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2023年04月03日 (月)


【縁(えにし)】縁の描いた旬華愁灯を巡る物語、ここに最初のピリオドを打つ──。

REPORT - 19:00:45

(えにし)=Vocal : SUI  Guitar : 美沙麗 Guitar : cero Bass : リゼ Drums : Syu

 

 

  固い絆で結ばれ続けてきた5人が、ちょうど1年前に、“1年間の活動を見据えたプロジェクトとして縁を結成。「音楽を通して春夏秋冬=四季を巡る旅を表現し伝えようと、桜の時期に花咲かせ、ふたたび桜の花が咲いた1年後の景色までを目標」と定めて活動を始めた。

 

あれから、1年。331() 渋谷近未来会館で行った「旬華愁灯結び〆」を持って、縁は「旬華愁灯プロジェクト」の幕を閉じた。この日は、最初で最後??となるアルバム『旬華愁灯』を携えてのライブでもあった。当日に、どんな景色がライブ空間として広がっていったのであろうか、それをここに伝えたい。

 

 艶やかで、雅な音色が鳴り響く場内。そこへ重なる重厚な調べ。幕が開いたその先には白い後光が射す縁のメンバーたちの姿があった。

 

  「結び〆!!」と叫ぶ声を合図に、縁は,ライブに熱狂の景色を描き続けてきた『八咫烏』から物語を綴りだす。SUIが、観客たちが、手にしたタオルや拳を振りまわし、轟き渡る演奏に身を任せ、大きく身体を揺さぶりだす。SUI自身も、最初から観客たちと至近距離で気持ちをぶつけあうことを楽しんでいた。 柵に足を乗せ、観客たちを挑発する美沙麗。間奏のギターソロでは、美沙麗に向けてたくさんの手の花が咲いていた。理性の留め金を外した観客たちは、荒ぶる音に身を委ね、身体を大きく揺さぶっていた。ライブはまだ始まったばかり。でもこの空間には、終盤戦にも似た、感情を剥きだしで思いを交わしあう景色が生まれていた。

 

 改めて、互いの絆を熱情と熱狂で結びあうように、縁は『縁』を演奏。勇壮な様で歌い、奏でる演奏陣に向け、フロア中の人たちが、時に飛び跳ね、大きく手を花咲かせ、髪の毛を振り乱し、彼らとの深い縁を、身体と熱情を通して改めて感じていた。

 

  「一夜と通して、縁の1年間を存分に体感していただきます」。SUIや美沙麗の煽り声を受け、フロア中からも「Oi!Oi!」と熱い声が沸き立つ。声出し可能なライブだからこそ、メンバーと観客たちが互いに拳を振り上げ、声を張り上げながら、互いの唇が近づくくらいに距離を縮めていた。その勢いを胸に、互いの絆をさらに硬く結び合おうと『影結び』を演奏。SUIの歌声に向け、フロア中から熱い声が響き渡る。雅でたおやかなサビ歌では、誰もがSUIの歌声に心地好く身を寄せ、共に思いを重ねあわせていた。とはいえ、メロディアスでシンフォニックながらも激しいドラマを描く楽曲のように、『影結び』でも、終始、熱情したバトルが繰り広げられていた。精神も肉体も、このまま熱狂という渦の中へ飲み込まれていきそうだ。

 

 「この1年のいろんなことを思い返しながら、走馬灯のように季節を感じていただけるライブにしていこうと思います」「過ごした季節の中には、楽しいことはもちろん。憂いや、いろんな思いに駆られたときもありました。過ごした日々を思い出しながら、この思いを伝えましょう」(SUI)

 

 

四季を通じて駆け続けてきた思いを歌を介して巡るように、縁は『儚花』を演奏。尺八の音色の合図に、SUIの歌声が物語をめくるきっかけとなり、5人は思いや思い出の景色を巡るように、熱を秘めた優しい演奏を通して、一人一人の心にあるスクリーンへ様々な景色を映しだす。SUIの歌声を語り部に、思い出のページがめくられるたび、ここへ到るまでの日々が、次々と色鮮やかに脳裏に映しだされていた。

 

  「儚きこの想いよ、艶やかに舞うわ」。感情の奥底に眠っていた狂気を引っ張り出すように、縁は、重厚かつ妖艶な音を轟かせ、『艶』を歌い奏でていた。SUIの揺れ動く気持ちにあわせ、演奏陣が激情した演奏を描き出せば、揺れ、乱れる歌声や演奏にあわせ、観客たちも感情を重ね、乱れるままに、その演奏に身を溺れさせていた。

 

 舞台の上には、荒ぶる音を操るSyuと、気持ちを荒らげる旋律を響かせるceroの姿があった。2人はセッションしながら、この会場に沸き立つ黒い衝撃を与えてゆく。荒れ狂う音へ導かれるように、ふたたび5人が舞台へ集結。

 

 

  「今、目の前に見える大切なものを引き寄せろ!」。SUIの言葉を合図に、重低音が轟く妖美で黒い音がこの会場を飲み込みだす。縁は『命』を通し、ここに生きている証を一人一人の心へ強く刻み込むように歌い奏でていた。SUIの動きにあわせ、フロア中の人たちも同じ動きを示し、気持ちを同化してゆく。美沙麗のギターソロに向かって花咲く景色。曲を通して伝えてきた感情の色にあわせ、ときに頭を振り乱し、ときに花咲くなど、一人一人が楽曲に気持ちを委ねていた。

 

 

  演奏は、さらに攻撃性を増して襲いかかる。『夢幻蝶』でも、乱れ狂う感情にあわせ、フロア中の人たちがさまざまな動きを見せていた。サビ歌でSUIが響かせた、胸をキュっと揺さぶる艶やかな歌。対して演奏陣は、黒く、時に真っ赤に染めあがった感情的な旋律の数々を突き刺し、一人一人の心から理性を消してゆく。互いに感情を剥きだしに、裸の気持ちと気持ちをぶつけあう、その光景が、ここへ、確かに生まれていた。

 

 「縁は、限られた活動を通して確実に確かな縁(えん)”を築いてこれました。そんな皆さんとそれぞれの日々を忙しくいきる日常を抜け出して、こうして会える機会は当たり前じゃないこともより強く感じています。でも、直接会って思いを伝えることは失くしてはいけない大事な事、場所だと思っています。ライブを大切にしていきたい。そんな今日という日を大切にしたいし、この与え合う時間をもっともっと謳歌していきたいです。みなさんの力を、共に、ここに集めてください。この時間を謳歌しようか!

 

  SUIが、サプライズで製作したという縁オリジナル扇子をステージ上から配りだす。その扇子を使って、共に縁を感じようと奏でたのが『謳歌』。冒頭からSUIと、フロア中の観客たちが、手にした扇子を大きく揺らしながら、ここに集えたことに幸せと喜びを覚えていた。互いに大きく扇子を揺らし、この場に風を巻き起こしながら、歓喜した思いをこの空間や次の未来へつながるようにずっと舞い踊らせていた。その希望の風は、きっと近未来へと吹いてゆくはずだ。

 

  温かい熱に、さらに熱情した風を巻き起こそうと、縁は轟音を轟かせながら『鴉片』を叩きつけ、観客たちを大きく飛び跳ねさせた。舞台の最前へと出て観客たちを煽るceroSUIの導きに合わせ、フロア中の人たちが乱れ、騒ぎ続ける。激情と妖艶、多様な姿を『鴉片』の中に描きながら、物語は熱をどんどん上げてゆく。

 

 「この華やかな景色。そこを彩っているのは、みなさんがいるからこそ。この世界はあわせ鏡のよう。僕たちが自信を持ってここに立つことで、みなさんも自信を持って前を向ける。その縁を大切にしていきたい」。「降り注ぐ華やかなメロディーに乗せて」の言葉を具現化するように、美しく華やかな音符の花が、この空間を舞い踊りだす。フロア中の人たちも、『華音』へ導かれるように飛び跳ねれば、美しく開放的な美沙麗のギターの旋律にあわせ、大きく腕を振り、心華やぐ歌の風を全身に感じていた。思いを優しく包むような麗しきメロディーに乗せて、言葉を紡ぐSUI。彼の歌へ寄り添うように、フロア中の人たちが大きく手を揺らし、気持ちを一つに溶け合わせていた。過去の歩みを身にまといながら、ここから新たな次元へと向かうように、誰もが虹の彼方に見える景色に向かって、心を羽ばたかせていた。

 

 縁は、再び会場を赤黒い熱情と熱狂で包み込み、この空間をカオスな世界へ塗り上げようと、荒ぶる音をぶつけてきた。「かかってこい!!」と、観客たちを煽り続けるSUI。みずからも身体を折り畳み、絶叫。その身体や心に、消えない思いの紋章を縫いつけるように、最期に縁は『紋章』を叩きつけた。熱い手バンのやりとり、爆裂した演奏にあわせ、誰もがヘドバンし、身体を強く折り畳み、縁の生み出した漆黒の熱情した宴の中へ飛び込み、ともに恍惚を感じあっていた。その様は、まるで聖なる儀式のよう。縁の5人にかしづくように、会場中の人たちがすっかり隷属していた。胸を何度も叩くなど、興奮を隠せないSUI。まさに最高の結びを、5人はここに見せてくれた。

 

  観客たちの求める声を受け、彩り鮮やかな五色の傘を差しながら、ふたたび5人が舞台に姿を現した。縁は『愁』を通し、この場を轟音と雅な空気が乱れ舞う空間に染めあげだした。SUIの歌声へ誘われるように,フロア中の人たちが、理性を消し去り、熱情した狂人と化し、気持ちが赴くままに暴れていた。美沙麗のギターソロに向け、フロア中の人たちが大きく両手を広げ、旋律の雨を受け止める姿も印象的だ。互いに感情を剥きだしに、裸の自分になり、強く求めあっていた。最期の最期まで、互いに剥きだした感情で一つに溶け合う。それが、縁らしい姿じゃない。

 

  「大きな灯火を全員で灯していくぞ」。最期に縁は、訪れた人たち全員と、結び合ってきた絆を、さらに固く結び合うように「君との結びを」と『灯焔』を歌っていた。SUIの手拍子にあわせ、フロア中の人たちも身体を揺らし、手拍子をし、両手を花咲かせ、喜びの笑みを浮かべ、このひとときをしっかりと心に刻んでいた。最後に生まれた、「灯してもう一度 灯して心を 何一つ変わらないこの 姿(かたち)は見えない 未来(きみ)との結びを 叶うまで思い続ける」の合唱。SUIと観客たちとの歌声で、互いの縁はけっして解けることなく結びあっていた。

 

 ふたたび舞台に姿を現したメンバーたち。5人は、最期の最期にふたたび『八咫烏』を演奏。「かごめかごめ」と激しく煽るSUIの声や演奏に合わせてヘドバンが起きれば、SUIと一緒に会場中の人たちがタオルを振りまわし、この会場に熱風を巻き起こしていた。誰もがこのひとときを、忘れたくない記憶としてしっかりと身体に刻んでいた。一人一人が神の国へと向かって飛び立つ八咫烏となり、絶叫の声を張り上げながら暴れ狂っていた。終盤には逆ダイが生まれれば、SUIの指示によりフロアに巨大なサークルを作り、その中へSUIが飛び込み、まわりを取り囲んだ観客たちが、SUIに向かって思いきり折り畳みする景色がそこには生まれていた。

 

最期はグチャグチャの逆ダイの景色が生まれるなど、誰もが感情を解き放ち、本気で暴れ騒いでいた。最期にSUIと観客たちが全力でヘドバンしてゆく様もまた、縁らしい。この熱気、絶対に消えやしない。

 

  次に結んだ紐が解かれ、また結びあおうとするのか、今はまだわからない。ただ、そのときが訪れると、ずっと信じていたい。

 

 

PHOTO: Lestat C&M Project

TEXT:長澤智典

 

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331()

渋谷近未来会館

「旬華愁灯結び〆

セットリスト

 

『八咫烏』

『縁』

『影結び』

『儚花』

『艶』

『命』

『夢幻蝶』

『謳歌』

『鴉片』

『華音』

『紋章』

 

-ENCORE-

『愁』

『灯焔』

 

-W ENCORE-

『八咫烏』