──今回は4月14日の名古屋を皮切りに15日大阪、29日新潟、30日仙台、そして5月7日の東京まで全国五か所に渡る2マンツアー[ASHLA TOUR]を共に歩むことになっているXANVALAからは巽さん、Ashmaze.からは双真さんのおふたりに大いに語っていただきたいと思います。満を持してのヴォーカリスト同士ということでこの対談も最終章になります。そんなある種、大将戦のような空気ですがまずはおふたりの第一印象から探っていきたいと思います。
巽:俺からいいすか?
──どうぞ!
巽:あの…変な人だなと思いました(笑)
一同:(爆笑)
双真:いきなりカマしてきますね!
──いきなりの奇襲攻撃ですが…双真さん異論があればどうぞ。
双真:いや、よく言われるっちゃ言われるんで…反論しにくいですね。
──「変」にも色々あるかと思いますが具体的にはどんなエピソードがありますか?
巽:これ言っていいのかな?
双真:え?
巽:「強くなりたくてケンタッキーの骨をずっと食べてた」って言ってて(笑)
双真:ちょっと訂正させてください!「強くなりたくて」ではないです。「身長を伸ばすにはカルシウムだ。…じゃあ直接摂取しよう!」と思ってケンタッキーのフライドチキンを、骨ごとボリボリと食べていました。
──それは何歳ぐらいの話ですか?
双真:12歳とかっすね。
──まぁまぁヤベェっすね(笑)
二人:(爆笑)
双真:直接(カルシウムを)注入しなきゃなって。
──…な、なるほど。では双真さんから見た巽さんの印象はどんなものだったでしょうか?
双真:怖い…ですかね?声も低いし。話しかけても「(声真似で)そういうのいいから…」っていう素っ気ない感じなのかなと思っていました。はじめは。
──ヴィジュアル系バンドのヴォーカリストってすごくコミュニケートとか気配りに長けてる方と、寡黙な方に二分されるような印象が個人的にはあるのですが、実際お話をするようになってまた印象はどうでしょうか?波長が合う、合わないなんていう部分もあるかと思います。
双真:あぁ、ぶっちゃけ僕は、いつも一方通行で片想いみたいなことが多いんですけど、…珍しく波長が合うと思いました。
巽:ちなみに僕も合うと思います。
──ほう!それはどんなところで感じますか?
双真:XANVALAの「アーティスト」という曲の歌詞を読んだときに、表現者としての苦悩やそこに真剣に向き合ってる姿、そういった感性にシンパシーを感じました。
巽:(頷く)
──おふたりの歌詞は浮世離れした虚構的なものではなく、現状に満足していないものであったり、それを打破していこうという現実的なものが見受けられるのですが…そこに苦悩や葛藤も漂っていますよね。でもぶっちゃけ…おふたりともかっこいいじゃないですか?
巽:恐縮です。
──なのでもっとバックボーンにも迫りたいのですが、おふたりは幼少時代はどんな人でした。
巽:俺は泣き虫でしたよ(笑)
双真:僕は引きこもりでした(笑)
──おふたりとも「俺!」という感じではなかったんですね、もともと。そんな中でこのジャンル、いわゆる“ヴィジュアル系”に傾倒するようになったきっかけは何だったのでしょう?
双真:僕はね、高校デビューをしたんですよ。で、いきなり軽音楽部に入って。
──だいぶ思い切ったデビューですね!
双真:はい。デスヴォイスまがいのことも出来たのでヴォーカルをやらないか?と誘われてカヴァーしたのがDELUHIの曲でした。そこから友人に教えてもらったのがDIR EN GREY。あとはgirugamesh。そこからどんどんとのめり込んでいきました。
──お友達の影響は大きかったんですね。そこからヴィジュアル系っぽい歌唱や詩世界に入っていったと。
双真:それだけではなく、メロディがとにかく素晴らしいものが多くて。それが当時の僕のハートにドストライクにハマりましたね(笑)
──学生時代という多感な時期にヴィジュアル系と出会う人は多いですよね。それまでに知らない世界観が衝撃的と言いますか。
巽:それでいうと僕も中学時代にめちゃくちゃ流行ってたんですよ学校で。the GazettEが。お昼の時間に放送部が流してて、the GazettE聴きながら給食を食べる。そんな中学校でしたね(笑)
──洗脳に近いですね(笑)結果的に英才教育というか。スピードラーニング的な効果が。
巽:そこからライブにも行きたいと思って。それで初めて行ったのはMIYAVIさんのライブでしたね。「SURVIVE」の時期でギターとドラムの掛け合いが半端なくて“おぉ…すげえ!”と。憧れましたね。
──そこから巽少年にとってバンドマンへの道が開けたわけですね。
巽:そうですね。
──人生を変える時期にちょうどヴィジュアル系が刺さったということだと思うのですが、今同じような経験・体験を経てXANVALAやAshmaze.の音楽を愛してる方もいるのではないかと思います。さて、その両バンドの顔でもあるおふたりにとってのヴィジュアル系とは一体どのようなものでしょうか?
双真:ペルソナ。(ドヤ顏)
──ペルソナ?
双真:仮面かな。普段あんまり思ってることを口に出せるタイプではないんですけど、メイクを施したり…自分が創り出した世界観の中では自分の本質を表現に昇華できる、それがヴィジュアル系だと思っています。
──巽さんは?
巽:俺にとってヴィジュアル系は「愛」そのもの。それがヴィジュアル系です。そもそも自分が大好きなものっていうのもあるんですけど、見ただけで伝わるものじゃないですかヴィジュアル系って。それが魅力ですし、俺も人が好きになったヴィジュアル系というものを自分が好きになって、そしてそれを表現するようになり、また他の誰かへと紡いでいく…「想い」です。
──ジャンル化や呼称に対して多様な考えがあることは健全ではありますが、この両バンドはヴィジュアル系であることにとりわけ誇りを持ってらっしゃいますよね。
二人:はい。
──敬意は大前提としながらも過去に靡くのではなく未来に向けて進化していくこのVisual Rockのフィールドでお互いに責任は感じますか?
双真:今ってヴィジュアル系を知らない層が増えてきていると思うんですよ。でも、自分が好きなった時のことを思い返すと、初めて聴いたとしても“あ、かっこいい。ライブに行ってみたい”って思わされてたはずなんですよ。だから、あの時与えてもらった衝撃を知ってもらえる入口になりたいです。責任というよりは目標です。
巽:夢を見せたいです。ヴィジュアル系に自分は夢を見せてもらったので。だからまだ知らないよっていう層にも届けられるように、夢を見せるためには自分が紡いでいかなくてはならないという想いがありますね。
──ありがとうございます。この新しい世代の先頭を走っているからこそスピリットに親和性があるんですね。そのXANVALAとAshmaze.が双方のバンド名から命名した2マンツアー[ASHLA TOUR]が始まります。漢字表記の「阿修羅」は戦闘の鬼という意味もあります。意気込みをお聞かせ下さい。
巽:そりゃもうバチバチっすね(笑)
双真:自分が創り出した世界観の中で表現する姿が世界一かっこいいと思っているので、それをオーディエンス、そしてきっと見てくれてるであろうXANVALAのメンバーにも見せつけたいですね(笑)さっき入口になりたいって言いましたけど、身内も納得させられないようなバンドじゃそんなことは叶わないので、まずは地道にお互いの良さも再確認できるツアーにしたいです。
──各々の表現にオリジナリティと自信があるからこそ相容れない戦いなのにリスペクトはあるぞ、と。
巽:めちゃくちゃリスペクトはありますよ。ぶっちゃけ前のバンドの時から大好きで。俺は全然ペーペーの時で。今でもまだ追いついてるっていう風には思わないですけど、こうやって肩を並べて一緒にツアーを廻れることがもう嬉しいです。そこからもっと輪を広げて、ヴィジュアル系かっこいいよなって一緒に伝えていけたらいいなって思ってます。
──……なるほど。……インタビューとして、XANVALAとAshmaze.のバトル感を抽出できるかなという思惑が少なからずあったのですが、実際はそういった予想とは裏腹に<XANVALA vs Ashmaze.>ではなく、<XANVALA×Asnmaze. vs 何か>であるということをおふたり、並びに他のメンバーさんの発言から感じることができました。…で、これ言語化したくなければ結構なんですけど、現時点での明確な目標ってありますか?もし可能なら教えていただけると…
双真:自分の表現したいものを表現し続けることに意義を感じているので。地道にですが、バンドとしてもヴォーカルとしてより研鑽を積み世界観に説得力を持たせたいです。もちろんヴィジュアル系をもっともっと盛り上げていく中でその中心にいたいって気持ちは前提として持っていますけど。
巽:ヴィジュアル系の枠を超えたいですね。先輩方が今も頑張っている中で言うのも烏滸がましいですけど、俺らが、自分が信じたものを見せつけていく。
双真:あくまでヴィジュアル系としてね。
巽:俺はメイク落とさねえぞ。
──ヴィジュアル系の枠を超える=メイクを落とすなんていう陳腐な話じゃねえぞってことを読者の方にもご理解いただきたいですよね。説明不要とは思いますが。
巽:そうです。
双真:生き様ですよ。
巽:俺が好きなものはかっこいいだろ??っていう気持ちですよ(微笑み)
──さて、そしてお互いリキッドルームワンマンへの意気込みも聞かせて下さい。(Ashmaze.は8月4日、XANVALAは8月31日に開催)
双真:最大キャパですし、この前のBLAZEワンマンを経てということもあり色々な演出もしたいですね。こういうオブジェをステージに置いて…とかリキッドに向けて考えている時間が楽しいし、楽しみですね。リキッドルームは単発じゃなくてちゃんと続いている物語ですね。劇場版です。(2度目のドヤ顏)
──劇場版?
双真:劇場版名探偵コナンです(笑)
──劇場版名探偵コナン??
双真:独立してるわけじゃないけど、でも特別ではあるっていう。
──それが双真さんの中では劇場版名探偵コナンってことなんですね(笑)
巽:…(笑いを堪えて)
双真:劇場版なんですよ。…それは劇場版ドラえもんでもいいんですよ。普段とは違ったAshmaze.の姿が見れる節目になるというか。そこに向けての過程やストーリーを創り出していきたいです!
巽:キャパは、最大ですけど……足掛かりだと思ってます。
──それぞれの素敵な言葉で語っていただき一層期待も増したところで、最後にこの[ASHLA TOUR]を楽しみにしているファンの方にもメッセージをお願いいたします。
二人:…………。
──もし、あれば…
二人:(顔を見合わせじゃんけんを始める)最初はグー…
双真:じゃあ僕から(笑)えー。双真です。このツアーでXANVALAの頭(ヘッド)でもある巽くん…いや、“たっつん”をボコボコにしてやろうと思います。
──おぉ!
双真:しかも一撃じゃないですよ?
──はい?
双真:長期戦で。5ラウンド(五ヶ所)かけてボコボコにします!そのボコボコにする様もストーリーにしていきます。もちろんエンタメですけど(笑)
──安心しました(笑)
双真:もちろん各箇所で観てくれる方にも楽しめるライブにしますが、5本で繋がっていくストーリーにしていきたいです。(巽に)自分が魅せたい世界観をお互いぶつけ合いましょう。
巽:[ASHLA TOUR]全部で五か所あるんですけど、気持ちは一緒で一か所一か所、拳を叩き込むつもりでやります。で、自分らしくやれたらいいなと。さっきも言ったけどAshmaze.のことは格上だと思っていて、…(双真を見ながら)かつ俺が大好きなヴォーカリストがいるバンドと戦えるってことで、胸を借りるといいますか…
双真:それはちょっと謙虚に言い過ぎよ(笑)僕はライバルだと思っているので!
巽:でも胸借りつつも胸ぐらを掴む感覚でガクガクになるぐらいやって…
──バチバチのツアーが見れると(笑)
双真:後半ただのヒステリーじゃん(笑)
お互い高め合っていく過程も楽しめるツアーになると確信しています。
是非、期待していてくださいな。
巽:この2バンドにしか創れないヴィジュアル系ってものを見せたいと思います。
恐ろしいぐらいの自然体。
終始温か過ぎるほどの和やかさ。これからしのぎを削り、互いの誇りを賭け対峙するバンドのフロントマン同士の対談とは到底思えないほどに笑いの絶えない時間だった。
この奇妙な違和感の正体は文中にも記した、両者の対峙ではなく、両者と他の何かという対外的世界との戦いであることから生まれてくるのだろう。
「ヴィジュアル系とは?」との問いの際にだけ見せたふたりの鋭い目つきが印象深かった。
ステージを目いっぱいに謳歌することで、放つ存在感と煽動力が域に段違いの域に達しつつある巽。
フロントマンの資質を欲しいがままにしながら冷静かつ華麗にオーディエンスを掌握する双真。
相反するフロントマン同士故の、信頼と共犯性。
ふたりにしか見えない糸の行きつく先は[ASHLA TOUR]でもなければ恵比寿リキッドルームでもない遥か先なのかも知れない。
誇りを胸に歩み続ける両バンドが共に口にする「ストーリー」という言葉を借りるならば、遥か未来へ繋がる大きな旅のひとつひとつを是非見届けてほしい。
傍観よりも冒険の方がこの物語にはきっと相応しい。
余談だが、今回の取材企画は真夜中に行われた。それにも関わらず、自分たちの言葉で丁寧かつ真摯に最後まで応じてくれた10人のメンバーに心から感謝したい。
読者のみなさんもありがとうございました。またお会いしましょう。
インタビュー:山内秀一
PHOTO:S1TK
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★対談 Vol.4:Gt.Yuhma(XANVALA) × Gt.諒(Ashmaze.)はこちらから★
<TOUR INFORMATION>
■XANVALA × Ashmaze. 2MAN 「ASHLA TOUR」
4月14日(金) 名古屋ell.FITS ALL
4月15日(土) 心斎橋soma
4月29日(土) 新潟CLUB RIVERST
4月30日(日) 仙台MACANA
5月7日(日) 下北沢シャングリラ
OPEN 17:00 / START 17:30
[チケット]
前売 ¥4,500 / 当日 ¥5,000
※D代別
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