「ヴィジュアル系は終わらないじゃなくて、俺たちが終わらせない」
VISUNAVI presents Visual Rock is not “DEAD”公演レポート!!!!!!
VISUNAVIが主催、現在、そして、次代のシーンを最前線で牽引してゆくバンドたちが集結したイベント。それが、「Visual Rock is not “DEAD”」。4月30日(日)に池袋EDGEで、開催。選ばれたのが、ぶえ・HOWL・AURORIZE・KAKUMAY・ヤミテラ・ビバラッシュの6バンド。当日の模様を、ここにお伝えしたい。
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ぶえ
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●ぶえは、終始、暴虐無人ぶりを見せつつも、しっかりと”ぶえの世界”に観客たちを呑み込んでいった。
とんでもない曲者バンドの登場だ。幕開けから、その空気がビシバシと伝わってくる。その姿を目にしたとたん、期待と心地好い緊張感を覚える。
「やるかー!!やるれかー!!」。その期待に違わぬ、すさまじい轟音を叩きつけ、ぶえのライブは『舐めまわし』をぶち噛まして始まった。「ペロペロペロ」「ぺろりんちょ」の掛け合いが、最高だ。メンバーらは、身体を大きく揺さぶり、轟音の洗礼を与えてゆく。ヴォーカルの伐の煽りと荒ぶる演奏に刺激を受け、フロア中の人たちが声を張り上げ、身体を激しく揺らす。これが、ライブハウスという密閉された空間でこそ味わえる、熱と熱を直接肌で感じあえるライブだ。伐の煽りを受け、フロアの最後列の人達までが飛び跳ねていた、いいよな、理性を消し去るこの感覚が。
「夏にいっぱい居るのって、何だと思います?そう、蚊」「蚊がおるぞ、みんな蚊を殺せ」「蚊に刺されるぞ、さぁ殺せ殺せ」の煽り、「さぁ頭寄こせ!!」の伐の言葉を受け、頭をぶん殴る衝撃を持った『蚊』の演奏が炸裂。重厚なビートに合わせ、大きく頭を振る観客たち。理性なんか、ここには必要ない。ぶえの叩きつける、感情を真っ黒く塗り潰す轟音に身を預け、身体を大きく揺さぶり続ければそれでいい。
「掻き回せ、掻き回せ!!」の煽り声を合図に、止まることなく楽曲は『痴漢』へ。「痴漢をさせてよ」の歌詞も強烈なインパクトだ。人の欲望を美化するどころか下劣に皮肉り、その毒々しい言葉と演奏で、観客たちの欲望を引きずり出し、心を濡れさせる。ぶえのライブ、その衝撃を思いきり楽しむ人から、圧倒されるままに棒立ちする人まで、両極の表情が見える。むしろ、好き嫌いのはっきりする、その姿勢が良いじゃない。
無軌道に、自我の道をひたすら突き進むバンドだ。こういう癖の強いバンドが存在してこそ、ヴィジュアル系というシーンが面白くなる。無個性よりも、強烈すぎる癖を与える、ぶえのようなヤバい連中こそが、このシーンを活性化させる。以前は、暴言こそが、このシーンに刺激を与えていたスパイスだったはず。それをぶえが、今の時代の中に示していた。゛
「お前らを小さくしてやる」。伐が「ちちんぷいぷいのぷい」と魔法の言葉を叫びだした。『君を小さくする魔法』の演奏に合わせ、頭をグイングインに振りまわす観客たち。巧みに表情を変え、様々な展開を導きながら、フロア中の人たちをしゃがませ、彼らは小さくさせていた。「3.2.1」の声を合図に飛び跳ねる様も、ライブならではの楽しさだ。皮肉たっぷりの言葉と轟音で、ぶえは、観客たちをずっと狂わせていった。
伐の、ヴィジュアル系愛の籠もったディスる煽りが刺激的だ。『4秒後、無駄死に』してもいい。こういう愛をたっぷりの皮肉を持って届け、恰好つけた観客たちの心の化粧を消し去り、誰しもの気持ちを裸にしてゆくバンドの存在が、むしろ愛おしい。間奏で観客たちをスクワットさせるなど、積極的消極的関係なく、この場にいる人たちを嫌か応にでも巻き込んでゆくパワー感が、堪らない。それでも、空気に流されることなく、棒立ちの連中の根性も、むしろ気合や芯がしっかりとあって恰好いいじゃないか。
最後にぶえは、強烈な重厚ブラストナンバー『嘔吐、応答せよ』を叩きつけ、観客たちの頭をガンガンに揺さぶりながら、狂乱した景色をこの場に作りあげていった。終始、暴虐無人ぶりを見せつつも、しっかりと”ぶえの世界”に、彼らは観客たちを呑み込んでいった。
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HOWL
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●魂が揺さぶられたら、自然と身体も熱を抱く。そんな心を高揚した色にHOWLが染めあげてくれた。
SEが流れだした時点で、フロア中から飛びかう数多くの黄色い歓声。HOWLに対する期待が、その声からも伝わってきた。
HOWLのライブは、胸を熱くくすぐる、キャッチーで愛らしい『Mr.Moonlight』からスタート。瞬時に歌で観客たちのハートをつかむのは、もちろん。気持ちも、熱く高ぶらせる。フロアのあちこちで、真宵の歌に合わせてカラフルなリングライトの光が揺れていた。間奏で、観客たちの頭を激しく揺さぶる面も見せるが、終始、HOWLの描きだすロマンチックな世界へ身を投じながら、心地好く陶酔していけたのが嬉しい。
さぁ、ここからはテンションをもっともっと上げていけ。HOWLは『先天性君症候群』を突きつけ、観客たちの身体を大きく揺さぶりだす。クールに攻めつつ、巧みに拳を振り上げ、一体化した景色を描きだすメンバーたち。HOWLは、演奏が進むごとにキャッチーさを生かしながら、でも、スリリングな空気を膨らませ、観客たちに気持ちを騒がせる嬉しい刺激を与えてゆく。メンバーらの煽りを受け、フロア中からも熱情した声が上がる。曲が進むごとにスリリングさと同時に、熱も増してゆく。だから、自然と身体が騒ぎだすし、観客たちの声もハウっていた。
「絶景を観に行こう」。続く『絶景FLAGS』でHOWLは、自分たちが理想や希望として掲げた思いを、言葉と、高揚したメロディーに乗せて届けてきた。理想とする音楽を耳に出来ないのなら、自分たちで作ればいい。その思いを胸に誕生した楽曲には、メンバーたちが求める理想とする姿や思いが記されている。それを妄想や理想論と呼ぶなら、そう呼べばいい。でも、本気で「君」と一緒に求める絶景を作りたくて、彼らはその思いを高揚した演奏に乗せて本気でぶつけていた。その思いが真実だからこそ、温かい歌声や演奏の中からさえ芯を強く持った揺るがない言葉(思い)が響けば、何時しか胸を熱く揺さぶっていた。
止まることなく楽曲は、『隷従エスコート』へ。真宵の、「暴れた感情を僕がエスコートしよう」の言葉が嬉しい。その誘いを受け、頭を揺さぶり、身体を折り畳み、サビでは楽しそうに身体を揺らしながら、誰もが気持ちの導くままに暴れる音に酔いしれていた。途中には、フロア中の人たちがしゃがみ、「3.2.1」の声に合わせて飛び跳ねる場面も登場。ただ熱狂に身を浸すのではない。心が嬉しく騒ぐからこそ、はしゃいでゆく。その感覚を与えてくれるのがHOWLのライブだ。気持ちを自然体のまま熱情させる世界へのエスコート、ありがとう!!
ここでHOWLは,フロア中に暴れ騒ぐ景色を作りだした。「足りてるやつは後ろに行け、足りねえよなぁ」の煽り声が胸熱だ。真宵の「暴れに来たんだろう、楽しみに来てんだろう。足りねえよな」の言葉に嬉しい刺激を受けた観客たちが、終始、荒れ狂う演奏に合わせ、身体を激しく揺らしていた。キャッチーな表情も魅力だが、感情を剥きだした様も嬉しく胸を奮わせる。
最後にHOWLは、「4人が、今、一番信じている音楽を聴いてほしい」「ここにすべてを込める」と述べ、『アンダーテイカー』を歌い奏でてくれた。言葉のひと言ひと言を胸の内でしっかりと抱きしめたくなる楽曲だ。身体を揺さぶる激しい演奏も中へ組み込みながら、HOWLは“歌心“で。『アンダーテイカー』に込めた思いで、この場にいる人たちの心と身体を揺らしていた。魂が揺さぶられたら、自然と身体も熱を抱く。そんな風に、HOWLが心を高揚した色に染めあげてくれた。だから、ずっとずっと舞台の上から溢れ出る思いを、その音楽を、全身で受け止めていたかった。いや、その歌を、思いきりギュッと抱きしめ続けていたかった。
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AURORIZE
https://saintnoir-music.com/aurorize/
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●演奏が進むごとに様々な感情の色を演奏と歌声の絵筆でこの空間に塗りながら、AURORIZEはずっと観客たちの心に、目にも鮮やかなオーロラのような音楽の景色を映し出していた。
ヴァイオリンロックミュージックの無限の可能性を提示する、ヴァイオリンラウドロックバンドのAURORIZE。美しくも、物悲しい『CHASMATIS』(SE) が流れだす。そこへヴァイオリンの音色を重ねるのを合図に、優雅な音が広がりだす。メンバーたちが次々と舞台へ登場。弓代星空が高く手を上げるのを合図に、AURORIZEのライブが幕を開けた。
AURORIZEは、観客たちへ「暴れたいんだろ!!」と言わんばかりに、冒頭から『METEOR』を叩きつけて容赦なく煽りだす。抑揚を持ったドラマチックでメロディアスな歌を魅力に据えながらも、黒い轟音で観客たちの理性という感情を次々と塗りつぶしてゆく。間奏で、スリリングで痛い旋律を奏でる弓代星空のヴァイオリンの演奏も登場。巧みに、魂を揺さぶる華麗な展開を描きながら。でも、終始AURORIZEは、観客たちの目の前から現実を消し去る演奏を繰り出していた。
野太くも、物悲しいヴァイオリンの旋律。対して演奏は、戦慄を覚えるほどの痛く激しい轟音を叩きつける。AURORIZEは『Wonderland』に乗せ、観客たちの身体を揺さぶれば、その場で跳ねさせる衝動を与える。美しい旋律を通して甘美でメロウな音色を響かせながらも、軸に据えたのはノイジックで重厚なサウンド。破壊と麗美、二つの表情を巧みに交錯しながら、AURORIZEは悠久の物語を描き出していた。荘厳/重厚/妖美な世界の中へ、ただただ興奮と恍惚を覚えながら浸っていられる。それが嬉しいじゃない。
「お前たちと最高の時間を作りたい」。その言葉を示すように、AURORIZEは激しくもスリリング。でも,その中から胸を心地好く揺さぶる旋律も覗かせながら、『GGGB』を演奏。攻めに徹した演奏を見せてゆくかと思わせながらも、ポイントごとに魂を揺さぶる美メロな表情も彼らは見せてゆく。語るどころか,殴りつけるようにぶつけた弓代星空の言葉の数々も印象深い。荒ぶる音の渦の中へ巻き込まれながらも、その中から輝きを持って届く弓代星空の歌声に、救いにも似た慈愛の響きを感じていた。その歌声に手を伸ばし、たぐり寄せたい気分だ。
演奏は、たうたうように表情を塗りかえながら『TINTA ROJA』へ。ここまでの荒ぶる表情とは異なり、この曲では、美しくも抑揚を持って歌う弓代星空の美メロウな声へ寄り添うように、楽器陣も演奏。たっぷりと溜めを生かした歌声とは裏腹に、演奏は熱を持って駆け続ける。その微妙に異なるコントラストが、楽曲自体に、胸を揺さぶる彩りを与えていた。曲ごとに、巧みに感情と演奏の色を塗りかえながら、AURORIZEは、観客たちを美しくも重厚浪漫な世界へと導いては、その物語の中へ心を陶酔させていた。感情の変遷に合わせてドラマチックに転調してゆく様も、聞き応えのある曲展開だ。
熱情的で感情的な弓代星空の歌声から幕を開けたのが、『AURORA』。彼は物語を進める旅人となり、美しくもカラフルなメロディーと黒い衝動を抱いた演奏の重なり合う世界の上で、思いを昇華するように歌っていた。熱情した語り部となった弓代星空の歌い語る、その物語の行く末をしっかりと追いかけたい。途中にヴァイオリンの演奏も加えながら、彼らは『AURORA』という心惹かれる物語を、目の前に音譜の絵具を撒き散らしながら描き、歌声と演奏のペンを持って綴っていた。
「自分が信じる恰好良さを、俺らに見せつけてくれ」。最後にAURORIZEが突きつけたのが、『MIRAGE』だ。轟音ドラマチックと言いたくなる、緩急を効かせた荒ぶる演奏の中から響く歌声が、気持ちを熱く掻き立てる。轟音の洗礼と、魂を昇華してゆく高揚。二つの魅力を重ね合わせ。でも、演奏が進むごとに様々な感情の色を演奏と歌声の絵筆でこの空間に塗りたくりながら、AURORIZEはずっとずっと観客たちの心に、目にも鮮やかなオーロラのような音楽の景色を映し出し続けていった。
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KAKUMAY
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●フロア中から突き上がる。拳、誰もが現実も、限界も忘れ、ただただKAKUMAYの作り上げた熱狂という革命の渦の中へ飛び込み、喜びに溺れていた。
5月30日に2周年ワンマン公演も控えているKAKUMAYが登場。自由奔放でヤンチャなメンバーたちらしく、登場の時点から観客たちを「Oi!Oi!」と煽りだす。フロアに生まれた一体化した景色。その様を嬉しそうに眺めるメンバーたち。
「いこうぜ!!」。「Welcome to the Darkness Party」の囁き声を合図に、KAKUMAYは『WELCOME TO THE DARKNESS』をぶち噛まし、身体を床からはぎ取る勢いで、観客たちを激しく煽りだす。彼らの煽りに狂喜した観客たちが、真虎の突きあげる腕に合わせ、共に高く手を振り上げ、その場で大きく飛び跳ねる。KAKUMAYは、フロアにいる人たち一人一人の心の背中に小さな翼を授け、その両翼を広げて、ここまで飛び込んでこいとでも言うように誘いかける。KAKUMAYの演奏に合わせ、観客たちが振りやリアクションを示す、そこで生まれた一体化した景色が胸熱だ。
演奏は、さらに激しさを増しながら『CARRY』へ。この曲では、これまで以上に観客たちが大きく身体を折り畳みだす。跳ねた演奏と胸をくすぐるキャッチーな歌が響くサビのパートでは、みんな嬉しそうに飛び跳ねれば、身体を横揺れしながら、KAKUMAYの奏でる轟音ダンスロックの衝撃に楽しく溺れていた。ストレートに、ダイレクトに荒ぶる衝動をぶつける姿も恰好いいが、跳ねる要素など、巧みに多彩な音楽要素を加え、踊り騒げるダンスロックナンバーに昇華してゆく彼らの手腕が恰好いい。だから、KAKUMAYのライブに触れるたびに踊りたくなる。
「お前ら全員一人も置いていかないから、俺たちについてこいよ」。真虎の叫ぶ声を合図に、さらに激しさと熱を上げながら『UNDER THE BED』へ。荒ぶる熱を撒き散らし爆走してゆく演奏の上で、真虎が次々と言葉を突きつけ、観客たちから腐った現実を奪い取る。さぁ、突き上げた手をもっと高く掲げ、さらに身体を大きく揺らしながら、身体の限界を超える勢いで騒ぎまくろうぜ。そんな風に誘い誘われる熱情した関係が、この場に生まれていた。天高く突きあげた腕を下ろすことも忘れ、このままずっと無邪気にはしゃぎ続けていたい。
真虎やメンバーたちの煽り声に、熱情した感情をぶつける観客たち。止まることなく、演奏は『BITE』へ。終始,、前のめりの姿で観客たちを煽り続ける真虎。KAKUMAYの演奏に刺激を受け、止まることを忘れ、バネの壊れた人形のようにずっと身体を揺さぶり、ときに振りを真似ながら、高く掲げた手を揺らし、騒ぎ続ける観客たち。間奏で見せた折り畳みの景色も刺激的だ。騒ぎたい気持ちを止めたくない。限界を超える勢いで、ずっとずっと暴れ続けていたい。背中に生えた小さな翼が、いつしか大きく広がっていく感覚も嬉しい。
「全員に俺たちの気持ちを伝えたい。それを受け取ってくれるか!!俺たちとお前らはけっして同じ人間なんかじゃない。だから、まわりと比べなくていい。何かあっても、きっと乗り越えていけると思います。どんなことがあっても、また乗り超えようぜ」。
真虎の熱情した言葉が胸を騒がせた。エモい気持ちの上に、さらにエモい衝動を重ねあわせるように、KAKUMAYは歌心を抱きつつも胸を熱く騒がせる『ニアリーイコール』を、沸き立つ思いのままに歌いあげていた。そこへ記した、共に気持ち動くまま、後悔しない生き方をしていこうぜという思い。何時だってKAKUMAYは、自分たちが信じた思いに突き動かされるまま、日々活動を続けている。つねに我が道を示しながら、でも、その中には、支えてくれる君の存在があるからこそ、何時だって乗り越えていけるし、乗り越え続けてきた。だから、これからも共に心の手を繋ぎながら、いろんな困難を乗り越え、信じた道を突き進もうと、彼らは歌っていた。
最後にKAKUMAYが届けたのが、遊び心も取り入れた激熱モッシュチューンの『哀なんて青春。』。演奏が爆裂したのを合図に、観客たちが左に右へと駆けだせば、身体を前後に大きく折り畳み、共に、この場に消えない熱狂の景色を描き上げていった。真虎やメンバーらの煽りを受け、フロア中から突き上がる拳、拳、拳。誰もが現実も、限界も忘れ、ただただKAKUMAYの作り上げた熱狂という革命の渦の中へ飛び込み、喜びに溺れていた。
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ヤミテラ
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●熱狂の煽り手、導き主となったヤミテラのメンバーたち。この景色の中にまみれていられることが最高の喜びだ。
幽玄な『闇を照らす者達』(SE)が鳴り響く中、メンバーたちが舞台へ姿を現した。ヤミテラのライブは、RiNa の煽る声を合図に、演奏陣が、黒く重い衝撃を抱いた音を撒き散らすように『PARADOX』を奏でて始まった。嬉しく胸をくすぐるメロディアスな歌と曲調だ。演奏は野太い音を轟かせ突き進むのに、ときにデスボも加えてとはいえ、RiNaの熱情しつつも、共に口ずさみたくなる歌に気持ちが嬉しくはしゃいでいた。フロアのあちこちで、無邪気な笑顔を浮かべながら飛び跳ねる人たちがたくさんいたのも,納得だ。
続く『くだらね世界』のタイトルではないが、ヤミテラは、既成の枠にはまった音楽など蹴散らすように、これが、俺たちの掲げた音楽だ。この音楽で、みんなの心をブチ上げ、何にも縛られない自由という意味を教えてやるよと言わんばかりの勢いで、歌を、演奏をぶつけてきた。終始、煽り続けるRiNaとメンバーたち。その誘いを受け、フロア中の人たちがわちゃわちゃとした姿ではしゃぎ続ける。暴れるのも熱狂だが、笑顔で沸き立つのも、ライブだからこその楽しさだ。
「NA NA NA」と歌うRiNaに合わせて、フロア中の人たちも声を上げだした。ヤミテラは『反逆の豚』を突きつけ、さらに疾走した音の衝撃を与えながら、フロアにいる人たちを、踊り、飛び跳ねる楽しさの中へ導き入れる。騒ぐのではない、楽しくて楽しくて、身体が自然と大きく揺れ動き、はしゃぎだす。感情をぶつけあって戦うのもライブだが、楽しさを分かちながら、熱くなった気持ちをともに奮い立てるのもライブ。それをヤミテラが教えてくれた。
「本当に恰好いい音楽をしっかり見せてやるから、ついてこいよ!!」。RiNaの熱い声を受け、ヤミテラは『夕闇』を叩きつけた。歌メロも、ギターの奏でる旋律も、一瞬にして心をとらえるキャッチーなつかみを持っている。同時に演奏は、騒がずにいれない熱い衝撃と高揚を抱いている。身体は、荒ぶる演奏に刺激を受けて火照り続けるが、心は、胸をくすぐる歌をずっと求めていた。歌で熱狂させる。音楽としては当たり前の姿勢だろう。その当たり前を、ヤミテラは轟音渦巻くライブ空間の中でもしっかりと示していた。きっと、この歌に心を奪われた人たちも多かったのでは?!それくらい、彼らと一緒『夕闇』を歌いながら、共にアガッていたかった。
熱いクラップと歌のやりとり。「Oi!Oi!」と煽るメンバーたち。その衝撃と楽しさは『イキタガリ』へと繋がった。RiNaの煽りを受け、フロア中かも「Oi!Oi!」と熱い声が上がり続ける。RiNaの歌に合わせてクラップし続ける様も、胸に熱い。メンバーらの煽りに合わせ、ヘドバンや折り畳みしてゆく観客たち。何より嬉しかったのが、RiNaの歌に合わせて、ともに歌をかけあえば、左右にモッシュしながらはしゃぐなど、楽しい衝撃や衝動へ導かれるまま、理性のストッパーをぶち壊し、沸き立つ思いのままに騒いでいたことだ。熱狂の煽り手、導き主となったヤミテラのメンバーたち。この景色の中にまみれていられることが、最高の喜びだ。
最後にヤミテラは『前線敬礼歌』をぶち噛まし、フロア中の人たちの身体を大きく折り畳む。演奏が駆けだすのに合わせ、フロア中の人たちがその場で飛び跳ね、熱狂の踊り子と化してゆく。みんな自由だ。こうしなきゃなんて縛られたルールなどすべて蹴散らし、自分が沸きたいなら、その気持ちや動きのままに楽しめばいい。ヤミテラは、この空間にいる人たちの心を自由にしていた。誰もが無邪気な少女に気持ちを戻し、限界さえも忘れ、心が求めるままに、高く突きあげた両手を大きく広げ、その手を大きな翼にしながら沸き立っていた。
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ビバラッシュ
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●この楽しさがずっと続くのなら、このまま気持ちの限界が来るまで踊らされていたい気分だ。
“アゲみ集団“を自称するエンターテインメントグループのビバラッシュが、イベントのトリとして登場。メンバーの登場に声を張り上げて沸き立つ観客たち。数多くの絶叫の声も力に変えながら、ビバラッシュのライブは『FAKE OUT』をぶち噛ましてスタート。冒頭から、メンバーと観客たちが声を張り上げ、手にしたリングライトも輝かせながら、腕を突き上げ、思いきりはしゃぎだす。胸をくすぐるキャッチーでエモいアッパーチューンだ。演奏に合わせ、フロア中の人たちが床を蹴飛ばす勢いで飛び跳ねれば、るいまるやメンバーらの歌や煽りに向けて、大きく手の花を咲かせていた気持ちもすごくわかる。飛び跳ねなきゃじゃない。飛び跳ねたくて仕方がない。ビバラッシュの歌や演奏に合わせ、思いきり手を揺らし咲かなきゃ、自分たちだって輝けない。
「咲けー!!」の声に合わせて飛びだした『タピってチマチョゴリ』でも、カラフルでアッパー、心をむちゃくちゃ嬉しくくすぐるキャッチーで胸熱な歌に合わせ、フロア中の人たちが飛び跳ねていた。るいまるの動きに合わせ、同じ振りをしながら心一つになる景色は、ビバラッシュのライブではスタンダード。彼らの繰り出す熱を持った演奏に気持ちをシンクロ、心を10代のキッズに戻したまま、ずっとわちゃわちゃはしゃぎ続けていたい。いつしかこの空間がハッピーなダンスホールに染め上がっていた。
『踊らされた人生』でもビバラッシュは、ダンスホールに染めあげたこの空間の中で、観客たちの身体をずっと揺さぶっていた。いや、揺さぶるなんてもんじゃない。フロア中の人たちが、彼らの歌と演奏に合わせ、ずっとDANCE FEVERし続けていた。折り畳みや咲く、ヘドバンなど、ヴィジュアル系特有の騒ぎ方も組み込みながら。それ以上にフロア中の人たちが、演奏が止まらぬ限り、ずっと高く高く跳ね続けていた。彼らは「踊らされた人生」と歌っていたが、この楽しさがずっと続くのなら、このまま気持ちの限界が来るまで踊らされていたい気分だ。
MCでは、上京してきたことを報告。思いきり、東京に染まってやると宣言してゆくところもビバラッシュらしさ。さらにここで、VISUNAVIチームから届いた手紙を朗読するなど、このイベントに参加したことを思いきり謳歌していた。
振り付け講座を行った後に届けたのが、『マンマ・ミーア』。アコギの音色も印象深い、爽やかでフォーキーな。でも、トロピカルな香りも運んでくる、遊び心満載のハッピーなお遊戯ソングだ。アコギのみの演奏に乗せ、先にレクチャーした振りをしながら、サビでは一緒にしゃがんだり立ち上がりながらと、みんなでハートフルな空気を作りあげていた。ギター以外の3人が歌い踊る姿に合わせ、フロア中の人たちも同じ振りをしながら一緒にはしゃぐ。何でも有りがヴィジュアル系なら、その精神を、ビバラッシュはお笑い要素を満載に届けていた。るいまるの語った「ヴィジュアル系は終わらないじゃなくて、俺たちが終わらせない」の言葉が恰好いいじゃない。後半には、バンド演奏に転化。めちゃめちゃノリ良いHAPPY TUNEだけに、彼らが「新世界の神になる」のも、そんな遠くはなさそうだ。
ライブも終盤へ、飛びだしたのが新曲の『神ノミゾ知ル』。たとえ初見だろうと、すぐにノリをつかみ、メンバーらと一緒に踊りはしゃげる、超エモく胸に熱い楽曲だ。るいまるの歌に合わせ、フロア中の人たちが突き上げた拳をくるくるとまわしながら、弾けた演奏に乗せてわちゃわちゃと騒いでいた。今、この空間にあるのは「楽しい」という言葉だけだ。いや、ビバラッシュのライブ中、ずっとその言葉が額に張りついていた。好きだ嫌いだなんて意識を覚える前に、彼らのPARTYな勢いに呑み込まれ、気がついたら身体が勝手に騒いでいた。
「俺たちは、みんなの心の中にぐっと入り込んで、楽しい感情をぐっとつかんで、外へ引きずり出すバンドです。みんなの楽しいを導きだして、アゲに導いていきます」。るいまるの言葉を合図に、ビバラッシュは最後に『ダンデライオン』をぶち噛ました。「楽しい」のいろんなノリ方を、次々と転調した中へ押し込めるように1曲の中へ濃縮。彼らが呼びかけるまま、頭を空っぽに騒ぎ続けていたい。この楽しさ、本当は終えたくない。でも、もっともっとと求めたくなる楽しさがビバラッシュのライブにはあるから、もっと楽しさをおかわりしたくて、またもビバラッシュのライブに足を運んでしまう。それが病み付きになるってことだ。
とにかく、演奏したくて堪らなかった。もっともっと騒ぎたくて、フロア中の人たちが興奮を求めていた。予定外のアンコールで届けた『ビリビリ』では、観客たちが手にしたサイリウムやリングライトの輝きを大きく揺らしながら,この空間にビリビリとした熱狂を放熱。ビバラッシュは、最後の最後まで、観客たちの身体に蓄電した熱狂の電力を消費させるどころか、しっかりと奪い取っていった。
「ヴィジュアル系は死んじゃいない」、それを示すどころか、その楽しさを知ったら「ヴィジュアル系の信者になるしかない」。それを示したイベントだった。
PHOTO:インテツ
TEXT:長澤智典