先制パンチを喰らわせると、まずはSadieの十八番であるヘヴィチューンをスリリングに畳み掛ける5人。力みゼロの手慣れた風情で「頭振ってかかってこい!」と容赦なく煽り、それに応えるオーディエンスの狂乱はあまりにも統率のとれたもので、もはや一種の儀式のような厳粛さがあった。

 一転、ミステリアスなSEからオルゴールの音が流れ出しての「溺れる魚」では、オカルティックなサウンドとサイケデリックなライティングが妖しいムードを演出。そこから始まった第2ブロックでは、ダイナミックな景のドラミングとドラマティックな真緒の歌唱を軸に、ディープな世界を多彩に繰り広げてゆく。中でも苦悶のスクリームにステージ全体がうねる「淡き群青」、ボーカルの凛とした響きが場内を静まり返らせた「追恋の華」の切なさは凄まじいものだった。妖艶から慟哭まで、彼らの表現幅は実に幅広く味わい深い。

 場内の静寂をダンサブルなSEが歓声による喧噪に変えると、「STARRING」以降はフロアをヘッドバンギングの海と化す凶悪チューンの連続で、クライマックスへと一直線に駆け上がる。ギターに加えて“飛べ!”“踊れ!”“歌え!”と積極的にオーディエンスを先導し、時に凄まじいシャウトを放って真緒をサポートする美月(G)。通常は舞台後方に控えながら、ここぞという場面でグッと客席間際まで迫り出し、究極の押し引きで絶対的な存在感を放つ亜季(B)。そして、最新曲「bleach」では巧みなタッピングを披露する等、高みを追求しつつも奔放にパフォームする剣(G)と、弦楽器隊も自らの個性と武器をいかんなく発揮して、ステージを彩る。また、ヘヴィなバンドサウンドのみならず、『bleach』でSadie最上位のデジタルチューンへと驚愕の変貌を遂げた「Sexual affection」等、ミクスチャーな要素を大胆に取り込んで、音楽的間口を広げていたのも特筆すべき点だ。

 しかし、最後は美月がアコギを奏でる「嘆きの幸福」で、寂寥感の残る幕切れを。思考を奪う勢いと心地よいメロディ。そして滑らかな展開は、Sadieの核を保ちながらも純粋に音の波動で心と体を高ぶらせて、“音を楽しむ”と書く“音楽”の原点に立ち返ったエンターテイメントを創り上げてみせた。エモーションで巻き込み、押し切るライブが特徴的だった彼らにとって、それは確実に一つの進化と呼べるものだろう。

 アンコールでは秋のアルバム発売、それに伴って真緒いわく「ドカン!とでっかいツアー」を行うことを発表。昨年10月にフルアルバム『MADRIGAL de MARIA』、今年5月にミニアルバム『bleach』と発表してきて、1枚のシングルも挟まずに再びアルバムをリリースするのはSadie史上前代未聞のことである。フロアから沸く喜びの声に応えるべく、以降「死んでくれるか!? 狂ってくれるか!?」と計算抜きの自由なアクションで放たれたのは「クライモア」等、Sadieファンにはお馴染みのアッパーチューンばかり。「METEOR」では満場の手拍子を受けて“守りたいものがここにあるから”と歌詞を歌い変えた一節が心に突き刺さり、続く「サイコカルチャー」では“存在を証明しろ。お前たちの居場所はここだ”という真緒の号令によるヘッドバンギングで、場内一丸となって文句ナシの一体感を見せつける。

「生きてるか、東京! 素直に生きてるか!?」(真緒)

 オーディエンスのみならずメンバーもハイテンションに荒ぶり、亜季までもがお立ち台に上がった代表曲「迷彩」でヒートアップし切ると、ピアノの音色が流れて真緒のアカペラから贈られたのは「サイレントイヴ」。激情に流されることなく、クリーンな歌声で届けられたSadie最高峰の切なチューンは、哀しい諦めの裏に温かな優しさを醸して、今までにない清々しさへとオーディエンスを誘う。そして、ツアータイトルに籠められた“心に積もった黒い闇を互いに取り払う”というテーマを、見事に叶えてみせたのだ。

「僕たち、ちゃんと続きます。ちゃんとアルバム作って、ツアーして、皆のところに帰ってきます。お前らと出会って、ライブして、別れて、また新しい旅立ちをして——。その繰り返しがSadieなんやと思います。こうやって会いに来てくれるお前たちを、まだまだ守らせてください。また辛くなったら、葛藤したら、Sadieに会いに来たらええねん!」(真緒)

 ステージを去る前に真緒が語った言葉には、Sadieというバンドを支えてくれる人々への心からの感謝が滲んでいた。生まれも育ちも異なる人間が集まり、一つの創作表現を世に問うて、長くバンドを続けるというのは並大抵のことではない。しかし、そこにシンパシーを感じてバンドを愛し、求める人々が存在するかぎり、彼らの“帰るべき場所”としてSadieは其処に在り続ける。そして繰り返される出会いと別れの中で、互いを成長させてゆく——。それが記念すべきメモリアルイヤーを前にして、Sadieの見出した答えなのだ。

Text:清水素子
Photo:江隈麗志