2023年08月06日 (日)
【ライヴレポート】<nurié 4TH ANNIVERSARY -逸脱した正義か、果たして悪か->2023年7月29日(土)新宿BLAZE◆5年目がスタート。そして新宿BLAZEを超える「勝ち」の景色へ──。
REPORT - 22:00:211年前の7月29日、nuriéは来年の4周年のライブを新宿BLAZEで行うことを発表した。それは彼らにとって大きな挑戦となることは誰の目から見ても明らかだった。
2023年7月29日、4月に発売した1st Mini Album『瞳に映らない形と性質、それを「」と呼んで』を提げて、5月から始まったツアー「アンチヒーロー」ツアーのファイナルであり、バンド始動4周年を記念したライブが新宿BLAZEで行われた。
このステージにかける思いがはち切れんばかりに登場した彼らが繰り出した1曲目は「akuma」。
オーディエンスも全力で応え、フロアの勢いからも今日がいかに特別かということが伝わってくる。
「BLAZE、始めようぜ。あなたが帰っていく数時間後の未来のため、そして俺たちとあなたにとっての未来のための話をしに来ました」という、ヴォーカルの大角龍太朗の言葉から、「今宵、未来の為に歌おう。」へ。
ギターの廣瀬彩人の切り裂くような音からさらにライブが加速する「人として人で在る様に」では、早くも最高潮のような迫力を見せ、その激情は「【ばいばい】」へと続く。染谷悠太のドラムの音にもこれまでを超える強さが宿っている。
目の前で見えている以上に、エネルギーが彼らの身体に充満しているのだろう。太陽色の照明と共に歌い上げた「晴天に吠える。」を終えたあと、大角のギターの弦が切れるという、思わぬアクシデントが起きたが、すぐさま予定にはなかった「カンセツショウメイ」を演奏。曲を終えてもギターが復旧しなかったため、「セッションしよう!」という染谷の言葉で、バンドは音を奏でながらトラブルを乗り越える。
MCで繋ぐのではなく、曲を演ろうと瞬時に決めたのが、何よりも音楽を大切にするバンドnuriéらしい判断だった。
染谷悠太(Dr)
新しいギターの弦が張られ、「この日どうしてもやりたかった曲」という、「あの日の映画みたいに」。
このアクシデントが呼吸を整えるきっかけになったのか、飛び出さんばかりの勢いでライブを突き進めるだけでなく、多彩なセンスを持つnuriéの楽曲をさらに表現豊かにプレーし、時を遡るように2019年8月14日、4年前の夏に発表された、1st SINGLE「モノローグ」へ。この曲から、彼らの音楽の歴史が始まった。
そして、続く曲は、nuriéのヒストリーを語る上で欠かせない、2022年1月5日にリリースした3rd SINGLE「Room-6-」。第六感への刺激はもちろんのこと、スピーディーな曲展開がフロアの温度を急上昇させていく。
廣瀬彩人(G)
十分熱くなったオーディエンスの一体感をさらに増すように、かわいい振りで遊べる曲「うさちゃんず」。
初めてnuriéのライブに来た人も楽しめるように、まずは振り付けの練習。大角の歌に合わせて、ステージの演奏ではクールな姿を見せている廣瀬が、うさぎを思わせるような動きや手でハートを作って、振り付けの見本を披露。誰一人取り残すことなく楽しませる。
イントロでは染谷が立ち上がってドラムを叩く激しさを見せ、フロアではヘッドバンギングやタオル回しが沸き起こる「R.A.M.I」。これまでよりも増えた男性ファンがライブをいっそう加熱させていく。
その勢いのまま、ピンク色のライティングが映える「ミルクティートリップ」では、気持ちが飛び跳ねるようなテンポが、この瞬間の楽しさを高揚させてくれた。
大角龍太朗(Vo)
現在、27歳の大角はヴォーカリストとして完璧かと問われればそうではないだろう。
しかし、大切な人たちと接することのできる幸せに愛を込めて歌われた「あくび」では、今よりもさらに多くの人の心に染み込む歌を届けることができる、絶対的なヴォーカリストへとして変貌を遂げていくことを予感させた。
スクラッチ音から体を揺らすダンスビートナンバー「阿呆やん。」、拳を掲げる熱情が魂の解放に繋がる「生き継ぎ」とライブはクライマックスへと向かい、「あなたの色をこの空間に混ぜてくれませんか」と告げ、「透明に混ざる。」が放たれた。nuriéというバンドの真髄が発揮されるのが「人生」や「生き方」への思いが込められた楽曲だ。
「透明に混ざる。」から「愛を歌わせろ人生」を聴いていると、生きるという日々の目線に刺激を与えてくれる。
この曲の最後では「あなたが生きているだけでこの空は綺麗だ」と歌われるのだが、そのままライブは「生きてて偉い」の演奏へと続いた。バンドが急上昇する中で、2021年に他界したベースの小鳥遊やひろは、今、新宿BLAZEのステージに共に立っている。
音源では「約束した場所へ行こうか」という歌詞だが、大角はこの日、「約束した場所へ来たぞ」と歌った。
新宿BLAZEへのライブを決めたときの不安、「アンチヒーロー」ツアーでの日々を赤裸々に語った大角はこう続けた。
「新宿BLAZE、ソールドアウトしたかどうかで勝ち負けを決めるなら、俺たちはそれに関しては大敗退だよ」。
確かに動員数では、まだまだ届かない部分はあった。
しかし、この日の彼らのライブを観て、心が揺さぶられなかった者はいないだろう。
命の重さを知っているからこその、人生を懸けてnuriéというバンドで頂点を目指す勝負を挑む彼らが、現時点で持てる力を全て発揮した新宿BLAZEでのライブは、大角自身がステージから発したように、間違いなく「勝ち」だった。
「アンチヒーロー」ツアーで身につけた強さと覚悟と共に奏でられた「瞳に映らない形と性質、それを「」と呼んで」は、もはやツアー初日の演奏とはまるで姿を変えていて、凄烈な印象を刻み込んだ。
ここまで、nuriéの4年間の物語を音楽でしっかりと表現し切った彼らが本編の最後に演奏した曲は、初披露の新曲「冷凍室の凝固点は繋ぐ体温」。「例年とは違う比べ物にならない暑さが」という歌い出しで始まり、切なさの中にも人間同士が繋がり合うからこその信じられる温もりが音を通して伝わってくる楽曲だ。
この新曲は、新宿BLAZEの来場者全員にデモ音源が無料配布された。今後ライブでの演奏が繰り返されていき、正式な音源となって発表されるときにはどのような完成形になっていくのだろうか。
そんな想像の余韻と共に、映像で12月には「0.000℃」ツアーのスタートと、ニューシングルのリリースがあることが発表された。
アンコールは、nuriéのライブには欠かせない全力で踊れる「骨太もんちっちくん」、メロウな「夜の所為にして」、そして、このツアーではアンコールは2曲だけと決めていたが、新宿BLAZEの特別な夜に、アンコールの3曲目として「白を溢す。」を演奏して大団円を迎えた。
自分達が失ったもの、バンドの初期衝動を取り戻すために「アンチヒーロー」という言葉を掲げて、これまでで最多となる本数のツアーを行い、最大規模の会場でファイナルと4周年を飾ったnurié。
迷い戸惑い、時に優しくなりすぎた自分たちを奮い立たせるように歩んだ日々は一先ずのゴールを迎えた。
彼らを見ていて思った。一足飛びの未来よりも、確実に己の力で勝ち取った未来の方が、美しいと。
5年目がスタートしたnuriéが描き出す、新宿BLAZEを超える「勝ち」の景色への前進はどこまでも勇ましい。
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◆セットリスト◆
01. akuma
02. 今宵、未来の為に歌おう。
03. 人として人で在るように
04. 【ばいばい】
05. 晴天に吠える。
06. カンセツショウメイ
07. あの日の映画みたいに
08. モノローグ
09. RooM-6-
10. うさちゃんず
11. R.A.M.I
12. ミルクティートリップ
13. あくび
14. 阿呆やん。
15. 生き繼ぎ
16. 愛を歌わせろ人生
17. 生きてて偉い
18. 瞳に映らない形と性質、それを「」と呼んで
19. 冷凍室の凝固点は繋ぐ体温
En
- 骨太もんちっちくん
- 夜の所為にして
- 白を溢す。
(文・武村貴世子/写真・Ayami Kawashima)
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