2023年09月06日 (水)
★ロングインタビュー!★【Chanty】New Single『piranha』リリース、9月9日・10th Anniversary Oneman「Chantyの世界へようこそ」川崎CLUB CITTA’ワンマン。──“ここに辿り着くため”ではなく“この先を見るため”の1日にしたい。
NEWS - 18:00:209月9日(土)川崎CLUB CITTA’で開催される10th Anniversary Oneman「Chantyの世界へようこそ」を目前に控えたChantyが、New Single『piranha』をリリースした。
ライヴを重ねて一層磨かれたバンドサウンドにバイオリンのアレンジが映えるタイトルチューンをはじめ、3曲それぞれが新たな試みを取り入れながらまたChantyらしさを深め広げた作品となった。
地に足つけて歩み続けてきたバンドが10周年に挑む過去最大規模のワンマンと、その先に広がる未来に期待しよう。
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新体制初のワンマンツアーは、ファンの人達との心の距離が更に近付いたツアーだったと思います。
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――新体制になると武者修行ツアーに出るイメージのあるChantyですが、電光石火の轟音踊れや踊れいばら道ワンマンツアーをとても良い形で終えられたようですね。
芥:そうですね。shotaくんを紹介するツアーでもあり、僕の喉の手術からの復帰ツアーでもあり・・・“頼る”というとまた言葉が違ってしまうけれど、個人的にはこれまでよりもステージ上でファンの人達のパワーに支えてもらうことを覚えたツアーでしたね。
白:バンドとファンの距離が近くなったライヴというのかな。
芥:うん。新体制初のワンマンツアーは、ファンの人達との心の距離が更に近付いたツアーだったと思います。これまでみたいに「僕らの世界を見せつけます!」というだけではなくなった。というのも、自分の生誕ライヴ(4月29日の長野公演)のアンコールで喉を嗄らして、声が全く出なくなってしまったんです。その時、初めてフロアとメンバーに対して「よろしく頼む!」と預ける経験をしたんですよね。これは良くも悪くもですが、ステージを作るにあたって僕の中にはずっと“見せてなんぼのChantyなんだから、自分が見せつけなくてはいけない。”という使命感みたいなものがあったんです。まずは自分達の世界をフルで見せつけて、どちらかというとオーディエンスは受動的なのがうちのステージの真骨頂な部分かなと思っていたし、それはそれで今もバンドの魅力のひとつとして大切なんですけど、それだけではなくて「こっちは任せろ!そっちは頼む!」と支え合いを求めることができるようになった。
――一緒に作り上げる意識が強くなった?
芥:はい。そういう意識は以前から持っていたはずなんですけど、“自分達の色”に頑なになり過ぎていた部分があったんだと思う。自分自身のステージに対する意識が結構変わったツアーでした。思えば、その感覚ってサポート体制の時から繋がっている部分もある気がします。あの時は正直メンバーも不安が無いわけではなかった。でも、後ろからはサポートメンバーさんが背中を押してくれて、正面からはファンのみんなが全力で支えてくれました。あの時に改めて感じた求め合う感覚の延長に、今回のワンマンツアーがあるのかなと。
野中:このツアーは芥さんの喉の手術明けで、日程的に初日に復帰がギリギリ間に合うかどうかくらいの感じだったんですね。ぶっちゃけ、可能であれば延期も視野に入れるかという話も出ていたくらいだったし、芥さん自身も術後にちゃんと声を出すのは初めての状態でスタートしたので、開始当初はメンバー全員そこに対する心配が一番大きかったと思います。それで迎えた初日の千葉、コロナ禍でずっとできなくなっていた声出しを解禁して、フロアから届くファンの人達の声を聞いて・・・声が聞けるって、コロナ禍前まではわりと当たり前のことだったじゃないですか?みんなの声が聞けなくなるなんて、人生で一度も考えたことが無かったし。ここ数年、ファンの人達はずっと目線や拍手や振りで想いを届けてくれていたけれど、そこに声が戻ってきて、こっちがやったらやった分だけ反応が返ってくる光景を目の当たりにした時、嬉しいとか以上に“凄いな!”と思ったんです。それはきっとコロナ禍を経験しなければ得られなかった感情だし、野中自身は嬉しいとかありがたいとか以上に“凄い!”と感じたツアーでした。しかも、ツアーファイナルでshotaくんの地元の水戸ライトハウスに立った時、みんなの声がめちゃくちゃ大きく聞こえたんですよ。ファンの人達の熱が物凄く伝わってきて「良いドラムを見つけたでしょ!」と誇らしい気持ちになったし、各地を良いモチベーションでまわって最終的に「どうだ!」って気持ちに着地できたツアーでした。
shota:ワンマンツアーで曲数も多かったですし、自分的には更に成長することができたツアーでした。
野中:ほぼ全曲覚えたよね。
shota:(全曲制覇まで)あと数曲になりましたね。ツアーと並行してレコーディングもあったし、大変ではありましたけど楽しかったです。なかなかできない経験ですから。
――地元はいかがでしたか?
shota:地元に帰ること自体が久々だったんですよ。でも、実家には帰れなかったから・・・。
野中:高速で「ここで降りたい。」と言っていたよね。
shota:その1週間後、仙台に行く時にも通過して。
野中:「(近くを通っているのに)何で帰れないんだろう・・・。」と言いながら(笑)。
芥:本当に地元が好きだもんね。
shota:特に何かがある場所というわけではないですけど、家が大好きなんです。
野中:茨城を通る時、shotaくんは必ず運転するんですよ。
shota:常磐道は運転したいですね(笑)。
白:運転したい道があるんだ!(笑)
野中:その時点から熱は伝わっていましたけど、ファイナルの日のshotaくんは入り前くらいから明らかにテンションが高かったですね(笑)。
芥・白:高かった!(笑)
白:水戸LIGHT HOUSEという会場がそうさせた部分もあるだろうけど。
芥:素敵なライヴハウスだったね!
一同:本当に!
野中:ライヴハウスのスタッフさんが、昔shotaくんがコピーバンドで出演した時のことを覚えていてくれて。
shota:そう、「あの時の!」と言ってくれた。
――それは嬉しいですね!
野中:熱い気持ちになっちゃいますよね。
――ファイナルを凱旋公演にできて本当に良かったです。
芥:どうしてもそうしたかったんですよ。
shota:メンバーもファンの人達も「また水戸に行きたい!」と言ってくれるので嬉しいです。
芥・白・野中:必ず行きます!
――白さんはいかがでしたか?
白:自分が加入した時もそうでしたけど、新体制になってワンマンツアーをまわると本当にバンドのまとまりが良くなるし、地が固まるというか、しっかり土台作りができました。ツアーの一番の利点は、個人的にもバンド的にも反省点をすぐ次に活かせるところで。ツアー以外のイベントのブッキングだとどうしてもライヴ日程に間隔が空くし、思い立ったことにすぐ挑戦できなかったりもするけれど、ツアーだと感覚が掴みやすいんです。そういう意味でも、今のバンドの体制を形作るのにとても良いツアーだったなと思います。
――移動含め、メンバーと一緒に居る時間も長いですしね。
白:そう、人間的にも深め合っていけるし。
芥:ワンマンツアーだと対バンが居るわけじゃないから、話をするのもメンバーだけだしね。
野中:静かにしていたい時には無言でも居心地よく過ごせるし、お互いに変な気を遣わずに良い状態でまわることができたツアーでしたね。
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疑いながらも信じながら、良いバランスで活動できています。
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――そしてイベントツアーへと続きましたが、ワンマンツアーでバンドがまた強くなった状態で挑めたのが尚良かったのではないかと。
一同:確かに!
芥:個人的には、ワンマンツアー中から次のステップである対バンツアーを想定した気持ちでやっていたところがあります。まぁ、初日の千葉LOOKの僕は“歌えて嬉しい!”という気持ちが爆発した日でしたし、その1週間後の長野では早速喉をいわしたり(※傷めたり)もしましたけど(苦笑)、さっきもお話したとおりそこで気付けたものもあって。コロナ禍が明けて、オーディエンスがメンタル面だけでなくフィジカル面でも楽しむ部分が増えてくる中で、今まではずっと“うちは騒いだり盛り上げたりするだけのバンドではないので”とちょっと斜に構えた部分があったんですよね。でも、いろんなバンドと戦う上ではそういう部分が必要になってくる場面もあるし、迎合ではないChantyなりの戦い方をここで模索して対バンツアーに臨みたい気持ちがあったので、ツアー開始早々に“(ファンと)一緒に作ろう”という意識になれたことはとても大きかったです。ワンマンツアー後すぐにイベントツアーに突入して、以前ならもう少しアウェイを感じたりもしたと思うけれど、今回はもう盤石な気持ちで臨めました。うちはうちだと自信を持って言えると同時に、“他とは違うんだ”と変に斜に構えたようなところも無いし、このふたつのツアーは本当にその日その場所に居る全員に伝えたいという気持ちが増したツアーでした。
白:コロナ禍の影響でイベントライヴ自体が無くなった期間が長くて、うちも含めてみんなワンマンでの活動が多くなっていたじゃないですか?ここにきて改めてレーベルに所属して、イベントツアーをまわってみて・・・井の中の蛙じゃないですけど、今まではあまり対バンする機会が無かったバンドや久しぶりに一緒になったバンドのライヴを観たら、みんなパワーが増しているなと体感したんですよね。そこで改めてバンドと自身を振り返って、もっともっと見返さなきゃなって気持ちになれた良いツアーでした。
野中:成長という言い方が適しているかは難しいですけど、僕ら自身も他のバンドもイベントライヴが無くなっていた期間にレベルアップさせた部分があるのは確かだし、コロナ禍が明けたことで対バン相手達も更にブーストがかかってもう猛者なわけですよ(笑)。結構前からうちのセットリストはイベントも含め芥さんが考えてくれているんですけど、たぶん前までの芥さんならもっと対バンの色に寄せてくることもあったと思うんです。最近は一切そういうことが無くて、どんな時でも“今のChantyにできる最高のものを見せよう”というメニューを組んできてくれる。
芥:そうですね。でも、もっと伝えらえるはずなんですよ。それぞれのバンドにブーストがかかっている中、うちはうちのブーストをかけていかなくてはいけないし。例えば、今までは自分達がちょっとアウェイを感じるような環境であったら、“わかってくれる人にだけわかってもらえればいいや”という気持ちになりがちだったんですね。今はもう、その場所に居る全員にわかって欲しいし伝わって欲しいと思ってる。
――“自分達の最高のものをぶつければ、何かしら響いてくれるはず”という自信があるからこそですね。
芥:そうですね。今、楽しいですよ。疑いながらも信じながら、良いバランスで活動できています。常に頭の中で考えているから、最近はビリビリしていますけど。おそらく、レーベルに所属したことも大きいですね。当然だけど、所属することによって拡げてもらえる部分もあれば、自主でやっていた時のようには何でも自由にできなくなる部分もある。メンバーだけで完結していたところに第三者が介在してくることによって、これまで以上に自分達がしっかりしないといけないなという意識が芽生えました。
――どんな事務所に所属しても、バンドが自立して意志をもっていなければ成功できないと思います。そう考えると、自分達の譲れない部分と第三者の意見を受け入れる部分のバランスが取れるようになったであろうこのタイミングでの所属はベストだったのでは?
芥:そうかもしれない。でも、所属を決めなければバンド自体がそうなれていなかったかもしれないとも思います。
――バンドに限らない話ですが、自分達だけでやっていると人間はどうしても面倒なことを避けたり、やりたいことだけをやろうとしてしまうと思うんです。でも、その面倒なことを通ったからこそ得られるものも確実にあって。
芥:そうそう、まさに!二進化十進法ツアーまでは、わりと“良いところ、やりたいこと、得意な部分を伸ばしていく”という方向で活動してきたんですね。ベルとDevelop One’s Facultiesという関係性の深い2バンドとまわるツアーだったし。そこから、今回のワンマンツアーとレーベルツアーでまた自分達の段階というか見方や在り方が変化して、良い形で今に繋がったのではないかと感じています。
――確かに。そして、早速叶ったことのひとつが、今回のタイトル曲である『piranha』のテレビ東京『超音波』8月度エンディングテーマのタイアップとスタジオ出演でした。
野中:メンバーそれぞれに考え方が違うところもあるかもしれないですが、そういう“自主でやっていたら手が届かなかったもの”を求めるために所属を決めた部分もあるので。
芥・白・shota:うん。
野中:タイアップが決まったこともスタジオ演奏ができたことも、めちゃくちゃ嬉しかったのは当然なんですけど、今回の1本だけではなく、この先もっともっとプロモーションしてもらえるような活動をしていかなくてはいけないと思っています。今回『piranha』で出演させて頂きましたけど、次作もそのまた次もこういう機会をとってきてもらえるように頑張っていかないと。曲に関しては事務所の人達も「とても良い!」と言ってくれているので、自分達も今以上に自信を持ってやっていかないとですね。
――ファンの方達も喜んでくださったことでしょう。
芥:とても喜んでくれましたね。勿論、周囲の人達の力があったからこその今回ではありますけど、本当に実力が伴っていなかったり内容が良くなかったりしたらそこまでたどり着くことはできないわけで。だからこそ、あの場所もファンの人達が連れて行ってくれた場所のひとつだと感じるし、僕らは常に“相棒はあなた達(ファン)なんだよ”と思っているので、これからもこういう恩返しを重ねていけるように頑張りたい。もっともっと沢山の人にChantyの音楽を知ってもらいたいですしね。“あなた達と一緒に作った世界を新しい環境で拡げていきたい”という想いを、ライヴでも一層伝えていけたらと思っています。
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Chantyは、一曲入魂感が強いバンド。
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――作品のお話に移ります。10周年を目前にどんな作品が誕生するだろうとワクワクしていましたが、ライヴを重ねる中でより強固に培われた新体制ならではのバンド感と進化を感じさせると同時に、“とってもChantyだ”とも感じられる1枚になったなと。
野中:タイトル曲の『piranha』は、前作の『散花』の時点で既に原型があったんです。
芥:当初は、『散花』に収録される予定だったんですよ。
――そうだったんですか!
野中:その予定で事務所のミーティングに持って行って「この曲を収録しようと思います。」と話をしたら、「1枚の作品の中に、自分達が思う“タイトル曲にふさわしいと感じる曲”を重ねないほうが良いよ。」と言われたんです。
――以前から「(収録曲の)どれがタイトル曲という意識は無い。」と仰っていましたし、おそらくずっと“収録した3曲はどれもメイン”という意識で制作していらしたと思うんですね。でも、そういう想いを知らない大半の一般リスナーは“1曲目がタイトル曲で、あとの2曲はカップリング曲”という印象を持って聴いてしまうから、事務所の方が仰ったとおり『piranha』を2曲目に収録するのは勿体なかったのではないかと。
芥:そうなんですよね。それで「『piranha』は次の音源のタイトル曲にしたほうがいいんじゃない?」という話になって。ただ、そのミーティングがレコーディングの1週間前で、そんな時期に急遽「これは次の作品に。」となったものだから・・・。
――もしや、カップリングに収録する曲が無い?
野中:そういうことです(笑)。
芥:急遽、野中くんのストック曲の中から白くんが引っ張り出して作ったのが『戯れ事』でした(笑)。
――素晴らしい!
野中:言い方が難しいですけど・・・作品に収録する曲は全て自分達が自信を持って良い曲だと思えるものであることは大前提として、その上で「タイトル曲とカップリング曲が、必ずしも同じベクトル・同じ熱量である必要は無い。」という考え方を学んだというか。
白:ある意味、その言葉が救いになった部分もありました。
野中:肩の荷が下りた感はあったよね。
白:うん。Chantyは一曲入魂感が強いバンドなので、これまでは「さらっと作ってみたら、意外と良かったじゃん!」みたいなパターンがあまり無かったんですよ。今回、第三者からそういう言葉をもらったことが、逆に曲作りのモチベーションに繋がったところはありました。
芥:収録した全ての曲に一曲入魂していたからこそ、ずっと“表題曲は無し”という形でリリースしていたんですよね。環境が変わったことでこれまでとはリリースの形も変化しましたけど、ちゃんと納得できる理由だったからこそ結果的にモチベーションの上昇に繋がったし。何より、『piranha』みたいな曲に対して「良い曲だから次のメインにしよう。」と言ってもらえたことが嬉しかった。
野中:鬼変拍子な曲だからねぇ。
白:“こんな変拍子の曲を表題曲にしていいんだ!”って(笑)。
芥:正直、“良かった良かった!”と思ったよね(笑)。ちゃんとうちにしかできないものを広めようしてくれる意志を感じたので。
――バンドの武器を理解して下さる方達との出会いに恵まれて良かったです。
芥:本当に。まぁ、レコーディングまで1週間しかなかったのはしんどかったですけど・・・主に、白くんが(苦笑)。
野中:本当にありがとうって思ってる(苦笑)。
白:いやいや!
芥:白くんは、今回も大変だったんですよ。『piranha』のカップリングの『アイシー』も、フェリーの中で作っていたもんね。
白:あまりにも時間が無くて、フェリーで移動中に作曲機材を持ち込んで、酔い止めを服用しながら作りました(笑)。
野中:フェリーで“海を見に行こうかな!”と思ったら、白くんがギターをタッピングしていて(笑)。
芥:海の男達の中で1人、ギターを抱えてタッピングを・・・そのエピソードにちなんで“船出”とか“航海”みたいな言葉を歌詞に入れられたら良かったんですけど、ちょっと無理でした(笑)。
一同:(笑)
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ひとりになった時、ふと“本当の自分はこうじゃないのに”と感じた経験がきっとあると思う。
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――1曲ずつ伺っていきます。タイトル曲である『piranha』、先程も“鬼変拍子”という言葉が出ていましたが、かなり難易度が高いですよね?
一同:難しいですね(笑)。
芥:楽器隊は特に大変です。
――でも、楽曲全体の印象としては変に小難しく感じさせないのが凄いなと。
芥:そう、それがうちの変拍子です。「テクニカルなことをやっているんだぞ!」とひけらかしたいわけではないので。僕がワンコーラス作った状態で寝かせてあったものに白くんが凄いアレンジを加えてくれて、余計に難しくなりました(笑)。
――ふわふわしているようで芯が強くて、浮遊感も疾走感もあって。何より、バイオリンによる“泳ぎまわるピラニア”のアレンジが素晴らしいです。
一同:そうなんです!
野中:1サビ終わりあたりの、テンション高く元気よく泳ぎまわる感じとか凄いよね。
――これまではピアノで色付けされることが多かったですが、バイオリンも映えますね。
芥:デモの段階からバイオリンを入れたいと考えていて、相談しながら制作したら期待以上の仕上がりになりましたね。これまでバイオリンを入れたことが無かったですし、楽器的にも音的にも新たなアプローチをしてみたかった。Chantyの初ワンマンツアーのファイナルでサポートしてくださったバイオリニストさんに弾いていただいたんですが、10周年のタイミングでまた一緒に足跡を残せたらという気持ちもあって。本当に良いフレーズを付けてくださいました。
――自分自身が水の中を泳いでいるかのような臨場感がありました。Chantyのライヴって、水中っぽさがありますしね。
野中:芥さんが泳ぎまわっていますからね。
――物凄く深いところまで潜ったりもしますし。
芥:潜りますね。『夜に駆ける』という有名な曲がありますが、Chantyは『夜に潜る』です(笑)。
一同:(笑)
――楽器隊のレコーディングはいかがでしたか?
野中:吐きそうでした(苦笑)。
芥:shotaくんは大丈夫そうだったよね?
shota:(食い気味に)ダメだったよ!(苦笑)
一同:(笑)
shota:リズム隊のレコーディング時点では、ボーカルのメロがフル尺で無かったんですよ。
野中:そう、芥さんの仮歌ではなくてMIDIメロしかなかったから、演奏しながら今どこにいるのかがわからなくなって。
shota:レコーディングをスタートしてみたものの、ボーカルのメロが無いとドラムが叩けないので、エンジニアさんに「ちょっとだけメロを入れてください。」とお願いして。かなり苦戦しましたよね。
野中:今回もリズム隊は一緒に録ったので、shotaくんがブースの中で叩いて、野中がエンジニアさんの後ろで弾く感じだったんですね。大体の場合は、1曲通して録り終わったら「ひとまず1回聴いてみましょう!」みたいな流れになるものなんですけど、この曲に関しては録り終わってからしばらく誰も言葉を発さなかった(苦笑)。
shota:「難しすぎる!」って絶望でしたよね(苦笑)。
野中:で、エンジニアさんが「う・・・うん、もう1回行こうか!(汗)」って(笑)。
shota:でも、そこで神が降りてきて3テイクで終わったんです。
――凄い!!!
白:速かったよねぇ!
野中:だから時間はそんなにかかっていないんですけど、めちゃくちゃ難しいですよ!それ以外の感想が出てこないです。10年間の集大成が一番難しかった。
芥:野中くんのベースが良すぎて、思わずLINEしました。
野中:嬉しいですよね、10年一緒にやってきてもそうやって言ってくれるって。
芥:本当に良いベースですよ。
――言葉にして伝えるって大切です。ギターはいかがでしたか?
白:イントロのリフは芥さんが最初に作ったワンコーラスの時点で入っていて、凄く良かったからそのまま使うことにしたんですが、全体としては色々と迷ったし難しかったですね。イントロのアルペジオやリフレインしているリフ部分の音作りは、芥さんとどういう感じが良いか相談しながら試行錯誤してかなり時間がかかりましたし、バッキングのギターをどういうアプローチにしようかも本当に悩みました。ストリングスを入れたいという話は聞いていたけれどギター録りの時点ではまだ入っていなかったし、自分自身もストリングスと同様、魚が泳いでいるようなイメージのギターを入れたいなと思っていたんですよね。結果、ウワモノで鳴っている単音のフレーズなどは、今までのChantyではあまり弾いてこなかったようなフレーズじゃないかなと。そういう意味でも、ひと捻りあった作品です。あと、今言ったようにギターもストリングスと同じようなアプローチを考えていたから、正直(音が)ぶつかると言えばぶつかるところもあったんですよ。もし、これがバンドの曲でなかったなら、俺はウワモノのギターをカットしてバッキングに徹してもいいなと考えたかもしれない。でも、これまでもうちはあまりパート同士の打ち合わせをせずに曲を作ってきて、その“整理され過ぎていない感じ”がChantyの楽曲らしさのひとつでもあると思うので、今回もアプローチとしてはストリングスと被っているけれどギターも切らないでいこうと判断して今の形になりました。そういうところでも、何となく“Chantyらしさ”に貢献できているんじゃないかと思っています。
――整理され過ぎていないけれど、うるさくは感じないのがChantyならではというか。
白:そうですね。そこは音を上手くまとめてくれるエンジニアさんの腕もあるでしょうけど(笑)。
――本当に素晴らしい演奏でした!
芥:楽器隊の話を聞いていると、こんな難しい曲を出してしまって申し訳なくなりますね(苦笑)。絶対に良い曲になるという確信はあったんですけど。
――『piranha』というタイトルを目にした時、どんな曲調なのか想像がつかなくて。
芥:もっと激しい感じを想像しました?
――ええ、正直。次に歌詞を読んで、ピラニアという題材をこういう設定で書かれたことに驚いて。
芥:本当ですか!?
――お恥ずかしい話ですが、私の中のピラニアのイメージが小学生レベルで止まっていて、“狂暴な魚”としか思っていなかったんです(苦笑)。今回、元々は草食系で1匹でいる時は極端に憶病な性格の魚なんだと初めて知って。
野中:ピラニアってそういう性格なんだ!?
芥:そう、人間と一緒なんですよ。まぁ、僕もピラニアについて詳しかったわけではなくて、『ファインディング・ニモ』を観て“魚の曲を書きたいな”と思ったのが発端だったりもします(笑)。
――歌詞に登場するのは繊細で寂しがり屋なピラニアですよね。
芥:うん、それを書きたかったです。
――“私、ここにいるのが嫌だった”、まずこの歌い出しに引き込まれました。
芥:多くの人が職場とかで思っていることじゃないかと思う(笑)。
一同:(笑)
芥:群れている時は勢い良く居られたりもするけれど、ひとりになった時、ふと“本当の自分はこうじゃないのに”と感じた経験がきっとあると思うし。
――外に出ている時の鎧をまとった自分と、家で1人になった時の自分のギャップ。
芥:そう、そこがピラニアと凄く似ているなと思ったんですよね。あと、恋愛にしろ友情にしろ、本当は好きなのに相手を傷つけてしまうことがあるじゃないですか。小学生が好きな子にちょっかいを出して泣かせてしまうような。
――想いの強さが裏目に出てしまうことってありますよね。
芥:うん、そういうところも共通している気がして。歌詞は書きやすかったです。
――水中の美しい世界に落とし込んで表現したことで、短編のムービーを見ているような気持ちになりました。
芥:元々ちょっと比喩表現的な歌詞が好きなんですけど、最近はあまり機会が無かったので、久しぶりに書いてみました。
――ライヴでは曲と曲の間を語りで繋ぐ場面がよく見られますが、曲中に語りがあるのは珍しい気がします。
芥:確かに。あのアルペジオの部分は白くんがアレンジしてくれたので、何か入れたいなと考えた結果、“これは語るしかない!”と。
野中:その部分、凄く好きですね。その前後はどちらも変拍子でわりとガツガツいっている印象だけど、そこだけはとても優しい時間が流れている感じがして。
白:嵐が去った後みたいな感じがあるよね。
野中:そう、台風一過みたいなね。ベースもそういうフレーズが弾けたし。
芥:ピラニアがそこで素に戻って“あれ?私・・・”となったような。
野中:その後、また仲間と一緒に勢いよく泳いでいく。
――芥さんはX(Twitter)に「スルメ曲だと思う。」と書いていらしたけれど、私は一聴すれば響く曲だと思いました。
野中:野中もスルメ曲だとは思わない。
白・shota:うん、思わない。
芥:本当ですか!?
野中:野中がキッズだったら、普通に“カッコいいな!”と思うような曲。
芥:それはね、スルメ族の人達の意見です(笑)。
野中:自分では、そんなにスルメ族ではないと思うんよな。歌モノで聴かせる曲のキャッチーなメロディーが好き。この曲は、まさしくそれだと思う。
shota:同じ意見です。
野中:変拍子だとかよくわからないまま聴けちゃうけど実は難しい、そんな曲だと思います。
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「明日なんて来なきゃいいのに」と思ったりもしながら、たまたま明日がきたから今日も生きてる。
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――『アイシー』は個人的な好みのど真ん中だったので、あまりのカッコよさに震えました。
一同:おぉ!
shota:実は、全体像が見えないままレコーディングしたんですけど(笑)。
野中:『アイシー』と『Emaj7』は、ボーカルのメロディーが無い状態でレコーディングしたんです。録った時点では、完成形が見えていなかった(笑)。
芥:ギリギリだったんですよ(苦笑)。『piranha』だけは、その1~2ヶ月前に別で録っていたんですけど。
野中:5月の時点で、歌録りまで終わっていたもんね。
芥:喉の手術から復帰して1週間後には録っていました。
野中:で、あとの2曲が6月にレコーディングでしたね。
――白さんがフェリーで酔い止めを飲んでまで作られたのに(苦笑)。
白:そう、そこまでしてもギリギリだったんです(笑)。結局、一度もスタジオで合わせることなく録りました。
野中:レコーディング帰りの機材車の中で「どんな曲になるんだろうね、楽しみだね!」とか話していたくらい(笑)。
芥:物凄く良い感じにオケが完成したから、僕は“ここから頑張らなくては!”と奮起しつつ。
――今作はいつもに増して休符の使い方が冴えていて、“その一拍の空白があるからこそ、その後がより映える”と感じる瞬間が沢山あるなと思ったのですが、意識していましたか?
白:そうですね、これはあまりみんなであれこれアレンジした曲ではないので元々の部分もあります。ただ、オーダーとして「この曲はドラムとベースが命だから頑張ってね!」という話をしたんですよ。それで、2人が頑張ってくれた結果です(笑)。
shota:頑張るしかなかった(笑)。
野中:『piranha』に続いて、これも吐きそうでしたよ(苦笑)。『piranha』も本当に難しいけど、ある意味『アイシー』は更に難しい。あと、Chantyを10年間やってきて初めてベースがダウンチューニングです。
芥:ちょっとボーカルが高過ぎたんですよね。
野中:そう、「じゃ、下げるか!」と。それでカッコよくなったから正解だったと思う。1音も下げちゃいましたね。
白:うちがダウンチューニングをすると、適度な重さがありつつ鋭さも残って良かった。
野中:昨今の流行りのズンズン系ではない、Chantyらしいダウンチューニングになったよね。
――これはライヴ映えするだろうなぁと楽しみです。
芥:今日のライヴで演奏したんですけど、初めてとは思えないくらい良い感じでしたね!
白:うん、カッコ良かったんじゃないかと。
野中:野中は余裕が無くて10秒くらいしかフロアを見られていないので・・・。
一同:(笑)
白:新曲を初披露する時はそうなるよね(笑)。
野中:この曲は難しすぎて慣れない気がします(苦笑)。
――そんな野中さんにも伝わるくらい、フロアに盛り上がって頂きましょう!shotaさんはいかがでしたか?
shota:ドラムはそんなに難易度が高くないので大丈夫でした(笑)。この曲に関しては、いかにグルーヴィーに叩けるかが重要でしたね。
――グルーヴィーなドラム、得意分野なのでは。
芥:そうだと思う。
shota:レコーディング前にリズム隊でスタジオに入るんですけど、拓さんが「このベースは無理かもしれない。」って言うから「頑張れー!」と応援しつつ(笑)。
野中:これまでも何度かレコーディングのベース録りで“無理かもしれない”と思ったことはあったんですけど、何だかんだできてきたわけですよ。でも、今回に関しては“本当にこれは無理かもしれない”と思いました。
白:“遂に無理かもしれない”って。
芥:自分で付けたフレーズの難易度に。
野中:10年目にして気付きましたが、そうやって自分を追い込むのが実は好きなのかもしれないですね。音楽漬けのツアー中に思い浮かんだフレーズというのもあって結果、曲にベストなフレーズをのせられたのかなと思います。
shota:そうだ、名阪の移動中にフレーズを打ち込みましたよね。
――皆さん、移動時間をフル活用ですね。
shota:それくらい時間が無かった!
――白さんも、フェリーでの作業から完成まで本当にお疲れ様でした。
白:いや、カッコよく仕上がって良かったです。Chantyの曲の中では珍しく、ちょっと遅めのテンポなんですよ。俺はわりと、速さを求めてしまいがちなので・・・(笑)。
野中:確かに、BPM平均160以上だと思います(笑)。
白:そこをグッと抑えて、遅めのBPMで押し切ってみました。
芥:そのおかげで凄く良い形にできたと思いますよ!
野中:ただ、野中が感じているのはその倍のテンポです(笑)。
芥:確かに(笑)。白くんがBPMを堪えた反動で、サビが詰め詰めのメロディーになったのかもしれない。
野中:ほぼ早口言葉みたいな速さですけど、個人的に言葉が詰まっているサビが好きなので、そういう面でも凄くツボです。
shota:一緒ですね。
白:それもChantyではあまり無かったですよね。
芥:確かに。色々なテストケースが重なった曲かもしれない。
――このタイトルを見た時、『アイシー』=I seeだと思ったんです。それで歌詞を読んだら“愛し愛せ”ときたので、『アイシー』=愛し!?と驚いたんですが、これはダブルミーニングだったりするのでしょうか?
芥:あぁ、そうですね。“I see”って、スラングだと「あぁ、了解了解。なるほどね。」みたいなちょっと嫌なニュアンスで使われることもあるみたいで。この歌詞はもう単純に僕のぼやきなんです。生きていると、ぼやきながらも呑み込んでいかなくてはいけないことが起こるじゃないですか。そんな僕のいつもどおりのぼやきが炸裂しました(笑)。
――人生ってその繰り返しのような気がします。“僕はまだ生きていたいんだろうなあ”とか“停止線を飛び越して昨日が終わったから今日も生きてる”みたいな思考や想いって、重なる人が多いと思いますし。
芥:そうそう!僕自身も“停止線を~”の部分が凄く好きですね。「明日なんて来なきゃいいのに」と思ったりもしながら、たまたま明日がきたから今日も生きてる。これはもう本当に心のぼやきでしかないですね。
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実は、『piranha』のコードがEmaj7なんです。
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――『Emaj7』は、イントロでステージとフロアがパーッと光に包まれるようなライヴの光景が真っ先に目に浮かびました。
白:9月9日の10周年ワンマンで会場限定シングルを出すことになっていて、この曲は元々そこに収録する予定だったんです。凄くわかりやすいChantyらしさがある曲だし、エモーショナルさからしても適しているなと思っていたんですけど、今作の制作時点でもう1曲、どちらかと言うと『アイシー』寄りのちょっとダーク系な曲がありまして。シングルに収録する3曲を並べてみた時、そのダーク系な曲よりも『Emaj7』を入れたほうがバランスの良い作品になるということで、急遽3曲目に『Emaj7』か加わることが決まったんです。だから、この曲も表題になり得るようなポテンシャルを持った曲なんですよね。
――確かに、これがタイトル曲になったシングルがあっても違和感が無いです。
白:それで、この曲はこれまでに作って来たエモーショナルな曲達と比べると、断トツでキーが低いんです。高音のキーは人間の耳に響きやすいし感動を呼び起こしやすいけれど、そうではない方向でも作ることはできるのではないかと。落ち着きのある中に滲み出るエモーショナルさみたいなものを上手く表現できたと思うし、それを芥さんが歌い上げてくれたから本当に良い曲になったと思います。
芥:この曲も白くんが頑張ってくれましたね。最近の彼は、「こういう曲があったら良いんじゃないか」とか「こういうものも作れるんじゃないか」という自身のアプローチも含めた可能性を、今まで以上に積極的に提案してくれるんです。このサビのメロディーは、ほとんど作ってくれました。なので、キーが高いのはAメロの頭だけっていう(笑)。
白:そうですね(笑)。
芥:白くんは自分が付けたメロであっても「変えたいなら変えて良いよ。」というスタンスで居てくれるんですけど、これはこのままが良いなと思ったし、サビを最大限に活かせるAメロ・Bメロにしたいという気持ちに駆られて。
白:サビのメロディーだけがあるって結構縛りが強いだろうし、よく繋がったなぁと思う。自分にはこのAメロ・Bメロは思い付かなかったので、凄く良い共作になりました。
――やわらかさの中にふつふつと宿る内なる熱量を感じさせる曲という印象があって、先程仰っていた“落ち着きのある中に滲み出るエモーショナルさ”はまさにそういうところなんだなと感じました。
白:うん、そうですね。
――リズム隊はいかがでしたか?
shota:純粋に良い曲だなと思いました。
野中:この曲は吐きそうにならなかったので・・・。
芥:ベース的には、今回のオアシスだったね(笑)。
野中:うん、聴いたら笑顔になる人が多い曲じゃないかなと思います。なんですけど・・・野中は結構、車の中でChantyの曲を聴くんですね。今日も聴きながらライヴハウスに向かう途中、shotaくんを迎えに行って。家の近くに到着して待っていたら、車内に『Emaj7』が流れている中、前にパトカーが止まったんです。
――お話の雲行きが怪しくなってきたような・・・(汗)
野中:警察官の方にコンコンと窓を叩かれて、職務質問されました。
一同:(笑)
野中:当然何も無いので構わないんですけど、そのタイミングでshotaくんが車にやってきて・・・。
shota:出会って5秒で職質されました(苦笑)。
一同:(爆笑)
野中:なので、リズム隊的には“出会って5秒で職質の曲”です(笑)。
――リアルタイムなお話でした(笑)。
野中:今のところ、2人の中ではちょっとテンションが下がった出来事の中で流れていた曲になっているので、これからライヴで演奏して塗り替えていきたいと思います(笑)。
芥:今回、色々あるねぇ。
白:この曲に関しては、芥さんが最後にとっておきの話をしないと!
芥:別にとっておきではないよ(笑)。
――伺いましょう!
芥:実は、『piranha』のコードがEmaj7なんです。この曲の歌詞に出てくる自分はEmaj7のコードを弾きながら作曲していて、“4小節が空を見上げていた”というフレーズの“4小節”は、まだ形になっていない『piranha』で、作曲途中で燻っている時の景色です。“あの時に弾いていたEmaj7のこの曲が、また僕らをどこかに連れて行ってくれたらいいな”というイメージだったりします。
――ひとつの曲(『piranha』)を生み出している情景が、別の曲(『Emaj7』)の歌詞になるとは!
芥:もし、当初の予定通り10周年ワンマンの会場限定曲に決まっていたなら、もっとファンの人達に対するメッセージ的なニュアンスが含まれた歌詞になっていたかもしれないですよね。周年曲ではなくなったことで、凄く自分目線の歌詞になったと思う。
白:そう、結果的にこの曲はメッセージ性が強過ぎない歌詞になって良かった。歌詞の内容も含め、本当に良いところにまとまったなと思います。
芥:僕自身も、この曲がめちゃくちゃ好きですね。
――『Emaj7』と『piranha』がひとつの作品にパッケージされて良かったです。3曲を通して聴いたら、また『piranha』に戻ってエンドレスリピートして頂きたいかも。
芥:そして『アイシー』でぼやいてもらって(笑)。
野中:これは伝わるかどうかわらかないですけど、野中的にはミックスで聴いた時から『Emaj7』は日曜日の15時くらいって感じがするんですよね。間奏の静かなところが17時くらいで、ラストのサビが『ちびまる子ちゃん』(18時)だな(笑)。
芥:あ、それは正解です。歌詞の中に出てくる“何もない日の夕方”は、僕の中ではライヴの無い日曜日のことなんですね。大体の日曜日は、ライヴをしているじゃないですか?でも、その予定が無い時にふと“何も無いな。ここで死んだらどうしよう。”と思ったりして。だって、そんな時に死んだら誰も気付いてくれないでしょう?僕らは表に出て一緒に過ごしている時間が長いようですけど、実際はファンの人達も含めて日常の何も知らない時間のほうが圧倒的に長い。できれば、そんな瞬間には死にたくないなと思った。まさに日曜日で正解ですね。カラッとした夏の、日曜日。
白:確かに、夏のイメージがあるね。
芥:冒頭の“アサガオは眠ってしまった”は、僕らの周年である9月中旬くらいはもうアサガオが完全に終わっている時期で。10周年のことも考えながら書きましたね。
――とても素敵なお話でした。最初に「自分達なりの戦い方を」と仰っていましたが、今回の3曲でまたこれからのChantyの武器が増えたなと感じます。
芥:そうですね。どこにも誰にも寄せない、うちだからこその武器だと思います。
――10周年目前のタイミングでこういう作品が提示されたことも、今バンドが本当に良い状態で活動できていると伝わってきたことも、とても嬉しかったです。
一同:ありがとうございます!
芥:周年曲もとても良いものができたので、楽しみにしていてください。
白:ちゃんと別に作りました!(笑)
野中:『Emaj7』の仮タイトルは『周年曲』で、白くんが作ってくれた新しい周年曲の仮タイトルは『周年リベンジ』だったんです。白くんの強い意志を感じましたね(笑)。
shota:「今度こそ!」(笑)
白:あはははは!(笑)
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“ここに辿り着くため”ではなく“この先を見るため”の1日にしたい。
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――さて、いよいよ9月9日・10th Anniversary Oneman「Chantyの世界へようこそ」川崎CLUB CITTA’ワンマン公演が目前に迫ってきました。
一同:本当に!
白:近付いてくると、遠のいて欲しい気持ちになってきたりもして。
一同:(爆笑)
白:プレッシャーではないけれど、どうしても無意識に気負っている部分はあるんでしょうね。そういうライヴにするつもりは全く無いですけど。
野中:これはメンバーでも話したんですけど、今現在はまだ9年目で、9月9日の周年ライヴ以降に初めて10周年イヤーに入るわけです。野中自身は周年イヤーって前後どちらの年も含まれた2年間を指すと思っているから「10周年イヤーです。」と言ってきたんですけど、実はまだ前夜祭の期間なんですよね。本祭は9月9日を終えてからになるので、バンドとしてもそこで「良い日だったね、満足したね。」というモチベーションにはなりたくないし、ファンの人達にもそうなって欲しくないと思っています。周年を迎えた後こそ本祭だから、「9月9日からずっと祝ってや!」という気持ちです。自分達は応援してくれている人達をもっともっと楽しませることができるように考えているから、祝ってやってください。バンドが10年続くことって奇跡だと思うし、色々と形は変わってきたけれど、新しい形で10周年イヤーの本祭を迎えられるって凄いことだと思うので。そして、来年は11周年を祝ってや(笑)。これからもずっと一緒に歩んでいきたいと本気で思っています。そして、10年の歩みの途中で離れていった人も沢山居ると思うんですが、その人達も含めて皆で祝えたら幸せです。
――それぞれの時代の想いを背負って迎える10周年だからこそ、共に歩んだ時期がある全ての人達に観て欲しい。
野中:はい。10周年をもう一度一緒に過ごせたらいいなと思っています。そして、今のChantyを観て欲しいです。
白:拓さんの言う通りで、昔好きだったアーティストや音楽に数年後に触れたら自分の中の熱が再燃することって俺自身も経験があるので。この10周年の機会にまたChantyにハマって欲しいです。以前はライヴに足を運んでくれていた人達にも、改めて今のChantyを観てハマるきっかけになってくれたらという想いです。
――「やっぱりカッコいいな!楽しいな!」と思って頂けたら一番嬉しいですよね。
一同:そうですね。
芥:10年に対する感じ方って、メンバーそれぞれにかなり違うと思うんですよ。
shota:俺は加入して1年経ってないですからね(笑)。
野中:何ならプレ1周年みたいな感じだよね(笑)。
芥:そうだね(笑)。
shota:ツアーではない、こういう記念日のワンマンは初だから・・・どうなんでしょうね、常にやることは変わらずと思っていますけど。
野中:初めてフルセットを組むよね?
shota:そう、Chantyになってから初めて通常の2倍の大きさの本気のセットでいきます!
――それは楽しみです!
shota:自分でも、Chantyでどう映るのか楽しみです。
野中:きっとステージの見栄えも変わるし。
shota:大きな会場に大きなセットは映えますよ・・・!あとはもう、緊張せずに。
野中:shotaくん、「たぶん、俺はCLUB CITTA’も緊張しないっす。」って言うんですよ!
――大物・・・!
shota:大きな会場のほうが緊張しないんですよ。前日やライヴが始まる前までは緊張するんですけど、ステージに立ったらもう“やるしかない”と切り替わるんです。サッカーで喩えるなら、ドラマーはゴールキーパー的な存在だと思っていて。後ろからしっかり守って土台であることが大切だから、9月9日もそういう気持ちで演奏したいです。
芥:昔からそうなんですけど、僕はどうしても“この1本のために!”とはあまり思えないタイプなんですね。「この日のライヴに来てくれ!」と言ったりもしますけど、それを言い出したら本当は「全部来てくれ!」になってしまうよなと思うし。バンドって、いつ次がくるのか、いつ終わりがくるのか、ある意味で約束と言えぬような約束をずっと続けているようなもので。だからこそ、その瞬間その瞬間、毎ライヴが本当に命懸けなんですよね。勿論、重ねてきたものや背負ってきたものへの自負はあるけれど、自分としてはその先にあるもののひとつがこの10周年の1日なので。MCでもよく話しているんですが、“ここに辿り着くため”ではなく“この先を見るため”の1日にしたい。そして、自分自身が以前よりももっとオーディエンスに求めるスタンスになったからこそ、この状態で迎える周年がとても楽しみです。今このインタビュー時点ではまだその日までにライヴが数本ありますし、まずはそれを死に物狂いで形にして、その先の9月9日が良い日になったらいいなと思っています。
――ひとつひとつ積み上げてきたからこその今であり、周年ですからね。
芥:はい。これまでも本当にいろんなことがあったし、だからこそ1本のライヴがどれだけ大切かは自覚していますし。オーディエンスまで全て同じメンツが集まって、全く同じ条件でのライヴをすることなんて、絶対に不可能じゃないですか。そんな奇跡的なことの積み重ねで10周年を迎えられる、そのことに本当に感謝しなくてはいけないなと思う。だからこそ、さっきのshotaくんの言葉どおり、いつもと変わらず僕らは僕らのやるべきことを全力でやるだけです。周年はいつもちょっと張り切り過ぎるところがありましたけど、今のマインド的にも今年はそんな感じではない気がしています。CLUB CITTA’に足を運んでくれる人達はもちろん、その場所には来られなくても「今日はChantyの10周年だ。」と僕らのことを想ってくれる人達が世界中に居て、全員が同じ場所に集まれるわけではないけれど、たまたま今年の周年はCLUB CITTA’で行われますよというだけの話なので。これまでと同じようにその奇跡的な1日をしっかりと形にして積み重ねてまた11年、12年・・・と続けていけたらと思っています。良い日にします!
取材・文:富岡 美都(Squeeze Spirits)