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2023年07月10日 (月)


【ライブレポート】<ZEAL LiNkun TOUR 2023>2023年6月30日(金)新宿BLAZE◆仲間と繋いだ「ZEAL LiNkun TOUR 2023」完結!――「私たち、ヴィジュアル系頑張って行きますので、バンギャ辞めんなよ!」

REPORT - 14:00:32

 

ユナイト主催のイベントツアー「ZEAL LiNkun TOUR 2023」が、630日に新宿BLAZEにてツアーファイナルを迎えた。5月から始まり7都市全9公演に渡って行われたこのツアーには、総勢11バンドが参加。大盛況のうちに幕を閉じたツアーファイナル公演の模様をレポートする。

 

ZEAL LiNkun TOUR 2023」というタイトルから、かつてヴィジュアル系専門CD SHOPZEAL LINK]が主催して実施していたイベントライブを彷彿した方も多いはず。実際パロディであったことから、約5時間に渡るライブ中、「この感じ、懐かしいなぁ」と思うシーンがいくつもあった。素直にあの頃感じたイベントライブの熱気を感じ、コロナ禍や昨今のライブ事情で激減してしまった多くのバンドが集結するライブの空気感を再び体感出来た気がした。ただ誤解のないように伝えておきたいのは、今回のイベントの意義は、単に和気藹々と懐かさに浸るだけのものではなかったということ。

 

今回集まったのは、ボーカル不在中のユナイトをサポートしたゲストボーカルが率いるバンドや親交の深いバンドが中心だった。彼らの中で「あの頃のように、楽しく回れるイベントをやりたい」という声が上がったことが、このイベントを開催する発端となった。オーガナイザーでもあるLiN(ユナイト / Gt)はそれをノリから始まったと話したが、ライバルであり仲間でもある協調性から1つの事柄を巻き起こしたこと自体が非常にアツい。そして、それぞれのバンドが持つ個性や強みの活かし方をもってして、戦い方を確立しているバンド・アーティストたちがぶつかりあうイベントライブならではのエネルギーが確実に存在し、重要なのは、それを生み出しているのがリアルタイムでポリシーを持って戦っているバンド・アーティストたちだという現実。これらすべてが詰まっていた「ZEAL LiNkun TOUR 2023」は、とても刺激的だった。

 

 

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O.A 寿司かも新米

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幕開けを飾ったのは、O.Aの≪寿司かも新米≫。LiNと莎奈(ユナイト / Dr)がトークを繰り広げるアットホームなひと時に加え、セミファイナルの札幌公演にて予告されていた通り、ツアーファイナルで「旅立ちの日に」の合唱が実現した。ここにはミケ(我が為)、HALACME)、チャーリー(アンフィル / 我が為 サポートDr)、夕霧(DaizyStripper)も参加し、イベントの冒頭に卒業ソングが響き渡るというなんともシュールな一幕になったが、この合唱での声出しが後に控えるバンドのライブに備えての良い準備運動となって、会場を温めた。

 

 

 

 

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ν[NEU]

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トッパーを務めたν[NEU]は現在、202412月に据えたゴールに向かって活動中。幕越しにスタートした「RED EMOTION~希望~」から胸を掴む存在感を放っていたと同時に、いわゆる復活という想像のラインを遥かに超えたメンバーの進化した姿があった。バンドのグルーヴに合わせて、歌や音の浸透力が抜群に上がっている、これが今の”ν[NEU]だ。その中で「恋模様」や、まさにイベントキラーの強みとして繰り出した「YESNO」「ピンクマーブル」を通して速攻でフロアを躍動させたのは、<さすが>の一言に尽きる。

 

 

 

そして、一体感を帯びながら「スプラッシュ!」で鮮やかに優しく弾ける中、下手の袖で見守っていた椎名未緒(ユナイト / Gt)へmitsuとヒィロが笑顔で視線を送る様子もあった。これまでも、そしてこれからも限られた時間の中でν[NEU]希望をテーマに掲げて活動を続けていく。<今が人生で一番楽しいんだからな!>と最後にmitsuが叫んだ言葉通り、今を人生の最高潮として見せるメンバー各々の生き様を目に焼き付けて欲しい。

 

 

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我が為

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ミケがソロプロジェクト・我が為として活動を始めてから、初の対バンツアーへの参加となった今回。<参加出来て良かった>という理由として、<マジな人が多い>という環境があったと話していた。その中で見せつけた我が為のライブからは、シンプルにミケのボーカリストとして持つ良質な部分を存分に堪能することが出来た。「欠陥品だけの世界」では壮大かつ力強さを、「new tone」では手拍子が似合うポップさに覗かせるチャーミングさを、楽曲に応じて変幻自在な表情を見せるところも、間違いなく彼の魅力だ。

 

 

そして、中盤に<挑戦していきたい>と語った上で、1st SINGLEとなる「自問他答NIPPON」を初披露するという攻めの姿勢も見せた。さらに、スピード感に乗せてタオルを回した「TOBIKIRI HGH」から、幸福感に満ちた「ユーフォリアの音が鳴り響く」でシンガロングが響いたエンディングまで、ミケが抱くまっすぐな想いを込めた歌声が観客を魅了し、自分の歌を聴いてくれる人々にまっすぐに向き合う姿に胸を打たれた。

 

 

 

 

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ACME

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センターに構えるCHISAの装いがグラムロックなテイストを感じさせるも、ステージからはずば抜けたラウドサウンドが放たれ続ける。しかも、全5曲を通してMCを挟むことなく間髪入れずに。初っ端から最後まで最高潮のボルテージを魅せ続ける、これがACMEのタクティックだ。

 

 

 

「楽しんでるか、派手にやろうぜ!」と扇子が舞った「マグロ解体チェーンソー」から、ヘッドバンギングが巻き起こった「ROTTEN ORANGE」。そこへ「Resisted temptation」を畳みかけたかと思えば、「WONDERFUL WORLD」ではメロディーに乗せて“WONDERFUL WORLD”とコールしながら拳を掲げる様子には、エモーショナルな気持ちを掻き立てられた。ラストの「Kagaribi」まで鋭さが衰えることなく、観客との距離を詰めていく迫力は圧巻。新旧網羅した精鋭な楽曲たちを通して最後まで威厳のあるシャウトで歌い上げ、「マジで最高のツアーだった!」と笑顔で叫んだCHISAが見せた充実感が眩しかった。

 

 

 

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mitsu

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<この4人で、今日しか出せない音を楽しんでいってください>とmitsu自身がライブ中に話していた通り、演奏陣が流動的なソロという活動形態において、それは醍醐味のひとつと言えよう。今回、ツアー全ヵ所に出演したmitsuのサポートドラムは、<俺、やるよ>と莎奈が名乗りを上げてくれたという。「ZEAL LiNkun TOUR」で作り上げてきたの集大成でもあるこの日、「鼓動」からバンドサウンドと莎奈のコーラスが重なるソウルフルなmitsuの歌声が会場中に満ちていった。

 

 

 

 

このツアーでしか体験し得ない刹那的なものを楽しいというシンプルな感情に乗せて、自由度高くフロアと共に揺れた「蜃気楼」「Live Your Life」「into DEEP」へと深みを増す展開。そして、最後に用意されていた「For Myself」は、タイトル通りmitsu自身の曲だ。終わる・失うことを経験してもなお歌うことを選んだ彼が、アウトロに乗せて訴えるように語り掛けたのは、<決して絶望しないでください。落ち込んでも、希望があるということを歌で伝えていきたいと思います>という、ν[NEU]で見せたものよりもセルフィッシュな、魂のこもった決意だった。

 

 

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アンフィル

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ツアーに全ヵ所参加した上で翔悟は、本気でぶつかってくれる仲間から特別な気持ちをたくさん得たと話した。嬉しかったこと、悔しかったこと、それらの経験がまたアンフィルを強くし、向上心を抱かせたという。アンフィルの挑戦的な想いは、この日に新衣装をお披露目したことにも表れていたようにも思う。さらに、冒頭の「ラヴァ」「VANILLA PARADE」「迷い姫」と続いたアップテンポながらも丁寧なライブ展開は、音楽を通して誠実でまっすぐに勝負する姿勢をしっかり示しているようでもあった。

 

 

 

 

そして、全ヵ所で絶対に心がけていたというのがバラードをやることだったと語り、<たくさんの恋が咲いて、たくさんの恋が散るような歌舞伎町にぴったりだと思って、取っておきました>と「恋に堕ちる」を披露。最後は、アンフィルというバンド名の意味はだと伝え、その糸が繋いでいるのはファンだけでなくバンドとの関係にも及んでいるとメッセージし、「unfill」で鮮やかに締めくくった。何を大切にし、何を見せたいかという強いポリシーを感じさせる等身大のバンド感に、常に胸が躍るライブを届けてくれた。

 

 

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DaizyStripper

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仲間や、そこに生まれる絆に対して実にスマートなアプローチが出来るバンド、それがDaizyStripperだ。ライブはまず、夕霧が冒頭を明日も新宿中晴れますようにと粋に歌い替えた「ダンデライオン」からのスタートで、皆が指揮を振りながら口ずさんで一体感を生んだ彼らの原点でもある1曲に続いたのは、最新楽曲の「絶唱OH YEAH!!」。バンドもファンも、ライブにおいてを取り戻すことが出来たリアルにピッタリな1曲に、会場のボルテージが上昇したのは言うまでもない。

 

 

 

そして<ユナイトには、たくさんの希望をもらいました――ファイナルなので、とっておきの希望を届けたいと思います>と夕霧が話し、セットリストに記載されていた謎の「KIBOU」という楽曲へ続くはずだった……が、なんと演奏が始まったのはユナイトの「シトラス」で、これはとっておきのサプライズだった! 下手の袖では椎名未緒が一緒に手を掲げている姿もあり、ある意味この「シトラス」の演奏をもって、ゲストボーカルとしてユナイトの楽曲を歌い続けてきた一連の流れからの節目を遂げたようにも思えた。ラストスパートは、会場をモッシュの波で揺らした「GIRL HUNT」「decade」で有終の美を飾り、DaizyStripperらしく仲間への愛を惜しみなく発揮したステージとなった。

 

 

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カメレオ(secret

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ラストのユナイトを控えた転換中、「チェックチェック……」と本日の出演者にはない、しかしどこか聞き馴染みのある声が聞こえてきた。<1曲だけ盛り上げに来た、カメレオだー!>とHIKARU.が叫ぶと、名古屋公演のみに出演していたカメレオがシークレットで登場。勢いよく幕が開くとともに、「ニート姫」で瞬時に会場の熱気をさらっていく。中盤、かつてレーベルメイトでもあったCHISAACME)がHIKARU.とお揃いの角ヘアセットで飛び入り参加。この出来事もまた、イベント終盤の火付け役となった。

 

 

 

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ユナイト

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ユナイトにとって、この「ZEAL LiNkun TOUR 2023」は楽しいという感情を大事にしながらも、新ボーカルに希を迎えたこれからに向けての意気込みや感謝をファンはもちろん、支えてくれたバンド仲間たちへ伝えていく場でもあった。ヘッドライナーとして、実に多くの想いを内包して臨んでいたことは想像に容易い。しかしライブが始まると、新生ユナイトの新曲「花晨」「iScream」「sheeple cirQus」を冒頭から畳みかけ、そこから溢れて来るバンドのグルーヴやストレートに伝わる楽曲の魅力が、この5人のユナイトが早くも強固になっていることを手応えとして感じさせた。

 

 

 

このツアー中に希は対バン相手からたくさんの刺激を受け、<いろんな感情が大暴走して大変なことになってる!――忘れられない音楽と歌を、届けに来ました>と、バンドのセンターで堂々と自分が歌う理由を述べた。「ubique」や「ice」のようにしっかりと盛り上げる場面を通し、最後に<これからのユナイトは何のためにステージに上がり続けるか>と前置きして、流れよく終わらない歌を歌う為と歌い出した「starting over」。演奏し終える一瞬まで、新たに生み出すものはもちろん、これまで築いてきたものさえも希と共にブラッシュアップし、そこには明るい未来が待っていることを改めて確信として感じさせるアクトだった。

 

 

 

 

ラストに全出演者によるサインボール投げが行われた後、希が話したことが印象に残っている。DaizyStripperがサプライズで演奏した「シトラス」を楽屋で聴いていた彼が思ったこと――

 

ユナイトの曲だじゃなくて、僕らの曲だと思ったんです>

 

彼がバンドの一員として実感したことを思わせる、非常に嬉しい胸が熱くなる言葉だった。

 

 

 

今回の「ZEAL LiNkun TOUR 2023」に出演したバンドと、参加したファンが再確認させてくれたことは、ヴィジュアル系という文化の中に生まれる音楽やライブにはまだまだパワーがあるということ。だからこそ、今回参加した誰もが口にしていた<またいつか>の可能性はあると信じている。時を重ねる毎に、人間として成熟したヴィジュアル系バンド・アーティストたちが生み出すものにはかけがえのない価値があり、それぞれの個性を音を楽しむことで表現している素晴らしいシーンに出逢えたことを誇りに思いたい。そんな思いを後押ししてくれたのが、最後に椎名未緒が言った「私たち、ヴィジュアル系頑張って行きますので、おまえらもバンギャ辞めんなよ!」の一言でもあった。

 

 

 

写真●白石達也

レポート・文●平井綾子

 

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【セットリスト】

 

O.A 寿司かも新米

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ν[NEU]

1.RED EMOTION~希望~

2.恋模様

3.YESNO

4.ピンクマーブル

5.スプラッシュ!

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我が為

1.欠陥品だけの世界

2.new tone

3. 自問他答NIPPON

4.TOBIKIRI HGH

5. ユーフォリアの音が鳴り響く

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ACME

1.マグロ解体チェーンソー

2.ROTTEN OGANGE

3.Resisted temptation

4.WONDERFUL WORLD

5.Kagaribi

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mitsu

1.鼓動

2.蜃気楼

3.Live Your Life

4.into DEEP

5.For Myself

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アンフィル

1.ラヴァ

2.VANILLA PARADE

3.迷い姫

4.恋に堕ちる

5.unfill

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DaizyStripper

1.ダンデライオン

2.絶唱OH YEAH!!

3.KIBOU(シトラス / ユナイトカヴァー)

4.GIRL HUNT

5.decade

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カメレオ(secret出演)

1.ニート姫

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ユナイト

1.花晨

2.iScream

3.sheeple cirQus

4.ubique

5.ice

6.starting over

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エンディング

サインーボール投げ・記念撮影