2023年06月18日 (日)
【ライヴレポート】<HOWL ONE MAN LIVE TOUR 2023「アイラブユーの後遺症」>2023年6月15日(木)新宿Motion◆「ここがHOWLのライブだ!新しい自分になりたくてここに来たんだろ!」
REPORT - 20:00:24灼熱の前兆のような湿気とうだる暑さが襲ってくる季節になってきた。おまけに連日の雨だ。四季折々という日本語の概念さえも曖昧になってくる昨今。過去に生まれたものを刷新する時が近づく気配を感じずにはいられない。
2023年6月15日。前回の全国ツアーファイナルSpotify O-WEST公演『ロゼッタ=ストーン』から僅か一か月半余り。驚くべきハイペースで全国ツアー<アイラブユーの後遺症>の初日を迎える、HOWL。
HOWLはヴォーカリスト真宵の少年のように純粋でありながらガラスのように繊細な詩世界を流麗なメロディに乗せることを基調とした4人組のヴィジュアル系ロックバンドだ。
真宵(Vo)、よっぴ(Gt)、ゆうと(Ba)、yuki(Dr)の4人の抜群に端正なヴィジュアルが人気を呼んでいるが、この常識外れたタイトなツアー間隔からも判るようにその実態はどこまでもライヴにアグレッシヴで、貪欲で、時に泥臭くもある。
そんな彼らの分岐点になるであろうツアー初日東京公演の模様を本レポートでお伝えしたい。
会場となる新宿Motion。西武新宿駅から徒歩1分のビル5階である。
この日はツアーの中で唯一当日券無料ということで初めてHOWLのライヴに触れるであろう層や男性客も数々見受けられる。
______17時35分、定刻をやや過ぎたところで暗転。
するとすかさず眩い白光が視界を奪っていく。この新宿Motion、ステージ背面にLEDスクリーンを導入しておりその光が会場を華やかに明るく照らす。
ほどなくして、その光を遮るようにyuki、ゆうと、よっぴがステージに現れる。メンバーの名を呼ぶ声援が会場に充満したところでyukiの激しいドラムが鳴り響く。ゆうとはマイクを使い煽りながらベースを重ね、よっぴのギターはエッジィに鳴る。楽器隊3人のセッションから幕を開ける意表を突く演出に会場がどよめいたところでフロントマン真宵が姿を現し「アイラブユーの後遺症、はじめようぜ!」と叫ぶ……も、ここで真宵からのサインで不意に演奏が中断される。
機材トラブルだ。ステージを去るメンバー。記念すべきツアーの滑り出しとしてなんとも不穏な空気が会場に漂う。
数分のインターバルを置いて、再び暗転。
よっぴのチャーミングな「よし、もう1回いこうか!」でリスタート。オープニングからクライマックスの応酬のようなナンバーが並び、奇しくもトラブルをまるで手玉に取るようにフロアの熱気は加速的に上昇していく。
その熱を制御するように挟まれたMCでは真宵が「えー…何事もなく始まりました(笑)」と笑いを取る一幕も。初日の緊張感など感じさせずに、想定外の状況でも自分たちのゲームプランを崩さずに遂行する様はO-WESTワンマンを経てのものだろうか。
中盤のブロックではメロウなナンバーが並んだ。
淡々と刻まれるサウンドが実に心地よいyukiのドラムに、よっぴのギターが美しく寄り添い、その中間地点を自在に動き回るゆうとのエロティックなベースラインに観客が息を飲んだのは「メルティナイト」。
2020年に発表され、『愛情表明』(2021年)にも収録されている楽曲であるが、そのタイトル通りに力感を抜きながら高音を操る真宵のヴォ―カリゼイションが甘く溶けていく光景は見事で、この日のハイライトと言えるだろう。
以前、彼らを取材した際に「僕らって誰に似てるんですかね?」とふいに真宵が尋ねてきたことがある。「特別に他の●●っぽいっていうバンドじゃないですよね、HOWLは。」と返答したが、実のところ虚をつかれ適切な例が浮かばなかった。その際、よっぴがすかさず「誰にも似てなくていいんじゃない?」と発言したことを思い出した。
真宵以外の何物でもないそのソフトな声質とそれでいて楽曲ごとに変わる顔つき、確かに他の何かに形容しがたいものだと改めて感じさせられる。
モッシュする観客が身に着けるリングライトがミラーボールに反射する様がさながら妖しげなダンスフロアを想起させるレアなナンバーや、お馴染みのキラーチューン「先天性君症候群」を挟みながら本編は終盤へ。
「これが最後の曲です。…全身全霊でかかってこい!!!」
終着地で披露されたのは前回のツアーの基軸となり、大化けを果たした必殺曲「アンダーテイカー」。
『アンダーテイカー』(MUSIC VIDEO)
https://www.youtube.com/watch?v=nknT-1sSjbU
生きている限りいつか必ずやってくる終わりを悟りながらそれでも痛みと向き合う真宵の詩世界を至高のメロディが彩る、ロックバンドHOWLが誇る珠玉の名曲だ。
ここまで心は外側を向き続け、オーディエンスの目をしっかり見つめてパフォームしてきた4人がここでは一転して、自らの内側から魂を抉るように音をかき鳴らす。
「かかってこい!」、まるで己をアジテートしているかのように吠え続ける真宵の姿に、これまで淡々としたプレイで魅せていたyukiは一心不乱に頭を振り乱し、スティックを振り下ろす。弦楽器隊のよっぴとゆうとも呼応する。
生まれ持った資質とも言える、その華々しい佇まいを器用に扱うどころか、むしろ不器用かつ無骨過ぎるパフォーマンスで観客と対峙する4人。“肉を切らせて骨を断つ”のではなく、“骨を切らせてでも骨を断つ”のがHOWLのライヴにおけるアグレッシヴネスの大きな特徴であり武器である。まさに無骨。
ステージとフロアが足並みを揃えて温度を上昇させたところで完全燃焼にて本編終了。
熱気もそのままに間髪おかずにかかる凄まじい声量のアンコール。
ツアーTシャツへとお色直しをすませたメンバーも登場するや否や「アンコールありがとう。…声デカいな(笑)」と言及せずにはいられず満足げな様子。
いつもの陽気なMCを封印し、「新曲をたくさん育てましょう!」と手短に語ったゆうと。「楽しんでニコニコ(ツアーを)廻りたい!」とよっぴは明るく、yukiは「前回のツアーで自信がつきました。自分らしくドラムができるようになりました。」と逞しい発言も。
真宵も前回のツアーで得た手応えを述べたのち、「好きという感情があるからこそ夢や恋がある。でも、好きだからこそ後悔がある。悲しかったり、心が痛む…それでも負けずに“好き”でいられるのが人間なんだ。このツアーで新しい感情を見つけに行こう。」とこのツアー<アイラブユーの後遺症>の意図を語りかけた。
オーディエンスの期待に応えるボリューミーなアンコールでは当然、本ツアーの最重要楽曲も披露された。
『ロゼッタ=ストーン』(MUSIC VIDEO)
https://www.youtube.com/watch?v=DG7V1N4foqs
HOWLが自ら産んでしまった名曲「アンダーテイカー」のあまりに高い壁に挑むこの曲。同様に抜群のメロディと、生まれながらにしてすでに成熟した青年のような佇まいが実に印象的だ。早くもオーディエンスの反応が良好なこの曲がツアーを経てどのような顔つきになるのかが楽しみで仕方ない。
およそ2時間で全編終了。
「生きてて偉いぞ!!」
「今日みたいな日…またやろうな!」
アンコールを求める声の大きさからも伝わるように終始熱烈なフロアに対してメンバーも賛辞を惜しまない。
冒頭のトラブルを笑い話に変えてもお釣りが出るほどポジティヴな空気で<アイラブユーの後遺症>初日は無事幕を下ろした。
HOWLのライヴの大きな魅力である、愛すべき“燃費の悪さ”…以上に一層タイトな表現に進化した精度・純度の高さが記憶に残る「変わらずに変わっていこうぜ!」の言葉通り、過去を刷新する素晴らしい所信表明の夜だった。
新曲「ロゼッタ=ストーン」では痛みや感情を言葉にしきれず“解読不能”と何度も繰り返される。この旅はきっとこの解読できない何かを解読するためのものになるだろう。
大阪、愛知、茨城、栃木、群馬…そして特別な公演になることが予想される7月11日、キャリア最大キャパシティとなる東京・池袋harevutai。
最終決戦の地までHOWLの4人と後遺症の残る恋をしよう。
文◎山内秀一
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<HOWL OFFICIAL HP>
<HOWL OFFICIAL Twitter>
@HOWL_staff
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HOWL ONE MAN LIVE TOUR 2023「アイラブユーの後遺症」
OPEN17 : 00 / START17 : 30
※全公演共通(終演は19:30予定)
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<一般発売中>
6/19(月) 心斎橋CLAPPER
https://eplus.jp/sf/detail/3873690001-P0030001P021001?P1=1221
6/21(水) 今池CLUB 3STAR
https://eplus.jp/sf/detail/3873700001-P0030001P021001?P1=1221
6/27(火) 水戸SONIC
https://eplus.jp/sf/detail/3873850001-P0030001P021001?P1=1221
7/3(月) HEAVEN’S ROCK 宇都宮VJ-4
https://eplus.jp/sf/detail/3873870001-P0030001P021001?P1=1221
7/4(火) 高崎TRUST55
https://eplus.jp/sf/detail/3887310001-P0030001P021001?P1=1221
-Tour Final- 7/11(火) 池袋harevutai
https://eplus.jp/sf/detail/3874810001-P0030001P021001?P1=1221
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Cチケット ¥1,000 一般発売中
Bチケット ¥2,000 物販にて販売中(オリジナルピクチャ仕様)