2023年09月25日 (月)
【ライヴレポート】<Chanty 10Year Anniversary Oneman「Chantyの世界へようこそ」>2023年9月9日(土)川崎CLUB CITTA’◆この先も一歩一歩を大切に積み重ねて、繋がった無数の赤い糸をたどってたくさんの人達のもとへ──。
REPORT - 18:00:52Chantyが10周年を迎えた。
自らの意志で始めたものであっても、どんなに大切なものであっても、何かを10年間継続することは本当に難しい。
それがバンドという“複数の人間が人生を懸けて目標と向き合い続けるもの”だったなら、その難しさは更に増す。
昨年9周年ワンマンのステージ上で、「僕らChantyは来年9月、O-WESTでの周年公演を一旦お休みして、自身最大のキャパを目指して活動していきます。」と、10周年でバンド最大キャパの会場に挑戦することを宣言してから1年。あの時はフロント3人+サポートドラムという体制で、ライヴや楽曲のクオリティーは変わらず確かなものであったけれど、バンドのメンタル面にはどこか拭えぬ不安や葛藤がついてまわっているように感じられた。その中でこの宣言をした彼らの“前に進むんだ”という強い想いは、自らの道を見事に切り拓いていく。
9周年公演から僅か2ヶ月後の11月、何度かサポートにも入っていたドラム・shotaが正式加入。パワフルでチャーミングなドラマーをメンバーに迎え入れたことは、サウンド面のみならずバンドのモチベーション面にも好影響をもたらした。
加入直後からスタートした二進化十進法ツアーに始まり、新体制初の音源となるシングル『散花』のリリース、芥の喉の手術を乗り越えて挑んだ電光石火の轟音踊れや踊れいばら道ワンマンツアーからのイベントツアーへの参加、地上波音楽番組に初出演を果たしたシングル『piranha』のリリースと、驚異的なスピードで新体制のChantyを確立していった。
そして迎えた、2023年9月9日・川崎CLUB CITTA’。10年前の初ワンマンは当日の午前中に台風直撃でハラハラしたという彼ら、10周年の今回も進行の遅い台風の行方に直前までやきもきさせられたものの、家を出る頃にはすっかり天候も回復。
記念すべき日を共に過ごそうと駆けつけた多くのファンの期待が高まる中、BGMが鳴り止んだ場内にはフィードバックノイズが。
ステージを覆う緞帳が開くと、目の前に広がったのは蒼く深い水底の世界。透明な球体たちが、水中を漂う気泡のように浮遊している。
shotaのシンバルのカウントから重厚なサウンドが特別な1日の始まりを告げ、フロントに立った芥が語り出す。
「いつだって悲しみだらけのこの街で、答えをくれてどうもありがとう。やっと今日に辿り着くことができました。最高の1日にしましょう。10th Anniversary Oneman『Chantyの世界へようこそ』、始めます。」
オープニングに選ばれたのは『フライト』。勢いよくステージ際へと飛び出してきたメンバー達を、オーディエンスの無数の手と笑顔が迎え入れる。大切な1曲でこれ以上無いほどの最高のスタートを切ると、蒼い世界から一転し真っ赤な照明に照らされた『戯れ事』では4人の奏でる音の塊が波のように押し寄せて瞬く間に広い空間を呑み込んでいく。
「あっという間に終わっちゃうんだって、かかって来いよ!」1人1人を見据えながら芥が叫び、早くもコールアンドレスポンスの応酬となった『無限ループ』。白のギターが鋭利に切り込み、shotaの力強いドラムが派手に彩れば、芥と野中はドラム台の前でヘドバンの煽り合いを見せる。一斉にジャンプしタオルを回すフロアの一体感は何とも壮観で、開始早々場内の温度が急上昇していくのを感じた。
「聞こえてますか?見えてますか?on drums、shota!on guitar、白!on bass、野中拓!on vocal、芥!そして、ここに居る全ての“おまえたち”。一緒に創りたいと思います、Chantyの世界へようこそ!」
10年目のこの場所に辿り着いたお互いの存在を確認するように、メンバー1人1人と今日という日を共に創る“おまえたち”をコールすると拍手が沸き起こる。
「10周年、来られました。ありがとうございます!だからと言って、今日という日が全てではないですよ。今日はワンマンライヴですけど、僕達がこの10年間で重ねてきた数百本のライヴステージとの対バンのような気持ちで臨んでおります。過去・未来関係無く今日が一番になる1日にしたいと思いますので、力を貸してくれるか?」
“もちろん!”と言わんばかりの大歓声を受け止めると、「忘れられない証明を創ろう!」と『絶対存在証明証』を叩きつけてみせた。
「川崎CLUB CITTA’で、大切な大切なあなたたちを『ミツケタ』。」
赤と紫に染め上げられた空間で次第にエスカレートしていく想いを募らせながら、Chantyの世界は徐々に深い場所へと潜り始める。
「路地裏に追い込んで見つけたあなたをどうしたいかと申しますと、『貴方だけを壊して飾ってみたい』。」
思わずゾクッとさせられるあまりにも美しいライヴ構成が、観る者をますます深い場所へと引きずり込んでいく。想いの強さ故に屈折してしまった、どこまでも純粋な歪んだ愛情と独占欲。渾身の力を込めた歌声に心の悲鳴のようなギターの音色が絡みつく。五感の全てをステージに持って行かれて呼吸さえ忘れそうになった頃、座り込んだ芥がピンスポットの下で譫言のように言葉を紡ぎ出す。
「ここはきっと、濁った水槽。連れてってくれるのをずっと待ってる。いつも先に消えてしまうから、今度こそ先に消えたいよ。真っ白になった記憶が真っ赤な月明かりに染まったら、今宵もまた“さようなら”。」
『piranha』の曲中での語りと世界が切り裂かれるようなイントロから流れ出したのは、『謳う心臓』。深い深い水槽の底で、もがき彷徨いながら描き出されていく感情。心に迫る歌声とサウンドから生まれる張り詰めた緊張感とゆらめくような浮遊感は、Chantyにしか創り出せない世界だ。ヒリヒリと胸を抉られるような感覚すらも、次第に心地よく感じられていく。
“どうかわたしを見つけられますように”
激情的な叫びから、変拍子のリズムに乗せた澄んだギターとバイオリンの音色が重なり合って『piranha』へ。青と白の光に照らし出された美しい海中世界で、尾ひれを揺らしながら自由に泳ぎ回るピラニアの姿がステージ上のメンバーに重なって見えた気がした。
暗転から深い蒼が射し込むと『piano#4』が流れ出し、手にした本をそっと開いた芥が感情を込めて言葉を大切に重ねていく。
「またどこかに行ってしまった君を探して、朝焼けをたゆたう私は今日も一人。しけった海で迷子になって、交わした言葉の行方を探しています。
停止線を跳び越えて偶然辿り着いた今日は何よりも尊いとわかっているはずなのに、いつからか想い出と未来のことしか見えなくなってしまったのかもしれません。
だってそうでしょう?
閃光花火のように一瞬で散っていく時間が終わってしまったら、君の今は私のものではなく、私の今は君のものでもない。そんな当たり前が、どうしても受け入れがたいのです。
終わりを始めたあの日から、何よりも終わりが怖くなりました。
明日会えたら何を話そう。明日会えたら何を歌おう。
ひたすら書きなぐった、ひたすら掻き鳴らした、『Emaj7』。」
ファンに向けた想いを綴った手紙のような言葉達にはChantyの歴史においてキーとなる大切なワードやフレーズが散りばめられていて、10年間の様々なタイミングで紡がれてきたものが全て繋がって今日という日に辿り着いたのだと改めて感じて胸が熱くなる。
作曲者の白が「落ち着きの中に滲み出るエモーショナルさがある。」と語っていた『Emaj7』は、やわらかさの中にふつふつと宿る内なる熱量を感じさせるChantyらしい楽曲だ。
夕焼けのようなオレンジから陽が落ちた青の世界へと、ギターを抱えてコードを掻き鳴らしている主人公と同じ時間軸を体験するような照明の演出もとても綺麗だった。
リズミカルなサウンドにミラーボールのキラキラとした輝きが反射した『流星群』、左右に大きく振られる手はまるで流星に照らされた水面の波のよう。その光景を「良い景色です、ずっとライヴをしていたいね。」と愛おしげに眺める4人は本当に幸せそうだ。
続く『奏色』では、「誰のものでもない、僕達とあなた達だけの、今日しかない色を創りましょう。」との言葉どおり、Chantyとオーディエンスが重ねた想いが色とりどりの光となって世界を虹色に染め上げていった。
“ずっとずっと・・・そばにいてください。”
歌に乗せられた願いの余韻の中、気付けばノンストップで8曲も演奏されていたことに驚く。Chantyのライヴの魅力として欠かせない“魅せて聴かせる”部分のポテンシャルの高さを発揮した圧巻のブロックは、間違いなくこのライヴのハイライトのひとつであった。
「ありがとうございます。発表してから、あっという間に(今日が)来ちゃいましたね。昨日の夜、こんなにも実感が無い周年は無かったんじゃないかというくらい、こんなに大層な舞台なのに何だか落ち着いている私が居ました。本当に皆さんのおかげでここに立てていると改めて思います。今日来られなかった人達、来るという選択にならなかった人達も居ると思うけれど、これまで色々な人が創り上げてくれた1日の果てに今日という1日ができあがっております。最後までついてきてください。」
一面の花吹雪を連想させるタッピングが映える『散花』。
“過去形にさせる気はないよ 傷だらけでもいいから生きて”
バンドの覚悟を感じさせるそのフレーズに、ドラマティックな展開とメロディーが相まって涙腺が刺激される。
「もうちょっといきましょうか!」とタイトルコールされたのは、全ての始まりである『終わりの始まり』。
当時、「この曲を生み出すためにChantyは誕生したのかもしれない。」と芥が口にしていた楽曲は、10年の時を経ても強く輝き続ける。
期待・不安・葛藤・希望・・・あらゆる感情を詰め込んで“世界中へ響け このメロディー”とバンドの一番の願いが歌い上げられる度、“どうか、この音楽が、言葉が、想いが、もっともっとたくさんの人のもとへ届きますように”と祈るような気持ちになるのは、きっと私だけではないだろう。
「最高だよ、CITTA’!跳べ!」グルーヴィーなドラムにアグレッシブなベースの重低音が重なる『アイシー』は、初披露からまだ日が浅いにも関わらず早くもライヴでのキラーチューンとして鋭い存在感を放っていた。
野中が喉を嗄らさんばかりのシャウトで煽り、芥が「もっと見せて?跳ぶよ!」と叫ぶと、フロアの熱は上昇の一途を辿る。
「声を貸してください!その手を貸してください!耳を貸してください!目を貸してください!」
ステージに全て集中させたまま、勢い止まらず『冤罪ブルース』に突入。「全然いっちゃっていいからね。」の言葉がオーディエンスの箍を完全に外すと、フロアは一斉にジャンプしながら横モッシュ。その様子を横目に、メンバー達は代わる代わるドラム台へ集まり嬉しそうにアイコンタクトを交わす。「CITTA’、まだまだいけるか?あげていこうぜ!」疾走感溢れるギターソロをきっちり聴かせた白が叫べば、モッシュの激しさは一層増していく。
それでもメンバーは全然足りない様子で、「さぁ、勝負しましょうCLUB CITTA’!」と間髪入れずに『m.o.b.』へとなだれ込む。
shotaがダイナミックなドラミングでフロント3人の背中を押し出すと、芥・白・野中は真剣勝負だと言わんばかりにステージ際に立ちはだかる。それに負けじと、声と拳とヘドバンで応戦するフロア。双方から押し寄せた熱がぶつかりあって激しく共鳴し、大きなひとつの塊となってCLUB CITTA’を覆い尽くしていった。
「ありがとう!ほら、やっぱりあっという間。次の曲で最後ですよ。」その言葉に思わず客席から「えーっ!」と声が上がる。
「新体制になってワンマンツアーや対バンツアーをまわらせてもらって。どうしてもバンド側は最新を押し付けたがったり、『今やっていること、カッコいいんだぜ!』と言いがちなところがあるんですけど、そうじゃないんだよなと思う。何かを続けていると、未来のほうか過去のほうにしか向かなくなってしまうところがあって。“ああしたかった、ああ在りたかった”“ああ在りたい、こうなりたい”・・・じゃあ、今は何なんだよ?というところが疎かになってしまう自分が居るなと感じたんです。」
“今”は本当に一瞬でしか無くて、すぐに通り過ぎて過去へと変わってしまう。けれど、未来はその“今”の積み重ねによって生まれるものだから、それを疎かにしてしまっては望む未来を掴むことなどできない。
「過去と未来を繋ぎ合わせたこの場所で、いつでも会えたらいいなと思っています。10年、11年、12年・・・わからないけれど、まだまだ歩きたいんですけど、いいですかね?」
すぐさま送られた大きな拍手に「お付き合いよろしくお願いします。」と少し照れくさそうな笑顔を浮かべてみせた。
本編ラストを飾ったのは、Chantyとファンを繋ぐ絆のような曲である『赤い糸』。これまでの全ての出会いへの感謝と、今日この日にこの場所で出会えていることの喜びを噛みしめるように演奏する姿が胸に迫る。エンディングで繰り広げられたメンバーとオーディエンスによる「ららら」の大合唱は何ものにも代えがたいあたたかさと尊さに溢れていて、10年間で彼らが手にした一番の宝ものが何かを再確認させてくれた。
「最高です!どうもありがとう、Chantyでした!」
大きく手を掲げる芥、笑顔を見せる白とshota、深々と一礼した野中。
感慨深げにフロアを見渡し、ステージを降りた。
すぐさま上がったアンコールの声。Tシャツ姿でステージへと戻った4人は、今日のそれぞれの緊張具合について語り出す。
いつもは緊張してしまうと言う野中は、「こうしてCLUB CITTA’でライヴをしていてもまだ全く実感が無くて、今でも“いつCITTA’でライヴするんやろ?”って思ってる。実感が無かったから、緊張もしなかった。生まれて初めての感覚で不思議です、10周年にして僕の中で何かが起こっています。」と自分でも予想していなかった状態に少し戸惑っている様子。
一方の白は「今日は凄い緊張したから、『緊張してる!』って口に出して言いました。自分で緊張していることを認めて、緊張した上でライヴをやろうと思った。」と語り、アンコールまできて緊張から解放されてとても気持ちが良いと笑う。
そしてshotaが「緊張はしましたけど、始まってしまえばこっちのものだから。」とバンドの土台を支えるドラマーらしく頼もしい言葉を放つと、Chantyでは初披露となったフルサイズのドラムセットの話題へ。真っ白な要塞のようなセットはこの大舞台に最高に映え、みんなに促されて踏んだバスドラの凄まじい音圧には驚きの歓声が上がった。
その様子を微笑ましく眺めていた芥が最後にマイクを取り、「何だか、凄く嬉しい。“実感が無い”ということは、10周年にして僕らの目標である“当たり前じゃない当たり前”に一歩近づけたんじゃないかなという気がしています。その瞬間その瞬間、今日にしかできないことを創りたい。」心に刻むようにそう口にすると「大切な曲ができました。10周年に思ったことを書いた曲です。」と、会場限定でリリースされた新曲『今日という日のこと』を初披露してくれた。
幾度も壁にぶつかり別れを経験しながらも自分達を信じて諦めずに進んで手にした今日の景色は、Chantyでなければ見ることができないものだった。これまでに出会えた全ての人達への感謝と、これからも繋がった赤い糸を大切に歩んでいくという誓い。この10年の奇跡と軌跡をたどるような、Chantyらしいエモーショナルさが満載の素敵な楽曲だった。
最新曲で10周年の想いをしっかりと伝えた後「もうちょっと声を聞かせてもらえますか?」と『おとなりさん』でフロアを温め、「on drums、shota!」とコールされたshotaが魂の宿ったショートドラムソロで場内のボルテージを一気に引き上げて『透明人間』のイントロへと繋ぐ。
野中と白がマイクを掴んで煽り合えばフロアもそれに続いて声を上げ、楽器陣の振り切った演奏に触発されるように芥の歌声も一層熱を帯び、あっという間に音の渦へと呑み込まれていった。
「ありがとう。5人で始まったバンドがメンバーチェンジを経て、今こうして4人体制で活動しているわけですけど、僕らは(別の道を歩んでいる元メンバー達も含めた)7人の意志を背負ってステージに立っているつもりです。」
彼らのその姿勢は、セットリストにも表れていた。周年やワンマンに限ったことではないが、Chantyほど新旧の楽曲を織りまぜてライヴを行っているバンドはそう居ないと感じる。活動期間が長くなるほど新曲も増えるのだから、初期の楽曲の出番が段々と少なくなってしまうのもやむを得ないことかもしれない。でも、彼らは分け隔てなく全ての楽曲を愛して、バンドと共に成長させながら演奏し続けている。それはきっと、どの時代にChantyと出会ったファンにとっても嬉しいことなのではないかと思う。
「そして、その瞬間その瞬間に出会えたおまえたちと一緒の時間を創れていることを本当にありがたく思います。こんなに幸せな気持ちって、なかなか無いなって。今日に辿り着けた嬉しさと・・・もちろん、この空間へのとんでもない悔しさもある。それをぐるぐる丸めて体感できていることが、めちゃくちゃ幸せだなって思います。まだまだ4人でやりたいことを形にしていきたいので、また会える時に何かぶつけ合って、投げて投げ返しての時間を一緒に続けて、答えを探していけたら良いなと思います。どうぞよろしくお願いします!」そう言って頭を下げると、場内はあたたかい拍手に包まれた。
「次がラストの曲になります。」と紹介されたのは『最低』。楽し気にジャンプを繰り返すフロア、shotaの軽快なリズムに合わせて揃った手拍子に「良い景色!絶対にまた続きをやりましょう。」と笑顔を見せると、大歓声と拍手に見送られて一度目のアンコールを終えた。
それでもまだ祝いたりないと言わんばかりに沸き起こったアンコールに「あと2曲だけやるね。」と再び登場すると、この場所に居る全ての人に向けて今の想いを伝えてくれた。
「今日はありがとうございます。10周年、本当に凄いことだと思うんですよ。10年前、僕がサッカーをやめてどん底に落ちたくらいの時にもうChantyは始まっていた。バンドが10年続くって本当に奇跡だなと毎回思っています。僕は加入して1年経っていないですけど、こうやって素敵な景色を見れることを本当に嬉しく思います。これからもどうぞよろしくお願いします!」(shota)
「今日はお集まりいただき、ありがとうございます。Chantyを組んだ10年前はちょっと現実に冷めていた時期でもあって、『当たり前なんてない、バンドはいつか終わる。』と言っていたんです。それが、Chantyを続けていく中で“Chantyが大好き、ライヴも大好き、みんなに会えることも曲を聴いてもらえることも凄く幸せ”という気持ちになって、『みんなの“当たり前”になりたい。』と思うようになった。そして、今。さっき演奏した『今日という日のこと』の歌詞に出てくる“当たり前じゃない当たり前を描いて”という言葉が自分に刺さり過ぎて。今は“当たり前じゃない当たり前”って本当にあると思っているし、自分はそうなりたいと思っています。10周年、本当にありがとうございました!」(野中)
「今の気持ちをひとことで言うなら、さっき芥さんも言ったように今日に関して嬉しいことも悔しいこともたくさんあるけれど、全部含めてバンドを続けてきて良かったなと心の底から思っています。Chantyは10周年で、僕自身はそれよりもう少し長くバンド活動をさせてもらってきて。やっぱり“もっとああすれば良かったな”とか“無駄な時間を過ごしてしまったな”と感じるようなこともあったけれど、そういう時間もひっくるめて積み重ねてここに立てていると思ったら、それも無駄ではなかったんだなって。そう考えると、これまでバンドを続けるにあたって支えてくれたファンのみんなはもちろん、メンバーや家族、関係者や仲間、全てに感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます!」(白)
「さっき大切なことを言えていなかったけれど、ここに立てているのは歴代メンバーに加えてサポートしてくれたメンバーさん達が居てくれたからこそです。そして今日の公演にもたくさんの人達が関わってくれました、本当にありがとうございました!また会いましょうね。いつだっていいんですよ。『ちょっとライヴに行くのを休もうか。』とか、『たくさん観に行きたい。』とか、いろんな気持ちがあるだろうし、どんな気持ちになってもいい、僕らはそのためにここに居るし、居れば会えるので。これからもよろしくお願いします。」(芥)
「大切な曲を。」と届けられた『君のいない世界』は、コロナ禍でライヴが次々に中止となり、これまでの“当たり前”が全て奪われてしまった中で誕生した曲。ファンの顔が見られないどころかバンドで集まることすら儘ならなかった期間に、再会を信じて立ち上がる強さと希望を感じさせてくれた救いのような曲を聴きながら、10周年が有観客・声出し可能な状態で迎えられて本当に良かったと改めて感じた。
「10th Anniversary Oneman、ラストいけますか?ひとつになりましょう。」
最後の最後に選ばれたのは、今のChantyを体現しているかのような『C』だった。
イントロからフロアが大きく揺れ、高く高く掲げた両手で打ち鳴らされる手拍子が力強くて美しい。
“かき鳴らした五線譜に 過去、今、未来 詰め込んで”
全身全霊で奏でられる電光石火の轟音は、空間を貫き縦横無尽に駆け巡る。ここに集まった全員が今この瞬間を全力で楽しみ尽くそうと放つ熱量がピークに達すると、その光景を目に焼き付けるようにフロアを見渡すメンバー達。
「Chantyでした、どうもありがとうございました!」割れんばかりの拍手と歓声がステージに向けて降り注ぐ。
「大切なことを!」と、12月にワンマンツアー『突き刺す音楽』を開催することを発表した4人はセンターに集まり、オーディエンスの手拍子に合わせて「Chanty、きたぜ、10周年!」と両手を開いた“10!”のポーズを決めると笑顔で10周年を締め括った。
「みんなの“当たり前”になりたい。」から、「当たり前じゃない当たり前を描いていきたい。」へ。
10年間の活動の中で“当たり前なことなど何も無い”と痛感するような経験もしてきたからこそ、今こうしてステージに立てていること、このメンバーで活動できていること、支えてくれる家族や仲間が居ること、何よりもライヴに足を運んでくれるファンの人達とChantyの音楽を愛してくれる人達が世界中に居ること、その全てがどれだけ尊く奇跡的なことかを彼らは心の底から理解している。
何度となく現れた高い壁や分岐点。“続ける”という選択が容易ではなかったことだってあっただろう。それでもChantyが大切だから、仲間とファンと生み出してきた音楽や空間がかけがえのないものだとわかっているから、Chantyで在り続けるために最善を尽くし走り続けてきた。誰よりもChantyを愛しているのは、Chantyであるメンバー自身。何て素敵なことなのだろうと思う。
「僕らは運が良い。」メンバーはよくそう口にするけれど、巡って来た運をしっかりと掴むことができるのは、日々のたゆまぬ努力と積み重ねがあったから。これまでの何が欠けても今日という日が訪れなかったと実感している彼らは、これからも全ての想いを背負って進み続ける。
自分達の音楽に確固たる自信を持ちながら、自然体で真っ直ぐに音楽とバンドと向き合っている今のChantyは、10年の節目を迎えて益々魅力的なバンドへと進化を続けている。
そして、まだまだ果てなき4人の旅は12月12日・club SONIC mitoを皮切りにファイナルの12月28日・新宿BLAZEまで全国7ケ所を巡るワンマンツアー『突き刺す音楽』へと繋がっていく。始動当初にコンセプトとして掲げていた言葉をタイトルに冠したこのツアー、「11年目は1周して10年+1年目の新人の気持ちで。」と語っていたことからしても、ここからまたChantyの音楽を広く世界に響かせていくという決意表明にも感じられて期待が募る。
この先も一歩一歩を大切に積み重ねて、繋がった無数の赤い糸をたどってたくさんの人達のもとへ。
過去と未来の真ん中あたりで待ち合わせを繰り返しながら、Chantyと共に“当たり前じゃない当たり前”を夢見て歩んでいきたい。
文:富岡 美都(Squeeze Spirits)
Photo: 張 尹澈
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<ライヴ>
ワンマンツアー開催決定!
■Chanty ONE MAN TOUR
「突き刺す音楽」
12月12日(火)club SONIC mito
12月14日(木)仙台MACANA
12月19日(火)福岡graf
12月21日(木)広島Cave Be
12月23日(土)大阪hillsパン工場
12月24日(日)名古屋HeartLand
-TUOR FINAL-
2023年12月28日(木)新宿BLAZE
※詳細は後日発表
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★Chanty OFFICIAL SITE★