2022年12月25日 (日)
【ライブレポート】<mitsu 無料ワンマン>2022年12月4日(日)渋谷REX◆自ら築いた音楽人生の進化論「もっと、良いボーカルになってみせる」
REPORT - 20:30:32ボーカリストmitsuにとって、〈挑戦〉でもあった無料ワンマン。10月から月1回、全3回の予定で行われて来た本公演の集大成となるライブが、12月4日 渋谷REXにて行われた。
ソロ活動を始めて8年、今年だけでも自身のライブに加えて、サポートボーカルや前身バンドであるν[NEU]の限定復活の活動でステージに立つ機会が多かった彼が初の試みとして“無料ワンマン”を3ヵ月に渡って行ったのには、“今の”mitsuを出来るだけ多くの人に知ってもらいたいという思惑があった。ただし、彼が自信を持ってこの決断をするまでにはたくさんのステップがあったと想像する。そう感じるに値した、まるでヒューマンドラマを見ていたかのようなライブの様子をここにしっかりと書き残しておきたい。
「エトリア」から、まだ開ききらない幕越しに演奏を始める姿勢が気迫を感じさせるオープニングとなった。mitsuが言う〈音楽と共に生きているメンバー〉の音を全身に受けながら歌う姿は実に男らしく、清々しい。1人1人のエナジーを感じる正真正銘のバンドサウンドが「Live Your Life」でも映え、フロアの観客もその声と音を受けて徐々にリズムを取り始めた。
「みんなが〈今日来て良かった〉と思ってもらえるように、全員幸せにして帰すので、どうかどうか楽しんで帰ってちょうだい!」――mitsu
“楽しむ”という事一つとっても、いわゆる、mitsuがずっと歌い続けてきたヴィジュアル系シーン特有の振り付けやセオリーの枠を飛び越えた自由度の高さがあった。〈この4人の音をそのまま素直に受け止めると、体が自然と動いちゃう〉と言った通り、ジャズテイストの「It’s So Easy」やアダルトな雰囲気の「MIDNIGHT LOVER」が生み出すビートが、まるで呪文のようにフロアを心地よく揺らしていく。
ここでステージ上にはmitsuと夢時(G)のみとなり、アコースティックセクションへ。ν[NEU]の楽曲から「APPOLLON」、そして「遥か」の2曲を披露した。「APPOLLON」に関しては、10年前の曲でも今こんな風にアップデートして歌うことが出来るということを表現しつつ、制作当時この曲に込めた〈信じることから始めればいいんじゃない?〉という想いにここ数ヶ月間mitsu自身が励まされていたという。ナチュラルな空気感だからこそmitsuが〈今日、メチャクチャ緊張していて〉と本音を覗かせる場面も。しかし、その緊張に対してもネガティブに思うのではなく、〈その事柄を大切に思い準備をしてきたからこそ緊張をするんだと思えるようになった〉という意識の変化があったとし、〈今では緊張を通して見えるものを楽しんでいる〉と話した。実際、緊張からか10月・11月の公演で一度も歌い間違えなかった「APPOLLON」でミスがあったのだが、〈でも、何とかなったじゃん〉と夢時。このようにたくさんの人間の価値観に触れ、今のmitsuがあることを実感させされるような一幕でもあった。
先にも伝えた自由度の高さは、フロアの様子だけに留まらない。「鼓動」や「キンモクセイは君と」で見せる繊細さや、「じゃないか」のリズミカルなポップさといったふり幅はもちろん、バンドサウンドが軸となっているからこそのメンバーの息の合った演奏にもそれは言える。ラストスパートは「蜃気楼」が口火を切り、そこで生まれた熱をパワフルなロックサウンドで聴かせる「Crazy Crazy」と「Into DEEP」で上昇させ、その熱の源であるステージ上の一心不乱に歌い、奏でる様子は「ラストヒーロー」でさらにテンポアップ。こうして、ラストの「For Myself」まで一気に駆け抜け、ライブ中に何度も口にしていた〈楽しい〉と〈ありがとう〉が存分に込められた、丁寧かつエモーショナルなプレイをもってソウルフルなエンディングを飾った。
「これからも、自分のために歌っていきます。その“自分”の中には間違いなくみんながいます。これからも一緒に楽しくいこうな、最高でした!」――mitsu
もともと、この無料ワンマンに対して〈やる前は、無理だと思っていた〉と言うし、〈今まで、ちゃんとしなきゃ、絶対成功しなきゃって“こうじゃなきゃいけない”という事が多かった〉ともライブ中に話していた。常識というものは時に人を臆病にさせるが、今のmitsuはどうだろう。自分自身を縛り付けていた制限や呪縛のようなものから解かれ、“こうしたい”という想いが強くなっている。この日のアクトや節々に挟まれていた心境を覗ける言葉たちが、“今の自分”を勝ち取ったのは紛れもなくmitsuの生き方であり、音楽に可能性を見い出した人間の歌は人の心を打つことを証明していた。
この日新たに発表があった、2023年3月2日に「みつの日」と題したワンマン・ライブを渋谷REXにて開催することと、この日サポートを務めたRENA(Ba)のソロプロジェクトCRAZY PUNK KID との共同主催「OH,MY FRIEND」の開催。新たな情報に合わせて、これからのmitsuに絶対的な期待を抱かせる最高の一言を彼自身がステージの去り際に残していった――「もっと、良いボーカルになってみせる」と。
Text:平井綾子
Photo:MASANORI FUJIKAWA
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mitsu 無料ワンマン
2022年12月4日(日) 渋谷REX
■サポートメンバー
Guitar:夢時(eStrial / HOLLOWGRAM)
Bass : RENA(3470.mon / CRAZY PUNK KID)
Drum:CHARGEEEEEE…(Omega Dripp)
–セットリスト–
- エトリア
- Live Your Life
- It’s So Easy
- MIDNIGHT LOVER
- APOLLON(ν[NEU] acoustic cover)
- 遥か(acoustic)
- 鼓動
- キンモクセイは君と
- じゃないか
- 蜃気楼
- Crazy Crazy
- Into DEEP
- ラストヒーロー
- For Myself
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2023年3月2日(木) 渋谷REX
「みつの日」
■サポートメンバー
Guitar:夢時(eStrial / HOLLOWGRAM)
Bass : RENA(3470.mon / CRAZY PUNK KID)
Drum:大熊けいと邦夫
■チケット販売中!
https://tiget.net/events/218164
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mitsu×CRAZY PUNK KID 共同主催
「OH , MY FRIEND」
■イベント詳細
https://mitsu-official.com/2022/12/04/ohmyfriend2023news/