2023年08月25日 (金)
【ライヴレポート】<アンフィル×mitsu×我が為 presents フリーライヴ 「三角絞め」>2023年8月16日(水)HOLIDAY SHINJUKU◆「三角締め」で築いた“仲間”と共に抱く夢。
REPORT - 20:00:58一点の力も欠けてはならない――
そんな「三角締め」の技の極意を、アンフィル・mitsu・我が為はそれぞれのライヴで見事に体現して見せた。自分たちのベストなアプローチを凝縮したステージは、勝負をかける“マジ”なセットリストで構成されており、各々が音楽を通して抱いているポリシーを爆発させていた。そんな熱いライヴをリレーしていく、対バンライヴのあるべき姿がここにはあったように思う。
7月に行われた大阪・名古屋公演を経て、今回のフリーライヴ「三角締め」のグランドフィナーレを飾った東京公演(8月16日 HOLIDAY SHINJUKU)。この一連の中で彼らが共通して掴んだことの1つとして、“仲間”の真価をアツく語っていた。
「出会うべくタイミングで出会った。ちゃんと“仲間”だと思えた」――ミケ(我が為)
「デカい夢を共有しているアーティスト。“仲間”だと言えるからこそ、負けたくない」――mitsu
「心から“仲間”と思える人に出会えました」――翔梧(アンフィル)
今回集結した3組の関係性が長いかと言うと、実はそうではない。きっかけは、ここ1年の内にとある共通のライヴへ参加したことだったが、それ以上に彼らを結びつけたのは、音楽に対する心意気を共有したことに他ならない。もっと自分たちのスキルを上げたい、もっと自分たちの意識を高めたい……たくさんの“もっと”を、音楽を通して昇華するために意気投合したことが始まりだった。
いざ合同企画としてフリーライヴという挑戦が始まると、ライヴはもちろん、大阪・名古屋へ向かう道中や楽屋での和気藹々とした様子が彼らのSNSからも覗けたほど、シンプルに“楽しい”時間を共にしたことで絆を深めていったことが伺える。しかし、今回集結したメンバー同士が“仲間”と認め合い、強く手を取り合う決め手となったのは、それぞれが音楽に生きる者としての忠実な姿勢を持っていたことだろう。
「三角締め」の総括となる東京公演のトッパーを務めた我が為は、「自分更新曲」からスタート。DJ・吉田雅と向き合う形で、足並みを揃えるように歌い出した我が為としての原点とも言える曲に続いて、自分の力で新たな世界の創造する意気込みを内包した「new tone」へ。あくまで“自分(我が)の為”に生み出された楽曲だとしても、ミケの歌を求めて集まる人にとっては、時に生き方の道しるべを示してくれるメッセージともなる。
「心が動いたらノってくれれば良い」と前置きして披露した「radius」でアダルトな雰囲気に包むと、「brand new sea」では“海”をモチーフにした楽曲のロマンティックさが、ライヴではオレンジのペンライトが振り付けと同時に揺れるライヴ映えする表情を見せる。最新曲ラッシュの極めつけは、「自問他答NIPPON」。「ライヴは感情をぶつけ合うもの」というミケの中にあるライヴに対する理想像を、“拳”に自分をさらけ出す感情を委ねるようにして形作っていく。笑顔やファニーさの中に、自分の理想に対する妥協のない熱意を秘めている。これこそ、ミケという人間の本性とも言える。
「心、アツくなった!?」と語りかけながら、タオルを回して白熱した「TOBIKIRI H↑GH」を通し、ラストの「ユーフォリアの音が鳴り響く」でハピネスな空間へ導くと、会場の後方の人までもが小刻みに揺れ出していた。これこそ、「心が動いたら乗ってくれればいい」と中盤にも言っていたことを実現させる、我が為の音楽の力だろう。
「一緒に音楽してくれて、ありがとうございました!」と伝えながら、自身の1年間の活動とこの日のライヴを「まだまだ未熟なところもある」と振り返っていた。一見、ネガティブにも捉えかねない事柄も、隠したりはしない。目を背けず、それさえも“我が為”に起こることとして、今日以上を求めながら進んでいくことをしっかりと示していた。
続いて登場したのは、mitsu。この日のバックバンドはドラム・大熊けいと邦夫の他、アンフィルの倖人・未月・棗が務めるというスペシャル編成だった。その新鮮さは、1曲目の「蛍」からサウンドにも表れていた。通常時のマイルドなロック調とは一味違う、ツインギターの迫力やバンドメンバーならではのグルーヴ感にあふれ、そこに乗るmitsuの歌も繊細さよりもむしろ、大サビで声を張るなどして強いニュアンスを持って聴かせてくる。冒頭を棗がベースで繋いで突入した「MIDNIGHT LOVER」は、ギラギラとした曲の雰囲気が会場周辺の歌舞伎町の街並みにもなんとも似合っていて、mitsuがギター陣に妖艶に絡む場面も。
「この5人で出来る音楽で、皆さんの心を締め落して見せます」と意気込むと、「Live Your Life」は体感的にスピード感あるテンポで聴かせた。まさに、この「三角締め」でしか鳴らせない音に乗じてmitsuの歌声もバチバチに攻めていて、ファンキーな「Crazy Crazy」では「周りを気にするな」と自由度高く楽しませると、続いた「Into DEEP」ではスペシャルゲストにミケを迎えて披露。ソロで活動している2人が「歌おう!」と、シンプルな想いをさらけ出すように歌う姿が実に清々しい。そんな、自分の好きなことや選んだ道をまっすぐに進まんとする“正解は自分だ”という想いを「ラストヒーロー」に乗せて届け、ラストは「自分のために作った曲をみんなのために歌います」と前置きして「For Myself」を贈った。mitsuにとって自分が好きなライヴに全身全霊を尽くすのと同様、そんな“好きなことに全力を尽くす”生き方を “みんなもそうであればいい”とファンに向けて伝えていた。その“みんな”に仲間の存在も感じられたのは、アンフィルの楽器隊という仲間の手によって奏でられた音色に乗せて歌い上げるmitsuのエモーショナルな歌に、すべてがリンクしていたからでもあった。
大トリを飾ったアンフィルが1曲目に選んだのは、彼らのアンセムの一つでもある「unfil」だった。バンド名と同じく“糸”を意味する曲を耳にしながら、紡いだ絆はバンドとファンだけではなく、「三角締め」を共にしてきたメンバーたちのことさえも思わせる。それを“僕がその手を離さないと誓うよ”と手を差し伸べながら大切に歌い上げたオープニングに続いて、「迷い姫」で一気にモッシュが揺れて躍動感に満ちた会場を目の前に、翔梧が未月の元で「何コレ!最高じゃん!」と満面の笑みを浮かべる場面もあった。
「3組で大切に作り上げてきたイベント、予想以上に熱のあるイベントになった」と総括し、「移ろいやすい女心を捕まえたい男の曲」と「紋白蝶と秋の空」をコールした瞬間、歓声が上がった。こうした場面でしっかりと歌を聴かせる楽曲を差し込んでくる心意気は素晴らしく、上品なサウンドメイクと切なさを内包した歌声が非常に心地よい。一変「天上天下唯我独尊」では、仲間のバンドのファンに対しても「最初から全員で来てもらって良いですか!?」と煽り攻撃的な一面を見せたかと思えば、手拍子やモッシュに沸いた「VANILLA PARADE」でパワフルに一体感を増していく。モチベーションもエネルギー的にも容赦なくフルスロットルで、「determination」では「全員で行くぞ!」という一声が合図となって轟音とヘドバンの嵐に飲まれていった。倖人のギターソロに合わせて翔梧がかましたロングトーンも見事で、メンバー4人の相乗効果によって生み出されているアンフィルの音楽の本質をありありと見せつけるようでもあった。
そして、ラストは「timeless」という自分たちの周年でしか演奏しない大切な節目の楽曲をセレクト。「こいつらと一緒なら、夢が叶えられる。一緒に夢を見られる」と「三角締め」の仲間たちへの想いと、ファンに向けて「みんなの夢になる」と誓った上で、「この日にやるべきだと思った」という。特別な思いを抱かせる有意義なイベントだったことを、アンフィルなりに全力で示すというエモーショナルな選択に胸を打たれたエンディングだった。
最後は、「三角締め」をきっかけに未月が作曲したというオリジナルソング「TRIANGLE CHOKE」をオールメンバーで披露。途中、煽りパートで逆ダイブやウォール・オブ・デスといった、ライヴハウスにあるべき白熱した情景を蘇らせる一幕もあった。
このライヴを通して“取り戻したかったこと”は、かつてライヴハウスにあった熱気でもあり、本気でぶつかり合える“仲間”と音楽に真摯に向き合う気持ちを分かち合うことだったのかもしれない。それが出来る仲間と出会えたからこそ、アンフィル・mitsu・我が為はこれからも音楽を通して夢を抱くことが出来るのだ。その夢は、これからの未来に大いなる可能性を秘めている。
レポート・文◎平井綾子
写真◎intetsu
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<SET LIST>
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[我が為]
1.自分更新曲
2.new tone
3.radius
4.brand new sea
5.自問他答NIPPON
6.TOBIKIRI H↑GH
7.ユーフォリアの音が鳴り響く
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[mitsu]
1.蛍
2.MIDNIGHT LOVER
3.Live Your Life
4.Crazy Crazy
5.Into DEEP
6.ラストヒーロー
7.For Myself
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[アンフィル]
1.unfil
2.迷い姫
3.紋白蝶と秋の空
4.天上天下唯我独尊
5.VANILLA PARADE
6.determination
7.timeless
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[ALL CAST]
1.TRIANGLE CHOKE
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